説明

液体吐出ヘッド及び画像形成装置

【課題】キャリッジ駆動モータのホールド制御によって消費電流が多くなる。
【解決手段】キャリッジ3の位置ずれが生じる温度を設定し、キャリッジ3の周辺温度を検出し、検出した温度(検出温度)が設定温度以上であるか否かを判別し、検出温度が設定温度以上でなければ、ホールド期間では主走査モータ5にホールド電流又は電圧を供給するホールド制御し、検出温度が設定温度以上であれば、ホールド期間では主走査モータ5にホールド電流又は電圧を供給していない状態にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体吐出ヘッド及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する液体吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)からなる記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置として例えばインクジェット記録装置などが知られている。
【0003】
このような画像形成装置として、記録ヘッド及び記録ヘッドに液体を供給するヘッドタンクをキャリッジに搭載し、装置本体側のメインタンクから可撓性チューブからなる供給チューブを介してヘッドタンクに液体を供給するものが知られている。
【0004】
このように、チューブ供給方式でメインタンクからヘッドタンクに液体を供給する場合、キャリッジを所定の位置に停止するとき、供給チューブの復元力でキャリッジ位置が変動することを防止するため、キャリッジを駆動するモータにホールド電流又は電圧を供給してモータをホールド状態にすることで、キャリッジの停止状態における位置変動を抑制することが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−178142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、キャリッジの位置変動に抑えるためにモータにホールド電流又は電圧を供給し続けることは、キャリッジに与える供給チューブの影響が少ない場合でも通電し続けることになり、消費電力が大きくなるという課題がある。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、消費電力を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、
液滴を吐出する記録ヘッド及び前記記録ヘッドに液体を供給するヘッドタンクを搭載したキャリッジと、
前記ヘッドタンクに前記液体を供給するメインタンクと、
前記メインタンクから前記ヘッドタンクへの液体供給経路を形成する可撓性チューブと、
前記キャリッジを駆動するモータと、
前記モータを駆動するモータ駆動部と、
装置の周辺温度を検出する温度検出手段と、
前記キャリッジを所定の位置に停止させるとき、前記モータ駆動部から前記モータに対してホールド電流又は電圧を供給させて前記モータをホールド状態にする制御をする制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記温度検出手段の検出結果が予め定めた設定温度以上であるときには、前記モータ駆動部から前記モータに対して前記ホールド電流又は電圧を供給させない制御をする
構成とした。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る画像形成装置によれば、キャリッジを所定の位置に停止させるとき、装置の周辺温度が設定温度以上であるときにはモータに対してホールド電流又は電圧の供給させない制御をする構成としたので、キャリッジの位置変動に与える可撓性チューブの影響が小さくなる高温時の消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一例の機構部の平面説明図である。
【図2】同機構部の要部側面説明図である。
【図3】同装置の同制御部のブロック説明図である。
【図4】同制御部におけるキャリッジの主走査移動制御に関わる部分のブロック説明図である。
【図5】モータ駆動部の一例の回路説明図である。
【図6】主走査モータのPWM制御の説明に供する説明図である。
【図7】主走査モータをホールド状態にするホールド制御の説明に供する説明図である。
【図8】供給チューブがキャリッジに与える負荷の説明に供する説明図である。
【図9】キャリッジの主走査駆動制御の説明に供する説明図である。
【図10】本発明の第1実施形態における制御部によるモータのホールド制御処理の説明に供するフロー図である。
【図11】本発明の第2実施形態における制御部によるモータのホールド制御処理の説明に供するフロー図である。
【図12】本発明の第3実施形態における制御部による設定温度更新処理の説明に供するフロー図である。
【図13】本発明の第4実施形態における制御部による設定温度更新処理の説明に供するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る画像形成装置の一例について図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の機構部の平面説明図、図2は同機構部の要部側面説明図である。
【0012】
この画像形成装置は、シリアル型インクジェット記録装置であり、左右の側板100L,100R間に架け渡した主ガイド部材1及び図示しない従ガイド部材でキャリッジ3を移動自在に保持し、主走査モータ5によって、駆動プーリ6と従動プーリ7間に渡したタイミングベルト8を介して主走査方向に移動走査する。
【0013】
このキャリッジ3には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド4y、4m、4c、4k(区別しないときは「記録ヘッド4」という。)を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0014】
また、キャリッジ3には、記録ヘッド4のノズル列に対応して各色のインクを供給するためのヘッドタンク35を搭載している。このヘッドタンク35には、装置本体側に着脱自在に装着される各色のメインタンクであるインクカートリッジ10y、10m、10c、10kから、供給ポンプユニット30によって各色の可撓性チューブからなる供給チューブ36を介して、各色の液体が供給される。
【0015】
一方、用紙9を搬送するために、用紙9を静電吸着して記録ヘッド4に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト12を備えている。この搬送ベルト12は、無端状ベルトであり、搬送ローラ13とテンションローラ14との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成し、周回移動しながら帯電ローラ15によって帯電(電荷付与)される。
【0016】
また、搬送ベルト12は、副走査モータ16によってタイミングベルト17及びタイミングプーリ18を介して搬送ローラ13が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
【0017】
さらに、キャリッジ3の主走査方向の一方側には搬送ベルト12の側方に記録ヘッド4の維持回復を行う維持回復機構21が配置され、他方側には搬送ベルト12の側方に記録ヘッド4から空吐出を行う空吐出受け21がそれぞれ配置されている。
【0018】
なお、維持回復機構20は、例えば記録ヘッド4のノズル面(ノズルが形成された面)をキャッピングする4個のキャップ部材31、ノズル面を払拭するワイパ部材32、画像形成に寄与しない液滴(空吐出滴)を受ける空吐出受け33などで構成されている。
【0019】
また、キャリッジ3の主走査方向に沿って両側板間に、所定のパターンを形成したエンコーダスケール23を張り渡し、キャリッジ3にはエンコーダスケール23のパターンを読取る透過型フォトセンサからなるエンコーダセンサ24を設け、これらのエンコーダスケール23とエンコーダセンサ24によってキャリッジ3の移動を検知するリニアエンコーダ(主走査エンコーダ)25を構成している。
【0020】
また、搬送ローラ13の軸にはコードホイール26を取り付け、このコードホイール26に形成したパターンを検出する透過型フォトセンサからなるエンコーダセンサ27を設けて、これらのコードホイール26とエンコーダセンサ27によって搬送ベルト12の移動量及び移動位置を検出するロータリエンコーダ(副走査エンコーダ)28を構成している。
【0021】
このように構成したこの画像形成装置においては、図示しない給紙トレイから用紙9が帯電された搬送ベルト12上に給紙されて吸着され、搬送ベルト12の周回移動によって用紙9が副走査方向に搬送される。そこで、キャリッジ3を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド4を駆動することにより、停止している用紙9にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙9を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙9の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙9を図示しない排紙トレイに排紙する。
【0022】
次に、この画像形成装置の制御部の概要について図3を参照して説明する。なお、同図は同制御部のブロック説明図である。
この制御部200は、この装置全体の制御を司り、本発明における制御手段を兼ねるCPU201と、CPU201が実行する本発明に係る制御プログラムを含む各種プログラム、その他の固定データを格納するROM202と、画像データ等を一時格納するRAM203と、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能な不揮発性メモリ204と、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC205とを備えている。
【0023】
また、この制御部200は、ホスト側とのデータ、信号の送受を行うためのI/F206と、記録ヘッド4を駆動制御するためのデータ転送手段、駆動波形を生成する駆動波形生成手段を含む印刷制御部207と、キャリッジ3側に設けた記録ヘッド4を駆動するためのヘッドドライバ(ドライバIC)208と、主走査モータ5及び副走査モータ16を駆動するためのモータ駆動部(ドライバ)210と、帯電ローラ15にACバイアスを供給するACバイアス供給部212と、エンコーダ25、28からの各検出信号、環境温度を検出する温度センサ215などの各種センサからの検出信号を入力するためのI/O213などを備えている。また、この制御部200には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行うための操作パネル214が接続されている。
【0024】
ここで、制御部200は、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読み取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト側からの画像データ等をケーブル或いはネットを介してI/F206で受信する。
【0025】
そして、制御部200のCPU201は、I/F206に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC205にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行い、この画像データを印刷制御部207からヘッドドライバ208に転送する。なお、画像出力するためのドットパターンデータの生成はホスト側のプリンタドライバで行っている。
【0026】
印刷制御部207は、上述した画像データをシリアルデータでヘッドドライバ208に転送するとともに、この画像データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、滴制御信号(マスク信号)などをヘッドドライバ208に出力する以外にも、ROMに格納されている駆動信号のパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器、電流増幅器等で構成される駆動波形生成部及びヘッドドライバに与える駆動波形選択手段を含み、1の駆動パルス(駆動信号)或いは複数の駆動パルス(駆動信号)で構成される駆動波形を生成してヘッドドライバ208に対して出力する。
【0027】
ヘッドドライバ208は、シリアルに入力される記録ヘッド4の1行分に相当する画像データに基づいて印刷制御部207から与えられる駆動波形を構成する駆動信号を選択的に記録ヘッド4の液滴を吐出させるエネルギーを発生する駆動素子(例えば前述したような圧電素子)に対して印加することで記録ヘッド4を駆動する。このとき、駆動波形を構成する駆動パルスを選択することによって、例えば、大滴(大ドット)、中滴(中ドット)、小滴(小ドット)など、大きさの異なるドットを打ち分けることができる。
【0028】
また、CPU201は、リニアエンコーダ25を構成するエンコーダセンサ24からの検出パルスをサンプリングして得られる速度検出値及び位置検出値と、予め格納した速度・位置プロファイルから得られる速度目標値及び位置目標値とに基づいて主走査モータ5に対する駆動出力値(制御値)を算出してモータ駆動部210を介して主走査モータ5を駆動する。同様に、ロータリエンコーダ28を構成するエンコーダセンサ27からの検出パルスをサンプリングして得られる速度検出値及び位置検出値と、予め格納した速度・位置プロファイルから得られる速度目標値及び位置目標値とに基づいて副走査モータ16に対する駆動出力値(制御値)を算出してモータ駆動部210を介して副走査モータ16を駆動する。
【0029】
I/O部213は、装置に装着されている温度センサ215及び図示しない各種センサからの情報を取得し、装置の制御に必要な情報を抽出し、印刷制御部207やモータ駆動部210、ACバイアス供給部212の制御、ヘッドタンク35に対するインク供給の制御などに使用する。
【0030】
次に、この制御部におけるキャリッジの主走査移動制御に関わる部分について図4のブロック説明図を参照して説明する。
この主走査制御部は、キャリッジ3の移動速度及び移動距離に応じたエンコーダ25から出力される検出パルスを処理して、速度検出値及び位置検出値を算出する速度・位置計測部304と、目標速度(速度目標値)を与える速度プロファイルを格納した速度プロファイル格納部305と、速度・位置計測部304からの速度検出値と速度プロファイル格納部305からの速度目標値との偏差を算出する比較演算部306と、比較演算部306が算出した偏差に基づいて主走査モータ5を駆動制御するためのPID(比例微分積分)値(駆動出力値)を演算する駆動出力値演算部307を有している。
【0031】
そして、駆動出力値演算部307から出力される駆動出力値に応じて主走査モータ5を駆動するドライバ(モータ駆動部)210に駆動出力を与える。なお、速度・位置計測部304、比較演算部306、駆動出力値演算部307はCPU201が実行するプログラムによって構成されている。
【0032】
ここでは、主走査モータ5は、PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)制御で駆動するものとして、駆動出力値演算部307は速度偏差に対してPID制御を行ってPWMのデューティを求め、このPWMのデューティをドライバ210に与え、PWM制御で主走査モータ5を駆動させることにより、キャリッジ3を目標とする速度で目標とする位置に移動させるようにしている。
【0033】
次に、モータ駆動部210の一例について図5を参照して説明する。なお、図5は同モータ駆動部の回路説明図である。
本実施形態では、モータ駆動部210はHブリッジ回路を使用している。図5(a)に示すように、FET1、4をON状態、FET2、3をOFF状態とするとき、主走査モータ5は正転駆動される。図5(b)に示すように、FET1、4をOFF状態、FET2、3をON状態とするとき、主走査モータ5は逆転駆動される。
【0034】
次に、主走査モータのPWM制御について図6の説明図を参照して説明する。
【0035】
一定周期でPWM信号を供給し、加速するときには、図6(a)に示すように、PWM信号のデューティを上げる(ON時間を増加する)。また、減速するときには、図6(b)に示すように、PWM信号のデューティを下げる(OFF時間を増加する)。
【0036】
また、主走査モータを正転させるとき、PWM信号をONするときには、図5における正転方向に電流を流すためのFET1、4をON状態にし、PWM信号をOFFするときには、図5おける逆転方向に電流を流すためのFET2、3をON状態にする。
【0037】
つまり、正転時には、PWMON時は正転方向に力をかけ、PWMOFF時は逆転方向に力をかけている。そのため、図6(c)に示すように、PWM信号のON期間が50%を超えると正転方向に回転し、50%未満となると逆転方向に回転する。
【0038】
次に、主走査モータをホールド状態にするホールド制御について図7の説明図を参照して説明する。
【0039】
主走査モータをホールド状態にするときには、モータを駆動するPWM信号のデューティを50%とする(ON期間=OFF期間)とすることで、正転方向/逆転方向に同じ力が作用して、主走査モータは固定位置にホールドされる。
【0040】
次に、供給チューブがキャリッジに与える負荷について図8の説明図を参照して説明する。
本実施形態では、図8(a)に示すように、キャリッジ3が往路方向の端部まで移動したとき、供給チューブ36の屈曲率が最小となってキャリッジ3への負荷が最大となる。また、図8(b)に示すように、キャリッジ3が復路方向の端部まで移動したとき、供給チューブ36の屈曲率が大きくなってキャリッジ3への負荷が減少する。
【0041】
この供給チューブ36がキャリッジ3に与える負荷は、周囲温度が低いほど供給チューブ36の剛性が高くなるために増加し、周囲温度が高くなることで供給チューブ36の剛性が低下して減少する。
【0042】
次に、キャリッジの主走査駆動制御について図9の説明図を参照して説明する。
キャリッジ3を主走査方向に往復移動させるとき、主走査モータ5は、加速期間、低億期間、ホールド期間の3つの駆動モードで駆動制御される。図9(a)に示すモータイネーブル信号を「H」にすることで主走査モータ5の駆動が開始され、図9(c)に示すように、各期間に応じたPWMデューティ(Duty)で駆動出力(モータPWM)をモータ駆動部210に与える。この場合、加速期間ではPWMのデューティ(Duty)を大きくし、定速期間ではPWMのデューティを加速期間に比べて小さくし、ホールド期間では後述するようにホールド制御ONとするときには50%としている。また、各期間におけるモータ出力電流は図9(b)に示すようになる。
【0043】
次に、本発明の第1実施形態における制御部によるモータのホールド制御処理について図10のフロー図を参照して説明する。
【0044】
ここでは、事前の負荷測定結果からホールド期間でキャリッジ3の位置ずれが生じる温度を設定する。このとき設定した温度が本発明における設定温度である。また、事前の負荷測定では、主走査モータ5にホールド電流又は電圧を供給していない状態にしたとき、つまり、主走査モータ5を励磁していないときに、供給チューブ36がキャリッジ3に与える負荷によってキャリッジ3の位置ずれが生じるときの周辺温度を測定し、その測定温度を設定温度とする。
【0045】
そして、キャリッジ3の周辺温度を検出し、検出した温度(検出温度)が設定温度以上であるか否かを判別する。
【0046】
このとき、検出温度が設定温度以上でなければ、すなわち、検出温度が設定温度より低ければ、供給チューブ36がキャリッジ3に与える負荷によってはキャリッジ3の位置ずれが発生するおそれがあるので、前述したホールド期間では主走査モータ5にホールド電流又は電圧を供給するホールド制御をする(ホールド制御ON)。
【0047】
そして、復路駆動開始か否かを判別し、復路駆動開始になったとき、すなわち、ホールド期間が経過したときに、このホールド制御処理を抜けて、キャリッジ3の復路方向への移動を開始する。
【0048】
これに対し、検出温度が設定温度以上であれば、供給チューブ36がキャリッジ3に与える負荷によってはキャリッジ3の位置ずれが発生しないので、前述したホールド期間では主走査モータ5にホールド電流又は電圧を供給していない状態にする(ホールド制御OFF)。つまり、主走査モータ5を励磁しない。
【0049】
そして、復路駆動開始か否かを判別し、復路駆動開始になったとき、すなわち、ホールド期間が経過したときにこのホールド制御処理を抜けて、キャリッジ3の復路方向への移動を開始する。
【0050】
これにより、周辺温度が高く、供給チューブ36がキャリッジ3に与える負荷によってはキャリッジ3の位置ずれが発生しないときには、主走査モータ5への通電を行わないので、消費電力を低減することができる。
【0051】
次に、本発明の第2実施形態における制御部によるモータのホールド制御処理について図11のフロー図を参照して説明する。
【0052】
ここでは、前記第1実施形態のホールド制御処理と同様に、設定温度を設定し、キャリッジ3の周辺温度を検出して、検出した温度(検出温度)が設定温度以上であるか否かを判別する。
【0053】
このとき、検出温度が設定温度以上でなければ、ホールド期間では主走査モータ5にホールド電流又は電圧を供給するホールド制御をする(ホールド制御ON)。そして、復路駆動開始か否かを判別し、復路駆動開始になったとき、すなわち、ホールド期間が経過したときにこのホールド制御処理を抜けて、キャリッジ3の復路方向への移動を開始する。
【0054】
これに対し、検出温度が設定温度以上であれば、供給チューブ36がキャリッジ3に与える負荷によってはキャリッジ3の位置ずれが発生しないので、ホールド期間では主走査モータ5にホールド電流又は電圧を供給していない状態にする(ホールド制御OFF)。
【0055】
そして、復路駆動開始か否かを判別し、復路駆動開始でなければ、キャリッジ3の位置ずれが発生したか否かを判別する。このキャリッジ3の位置ずれの発生は、例えば、エンコーダ28によってキャリッジ3の位置を監視することで検出でき、キャリッジ3が停止状態にある期間で、エンコーダ28から検出パルスが出力されたときには、キャリッジ3の位置ずれが発生したと検出することができる。
【0056】
ここで、キャリッジ3の停止中にキャリッジ3の位置ずれが発生したときには、主走査モータ5にホールド電流又は電圧を供給するホールド制御をON状態にする処理へ移行する。
【0057】
なお、キャリッジ3の停止中にキャリッジ3の位置ずれが発生しないまま、復路駆動開始になれば、つまり、すなわち、ホールド期間が経過したときにこのホールド制御処理を抜けて、キャリッジ3の復路方向への移動を開始する。
【0058】
これにより、消費電力を低減しつつ、キャリッジ3を所定の位置に停止することができる。
【0059】
次に、本発明の第3実施形態における制御部による設定温度更新処理について図12のフロー図を参照して説明する。
【0060】
本実施形態では、キャリッジ3の周辺温度を設定温度として設定する。そして、キャリッジ3を主走査方向の端部に移動させ、ホールド制御OFF状態でキャリッジ3の位置ずれが発生したか否かを判別する。
【0061】
このとき、キャリッジ3の位置ずれが発生しなければ、設定温度を保持する。これに対し、キャリッジ3の位置ずれが発生した場合には、その時のキャリッジ3の周辺温度を検出して、検出した検出温度が設定温度より低いか否かを判別する。
【0062】
ここで、検出温度が設定温度より低ければ、設定温度を保持する。これに対し、検出温度が設定温度を超えていれば、検出温度を設定温度として再設定する。
【0063】
このようにすることで、より正確な設定温度を設定することができて、消費電力の低減とキャリッジの停止精度の向上を図ることができる。
【0064】
次に、本発明の第4実施形態における制御部による設定温度更新処理について図13のフロー図を参照して説明する。
【0065】
本実施形態では、電源ON状態であるときにキャリッジ3の周辺温度を監視し、キャリッジ3の周辺温度が変動(変化)したときには、当該周辺温度を検出して検出温度と予め設定されている設定温度と比較し、設定温度が検出温度より高いか否かを判別する。
【0066】
このとき、設定温度が検出温度よりも高ければ、キャリッジ3を主走査方向の端部に移動させて、ホールドOFF状態でキャリッジ3の位置ずれが発生したか否かを判別する。
【0067】
ここで、キャリッジ3の位置ずれが発生した場合には、設定温度をそのまま保持する。
【0068】
これに対し、キャリッジ3の位置ずれが発生しなかった場合には、検出したキャリッジ3の周辺温度を、キャリッジ3がずれる温度(設定温度)として再設定する。
【0069】
このようにすることで、より正確な設定温度を設定することができて、消費電力の低減とキャリッジの停止精度の向上を図ることができる。また、上記第3実施形態では、キャリッジの位置ずれが発生しない限り設定温度を再設定しないので、設定温度は上がり続けることになるが、本実施形態を採用することで、キャリッジ3の位置ずれが生じない最適な温度を常に設定温度とすることができる。
【0070】
なお、上述した各種処理は、ROMなどに格納されたプログラムによってコンピュータに行なわせることができ、このプログラムは、記憶媒体に記憶して提供することができ、或はインターネットネットなどのネットワークを通じてダウンロードすることで提供される。
【0071】
また、本願において、「用紙」とは材質を紙に限定するものではなく、OHP、布、ガラス、基板などを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含む。また、画像形成、記録、印字、印写、印刷はいずれも同義語とする。
【0072】
また、「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。
【0073】
また、「インク」とは、特に限定しない限り、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。
【0074】
また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を三次元的に造形して形成された像も含まれる。
【符号の説明】
【0075】
3 キャリッジ
4 記録ヘッド
5 主走査モータ
200 制御部
210 モータ駆動部
215 温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出する記録ヘッド及び前記記録ヘッドに液体を供給するヘッドタンクを搭載したキャリッジと、
前記ヘッドタンクに前記液体を供給するメインタンクと、
前記メインタンクから前記ヘッドタンクへの液体供給経路を形成する可撓性チューブと、
前記キャリッジを駆動するモータと、
前記モータを駆動するモータ駆動部と、
装置の周辺温度を検出する温度検出手段と、
前記キャリッジを所定の位置に停止させるとき、前記モータ駆動部から前記モータに対してホールド電流又は電圧を供給させて前記モータをホールド状態にする制御をする制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記温度検出手段の検出結果が予め定めた設定温度以上であるときには、前記モータ駆動部から前記モータに対して前記ホールド電流又は電圧を供給させない制御をする
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記キャリッジの所定の位置に停止させた状態で、前記キャリッジの位置ずれを検出する手段を有し、
前記制御手段は、前記キャリッジの位置ずれが検出されたときには、前記モータ駆動部から前記DCモータに対して前記ホールド電流又は電圧を供給させる制御をする
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記キャリッジの位置ずれを検出した時の前記温度検出手段の検出結果を前記設定温度とすることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記キャリッジの位置ずれを検出する手段と、
前記温度検出手段の検出結果から温度変化が生じたことが検出されたときに、前記キャリッジの位置ずれを検出する手段で前記キャリッジの位置ずれが発生したか否かを判別する手段と、
前記温度検出手段の検出結果が前記設定温度よりも低いか否かを判別する手段と、
前記キャリッジの位置ずれが発生し、かつ、前記温度検出手段の検出結果が前記設定温度よりも低いときには、前記設定温度を前記検出結果に設定する手段と、を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−35133(P2013−35133A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170387(P2011−170387)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】