浴室床材
【課題】本発明は、洗い場表面が石鹸水により濡れた状態となった場合でも、水単独で存在する場合と同様に、滑りにくさを発揮でき、また、使用者の足裏に触れる残水量を低減し、特に冬季において使用者の感じる冷たさを低減できる浴室床材を提供するものである。
【解決手段】本発明は、表面に多数の小突起と、前記小突起と小突起との間に排水路となる溝を有する浴室床材において、前記小突起は、頂部、側部、底部を備え、前記側部が頂部から底部に向かって広がるように形成され、前記側部が複数の側面と、前記側面と隣接する側面の境界に稜線を有し、前記頂部がこの頂部と一体的に形成された微小突起を有する浴室床材である。
【解決手段】本発明は、表面に多数の小突起と、前記小突起と小突起との間に排水路となる溝を有する浴室床材において、前記小突起は、頂部、側部、底部を備え、前記側部が頂部から底部に向かって広がるように形成され、前記側部が複数の側面と、前記側面と隣接する側面の境界に稜線を有し、前記頂部がこの頂部と一体的に形成された微小突起を有する浴室床材である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に浴室内の洗い場を形成する浴室用床材、及び、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から住宅等の浴室に組み込まれる樹脂製の洗い場パンは、使用者が身体を洗ったりする際に、脚を滑らせないように、また、実際の使用条件として石鹸、シャンプー等の混じった湯水等が存在しても滑りにくいように、表面に凹凸を備えた仕様で構成されている。また、この滑りにくさに加え、洗い場表面に島状に残水させず、かつ、翌日には残水が残ることのないように形成された洗い場パンが知られている。このような洗い場パンとして、例えば特許文献1に開示されているものが挙げられる。これによると、滑り止め用の凸部と、これら凸部の間に流れ込んだ水を途切れさせずに一時捕水できる状態に形成された流路とを備えることで、凸部表面に形成された水玉を前記流路内に一時捕水された水と接触することで誘引・導水され排水される構成となっている。
【0003】
さらに近年では、冬場に感じられる足裏から伝わる冷たさを低減させた洗い場パンが知られている。このような洗い場パンとして、ガラスバルーン等の中空粒子を充填させたSMCを用いて熱伝導率を低下させたものや、特許文献2に開示されているように足裏の接触面積の低減によって足裏の温度低下を低減させるものが知られている。
【特許文献1】特許第3589244号公報
【特許文献2】特開2006−132109号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2のような従来の凹凸パターンでは、洗い場表面が水に濡れた状態と石鹸水等の湯水の濡れた状態とでは、滑りにくさに差が生じてしまう。これは、水単独の場合と比べ、洗い場表面が、石鹸に含まれる界面活性剤の作用により親水化されるため、洗い場表面に薄い水膜を形成することに起因する。また、一般的に浴室床の凹凸は、使用者の足裏を刺激しないように角にR加工が施されており、使用者が歩行する際に抵抗とならないよう配慮されていることも滑りやすくなる原因となる。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたもので、洗い場表面が石鹸水により濡れた状態となった場合でも、水単独で存在する場合と同様に、滑りにくさを発揮でき、また、使用者の足裏に触れる残水量を低減し、特に冬季において使用者の感じる冷たさを低減できる浴室床材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、次のものに関する。
(1) 表面に多数の小突起と、前記小突起と小突起との間に排水路となる溝を有する浴室床材において、前記小突起は、頂部と、側部と、底部とを備え、前記側部が、頂部から底部に向かって広がるように形成され、かつ、複数の側面と、前記側面同士の境界に形成される稜線とを有し、前記頂部が、この頂部と一体的に形成された微小突起を有する浴室床材。
(2) (1)において、小突起が四角錐形状であり、前記小突起の頂部に形成される微小突起が、数10μmの大きなうねりと数μmの微細凹凸を組合せた形状である浴室床材。
(3) (1)又は(2)において、小突起の頂部、側部、及び、溝が、微小突起の形成により親水化され、前記小突起の頂部、及び底部の面積が1mm2より大きく25mm2以下であり、前記小突起の高さは0.5mm〜1.5mmである浴室床材。
(4) (1)乃至(3)の何れかにおいて、四角形の開口を有する開口サイズの異なる複数の版を用い、多段階にエッチングを行うことにより小突起の反転形状を形成した成形用型を用いて、熱硬化性樹脂成形材料を加熱・加圧して得られる浴室床材。
(5) (1)乃至(4)の何れかにおいて、小突起の反転となるように加工された電極を用い、形彫放電加工を行うことにより小突起の反転形状を形成した成形用型を用いて、熱硬化性樹脂成形材料を加熱・加圧して得られる浴室床材。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、洗い場表面が石鹸水により濡れた状態となった場合でも、水単独で存在する場合と同様に、滑りにくさを発揮でき、また、使用者の足裏に触れる残水量を低減し、特に冬季において使用者の感じる冷たさを低減できる浴室床材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の浴室床材は、図1、図2に示すような小突起1を多数配置して形成される。本発明の浴室床材は、浴室の洗い場に用いられるものであり、一例としては、図3に示す浴室2の浴槽載置部3に隣接する洗い場4に相当する部分であって、浴槽載置部3の防水パンと一体、もしくは別体で形成されるものが挙げられる。前記小突起1は、図4のように多数配置して形成され、小突起と小突起の間には排水路となる溝5を有して構成される。
【0009】
また、図3に示すように、前記洗い場4は、排水のための排水口部6を有し、前記排水口部6が最も低くなるように図中の矢印7で示す方向に排水勾配が取られ、前記溝5は、排水勾配と同一勾配にて形成される。その結果、洗い場4に散水された水は、前記溝5を経由して排水口部6に流れ、排水される。
【0010】
前記小突起1の形状は、頂部8、側部9、底部10を有する角錐台形状であり、図2に示すように、側部9が頂部8から底部10の溝5に向かって広がるように構成される。図1に示すように、前記側部9は、複数の側面11と、前記側面11同士の境界に形成される稜線12とを有する。
【0011】
ここで、頂部8とは、小突起1の上部に形成される稜線12を有しない部分を言い、より詳細には、平面視において小突起1の頂点(複数の稜線12の延長線が交わる点)を含み、底部10から頂点に向かう複数の稜線12の端(稜線12の上端)を結んで形成される領域を言う。具体的には、図1、図2に頂部8として示したような小突起1上部の比較的平坦な領域、図5、図6に頂部8として示したような小突起1上部の平坦部と半球または楕円球状を組合せた領域、または、図7、図8に頂部8として示したような小突起1上部の半球または楕円球状を複数組合せた領域が挙げられる。なお、稜線12の有無の判定は、暗くした室内で、小突起1の側面11のうちの一つに対して垂直に光を照射したときに、明暗の境界線が明瞭か否かを目視で判定することにより行った。即ち、明暗の境界線が不明瞭になる手前の位置を稜線12の端(稜線12の上端)とした。
【0012】
また、側部9とは、頂部8から底部10に到る小突起1の側面11及び稜線12を含む部分を言う。前記稜線12の数は、特に限定されないが、好ましくは4本の稜線12を有する四角錐台形状で形成される。これによって、特に溝5を清掃するときに、溝5が2方向に形成されていることで、使用者は2方向の溝5に沿って清掃できる。一方で、前記稜線12が3本である三角錐台形状の場合、清掃時に溝5が三方向に形成され、逆に5本、6本と稜線12の数が増加し、さらに円錐台形状となった場合、溝5の清掃は円を描くように清掃する必要が生じ、十分に清掃できないといった問題が生じる。なお、稜線12は、後述する微小突起13や凸部14とともに、滑り止め効果も有する。
【0013】
図1、図2の小突起1の頂部8には、図9に示すように、前記小突起1よりもさらに小さい微小突起13が一体的に設けられる。このように、頂部8に微小突起13を設けることで、滑り抵抗が増大し、石鹸水で親水化され表面が濡れた状態でも滑り止め性能を維持できる。前記微小突起13は、数10μmの大きなうねりと数μmの微細凹凸を組合せて形成される。これによって、小突起1の頂部8の擬似的な親水化に加え、足で踏んだときに、凹部の中の水が逃げやすくなることで滑りにくくすることができる。また、図5、図6に示す形状、又は、図7、図8に示す形状のような、頂部8にさらに凸部14を形成させた小突起1の頂部8に、数10μmの大きなうねりと数μmの微細凹凸を組合せて形成される微小突起13を形成させた場合は、さらに滑り抵抗を増大させることができるので望ましい。微小突起13は小突起1と一体的に設けられるので、例えば成形用型に小突起1と微小突起13の反転形状を形成しておくことで、成形の際に、小突起1と微小突起13を一括して形成することが可能となり、量産性に優れている。
【0014】
小突起1の頂部8、側部9、及び、溝5が、微小突起13の形成により擬似親水化されることがより好ましい。このようにして、微小突起13が、小突起1の頂部8、側部9、及び、溝5を含む浴室床材4の全体に亘って形成されると、小突起1の頂部8、側部9、及び、溝5を含む浴室床材4の全体が、微小突起13の形成により擬似親水化される。これにより、浴室床材4の表面では、小突起1と溝5の両者が乾いた状態で水をかけた場合(当初の水)、及び、溝5に水が残っている状態(溝5に一時捕水されている状態)で水をかけた場合の何れも、浴室床材4の表面に水玉を形成することなく、溝5を通って全体にすぐに広がる。したがって、小突起1の頂部8には水の残留はほとんどなくなるため、より滑りにくさを発揮でき、また、より使用者の足裏に触れる残水量を低減することができ、使用者の感じる冷たさを低減できる浴室床材を提供することができる。
【0015】
擬似親水化のための微小突起13は、エッチング処理、形彫放電加工、サンドブラストを行うことによって、微小突起13に対応する凹凸形状(反転形状)を設けられた成形型を用いて形成される。
【0016】
また、親水化するために、前記微小突起13の形成の代わりに親水性膜を形成する方法も挙げられる。親水性膜を形成する方法としては、刷毛塗りや、スプレーコートなどによって、ポリシラザンや、酸化チタンを含む光触媒などで構成される親水性膜をコーティングする方法が挙げられるが、結果として水との接触角が60度以下となる物質であれば特に限定されない。ここでいう接触角の測定方法は、接触角測定器の水平台に測定物を載せ、横方向から光を当てて投影拡大し、測定物と液滴との境界を基準にして、液滴端部を通る液滴への接線と、その基準がなす角度を読み取って測定される。しかしながら、前記親水性膜を形成する方法は、塗膜の耐久性の問題、コーティングの工程が追加されるためコスト高となることから、表面形状のみで擬似親水化、かつ防滑性を付与することが好ましい。
【0017】
前記小突起1の形状は、頂部8、及び底部10の面積が、上部からみた投影図において、1mm2より大きく25mm2以下となるように形成され、かつ頂部8から底部10にかけて広がるように形成される。このように、従来は突起の頂部に相当する部分の面積が50mm2以上で形成されているのに対し、本発明では頂部8を1mm2より大きく25mm2以下の小区画で形成させることで、使用者の滑り抵抗を増すことができる。一方で前記頂部8の面積が、1mm2以下の場合、使用者が足を踏み入れた際痛みを生じやすく、25mm2より大きい場合、実際の使用条件下で撥水性の皮脂等の有機物や、水垢等の無機物の付着によって、表面の撥水化により頂部8表面に水滴が残存するようになり乾燥時間が遅くなる。
【0018】
前記小突起1の側面9は、隣接する小突起1の側面9となす角度が100度以上140度以下で構成されることが好ましい。100度未満になると溝5、及び、側面部に付着する汚れの除去性が悪くなり、逆に140度より大きくなると使用者の足裏が溝5に接触するため、残水時に冷たさを感じる要因となる。ここで、前記小突起1の側面9と、隣接する小突起1の側面9のなす角度とは、小突起1の側面9が隣接する小突起1の側面9とぶつかって形成される角度(上向きの劣角と下向きの優角)のうち、上向きに形成される角度(劣角)を言う。小突起1の側部9と隣接する小突起1の側部9との間に平坦な溝5が設けられた場合は、小突起1の側部9と隣接する小突起1の側部9とはぶつからないが、このような場合は、それぞれの側部9からの延長線がぶつかって形成される角度(上向きの劣角と下向きの優角)のうち、上向きに形成される角度(劣角)を言う。
【0019】
前記小突起1は、頂部8と、溝5との高低差が0.5mm以上1.5mm以下となるよう構成される。これにより、使用者の足裏に触れる水の量を低減でき、冬季における残水によって感じる冷たさを低減することができる。頂部8と、溝5との高低差が0.5mm未満の場合、使用者の足裏が直接溝5と接触し、冷たさを感じてしまうことや、溝5に皮脂等の撥水汚れを付着させてしまい、排水、乾燥性能が低下し、乾きにくい床となる。1.5mmより大きい場合には、浴室床をスポンジ等でこすり洗いする際に、溝5の清掃性が悪くなり十分な清掃性が得られない。なお、頂部8と溝5との高低差とは、小突起1の底部10から頂点(稜線12の延長線が交わる点)に向かう稜線12の端(稜線12の上端)から底部10までの垂直距離を言い、具体的には、図2、図6、図8、図11に側部9として示した部分の高さである。このため、頂部8に設けた微小突起13や凸部14の高さは含まれない。
【0020】
本発明における溝5の形状は、前記小突起1の側部と隣接する小突起1の側部9の間に平坦な部分を設けずV字状に形成させてもよいが、好ましくは、平坦な部分を設けてこの部分を溝5とし、この溝5の幅を0.3mm以上5mm以下で形成させる。0.3mm未満の場合、溝5に汚れが堆積しやすく、汚れの除去性能が低下する。逆に5mmより大きくなると、使用者の足裏が溝5に接触するため、溝5に存在する残水で冷たさを感じてしまう。また、溝5と小突起1の交わる部分は、清掃性を向上させるために、エッジ状ではなく、R1(半径1mm)以上の角Rをつけることが好ましい。
【0021】
本発明における浴室床材4の素材は、樹脂、金属、ゴム等、特に限定されないが、好ましくは、成形性、量産性を考慮し、不飽和ポリエステル樹脂を主成分とするガラス繊維強化プラスチック(FRP)で構成され、シート・モールディング・コンパウンド(SMC)等の熱硬化性樹脂成形材料を成形型で加熱・加圧することにより得ることが出来る。
【0022】
本発明の浴室床材4は、以下のように作製された成形型を用いて成形される。これにより、小突起1の頂部8に微小突起13や凸部14を形成した浴室床材4を成形によって作製することが可能となり、量産性に優れた浴室床材4を提供することが可能となる。
【0023】
まず、図1、図2に示す浴室床材4を成形するための成形型は、一例として、放電加工とエッチングを組み合わせて作製することができる。まず、銅、もしくは、グラファイト材に、成形品形状(小突起1の角錐台形状が多数配置された形状)を切削加工により形成させ、これを電極とし、型彫放電加工によって成形型に角錐台形状の穴加工を施す。次に、成形型の頂部8に対応する部分以外にマスキング等を行い、成形型の頂部8に対応する箇所に、数10μmのうねりと数μmの微細凹凸を有する微小突起13の反転形状を、エッチングにより作製する。なお、微小突起13の反転形状は、小突起1の頂部8、側部9、及び、溝5を含む全体に亘って形成すると、小突起1の頂部8、側部9、及び、溝5を含む浴室床材4の全体が、微小突起13の形成により擬似親水化されるためより望ましい。形成されるうねりは、最高点と最低点の高さの差が30μm以上55μm以下に調整される。ここで、30μm未満の場合、すべり止め効果に劣り、55μmを越えると製造上難しくなる。上記方法によって小突起形状を作製された成形型は、全面にサンドブラストにより微細な凹凸を付与して親水化処理を行う。さらに汚染物質の除去性を高めるために、ガラスビーズの吹き付けを行って作製される。
【0024】
図5、図6に示す浴室床材4を成形するための成形型は、一例として、放電加工とエッチングを組み合わせて作製することができる。まず、銅、もしくは、グラファイト材に、成形品形状(小突起1の角錐台形状が多数配置された形状)を切削加工により形成させ、これを電極とし、型彫放電加工によって成形型に角錐台形状の穴加工を施す。次に、角錐台形状の穴の中で、頂部8に対応する部分の成形型の一部をエッチングにより腐食させ、凸部14に対応する凹部を作製する。ここでさらに、上記図1、図2の浴室床材4用の成形型と同様にして、微小突起13の反転形状をエッチングにより成形型に作製すると、さらに擬似親水化の効果が加わるため望ましい。最後に、上記図1、図2の浴室床材4用の成形型と同様にして、サンドブラストによる親水化処理、及び、ガラスビーズの吹き付けを行う。
【0025】
図7、図8に示す浴室床材4を成形するための成形型は、一例として、エッチング加工により作製することができる。まず、微小な四角形の開口を有する版を用いて成形型表面をマスキングし、エッチングを行う。次に前記版の開口よりも大きい四角形の開口を有する版を用いて成形型表面をマスキングし、エッチングを行う。このように版の開口形状を大きくし、多段階にエッチングを行うことで角錐台形状の穴加工を成形型に施すことができる。次に、前記方法により形成された成形型の再度頂部8のみをエッチングにより腐食させ、凸部14に対応する凹部を作製する。ここでさらに、上記図1、図2の浴室床材4用の成形型と同様にして、微小突起13の反転形状をエッチングにより成形型に作製すると、さらに擬似親水化の効果が加わるため望ましい。最後に、上記図1、図2の浴室床材4用の成形型と同様にして、サンドブラストによる親水化処理、及び、ガラスビーズの吹き付けを行う。
【0026】
図10、図11に示す浴室床材4を成形するための成形型は、一例として、エッチング加工により作製することができる。まず、微小な四角形の開口を有する版を用いて成形型表面をマスキングし、エッチングを行う。次に前記版の開口よりも大きい四角形の開口を有する版を用いて成形型表面をマスキングし、エッチングを行う。このように版の開口形状を大きくし、多段階にエッチングを行うことで角錐台形状の穴加工を成形型に施すことができる。次に、上記図1、図2の浴室床材4用の成形型と同様にして、微小突起13の反転形状をエッチングにより成形型に作製する。微小突起13の反転形状は、小突起1の頂部8、側部9、及び、溝5を含む全体に亘って形成すると、小突起1の頂部8、側部9、及び、溝5を含む浴室床材4の全体が、微小突起13の形成により擬似親水化されるためより望ましい。最後に、サンドブラストによる親水化処理、及び、ガラスビーズの吹き付けを行う。
【実施例】
【0027】
以下、実施例により本発明を説明する。
【0028】
(実施例1)
成形型に開口サイズの異なる版を用いて7段階のエッチング加工により角錐台形状を形成させ、再度、成形型の頂部8に対応する部分のみに微細凹凸をエッチングにより形成させ、砂の粒径の呼び200番のサンドブラストとガラスビーズの粒径の呼び150番の吹き付けにより成形型を作製した。前記成形型を用いて、熱硬化性樹脂成形材料であるSMCを用いて図10、図11の成形品を得た。得られた成形品は、頂部8に最高点と最低点の高さの差が50μm程度に形成されたうねり形状と5μm程度の微細凹凸を有する微小突起13を有し、底辺の1辺が3mmで、高さ0.8mm、側面と隣接する側面との間の角度が100度の角錐台形状であり、溝5幅1mmであった。また、頂部8の面積は、1.2mm2、底部10の面積は、9mm2であった。
【0029】
(実施例2)
放電加工により角錐台形状を作製した成形型に、微細凹凸をエッチングにより形成させ、砂の粒径の呼び200番のサンドブラストとガラスビーズの粒径の呼び150番の吹き付けにより成形型を作製した。前記成形型を用いて、熱硬化性樹脂成形材料であるSMCを用いて図1、図2の成形品を得た。得られた成形品は、頂部8に、最高点と最低点の高さの差が50μm程度に形成されたうねり形状と5μm程度の微細凹凸を有する微小突起13を有し、底辺の1辺が3mmで、高さ0.8mm、側面11と隣接する側面11との間の角度が103度の角錐台形状であり、溝5幅1mmであった。また、頂部8の面積は、1mm2、底部10の面積は、9mm2であった。
【0030】
(実施例3)
実施例1と同様の方法で形成された角錐台形状の成形型に、再度、頂部8に対応する部分のみにエッチングにより凸部14に対応する凹部を形成させ、成形型全面に砂の粒径の呼び200番のサンドブラストとガラスビーズの粒径の呼び150番の吹き付けにより成形型を作製した。前記成形型を用いて、熱硬化性樹脂成形材料であるSMCを用いて図7、図8の成形品を得た。得られた成形品は、頂部8に、幅1mm高さ0.15mmの略楕円球状の凸部14を有し、底辺の1辺が3mmで、高さ0.8mm、側面11と隣接する側面11との間の角度が100度の角錐台形状であり、溝5幅1mmであった。また、頂部8の面積は、1.2mm2、底部10の面積は、9mm2であった。
【0031】
(実施例4)
実施例2と同様の方法で形成された角錐台形状の成形型に、頂部8に対応する部分のみにエッチングにより凸部14に対応する凹部を形成させ、成形型全面に砂の粒径の呼び200番のサンドブラストとガラスビーズの粒径の呼び150番の吹き付けにより成形型を作製した。前記成形型を用いて、熱硬化性樹脂成形材料であるSMCを用いて図5、図6の成形品を得た。得られた成形品は、頂部8に、幅1mm高さ0.15mmの略楕円球状の凸部14を有し、底辺の1辺が3mmで、高さ0.8mm、側面11と隣接する側面11との間の角度が103度の角錐台形状であり、溝5幅1mmであった。また、頂部8の面積は、1mm2、底部10の面積は、9mm2であった。
【0032】
(実施例5)
成形型に開口サイズの異なる版を用いて7段階のエッチング加工により角錐台形状を形成させ、再度、成形型全面に微細凹凸をエッチングにより形成させ、砂の粒径の呼び200番のサンドブラストとガラスビーズの粒径の呼び150番の吹き付けにより成形型を作製した。前記成形型を用いて、熱硬化性樹脂成形材料であるSMCを用いて図12、図13の成形品を得た。得られた成形品は、小突起1の頂部8、側部9、及び、溝5を含む浴室床材4の全体に亘って、最高点と最低点の高さの差が50μm程度に形成されたうねり形状と5μm程度の微細凹凸を有する微小突起13を有し、底辺の1辺が3mmで、高さ0.8mm、側面11と隣接する側面11との間の角度が100度の角錐台形状であり、溝5幅1mmであった。また、頂部8の面積は、1.2mm2、底部10の面積は、9mm2であった。
【0033】
(比較例1)
エッチング加工にて、底辺の1辺が3mmで、高さ0.8mm、側面11と隣接する側面11との間の角度が100度の角錐台形状であり、溝5幅1mmである成形型を作製した。前記成形型を用いて、熱硬化性樹脂成形材料であるSMCを用いて微小突起13を有しない図14、図15の成形品を得た。得られた成形品は、底辺の1辺が3mmで、高さ0.8mm、側面11と隣接する側面11との間の角度が100度の角錐台形状であり、頂部8は半径約2mmの半球状で形成され、溝5幅1mmであった。また、頂部8の面積は、1.2mm2、底部10の面積は、9mm2であった。
【0034】
上記のようにして得られた実施例1〜実施例5のサンプルと比較例1のサンプルについて、滑り特性について評価した。水に濡れた状態では、実施例1〜5、比較例1ともに滑りにくい。一方で、5%石鹸水を散布した状態では、比較例1は滑りやすくなったが、実施例1〜実施例4のように頂部8に微小突起13または凸部14を設けることで、足裏に対し滑り抵抗を増大でき、滑りにくさを確保することができた。また、実施例5のように、微小突起13が、小突起1の頂部8、側部9、及び、溝5を含む浴室床材4の全体に亘って形成されると、小突起1の頂部8、側部9、及び、溝5を含む浴室床材4の全体が、微小突起13の形成により擬似親水化された。これにより、浴室床材4の表面では、小突起1と溝5の両者が乾いた状態で水をかけた場合(当初の水)、及び、溝5に水が残っている状態(溝5に一時捕水されている状態)で水をかけた場合の何れも、浴室床材4の表面に水玉を形成することなく、溝5を通って全体にすぐに広がった。したがって、小突起1の頂部8には水の残留はほとんどなくなるため、より滑りにくさを発揮でき、また、より使用者の足裏に触れる残水量を低減することができ、使用者の感じる冷たさを低減できる浴室床材を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施例2における小突起の平面図
【図2】図1のAA断面図
【図3】本発明の浴室床材の一例を備えた浴室
【図4】本発明の浴室床材の一例の平面図
【図5】本発明の実施例4における凸部を有する小突起の平面図
【図6】図5のBB断面図
【図7】本発明の実施例3における凸部を有する小突起の平面図
【図8】図7のCC断面図
【図9】図2の頂部拡大図
【図10】本発明の実施例1における小突起の平面図
【図11】図10のDD断面図
【図12】本発明の実施例5における小突起の平面図
【図13】図12のEE断面図
【図14】比較例1の小突起の平面図
【図15】図14のFF断面図
【符号の説明】
【0036】
1…小突起、2…浴室、3…浴槽載置部、4…洗い場(浴室床材)、5…溝、6…排水口部、7…排水勾配、8…頂部、9…側部、10…底部、11…側面、12…稜線、13…微小突起、14…凸部
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に浴室内の洗い場を形成する浴室用床材、及び、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から住宅等の浴室に組み込まれる樹脂製の洗い場パンは、使用者が身体を洗ったりする際に、脚を滑らせないように、また、実際の使用条件として石鹸、シャンプー等の混じった湯水等が存在しても滑りにくいように、表面に凹凸を備えた仕様で構成されている。また、この滑りにくさに加え、洗い場表面に島状に残水させず、かつ、翌日には残水が残ることのないように形成された洗い場パンが知られている。このような洗い場パンとして、例えば特許文献1に開示されているものが挙げられる。これによると、滑り止め用の凸部と、これら凸部の間に流れ込んだ水を途切れさせずに一時捕水できる状態に形成された流路とを備えることで、凸部表面に形成された水玉を前記流路内に一時捕水された水と接触することで誘引・導水され排水される構成となっている。
【0003】
さらに近年では、冬場に感じられる足裏から伝わる冷たさを低減させた洗い場パンが知られている。このような洗い場パンとして、ガラスバルーン等の中空粒子を充填させたSMCを用いて熱伝導率を低下させたものや、特許文献2に開示されているように足裏の接触面積の低減によって足裏の温度低下を低減させるものが知られている。
【特許文献1】特許第3589244号公報
【特許文献2】特開2006−132109号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2のような従来の凹凸パターンでは、洗い場表面が水に濡れた状態と石鹸水等の湯水の濡れた状態とでは、滑りにくさに差が生じてしまう。これは、水単独の場合と比べ、洗い場表面が、石鹸に含まれる界面活性剤の作用により親水化されるため、洗い場表面に薄い水膜を形成することに起因する。また、一般的に浴室床の凹凸は、使用者の足裏を刺激しないように角にR加工が施されており、使用者が歩行する際に抵抗とならないよう配慮されていることも滑りやすくなる原因となる。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたもので、洗い場表面が石鹸水により濡れた状態となった場合でも、水単独で存在する場合と同様に、滑りにくさを発揮でき、また、使用者の足裏に触れる残水量を低減し、特に冬季において使用者の感じる冷たさを低減できる浴室床材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、次のものに関する。
(1) 表面に多数の小突起と、前記小突起と小突起との間に排水路となる溝を有する浴室床材において、前記小突起は、頂部と、側部と、底部とを備え、前記側部が、頂部から底部に向かって広がるように形成され、かつ、複数の側面と、前記側面同士の境界に形成される稜線とを有し、前記頂部が、この頂部と一体的に形成された微小突起を有する浴室床材。
(2) (1)において、小突起が四角錐形状であり、前記小突起の頂部に形成される微小突起が、数10μmの大きなうねりと数μmの微細凹凸を組合せた形状である浴室床材。
(3) (1)又は(2)において、小突起の頂部、側部、及び、溝が、微小突起の形成により親水化され、前記小突起の頂部、及び底部の面積が1mm2より大きく25mm2以下であり、前記小突起の高さは0.5mm〜1.5mmである浴室床材。
(4) (1)乃至(3)の何れかにおいて、四角形の開口を有する開口サイズの異なる複数の版を用い、多段階にエッチングを行うことにより小突起の反転形状を形成した成形用型を用いて、熱硬化性樹脂成形材料を加熱・加圧して得られる浴室床材。
(5) (1)乃至(4)の何れかにおいて、小突起の反転となるように加工された電極を用い、形彫放電加工を行うことにより小突起の反転形状を形成した成形用型を用いて、熱硬化性樹脂成形材料を加熱・加圧して得られる浴室床材。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、洗い場表面が石鹸水により濡れた状態となった場合でも、水単独で存在する場合と同様に、滑りにくさを発揮でき、また、使用者の足裏に触れる残水量を低減し、特に冬季において使用者の感じる冷たさを低減できる浴室床材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の浴室床材は、図1、図2に示すような小突起1を多数配置して形成される。本発明の浴室床材は、浴室の洗い場に用いられるものであり、一例としては、図3に示す浴室2の浴槽載置部3に隣接する洗い場4に相当する部分であって、浴槽載置部3の防水パンと一体、もしくは別体で形成されるものが挙げられる。前記小突起1は、図4のように多数配置して形成され、小突起と小突起の間には排水路となる溝5を有して構成される。
【0009】
また、図3に示すように、前記洗い場4は、排水のための排水口部6を有し、前記排水口部6が最も低くなるように図中の矢印7で示す方向に排水勾配が取られ、前記溝5は、排水勾配と同一勾配にて形成される。その結果、洗い場4に散水された水は、前記溝5を経由して排水口部6に流れ、排水される。
【0010】
前記小突起1の形状は、頂部8、側部9、底部10を有する角錐台形状であり、図2に示すように、側部9が頂部8から底部10の溝5に向かって広がるように構成される。図1に示すように、前記側部9は、複数の側面11と、前記側面11同士の境界に形成される稜線12とを有する。
【0011】
ここで、頂部8とは、小突起1の上部に形成される稜線12を有しない部分を言い、より詳細には、平面視において小突起1の頂点(複数の稜線12の延長線が交わる点)を含み、底部10から頂点に向かう複数の稜線12の端(稜線12の上端)を結んで形成される領域を言う。具体的には、図1、図2に頂部8として示したような小突起1上部の比較的平坦な領域、図5、図6に頂部8として示したような小突起1上部の平坦部と半球または楕円球状を組合せた領域、または、図7、図8に頂部8として示したような小突起1上部の半球または楕円球状を複数組合せた領域が挙げられる。なお、稜線12の有無の判定は、暗くした室内で、小突起1の側面11のうちの一つに対して垂直に光を照射したときに、明暗の境界線が明瞭か否かを目視で判定することにより行った。即ち、明暗の境界線が不明瞭になる手前の位置を稜線12の端(稜線12の上端)とした。
【0012】
また、側部9とは、頂部8から底部10に到る小突起1の側面11及び稜線12を含む部分を言う。前記稜線12の数は、特に限定されないが、好ましくは4本の稜線12を有する四角錐台形状で形成される。これによって、特に溝5を清掃するときに、溝5が2方向に形成されていることで、使用者は2方向の溝5に沿って清掃できる。一方で、前記稜線12が3本である三角錐台形状の場合、清掃時に溝5が三方向に形成され、逆に5本、6本と稜線12の数が増加し、さらに円錐台形状となった場合、溝5の清掃は円を描くように清掃する必要が生じ、十分に清掃できないといった問題が生じる。なお、稜線12は、後述する微小突起13や凸部14とともに、滑り止め効果も有する。
【0013】
図1、図2の小突起1の頂部8には、図9に示すように、前記小突起1よりもさらに小さい微小突起13が一体的に設けられる。このように、頂部8に微小突起13を設けることで、滑り抵抗が増大し、石鹸水で親水化され表面が濡れた状態でも滑り止め性能を維持できる。前記微小突起13は、数10μmの大きなうねりと数μmの微細凹凸を組合せて形成される。これによって、小突起1の頂部8の擬似的な親水化に加え、足で踏んだときに、凹部の中の水が逃げやすくなることで滑りにくくすることができる。また、図5、図6に示す形状、又は、図7、図8に示す形状のような、頂部8にさらに凸部14を形成させた小突起1の頂部8に、数10μmの大きなうねりと数μmの微細凹凸を組合せて形成される微小突起13を形成させた場合は、さらに滑り抵抗を増大させることができるので望ましい。微小突起13は小突起1と一体的に設けられるので、例えば成形用型に小突起1と微小突起13の反転形状を形成しておくことで、成形の際に、小突起1と微小突起13を一括して形成することが可能となり、量産性に優れている。
【0014】
小突起1の頂部8、側部9、及び、溝5が、微小突起13の形成により擬似親水化されることがより好ましい。このようにして、微小突起13が、小突起1の頂部8、側部9、及び、溝5を含む浴室床材4の全体に亘って形成されると、小突起1の頂部8、側部9、及び、溝5を含む浴室床材4の全体が、微小突起13の形成により擬似親水化される。これにより、浴室床材4の表面では、小突起1と溝5の両者が乾いた状態で水をかけた場合(当初の水)、及び、溝5に水が残っている状態(溝5に一時捕水されている状態)で水をかけた場合の何れも、浴室床材4の表面に水玉を形成することなく、溝5を通って全体にすぐに広がる。したがって、小突起1の頂部8には水の残留はほとんどなくなるため、より滑りにくさを発揮でき、また、より使用者の足裏に触れる残水量を低減することができ、使用者の感じる冷たさを低減できる浴室床材を提供することができる。
【0015】
擬似親水化のための微小突起13は、エッチング処理、形彫放電加工、サンドブラストを行うことによって、微小突起13に対応する凹凸形状(反転形状)を設けられた成形型を用いて形成される。
【0016】
また、親水化するために、前記微小突起13の形成の代わりに親水性膜を形成する方法も挙げられる。親水性膜を形成する方法としては、刷毛塗りや、スプレーコートなどによって、ポリシラザンや、酸化チタンを含む光触媒などで構成される親水性膜をコーティングする方法が挙げられるが、結果として水との接触角が60度以下となる物質であれば特に限定されない。ここでいう接触角の測定方法は、接触角測定器の水平台に測定物を載せ、横方向から光を当てて投影拡大し、測定物と液滴との境界を基準にして、液滴端部を通る液滴への接線と、その基準がなす角度を読み取って測定される。しかしながら、前記親水性膜を形成する方法は、塗膜の耐久性の問題、コーティングの工程が追加されるためコスト高となることから、表面形状のみで擬似親水化、かつ防滑性を付与することが好ましい。
【0017】
前記小突起1の形状は、頂部8、及び底部10の面積が、上部からみた投影図において、1mm2より大きく25mm2以下となるように形成され、かつ頂部8から底部10にかけて広がるように形成される。このように、従来は突起の頂部に相当する部分の面積が50mm2以上で形成されているのに対し、本発明では頂部8を1mm2より大きく25mm2以下の小区画で形成させることで、使用者の滑り抵抗を増すことができる。一方で前記頂部8の面積が、1mm2以下の場合、使用者が足を踏み入れた際痛みを生じやすく、25mm2より大きい場合、実際の使用条件下で撥水性の皮脂等の有機物や、水垢等の無機物の付着によって、表面の撥水化により頂部8表面に水滴が残存するようになり乾燥時間が遅くなる。
【0018】
前記小突起1の側面9は、隣接する小突起1の側面9となす角度が100度以上140度以下で構成されることが好ましい。100度未満になると溝5、及び、側面部に付着する汚れの除去性が悪くなり、逆に140度より大きくなると使用者の足裏が溝5に接触するため、残水時に冷たさを感じる要因となる。ここで、前記小突起1の側面9と、隣接する小突起1の側面9のなす角度とは、小突起1の側面9が隣接する小突起1の側面9とぶつかって形成される角度(上向きの劣角と下向きの優角)のうち、上向きに形成される角度(劣角)を言う。小突起1の側部9と隣接する小突起1の側部9との間に平坦な溝5が設けられた場合は、小突起1の側部9と隣接する小突起1の側部9とはぶつからないが、このような場合は、それぞれの側部9からの延長線がぶつかって形成される角度(上向きの劣角と下向きの優角)のうち、上向きに形成される角度(劣角)を言う。
【0019】
前記小突起1は、頂部8と、溝5との高低差が0.5mm以上1.5mm以下となるよう構成される。これにより、使用者の足裏に触れる水の量を低減でき、冬季における残水によって感じる冷たさを低減することができる。頂部8と、溝5との高低差が0.5mm未満の場合、使用者の足裏が直接溝5と接触し、冷たさを感じてしまうことや、溝5に皮脂等の撥水汚れを付着させてしまい、排水、乾燥性能が低下し、乾きにくい床となる。1.5mmより大きい場合には、浴室床をスポンジ等でこすり洗いする際に、溝5の清掃性が悪くなり十分な清掃性が得られない。なお、頂部8と溝5との高低差とは、小突起1の底部10から頂点(稜線12の延長線が交わる点)に向かう稜線12の端(稜線12の上端)から底部10までの垂直距離を言い、具体的には、図2、図6、図8、図11に側部9として示した部分の高さである。このため、頂部8に設けた微小突起13や凸部14の高さは含まれない。
【0020】
本発明における溝5の形状は、前記小突起1の側部と隣接する小突起1の側部9の間に平坦な部分を設けずV字状に形成させてもよいが、好ましくは、平坦な部分を設けてこの部分を溝5とし、この溝5の幅を0.3mm以上5mm以下で形成させる。0.3mm未満の場合、溝5に汚れが堆積しやすく、汚れの除去性能が低下する。逆に5mmより大きくなると、使用者の足裏が溝5に接触するため、溝5に存在する残水で冷たさを感じてしまう。また、溝5と小突起1の交わる部分は、清掃性を向上させるために、エッジ状ではなく、R1(半径1mm)以上の角Rをつけることが好ましい。
【0021】
本発明における浴室床材4の素材は、樹脂、金属、ゴム等、特に限定されないが、好ましくは、成形性、量産性を考慮し、不飽和ポリエステル樹脂を主成分とするガラス繊維強化プラスチック(FRP)で構成され、シート・モールディング・コンパウンド(SMC)等の熱硬化性樹脂成形材料を成形型で加熱・加圧することにより得ることが出来る。
【0022】
本発明の浴室床材4は、以下のように作製された成形型を用いて成形される。これにより、小突起1の頂部8に微小突起13や凸部14を形成した浴室床材4を成形によって作製することが可能となり、量産性に優れた浴室床材4を提供することが可能となる。
【0023】
まず、図1、図2に示す浴室床材4を成形するための成形型は、一例として、放電加工とエッチングを組み合わせて作製することができる。まず、銅、もしくは、グラファイト材に、成形品形状(小突起1の角錐台形状が多数配置された形状)を切削加工により形成させ、これを電極とし、型彫放電加工によって成形型に角錐台形状の穴加工を施す。次に、成形型の頂部8に対応する部分以外にマスキング等を行い、成形型の頂部8に対応する箇所に、数10μmのうねりと数μmの微細凹凸を有する微小突起13の反転形状を、エッチングにより作製する。なお、微小突起13の反転形状は、小突起1の頂部8、側部9、及び、溝5を含む全体に亘って形成すると、小突起1の頂部8、側部9、及び、溝5を含む浴室床材4の全体が、微小突起13の形成により擬似親水化されるためより望ましい。形成されるうねりは、最高点と最低点の高さの差が30μm以上55μm以下に調整される。ここで、30μm未満の場合、すべり止め効果に劣り、55μmを越えると製造上難しくなる。上記方法によって小突起形状を作製された成形型は、全面にサンドブラストにより微細な凹凸を付与して親水化処理を行う。さらに汚染物質の除去性を高めるために、ガラスビーズの吹き付けを行って作製される。
【0024】
図5、図6に示す浴室床材4を成形するための成形型は、一例として、放電加工とエッチングを組み合わせて作製することができる。まず、銅、もしくは、グラファイト材に、成形品形状(小突起1の角錐台形状が多数配置された形状)を切削加工により形成させ、これを電極とし、型彫放電加工によって成形型に角錐台形状の穴加工を施す。次に、角錐台形状の穴の中で、頂部8に対応する部分の成形型の一部をエッチングにより腐食させ、凸部14に対応する凹部を作製する。ここでさらに、上記図1、図2の浴室床材4用の成形型と同様にして、微小突起13の反転形状をエッチングにより成形型に作製すると、さらに擬似親水化の効果が加わるため望ましい。最後に、上記図1、図2の浴室床材4用の成形型と同様にして、サンドブラストによる親水化処理、及び、ガラスビーズの吹き付けを行う。
【0025】
図7、図8に示す浴室床材4を成形するための成形型は、一例として、エッチング加工により作製することができる。まず、微小な四角形の開口を有する版を用いて成形型表面をマスキングし、エッチングを行う。次に前記版の開口よりも大きい四角形の開口を有する版を用いて成形型表面をマスキングし、エッチングを行う。このように版の開口形状を大きくし、多段階にエッチングを行うことで角錐台形状の穴加工を成形型に施すことができる。次に、前記方法により形成された成形型の再度頂部8のみをエッチングにより腐食させ、凸部14に対応する凹部を作製する。ここでさらに、上記図1、図2の浴室床材4用の成形型と同様にして、微小突起13の反転形状をエッチングにより成形型に作製すると、さらに擬似親水化の効果が加わるため望ましい。最後に、上記図1、図2の浴室床材4用の成形型と同様にして、サンドブラストによる親水化処理、及び、ガラスビーズの吹き付けを行う。
【0026】
図10、図11に示す浴室床材4を成形するための成形型は、一例として、エッチング加工により作製することができる。まず、微小な四角形の開口を有する版を用いて成形型表面をマスキングし、エッチングを行う。次に前記版の開口よりも大きい四角形の開口を有する版を用いて成形型表面をマスキングし、エッチングを行う。このように版の開口形状を大きくし、多段階にエッチングを行うことで角錐台形状の穴加工を成形型に施すことができる。次に、上記図1、図2の浴室床材4用の成形型と同様にして、微小突起13の反転形状をエッチングにより成形型に作製する。微小突起13の反転形状は、小突起1の頂部8、側部9、及び、溝5を含む全体に亘って形成すると、小突起1の頂部8、側部9、及び、溝5を含む浴室床材4の全体が、微小突起13の形成により擬似親水化されるためより望ましい。最後に、サンドブラストによる親水化処理、及び、ガラスビーズの吹き付けを行う。
【実施例】
【0027】
以下、実施例により本発明を説明する。
【0028】
(実施例1)
成形型に開口サイズの異なる版を用いて7段階のエッチング加工により角錐台形状を形成させ、再度、成形型の頂部8に対応する部分のみに微細凹凸をエッチングにより形成させ、砂の粒径の呼び200番のサンドブラストとガラスビーズの粒径の呼び150番の吹き付けにより成形型を作製した。前記成形型を用いて、熱硬化性樹脂成形材料であるSMCを用いて図10、図11の成形品を得た。得られた成形品は、頂部8に最高点と最低点の高さの差が50μm程度に形成されたうねり形状と5μm程度の微細凹凸を有する微小突起13を有し、底辺の1辺が3mmで、高さ0.8mm、側面と隣接する側面との間の角度が100度の角錐台形状であり、溝5幅1mmであった。また、頂部8の面積は、1.2mm2、底部10の面積は、9mm2であった。
【0029】
(実施例2)
放電加工により角錐台形状を作製した成形型に、微細凹凸をエッチングにより形成させ、砂の粒径の呼び200番のサンドブラストとガラスビーズの粒径の呼び150番の吹き付けにより成形型を作製した。前記成形型を用いて、熱硬化性樹脂成形材料であるSMCを用いて図1、図2の成形品を得た。得られた成形品は、頂部8に、最高点と最低点の高さの差が50μm程度に形成されたうねり形状と5μm程度の微細凹凸を有する微小突起13を有し、底辺の1辺が3mmで、高さ0.8mm、側面11と隣接する側面11との間の角度が103度の角錐台形状であり、溝5幅1mmであった。また、頂部8の面積は、1mm2、底部10の面積は、9mm2であった。
【0030】
(実施例3)
実施例1と同様の方法で形成された角錐台形状の成形型に、再度、頂部8に対応する部分のみにエッチングにより凸部14に対応する凹部を形成させ、成形型全面に砂の粒径の呼び200番のサンドブラストとガラスビーズの粒径の呼び150番の吹き付けにより成形型を作製した。前記成形型を用いて、熱硬化性樹脂成形材料であるSMCを用いて図7、図8の成形品を得た。得られた成形品は、頂部8に、幅1mm高さ0.15mmの略楕円球状の凸部14を有し、底辺の1辺が3mmで、高さ0.8mm、側面11と隣接する側面11との間の角度が100度の角錐台形状であり、溝5幅1mmであった。また、頂部8の面積は、1.2mm2、底部10の面積は、9mm2であった。
【0031】
(実施例4)
実施例2と同様の方法で形成された角錐台形状の成形型に、頂部8に対応する部分のみにエッチングにより凸部14に対応する凹部を形成させ、成形型全面に砂の粒径の呼び200番のサンドブラストとガラスビーズの粒径の呼び150番の吹き付けにより成形型を作製した。前記成形型を用いて、熱硬化性樹脂成形材料であるSMCを用いて図5、図6の成形品を得た。得られた成形品は、頂部8に、幅1mm高さ0.15mmの略楕円球状の凸部14を有し、底辺の1辺が3mmで、高さ0.8mm、側面11と隣接する側面11との間の角度が103度の角錐台形状であり、溝5幅1mmであった。また、頂部8の面積は、1mm2、底部10の面積は、9mm2であった。
【0032】
(実施例5)
成形型に開口サイズの異なる版を用いて7段階のエッチング加工により角錐台形状を形成させ、再度、成形型全面に微細凹凸をエッチングにより形成させ、砂の粒径の呼び200番のサンドブラストとガラスビーズの粒径の呼び150番の吹き付けにより成形型を作製した。前記成形型を用いて、熱硬化性樹脂成形材料であるSMCを用いて図12、図13の成形品を得た。得られた成形品は、小突起1の頂部8、側部9、及び、溝5を含む浴室床材4の全体に亘って、最高点と最低点の高さの差が50μm程度に形成されたうねり形状と5μm程度の微細凹凸を有する微小突起13を有し、底辺の1辺が3mmで、高さ0.8mm、側面11と隣接する側面11との間の角度が100度の角錐台形状であり、溝5幅1mmであった。また、頂部8の面積は、1.2mm2、底部10の面積は、9mm2であった。
【0033】
(比較例1)
エッチング加工にて、底辺の1辺が3mmで、高さ0.8mm、側面11と隣接する側面11との間の角度が100度の角錐台形状であり、溝5幅1mmである成形型を作製した。前記成形型を用いて、熱硬化性樹脂成形材料であるSMCを用いて微小突起13を有しない図14、図15の成形品を得た。得られた成形品は、底辺の1辺が3mmで、高さ0.8mm、側面11と隣接する側面11との間の角度が100度の角錐台形状であり、頂部8は半径約2mmの半球状で形成され、溝5幅1mmであった。また、頂部8の面積は、1.2mm2、底部10の面積は、9mm2であった。
【0034】
上記のようにして得られた実施例1〜実施例5のサンプルと比較例1のサンプルについて、滑り特性について評価した。水に濡れた状態では、実施例1〜5、比較例1ともに滑りにくい。一方で、5%石鹸水を散布した状態では、比較例1は滑りやすくなったが、実施例1〜実施例4のように頂部8に微小突起13または凸部14を設けることで、足裏に対し滑り抵抗を増大でき、滑りにくさを確保することができた。また、実施例5のように、微小突起13が、小突起1の頂部8、側部9、及び、溝5を含む浴室床材4の全体に亘って形成されると、小突起1の頂部8、側部9、及び、溝5を含む浴室床材4の全体が、微小突起13の形成により擬似親水化された。これにより、浴室床材4の表面では、小突起1と溝5の両者が乾いた状態で水をかけた場合(当初の水)、及び、溝5に水が残っている状態(溝5に一時捕水されている状態)で水をかけた場合の何れも、浴室床材4の表面に水玉を形成することなく、溝5を通って全体にすぐに広がった。したがって、小突起1の頂部8には水の残留はほとんどなくなるため、より滑りにくさを発揮でき、また、より使用者の足裏に触れる残水量を低減することができ、使用者の感じる冷たさを低減できる浴室床材を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施例2における小突起の平面図
【図2】図1のAA断面図
【図3】本発明の浴室床材の一例を備えた浴室
【図4】本発明の浴室床材の一例の平面図
【図5】本発明の実施例4における凸部を有する小突起の平面図
【図6】図5のBB断面図
【図7】本発明の実施例3における凸部を有する小突起の平面図
【図8】図7のCC断面図
【図9】図2の頂部拡大図
【図10】本発明の実施例1における小突起の平面図
【図11】図10のDD断面図
【図12】本発明の実施例5における小突起の平面図
【図13】図12のEE断面図
【図14】比較例1の小突起の平面図
【図15】図14のFF断面図
【符号の説明】
【0036】
1…小突起、2…浴室、3…浴槽載置部、4…洗い場(浴室床材)、5…溝、6…排水口部、7…排水勾配、8…頂部、9…側部、10…底部、11…側面、12…稜線、13…微小突起、14…凸部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に多数の小突起と、前記小突起と小突起との間に排水路となる溝を有する浴室床材において、
前記小突起は、頂部と、側部と、底部とを備え、
前記側部が、頂部から底部に向かって広がるように形成され、かつ、複数の側面と、前記側面同士の境界に形成される稜線とを有し、
前記頂部が、この頂部と一体的に形成された微小突起を有する浴室床材。
【請求項2】
請求項1において、
小突起が四角錐形状であり、
前記小突起の頂部に形成される微小突起が、数10μmの大きなうねりと数μmの微細凹凸を組合せた形状である浴室床材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
小突起の頂部、側部、及び、溝が、微小突起の形成により親水化され、
前記小突起の頂部、及び底部の面積が1mm2より大きく25mm2以下であり、
前記小突起の高さは0.5mm〜1.5mmである浴室床材。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れかにおいて、
四角形の開口を有する開口サイズの異なる複数の版を用い、多段階にエッチングを行うことにより小突起の反転形状を形成した成形用型を用いて、熱硬化性樹脂成形材料を加熱・加圧して得られる浴室床材。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れかにおいて、
小突起の反転となるように加工された電極を用い、形彫放電加工を行うことにより小突起の反転形状を形成した成形用型を用いて、熱硬化性樹脂成形材料を加熱・加圧して得られる浴室床材。
【請求項1】
表面に多数の小突起と、前記小突起と小突起との間に排水路となる溝を有する浴室床材において、
前記小突起は、頂部と、側部と、底部とを備え、
前記側部が、頂部から底部に向かって広がるように形成され、かつ、複数の側面と、前記側面同士の境界に形成される稜線とを有し、
前記頂部が、この頂部と一体的に形成された微小突起を有する浴室床材。
【請求項2】
請求項1において、
小突起が四角錐形状であり、
前記小突起の頂部に形成される微小突起が、数10μmの大きなうねりと数μmの微細凹凸を組合せた形状である浴室床材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
小突起の頂部、側部、及び、溝が、微小突起の形成により親水化され、
前記小突起の頂部、及び底部の面積が1mm2より大きく25mm2以下であり、
前記小突起の高さは0.5mm〜1.5mmである浴室床材。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れかにおいて、
四角形の開口を有する開口サイズの異なる複数の版を用い、多段階にエッチングを行うことにより小突起の反転形状を形成した成形用型を用いて、熱硬化性樹脂成形材料を加熱・加圧して得られる浴室床材。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れかにおいて、
小突起の反転となるように加工された電極を用い、形彫放電加工を行うことにより小突起の反転形状を形成した成形用型を用いて、熱硬化性樹脂成形材料を加熱・加圧して得られる浴室床材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−138367(P2009−138367A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−313461(P2007−313461)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【出願人】(301050924)株式会社日立ハウステック (234)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【出願人】(301050924)株式会社日立ハウステック (234)
【Fターム(参考)】
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