説明

液体噴射ヘッド及び液体噴射装置並びにアクチュエーター装置

【課題】異物による不具合の発生と共に圧電素子の破壊を抑制することができる液体噴射ヘッド及び液体噴射装置並びにアクチュエーター装置を提供する。
【解決手段】
圧電体層70が第1の電極60と第2の電極80とで挟まれた圧電体能動部320を有する圧電素子300と、圧電素子300を覆って設けられる被覆膜100と、第2の電極80に接続されるリード電極90と、を具備し、被覆膜100には、第圧電体能動部320に対向して設けられて第2の電極80の表面を露出する露出孔101と、リード電極90と第2の電極80とを接続するためのコンタクトホール102と、が設けられていると共に、第2の電極80には、露出孔101から連続する第1の凹部81と、コンタクトホール102から連続する第2の凹部82と、が設けられており、且つ第2の電極80の第1の凹部81に対応する部分の厚さt1が、第2の凹部82に対応する部分の厚さt2よりも厚くなるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子の変位によりノズルから液滴を噴射する液体噴射ヘッド及び液体噴射装置並びにアクチュエーター装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッドの代表例としては、インクジェット式記録装置に搭載されるインクジェット式記録ヘッドが挙げられる。インクジェット式記録ヘッドは、例えば、圧力発生室の一部を構成する振動板を圧電素子により変形させて圧力発生室のインクを加圧することで、圧力発生室に連通するノズルからインクを噴射させている。また、このようなインクジェット式記録ヘッドには、圧電素子の軸方向に伸長、収縮する縦振動モードのアクチュエーター装置を使用したものと、たわみ振動モードのアクチュエーター装置を使用したものの2種類が実用化されている。
【0003】
たわみ振動モードのアクチュエーター装置を使用したものとしては、例えば、振動板の表面全体に亙って成膜技術により均一な圧電材料層を形成し、この圧電材料層をリソグラフィー法により圧力発生室に対応する形状に切り分けて圧力発生室毎に独立するように圧電素子を形成したものがある。
【0004】
このような圧電素子は、高密度に配設することができると共に高速駆動が可能となるといった利点があるが、例えば、湿気等の外部環境に起因して破壊され易いという問題がある。このような問題を解決するために、圧電素子を覆って保護膜を設けるようにしたものがある。またこの保護膜に、上電極とリード電極とを接続するためのコンタクトホールを形成すると共に、上電極の主要部に対応する部分に中抜き部を設けるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−216429号公報(例えば、図3参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように保護膜上に形成されたリード電極をコンタクトホールで上電極と接続すると共に、圧電素子上に保護膜が存在しない中抜き部を設けることにより、保護膜によって圧電素子の外部環境に起因する破壊を防止しつつ圧電素子の変位低下も抑制することができる。しかしながら、特許文献1に記載されているように、コンタクトホールや中抜き部は、保護膜をエッチングすることによって形成されるのが一般的である。このように保護膜をエッチングによってコンタクトホールや中抜き部を形成すると、次のような不具合が生じる虞がある。
【0007】
例えば、コンタクトホールの場合には、コンタクトホール内の保護膜が完全に除去されずに薄く残り、リード電極と上電極との接続不良が生じる虞がある。また中抜き部の場合には、中抜き部の周縁部等に保護膜が薄く残ってしまい、その部分から保護膜が剥離してしまう虞がある。
【0008】
このような問題を解消するために、コンタクトホールや中抜き部を形成する際に、保護膜と共に上電極の一部を除去することが考えられる。これにより、コンタクトホールや中抜き部の保護膜を完全に除去することはでき上述の問題は解消することができるが、圧電素子が応力集中によって破壊されてしまうという別の問題が発生する虞がある。すなわち、中抜き部内の上電極が薄くなり過ぎると、圧電素子の中抜き部に対応する部分とそれ以外の部分との剛性差が大きくなり、圧電素子を駆動した際に、圧電素子の中抜き部に対応する部分に応力が集中し、圧電素子が破壊されてしまう虞がある。
【0009】
なお、このような問題は、インク滴を噴射するインクジェット式記録ヘッドだけでなく、インク以外の液滴を噴射する液体噴射ヘッドにおいても同様に存在する。また液体噴射ヘッドだけでなく、圧電素子を具備するアクチュエーター装置においても、このような問題は同様に存在する。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑み、異物による不具合の発生と共に圧電素子の破壊を抑制することができる液体噴射ヘッド及び液体噴射装置並びにアクチュエーター装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明は、圧力発生室を有する流路形成基板の一方面側に設けられて圧電体層が第1の電極と第2の電極とで挟まれた圧電体能動部を有する圧電素子と、該圧電素子を覆って設けられる被覆膜と、前記第2の電極に接続されるリード電極と、を具備し、前記被覆膜には、前記圧電体能動部に対向して設けられて前記第2の電極の表面を露出する露出孔と、前記リード電極と前記第2の電極とを接続するためのコンタクトホールと、が設けられていると共に、前記第2の電極には、前記露出孔から連続する第1の凹部と、前記コンタクトホールから連続する第2の凹部と、が設けられており、且つ前記第2の電極の前記第1の凹部に対応する部分の厚さが、前記第2の凹部に対応する部分の厚さよりも厚くなっていることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
【0012】
また本発明は、圧電体層が第1の電極と第2の電極とで挟まれた圧電体能動部を有する圧電素子と、前記圧電素子を覆って設けられる被覆膜と、前記第2の電極に接続されるリード電極と、前記被覆膜には、前記圧電体能動部に対向して設けられて前記第2の電極の表面を露出する露出孔と、前記リード電極と前記第2の電極とを接続するためのコンタクトホールと、が設けられていると共に、前記第2の電極には、前記露出孔から連続する第1の凹部と、前記コンタクトホールから連続する第2の凹部と、が設けられており、且つ前記第2の電極の前記第1の凹部に対応する部分の厚さが、前記第2の凹部に対応する部分の厚さよりも厚くなっていることを特徴とするアクチュエーター装置にある。
かかる本発明の構成では、コンタクトホール内でリード電極と第2の電極とを良好に接続することができると共に露出孔周縁部での被覆膜の剥離を防止でき、且つ応力集中による圧電素子の破壊を防止することができる。
【0013】
ここで、前記第2の電極の前記第2の凹部に対応する部分の厚さが10nm以上であることが好ましい。これにより、リード電極と第2の電極とを電気的により良好に接続することができる。
【0014】
また、本発明は、上述のような構成の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置にある。かかる本発明では、信頼性を向上した液体噴射ヘッドを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態1に係る記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図である。
【図2】実施形態1に係る記録ヘッドの断面図である。
【図3】実施形態1に係る記録ヘッドの圧電素子部分の構成を示す平面図である。
【図4】実施形態1に係る記録ヘッドの圧電素子部分の構成を示す断面図である。
【図5】実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
【図6】実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
【図7】一実施形態に係るインクジェット式記録装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る液体噴射ヘッドであるインクジェット式記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図であり、図2はその断面図である。また図3は圧電素子の構成を示す平面図であり、図4は、図3のA−A′断面図である。
【0017】
図示するように、流路形成基板10は、本実施形態では結晶面方位が(110)であるシリコン単結晶基板からなり、その一方面には酸化膜からなる弾性膜50が形成されている。流路形成基板10には、隔壁11によって区画されると共に一方側の面が弾性膜50で構成される複数の圧力発生室12がその幅方向(短手方向)に並設されている。
【0018】
流路形成基板10には、圧力発生室12の長手方向一端部側に、隔壁11によって区画され各圧力発生室12に連通するインク供給路13と連通路14とが設けられている。連通路14の外側には、各連通路14と連通する連通部15が設けられている。この連通部15は、後述する保護基板30のリザーバー部32と連通して、各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバー110の一部を構成する。また各連通路14は、圧力発生室12の幅方向両側の隔壁11を連通部15側に延設してインク供給路13と連通部15との間の空間を区画することで形成されている。
【0019】
なお流路形成基板10の材料として、本実施形態ではシリコン単結晶基板を用いているが、勿論これに限定されず、例えば、ガラスセラミックス、ステンレス鋼等を用いてもよい。
【0020】
流路形成基板10の開口面側には、各圧力発生室12のインク供給路13とは反対側の端部近傍に連通するノズル21が穿設されたノズルプレート20が、接着剤や熱溶着フィルム等によって固着されている。ノズルプレート20の材料は特に限定されないが、例えば、ガラスセラミックス、シリコン単結晶基板、ステンレス鋼などが好適に用いられる。
【0021】
一方、このような流路形成基板10の開口面とは反対側の面には、上述したように弾性膜50が形成され、この弾性膜50上には、弾性膜50とは異なる材料の酸化膜からなる絶縁体膜55が形成されている。そして、絶縁体膜55上に圧電素子300が形成されている。つまり流路形成基板10の上方に圧電素子300が形成されている。
【0022】
圧電素子300は、第1の電極である下電極膜60と圧電体層70と第2の電極である上電極膜80とで構成され、圧電体層70が下電極膜60と上電極膜80とで挟まれた圧電体能動部320を有する。つまり圧電素子300は、下電極膜60、圧電体層70及び上電極膜80を有する部分だけでなく、少なくとも圧電体層70を有する部分を含み、圧電体能動部320が圧電素子300の実質的な駆動部となっている。なお一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極を圧電体層70と共に圧力発生室12毎にパターニングして個別電極とする。また圧電素子300として機能する範囲で、下電極膜60と圧電体層70との間や、圧電体層70と上電極膜80との間には、他の層が設けられていてもよい。
【0023】
またここでは、圧電素子300と当該圧電素子300(圧電体能動部320)の駆動により変位が生じる振動板とを合わせてアクチュエーターと称する。なお、上述した例では、弾性膜50、絶縁体膜55が振動板として作用する。勿論、振動板の構成は特に限定されず、弾性膜50及び絶縁体膜55以外の膜を含んでいてもよい。また下電極膜60、或いは圧電素子300自体が、実質的に振動板を兼ねるようにしてもよい。
【0024】
圧電素子300上には、上電極膜80を露出する露出孔101を有する被覆膜100が設けられている。露出孔101は、上電極膜80の圧力発生室12に対向する部分を露出するように、つまり圧電素子300に電圧を印加した際に実際に変位が生じる部分である圧電体能動部320の上電極膜80を露出するように設けられている。
【0025】
このように圧電素子300の大部分が被覆膜100によって覆われていることで、大気中の水分等に起因する圧電素子300の破壊を抑制することができる。また、被覆膜100に露出孔101が設けられていることで、被覆膜100による圧電素子300の変位量の低下が抑えられ、インク吐出特性を良好に保持することができる。
【0026】
被覆膜100の材料としては、耐湿性を有する材料であればよいが、例えば、酸化シリコン(SiO)、酸化タンタル(TaO)、酸化アルミニウム(AlO)等の無機絶縁材料が挙げられるが、特に、無機アモルファス材料である酸化アルミニウム(AlO)、例えば、アルミナ(Al)を用いるのが好ましい。被覆膜100の材料として酸化アルミニウムを用いた場合、被覆膜100の膜厚を100nm程度と比較的薄くしても、高湿度環境下での水分透過を十分に抑えることができる。
【0027】
また被覆膜100上には、例えば、金(Au)等からなるリード電極90が形成されており、このリード電極90は被覆膜100に形成されたコンタクトホール102で上電極膜80と接続されている。
【0028】
さらに上電極膜80の露出孔101に対向する部分には、この露出孔101から連続する第1の凹部81が設けられている。また上電極膜80の被覆膜100のコンタクトホール102に対向する部分には、コンタクトホール102から連続する第2の凹部82が設けられている。第1の凹部81は露出孔101と共に形成され、第2の凹部82はコンタクトホール102と共に形成される。すなわち、露出孔101及びコンタクトホール102は、後述するように被覆膜100をエッチング(例えば、イオンミリング)することによって形成されており、第1及び第2の凹部81,82は、このように被覆膜100をエッチングして露出孔101或いはコンタクトホール102を形成する際に、被覆膜100と共に上電極膜80の一部をエッチングすることによって形成されている。
【0029】
ここで、本実施形態のインクジェット式記録ヘッドにおける圧電素子部分の製造方法の一例について説明する。
【0030】
図5(a)に示すように、まず振動板を構成する絶縁体膜55上に、例えば、白金(Pt)等の所定の金属材料をスパッタリング法等によって成膜して第1の電極となる下電極膜60を形成し、この下電極膜60を所定形状にパターニングする。
【0031】
次に、図5(b)に示すように、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等からなる圧電体層70を、下電極膜60及び絶縁体膜55上に亘って成膜する。圧電体層70の形成方法は、特に限定されず、例えば、いわゆるゾル−ゲル法、MOD法或いはスパッタリング法等が挙げられる。
【0032】
次に、図5(c)に示すように、圧電体層70上に上電極膜80を形成し、その後、この上電極膜80及び圧電体層70を所定形状にパターニングすることによって圧電素子300を形成する。なお上電極膜80の材料としては、導電性が比較的高い材料であればよいが、例えば、イリジウム、白金、パラジウム等の金属材料が好適に用いられる。
【0033】
次に、図5(d)に示すように、圧電素子300を覆って被覆膜100を形成する。次いで、図6(a)に示すように、レジスト膜200等をマスクとして被覆膜100をエッチング(例えば、イオンミリング)することによって、被覆膜100にコンタクトホール102を形成する。このとき、被覆膜100と共に上電極膜80の一部を除去して第2の凹部82を形成する。
【0034】
次に、図6(b)に示すように、被覆膜100上にリード電極90を形成する。具体的には、リード電極90となる金属膜を被覆膜100の全面に亘って形成し、この金属膜をパターニングすることによってリード電極90を形成する。このとき、各リード電極90の一端がコンタクトホール102で上電極膜80に接続される。
【0035】
その後、図6(c)に示すように、レジスト膜201等をマスクとして被覆膜100をエッチングすることによって露出孔101を形成する。またこのとき、被覆膜100と共に圧電体能動部320を構成する上電極膜80の一部を除去して第1の凹部81を形成する。
【0036】
このように、上電極膜80に第1及び第2の凹部81,82を設けることにより、コンタクトホール102が被覆膜100を確実に貫通して形成されるため、コンタクトホール102内でリード電極90と上電極膜80とを確実に接続させることができ、導通不良の発生を抑えることができる。また露出孔101の周縁部に被覆膜100が薄く残ることがない。したがって、被覆膜100の剥離を防止することができる。
【0037】
ここで本発明では、上電極膜80の第1の凹部81に対応する部分の厚さt1が、上電極膜80の第2の凹部82に対応する部分の厚さt2よりも厚くなるようにしている(図4参照)。換言すれば、第1の凹部81の深さが第2の凹部82の深さよりも浅くなるようにしている。これにより、圧電素子300の露出孔101に対向する部分と、それ以外の部分との剛性差が比較的小さくなるため、圧電素子300の露出孔101に対向する部分への応力集中が抑制される。すなわち圧電素子300を駆動させた際に、圧電素子300の露出孔101に対向する部分のみが大きく変形してしまうのを抑制することができる。
【0038】
また、上電極膜80の第2の凹部82に対応する部分の厚さt2は、10nm以上であることが好ましい。これにより、リード電極90と第2の電極80とを電気的により良好に接続することができる。したがって、圧電素子300を良好に駆動させることができる。勿論、上電極膜80の第1の凹部81に対応する部分の厚さt1及び第2の凹部82に対応する部分の厚さt2は、圧電素子300に電圧を印加するのに支障のない程度の厚さであれば特に限定されるものではない。
【0039】
また上述のようにイオンミリング等によって第1の凹部81を形成する場合には、第1の凹部81の深さが比較的浅いことで、各圧電素子300における第1の凹部81の深さのバラツキが小さく抑えられる。したがって、各圧電素子300の変位特性が均一化されるという効果もある。
【0040】
なおこのような圧電素子300が形成された流路形成基板10上には、圧電素子保持部31を有する保護基板30が接合されている。圧電素子保持部31は、内部への大気の侵入を抑制できるように構成されているが、必ずしも密封されている必要はない。そして圧電素子300は、このような圧電素子保持部31内に形成されているため、外部環境の影響を殆ど受けない状態で保護されている。
【0041】
また、保護基板30には、連通部15に対向する部分にリザーバー部32が設けられており、このリザーバー部32は、上述したように、流路形成基板10の連通部15と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバー110を構成している。また、保護基板30の圧電素子保持部31とリザーバー部32との間の領域には、保護基板30を厚さ方向に貫通する貫通孔33が設けられ、この貫通孔33内に下電極膜60の一部及びリード電極90の先端部が露出されている。
【0042】
また保護基板30上には、圧電素子300を駆動するための駆動回路120が固定されている。そして駆動回路120とリード電極90とがボンディングワイヤー等の導電性ワイヤーからなる接続配線121によって接続されている。
【0043】
なお保護基板30としては、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料、例えば、ガラス、セラミック材料等を用いることが好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結晶基板を用いて形成した。
【0044】
また保護基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料からなり、この封止膜41によってリザーバー部32の一方面が封止されている。また、固定板42は、金属等の硬質の材料で形成される。この固定板42のリザーバー110に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、リザーバー110の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
【0045】
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドでは、図示しない外部インク供給手段からインクを取り込み、リザーバー110からノズル21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路120からの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの圧電素子300に電圧を印加して撓み変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル21からインク滴が噴射される。
【0046】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、上述の実施形態では、被覆膜100を複数の圧電素子300に亘って連続して設けるようにしたが、これに限定されず、例えば、被覆膜100は圧電素子300毎に設けられていてもよい。また上述した実施形態では、圧電素子保持部31を有する保護基板30を設けるようにしたが、圧電素子300は被覆膜100によって覆われて外部環境に起因する破壊が抑制されているため、圧電素子保持部31は必ずしも設けられていなくてもよい。
【0047】
また、これら各実施形態のインクジェット式記録ヘッドは、インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備する記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録装置に搭載される。図7は、そのインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。
【0048】
図7に示すように、インクジェット式記録ヘッドを有する記録ヘッドユニット1A及び1Bは、インク供給手段を構成するカートリッジ2A及び2Bが着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。この記録ヘッドユニット1A及び1Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。
【0049】
そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8に巻き掛けられて搬送されるようになっている。
【0050】
また、上述した実施形態では、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを挙げて説明したが、本発明は広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(電界放出ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
【0051】
さらに本発明は、このような液体噴射ヘッド(インクジェット式記録ヘッド)だけでなく、あらゆる装置に搭載されるアクチュエーター装置に適用することができる。本発明のアクチュエーター装置は、上述したヘッドの他に、例えば、センサー等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0052】
10 流路形成基板、 12 圧力発生室、 13 インク供給路、 15 連通部、 20 ノズルプレート、 21 ノズル、 30 保護基板、 31 圧電素子保持部、 32 リザーバー部、 40 コンプライアンス基板、 60 下電極膜(第1の電極)、 70 圧電体層、 80 上電極膜(第2の電極)、 81 第1の凹部、 82 第2の凹部、 90 リード電極、 100 被覆膜、 101 露出孔、 102 コンタクトホール、 110 リザーバー、 120 駆動回路、 300 圧電素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力発生室を有する流路形成基板の一方面側に設けられて圧電体層が第1の電極と第2の電極とで挟まれた圧電体能動部を有する圧電素子と、
該圧電素子を覆って設けられる被覆膜と、前記第2の電極に接続されるリード電極と、を具備し、
前記被覆膜には、
前記圧電体能動部に対向して設けられて前記第2の電極の表面を露出する露出孔と、
前記リード電極と前記第2の電極とを接続するためのコンタクトホールと、が設けられていると共に、
前記第2の電極には、
前記露出孔から連続する第1の凹部と、
前記コンタクトホールから連続する第2の凹部と、が設けられており、
且つ前記第2の電極の前記第1の凹部に対応する部分の厚さが、前記第2の凹部に対応する部分の厚さよりも厚くなっていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記第2の電極の前記第2の凹部に対応する部分の厚さが10nm以上であることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置。
【請求項4】
圧電体層が第1の電極と第2の電極とで挟まれた圧電体能動部を有する圧電素子と、
前記圧電素子を覆って設けられる被覆膜と、
前記第2の電極に接続されるリード電極と、
前記被覆膜には、
前記圧電体能動部に対向して設けられて前記第2の電極の表面を露出する露出孔と、
前記リード電極と前記第2の電極とを接続するためのコンタクトホールと、が設けられていると共に、
前記第2の電極には、
前記露出孔から連続する第1の凹部と、
前記コンタクトホールから連続する第2の凹部と、が設けられており、
且つ前記第2の電極の前記第1の凹部に対応する部分の厚さが、前記第2の凹部に対向する部分の厚さよりも厚くなっていることを特徴とするアクチュエーター装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−253786(P2010−253786A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106038(P2009−106038)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】