説明

液体吐出ヘッドおよび画像記録装置

【課題】メニスカス安定性が優れ、かつメニスカスを高い位置に保持することができ、安定して液滴を吐出させることができる液体吐出ヘッドおよびこの液体吐出ヘッドを有する画像記録装置を提供する。
【解決手段】本発明の液体吐出ヘッド12は、帯電粒子が分散された溶液に静電力を作用させて、溶液の液滴を吐出させるものであり、液滴を吐出する複数の貫通孔が形成された絶縁性の吐出基板19と、貫通孔の個々に対応して配置され、溶液に静電力を作用させる吐出電極30と、貫通孔を通過して吐出基板の液滴吐出側に突出する溶液ガイド22とを有する。この溶液ガイドは、平板状の支持部40と、この支持部の端部における厚さ方向の所定の位置に段差を付けて延設され、支持部の厚さよりも薄い平板状の先端部42とを備えるものであり、溶液ガイドは先端部が液滴吐出側に向けて配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電粒子が分散された溶液に静電力を作用させることで液滴を吐出させる液体吐出ヘッド、およびこの液体吐出ヘッドを有する画像記録装置に関し、特に、メニスカスの位置を高く維持できる液体吐出ヘッドおよび画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インク液滴を吐出することによって画像記録(描画)を行うインクジェットの液体吐出ヘッドとしては、インクを加熱してインクに発生した気泡の膨張力でインク液滴を吐出させる、いわゆるサーマルインクジェットの液体吐出ヘッド、および圧電素子によりインクに圧力を与えてインク液滴を吐出させる、いわゆるピエゾタイプのインクジェットの液体吐出ヘッドが知られている。
しかしながら、サーマルジェットヘッドでは、インクを部分的に300℃以上に加熱するため、インクの材料が限定されるという問題があり、他方、ピエゾタイプのインクジェットでは、構造が複雑でコストが高いといった問題がある。
【0003】
これらの問題を解決するインクジェットとして、帯電した色材粒子(微粒子)を含むインクを用い、インクに静電力を作用させ、この静電力でインク液滴を吐出する、静電式インクジェットが知られている(例えば、特許文献1参照)。
静電式インクジェットの液体吐出ヘッドは、インク液滴を吐出するための多数の貫通孔(吐出口)が形成された絶縁性の吐出基板と、吐出口の個々に対応する吐出電極とを有し、吐出電極に所定の電圧を印加することにより、インクに静電力を作用させてインク液滴を吐出するものであり、画像データに応じて吐出電極への電圧印加のオンおよびオフを制御(吐出電極を変調駆動)することによりインク液滴を吐出させて、画像データに対応する画像を記録媒体上に記録する。
【0004】
特許文献1には、静電式インクジェットの液体吐出ヘッドとして、図7に概念的に示すように、支持基板202と、インクガイド204と、吐出基板206と、吐出電極208と、バイアス電圧源212と、信号電圧源214とを備える液体吐出ヘッド200が開示されている。
【0005】
液体吐出ヘッド200において、支持基板202と吐出基板206は、共に絶縁性の基板であり、所定間隔だけ離間して配置されている。
吐出基板206には、インク液滴の吐出口218となる貫通孔(基板貫通孔)が多数形成され、前記支持基板202と吐出基板206との間隙が、この吐出口218にインクQを供給するインク流路216となる。さらに、吐出基板206の上面(インク液滴Rの吐出側表面)には、吐出口218を囲んでリング状の吐出電極208が設けられている。吐出電極208には、バイアス電源212およびパルス電源である駆動電源214が接続され、かつ、両者を介して接地されている。
他方、支持基板202には、各吐出口218に対応して、吐出口218を挿通して吐出基板206から突出するインクガイド204が設けられている。インクガイド204の先端部204aは、所定幅だけ切り欠かれて、先端部204aにインクQを供給するためのインク案内溝220が形成されている。
【0006】
このような液体吐出ヘッド200を用いる特許文献1に開示されている(インクジェット)記録装置においては、画像記録時には、記録媒体Pは対向電極210に支持されている。
対向電極210は、吐出電極208の対向電極としての機能に加え、画像記録時に記録媒体Pを支持するプラテンとしても機能するものであり、吐出基板206の上面に対面するようにして、インクガイド204の先端部204aと所定間隔離間して配置されている。
【0007】
液体吐出ヘッド200において、画像記録時には、図示しないインクの循環機構により、帯電した色材粒子を含有するインクQが、インク流路216内を、例えば図中右側から左側へ向かって流される。なお、インクQの色材粒子は、吐出電極208に印加される電圧と同極性に帯電している。
また、記録媒体Pは、対向電極210に支持されて、吐出基板206と対面している。
さらに、吐出電極208には、バイアス電圧として、バイアス電源212から、例えば1.5kVの直流電圧が、常時、印加されている。
【0008】
このインクQの循環およびバイアス電圧の印加により、インクQの表面張力、毛管現象、バイアス電圧による静電力などの作用で、インクQが、インクガイド204のインク案内溝220から先端部分204aに供給され、吐出口218においてインクQのメニスカスMが形成され、かつ、色材粒子が吐出口218近傍に移動(静電力による泳動)して、インクQが吐出部218または先端部分204aにおいて濃縮された状態となっている。
この状態において、駆動電源214が吐出電極208に画像データ(駆動信号)に応じた、例えば、500Vのパルス状の駆動電圧を吐出電極208に印加すると、バイアス電圧に駆動電圧が重畳されて、インクQの先端部分204aへの供給および濃縮が促進され、インクQおよび色材粒子の先端部204aへの移動力および対向電極14からの吸引力が、インクQの表面張力を超えた時点で、色材粒子が濃縮されたインクQの液滴(インク液滴R)が吐出される。
吐出されたインク液滴Rは、吐出された際の勢い、および対向電極210による引力によって飛翔し、記録媒体Pに着弾して画像を形成する。
【0009】
このように、静電式インクジェットの液体吐出ヘッドでは、インクQの表面張力とインクQにかかる静電力とのバランスを制御することによって、インク液滴Rを吐出する。
従って、低い駆動電圧で、かつ、高速(高い記録(吐出)周波数)で安定してインク液滴の吐出を行うためには、各吐出口毎に設けられるインクガイドは重要であり、インクガイドには、好適にインクを案内して吐出口におけるインクのメニスカスを適正に安定させること(以下、メニスカス安定性という)、および良好な静電力の集中力(電界集中力)等が要求される。
【0010】
このような特性を満たすために、静電式インクジェットの液体吐出ヘッドでは、インクガイドに様々な工夫が成されている。
例えば、特許文献1に開示される液体吐出ヘッドであれば、前述のように、インクガイド204の先端部204aを所定幅だけ切り欠いてインク案内溝220を形成することにより、インクガイド204の先端部204aへのインクQの供給性を、より良好なものとしている。
【0011】
【特許文献1】特開平10−230608号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このように、良好なメニスカスを安定に保持するインクガイドを得るためには、インクガイドは、良好な成形性で確実にインクを案内できるように高精度に成形されることが好ましい。
【0013】
ガイド先端部まで色材粒子を運ぶには、先端部がインク溶液に濡れているような良好なメニスカスを持つ必要がある。先端が尖った形状の先端部への液体の濡れ上がるために必要な圧力は、下記数式(1)のように、その先端の曲率半径に反比例する。
【0014】
P=2・γ/R ・・・(1)
【0015】
上記数式(1)において、Pはメニスカスを保持するに必要な圧力(Pa)であり、γはメニスカスを形成する液体の表面張力(N/m)であり、Rはメニスカスの曲率半径(m)である。
【0016】
上記数式(1)から、インクガイドの先端部の曲率半径が小さいか、またはインクガイドの先端部の厚さが薄くなるほど、メニスカスを形成するための圧力を高くする必要があることが分かる。
しかしながら、メニスカスの高さを高くするために加えられる圧力には限界がある。このため、特許文献1に開示されたインクガイド204のように、先端部204aにインク案内溝220を形成し、このインク案内溝220による毛細管現象を利用して、メニスカスMを高い位置に保持している。
【0017】
しかしながら、特許文献1のインクガイド204の構造では、先端部204aが切り欠かれているため、先端部204の先鋭度が低く、吐出できるインク液滴のサイズが制限されてしまうという問題点がある。
また、特許文献1のインクガイド204の構造では、先端部204aが切り欠かれているため、インクガイド204の先端形状はインクQにより形成される。このため、インクガイド204の先端形状は使用するインクQの表面張力、およびインクQに作用する圧力により決定される。このインクQによる先端形状は、インク液滴Rの吐出によるインクQの供給、または振動などの外乱により、その先端形状が変動してしまう。このため、着弾精度が劣化するという問題点がある。この着弾精度が劣化する問題点により、安定して高解像度で画像を形成することができない。
さらに、インクガイドの先端部の幅を狭くすることは、加工上難しいという問題点がある。また、特許文献1のインクガイド204は、インク案内溝220を形成する必要があり、幅を狭くした場合、加工が特に困難になる。
【0018】
本発明の目的は、前記従来技術の問題点を解決することにあり、メニスカス安定性が優れ、かつメニスカスを高い位置に保持することができ、安定して液滴を吐出させることができる液体吐出ヘッド、およびこの液体吐出ヘッドを有する画像記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記目的を達成するために、本発明の第1の態様は、帯電粒子が分散された溶液に静電力を作用させて、前記溶液の液滴を吐出させる液体吐出ヘッドであって、前記液滴を吐出する複数の貫通孔が形成された絶縁性の吐出基板と、前記貫通孔の個々に対応して配置される、前記溶液に静電力を作用させる吐出電極と、前記貫通孔を通過して前記吐出基板の液滴吐出側に突出する溶液ガイドとを有し、前記溶液ガイドは、平板状の支持部と、前記支持部の端部における厚さ方向の所定の位置に段差を付けて延設され、前記支持部の厚さよりも薄い平板状の先端部とを備え、前記溶液ガイドは、前記先端部が前記液滴吐出側に向けて配置されていることを特徴とする液体吐出ヘッドを提供するものである。
【0020】
本発明においては、前記溶液ガイドは、前記先端部が前記液滴吐出側に向かって次第に細くなる先端形状を有し、前記先端部が接続されて生じた前記段差における前記支持部の端部は、前記先端形状と略相似形状に形成されていることが好ましい。
【0021】
また、本発明においては、前記溶液ガイドは、前記先端部が前記液滴吐出側に向かって次第に細くなる先端形状を有し、前記先端部が接続されて生じた前記段差における前記支持部の端部は、前記液滴吐出方向に伸びる切欠部が少なくとも1つ形成され、少なくとも1つの歯部を有する櫛歯状に成形されていることが好ましい。
【0022】
さらに、本発明においては、前記櫛歯状に成形された前記支持部の端部は、少なくとも1つの歯部が前記支持部の端部よりも前記溶液吐出側に突出していることが好ましい。
さらにまた、本発明においては、前記溶液ガイドは、前記先端部の先端の曲率半径が2μm以上であることが好ましい。
【0023】
また、本発明においては、前記溶液ガイドは、前記支持部の厚さと前記先端部の厚さとの差が20μm以上であることが好ましい。
また、本発明においては、前記先端部が、前記段差が前記先端部の片面側だけに生じるように前記支持部に延設されていることが好ましい。
【0024】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様の液体吐出ヘッドを有し、画像データに応じた画像を記録媒体上に記録することを特徴とする画像記録装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明の液体吐出ヘッドによれば、溶液ガイドを、平板状の支持部と、この支持部の端部における厚さ方向の所定の位置に段差を付けて延設され、支持部の厚さよりも薄い平板状の先端部とを備えるものとし、さらに溶液ガイドの先端部が液滴吐出側に向けて配置することにより、溶液ガイドの段差がメニスカスの固定位置となる。この段差によるメニスカスの固定位置は、一度固定されれば動くことがない安定したものである。さらに、この固定点が新しいメニスカスの固定位置としても作用し、より高い位置にメニスカスを形成させることができる。これにより、溶液ガイドの先端部まで溶液を行き渡らせることができ、溶液ガイドの先端部の先端形状と相似形のメニスカスを形成させることができる。
このように、溶液ガイドに段差を形成することにより、溶液ガイドの先端形状、および溶液の圧力を考慮することなく、溶液により形成されるメニスカスを溶液ガイドの高い位置に保持することができる。
さらに、本発明の液体吐出ヘッドによれば、溶液ガイドの先端部の先端形状に基づくメニスカスを形成させることができるため、振動などの外乱に対してもメニスカス形状が変動することなく安定したものとなる。
【0026】
また、本発明の画像記録装置によれば、平板状の支持部と、この支持部の端部における厚さ方向の所定の位置に段差を付けて延設され、支持部の厚さよりも薄い平板状の先端部とを備える溶液ガイドを、その先端部を液滴吐出側に向けて配置された液体吐出ヘッドを設けることにより、溶液ガイドの段差がメニスカスの固定位置となる。この段差によるメニスカスの固定位置は、一度固定されれば動くことがない安定したものである。さらに、この固定点が新しいメニスカスの固定位置としても作用し、より高い位置にメニスカスを形成させることができ、メニスカスの位置を溶液ガイドの先端部近傍の高い位置にすることができる。これにより、溶液ガイドの先端部まで溶液を行き渡らせることができ、溶液ガイドの先端部の先端形状と相似形のメニスカスを形成させることができる。このように、溶液ガイドの先端部の先端形状に基づくメニスカスを形成させることができるため、振動などの外乱に対してもメニスカス形状が変動することなく安定したものとなる。本発明の画像記録装置によれば、溶液ガイドへの溶液の供給が円滑になされるため、吐出周波数応答性が向上し、高い吐出周波数でも安定して液滴を吐出させることができる。よって、安定して高解像度の画像を高速に記録することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に、添付の図面に示す好適実施例に基づいて、本発明の液体吐出ヘッドおよび画像記録装置を詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施例に係る液体吐出ヘッドを有する画像記録装置を示す模式的断面図であり、図2は、図1に示す液体吐出ヘッドの要部模式的斜視図である。
図3(a)は、本発明の第1の実施例に係る液体吐出ヘッドのインクガイドを示す模式的斜視図であり、(b)は、図3(a)の模式的正面図であり、(c)は、図3(a)の模式的側面図である。
【0028】
図1に示す画像記録装置10は、静電式のインクジェット記録装置であり、静電力によってインク液滴Rを吐出して、記録媒体Pに画像記録(描画)を行うものである。この画像記録装置10は、基本的に、液体吐出ヘッド12と、記録媒体Pの保持手段14と、インク循環系16と、電圧印加手段18とを有するものである。
【0029】
図1および図2に示すように画像記録装置10における液体吐出ヘッド12は、例えば、記録媒体Pの一辺の全域に対応するインク液滴Rの吐出口24の列(以下、ノズル列という)を有する、いわゆるラインヘッドである。
本実施例の画像記録装置10においては、記録媒体Pを保持手段14で保持して、記録媒体Pを液体吐出ヘッド12と対面して所定の記録位置に位置した状態で、保持手段14を液体吐出ヘッド12のノズル列と直交する方向に移動(走査搬送)することにより、ノズル列によって記録媒体Pの全面を二次元的に走査する。この走査に同期して、液体吐出ヘッド12の各吐出口24から、記録画像に応じて変調してインク液滴Rを吐出することにより、記録媒体Pにオンデマンドで画像を記録する。
また、画像記録時には、インク循環系16によって、液体吐出ヘッド12(後述するインク流路32)を含む所定の循環経路でインクQをインク流方向Dに循環することにより、各吐出口24にインクQを供給する。
【0030】
液体吐出ヘッド12は、静電力によってインクQをインク液滴Rとして吐出する静電式インクジェットの液体吐出ヘッドである。
図1および図2に示すように、液体吐出ヘッド12は、基本的に、吐出基板19と、支持基板20と、インクガイド(溶液ガイド)22とを有し、吐出基板19の下面と支持基板20の上面とが対向して配置されている。
【0031】
吐出基板19は、Al23およびZrO2などのセラミックス材料、またはポリイミドなどの絶縁性材料からなる基板で、吐出基板19を貫通して、インクQのインク液滴Rを吐出するための吐出口24が、多数、穿孔されている。
図2に示すように、液体吐出ヘッド12は、より高解像度で高速な画像記録が可能な好適例として、例えば、格子状に二次元的に配列された吐出口24を有する。
【0032】
なお、本発明の液体吐出ヘッドにおいては、図2に示すように、格子状に吐出口24が形成されたものに限定されるものではなく、例えば、隣接するノズル列を互いに半ピッチ分ずらして、千鳥格子状に吐出口が配列されたものであってもよい。また、二次元的に吐出口を配列した構成ではなく、ノズル列を1列のみを有するものであってもよい。
また、本発明は、図1および図2に示すようなラインヘッドに限定はされるものではなく、記録媒体Pをノズル列の長さに対応する所定長ずつ断続的に搬送しつつ、この断続的な搬送に同期して、ノズル列と直交する方向に液体吐出ヘッドを移動して描画を行う、いわゆるシャトルタイプの液体吐出ヘッドであってもよい。
さらに、本発明の液体吐出ヘッドは、モノクロの画像記録に対応する1種のインクのみを吐出する液体吐出ヘッドであってもよく、カラー画像記録に対応する複数種のインクを吐出する液体吐出ヘッドであってもよい。
【0033】
吐出基板19の上面(液滴吐出側=記録媒体P側の面 以下、こちら方向を上、逆方向を下という)の吐出口24以外の領域は、シールド電極26によって全面的に被覆されている。
シールド電極26は、導電性の金属板などで形成されるものであり、全ての吐出口24に共通のシート状電極である。このシールド電極26は所定電位に保持され(接地による0Vを含む)ている。このようなシールド電極26を設けることにより、互いに隣接する吐出口24(吐出部)の電気力線を遮蔽して、吐出部間における電界干渉を防止して、インク液滴Rを安定して吐出することができる。また、必要に応じて、各シールド電極26の表面を撥インク処理してもよい。
【0034】
吐出基板19の下面には、各吐出口24に対応して、吐出電極30が設けられている。この吐出電極30は、例えば、吐出口24を囲むリング状の電極であり、電圧印加手段18に接続されている。
【0035】
吐出電極30には、電圧印加手段18が接続されている。電圧印加手段18は、駆動電源50とバイアス電源52とが直列に接続されたものであり、インクQの色材粒子の帯電電位と同極側(例えば正極)が吐出電極30に接続されて、他極側に接地されている。
駆動電源50は、例えばパルス電源であって、記録画像(画像データ=吐出信号)に応じて変調したパルス状の駆動電圧を吐出電極30に供給するものである。バイアス電源52は、画像記録中に、所定のバイアス電圧を、常時、吐出電極30に印加する。このようなバイアス電源52(バイアス電圧の印加)を有することにより、駆動電圧の低減を図ることができ、消費電圧の低減および駆動電源の低コスト化を図ることができる。
【0036】
なお、吐出電極30は、吐出口24を囲むリング状の電極に限定はされるものではなく、吐出口24を囲む矩形状のものであってもよい。さらには、吐出電極30は、吐出口24の全域を囲むものにも限定はされるものではなく、例えば、略C字状等の吐出電極も利用可能である。
【0037】
本実施例においては、吐出電極30は、インク流方向Dの上流側が一部欠けている形状とすることが好ましい。このような構成にすることにより、インク流方向Dの上流側から吐出口への色材粒子の流入を妨げる電界が形成されないため、効率よく色材粒子を吐出口24へ供給することができる。また、インク下流側に吐出電極30を配置することで、吐出口24へ流入した色材粒子を吐出口24に留める方向の電界が形成される。このようなことから、吐出電極30をインク流方向Dの上流側が一部欠けている形状とすることにより、吐出口24への粒子供給性を更に一層向上させることができる。
【0038】
支持基板20は、ガラス等の絶縁性の材料で形成される基板である。
吐出基板19と支持基板20とは、所定の間隔だけ離間して配置され、その間隙がインクQを各吐出口24に供給するインク流路32となる。
インク流路32は、後述するインク循環系16に接続されており、インク循環系16が所定の経路でインクQを循環することにより、インクQがインク流路32をインク流方向D(図示例では、例えば、右から左)に流れ、各吐出口24にインクQが供給される。
【0039】
支持基板20の上面にはインクガイド22が設けられている。
インクガイド22は、インク流路32から吐出口24に供給されたインクQを案内して、メニスカスの形状および大きさを調整してメニスカスを安定させ、かつ、自身に電界(静電力)を集中させてメニスカスに電界を集中させることにより、インク液滴Rを吐出し易くするためのものであり、吐出口24を貫通して吐出基板19の表面から記録媒体P(保持手段14)側に突出するように、各吐出口24に対応して配置されている。
互いに対応する吐出口24、吐出電極30、およびインクガイド22によって、1ドットの液滴吐出に対応する1つの吐出部が形成される。
【0040】
前述のように、インクガイド22には、好適にインクQを案内して吐出口24におけるインクQのメニスカスを適正に安定させることができ(メニスカス安定性に優れ)、かつ、好適に静電力を集中できること(良好な電界集中力)が要求される。このような特性を満たすためには、インクガイド22が、微細であってもインクを確実かつ良好に案内できる形状に高精度に成形することができることが重要である。
【0041】
現状では、特許文献1に開示されているように、インクガイド204(図7参照)に所定の幅のインク案内溝220(図7参照)を形成し、メニスカスM(図7参照)を維持している。しかしながら、上述の如く、特許文献1に開示された従来のインクガイド204では、インク案内溝220が形成されているため、インクガイド204の先端部の先鋭度が低く、吐出されるインク液滴のサイズが制限されてしまうという問題点がある。
【0042】
また、インクガイド204の先端部の先端は、メニスカスMにより形成されるため、インク液滴Rの吐出によるインク供給、または振動などの外乱により先端形状が変動しやすく、インク液滴Rの着弾精度が劣化するという問題点がある。さらに、特許文献1のインクガイド204は、インク案内溝220を形成するものであるため、インクガイド204の幅を狭くするとインク案内溝220の加工が難しくなり、インクガイド204の幅を狭くすることは困難である。
【0043】
本実施例のインクガイド22は、本発明の特徴的な部位であり、例えば、図2および図3(a)に示すように、平板状の支持部40と、この支持部40にインクガイド22の裏面22aを共通にして延設された平板状の先端部42とを有するものである。先端部42の厚さは、支持部40の厚さよりも薄く、支持部40と先端部42との接合部に段差が生じる。また、インクガイド22は、先端部42が液滴吐出(記録媒体P)側に向けられて、支持基板20の上面に配置されている。
【0044】
インクガイド22の先端部42は、図3(a)および(b)に示すように、先端部42の幅方向の両側の側面42aからそれぞれ延び、肩部42bで折曲した1対の斜面46が、それぞれインク吐出方向側に向って次第に幅が狭くなり先端46aで接続された先端形状を有するものである。
この先端部42の先端形状は、例えば、平面視、先端46aが略直角の頂部となる略直角三角形状を呈するものである。
【0045】
なお、インクガイド22の先端部42の先端46aは、図3(b)および(c)に示すように、平面視および側面視、いずれの場合においても、所定の曲率を有するものである。
先端46aの曲率半径は、平面視および側面視のいずれの方向においても、先鋭化のために小さいことが好ましい。しかしながら、先端46aの曲率半径が小さ過ぎる場合には、メニスカスの位置を高くするために余分な圧力が必要となるため、先端46aの曲率半径には下限がある。このことから、先端46aの曲率は平面視および側面視のいずれの方向においても、先端46aの曲率半径の下限は、好ましくは2μm以上であり、さらに好ましくは6μm以上である。
【0046】
また、先端46aの平面視および側面視のいずれの方向における曲率半径の上限は、平面視の方向においては、先端部42の幅の半分である。この場合、先端部42は、平面視半円形状となる。一方、側面視の方向においては、曲率の上限は、斜面46の幅の半分である。この場合においても、先端部42は、側面視半円形状となる。
【0047】
支持部40の端部44は、図3(b)に示すように、先端部42と略相似形状に形成されている。端部44は、支持部40の幅方向の両側の側面40aから、それぞれ先端部42の斜面46と同じ傾斜角度で延びた1対の斜面44aがエッジ部44bで接続されている。また、エッジ部44bは、図3(c)に示すように、先端部42の表面42cに対して垂直に形成されている。
【0048】
次に、本実施例のインクガイド22により形成されるメニスカスについて説明する。
本実施例のインクガイド22においては、図3(c)に示すように、端部44のエッジ部44bがインク液面からのメニスカスMのピニング点F(固定位置)となる。このピニング点Fは、端部44の形状で決定されるものであり、一度固定された場合には、動くことがない安定点である。さらに、ピニング点Fは、新しいメニスカスMを固定するピンニング点としても作用する。これにより、更に高い位置にメニスカスMが形成される。このようにして、先端部42の先端46aにまでインクQを行き渡らせることができる。また、先端部42の先端46a形状と略相似形のメニスカスMも形成される。
【0049】
一方、図6(a)および(b)に示すように、先端部102を三角形状に形成してなる従来の平板状のインクガイド100においては、インクに静水圧を加えてインク液面を高くした場合、メニスカスMが形成されるもののピニング点が存在しないため、得られるメニスカスMは、吐出口24のインクの静水圧だけにより得られるものとなる。従来のインクガイド100においても、インクの静水圧を高くすることにより、メニスカスMの位置を先端部102まで達するものとできるものの、インクの静水圧を高くする必要があり、圧力を余分に高くしなければならない。このとき、メニスカス形状の先鋭度が低くなり、微細なインク滴の吐出が困難になる。これにより、得られるドットを小さくすることができない。また、インクの圧力を高くしすぎた場合には、メニスカスが崩壊する虞もある。
【0050】
また、本実施例のインクガイド22は、先端部42の肩部42cが、吐出口24の表面(ガード電極26の表面26a)よりも突出するように配置することが好ましい。これにより、インクガイド22の端部44(段差)によるメニスカスの位置を高くする効果が発現しやすくなり、メニスカスMの位置をより高い位置に維持することができる。
【0051】
また、端部44のエッジ部44bは、肩部42cよりも上方向に突出していることが好ましい。これにより、メニスカスMの位置をより高い位置にすることができる。しかしながら、端部44のエッジ部44bは、肩部42cよりも下方であってもメニスカスMの位置を高い位置にする効果を得ることができる。
【0052】
なお、インクガイド22は、例えば、有機樹脂、ガラス、シリコンまたはセラミックスにより形成することができる。また、インクガイド22は、その先端部42を金属蒸着してもよい。このように、インクガイド22の先端部42に金属蒸着膜を形成することにより、インクガイド22の先端部42の誘電率が実質的に大きくなる。これにより、強電界を生じさせ易くなり、インクの吐出性を向上させることができる。
また、インクガイド22は、例えば、フォトリソグラフィ法などの半導体製造プロセスに用いられる各種製造方法、またはレーザ加工方法を用いることにより作製することができる。
【0053】
また、本実施例のインクガイド22は、裏面22aを共通にして先端部42を支持部40にして延設し、先端部42の表面42c側の片面だけに段差が生じる構成としたが、本発明は、これに限定されるものではなく、段差を設けて延設すればよい。メニスカスの対称性を考慮すると、先端部42の表面および裏面の両面側に段差が生じる構造がより好ましい。この場合、先端に形成されるメニスカスの大きさが大きくなり、そのメニスカスの大きさを小さくするには先端部の厚さを薄くする必要があるため、加工適正からすると先端部42の片面に段差がある構造のほうが良い。
【0054】
また、本実施例のインクガイド22は、例えば、全体の高さは580μmであり、全体(支持部40)の幅Wは210μmであり、1対の斜面46により形成される先端部42の先端角度は90°である。また、支持部40の厚さtは50μmであり、先端部42の厚さtは13μmである。さらに、端部44のエッジ部44bと先端部42の先端46aとの間の距離である先端部長さLは100μmである。
【0055】
また、本実施例のインクガイド22においては、支持部40の厚さtと先端部42の厚さtとの差(段差)が20μm以上であることが好ましい。本実施例のインクガイド22において、20μm以上の差(段差)を有していない場合、メニスカスのピニングの効果が減少してしまう。
【0056】
また、本実施例のインクガイド22は、インクガイドの先端部すなわちメニスカス先端部での電界集中を考慮すると、少なくとも上部は先端に向けて次第に細くなる形状とするのが好ましい。このように、インクガイドの先端部を先鋭化することにより、メニスカスが小さくなり、インク液滴の吐出性を向上させることができ、かつインク液滴Rを微小にできる。
【0057】
吐出口24は、図2に示すように、長方形の両方の短辺側を半円形にした、インク流方向に細長い繭形状である。この吐出口24は、インク流方向Dにおける長さmと、このインク流方向Dに直交する方向αにおける長さnとのアスペクト比(m/n)が、例えば、1以上である。また、インクガイド22が、その幅方向と吐出口24のインク流方向Dとを一致させて配置されている。
本実施例においては、吐出口24におけるアスペクト比を1以上とすることにより、吐出口24にインクQの供給を容易にすることができる。すなわち、吐出口24へのインクQの粒子供給性を高めることができる。これにより、吐出口24にはインクQが十分かつ円滑に供給されるため、インク液滴Rの吐出周波数応答性が向上し、さらにはインクQの目詰まりの発生が防止される。
【0058】
本実施例においては、吐出口24を細長い繭形状としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、吐出口24からインク液滴Rを吐出することができるものであればよい。吐出口24としては、例えば、略円形、楕円形、長方形、ひし形、平行四辺形など任意の形状にすることができる。また、吐出口24としては、例えば、インク流方向Dを長辺とする矩形、またはインク流方向を長軸とする楕円形もしくはひし形にすることができる。さらに、吐出口24としては、インク流の上流側を上底、下流側を下底とし、インク流方向の高さが下底よりも長い台形状にしてもよい。この場合、上流側の辺を長くしても下流側の辺を長くしてもよい。また、インク流方向を長辺とする長方形の両方の短辺側に、直径がその長方形の短辺よりも大きな円が接続されたような形状にしてもよい。また、吐出口24は、その中心に対して、上流側と下流側で対称な形状であっても非対称な形状であっても良い。例えば、矩形状の吐出口の上流側と下流側の少なくとも一方の端部を半円状にして吐出口を形成してもよい。
【0059】
前述のように、吐出基板19と支持基板20との間に形成されるインク流路32には、インク循環系16によってインクが供給される。
インク循環系16は、インクQを貯留するインクタンクおよびインクQを供給するポンプを有するインク供給手段54と、インク供給手段54とインク流路32のインク流入口(インク流路32の図1中の右側端部)とを接続するインク供給流路56と、インク流路32のインク流出口(同左側端部)とインク供給手段54とを接続するインク回収流路58とを有して構成される。また、これ以外にも、インクタンクへのインク補充手段等を有してもよい。
【0060】
インクQは、インク供給手段54からインク供給流路56を経て液体吐出ヘッド12のインク流路32に供給されて、インク流路32をインク流方向Dに流れ(図中右から左に流れる)、インク流路32からインク回収流路58を経てインク供給手段54に戻る経路で循環され、これによりインク流路24から各ノズル28に供給される。
なお、本発明の液体吐出ヘッド12が吐出するインクQとしては、色材を含む帯電粒子を分散媒にしてなるインクQ等、帯電した微粒子を分散媒に分散してなる、静電式のインクジェットに利用される各種のインクQ(溶液)が利用可能であり、詳細については後で説明する。
【0061】
前述のように、保持手段14は、記録媒体Pを保持して液体吐出ヘッド12のノズル列方向と直交方向(以下、走査方向という)に走査搬送するものである。
保持手段14は、液体吐出ヘッド12(吐出基板19)の上面に対面した状態で記録媒体Pを保持するプラテンとしても作用する対向電極60と、対向バイアス電源62と、対向電極60を走査方向に移動することにより、記録媒体Pを走査方向に走査搬送する走査搬送手段(図示省略)とを有して構成される。この走査搬送により、記録媒体Pは、液体吐出ヘッド12の吐出口24(ノズル列)によって、全面を二次元的に走査され、各吐出口24から変調して吐出されたインク液滴Rによって画像を記録される。
【0062】
対向電極60による記録媒体Pの保持手段は、特に限定されるものではなく、静電気を利用する方法、治具を用いる方法、または吸引による方法等、公知の方法によればよい。
また、対向電極60の移動方法にも、特に限定はなく、公知の板状部材の移動方法を利用すれば良い。なお、本発明の液体吐出ヘッド12を利用する記録装置においては、記録媒体Pを固定して、液体吐出ヘッド12を移動(走査)することにより、ノズル列で記録媒体Pを走査するようにしてもよい。
対向バイアス電源62は、吐出電極30(=色材粒子)と逆極性のバイアス電圧を対向電極60に印加するものである。なお、バイアス電源62の他極側は、接地されている。
【0063】
以下、画像記録装置10における画像記録の作用について説明する。
画像記録時には、インク循環系16によって、インク供給手段54〜インク供給流路56〜液体吐出ヘッド12のインク流路32〜インク回収流路58〜インク供給手段54の経路でインクQが循環される。この循環により、インク流路32をインクQが、例えば、200mm/秒の流速で流れ、これにより各吐出口24にインクQが供給される。
また、画像記録時には、バイアス電源52が吐出電極30に、例えば、100Vのバイアス電圧を印加している。さらに、記録媒体Pは対向電極60に保持され、対向電極60には、対向バイアス電源62が、例えば、−1000Vのバイアス電圧を印加している。従って、吐出電極30と対向電極60(記録媒体P)との間には、1100V分のバイアス電圧が印加され、その分の電界(静電力)が形成されている。
【0064】
このインクQの循環、バイアス電圧による静電力、インクQの表面張力、毛管現象、インクガイド22の作用などにより、吐出口24にはインクQのメニスカスが形成され、また、色材粒子(本例では正に帯電)が吐出口24(メニスカス)に泳動してインクQが濃縮され、この濃縮の作用によってメニスカスがさらに成長し、インクQの表面張力と静電力等とのバランスが取れることによってメニスカスが安定した状態となっている。
【0065】
この状態において、駆動電源50が吐出電極30に、例えば、200Vの駆動電圧を印加すると、インクQおよびメニスカスに作用する静電力が大きくなり、かつ、メニスカスでのインクQの濃縮が促進されて、メニスカスが急激に成長し、メニスカスの成長力、色材粒子のメニスカスへの移動力、および対向電極60からの吸引力が、インクQの表面張力を超えた時点で、色材粒子が濃縮されたインクQのインク液滴Rが吐出される。
吐出されたインク液滴Rは、吐出された際の勢い、および、対向電極60による引力によって飛翔し、記録媒体Pに着弾して画像を形成する。
【0066】
前述のように、画像記録時には、記録媒体Pは液体吐出ヘッド12と対面した状態で、ノズル列と直交する走査方向に走査搬送されている。
従って、この走査搬送に同期して、画像データ(インク液滴Rの吐出信号)に応じて変調して各吐出電極30に駆動電圧を印加(吐出電極30を駆動)することにより、記録する画像に応じて変調してインク液滴Rを吐出して、記録媒体Pの全面にオンデマンドで画像記録を行うことができる。
【0067】
本発明の液体吐出ヘッド12は、上述の如く、端部44が、先端形状と相似形に成形されたインクガイド22が設けられており、このインクガイド22によりインク液滴Rが吐出されるものである。
【0068】
本実施例のインクガイド22は、上述の如く、端部44のエッジ部44bがインク液面からのメニスカスMのピニング点Fとなる。さらに、ピニング点Fが新しいメニスカスMを固定するピンニング点としても作用する。これにより、更に高い位置にメニスカスMが形成される。また、先端部42には、先端部42の先端46a形状と略相似形のメニスカスM3が形成される。このようにインクガイド22の先端46aにまでインクQを行き渡らせた状態で、インク液滴Rを吐出させることができる。
【0069】
また、インクガイド22により得られるメニスカスは、先端部の先端形状を反映したものであり、特許文献1のインクガイドのように先端形状がインクにより形成されるものではない。このため、本実施例のインクガイド22により得られるメニスカスは、振動などの外乱が加わった場合でも、従来のようなメニスカス形状の変動が生じることがなく、メニスカスの形状安定性が優れている。さらに、インクガイド22により得られるメニスカスは先端部42の先端形状を反映したものであり、インク液滴Rを、インクガイド22の先端部42の先端形状に応じた所定のサイズにできる。
このため、液体吐出ヘッド12を有する画像記録装置10においては、各吐出口24において、メニスカスが高い位置に保持されるため、先端46aにインクQが十分に供給される。これにより、高速で連続的にインク液滴Rを吐出する場合でも、インクQが十分に供給され、インク液滴Rの吐出周波数応答性を高くすることができる。よって、画像記録を高速で行うことができる。
【0070】
さらに、メニスカスの形状安定性が優れているため、記録媒体Pへのインク液滴Rの着弾精度を高くすることができるとともに、インク液滴Rを所定のサイズで吐出し、かつサイズのバラツキも抑制される。このため、高画質の画像記録を行うことができる。また、カラー画像を形成する場合、色ずれが抑制された高画質の画像記録を行うことができる。
【0071】
本実施例の液体吐出ヘッド12においては、インクガイド22を設けることにより、吐出口24のメニスカスMの位置を高く維持することができ、かつメニスカスの形状を安定にすることができる。このため、インク液滴Rの吐出周波数応答性およびインク液滴Rの着弾精度を高くすることができるとともに、インク液滴Rのサイズのバラツキを小さくすることができる。このように、本実施例の液体吐出ヘッド12においては、インク液滴Rの吐出性能が高いものである。
【0072】
また、本実施例の液体吐出ヘッド12においては、吐出口24がインク流方向Dに延びた細長い繭形状であるため、吐出口24にはインクQが十分かつ円滑に供給される。これにより、インク液滴Rの吐出周波数応答性が更に向上し、加えて吐出口24におけるインクQの目詰まりの発生が防止される。
【0073】
さらに、本実施例の液体吐出ヘッド12を有する画像記録装置10においては、画像記録を高速で、かつ高画質に行うことができる。
【0074】
次に、本発明の第2の実施例について説明する。なお、本実施例においては、図1乃至図3(a)〜(c)に示す第1の実施例の画像記録装置と同一構成物には、同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0075】
図4は、本発明の第2の実施例に係る液体吐出ヘッドの要部を示す模式的部分断面図である。図5(a)は、本発明の第2の実施例に係る液体吐出ヘッドのインクガイドを示す模式的斜視図であり、(b)は、図5(a)の模式的平面図であり、(c)は、図5(a)の模式的側面図である。
【0076】
本実施例の液体吐出ヘッド12aは、第1の実施例の液体吐出ヘッド12に比して、インクガイド70が異なり、それ以外の構成は、第1の実施例の液体吐出ヘッド12と同様の構成であるため、その詳細な説明は省略する。
【0077】
図4および図5(a)〜(c)に示すように、インクガイド70は、平板状の支持部72と、この支持部72にインクガイド70の裏面70aを共有して延設された先端部74とを有する。このインクガイド70は、第1の実施例のインクガイド22に比して、支持部72の端部80が櫛歯状に成形されたものであり、それ以外の先端部74の先端形状、および支持部72の構造については、第1の実施例のインクガイド22の先端部42および支持部40と同様の構成であるため、その詳細な説明は省略する。
【0078】
支持部の端部80は、先端部74の延設方向に延びる切欠部82が、例えば、3つ支持部72の幅方向に所定の間隔をあけて形成されている。これら、3つの切欠部82により、2つの歯部84が形成される。先端部74側における歯部84のエッジ部84aは、所定の曲率を有する曲面で形成されている。歯部84のエッジ部84aは、例えば、先端部76の肩部76bよりも上側にある。このように、歯部84のエッジ部84aを曲面で構成することにより、吐出部近傍に強い不要電界を発生させることなく、インクの吐出性を安定させることができる。
【0079】
本実施例のインクガイド70は、端部80を櫛歯状に形成することにより、切欠部82がインク溜りの役割、および毛細管の役割を果たし、インクQをインクガイド70の先端部74に供給することができる。このため、歯部84のエッジ部84aは、先端部74の先端76aとの距離が近いことが好ましい。
【0080】
また、歯部84のエッジ部84aは、第1の実施例のインクガイド22のエッジ部44b(図3(a)参照)と同様に、メニスカスのピニング点として作用するものでもある。このようなことから、歯部84のエッジ部84aは、吐出口24の表面(ガード電極26の表面26a)よりも上側にあることが好ましい。さらに、インクガイド70の先端部76の肩部76bは、吐出口24の表面よりも上側となるように配置されることが多く、歯部84のエッジ部84aは、例えば、先端部76の肩部76bよりも上側にあることが好ましい。
【0081】
さらに、インクガイド70の端部80を櫛歯状に形成することにより、歯部84が先端部74の補強材の役割を果たす。このため、インクガイド70、特に先端部74の機械的強度を高くすることができる。インクガイド70は、極めて小さいものであり、先端部74も極めて薄いものであるため、先端部74の機械的強度を高くすることは有効である。
また、歯部84のエッジ部84aは、例えば、先端部76の肩部76bよりも上側にすることにより、先端部74とエッジ部84aとの距離が短くなり機械的強度も高くなる。
【0082】
このように、インクガイド70の端部80を櫛歯状に成形することにより、インクQの供給を容易にすることができるとともに、機械的強度も高くすることができる。
なお、本実施例のインクガイド70は、例えば、全体の高さは580μmであり、全体(支持部72)の幅Wは210μmである。また、1対の斜面76により形成される先端部74の先端角度は90°であり、先端部74の曲率半径はいずれも6μmであり、支持部72の厚さtは50μmであり、先端部74の厚さtは13μmである。また、端部80のエッジ部84aと先端部74の先端76aとの間の距離である先端部長さLは50μmである。さらに、歯部84の幅は30μmであり、歯部のエッジ部84aの曲率半径は15μmである。
【0083】
また、本実施例のインクガイド70においても、第1の実施例と同様に、支持部72の厚さtと先端部74の厚さtとの差(段差)が20μm以上であることが好ましい。本実施例のインクガイド70においても、20μm以上の差(段差)を有していない場合、メニスカスのピニングの効果が減少してしまう。
【0084】
なお、本実施例のインクガイド70は、切欠部82を3つ設ける構成としたが、これに限定されるものではなく、切欠部82は、少なくとも1つ形成されていればよい。
また、本実施例のインクガイド70は、第1の実施例のインクガイド22と同様の製造方法により作製することができる。
【0085】
本実施例の液体吐出ヘッド12aにおいては、各吐出口24にインクガイド70がそれぞれ設けられており、各吐出口24にはメニスカスが形成される。本実施例におけるインクガイド70により形成されるメニスカスについて説明する。
【0086】
本実施例においても、第1の実施例と同様に、図5(c)に示すように、端部80のエッジ部84aがメニスカスMのピニング点Fとなる。このピニング点Fは端部80の櫛歯形状で決定されるものであり、一度固定された場合には、動くことがない安定点である。さらに、ピニング点Fは、新しいメニスカスMを固定するピンニング点としても作用する。これにより、更に高い位置にメニスカスMが形成される。このようにして、先端部74の先端76aにまでインクQを行き渡らせることができる。また、先端部74には、先端部74の先端76a形状と略相似形のメニスカスMが形成される。
【0087】
本実施例のインクガイド70においては、端部80が櫛歯状に成形されているため、第1の実施例のインクガイド22に比して、端部80の長さが長い。このため、第1の実施例のインクガイド22よりもメニスカスを更に強固に固定することができ、メニスカスの形状安定性を更に高くすることができる。
【0088】
また、本実施例のインクガイド70においては、切欠部82にインクQが貯まり、毛細管現象によりインクガイド70の先端部74にインクQが供給される。このインクガイド70は、インク供給能力は第1の実施例のインクガイド22よりも高い。
このように、本実施例のインクガイド70は、第1の実施例のインクガイド22よりもメニスカスの位置を更に高く保持することができるとともに、先端部74へのインクQの供給も更に円滑に行われる。
なお、本実施例の液体吐出ヘッド12aおよびこの液体ヘッド12aを有する画像記録装置は、いずれも上述の第1の実施例と同様の効果が得られることはいうまでもない。
【0089】
本実施例の液体吐出ヘッド12aによれば、インクガイド70によるメニスカスの形状安定性およびインク供給能力が、第1の実施例のインクガイド22よりも高く、インクガイド70の先端76aにまでインクQを行き渡らせた状態で、インク液滴を吐出させることができる。また、メニスカス形状安定性が更に優れるため、振動などの外乱が加わった場合でも、メニスカス形状の変動が更に抑制される。
【0090】
本実施例の液体吐出ヘッド12aにおいては、インクガイド70を設けることにより、吐出口24のメニスカスの位置を更に高くすることができ、かつメニスカスMの形状を更に安定にすることができるため、インク液滴Rの吐出周波数応答性およびインク液滴Rの着弾精度を更に高くすることができ、かつインク液滴Rを所定のサイズで、かつバラツキを小さく吐出させることができ、インク液滴Rの吐出性能を更に高くすることができる。
【0091】
また、本実施例の液体吐出ヘッド12aを有する画像記録装置においては、各吐出口24において、メニスカスが更に高い位置に保持され、かつ端部80の切欠部82から先端76aにインクQが更に十分に供給される。これにより、吐出周波数応答性を更に高くすることができる。よって、画像記録を更に高速で行うことができる。
さらに、本実施例の液体吐出ヘッド12aを有する画像記録装置においては、メニスカスの形状安定性が更に優れているため、更に高画質の画像記録を行うことができる。また、カラー画像を形成する場合、色ずれが更に抑制された高画質の画像記録を行うことができる。
【0092】
次に、第1の実施例および第2の実施例の画像記録装置に用いられるインクQについて詳細に説明する。
インクQは、色材粒子をキャリア液に分散することにより得られる。キャリア液は、高い電気抵抗率(109Ω・cm以上、好ましくは1010Ω・cm以上)を有する誘電性の液体(非水溶媒)であるのが好ましい。キャリア液の電気抵抗が低いと、制御電極に印加される駆動電圧により、キャリア液自身が電荷注入を受けて帯電してしまい、色材粒子の濃縮がおこらない。また、電気抵抗の低いキャリア液は、隣接する制御電極間での電気的導通を生じさせる懸念もあるため不向きである。
【0093】
キャリア液として用いられる誘電性液体の比誘電率は、5以下が好ましく、より好ましくは4以下、さらに好ましくは3.5以下である。このような比誘電率の範囲とすることによって、キャリア液中の色材粒子に有効に電界が作用し、泳動が起こりやすくなる。
なお、このようなキャリア液の固有電気抵抗の上限値は1016Ω・cm程度であるのが望ましく、比誘電率の下限値は1.9程度であるのが望ましい。キャリア液の電気抵抗が上記範囲であるのが望ましい理由は、電気抵抗が低くなると、低電界下でのインクの吐出が悪くなるからであり、比誘電率が上記範囲であるのが望ましい理由は、誘電率が高くなると溶媒の分極により電界が緩和され、これにより形成されたドットの色が薄くなったり、滲みを生じたりするからである。
【0094】
キャリア液として用いられる誘電性液体としては、好ましくは直鎖状もしくは分岐状の脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、または芳香族炭化水素、および、これらの炭化水素のハロゲン置換体がある。例えば、へキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、イソデカン、デカリン、ノナン、ドデカン、イソドデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、アイソパーC、アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーM(アイソパー:エクソン社の商品名)、シェルゾール70、シェルゾール71(シェルゾール:シェルオイル社の商品名)、アムスコOMS、アムスコ460溶剤(アムスコ:スピリッツ社の商品名)、シリコーンオイル(例えば、信越シリコーン社製KF−96L)等を単独あるいは混合して用いることができる。
【0095】
このようなキャリア液に分散される色材粒子は、色材自身を色材粒子としてキャリア液中に分散させてもよいが、好ましくは、定着性を向上させるための分散樹脂粒子を含有させる。分散樹脂粒子を含有させる場合、顔料などは分散樹脂粒子の樹脂材料で被覆して樹脂被覆粒子とする方法などが一般的であり、染料などは分散樹脂粒子を着色して着色粒子とする方法などが一般的である。
【0096】
色材としては、従来からインクジェットインク組成物、印刷用(油性)インキ組成物、あるいは静電写真用液体現像剤に用いられている顔料および染料であればどれでも使用可能である。
色材として用いる顔料としては、無機顔料、有機顔料を問わず、印刷の技術分野で一般に用いられているものを使用することができる。具体的には、例えば、カーボンブラック、カドミウムレッド、モリブデンレッド、クロムイエロー、カドミウムイエロー、チタンイエロー、酸化クロム、ビリジアン、コバルトグリーン、ウルトラマリンブルー、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料、等の従来公知の顔料を特に限定されることなく用いることができる。
色材として用いる染料としては、アゾ染料、金属錯塩染料、ナフトール染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、カーボニウム染料、キノンイミン染料、キサンテン染料、アニリン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、フタロシアニン染料、金属フタロシアニン染料、等の油溶性染料が好ましく例示される。
【0097】
さらに、分散樹脂粒子としては、例えば、ロジン類、ロジン変性フェノール樹脂、アルキッド樹脂、(メタ)アクリル系ポリマー、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニールアルコールのアセタール変性物、ポリカーボネート等を挙げられる。
これらのうち、粒子形成の容易さの観点から、重量平均分子量が2,000〜1,000,000の範囲内であり、かつ多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が、1.0〜5.0の範囲内であるポリマーが好ましい。さらに、前記定着の容易さの観点から、軟化点、ガラス転移点または、融点のいずれか1つが40℃〜120℃の範囲内にあるポリマーが好ましい。
【0098】
インクQにおいて、色材粒子の含有量(色材粒子あるいはさらに分散樹脂粒子の合計含有量)は、インク全体に対して0.5〜30重量%の範囲で含有されることが好ましく、より好ましくは1.5〜25重量%、さらに好ましくは3〜20重量%の範囲で含有されることが望ましい。色材粒子の含有量が少なくなると、印刷画像濃度が不足したり、インクQと記録媒体P表面との親和性が得られ難くなって強固な画像が得られなくなったりするなどの問題が生じ易くなり、一方、含有量が多くなると均一な分散液が得られにくくなったり、インクジェットヘッド等でのインクQの目詰まりが生じやすく、安定なインク吐出が得られにくいなどの問題が生じるからである。
【0099】
また、キャリア液に分散された色材粒子の平均粒径は、0.1〜5μmが好ましく、より好ましくは0.2〜1.5μmであり、更に好ましくは0.4〜1.0μmである。この粒径はCAPA−500(堀場製作所(株)製商品名)により求めたものである。
【0100】
色材粒子をキャリア液に分散させた後(必要に応じて、分散剤を使用しても可)、荷電制御剤をキャリア液に添加することにより色材粒子を荷電して、荷電した色材粒子をキャリア液に分散してなるインクQとする。なお、色材粒子の分散時には、必要に応じて、分散媒を添加してもよい。
荷電制御剤は、一例として、電子写真液体現像剤に用いられている各種のものが利用可能である。また、「最近の電子写真現像システムとトナー材料の開発・実用化」139〜148頁、電子写真学会編「電子写真技術の基礎と応用」497〜505頁(コロナ社、1988年刊)、原崎勇次「電子写真」16(No.2)、44頁(1977年)等に記載の各種の荷電制御剤も利用可能である。
【0101】
なお、色材粒子は、制御電極に印加される駆動電圧と同極性であれば、正電荷および負電荷のいずれに荷電したものであってもよい。
また、色材粒子の荷電量は、好ましくは5〜200μC/g、より好ましくは10〜150μC/g、さらに好ましくは15〜100μC/gの範囲である。
【0102】
また、荷電制御剤の添加によって誘電性溶媒の電気抵抗が変化することもあるため、下記数式(2)のより定義される分配率Pを、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上とする。
【0103】
P=100×(σ1−σ2)/σ1 ・・・(2)
【0104】
ここで、上記数式(2)において、σ1は、インクQの電気伝導度、σ2は、インクQを遠心分離器にかけた上澄みの電気伝導度である。電気伝導度は、LCRメーター(安藤電気(株)社製AG−4311)および液体用電極(川口電機製作所(株)社製LP−05型)を使用し、印加電圧5V、周波数1kHzの条件で測定を行った値である。また遠心分離は、小型高速冷却遠心機(トミー精工(株)社製SRX−201)を使用し、回転速度14500rpm、温度23℃の条件で30分間行った。
以上のようなインクQを用いることによって、荷電粒子の泳動が起こりやすくなり、濃縮しやすくなる。
【0105】
インクQの電気伝導度は、100〜3000pS/cmが好ましく、より好ましくは150〜2500pS/cm、さらに好ましくは200〜2000pS/cmである。以上のような電気伝導度の範囲とすることによって、制御電極に印加する電圧が極端に高くならず、隣接する記録電極間での電気的導通を生じさせる懸念もない。
また、インクQの表面張力は、15〜50mN/mの範囲が好ましく、より好ましくは15.5〜45mN/m、さらに好ましくは16〜40mN/mの範囲である。表面張力をこの範囲とすることによって、制御電極に印加する電圧が極端に高くならず、ヘッド周りにインクが漏れ広がり汚染することがない。
さらに、インクQの粘度は0.5〜5mPa・secが好ましく、より好ましくは0.6〜3.0mPa・sec、さらに好ましくは0.7〜2.0mPa・secである。
【0106】
このようなインクQは、一例として、色材粒子をキャリア液に分散して粒子化し、かつ、荷電調整剤を分散媒に添加して、色材粒子に荷電を生じさせることで、調製できる。具体的な方法としては、以下の方法が例示される。
(1)色材あるいはさらに分散樹脂粒子をあらかじめ混合(混練)した後、必要に応じて分散剤を用いてキャリア液に分散し、荷電調整剤を加える方法。
(2)色材、あるいはさらに分散樹脂粒子および分散剤を、キャリア液に同時に添加して、分散し、荷電調整剤を加える方法。
(3)色材および荷電調整剤、あるいはさらに分散樹脂粒子および分散剤を、同時にキャリア液に添加して、分散する方法。
【0107】
次に、図3(a)に示す第1の実施例のインクガイド22、図5(a)に示す第2の実施例のインクガイド70、図6(a)に示す従来のインクガイド100および図7に示すインクガイド204について、メニスカス高さおよびインク吐出性能について評価した。メニスカス高さについては、インクガイドの先端にインクが到達しているか否かを評価した。なお、メニスカス高さの評価は、インクガイドの先端にインクが到達しているものを○とし、達していないものを×とした。
【0108】
また、インク吐出性能については、インクを吐出させたときのドットの大きさ、着弾精度、応答性などを総合的に評価した。インク吐出性能の評価は、吐出性能が極めて優れているものを◎とし、吐出性能が優れているものを○とし、インクの吐出が不十分、またはインクの吐出ができなかったものを×とした。これらの結果を下記表1に示す。なお、下記表1において、第1の実施例のインクガイド22を実施例1とし、第2の実施例のインクガイド70を実施例2とし、インクガイド100を比較例1とし、インクガイド204を比較例2とした。
なお、比較例1(インクガイド100)は、全体の高さが580μmであり、全体の幅が210μmであり、厚さが50μmである。
また、比較例2(インクガイド204)は、全体の高さが580μmであり、全体の幅が210μmであり、厚さが50μmである。また、インク案内溝220の幅が50μmである。
【0109】
【表1】

【0110】
上記表1に示すように、本発明の第1の実施例のインクガイド22(実施例1)および第2の実施例のインクガイド70(実施例2)は、いずれも先端に達するメニスカス高さを得ることができた。さらに、本発明の第1の実施例のインクガイド22は、インク吐出性能も優れたものであり、第2の実施例のインクガイド70は、更にインク吐出性能が優れたものであった。
【0111】
一方、インクガイド100(比較例1)は、十分なメニスカス高さを得ることができず、インクを吐出させることができないものであった。
また、インクガイド204(比較例2)は、先端に達するメニスカス高さを得ることができた。しかしながら、インクガイド204(比較例2)は、インクを吐出することができるものの、ドットサイズおよびインク液滴の着弾精度が不十分であった。
【0112】
以上、本発明の液体吐出ヘッドおよび画像記録装置について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定はされず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の変更および改良をしてもよいのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明の第1の実施例に係る液体吐出ヘッドを有する画像記録装置を示す模式的断面図である。
【図2】図1に示す液体吐出ヘッドの要部模式的斜視図である。
【図3】(a)は、本発明の第1の実施例に係る液体吐出ヘッドのインクガイドを示す模式的斜視図であり、(b)は、図3(a)の模式的正面図であり、(c)は、図3(a)の模式的側面図である。
【図4】本発明の第2の実施例に係る液体吐出ヘッドの要部を示す模式的部分断面図である。
【図5】(a)は、本発明の第2の実施例に係る液体吐出ヘッドのインクガイドを示す模式的斜視図であり、(b)は、図5(a)の模式的平面図であり、(c)は、図5(a)の模式的側面図である。
【図6】(a)は、従来のインクガイドを示す模式的平面図であり、(b)は、図6(a)の模式的側面図である。
【図7】従来の液体吐出ヘッドの一例を説明するための概念図である。
【符号の説明】
【0114】
10 画像記録装置
12、12a、200 液体吐出ヘッド
14 保持手段
16 インク循環系
18 電圧印加手段
19、206 吐出基板
20、202 支持基板
22、70、204 インクガイド
24、218 吐出口
26 ガード電極
30、208 吐出電極
32、216 インク流路
40、70 支持部
42、72 先端部
44、80 端部
50、214 駆動電源
52、212 バイアス電源
54 インク循環手段
56 インク供給流路
58 インク回収流路
60、210 対向電極
62 対向バイアス電源
82 切欠部
84 歯部
F ピニング点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電粒子が分散された溶液に静電力を作用させて、前記溶液の液滴を吐出させる液体吐出ヘッドであって、
前記液滴を吐出する複数の貫通孔が形成された絶縁性の吐出基板と、
前記貫通孔の個々に対応して配置される、前記溶液に静電力を作用させる吐出電極と、
前記貫通孔を通過して前記吐出基板の液滴吐出側に突出する溶液ガイドとを有し、
前記溶液ガイドは、平板状の支持部と、前記支持部の端部における厚さ方向の所定の位置に段差を付けて延設され、前記支持部の厚さよりも薄い平板状の先端部とを備え、
前記溶液ガイドは、前記先端部が前記液滴吐出側に向けて配置されていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記溶液ガイドは、前記先端部が前記液滴吐出側に向かって次第に細くなる先端形状を有し、
前記先端部が接続されて生じた前記段差における前記支持部の端部は、前記先端形状と略相似形状に形成されている請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記溶液ガイドは、前記先端部が前記液滴吐出側に向かって次第に細くなる先端形状を有し、
前記先端部が接続されて生じた前記段差における前記支持部の端部は、前記液滴吐出方向に伸びる切欠部が少なくとも1つ形成され、少なくとも1つの歯部を有する櫛歯状に成形されている請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記櫛歯状に成形された前記支持部の端部は、少なくとも1つの歯部が前記支持部の端部よりも前記溶液吐出側に突出している請求項3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記溶液ガイドは、前記先端部の先端の曲率半径が2μm以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記溶液ガイドは、前記支持部の厚さと前記先端部の厚さとの差が20μm以上である請求項1〜5のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記先端部が、前記段差が前記先端部の片面側だけに生じるように前記支持部に延設されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドを有し、画像データに応じた画像を記録媒体上に記録することを特徴とする画像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−334818(P2006−334818A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−159329(P2005−159329)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000005201)富士フイルムホールディングス株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】