説明

消防用車両の車両ヘッド部の構造

【課題】火災現場等において火災等が発生している場所を、車内から迅速に発見することができる消防用車両の車両ヘッド部の構造を提供すること。
【解決手段】消防用車両1の車両ヘッド部2の構造は、車両ヘッド部2の上部に、車内20の天井位置を高くするためのハイルーフ部3を設けてなる。ハイルーフ部3は、その天井部分及びフロント部分に車外を視認するための透明窓41、42を有している。また、車内足場位置から天井位置までのハイルーフ部3の車内天井高さXは、約1900mmに設定してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消防用車両の車両ヘッド部において、車外の視認を容易にするためのハイルーフ部を設けた構造に関する。
【背景技術】
【0002】
消防ポンプ自動車、救助工作車等の消防用車両は、火災現場等に急行し、迅速な救助活動及び消火活動等を行うために用いる。特に、火災現場に逸早く到着する先着隊においては、消防用車両に搭乗した状態で、何処で火災等が発生しているのかを迅速に発見する必要がある。
【0003】
しかしながら、従来の消防用車両においては、車両の外部を視認することができる窓部が、フロントガラスと、左右のサイドドアのガラスとに限られている。そのため、消防士等が火災現場等に急行し、車内から火災等が発生している場所を迅速に発見することは必ずしも容易ではなかった。
【0004】
なお、消防用車両としては、例えば、特許文献1に開示された消防車と救急車との機能を併せ持つ車両があり、天井部にサンルーフを設けた車両としては、例えば、特許文献2に開示されたものがある。
【0005】
【特許文献1】特開2004−50976号公報
【特許文献2】特開2004−114923号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、火災現場等において火災等が発生している場所を、車内から迅速に発見することができる消防用車両の車両ヘッド部の構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、消防用車両の車両ヘッド部の上部に、車内の天井位置を高くするためのハイルーフ部を設けてなり、
該ハイルーフ部は、その天井部分及びフロント部分に車外を視認するための透明窓を有しており、
上記ハイルーフ部の車内天井高さは、搭乗者が立ち上がることができる高さに設定してあることを特徴とする消防用車両の車両ヘッド部の構造にある(請求項1)。
【0008】
本発明の車両ヘッド部の構造においては、上記ハイルーフ部の天井部分及びフロント部分に上記透明窓を形成している。そのため、車両ヘッド部に搭乗し、火災現場等に到着した消防士等の搭乗者は、車両ヘッド部のフロントガラス及び左右のサイドガラスからだけでなく、上記透明窓を介しても車外の状況を視認することができる。
【0009】
また、本発明の車両ヘッド部の構造においては、ハイルーフ部の車内天井高さを、車両への搭乗者が立ち上がることができる高さに設定している。そのため、車両ヘッド部に搭乗し、火災現場等に到着した消防士等の搭乗者は、車両ヘッド部内において立ち上がった状態でも、上記透明窓を介して車外の状況を視認することができる。
【0010】
それ故、本発明の消防用車両の車両ヘッド部の構造によれば、火災現場等に到着した消防士等の搭乗者が、火災等が発生している場所を車内から迅速に発見することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
上述した本発明における好ましい実施の形態につき説明する。
本発明において、上記車両ヘッド部とは、消防用車両において、搭乗者が搭乗する前側操縦部分のことをいい、車両の前輪、フロントガラス及び左右のサイドガラス等が配置された部分のことをいう。
また、上記ハイルーフ部における透明窓は、透明のFRP(繊維強化プラスチック)により形成することが好ましい。この場合には、軽量かつ高い強度で透明窓を形成することができる。また、透明窓は、FRP以外の透明な素材によっても形成することができる。
【0012】
また、上記ハイルーフ部の車内天井高さは、車内足場位置から1600〜2000mmの高さに設定してあることが好ましい(請求項2)。
この場合には、車両ヘッド部への搭乗者は、車両ヘッド部内において立ち上がることが容易になり、上記透明窓を介して車外の状況を一層容易に視認することができる。
なお、車両ヘッド部内において、搭乗者が立ち上がることができる高さは、搭乗者の身長差があるため、必ずしも直立して立ち上がることができる高さだけをいうのではなく、前かがみの状態で立ち上がることができる高さであってもよい。
【0013】
また、上記車両ヘッド部内におけるシートの背もたれ部には、搭乗者が当該シートに座った状態で装着可能な呼吸器ボンベが埋設してあることが好ましい(請求項3)。
この場合には、車両ヘッド部への搭乗者は、シートに座ったままの状態で呼吸器ボンベを装着し、この呼吸器ボンベを装着した状態で、車両ヘッド部内において立ち上がることができる。そのため、搭乗者は、火災現場等において火災等が発生している場所を発見したときには、呼吸器ボンベを装着した状態で、迅速に火災等が発生している場所に向かうことができる。
また、呼吸器ボンベとしては、空気呼吸器ボンベ等を用いることができる。
【0014】
また、呼吸器ボンベは、車両ヘッド部内におけるシートの背もたれ部以外にも、シートの前方又は左右に配設しておくことができる。この場合には、車両ヘッド部への搭乗者は、車内に配設した呼吸器ボンベを装着し、この呼吸器ボンベを装着した状態で、車両ヘッド部内において立ち上がることができる。
【0015】
また、上記天井部分に形成した透明窓は、左右のサイド部分にも連続して形成してあることが好ましい(請求項4)。
この場合には、車両ヘッド部への搭乗者が、透明窓を介して車外の状況を視認することが一層容易になる。
【0016】
また、上記ハイルーフ部は、そのリア部分にも上記透明窓を形成してなることが好ましい(請求項5)。
この場合には、車両ヘッド部への搭乗者は、ハイルーフ部のリア部分における透明窓を介しても車外の状況を視認することができる。
【実施例】
【0017】
以下に、本発明の消防用車両1の車両ヘッド部2の構造にかかる実施例につき、図面と共に説明する。
(実施例1)
本例の消防用車両1の車両ヘッド部2の構造は、図1、図3に示すごとく、車両ヘッド部2の上部に、車内20の天井位置201を高くするためのハイルーフ部3を設けてなる。このハイルーフ部3は、その天井部分及びフロント部分に車外を視認するための透明窓41、42を有している。また、図2に示すごとく、車内足場位置202から天井位置201までのハイルーフ部3の車内天井高さXは、約1900mm(1850〜1950mm)に設定してある。
【0018】
以下に、本例の消防用車両1の車両ヘッド部2の構造につき、図1〜図3と共に詳説する。
本例の車両ヘッド部2の構造は、消防ポンプ自動車又は救助工作車等の消防用車両1において、搭乗者6による車外の視認を容易にするための工夫を行っている。
図1に示すごとく、本例の消防用車両1の車両ヘッド部2(前側操縦部)においては、車両の操縦部21、シート22、前輪23、フロントガラス24及び左右のサイドドアのガラス25等が配置されている。なお、車両ヘッド部2の後方には、例えば、消防ポンプ自動車の場合には、ポンプ、ホース等が搭載され、救助工作車の場合には、救助工作用の設備等が搭載されている。
【0019】
また、図1、図2に示すごとく、本例のハイルーフ部3の天井部分に形成した透明窓41は、左右のサイド部分にも連続して形成してある。また、本例のハイルーフ部3においては、そのリア部分にも透明窓43が形成してある。そして、本例のハイルーフ部3は、車両ヘッド部2に搭乗した搭乗者6が、天井部分、フロント部分、サイド部分及びリア部分の各方向から車外を視認できるようになっている。
【0020】
また、本例のハイルーフ部3における各透明窓41〜43は、透明のFRP(繊維強化プラスチック)により形成してある。
また、図3に示すごとく、本例の車両ヘッド部2内におけるシート22の背もたれ部221には、搭乗者6が当該シート22に座った状態で装着可能な呼吸器ボンベ5が埋設してある。この呼吸器ボンベ5は、火災現場等において消防士等の搭乗者6が救助活動又は消火活動を行うときに、呼吸を確保するために用いるものである。
また、本例の車両ヘッド部2内においては、前後2列にシート22が配設されており、呼吸器ボンベ5は、後部座席のシート22の背もたれ部221に埋設してある。なお、呼吸器ボンベ5は、前部座席のシート22の背もたれ部221に埋設することもできる。
【0021】
本例の車両ヘッド部2の構造においては、ハイルーフ部3の天井部分、フロント部分、サイド部分及びリア部分の各方向に上記透明窓41〜43を形成している。そのため、車両ヘッド部2に搭乗し、火災現場等に到着した消防士等の搭乗者6は、車両ヘッド部2のフロントガラス24及び左右のサイドドアのガラス25からだけでなく、上記各透明窓41〜43を介して、車両ヘッド部2の上方、前方、側方及び後方の各方向に向いて、車外の状況を視認することができる。
【0022】
また、本例の車両ヘッド部2の構造においては、ハイルーフ部3の車内天井高さXを、約1900mmに設定している。そのため、車両ヘッド部2に搭乗し、火災現場等に到着した消防士等の搭乗者6は、車両ヘッド部2内において立ち上がった状態でも、上記各透明窓41〜43を介して車外の状況を視認することができる。
【0023】
さらに、車両ヘッド部2への搭乗者6は、シート22に座ったままの状態で呼吸器ボンベ5を装着し、この呼吸器ボンベ5を装着した状態で、車両ヘッド部2内において立ち上がることができる。そのため、搭乗者6は、火災現場等において火災等が発生している場所を発見したときには、呼吸器ボンベ5を装着した状態で、迅速に火災等が発生している場所に向かうことができる。
【0024】
それ故、本例の消防用車両1の車両ヘッド部2の構造によれば、火災現場等に到着した消防士等の搭乗者6が、火災等が発生している場所を車両ヘッド部2内から迅速に発見することができ、迅速に火災等が発生している場所に向かうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例における、消防用車両の車両ヘッド部の構造を示す斜視図。
【図2】実施例における、車両ヘッド部の内部を模式的に示す説明図。
【図3】実施例における、車両ヘッド部におけるハイルーフ部及びシートを示す斜視図。
【符号の説明】
【0026】
1 消防用車両
2 車両ヘッド部
20 車内
201 天井位置
202 車内足場位置
22 シート22
221 背もたれ部
3 ハイルーフ部
41、42、43 透明窓
5 呼吸器ボンベ
6 搭乗者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消防用車両の車両ヘッド部の上部に、車内の天井位置を高くするためのハイルーフ部を設けてなり、
該ハイルーフ部は、その天井部分及びフロント部分に車外を視認するための透明窓を有しており、
上記ハイルーフ部の車内天井高さは、搭乗者が立ち上がることができる高さに設定してあることを特徴とする消防用車両の車両ヘッド部の構造。
【請求項2】
請求項1において、上記ハイルーフ部の車内天井高さは、車内足場位置から1600〜2000mmの高さに設定してあることを特徴とする消防用車両の車両ヘッド部の構造。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記車両ヘッド部内におけるシートの背もたれ部には、搭乗者が当該シートに座った状態で装着可能な呼吸器ボンベが埋設してあることを特徴とする消防用車両の車両ヘッド部の構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、上記天井部分に形成した透明窓は、左右のサイド部分にも連続して形成してあることを特徴とする消防用車両の車両ヘッド部の構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、上記ハイルーフ部は、そのリア部分にも上記透明窓を形成してなることを特徴とする消防用車両の車両ヘッド部の構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−152013(P2007−152013A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−355142(P2005−355142)
【出願日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(505454281)平和機械株式会社 (2)
【Fターム(参考)】