説明

液体噴射装置

【課題】複数の記録ヘッドを備える場合においてバルブの制御を簡便なものにした、液体噴射装置を提供する。
【解決手段】液体が充填されるカートリッジ20と、カートリッジ20から供給される液体を噴射する複数の噴射ヘッド2と、カートリッジ20及び複数の噴射ヘッド2間に設けられ、水頭差により液体をカートリッジから各噴射ヘッドに供給するサブタンク21と、サブタンク21及び複数の噴射ヘッド2間における液体供給流路に設けられるバルブ群24〜27と、を備えた液体噴射装置である。噴射ヘッド2を少なくとも二つ含むヘッドグループG1,G2が複数構成され、バルブ群24〜27がヘッドグループG1,G2と同じ数のバルブ24a,24b〜27a,27bから構成されており、バルブ24a,24b〜27a,27bの各々がヘッドグループG1,G2の各々に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体を噴射する液体噴射装置として、例えばインクジェット式記録装置などが知られている。インクジェット式記録装置は、記録媒体に文字や画像等を記録する装置であり、記録ヘッド(噴射ヘッド)に設けられたノズルから記録媒体にインクが噴射される構成になっている。中でも、大容量のインクカートリッジを吐出ヘッドから離れた位置に配置し、インクカートリッジから吐出ヘッドへ供給管を介してインクを供給する構成のいわゆるオフキャリッジタイプのプリンタが知られている。
【0003】
このようなオフキャリッジタイプのプリンタは、クリーニング処理時に、インクカートリッジと記録ヘッドとの間に設けたバルブを利用することでチョーク吸引動作を行っている(例えば、特許文献1参照)。チョーク吸引動作は、バルブを閉じた状態で吸引動作を行うことによってバルブの下流側の負圧を高める動作のことである。チョーク吸引動作によって負圧を高めた状態からバルブを開くとインク流路内に含まれている空気を外部に排出しつつ、クリーニング処理を効率的に行うことができる。
【特許文献1】特開2006−7493号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術においては、記録ヘッドの各ノズル毎にインクを供給するインクカートリッジ毎にバルブを備えるため、例えば複数の記録ヘッドが搭載されたプリンタに適用した場合、バルブ数が多くなり、バルブの制御を行うのが難しくなってしまう。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、複数の記録ヘッドを備える場合においてもバルブの制御を簡便なものにすることのできる、液体噴射装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の液体噴射装置は、液体が貯留される液体貯留部から前記液体を噴射する複数の噴射ヘッドに前記液体を供給する供給路と、前記供給路の途中に設けられ、前記液体貯留部から供給された液体を前記各噴射ヘッドに水頭差により供給可能とするサブタンクと、前記供給路における前記サブタンクと前記複数の噴射ヘッドとの途中に設けられるバルブ群を備え、前記噴射ヘッドを少なくとも二つ含むヘッドグループが複数構成され、前記バルブ群が前記ヘッドグループと同じ数のバルブから構成されており、前記バルブの各々が前記ヘッドグループの各々に前記供給路を介して接続されることを特徴とする。
【0007】
本発明の液体噴射装置によれば、複数の噴射ヘッドを含むヘッドグループに対して一つのバルブが設けられるので、例えば一つのバルブを閉塞することで複数の噴射ヘッドに対してチョーク吸引を行うことが可能とされ、バルブの制御を簡便なものとすることができる。また、本構成では、サブタンクは水頭差を利用して液体を供給するため、例えばサブタンクを噴射ヘッドの近くに配置することで複数の噴射ヘッドに対して液体を良好に供給できる。
【0008】
また、上記液体噴射装置においては、前記供給路における前記液体貯留部と前記サブタンクとの途中に設けられる逆止弁を備えるのが好ましい。
この構成によれば、逆止弁により液体貯留部を交換する際に液体が漏れ出すのを防止することができる。
【0009】
また、上記液体噴射装置においては、同じ種類の前記液体が貯留される複数の前記液体貯留部のいずれか一つから選択された前記液体が、前記サブタンクに供給されるのが好ましい。ここで同じ種類の液体とは、例えば、色、特性が同等のものを意味し、一方の液体と置き換え可能な液体を意味する。
この構成によれば、同一の液体が充填された複数の液体貯留部を切り替えることで連続して大量の液体を噴射することができる。よって、連続印字が可能となる。
【0010】
また、上記液体噴射装置においては、前記サブタンクにおける前記液体貯留部に対する高さを調整可能とする調整機構を備えるのが好ましい。
この構成によれば、例えば調整機構によりサブタンクの高さを液体貯留部よりも上若しくは同じに保持することで、液体貯留部の着脱時にサブタンク内に空気が入り込むことを防止できる。また、例えば調整機構によりサブタンクの高さを液体貯留部よりも下若しくは同じに保持することで、液体貯留部側からサブタンク側に液体を供給する速度を向上させることができる。
【0011】
また、上記液体噴射装置においては、前記各噴射ヘッドにおける使用頻度、又は他の噴射ヘッドに対する相対位置の少なくともいずれかに基づいて前記ヘッドグループが構成されるのが好ましい。
この構成によれば、ヘッドグループをヘッドの使用頻度、及びヘッドの相対位置関係に基づいてヘッドグループが構成されているので、バルブを選択的に閉塞させることで各噴射ヘッドに対してチョーク吸引を良好に行うことができる。
【0012】
また、上記液体噴射装置においては、前記ヘッドグループの少なくともいずれかは、前記バルブから前記各噴射ヘッドまでの供給路長及び供給路径の少なくとも一方が異なるのが好ましい。
この構成によれば、供給路長及び供給路径の少なくとも一方を種々に設定可能となるため、ヘッドグループを構成する所望の噴射ヘッドに対して所定処理(例えば、チョーククリーニング)を積極的に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の液体噴射装置に係る形態を説明する。本実施形態では、本発明に係る液体噴射装置として、インクジェット式プリンタ(以下、プリンタ1と称す)を例示する。
【0014】
図1は本実施形態に係るプリンタ1の概略構成を示す図である。また、図2は、本実施形態に係るプリンタ1のインクカートリッジ(液体貯留部)20からヘッドユニット10までのインク供給路の構成を示す図である。
プリンタ1は、図1に示されるようにインクを噴射するヘッドユニット10と、ヘッドユニット10からインクを噴射する媒体としての記録用紙100を搬送するための記録用紙搬送機構11と、ヘッドユニット10のメンテナンスを行うためのキャップユニット30と、を備えている。記録用紙搬送機構11は、記録用紙100を搬送するための搬送ローラ対12,13と、記録用紙100を載置するためのプラテン14と、を備えている。
【0015】
プリンタ1は、上記ヘッドユニット10にインクを供給するため複数(本実施形態では5つ)のインクカートリッジ20(20C、20M,20Y,20B1,20B2)を有している。
【0016】
インクカートリッジ20Cは、C(シアン)のインクが充填されたものであり、インクカートリッジ20Mは、M(マゼンダ)のインクが充填されたものであり、インクカートリッジ20Yは、Y(イエロー)のインクが充填されたものであり、インクカートリッジ20B1は、B(ブラック)のインクが充填されたものである。また、インクカートリッジ20B2は、上記インクカートリッジ20B1と同じ種類のB(ブラック)のインクが充填されたものである。ここで、同じ種類のインクとは、例えば、色、特性が同等のものを意味し、一方のインクに置き換え可能なインクを意味する。また、これらインクカートリッジ20(20C、20M,20Y,20B1,20B2)は、それぞれインク流路としてのチューブ(供給路)T1〜T4を介してヘッドユニット10側に設けられるサブタンク21に接続されるようになっている。
【0017】
ここで、インクカートリッジ20B1、20B2にそれぞれ接続されるチューブ(供給路)T5,T6は、選択バルブB1を介して上記チューブ(供給路)T4に接続されている。すなわち、選択バルブB1を切り替えることでインクカートリッジ20B1、20B2のいずれか一方のB(ブラック)のインクをヘッドユニット10側に供給可能としている。この構成によれば、文書印刷等のような通常印字において使用頻度が高いブラック(黒色)のインクを、インクカートリッジ20B1、20B2のいずれか一方のインクがなくなった場合、他方に切り替えることで連続して大量に印刷することが可能となる。
【0018】
上記各インクカートリッジ20にはチューブT11を介して加圧ポンプ23が接続されている。具体的には、チューブT11における一端側が5つに分岐されており、これら各分岐部のそれぞれが各インクカートリッジ20に接続されている。また、加圧ポンプ23は、不図示の駆動モータに連結されることで加圧空気を生成し、各インクカートリッジ20に送り込むことでカートリッジ内に充填されているインクをヘッドユニット10(サブタンク21)側に圧送するようになっている。
【0019】
ヘッドユニット10は、不図示のキャリッジに複数(本実施形態では6つ)の記録ヘッド(噴射ヘッド)2が搭載されることで構成されている。各記録ヘッド2は、複数のノズルを含むノズル列を4列有し、各ノズル列の各々に上記インクカートリッジ20から4色のインクがそれぞれ供給されるようになっている。すなわち、各記録ヘッド2は、4色のインクを噴射可能となっている。
【0020】
また、ヘッドユニット10は、図2に示されるように第1のヘッドグループG1と、第2のヘッドグループG2と、によって構成されている。第1のヘッドグループG1は、上記記録ヘッド2A〜2Cを含むものである。また、第2のヘッドグループG2は、上記記録ヘッド2D〜2Fを含むものである。
【0021】
また、プリンタ1は、上記チューブT1〜T4を介してインクカートリッジ20に接続され、インクカートリッジ20側から各記録ヘッド2にインクを供給する複数のサブタンク21を備えている。なお、サブタンク21はヘッドユニット10よりも鉛直上方に配置されている(図1参照)。これにより、サブタンク21は、インクカートリッジ20から供給されるインクを一時的に貯留するとともに、水頭差を利用してインクを各記録ヘッド2に供給可能となっている。すなわち、本実施形態に係るプリンタ1においては、上記加圧ポンプ23の加圧空気及び水頭差を利用することで各記録ヘッド2にインクを供給するようになっている。よって、加圧ポンプ23を連続して動作させる必要が無くなり、プリンタ1における消費電力を抑制可能となっている。また、サブタンク21はヘッドユニット10の近傍(例えば、50cm以内)に配置するのが好ましい。このようにすれば、インクの流路内抵抗を抑えることで多数(本実施形態では6つ)の記録ヘッド2にインクを良好に供給することができる。
【0022】
図2に示されるように、プリンタ1は、サブタンク21及びヘッドユニット10(複数の記録ヘッド2)間におけるインク供給路(供給路)T12,T13,T14,T15にそれぞれ設けられるバルブ群24,25,26,27を備えている。また、各バルブ群24〜27は、2つのチョークバルブ(バルブ)から構成されている。例えば、バルブ群24はチョークバルブ24a,24bから構成され、バルブ群25はチョークバルブ25a,25bから構成され、バルブ群26はチョークバルブ26a,26bから構成され、バルブ群27はチョークバルブ27a,27bから構成されている。
【0023】
また、各バルブ群24〜27を構成するチョークバルブの各々は、上記第1、第2のヘッドグループG1,G2を構成する記録ヘッド2にそれぞれ接続されている。
【0024】
具体的には、チョークバルブ24aは、チューブT12を介して第1のヘッドグループG1を構成する各記録ヘッド2A,2B,2Cに接続されている。そして、チョークバルブ24bは、チューブT12を介して第2のヘッドグループG2を構成する各記録ヘッド2D,2E,2Fに接続されている。また、チョークバルブ25a、25bについてもチューブT13を介して第1、第2のヘッドグループG1、G2(記録ヘッド2)にそれぞれ接続されている。また、チョークバルブ26a、26bについてもチューブT14を介して第1、第2のヘッドグループG1、G2(記録ヘッド2)にそれぞれ接続されている。また、チョークバルブ27a、27bについてもチューブT15を介して第1、第2のヘッドグループG1、G2(記録ヘッド2)にそれぞれ接続されている。また、上記各チューブT12〜T15は、各記録ヘッド2における背圧調整部6に接続されており、インクカートリッジ20内のインクが背圧調整部6を介してヘッド内のインク流路に導入されるようになっている。このような構成に基づいて、各記録ヘッド2にはインクカートリッジ20から4色(C,M,Y,B)のインクが供給されるようになっており、各々のヘッドがフルカラー印字を行えるようになっている。
【0025】
また、プリンタ1は、インクカートリッジ20とサブタンク21との間に逆止弁40を備えている。具体的には、ヘッドユニット10側にインクを供給するチューブT1,T2,T3,T5,T6の各インクカートリッジ20との接続部に設けられている。これによりインクカートリッジ20の脱着時にヘッドユニット10側からインクが逆流することで漏れ出すのを防止している。
【0026】
図3はインクカートリッジ20からヘッドユニット10までのインク流路と、ヘッドユニット10のメンテナンスに使用されるキャップユニット30との構成を詳細に示す図である。なお、図3においてはインクカートリッジ20Cを例として示すが、他のインクカートリッジ20M,20Y,20B1,20B2についても同一の構成となっているものとする。
【0027】
図3に示されるように、インクカートリッジ20C(20)は、ケース部材51と、ケース部材51に収容され、可塑性材料で形成されたインクパック52とを含む。インクパック52内には記録ヘッド2に供給されるインクL(シアン;C)が貯留されている。また、インクカートリッジ20Cは、ケース部材51内にチューブT11を介して加圧ポンプ23から加圧空気が送り込まれることでインクパック52が押圧されて、インクLがヘッドユニット10側に供給される。
【0028】
サブタンク21は、例えばポリプロピレン等の樹脂材料を成型したものである。サブタンク21には、インク室57となる凹部が形成され、この凹部の開口面に透明な弾性シートを貼設してインク室57が区画されている。このような構成に基づいて、サブタンク21は、インクLの圧力変動が吸収され、インクLがサブタンク21内で圧力変動が吸収された状態で記録ヘッド2側に供給されるようになっている。このようにサブタンク21は圧力ダンパとして機能するようになっている。
【0029】
図3に示されるように、チューブT12は、サブタンク21からヘッドユニット10側に向かって2つに分岐されており、それぞれにチョークバルブ24a、24bが接続されている。そして、チューブT12は、チョークバルブ24aの下流側(記録ヘッド2側)において上述の第1のヘッドグループG1を構成する各記録ヘッド2A〜2Cにそれぞれ接続されている。また、チューブT12は、チョークバルブ24bの下流側(記録ヘッド2側)において上述の第2のヘッドグループG2を構成する各記録ヘッド2D〜2Eにそれぞれ接続されている。
【0030】
本実施形態においては、各ヘッドグループG1,G2は、図3に示されるようにチョークバルブ24a、24bから各記録ヘッド2までのインク流路長及びインク流路径(供給路径)が異なっている。具体的には、図1に示すようにヘッドユニット10の中央に配置される記録ヘッド2C,2D、その外側に配置される記録ヘッド2B,2E、さらに外側配置される記録ヘッド2A,2Fの順に、それぞれが対応するチョークバルブ24a,24bまでのインク流路長(供給路長)を長く設定するとともに、それぞれが対応するチョークバルブ24a,24bまでのインク流路径を小さく設定した。なお、インク流路長及びインク流路径の少なくとも一方を異ならせるようにしてもよい。
さらに、インク流路長、及びインク流路径の調整に加え、例えばインク流路を構成するチューブT12の曲がり具合を調整することで、チューブ内の内部抵抗を変化させることでインクの流れ具合を調整するようにしてもよい。
これにより、後述するようなチョーククリーニングにおいて、記録ヘッド2C,2Dに最も積極的にインクが流れ込むようになっている。なお、他のインクカートリッジ20(20Y,20M,20B1,20B2)に接続されるサブタンク21に対応するチョークバルブ25a,25b〜27a,27bと各記録ヘッド2との間においても、同様にインク流路長が異なっており、記録ヘッド2C,2Dに最も積極的にインクが流れ込むようになっている。すなわち、使用頻度の高いヘッドユニット中央に配置されている記録ヘッド2に対し、積極的に後述のチョーククリーニングが行えるようにしている。
【0031】
また、プリンタ1は、サブタンク21におけるインクカートリッジ20に対する高さを調整可能とする調整機構53を備えている。具体的に調整機構53は、サブタンク21に取付けられている。この調整機構53は、プリンタ1の状況に応じてサブタンク21の高さを調整することが可能となっている。調整機構53は、例えば、インクカートリッジ20の脱着時において、サブタンク21をインクカートリッジ20よりも上若しくは同じ高さに配置する。これにより、インクカートリッジ20の脱着時にサブタンク21内に気泡が入り込むことが防止される。このとき、逆止弁40の働きによりインクが溢れ出すことが防止される。
【0032】
調整機構53は、通常動作時(インク噴射時)において、サブタンク21をインクカートリッジ20よりも下若しくは同じ高さに配置する。これにより、水頭差を利用することでインクカートリッジ20側からサブタンク21側へのインク供給速度を向上させることができる。
なお、調整機構53は、サブタンク21の各々に取付けられていてもよいし、複数のサブタンク21に対して共通に設けられるようにしてもよい。
【0033】
プリンタ1は、仮にインクカートリッジ20内のインクが空になった場合でも、上記サブタンク21内のインクを利用することで、続けて印字処理を行うことが可能となる。すなわち、インクカートリッジ20を交換しつつ、印字処理が可能とされるため、連続的に印字処理を行うことができる。
【0034】
各記録ヘッド2は、インクの噴射する複数のノズル16が形成されたノズル基板15を有している。なお、ノズル基板15の表面は噴射面15aを構成している。
【0035】
キャップユニット30は、各記録ヘッド2の噴射面15aにそれぞれ当接されるキャップ部材85と、キャップ部材85内に配置されるインク吸収体87と、キャップ部材85と噴射面15aとの間に形成される空間を負圧状態とする吸引ポンプ83を備えている。
【0036】
キャップ部材85は、ゴム等の弾性材をトレイ形状に成型した部材によって構成されており、その上面には枠状のシール部材82が設けられている。キャップ部材85は、シール部材82を介して記録ヘッド2の噴射面15aに良好に密着可能となっている。インク吸収体87は、インクを保持可能(吸収可能)なスポンジ状部材、あるいは多孔部材等で形成され、本実施形態においてはフェルトなどの不織布で形成されている。キャップ部材85の底には、キャップ部材85の内部と連通するチューブT80が接続されており、インク吸収体87に回収されたインクは、チューブT80を介して吸引ポンプ83に吸引され、下流側に設けられる廃インクタンク88に回収されるようになっている。
【0037】
また、上記キャップ部材85には不図示の移動機構が設けられており、これによってキャップ部材85は噴射面15aに当接可能となっている。なお、移動機構はキャップ部材85毎に設けるようにしてもよいし、各ヘッドグループG1,G2を構成する記録ヘッド2に対応するキャップ部材85毎に設けるようにしてもよい。また、記録ヘッド2を移動させる(例えば、下降させる)ことでキャップ部材85のシール部材82と噴射面15aとを密着させるようにしてもよい。
【0038】
上記キャップユニット30は、後述するプリンタ1におけるメンテナンス処理に用いられる。メンテナンス処理は、記録ヘッド2内からインクを排出させる吸引動作である。ここで、吸引動作としては、通常吸引動作とチョーク吸引動作とを含む。
【0039】
通常吸引動作は、上記チョークバルブ24a,24bを閉塞しない状態で、キャップ部材85を噴射面15aに密着させ、吸引ポンプ83により噴射面15aとキャップ部材85との間に形成された内部空間を減圧し、噴射面15aのノズル16からインクを吸引する動作である。これにより、ノズル16に目詰まりを生じさせているインクを強制的に排出させて、記録ヘッド2の噴射特性を維持又は回復することができる。
【0040】
これに対し、チョーク吸引動作は、上記チョークバルブ24a,24bを閉塞した状態で、キャップ部材85を噴射面15aに密着させ、上記吸引ポンプ83を動作させる。これにより、ノズル16を介して記録ヘッド2内を大きな負圧状態とする。そして、チョークバルブを開くことで記録ヘッド2内にインクを一気に流し込む。このようなチョーク吸引動作により、記録ヘッド2におけるインク流路内に滞留している気泡及びノズル内で固着している増粘インクを外部に排出させるチョーククリーニングを行うことができる。
【0041】
続いて、ヘッドユニット10を構成する各記録ヘッド2の構成について図面を参照して説明する。
【0042】
図4は記録ヘッド2のヘッド本体68及び流路形成ユニット72の構成を示す断面図である。同図に示すように、ヘッド本体68の底部に流路形成ユニット72が接合された状態になっている。
【0043】
ヘッド本体68は、合成樹脂からなる箱形の部材であって、駆動ユニット74を収容する収容空間73と、外部から供給されたインクを流路形成ユニット72に案内する内部流路78とが形成されている。
【0044】
収容空間73内に配置された駆動ユニット74は、複数の圧電振動子75と、複数の圧電振動子75の上端を支持する固定部材76と、駆動信号を圧電振動子75に供給する柔軟なケーブル77とを備えている。圧電振動子75は、複数のノズル16のそれぞれに対応して設けられている。内部流路78は、ヘッド本体68を図4上下方向に貫通して形成されており、図示上側から供給されるインクを流通させ、図示下端側の開口端を介して流路形成ユニット72に供給する。
【0045】
流路形成ユニット72は、振動板69、流路基板70、及びノズル基板15を積層し、接着剤等で接合一体化したものである。流路形成ユニット72には、ヘッド本体68の内部流路78と接続された共通インク室79と、共通インク室79と接続されたインク供給口80と、インク供給口80と接続された圧力室81とが形成されている。圧力室81は、各々のノズル16に対応して設けられており、各々が共通インク室79と反対側の端部においてノズル16に接続されている。
【0046】
振動板69は、例えばステンレス鋼等の金属製の支持板上に弾性フィルムをラミネート加工したものである。振動板69の圧力室81に対応する部分には、エッチングなどにより支持板を環状に除去することで圧電振動子75の下端と接合される島部84が形成されており、ダイヤフラム部として機能する。すなわち、振動板69は、圧力室81上において、島部84の周囲の弾性フィルムの部分が圧電振動子75の駆動に応じて弾性変形し、島部84が上下動するようになっている。また、振動板69と内部流路78の下端近傍との間にも、支持板の一部を除去して弾性フィルムのみとした部分が設けられており、この部分が共通インク室79内の圧力変動を吸収するコンプライアンス部86となっている。
【0047】
流路基板70は、内部流路78の下端とノズル16とを接続する共通インク室79、インク供給口80及び圧力室81それぞれの空間を形成するための凹部を有する。これらの凹部は、流路基板70の基材となるシリコン単結晶基板を異方性エッチングすることで形成されている。
【0048】
ノズル基板15は、所定方向に所定間隔(ピッチ)で形成された複数のノズル16を有する。本実施形態のノズル基板15は、例えばステンレス鋼等の金属で形成された板状の部材であり、その外面が噴射面15aである。
【0049】
続いて、上記プリンタ1の動作として、上記キャップユニット30を用いたメンテナンス方法について説明する。以下の説明ではチョーククリーニングを行う工程を中心に説明する。本説明では、図3を参照する。
【0050】
まず、チョーククリーニングを行うヘッドグループG1,G2の記録ヘッド2にキャップ部材85のシール部材82を当接させる。本説明では、第1のヘッドグループG1についてチョーククリーニングを行う場合について説明する。
【0051】
例えば、本説明では、第1のヘッドグループG1を構成する記録ヘッド2A,2B,2Cにキャップ部材85(シール部材82)を当接させる。続いて、チョークバルブ24a〜27aを閉塞する。そして、この状態において記録ヘッド2A,2B,2Cに当接するキャップ部材85に接続されている吸引ポンプ83を駆動させる。
【0052】
すると、第1のヘッドグループG1とサブタンク21との間にインク供給路(チューブT12〜T15)は、チョークバルブ24a〜27aによって閉じられているため、ノズル16を介して各記録ヘッド2A,2B,2C内が大きな負圧状態となる。そして、チョークバルブ24a〜27aを開くことで、蓄積された負圧により記録ヘッド2A,2B,2C内にインクを一気に流し込む。このとき、記録ヘッド2A,2B,2Cにおけるインク供給路内に滞留している気泡及びノズル内で固着している増粘インクが外部に排出される。
【0053】
ここで、本実施形態に係るプリンタ1においては、上述のようにチョークバルブ24a〜27aと各記録ヘッド2との間においてインク流路長を異ならせ、使用頻度の高いヘッドユニット10の中央に配置されている記録ヘッド2に対して積極的にインクを流し込むことで強めのチョーククリーニングを行うことができる。
【0054】
このように本実施形態によれば、各チョークバルブ24a〜27aの下流のインク流路が分岐された後、複数の記録ヘッド2A,2B,2Cから構成されるヘッドグループG1に接続されているので、これらチョークバルブ24a〜27aを閉塞することで複数の記録ヘッド2A,2B,2Cにインクが流れ込んでチョーククリーニングを行うことができる。よって、従来のようなヘッドのノズル列毎にバルブを設けた構成に比べ、チョークバルブの制御が単純化できる。
【0055】
なお、通常吸引動作を行う場合、チョークバルブ24a,24bは使用せず、キャップ部材85を噴射面15aに密着させ、吸引ポンプ83により噴射面15aとキャップ部材85との間に形成された内部空間を減圧し、噴射面15aのノズル16からインクを吸引する。これにより、例えばノズル16内において増粘したインクを排出することで記録ヘッド2の噴射特性を維持又は回復することができる。
【0056】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもなく、上記各実施形態を組み合わせても良い。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0057】
例えば、上記実施形態においては、6つの記録ヘッド2からなるヘッドユニット10において2つのヘッドグループG1、G2を含んだ構成としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、ヘッドユニット10を構成する記録ヘッド数を6個以上としてもよい。この場合、ヘッドグループ数を3個以上に設定するようにしてよい。ここで、各ヘッドグループを構成する記録ヘッド2の数は3、4個に設定するのが望ましい。このようにすれば、一つのチョークバルブにより各ヘッドグループの記録ヘッドに対して良好にチョーク吸引を行うことができるからである。
【0058】
また、上記実施形態では各ヘッドグループを構成する記録ヘッド2の数を同数(3個ずつ)としたが、異ならせるようにしてもよい。この場合、各記録ヘッド2における使用頻度、又は他の記録ヘッド2に対する相対位置の少なくともいずれかに基づいてヘッドグループを構成するのが好ましい。
【0059】
ここで、ヘッドユニット10の内側の記録ヘッド2B,2C,2D,2Eは隣接して配置されているため、所定の印字処理において略同じタイミングで使用される。よって、略同じタイミングでチョーククリーニングが必要とされる。一方、ヘッドユニット10の外側の記録ヘッド2A,2Fについては、記録用紙100の幅が所定値よりも大きくなると使用されることから同一プロセスで使用される。よって、同一のタイミングでチョーククリーニングが必要とされる。
【0060】
このような場合、他の記録ヘッド2に対する相対位置に基づいてヘッドグループを構成する。具体的には、ヘッドユニット10における内側に配置されている記録ヘッド2B,2C,2D,2Eを一のヘッドグループとし、ヘッドユニット10における外側に配置されている記録ヘッド2A,2Fを他のヘッドグループとする。
【0061】
このようにすれば、チョークバルブを選択的に閉塞させることで、同一のタイミングでクリーニングが必要とされる記録ヘッド2に対して、チョーククリーニングを行うことができる。よって、クリーニングが必要とされない記録ヘッド2に対し、チョーククリーニングが行われることでインクが無駄に排出されてしまうといった不具合を防止できる。
【0062】
また、各記録ヘッド2における使用頻度に基づいてヘッドグループを構成する場合、例えば頻繁にインク噴射を行う記録ヘッド2を一のヘッドグループ(使用頻度の高いヘッドグループ)とし、所定時間毎にインク噴射を行う記録ヘッド2を他のヘッドグループ(使用頻度の少ないヘッドグループ)とする。
【0063】
この場合、使用頻度が高いヘッドグループの記録ヘッド2は、使用頻度の少ない記録ヘッド2に比べて、チョーククリーニングを行う頻度が多くなる。したがって、チョークバルブを選択的に閉塞させることで、所望の記録ヘッド2に対して頻繁にチョーククリーニングを行うことができ、インクの無駄を防止することができる。
【0064】
また、上記実施形態では、ヘッドグループG1,G2のいずれにおいてもチョークバルブから各記録ヘッドまでのインク流路長及びインク流路径を異ならせた構成とした。しかしながら、上述のように本実施形態とは異なるヘッドグループを構成する場合、少なくともいずれかのヘッドグループのみにおいて上記インク流路長及びインク流路径を異ならせるようにしてもよい。
【0065】
上記実施例は、インクジェット式のプリンタと、インクカートリッジが採用されているが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置と、その液体を収容した液体容器を採用しても良い。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であれ良い。例えば、物質が液相であるときの状態のものであれば良く、粘性の高い又は低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施例の形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用しても良い。そして、これらのうちいずれか一種の噴射装置および液体容器に本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】プリンタの概略構成を示す図。
【図2】インクカートリッジからヘッドユニットまでのインク供給路を示す図。
【図3】インク流路及びキャップユニットの構成を示す図。
【図4】ヘッド本体及び流路形成ユニットの構成を示す断面図。
【符号の説明】
【0067】
1…プリンタ(液体噴射装置)、2…記録ヘッド(噴射ヘッド)、20…インクカートリッジ(液体貯留部)、21…サブタンク、24,25,26,27…バルブ群、24a,24B,25A、25b,26a,26b,27a,27b…チョークバルブ(バルブ)、40…逆止弁、53…調整機構、G1,G2…ヘッドグループ、L…インク(液体)、T1〜T6、T12〜T15…チューブ(供給路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が貯留される液体貯留部から前記液体を噴射する複数の噴射ヘッドに前記液体を供給する供給路と、
前記供給路の途中に設けられ、前記液体貯留部から供給された液体を前記各噴射ヘッドに水頭差により供給可能とするサブタンクと、
前記供給路における前記サブタンクと前記複数の噴射ヘッドとの途中に設けられるバルブ群を備え、
前記噴射ヘッドを少なくとも二つ含むヘッドグループが複数構成され、前記バルブ群が前記ヘッドグループと同じ数のバルブから構成されており、前記バルブの各々が前記ヘッドグループの各々に前記供給路を介して接続されることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記供給路における前記液体貯留部と前記サブタンクとの途中に設けられる逆止弁を備えることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
同じ種類の前記液体が貯留される複数の前記液体貯留部のいずれか一つから選択された前記液体が、前記サブタンクに供給されることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記サブタンクにおける前記液体貯留部に対する高さを調整可能とする調整機構を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記各噴射ヘッドにおける使用頻度、又は他の噴射ヘッドに対する相対位置の少なくともいずれかに基づいて前記ヘッドグループが構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記ヘッドグループの少なくともいずれかは、前記バルブから前記各噴射ヘッドまでの供給路長及び供給路径の少なくとも一方が異なることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−30097(P2010−30097A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−193380(P2008−193380)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】