説明

液体包装袋およびその製造方法

【課題】上側横シール部の任意の位置から手指で簡単に開封できると共に、液体包装袋を利用する人が、自分の好みに合わせて注出口を形成することが可能であり、さらには、開封状態が良好で、被包装物注出の際の液だれや飛散を防止すること。
【解決手段】少なくともベースフィルム層とシーラント層とを具える積層フィルムを、該シーラント層が相互に対向するように幅方向に折り返した後、側縁どうしを縦にヒートシールすると共に、上端と下端とを横シールしてなる包装袋であって、上側の横シール部の、縦ヒートシールが施されていない、いずれか一方の折返し辺側縁部に、被包装物収納スペースに連通する狭幅の注出通路を設けてなる液体包装袋において、前記上側横シール部に、多数の疵痕を形成してなること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液状、ゼリー状等の飲食物、調味料その他各種の液状ないし粘稠状の飲食物、医薬品、化粧品等の流動性物質を充填包装してなる液体包装袋に関するものである。とくに、本発明は、包装袋の開封が容易で、その開封位置を需要者が自由に選択でき、かつ、開封口がきれいで、被包装物の液だれの発生や不測の漏れをも十分に阻止することのできる液体包装袋およびその製造方法を提案するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ベースフィルム層とシーラント層とを具え、液状ないしは粘稠状の被包装物を充填包装する液体包装袋は、たとえば二軸延伸したエチレンービニルアルコール共重合体樹脂フィルムからなるベースフィルム層と、無延伸のエチレン−ビニルアセテート共重合体樹脂からなるシーラント層との積層フィルムを、自動充填製袋機によって、シーラント層が互いに向かい合わせになるように幅方向の中央部位置にて二つ折りにした後、三方シールを施すことによって図1に示すような液体包装袋20が形成される。
【0003】
そして、液体包装袋20からの被包装物の取り出しは、図1に示すところでは、液体包装袋20の縦シール部分21と横シール部分25との結合部分に設けた注出通路24を臨む位置に設けたIノッチ22から引裂きを開始して、それによる袋の裂け目を、少なくとも、被包装物の収納スペース23の一部として機能する、注出通路24を過ぎる位置まで進行させた状態で、より好ましくは、その裂け目を、包装袋20を完全に横切る位置まで進行させた状態で、被包装物収納スペース23を押圧して、注出通路24を開口させることにより、被包装物を流出させることにより行われる。この場合、Iノッチ22は、注出通路24に隣接する縦シール部分21に設けられる。
【0004】
しかし、従来の液体包装袋20では、それ自体が軟質であるため、被包装物の注出の際に包装袋20が変形してこぼれ出すおそれがあった。また、注出通路24は、横シール部分25と縦シール部分21とが接する部分に形成されているため、横シール部分25と縦シール部分21の拘束によって折り重なろうとする力が作用し、その開口を閉じようとする傾向にある。そのため、従来の液体包装袋20では、注出通路24のフィルム同士が密着して、被包装物が注出しづらい一方で、収納スペース23を押さえた場合には逆に、被包装物が勢いよく流出して飛散し、手や衣類を汚すという問題点があった。
【0005】
また、被包装物を注出通路24から、縦シール部分21を超えて注出することになるため、被包装物の注出時や、注出後に液体包装袋20を直立姿勢に戻す際に、被包装物が縦シール部分21を伝わる液だれが発生しやすいという問題があった。
【0006】
さらに、縦シール部分21に形成したIノッチ22と、注出通路24までの距離が短いため、液体包装袋20の取り扱い中に、それが破断してしてしまい、被包装物が不測に漏れ出すという問題もあった。
【0007】
そこで、上記の問題点を解決するため、発明者らは先に、特許文献1において、液体包装袋の上側横シール部の、縦シールが施されていない折返し辺側縁部に、被包装物収納スペースに連通する狭幅の注出通路を設けると共に、上側横シール部上端から、該注出通路に向って引裂き誘導疵が設けられてなる液体包装袋を提案した。この液体包装袋によれば、被包装物の注出通路が、縦シールが施されていない側縁部に設けられているため、注出口が常にストロー状に開口した状態になり、被包装物の注出量を、該収納スペースの押圧によってコントロールできると共に、被包装物が注出通路に沿って一定方向に注出されるため、注出時に被包装物が飛散したり、液だれが発生するおそれがない。
【特許文献1】特開2007−326641号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の液体包装袋は、開封するために上側横シール部上端から注出通路に向って引裂き誘導疵を形成する必要があるため、自動充填製袋機に、該引裂き誘導疵を形成するための切刃を有するロール対等を設ける必要があると共に、引裂き誘導疵の形成位置によって、開封位置が限定されてしまうため、被包装物の種類や使用する人の被包装物の種類や使用する人の好みに合わせて被包装物の注出量を調整することができない。従って、従来の液体包装袋は、注出口が大きすぎて過剰に注出されてしまったり、逆に、注出口が小さすぎて注出できない等の問題点があった。
【0009】
そこで、この発明は、従来技術が抱えるこのような問題点を解決することを課題とするものであり、その目的とするところは、上側横シール部の任意の位置から手指で簡単に開封できると共に、液体包装袋を利用する人が、自分の好みに合わせて注出口を形成することが可能であり、さらには、開封状態が良好で、被包装物注出の際の液だれや飛散を防止することのできる液体包装袋およびその製造方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、少なくともベースフィルム層とシーラント層とを具える積層フィルムを、該シーラント層が相互に対向するように幅方向に折り返した後、側縁どうしを縦にヒートシールすると共に、上端と下端とを横シールしてなる包装袋であって、上側の横シール部の、縦ヒートシールが施されていない、いずれか一方の折返し辺側縁部に、被包装物収納スペースに連通する狭幅の注出通路を設けてなる液体包装袋において、前記上側横シール部に、多数の疵痕を形成してなることを特徴とする液体包装袋を提案するものである。
【0011】
なお、本発明においては、
(1)前記疵痕は、1〜10個/mm2程度設けられてなること、
(2)前記疵痕の形成範囲と、上側横シール部各端縁とのクリアランスが、0.3〜1.0mmであること、
(3)前記疵痕の形成範囲は、前記上側横シール部の、前記注出通路が設けられてなる折返し辺側縁部から、上側横シール部幅方向長さの1/2程度までの範囲であること、
(4)前記疵痕は、前記上側横シール部上の、前記注出通路の内側端辺と、該内側端辺下端と上側横シール部上端辺の切辺位置とを結ぶ線とのなす角度が、90°以下の範囲に設けられていること、
(5)前記注出通路が設けられるヒートシールが施されていない折返し側縁部は、三方シール袋、中央合掌シール袋または背貼りシール袋の折返し幅方向側縁部であること、
(6)折返し側端部に接して設けられる前記注出通路は、上側横シール部上端辺に向かって次第に先細る錐状であること、
(7)前記ベースフィルム層が、エチレンビニルアルコール共重合体、ナイロン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミドもしくは塩化ビニリデンなどの樹脂フィルムからなること、
(8)前記シーラント層が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンビニルアセテート共重合体、アイオノマーもしくはエチレンビニルアルコール共重合体からなること、
(9)前記ベースフィルム層とシーラント層との間に、SiO2蒸着層、塩化ビニリデンコーティング層、酸化アンモニウムコーティング層、Al蒸着層あるいはSiO2やAl、Al2O3などのスパッタリング層からなる中間層を設けること、
が好ましい解決手段となる。
【0012】
また、本発明は、請求項1〜10のいずれか1項に記載した液体包装袋を製造するにあたり、前記積層フィルムの上端を横シールして上側横シール部を形成した後、該上側横シール部上に、シール刃表面に微細な砥粒または刃先が設けられてなる冷却ロールを用いて、多数の疵痕を形成することを特徴とする液体包装袋の製造方法を提案する。
【0013】
なお、前記液体包装袋の製造方法においては、前記砥粒として、ダイヤモンドまたはCBNを用いることが好ましい解決手段となる。
【発明の効果】
【0014】
この発明では、液体包装袋の上側横シール部上に多数の点状や線状等の疵痕を形成したことにより、これらの疵痕が、引裂き誘導疵となるから、上側横シール部のどの位置でも手指で引裂くことができるようになり、それ故に、注出口の任意の位置を開封することができる。しかも、本発明では、任意の位置での引裂きが可能になることから、液体包装袋の注出口の開封位置および大きさを、それを利用する人が自由に決定することができ、ひいては利用者の好みや被包装物の種類等に合わせて、注出量を調整することができる。
【0015】
また、本発明の液体包装袋では、被包装物の注出通路が、ヒートシールが施されていない積層フィルムの折り返し基端部側に設けられているため、注出口部分は、圧力を加えなくても、積層フィルムの弾性力、復元力によって常にストロー状(楕円状)に開口した状態になり、被包装物の注出量を、収納スペースへの押圧力のコントロールにより調整でき、しかも、注出通路が注出口に向かって次第に狭幅となっているため、被包装物が、注出通路に沿って一定方向に注出されることになり、注出時に被包装物が飛散するおそれもない。さらに、本発明によれば、被包装物の液引きがよく、さらに注出時に液だれが発生するおそれがない。そしてさらに、本発明によれば、注出コントロールができる易開封性液体包装袋を容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、この発明の実施の形態を図面を用いて説明する。図2は、この発明に係る液体包装袋を構成する積層フィルム1の一例を示す概略断面図である。積層フィルム1は、ベースフィルム層2とシーラント層3からなり、必要に応じて、ベースフィルム層2とシーラント層3の間に中間層4を設けてもよい。なお、この積層フィルム1は、ベースフィルム層2、シーラント層3および中間層4を、たとえば押出しラミネート、ドライラミネートまたは共押出しなどにより積層して形成する。
【0017】
上記ベースフィルム層2としては、一軸もしくは二軸延伸のエチレンビニルアルコール共重合体、ナイロン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミドもしくは塩化ビニリデンなどの樹脂フィルムから構成されることが好ましく、これらは優れた水蒸気不透過性および、高いガスバリア性を発揮させることができる。
【0018】
なかでも、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム層は、直線カット性ポリエステルフィルムである「エンブレットPC」(商標ユニチカ株式会社)を用いることが、また、二軸延伸ナイロンフィルム層とするときは、直線カット性ナイロンフィルムである「エンブレムNC」(商標ユニチカ株式会社)を用いることが、以下の理由により好適である。
すなわち、これらによれば、一軸延伸ベースフィルム層を用いる場合に比してより高い水蒸気不透過性、ガスバリア性等を付与することができる他、引裂き開封部分の、手指による、直線的な引裂き除去を円滑かつ容易にし、しかも、引裂き疵を、毛羽立ち等のない十分平滑なものとすることができる。
【0019】
また、シーラント層3としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンビニルアセテート共重合体、アイオノマーもしくはエチレンビニルアルコール共重合体からなることが好ましく、優れた水蒸気不透過性および、高いガスバリア性を発揮させることができる。とくに、ポリエチレンやポリプロピレンを用いれば、比較的低い温度のヒートシール温度で優れたシール強度を発揮することができる。
【0020】
また、中間層4は、包装袋として必要とされる性質、たとえば水蒸気不透過性やガスバリア性、腰度などを向上させるために適宜、積層させることが好ましく、SiO2蒸着層、塩化ビニリデンコーティング層、酸化アルミニウムコーティング層、Al蒸着層あるいはSiO2やAl、Al2O3などのスパッタリング層などが好適である。
【0021】
上記構成からなる積層フィルム1を、シーラント層3が相互に対向するように幅方向で二つ折りした後、折り返し側の基端辺を除く他の3方の各辺部分をシールして、一実施形態として図3(a)〜(c)に示すような液体包装袋5を形成する。図中斜線を施した部分は、包装袋のヒートシール部分を示す。
なお、本発明の液体包装袋は、図3に示す三方シール形態の包装袋の他、中央合掌シール形の包装袋や背貼りシール形の包装袋などヒートシールを施されることのない、折返し基端辺を有する包装袋に対して適用することができる。
【0022】
上側横シール部6には、その包装袋の折り返し基端辺7側端部に、三角形状の非シール部分を有し、この非シール部分が液体注出通路8として、被包装物の収納スペース12と連通している。なお、液体注出通路8は、三角形状に限定されるものではなく、後述の方法によって形成される液体注出口11に向かって次第に狭幅となる形状であることが好ましい。これは、注出通路8が、液体注出口11に向かって先細りとなることで、被包装物の押出し方向が一定となり、被包装物があたりに飛び散るようなことがなくなり、また、液だれの発生も防止することができる。なお、この液体注出通路8は、折返し基端辺7側の側端が三角形状に窪んだ形状からなる瓶口形ヒートシール刃を用いることにより形成することができる。なお、ヒートシール目の形状としては、ベタシール、三線シール、布目シールなどを用いることができ、とくにシールの確実性と安全性の点から、ベタシール、三線シールを用いることが好ましい。
【0023】
そして、本発明の液体包装袋5では、下側横シール部9の形成前もしくは形成後に、上側横シール部6上に多数の点や線状の疵痕10を形成する。これにより、上側横シール部6上の疵痕10が形成された範囲内では、いずれの位置においても疵痕10に沿って手指で簡単に引裂くことができるようになる。そのため、液体包装袋5を利用する需要者自身が、切断開始位置(開封位置)を自由に決定することができると共に、両手指で誘導しながら上側横シール部6を引裂き、液体注出通路8の好きな位置(高さ)に液体注出口11の開口を形成することができる。このため、被包装物の種類や好み等によって、需要者自身が、液体注出口11開口サイズを選定することができるようになる。
【0024】
なお、疵痕10は、上側横シール部5の積層フィルムに−(マイナス)状に延在させて設けた線状の疵、積層フィルムのに間隔をおいて設けた小孔状(点状)の疵、あるいはレーザ光線等をもって連続的もしくは間欠的に設けた溶融痕などの、適宜の形状の疵にて形成することができる。また、このような疵痕10の、深さや長さ、その他の寸法は、積層フィルムの厚さ、積層フィルムの構成材料などに応じて適宜、選択することが好ましいが、より好ましくは、疵痕10の長さ(直径)は、0.05〜2mm程度とし、隣接する疵痕10同士は、0.05〜2mm離間して設ける。これは、疵痕10が大きすぎたり、疵痕10の形成間隔が小さすぎると、疵痕10からフィルムが破断しやすくなると共に、それが伝播しやすくなり、取り扱い中に包装袋が破袋してしまったりする。また、この場合、疵痕10の形成時にフィルムに引張力やせん断力が生じて、フィルムにしわが発生しやすくなったり、疵痕10を形成した部分と形成していない部分とのフィルム長さ(幅方向、長さ方向)に差が生じてしまうおそれがある。一方、この疵痕10の形成間隔が大きくなりすぎると、手指での引裂きが困難になってしまう。
【0025】
上記のように上側横シール部6を、需要者自身が誘導しながら、疵痕10に沿って引裂くためには、疵痕10は、上側横シール部6上に1〜10個/mm2程度設けることが好ましい。これは、疵痕10の数が、1個/mm2未満では、積層フィルムの引裂き抵抗によって手指での引裂きが困難となり、一方、10個/mm2超では、少しの引裂き力によって疵痕10の破断が次々に伝播してしまい、裂け目が意図しない方向へ走ってしまうおそれがあると共に、疵痕10を形成する際に、フィルムに引張力やせん断力が生じて、フィルムにしわが発生したり、上側横シール部6の強度が低下し、取り扱い中に破断する等のおそれがあるためである。
【0026】
なお、この疵痕10の形成範囲10Aは、基本的には図4(a)に示したように、上側横シール部6の幅方向側端および長さ方向側端から0.3〜1.0mmのクリアランスαを除いた範囲とする。これは、液体包装袋5の移動、梱包、輸送などの取り扱い中、とくに連続包装袋をミシン目を介して1袋づつ、もしくは所要の数袋毎に切り離す際に、疵痕10から亀裂が生じ、注出通路8や被包装物の収納スペース12にまで破断が及んで被包装物が漏れ出すのを抑制するためである。なお、クリアランスαが0.3mmより小さい場合には、上記効果が期待できず、一方、1.0mmよりも大きい場合には、上側横シール部6が切り取れず、手指により開封することができない。
【0027】
また、この疵痕10の形成範囲10Aは、少なくとも上側横シール部6の上端辺から注出通路8に向って手指で引裂けるように形成されていればよく、図4(b)に示すように、疵痕10は、基端辺7から包装袋5の幅方向長さdの1/2程度までの範囲とすることが好ましい。より好ましくは、基端辺7から包装袋5の幅方向長さdの1/4程度までの範囲である。また、疵痕10の形成範囲10Aは、図4(c)に示すように注出通路8の内側端辺8aと、その内側端辺下端8bと上側横シール部6上端辺の切辺位置とを結ぶ線13とのなす角度(θ)が、90°以下の範囲とすることが好ましく、より好ましくは、角度(θ)が45°以下の範囲である。
これは、疵痕10の形成範囲10Aを、図4(b)および(c)のように最小限の範囲にすることにより、上側横シール部6の実用上の強度を維持するためである。これにより、上側横シール部6のフィルム強度の低下が抑制され、例えば、自動充填包装作業中に、液体包装袋5に引張力等が及んだとしても、上側横シール部6が破断等することがなく、安定した自動充填を行うことができる。
【0028】
また、本発明では、疵痕10を形成してなる上側横シール部6の適当な位置を、両手指で把持し、切り裂き予定ラインに沿って手指で誘導しながら引裂いて開封することにより、所望の位置、開口面積の液体注出口11を形成する。そのため、上側横シール部6の縦長さは、手指で把持できる大きさ、好ましくは10mm以上とする。
【0029】
また、本発明の液体包装袋5は、注出口11が包装袋5の折返し基端辺7側に設けられている。この位置に注出口を形成する理由は、包装袋5の折返し基端辺7側は、圧力を加えなくても、常に積層フィルム1の、折り返し前の状態に復元しようとする力により、常にストロー状(楕円状)に開口された状態になり、さらに注出通路8が注出口に向かって次第に狭幅となっているため、被包装物が収納スペース12の押圧によって注出通路8に沿って、一定方向に滑らかに注出させることができるようになる。したがって、従来のように液体注出時に被包装物が飛散し、手指や衣類を汚すことがなくなる。
【0030】
さらに、本発明の液体包装袋5は、被包装物がその表面張力の働きにより、包装袋5の傾倒によっても注出通路8から漏れ出すことがなく、また、注出量を、収納スペース12への指圧をコントロールすることによって調整することができ、それは、シール部分に注出通路が設けられている従来の包装袋に比べて、吐出制御が容易で正確である。
【0031】
また、従来のように被包装物が縦シール部を超えて注出されるのではなく、注出口先端11aから直接、注出されるため、被包装物が縦シール部を伝わることによる液だれの発生がない。
【0032】
また、図5のような連続包装袋の状態においても、従来のIノッチのような引裂き開始用の疵がないため、自動充填包装中に引裂き開始用疵がロール等に引っ掛かり、破断してしまうようなことがない。
【0033】
液体包装袋5を製造するため、本発明では、図6に示すような充填包装機30を用いる。この充填包装機30は、巻取りロール31から連続的に繰出し走行されるその包装用フィルム32を、それの幅方向に半折するフィルム折返し部33と、半折された包装用フィルム32の両遊端部に縦シールを施して縦シール部15を形成する一対の縦シールロール34と、縦シール部15を形成された包装用フィルム32の内側へ被包装物を、たとえば連続的に供給する充填ノズル35と、包装用フィルム32の長さ方向に間隔をおいてそれの幅方向に延びる横シールを施して、液体包装袋5の上側横シール部6および下側横シール部9を形成する一対の横シールロール36とを順次に配設するとともに、一対の横シールロール36によって形成された上側横シール部6および下側横シール部9を挟持して、横シール部6、9の封止をより確実にするための一対の冷却ロール37と、各ロール34、36、37を通過して完成された液体包装袋5を一袋毎に、または所要の複数袋毎に切断分離する、たとえばロータリータイプの切断手段38とを備えているものである。
【0034】
なお、前記冷却ロール37は、左右一対のロールからなり、冷却ロール37の周面には、図7に示すように、横シール部6、9の形成位置に合わせてシール刃40が形成されている。この冷却ロール37のシール刃40によって、上側横シール部6および下側横シール部9を、再度、低温過熱状態あるいは常温の状態にて押圧することにより、上側横シール部6および下側横シール部9の封止状態を良好に保つ働きを有している。
【0035】
また、本発明に係る製造方法では、この冷却ロール37の周面に設けられた複数のシール刃40のうち、上側横シール部6を押圧するためのシール刃40表面に、微細な砥粒または刃先41を設ける。これにより、冷却ロール37によって上側横シール部6が冷却されると共に、該砥粒または刃先41が、上側横シール部6に噛み込み、上側横シール部6上に多数の微細な点または線状からなる疵痕10を形成することができる。
【0036】
横シールロール36ではなく、冷却ロール37のシール刃40表面に砥粒または刃先を設ける理由は、横シールロール36に砥粒または刃先を設けて疵痕10を形成すると、横シールロール36の熱によって、上側横シール部6を構成するシーラント層の樹脂が伸びて、形成した疵痕10を塞いでしまうおそれがあるからである。
【0037】
なお、前記砥粒としては、ダイヤモンドまたはCBNを用いることが好ましく、これらは高硬度であるため、破損等することがなく、上側横シール部6上に長期に亘って高い精度で疵痕10を形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
この発明に係る液体包装袋は、醤油、ソース、各種の調味料類、スープ類、果汁類、その他の粉粒状物を含むことのある液状ないし粘体状の飲食物、洗剤、医薬品等を包装するのに用いられる包装袋として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】従来の液体包装袋を示す平面図である。
【図2】本発明の液体包装袋を構成する積層フィルムの一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の液体包装袋の一の実施形態を示す平面図である。
【図4】本発明の液体包装袋を示す平面図である。
【図5】本発明の液体包装袋の連続包装状態を示す平面図である。
【図6】本発明の液体包装袋を製造するための充填包装機の一例を示す全体概要正面図である。
【図7】図6の充填包装機に用いられる横シールロールの一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
1 積層フィルム
2 ベースフィルム層
3 シーラント層
4 中間層
5、20 液体包装袋
6 上側横シール部
7 基端辺
8、24 液体注出通路
8a 液体注出通路の内側端辺
8b 液体注出通路の内側端辺下端
9 下側横シール部
10 疵痕
10A 疵痕形成範囲
11 注出口
11a 注出口先端
12、23 収納スペース
13 液体注出通路の内側端辺下端と上側横シール部上端辺の切辺位置とを結ぶ線
15 縦シール部
21 縦シール部分
22 Iノッチ
25 横シール部分
30 充填包装機
31 巻取りロール
32 包装用フィルム
33 フィルム折返し部
34 縦シールロール
35 充填ノズル
36 横シールロール
37 冷却ロール
38 切断手段
40 ヒートシール刃
41 砥粒または刃先

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともベースフィルム層とシーラント層とを具える積層フィルムを、該シーラント層が相互に対向するように幅方向に折り返した後、側縁どうしを縦にヒートシールすると共に、上端と下端とを横シールしてなる包装袋であって、上側の横シール部の、縦ヒートシールが施されていない、いずれか一方の折返し辺側縁部に、被包装物収納スペースに連通する狭幅の注出通路を設けてなる液体包装袋において、
前記上側横シール部に、多数の疵痕を形成してなることを特徴とする液体包装袋。
【請求項2】
前記疵痕は、1〜10個/mm2程度設けられてなることを特徴とする請求項1に記載の液体包装袋。
【請求項3】
前記疵痕の形成範囲と、上側横シール部各端縁とのクリアランスが、0.3〜1.0mmであることを特徴とする請求項1または2に記載の液体包装袋。
【請求項4】
前記疵痕の形成範囲は、前記上側横シール部の、前記注出通路が設けられてなる折返し辺側縁部から、上側横シール部幅方向長さの1/2程度までの範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体包装袋。
【請求項5】
前記疵痕は、前記上側横シール部上の、前記注出通路の内側端辺と、該内側端辺下端と上側横シール部上端辺の切辺位置とを結ぶ線とのなす角度が、90°以下の範囲に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体包装袋。
【請求項6】
前記注出通路が設けられるヒートシールが施されていない折返し側縁部は、三方シール袋、中央合掌シール袋または背貼りシール袋のいずれか1の折返し幅方向側縁部であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の液体包装袋。
【請求項7】
折返し側端部に接して設けられる前記注出通路は、上側横シール部上端辺に向かって次第に先細る錐状であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の液体包装袋。
【請求項8】
前記ベースフィルム層が、エチレンビニルアルコール共重合体、ナイロン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミドもしくは塩化ビニリデンなどの樹脂フィルムからなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の液体包装袋。
【請求項9】
前記シーラント層が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンビニルアセテート共重合体、アイオノマーもしくはエチレンビニルアルコール共重合体からなることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の液体包装袋。
【請求項10】
前記ベースフィルム層とシーラント層との間に、SiO2蒸着層、塩化ビニリデンコーティング層、酸化アンモニウムコーティング層、Al蒸着層あるいはSiO2やAl、Al2O3などのスパッタリング層からなる中間層を設けることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の液体包装袋。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の液体包装袋の製造方法であって、前記積層フィルムの上端を横シールして上側横シール部を形成した後、該上側横シール部上に、シール刃表面に微細な砥粒または刃先が設けられてなる冷却ロールを用いて、多数の疵痕を形成することを特徴とする液体包装袋の製造方法。
【請求項12】
前記砥粒として、ダイヤモンドまたはCBNを用いることを特徴とする請求項11に記載の液体包装袋の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−234629(P2009−234629A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−83745(P2008−83745)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000206233)大成ラミック株式会社 (56)
【Fターム(参考)】