液体封入式防振支持装置
【課題】液体封入式の防振支持装置におけるストッパの構造に工夫を凝らし、その作動に伴う動ばねの上昇を抑えて、伝達する振動による不具合を軽減する。
【解決手段】自動車に広く用いられる液体封入式のエンジンマウントAにおいて、車体側の支持金具3の上部に、エンジン側の連結金具1を取り囲むようにストッパ金具8を配設する。連結金具1のつば部10の外周にストッパ部7を設けて、ストッパ金具8との当接により支持金具3との相対変位を規制する。ストッパ部7は、つば部10の外周に設けた環状ゴム部70とその外周を覆う金属製の筒部材71とからなる。環状ゴム部70には、つば部10を間に挟んで前後にそれぞれ液室70a,70bを形成し、それらをつば部10の直径方向に貫通するオリフィス通路13によって連通させる。
【解決手段】自動車に広く用いられる液体封入式のエンジンマウントAにおいて、車体側の支持金具3の上部に、エンジン側の連結金具1を取り囲むようにストッパ金具8を配設する。連結金具1のつば部10の外周にストッパ部7を設けて、ストッパ金具8との当接により支持金具3との相対変位を規制する。ストッパ部7は、つば部10の外周に設けた環状ゴム部70とその外周を覆う金属製の筒部材71とからなる。環状ゴム部70には、つば部10を間に挟んで前後にそれぞれ液室70a,70bを形成し、それらをつば部10の直径方向に貫通するオリフィス通路13によって連通させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体封入式の防振支持装置に関し、特にストッパの構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の防振支持装置としては自動車用のエンジンマウントが良く知られている。その基本的な構造は、被支持体であるエンジン側の連結金具と車体側の支持金具との間にゴム弾性体を介設し、このゴム弾性体の変形に伴い容積が変化するよう両金具間に液室を形成するとともに、この液室を受圧室及び平衡室に仕切り、さらに、それら受圧室及び平衡室を連通するオリフィス通路を設けたものである。このオリフィス通路を介して液体が流動することで、所定周波数域のエンジン振動を効果的に吸収し、減衰させることができる。
【0003】
また、一般的にエンジンマウントには、ゴム弾性体の破損を防止するために、連結金具と支持金具との相対変位を規制するストッパが設けられている。これは通常、連結金具又は支持金具の一方に或る程度以上の大きさのゴム層を形成して、両金具の相対変位に伴い他方の金具に当接させるようにしており(例えば特許文献1、2を参照)、そうしてストッパが作動すると、これによりエンジン側と車体側とが繋がることになるから、車体側への振動伝達が懸念される。
【0004】
この点につき例えば特許文献3、4に記載のマウントでは、ストッパゴムの先端に凸条部を設けたり、或いはゴム層の内部にすぐり(空洞部)を設けたりして、部分的に剛性を低下させるようにしている。こうすれば、ストッパが作動してもマウントの動ばねが急上昇することはなく、車体側へ伝わる振動が急に大きくなることはない。
【特許文献1】特開平9−210118号公報
【特許文献2】米国特許第6341766号明細書
【特許文献3】特開昭61−92329号公報
【特許文献4】特公昭60−02541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記後者の従来例(特許文献3、4)のようにストッパゴムの剛性を部分的に低下させたとしても、このことはストッパ作動時のマウント動ばねの上昇を遅らせるだけであり、ストッパを介しての振動伝達を十分に抑制できるものではない。
【0006】
すなわち、例えば自動車の全開加速時等には駆動反力によってパワープラントが後傾し、それを支持するマウントにおいてストッパが作動したままになることがあるが、このときにエンジンは比較的大きな振動を発生しており、これがストッパを介して車室内に伝達されると、不快なこもり音等の不具合が生じるのである。
【0007】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、自動車等に広く用いられている液体封入式のマウント等(防振支持装置)におけるストッパの構造に工夫を凝らし、その作動に伴う動ばねの上昇を抑えて、こもり音のような不具合を軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために本発明では、液体の流動によって振動を吸収し、減衰させる防振機構(以下、液封防振機構という)をストッパにも設けて、これがチューニングされている周波数域における動ばねを低下させるようにした。
【0009】
すなわち、請求項1の発明は、被支持体側に連結される連結金具と、これをゴム弾性体を介して支持する支持金具と、そのゴム弾性体の変形に伴い容積が変化するように前記両金具間に形成された第1液室と、この第1液室の内部を受圧室及び平衡室に仕切る仕切り部と、それら受圧室及び平衡室を連通する第1オリフィス通路と、を備えた液体封入式の防振支持装置を対象とする。
【0010】
そして、前記連結金具及び支持金具の少なくとも一方に、それらの相対変位に伴い他方の金具に当接するよう、ゴム部を有するストッパが設けられている場合に、このストッパには、前記他方の金具との当接によるゴム部の変形に伴い容積が変化するように、少なくとも2つの第2液室と、それらを連通する第2オリフィス通路とを設ける構成とする。
【0011】
前記構成の防振支持装置は、それを例えば自動車のエンジンマウントに適用した場合、一例として加速時や減速時の駆動反力によってパワープラントがロールすると、これにより相対変位する車体側の支持金具とエンジン側の連結金具との間で、少なくとも一方の金具に設けられたストッパが他方の金具に当接し、変位を規制するようになる。
【0012】
そうしてストッパが作動すると、これを介して連結金具及び支持金具が繋がることになり、エンジン振動の車体側への伝達が大きくなる虞れがあるが、ストッパのゴム部には少なくとも2つの液室(第2液室)とそれらを連通するオリフィス通路(第2オリフィス通路)とからなる液封防振機構が備えられ、これがチューニングされている周波数域においては動ばねが大幅に低下するので、振動を効果的に吸収し、減衰させることができる。
【0013】
よって、自動車のエンジンマウントの場合は、車室内にこもり音を生じるような特定の周波数域に合わせてオリフィス通路の寸法等をチューニングすれば、この周波数域の振動伝達を効果的に抑制し、こもり音を十分に軽減することができる。同様のチューニングを行うことで、自動車用に限らず、種々の防振支持装置においてストッパの効果を確保しながら、その作動時の振動伝達による不具合を軽減できる。
【0014】
より具体的な構造として、例えばエンジンマウントに適用する場合、防振支持装置には被支持体であるエンジンの静的な荷重が概ね上下方向に入力することになり、上述のようなパワープラントのローリングによる連結金具及び支持金具の相対変位は、概ね自動車の前後若しくは左右方向、即ち、前記静荷重の入力方向に交差する方向になる。
【0015】
そこで好ましいのは、連結金具及び支持金具の一方に、前記静荷重の入力方向の軸線を周回する周回部を設け、また、他方の金具には、前記周回部の外周を離間して囲む囲繞壁部を設けた上で、ストッパとしては、前記一方の金具の周回部の外周に全周に亘って環状ゴム部を設けるとともに、その環状ゴム部の外周をそれよりも剛性の高い環状壁部で覆い、この環状壁部の外周と前記他方の金具の囲繞壁部の内周との間に隙間を形成すればよい(請求項2)。
【0016】
この構成では、上述したようにパワープラントがローリングして、マウントの連結金具と支持金具とが自動車の前後若しくは左右方向に相対変位すると、これにより相対的に近接する側においてストッパの環状壁部が囲繞壁部に当接して押圧されるようになり、これを介して環状ゴム部には圧縮及び剪断の両方の力が作用する。このことで、ゴムの圧縮の反力のみによって変位を規制する場合に比べると、同じ効果を得るためのゴム部の剛性は低めに設定することができ、このゴム部を介しての振動伝達を抑える上で有利になる。
【0017】
その場合には、ストッパの環状ゴム部と環状壁部との間に、一方の金具を間に挟んで所定方向(例えばパワープラントのローリングによってマウントの連結金具と支持金具とが相対変位する方向)に対峙するように一対の第2液室を設けるのが好ましく、この第2液室同士を連通する第2オリフィス通路は、前記一方の金具に貫通形成すればよい(請求項3)。
【0018】
こうすれば、環状ゴム部の成形時に、その外周面に開口する所要の大きさの凹部を形成し、これを環状壁部で覆うことによって、容易に第2液室を設けることができる。そして、一対の第2液室を連結金具及び支持金具の相対変位方向に対峙させて配置すれば、振動による両金具の相対変位によって一方の液室の容積が縮小するときに、他方の容積が拡大することになり、それらを連通する第2オリフィス通路において液体を効率良く流動させることができる。
【0019】
より好ましいのは、前記一方の金具に、一端が外部に開放し、他端が第2オリフィス通路に連通する第1連通路と、この第1連通路との連通部位に対向して一端が前記第2オリフィス通路に連通し、他端が第1液室に連通する第2連通路と、を形成することである(請求項4)。こうすれば、防振支持装置の製造時に第1及び第2の連通路を介して第1液室に液体を充填することができるとともに、第1連通路と第2オリフィス通路とを介して第2液室にも液体を充填することができ、工程の簡略化が可能になる。
【0020】
また、別の具体的構造として、前記と同様にストッパの環状ゴム部と環状壁部との間に形成した一対の第2液室同士を、同じく環状ゴム部と環状壁部との間で周方向に延びる第2オリフィス通路によって、連通させることもできる(請求項5)。こうすれば、第2液室と同様に第2オリフィス通路も容易に設けることができるとともに、その寸法についての制約が少なくなって、チューニングの自由度が向上する。
【0021】
さらに、別の具体的構造として、ストッパを内周側の金具(一方の金具)に設けるのではなく、外周側の金具(他方の金具)に設けることもできる。すなわち、前記他方の金具の囲繞壁部の内周に全周に亘って環状ゴム部を設け、その内周と前記一方の金具の周回部の外周との間に隙間を形成すればよく(請求項6)、こうして外周側に設けることで、ストッパの内部に液室や通路を設けるスペースを確保し易い。
【0022】
そうしてスペースを確保できれば、液封防振機構を2組設けて、それぞれに異なるチューニングを施すことも可能になる。すなわち、前記のように外周側に設けたストッパの環状ゴム部には、内周側の一方の金具を間に挟んで所定方向(上述の如く連結金具と支持金具との相対変位方向が好ましい)に対峙するように2つの第2液室を形成するとともに、その所定方向と交差する方向に対峙するよう、さらに2つの第2液室を形成して、これら4つの第2液室のうち、互いに周方向に隣り合う2つずつを第2オリフィス通路によって連通すればよい(請求項7)。
【0023】
そうして液室及びオリフィス通路からなる液封防振機構を2組設ければ、例えば自動車の加速時及び減速時のように、連結金具及び支持金具の相対変位の向きが逆になる場合に、そのうちの一方(例えば加速時)に合わせて1組の液封防振機構をチューニングするとともに、他方(例えば減速時)に合わせて別の液封防振機構をチューニングする、というように、求められる特性に応じてきめ細かなチューニングを施すことが可能になる。
【0024】
但し、そうした場合、連結金具及び支持金具の相対変位に伴い、その相対変位方向に対峙する2つの第2液室のいずれかの容積が拡大又は縮小するときに、これに連通されている第2液室の容積を縮小又は拡大させる必要がある。そこで、この第2液室のそれぞれに臨むように、前記環状ゴム部の内周面には他の部位よりも薄肉の膜状部を形成し、この膜状部の変形によって液室の容積変化を吸収するようにすればよい。
【発明の効果】
【0025】
以上、説明したように、本発明に係る液体封入式の防振支持装置によると、連結金具と支持金具との相対変位を規制するストッパに、液体の流動抵抗によって振動を減衰させる液封防振機構を設けたので、これによりチューニングした周波数域ではストッパの作動に伴う動ばねの上昇を抑えて、振動伝達に起因する不具合を十分に軽減することができる。一例として自動車のエンジンマウントの場合は、車室内にこもり音を生じるような周波数域における振動の伝達を効果的に抑制でき、全開加速時であっても、こもり音を十分に軽減できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0027】
(実施形態1)
図1〜4は、本発明に係る液体封入式の防振支持装置を自動車用エンジンマウントAに適用した実施形態を示し、このエンジンマウントAは、図示しない自動車のエンジン及び変速機(以下、両者をまとめてパワープラントという)と車体との間に介在されて、そのパワープラントの静荷重を支えるとともに、当該パワープラントからの振動を吸収し或いは減衰させて、車体への伝達を抑制するためのものである。
【0028】
この実施形態のエンジンマウントAは、図示しないブラケット等を介して被支持体であるパワープラントに取り付けられる概略円柱状の連結金具1と、これをゴム弾性体2を介して下方から支持する円筒状の支持金具3とを備え、この支持金具3の下側外周における自動車の前側及び後側(以下、単に前側、後側という)にそれぞれ溶接された一対の脚部30,30によって、車体フレームに固定されるようになっている。支持金具3は、後述するストッパ金具8とともにマウントAのケースとしても機能する。
【0029】
図3に示すように、連結金具1は、軸線Z方向の中間部につば部10を有し、その下側には下方に向かってすぼんだテーパ部11が、また上側には軸部12が、それぞれ形成されている。軸部12の上端面にはパワープラント側のブラケットが取り付けられて、図示しないボルトがボルト穴12aに螺入される。図の例では軸線Zは、パワープラントの静荷重が入力する方向の軸線であり、つば部10は、その軸線Zを中心として周回する円環状の周回部であって、その上面及び外周面には各々環状のストッパ部6,7が設けられている。
【0030】
上面のストッパ部6は、つば部10に加硫接着されたゴム層からなり(以下、ストッパゴム6という)、後述するように、ストッパ金具8と協働して連結金具1及び支持金具3の上下方向の相対変位を規制する。また、外周のストッパ部7は、図3の他、図2等にも示すが、環状のゴム部70とその外周を覆う金属製の筒部材71(環状壁部)とからなり、これもストッパ金具8等と協働して、連結金具1及び支持金具3の前後方向の相対変位を規制するものである。ストッパ部7については、本発明の特徴部分として後に詳述する。
【0031】
前記ゴム弾性体2は、その上部が連結金具1下側のテーパ部11を覆って加硫接着され、そこから放射状に拡がりながら斜め下に向かって延びる厚肉の傘状部20と、この傘状部20の下端に連続して下方に延びる円筒部21とからなり、この円筒部21が支持金具3の内周に固定されている。すなわち、支持金具3は、図の例では内筒31と外筒32とからなる二重構造のものであり、その内筒31がゴム弾性体2の円筒部21に埋め込まれて一体化されるとともに、この円筒部21の外周面が外筒32の内周面に接着固定されている。
【0032】
また、ゴム弾性体2の円筒部21は下側で拡径されて、環状の段部が形成されており、この段部を受け部として下方からオリフィス盤4が嵌挿されるとともに、このオリフィス盤4を下方から覆うようにしてゴム製のダイヤフラム5が配設されている。ダイヤフラム5の外周部には補強金具が埋め込まれていて、支持金具3の内筒31の下端に内向きに形成されたフランジによって、下方からかしめられている。
【0033】
そうしてダイヤフラム5により下端開口が閉塞されて、ゴム弾性体2の内部には所定の液体が封入される第1液室Fが形成される。この第1液室Fは、オリフィス盤4(仕切り部)によって上下に仕切られていて、その上側が受圧室f1に、下側が平衡室f2になる。パワープラントからの振動が入力してゴム弾性体2が変形すると、これにより主に受圧室f1の容積が変化し、液圧が変動する。この液圧変動は第1オリフィス通路Pによって平衡室f2に伝わり、その容積がダイヤフラム5の変形によって拡大又は縮小される。
【0034】
オリフィス盤4は、金属製の本体部材40及び蓋部材41が組合わされて、全体としては比較的厚肉の円盤状とされており、その内周側にはゴム製の可動板42が収容されて、比較的周波数の高い小振幅のエンジン振動が入力したときに、これによる受圧室f1の液圧変動を吸収するようになっている。一方、オリフィス盤4の外周には概ね全周に亘って開口する溝部が形成され、これがゴム弾性体2の円筒部21によって囲まれることで、円環状の第1オリフィス通路Pが形成される。
【0035】
図3にのみ示すが、第1オリフィス通路Pの一端は、受圧室f1に臨んで蓋部材41の上面に開口している。第1オリフィス通路Pの他端は、図示しないが平衡室f2に臨んで開口しており、この第1オリフィス通路Pを介して受圧室f1及び平衡室f2の間を相互に液体が流通することにより、所定の周波数域の振動が効果的に吸収、減衰されるようになる。この周波数域は概ね第1オリフィス通路Pの長さや断面積によって決まり、通常はアイドル振動等、比較的低周波で大振幅の振動に合わせて設定される。
【0036】
図2にも示すように、前記ゴム弾性体2の傘状部20等、上側の部分を囲んで、支持金具3の上端部にはその外筒32と略同径の円筒形状を有するストッパ金具8が取り付けられている。ストッパ金具8の下端には外側に張り出したフランジが形成され、このフランジがゴム弾性体2の円筒部21の上端に載置されて、その内部の内筒31の上端に外向きに形成されたフランジとともに、外筒32の上端に形成されたコ字状部によってかしめられている。
【0037】
前記ストッパ金具8は、連結金具1のつば部10に設けられたストッパ部7の外周を離間して囲む囲繞壁部であり、その内周面のうち下端寄りを除いた略全面にゴム層80が被覆形成されている。このゴム層80の内周面は、前記ストッパ部7の筒部材71の外周面との間に所定の隙間を空けて対向しており、それら両面が当接することによって、連結金具1とストッパ金具8、即ち支持金具3との前後方向の相対変位を規制するようになっている。
【0038】
また、ストッパ金具8の上端には、連結金具1の軸部12を取り囲むように内周側に向かって延びるフランジが形成されており、このフランジの下面が連結金具1のつば部10上面のストッパゴム6に当接することによって、該連結金具1の上方への移動を規制するようになっている。さらに、フランジの上面には、図示しないエンジン側のブラケットに当接して上方への移動が規制されるように、換言すれば、前記連結金具1の下方への移動を規制するように、ゴム層81が設けられている。
【0039】
尚、図3においては、エンジンマウントAにパワープラントの静荷重が作用していない状態を示しており、つば部10上面のストッパゴム6とストッパ金具8上端のフランジとの隙間は小さいが、エンジンマウントAが自動車に取り付けられてパワープラントを支持し、その静荷重が加わる1G状態では、ゴム弾性体2が撓んで連結金具1が下方に変位するので、前記の隙間は大きくなる。
【0040】
(ストッパの構造)
本発明の特徴として、前記ストッパ部7には、液体の流動によって振動を吸収し、減衰させる機構が設けられており、これにより所要の周波数域における動ばねを低下させて、ストッパ金具8と当接した状態でも振動の伝達を効果的に抑制できるようになっている。すなわち、まず、ストッパ部7には図3の他、図2や図4にも示すが、連結金具1のつば部10を間に挟んで前後方向に対峙するように、一対の第2液室70a,70bが形成されている。
【0041】
前記環状ゴム部70はゴム弾性体2と同時に加硫成形されるもので、その際に外周面に開口するように所要の大きさの凹部(図2では、この凹部に符号70a,70bを付す)を形成しておき、例えば圧入接着によりそれに筒部材71を組み付ければ、両者の間に第2液室70a,70bが形成される。図の例では第2液室70a,70bはいずれも周方向に長い扁平形状であり、左右両側の隔壁部70c,70cによって前後に隔てられるとともに、前側の第2液室70aの右端付近と後側の第2液室70bの左端付近とが、連結金具1のつば部10を直径方向に貫通する通路13によって連通されている。
【0042】
そうして連結金具10の前側及び後側にそれぞれ配設した第2液室70a,70bを通路13により連通させて、相互に液体を流通させるようにすれば、その通路13の長さや断面積等によってチューニングした所定周波数域において動ばねを大幅に低下させて、振動を効果的に吸収し、減衰させることができる。つまり、第2液室70a,70b及び通路13が液封防振機構であり、その通路13は、第2液室70a,70b同士を連通させる第2オリフィス通路13である。
【0043】
例えばパワープラントが前傾又は後傾し、連結金具1が前後方向に変位して、ストッパ部7の前端又は後端がストッパ金具8内周のゴム層80に当接すると、このストッパ部7を介して振動が車体側に伝わる虞れがあるが、この状態で前記所定周波数域のエンジン振動が入力すると、ストッパ部7内の第2液室70a,70bの一方の容積が縮小又は拡大するときには、筒部材71の前後方向の変位によって他方の第2液室70b,70aの容積は反対に拡大又は縮小することになり、それらを連通する第2オリフィス通路13において液体を効率良く流動させることができる。
【0044】
尚、図2や図4に示すように、ストッパ部7の環状ゴム部70には、液室70a,70bとなる各凹部の底面、即ち内周側面から半径方向外方に突出するように矩形状のブロック部70d,70dが設けられており、これが筒部材71の内周面に当接することによって、過大な変形によるゴム部70の破損を防止することができる。
【0045】
さらに、この実施形態では、図3に示すように連結金具1に、その軸部12のボルト穴12aの下端から下方に延びて第2オリフィス通路13に上側から連通する上側連通路14と、この上側連通路14との連通部位に対向して上端が前記第2オリフィス通路13に下側から連通し、そこから軸線Zに沿って下方に延びて、下端が第1液室Fに連通する下側連通路15と、が形成されている。
【0046】
前記上側連通路14はボルト穴12aよりも小径とされ、上広がりのテーパ部を介してボルト穴12aに連通している。上側連通路14とボルト穴12aとによって、一端が外部に開放し他端が第2オリフィス通路13に連通する第1の連通路が形成され、これを介してストッパ部7の第2液室70a,70bに液体を供給することができる。また、下側連通路15は、上側連通路14よりもさらに小径で、第1液室Fに液体を供給する経路となる。
【0047】
よって、マウントAの製造工程では、連結金具1の軸部12に取り付けた液封入ノズルからボルト穴12a、上側連通路14、第2オリフィス通路13を介して第2液室70a,70bに液体を供給するとともに、その第2オリフィス通路13に連通する下側連通路15を介して第1液室Fにも液体を供給する。そして、第1液室Fに液体が充填されば、下側連通路15の上端に封止材b1を打ち込んで封止し、さらに第2液室70a,70bにも液体が充填されれば、上側連通路14に封止材b2を打ち込んで封止する。
【0048】
以上の如く構成されたこの実施形態のエンジンマウントA(防振支持装置)によると、まず、エンジンのトルク変動が比較的小さな状態では、エンジン振動がマウントAのゴム弾性体2により吸収され、車体への振動伝達が抑制される。このときには、エンジン側の連結金具1に設けたストッパ部7が車体側のストッパ金具8から離間しているので、これらを介してエンジン振動が車体側に伝達される心配はない。
【0049】
一方、自動車の全開加速時のように大きな駆動反力(トルク)が作用すると、パワープラントがロール軸周りに回動して後傾するため、それを支持するマウントAにおいてストッパ部7が作動する。すなわち、図5に一例を示すように、連結金具1とともに後側に移動したストッパ部7の後部がストッパ金具8のゴム層80に当接する状態となるが、このとき、全開加速中のエンジンが比較的大きな振動を発生することから、この振動がストッパ部7を介して車室内に伝達されると、不快なこもり音を生じることになる。
【0050】
これに対し、上述したようにストッパ部7の内部には、前後にそれぞれ第2液室70a,70bが設けられて、第2オリフィス通路13によって連通されており、この第2オリフィス通路13の寸法が、前記のように車室内にこもり音を生じるような周波数域(車種によって異なるが、大体200〜500Hz)に合わせてチューニングされているので、この周波数域については動ばねが大幅に低下して、振動が効果的に吸収される。
【0051】
しかも、前記したように、エンジン振動によって前後いずれか一方の第2液室70a,70bが縮小(又は拡大)するときには、筒部材71の変位によって他方の第2液室70b,70aが拡大(又は縮小)することになり、第2オリフィス通路13において液体を効率良く流動させることができる。よって、ストッパ作動状態であっても、こもり音の原因となるエンジン振動の車体側への伝達は効果的に抑制され、こもり音が十分に軽減される。
【0052】
さらに、この実施形態ではストッパ部7を、環状のゴム部70とその外周を覆う筒部材71とによって構成しており、ストッパ作動時には筒部材71の前後いずれかの部位がストッパ金具8のゴム層80に当接して押圧されることにより、図5には誇張して示すが、筒部材71が連結金具1のつば部10に対して前後方向に変位することになり、両者の間の環状ゴム部70には前後方向に圧縮力が作用するのみならず、特に左右両側の部位では大きな剪断変形を生じる。
【0053】
つまり、ストッパ部7は、環状ゴム部70において主にストッパ金具8から押圧される部位の近傍に生じる圧縮の反力だけでなく、その環状ゴム部70の剪断変形に対する反力によっても、連結金具1と支持金具3との相対変位を規制するようになり、仮にゴム部の圧縮反力のみによって変位を規制するようにした場合に比べれば、同じ効果を得るためのゴムの剛性を低めに設定することができる。このこともストッパ部7を介しての振動伝達を抑える上で好ましい。
【0054】
さらにまた、上述したが、この実施形態のマウントAでは、環状ゴム部70の成形時にその外周に凹部を形成しておき、これを筒部材71で覆うことによって容易に第2液室70a,70bを設けることができる。また、その第2液室70a,70bへの液体の封入は、連結金具1に形成した第2オリフィス通路13や上側連通路14等によって、第1液室Fへの液体の充填と同時に行うことができる。よって製造工程の簡略化が図られる。
【0055】
(実施形態2)
図6〜8は、本発明の実施形態2に係るエンジンマウントAを示す。この実施形態2は、ストッパ部7の一部の構造のみが実施形態1と異なっており、それ以外は実施形態1のものと同じなので、以下、同一部材には同一の符号を付してその説明は省略する。
【0056】
この実施形態2のストッパ部7は、環状ゴム部70と筒部材71との間に、前記実施形態1のものと同様に第2液室70a,70bを設けるとともに、図7に示すように、それら両液室70a,70b同士を連通する第2オリフィス通路70e,70eも設けており、第1実施形態のように連結金具1のつば部10貫通する通路13は設けていない。
【0057】
より詳しくは、図6、7に示すように、この実施形態の環状ゴム部70には、第2液室70a,70bに対応して矩形状の開口部が形成された環状の補強金具72が埋め込まれるとともに、左右の隔壁部70c,70cの外周に周方向に延びる溝部(図8では、この溝部に符号70eを付す)が形成されており、この溝部(70e)の周方向両端がそれぞれ第2液室70a,70bとなる凹部に連通されている。
【0058】
そして、図8に示すように環状ゴム部70に筒部材71を被せてその外周を覆い、上下にかしめて固定することによって、ストッパ部7が構成されるとともに、その内部には前記実施形態1と同様の第2液室70a,70bと、それらを互いに連通させる左右一対の第2オリフィス通路70e,70eとが形成される。尚、筒部材71を環状ゴム部70にかしめて固定する必要はなく、前記実施形態1と同じく圧入接着してもよい。
【0059】
したがって、この実施形態2によると、ストッパ部7の環状ゴム部70に第2液室70a,70bとなる凹部を形成する際に、第2オリフィス通路70e,70eとなる溝部も形成しておき、これに筒部材71を取り付けるだけで、容易に液封防振機構を構成することができる。
【0060】
また、そうして環状ゴム部70に形成する凹部や溝部の大きさを変更するだけで、第2オリフィス通路70eの長さや断面積を調整できるので、通路13の長さが連結金具1のつば部10の直径に制約される実施形態1に比べて、その寸法についての制約が少なくなり、チューニングの自由度が高くなる。
【0061】
(実施形態3)
図9、10は、本発明の実施形態3に係るエンジンマウントAを示す。この実施形態3はストッパの具体的な構造が実施形態1、2と異なっており、それ以外の構造は同じなので、以下、同一部材には同一の符号を付してその説明は省略する。
【0062】
この実施形態3のマウントAでは、前記実施形態1、2のように連結金具1にストッパ部7を設けるのではなく、それを囲む外周側のストッパ金具8にストッパ部9を設けている。すなわち、ストッパ金具8の内周に全周に亘って環状ゴム部90を設け、その内周面を連結金具1のつば部10’の外周面と対向させている。尚、図10から分かるように、この例ではつば部10’の断面は円形ではなく異形状であり、その外周面はゴム弾性体2やストッパゴム6と一体のゴム層16によって覆われているが、このゴム層16はなくてもよい。
【0063】
また、前記環状ゴム部90には円筒状の補強金具91が埋め込まれており、図の例では補強金具91の下端には外側に張り出したフランジが形成され、このフランジが、ストッパ金具8の下端フランジや支持金具3の内筒31の上端フランジとともに、外筒32の上端に形成されたコ字状部によってかしめられている。
【0064】
そうして実施形態1、2よりも外周側に設ければスペースを確保しやすいので、この実施形態3ではストッパ部9の環状ゴム部90に第2液室90a,90bと第2オリフィス通路90cとを2組、設けている。すなわち、環状ゴム部90には、連結金具1の異形のつば部10’を挟んで前後方向に対峙するように、2つの第2液室90a,90aが形成されるとともに、図10にのみ示すが、つば部10’を挟んで左右方向(交差方向)に対峙するように2つの第2液室90b,90bが形成されている。
【0065】
また、それら4つの第2液室90a,…,90b,…のうち、互いに周方向に隣り合う2つずつ(図の例では前側の第2液室90a及び右側の第2液室90bと、後側の第2液室90a及び左側の第2液室90b)を連通するように、周方向に延びる2つの第2オリフィス通路90c、90cが形成されている。さらに、左右両側の第2液室90b,90bのそれぞれに臨むように、環状ゴム部90の内周面には他の部位よりも薄肉の膜状部90dが形成され、この膜状部90dの変形によって第2液室bの容積変化が許容されるようになっている。
【0066】
そして、この実施形態3によると、例えば自動車の全開加速時にパワープラントが後傾し、マウントAにおいて連結金具1が後側に移動して、そのつば部10’の後部がストッパ部9の環状ゴム部90に当接すると、この環状ゴム部90において後側の第2液室90aが圧縮されて液圧が増大し、第2オリフィス通路90cを介して左側の第2液室90bに液体が流動する。これを受けて左側の第2液室90bでは膜状部90dが膨出することにより、体積補償が行われる。
【0067】
一方、自動車の急減速時にはパワープラントが前傾して連結金具1が前側に移動するので、ストッパ部9の環状ゴム部90において前側の第2液室90aが圧縮され、第2オリフィス通路90cを介して右側の第2液室90bに液体が流動して、前記と同様に膜状部90dの膨出によって体積補償が行われることになる。
【0068】
したがって、この実施形態3のマウントAでは、自動車の全開加速時及び急減速時のようにエンジンの振動状態が大きく異なり、求められる防振特性も大きく異なる2つの状態にそれぞれ対応して、ストッパ部9に2組の液封防新機構を備えており、いずれか1組を一方(例えば加速時)の要求に合わせてチューニングするとともに、別の組を他方(例えば減速時)の要求に合わせてチューニングすることができるから、全開加速時と急減速時のそれぞれに最適な防振特性を実現できる。
【0069】
尚、図示のように環状ゴム部90には、液室90aに臨むストッパ金具8の内周面に当接することにより、過大な変形によるゴム部90の破損を防止するためのブロック部90eが設けられている。
【0070】
尚、本発明に係る防振支持装置の構成は、前記した実施形態1〜3に限定されるものではなく、その以外の種々の構成をも包含する。例えば実施形態1、2では、ストッパ部7の外周の筒部材71を金属製としているが、これはゴムよりも剛性の高いものであればよく、例えば樹脂製とすることもできる。
【0071】
また、図11には前記実施形態1について一例を示すが、前記各実施形態においてストッパ金具8に、その上端フランジの内周縁から折れ曲がって上方に延びる筒状の突出部8aを設けて、その内周のゴム層を介して連結金具1の軸部12と当接させるようにしてもよい。すなわち、各実施形態のようにストッパ部7,9の内部に液室70a,…90a,…等を形成すると、大きな負荷が加わったときに破壊する虞れがあるので、特に負荷の大きいときには、その一部を前記突出部8aと軸部12との間で受け止めるものである。
【0072】
前記各実施形態では、本発明の防振支持装置をいわゆる縦置きのエンジンマウントAに適用しているが、これに限らず、横置きのエンジンマウントにも適用することができるし、エンジンマウントに限らずサスペンションブッシュ等にも適用できる。さらに、自動車用途に限定されることもない。
【産業上の利用可能性】
【0073】
以上、説明したように、本発明の防振支持装置は、ストッパの機能を確保しつつ自動車の全開加速時のこもり音を十分に軽減できるので、自動車用のエンジンマウントとして好適である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】エンジンマウントの外観を示す斜視図である。
【図2】同ストッパの構造を示す分解斜視図である。
【図3】同内部構造を縦断面で示す斜視図である。
【図4】同横断面図である。
【図5】ストッパが作動した状態の図4相当図である。
【図6】実施形態2に係るマウントの縦断面図である。
【図7】同横断面図である。
【図8】同ストッパの構造を示す分解斜視図である。
【図9】実施形態3に係るマウントの縦断面図である。
【図10】同横断面図である。
【図11】他の実施形態に係る図3相当図である。
【符号の説明】
【0075】
A エンジンマウント(液体封入式防振支持装置)
F 第1液室
f1 受圧室
f2 平衡室
P 第1オリフィス通路
Z 軸線
1 連結金具
2 ゴム弾性体
3 支持金具
4 オリフィス盤(仕切り部)
7 ストッパ部(ストッパ)
70 環状ゴム部
70a,70b 第2液室
70e 第2オリフィス通路
71 筒部材(環状壁部)
8 ストッパ金具(囲繞壁部)
9 ストッパ部
90 環状ゴム部
90a,90b 第2液室
90c 第2オリフィス通路
90d 膜状部
12 ボルト穴(第1連通路)
13 第2オリフィス通路
14 上側連通路(第1連通路)
15 下側連通路(第2連通路)
【技術分野】
【0001】
本発明は液体封入式の防振支持装置に関し、特にストッパの構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の防振支持装置としては自動車用のエンジンマウントが良く知られている。その基本的な構造は、被支持体であるエンジン側の連結金具と車体側の支持金具との間にゴム弾性体を介設し、このゴム弾性体の変形に伴い容積が変化するよう両金具間に液室を形成するとともに、この液室を受圧室及び平衡室に仕切り、さらに、それら受圧室及び平衡室を連通するオリフィス通路を設けたものである。このオリフィス通路を介して液体が流動することで、所定周波数域のエンジン振動を効果的に吸収し、減衰させることができる。
【0003】
また、一般的にエンジンマウントには、ゴム弾性体の破損を防止するために、連結金具と支持金具との相対変位を規制するストッパが設けられている。これは通常、連結金具又は支持金具の一方に或る程度以上の大きさのゴム層を形成して、両金具の相対変位に伴い他方の金具に当接させるようにしており(例えば特許文献1、2を参照)、そうしてストッパが作動すると、これによりエンジン側と車体側とが繋がることになるから、車体側への振動伝達が懸念される。
【0004】
この点につき例えば特許文献3、4に記載のマウントでは、ストッパゴムの先端に凸条部を設けたり、或いはゴム層の内部にすぐり(空洞部)を設けたりして、部分的に剛性を低下させるようにしている。こうすれば、ストッパが作動してもマウントの動ばねが急上昇することはなく、車体側へ伝わる振動が急に大きくなることはない。
【特許文献1】特開平9−210118号公報
【特許文献2】米国特許第6341766号明細書
【特許文献3】特開昭61−92329号公報
【特許文献4】特公昭60−02541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記後者の従来例(特許文献3、4)のようにストッパゴムの剛性を部分的に低下させたとしても、このことはストッパ作動時のマウント動ばねの上昇を遅らせるだけであり、ストッパを介しての振動伝達を十分に抑制できるものではない。
【0006】
すなわち、例えば自動車の全開加速時等には駆動反力によってパワープラントが後傾し、それを支持するマウントにおいてストッパが作動したままになることがあるが、このときにエンジンは比較的大きな振動を発生しており、これがストッパを介して車室内に伝達されると、不快なこもり音等の不具合が生じるのである。
【0007】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、自動車等に広く用いられている液体封入式のマウント等(防振支持装置)におけるストッパの構造に工夫を凝らし、その作動に伴う動ばねの上昇を抑えて、こもり音のような不具合を軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために本発明では、液体の流動によって振動を吸収し、減衰させる防振機構(以下、液封防振機構という)をストッパにも設けて、これがチューニングされている周波数域における動ばねを低下させるようにした。
【0009】
すなわち、請求項1の発明は、被支持体側に連結される連結金具と、これをゴム弾性体を介して支持する支持金具と、そのゴム弾性体の変形に伴い容積が変化するように前記両金具間に形成された第1液室と、この第1液室の内部を受圧室及び平衡室に仕切る仕切り部と、それら受圧室及び平衡室を連通する第1オリフィス通路と、を備えた液体封入式の防振支持装置を対象とする。
【0010】
そして、前記連結金具及び支持金具の少なくとも一方に、それらの相対変位に伴い他方の金具に当接するよう、ゴム部を有するストッパが設けられている場合に、このストッパには、前記他方の金具との当接によるゴム部の変形に伴い容積が変化するように、少なくとも2つの第2液室と、それらを連通する第2オリフィス通路とを設ける構成とする。
【0011】
前記構成の防振支持装置は、それを例えば自動車のエンジンマウントに適用した場合、一例として加速時や減速時の駆動反力によってパワープラントがロールすると、これにより相対変位する車体側の支持金具とエンジン側の連結金具との間で、少なくとも一方の金具に設けられたストッパが他方の金具に当接し、変位を規制するようになる。
【0012】
そうしてストッパが作動すると、これを介して連結金具及び支持金具が繋がることになり、エンジン振動の車体側への伝達が大きくなる虞れがあるが、ストッパのゴム部には少なくとも2つの液室(第2液室)とそれらを連通するオリフィス通路(第2オリフィス通路)とからなる液封防振機構が備えられ、これがチューニングされている周波数域においては動ばねが大幅に低下するので、振動を効果的に吸収し、減衰させることができる。
【0013】
よって、自動車のエンジンマウントの場合は、車室内にこもり音を生じるような特定の周波数域に合わせてオリフィス通路の寸法等をチューニングすれば、この周波数域の振動伝達を効果的に抑制し、こもり音を十分に軽減することができる。同様のチューニングを行うことで、自動車用に限らず、種々の防振支持装置においてストッパの効果を確保しながら、その作動時の振動伝達による不具合を軽減できる。
【0014】
より具体的な構造として、例えばエンジンマウントに適用する場合、防振支持装置には被支持体であるエンジンの静的な荷重が概ね上下方向に入力することになり、上述のようなパワープラントのローリングによる連結金具及び支持金具の相対変位は、概ね自動車の前後若しくは左右方向、即ち、前記静荷重の入力方向に交差する方向になる。
【0015】
そこで好ましいのは、連結金具及び支持金具の一方に、前記静荷重の入力方向の軸線を周回する周回部を設け、また、他方の金具には、前記周回部の外周を離間して囲む囲繞壁部を設けた上で、ストッパとしては、前記一方の金具の周回部の外周に全周に亘って環状ゴム部を設けるとともに、その環状ゴム部の外周をそれよりも剛性の高い環状壁部で覆い、この環状壁部の外周と前記他方の金具の囲繞壁部の内周との間に隙間を形成すればよい(請求項2)。
【0016】
この構成では、上述したようにパワープラントがローリングして、マウントの連結金具と支持金具とが自動車の前後若しくは左右方向に相対変位すると、これにより相対的に近接する側においてストッパの環状壁部が囲繞壁部に当接して押圧されるようになり、これを介して環状ゴム部には圧縮及び剪断の両方の力が作用する。このことで、ゴムの圧縮の反力のみによって変位を規制する場合に比べると、同じ効果を得るためのゴム部の剛性は低めに設定することができ、このゴム部を介しての振動伝達を抑える上で有利になる。
【0017】
その場合には、ストッパの環状ゴム部と環状壁部との間に、一方の金具を間に挟んで所定方向(例えばパワープラントのローリングによってマウントの連結金具と支持金具とが相対変位する方向)に対峙するように一対の第2液室を設けるのが好ましく、この第2液室同士を連通する第2オリフィス通路は、前記一方の金具に貫通形成すればよい(請求項3)。
【0018】
こうすれば、環状ゴム部の成形時に、その外周面に開口する所要の大きさの凹部を形成し、これを環状壁部で覆うことによって、容易に第2液室を設けることができる。そして、一対の第2液室を連結金具及び支持金具の相対変位方向に対峙させて配置すれば、振動による両金具の相対変位によって一方の液室の容積が縮小するときに、他方の容積が拡大することになり、それらを連通する第2オリフィス通路において液体を効率良く流動させることができる。
【0019】
より好ましいのは、前記一方の金具に、一端が外部に開放し、他端が第2オリフィス通路に連通する第1連通路と、この第1連通路との連通部位に対向して一端が前記第2オリフィス通路に連通し、他端が第1液室に連通する第2連通路と、を形成することである(請求項4)。こうすれば、防振支持装置の製造時に第1及び第2の連通路を介して第1液室に液体を充填することができるとともに、第1連通路と第2オリフィス通路とを介して第2液室にも液体を充填することができ、工程の簡略化が可能になる。
【0020】
また、別の具体的構造として、前記と同様にストッパの環状ゴム部と環状壁部との間に形成した一対の第2液室同士を、同じく環状ゴム部と環状壁部との間で周方向に延びる第2オリフィス通路によって、連通させることもできる(請求項5)。こうすれば、第2液室と同様に第2オリフィス通路も容易に設けることができるとともに、その寸法についての制約が少なくなって、チューニングの自由度が向上する。
【0021】
さらに、別の具体的構造として、ストッパを内周側の金具(一方の金具)に設けるのではなく、外周側の金具(他方の金具)に設けることもできる。すなわち、前記他方の金具の囲繞壁部の内周に全周に亘って環状ゴム部を設け、その内周と前記一方の金具の周回部の外周との間に隙間を形成すればよく(請求項6)、こうして外周側に設けることで、ストッパの内部に液室や通路を設けるスペースを確保し易い。
【0022】
そうしてスペースを確保できれば、液封防振機構を2組設けて、それぞれに異なるチューニングを施すことも可能になる。すなわち、前記のように外周側に設けたストッパの環状ゴム部には、内周側の一方の金具を間に挟んで所定方向(上述の如く連結金具と支持金具との相対変位方向が好ましい)に対峙するように2つの第2液室を形成するとともに、その所定方向と交差する方向に対峙するよう、さらに2つの第2液室を形成して、これら4つの第2液室のうち、互いに周方向に隣り合う2つずつを第2オリフィス通路によって連通すればよい(請求項7)。
【0023】
そうして液室及びオリフィス通路からなる液封防振機構を2組設ければ、例えば自動車の加速時及び減速時のように、連結金具及び支持金具の相対変位の向きが逆になる場合に、そのうちの一方(例えば加速時)に合わせて1組の液封防振機構をチューニングするとともに、他方(例えば減速時)に合わせて別の液封防振機構をチューニングする、というように、求められる特性に応じてきめ細かなチューニングを施すことが可能になる。
【0024】
但し、そうした場合、連結金具及び支持金具の相対変位に伴い、その相対変位方向に対峙する2つの第2液室のいずれかの容積が拡大又は縮小するときに、これに連通されている第2液室の容積を縮小又は拡大させる必要がある。そこで、この第2液室のそれぞれに臨むように、前記環状ゴム部の内周面には他の部位よりも薄肉の膜状部を形成し、この膜状部の変形によって液室の容積変化を吸収するようにすればよい。
【発明の効果】
【0025】
以上、説明したように、本発明に係る液体封入式の防振支持装置によると、連結金具と支持金具との相対変位を規制するストッパに、液体の流動抵抗によって振動を減衰させる液封防振機構を設けたので、これによりチューニングした周波数域ではストッパの作動に伴う動ばねの上昇を抑えて、振動伝達に起因する不具合を十分に軽減することができる。一例として自動車のエンジンマウントの場合は、車室内にこもり音を生じるような周波数域における振動の伝達を効果的に抑制でき、全開加速時であっても、こもり音を十分に軽減できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0027】
(実施形態1)
図1〜4は、本発明に係る液体封入式の防振支持装置を自動車用エンジンマウントAに適用した実施形態を示し、このエンジンマウントAは、図示しない自動車のエンジン及び変速機(以下、両者をまとめてパワープラントという)と車体との間に介在されて、そのパワープラントの静荷重を支えるとともに、当該パワープラントからの振動を吸収し或いは減衰させて、車体への伝達を抑制するためのものである。
【0028】
この実施形態のエンジンマウントAは、図示しないブラケット等を介して被支持体であるパワープラントに取り付けられる概略円柱状の連結金具1と、これをゴム弾性体2を介して下方から支持する円筒状の支持金具3とを備え、この支持金具3の下側外周における自動車の前側及び後側(以下、単に前側、後側という)にそれぞれ溶接された一対の脚部30,30によって、車体フレームに固定されるようになっている。支持金具3は、後述するストッパ金具8とともにマウントAのケースとしても機能する。
【0029】
図3に示すように、連結金具1は、軸線Z方向の中間部につば部10を有し、その下側には下方に向かってすぼんだテーパ部11が、また上側には軸部12が、それぞれ形成されている。軸部12の上端面にはパワープラント側のブラケットが取り付けられて、図示しないボルトがボルト穴12aに螺入される。図の例では軸線Zは、パワープラントの静荷重が入力する方向の軸線であり、つば部10は、その軸線Zを中心として周回する円環状の周回部であって、その上面及び外周面には各々環状のストッパ部6,7が設けられている。
【0030】
上面のストッパ部6は、つば部10に加硫接着されたゴム層からなり(以下、ストッパゴム6という)、後述するように、ストッパ金具8と協働して連結金具1及び支持金具3の上下方向の相対変位を規制する。また、外周のストッパ部7は、図3の他、図2等にも示すが、環状のゴム部70とその外周を覆う金属製の筒部材71(環状壁部)とからなり、これもストッパ金具8等と協働して、連結金具1及び支持金具3の前後方向の相対変位を規制するものである。ストッパ部7については、本発明の特徴部分として後に詳述する。
【0031】
前記ゴム弾性体2は、その上部が連結金具1下側のテーパ部11を覆って加硫接着され、そこから放射状に拡がりながら斜め下に向かって延びる厚肉の傘状部20と、この傘状部20の下端に連続して下方に延びる円筒部21とからなり、この円筒部21が支持金具3の内周に固定されている。すなわち、支持金具3は、図の例では内筒31と外筒32とからなる二重構造のものであり、その内筒31がゴム弾性体2の円筒部21に埋め込まれて一体化されるとともに、この円筒部21の外周面が外筒32の内周面に接着固定されている。
【0032】
また、ゴム弾性体2の円筒部21は下側で拡径されて、環状の段部が形成されており、この段部を受け部として下方からオリフィス盤4が嵌挿されるとともに、このオリフィス盤4を下方から覆うようにしてゴム製のダイヤフラム5が配設されている。ダイヤフラム5の外周部には補強金具が埋め込まれていて、支持金具3の内筒31の下端に内向きに形成されたフランジによって、下方からかしめられている。
【0033】
そうしてダイヤフラム5により下端開口が閉塞されて、ゴム弾性体2の内部には所定の液体が封入される第1液室Fが形成される。この第1液室Fは、オリフィス盤4(仕切り部)によって上下に仕切られていて、その上側が受圧室f1に、下側が平衡室f2になる。パワープラントからの振動が入力してゴム弾性体2が変形すると、これにより主に受圧室f1の容積が変化し、液圧が変動する。この液圧変動は第1オリフィス通路Pによって平衡室f2に伝わり、その容積がダイヤフラム5の変形によって拡大又は縮小される。
【0034】
オリフィス盤4は、金属製の本体部材40及び蓋部材41が組合わされて、全体としては比較的厚肉の円盤状とされており、その内周側にはゴム製の可動板42が収容されて、比較的周波数の高い小振幅のエンジン振動が入力したときに、これによる受圧室f1の液圧変動を吸収するようになっている。一方、オリフィス盤4の外周には概ね全周に亘って開口する溝部が形成され、これがゴム弾性体2の円筒部21によって囲まれることで、円環状の第1オリフィス通路Pが形成される。
【0035】
図3にのみ示すが、第1オリフィス通路Pの一端は、受圧室f1に臨んで蓋部材41の上面に開口している。第1オリフィス通路Pの他端は、図示しないが平衡室f2に臨んで開口しており、この第1オリフィス通路Pを介して受圧室f1及び平衡室f2の間を相互に液体が流通することにより、所定の周波数域の振動が効果的に吸収、減衰されるようになる。この周波数域は概ね第1オリフィス通路Pの長さや断面積によって決まり、通常はアイドル振動等、比較的低周波で大振幅の振動に合わせて設定される。
【0036】
図2にも示すように、前記ゴム弾性体2の傘状部20等、上側の部分を囲んで、支持金具3の上端部にはその外筒32と略同径の円筒形状を有するストッパ金具8が取り付けられている。ストッパ金具8の下端には外側に張り出したフランジが形成され、このフランジがゴム弾性体2の円筒部21の上端に載置されて、その内部の内筒31の上端に外向きに形成されたフランジとともに、外筒32の上端に形成されたコ字状部によってかしめられている。
【0037】
前記ストッパ金具8は、連結金具1のつば部10に設けられたストッパ部7の外周を離間して囲む囲繞壁部であり、その内周面のうち下端寄りを除いた略全面にゴム層80が被覆形成されている。このゴム層80の内周面は、前記ストッパ部7の筒部材71の外周面との間に所定の隙間を空けて対向しており、それら両面が当接することによって、連結金具1とストッパ金具8、即ち支持金具3との前後方向の相対変位を規制するようになっている。
【0038】
また、ストッパ金具8の上端には、連結金具1の軸部12を取り囲むように内周側に向かって延びるフランジが形成されており、このフランジの下面が連結金具1のつば部10上面のストッパゴム6に当接することによって、該連結金具1の上方への移動を規制するようになっている。さらに、フランジの上面には、図示しないエンジン側のブラケットに当接して上方への移動が規制されるように、換言すれば、前記連結金具1の下方への移動を規制するように、ゴム層81が設けられている。
【0039】
尚、図3においては、エンジンマウントAにパワープラントの静荷重が作用していない状態を示しており、つば部10上面のストッパゴム6とストッパ金具8上端のフランジとの隙間は小さいが、エンジンマウントAが自動車に取り付けられてパワープラントを支持し、その静荷重が加わる1G状態では、ゴム弾性体2が撓んで連結金具1が下方に変位するので、前記の隙間は大きくなる。
【0040】
(ストッパの構造)
本発明の特徴として、前記ストッパ部7には、液体の流動によって振動を吸収し、減衰させる機構が設けられており、これにより所要の周波数域における動ばねを低下させて、ストッパ金具8と当接した状態でも振動の伝達を効果的に抑制できるようになっている。すなわち、まず、ストッパ部7には図3の他、図2や図4にも示すが、連結金具1のつば部10を間に挟んで前後方向に対峙するように、一対の第2液室70a,70bが形成されている。
【0041】
前記環状ゴム部70はゴム弾性体2と同時に加硫成形されるもので、その際に外周面に開口するように所要の大きさの凹部(図2では、この凹部に符号70a,70bを付す)を形成しておき、例えば圧入接着によりそれに筒部材71を組み付ければ、両者の間に第2液室70a,70bが形成される。図の例では第2液室70a,70bはいずれも周方向に長い扁平形状であり、左右両側の隔壁部70c,70cによって前後に隔てられるとともに、前側の第2液室70aの右端付近と後側の第2液室70bの左端付近とが、連結金具1のつば部10を直径方向に貫通する通路13によって連通されている。
【0042】
そうして連結金具10の前側及び後側にそれぞれ配設した第2液室70a,70bを通路13により連通させて、相互に液体を流通させるようにすれば、その通路13の長さや断面積等によってチューニングした所定周波数域において動ばねを大幅に低下させて、振動を効果的に吸収し、減衰させることができる。つまり、第2液室70a,70b及び通路13が液封防振機構であり、その通路13は、第2液室70a,70b同士を連通させる第2オリフィス通路13である。
【0043】
例えばパワープラントが前傾又は後傾し、連結金具1が前後方向に変位して、ストッパ部7の前端又は後端がストッパ金具8内周のゴム層80に当接すると、このストッパ部7を介して振動が車体側に伝わる虞れがあるが、この状態で前記所定周波数域のエンジン振動が入力すると、ストッパ部7内の第2液室70a,70bの一方の容積が縮小又は拡大するときには、筒部材71の前後方向の変位によって他方の第2液室70b,70aの容積は反対に拡大又は縮小することになり、それらを連通する第2オリフィス通路13において液体を効率良く流動させることができる。
【0044】
尚、図2や図4に示すように、ストッパ部7の環状ゴム部70には、液室70a,70bとなる各凹部の底面、即ち内周側面から半径方向外方に突出するように矩形状のブロック部70d,70dが設けられており、これが筒部材71の内周面に当接することによって、過大な変形によるゴム部70の破損を防止することができる。
【0045】
さらに、この実施形態では、図3に示すように連結金具1に、その軸部12のボルト穴12aの下端から下方に延びて第2オリフィス通路13に上側から連通する上側連通路14と、この上側連通路14との連通部位に対向して上端が前記第2オリフィス通路13に下側から連通し、そこから軸線Zに沿って下方に延びて、下端が第1液室Fに連通する下側連通路15と、が形成されている。
【0046】
前記上側連通路14はボルト穴12aよりも小径とされ、上広がりのテーパ部を介してボルト穴12aに連通している。上側連通路14とボルト穴12aとによって、一端が外部に開放し他端が第2オリフィス通路13に連通する第1の連通路が形成され、これを介してストッパ部7の第2液室70a,70bに液体を供給することができる。また、下側連通路15は、上側連通路14よりもさらに小径で、第1液室Fに液体を供給する経路となる。
【0047】
よって、マウントAの製造工程では、連結金具1の軸部12に取り付けた液封入ノズルからボルト穴12a、上側連通路14、第2オリフィス通路13を介して第2液室70a,70bに液体を供給するとともに、その第2オリフィス通路13に連通する下側連通路15を介して第1液室Fにも液体を供給する。そして、第1液室Fに液体が充填されば、下側連通路15の上端に封止材b1を打ち込んで封止し、さらに第2液室70a,70bにも液体が充填されれば、上側連通路14に封止材b2を打ち込んで封止する。
【0048】
以上の如く構成されたこの実施形態のエンジンマウントA(防振支持装置)によると、まず、エンジンのトルク変動が比較的小さな状態では、エンジン振動がマウントAのゴム弾性体2により吸収され、車体への振動伝達が抑制される。このときには、エンジン側の連結金具1に設けたストッパ部7が車体側のストッパ金具8から離間しているので、これらを介してエンジン振動が車体側に伝達される心配はない。
【0049】
一方、自動車の全開加速時のように大きな駆動反力(トルク)が作用すると、パワープラントがロール軸周りに回動して後傾するため、それを支持するマウントAにおいてストッパ部7が作動する。すなわち、図5に一例を示すように、連結金具1とともに後側に移動したストッパ部7の後部がストッパ金具8のゴム層80に当接する状態となるが、このとき、全開加速中のエンジンが比較的大きな振動を発生することから、この振動がストッパ部7を介して車室内に伝達されると、不快なこもり音を生じることになる。
【0050】
これに対し、上述したようにストッパ部7の内部には、前後にそれぞれ第2液室70a,70bが設けられて、第2オリフィス通路13によって連通されており、この第2オリフィス通路13の寸法が、前記のように車室内にこもり音を生じるような周波数域(車種によって異なるが、大体200〜500Hz)に合わせてチューニングされているので、この周波数域については動ばねが大幅に低下して、振動が効果的に吸収される。
【0051】
しかも、前記したように、エンジン振動によって前後いずれか一方の第2液室70a,70bが縮小(又は拡大)するときには、筒部材71の変位によって他方の第2液室70b,70aが拡大(又は縮小)することになり、第2オリフィス通路13において液体を効率良く流動させることができる。よって、ストッパ作動状態であっても、こもり音の原因となるエンジン振動の車体側への伝達は効果的に抑制され、こもり音が十分に軽減される。
【0052】
さらに、この実施形態ではストッパ部7を、環状のゴム部70とその外周を覆う筒部材71とによって構成しており、ストッパ作動時には筒部材71の前後いずれかの部位がストッパ金具8のゴム層80に当接して押圧されることにより、図5には誇張して示すが、筒部材71が連結金具1のつば部10に対して前後方向に変位することになり、両者の間の環状ゴム部70には前後方向に圧縮力が作用するのみならず、特に左右両側の部位では大きな剪断変形を生じる。
【0053】
つまり、ストッパ部7は、環状ゴム部70において主にストッパ金具8から押圧される部位の近傍に生じる圧縮の反力だけでなく、その環状ゴム部70の剪断変形に対する反力によっても、連結金具1と支持金具3との相対変位を規制するようになり、仮にゴム部の圧縮反力のみによって変位を規制するようにした場合に比べれば、同じ効果を得るためのゴムの剛性を低めに設定することができる。このこともストッパ部7を介しての振動伝達を抑える上で好ましい。
【0054】
さらにまた、上述したが、この実施形態のマウントAでは、環状ゴム部70の成形時にその外周に凹部を形成しておき、これを筒部材71で覆うことによって容易に第2液室70a,70bを設けることができる。また、その第2液室70a,70bへの液体の封入は、連結金具1に形成した第2オリフィス通路13や上側連通路14等によって、第1液室Fへの液体の充填と同時に行うことができる。よって製造工程の簡略化が図られる。
【0055】
(実施形態2)
図6〜8は、本発明の実施形態2に係るエンジンマウントAを示す。この実施形態2は、ストッパ部7の一部の構造のみが実施形態1と異なっており、それ以外は実施形態1のものと同じなので、以下、同一部材には同一の符号を付してその説明は省略する。
【0056】
この実施形態2のストッパ部7は、環状ゴム部70と筒部材71との間に、前記実施形態1のものと同様に第2液室70a,70bを設けるとともに、図7に示すように、それら両液室70a,70b同士を連通する第2オリフィス通路70e,70eも設けており、第1実施形態のように連結金具1のつば部10貫通する通路13は設けていない。
【0057】
より詳しくは、図6、7に示すように、この実施形態の環状ゴム部70には、第2液室70a,70bに対応して矩形状の開口部が形成された環状の補強金具72が埋め込まれるとともに、左右の隔壁部70c,70cの外周に周方向に延びる溝部(図8では、この溝部に符号70eを付す)が形成されており、この溝部(70e)の周方向両端がそれぞれ第2液室70a,70bとなる凹部に連通されている。
【0058】
そして、図8に示すように環状ゴム部70に筒部材71を被せてその外周を覆い、上下にかしめて固定することによって、ストッパ部7が構成されるとともに、その内部には前記実施形態1と同様の第2液室70a,70bと、それらを互いに連通させる左右一対の第2オリフィス通路70e,70eとが形成される。尚、筒部材71を環状ゴム部70にかしめて固定する必要はなく、前記実施形態1と同じく圧入接着してもよい。
【0059】
したがって、この実施形態2によると、ストッパ部7の環状ゴム部70に第2液室70a,70bとなる凹部を形成する際に、第2オリフィス通路70e,70eとなる溝部も形成しておき、これに筒部材71を取り付けるだけで、容易に液封防振機構を構成することができる。
【0060】
また、そうして環状ゴム部70に形成する凹部や溝部の大きさを変更するだけで、第2オリフィス通路70eの長さや断面積を調整できるので、通路13の長さが連結金具1のつば部10の直径に制約される実施形態1に比べて、その寸法についての制約が少なくなり、チューニングの自由度が高くなる。
【0061】
(実施形態3)
図9、10は、本発明の実施形態3に係るエンジンマウントAを示す。この実施形態3はストッパの具体的な構造が実施形態1、2と異なっており、それ以外の構造は同じなので、以下、同一部材には同一の符号を付してその説明は省略する。
【0062】
この実施形態3のマウントAでは、前記実施形態1、2のように連結金具1にストッパ部7を設けるのではなく、それを囲む外周側のストッパ金具8にストッパ部9を設けている。すなわち、ストッパ金具8の内周に全周に亘って環状ゴム部90を設け、その内周面を連結金具1のつば部10’の外周面と対向させている。尚、図10から分かるように、この例ではつば部10’の断面は円形ではなく異形状であり、その外周面はゴム弾性体2やストッパゴム6と一体のゴム層16によって覆われているが、このゴム層16はなくてもよい。
【0063】
また、前記環状ゴム部90には円筒状の補強金具91が埋め込まれており、図の例では補強金具91の下端には外側に張り出したフランジが形成され、このフランジが、ストッパ金具8の下端フランジや支持金具3の内筒31の上端フランジとともに、外筒32の上端に形成されたコ字状部によってかしめられている。
【0064】
そうして実施形態1、2よりも外周側に設ければスペースを確保しやすいので、この実施形態3ではストッパ部9の環状ゴム部90に第2液室90a,90bと第2オリフィス通路90cとを2組、設けている。すなわち、環状ゴム部90には、連結金具1の異形のつば部10’を挟んで前後方向に対峙するように、2つの第2液室90a,90aが形成されるとともに、図10にのみ示すが、つば部10’を挟んで左右方向(交差方向)に対峙するように2つの第2液室90b,90bが形成されている。
【0065】
また、それら4つの第2液室90a,…,90b,…のうち、互いに周方向に隣り合う2つずつ(図の例では前側の第2液室90a及び右側の第2液室90bと、後側の第2液室90a及び左側の第2液室90b)を連通するように、周方向に延びる2つの第2オリフィス通路90c、90cが形成されている。さらに、左右両側の第2液室90b,90bのそれぞれに臨むように、環状ゴム部90の内周面には他の部位よりも薄肉の膜状部90dが形成され、この膜状部90dの変形によって第2液室bの容積変化が許容されるようになっている。
【0066】
そして、この実施形態3によると、例えば自動車の全開加速時にパワープラントが後傾し、マウントAにおいて連結金具1が後側に移動して、そのつば部10’の後部がストッパ部9の環状ゴム部90に当接すると、この環状ゴム部90において後側の第2液室90aが圧縮されて液圧が増大し、第2オリフィス通路90cを介して左側の第2液室90bに液体が流動する。これを受けて左側の第2液室90bでは膜状部90dが膨出することにより、体積補償が行われる。
【0067】
一方、自動車の急減速時にはパワープラントが前傾して連結金具1が前側に移動するので、ストッパ部9の環状ゴム部90において前側の第2液室90aが圧縮され、第2オリフィス通路90cを介して右側の第2液室90bに液体が流動して、前記と同様に膜状部90dの膨出によって体積補償が行われることになる。
【0068】
したがって、この実施形態3のマウントAでは、自動車の全開加速時及び急減速時のようにエンジンの振動状態が大きく異なり、求められる防振特性も大きく異なる2つの状態にそれぞれ対応して、ストッパ部9に2組の液封防新機構を備えており、いずれか1組を一方(例えば加速時)の要求に合わせてチューニングするとともに、別の組を他方(例えば減速時)の要求に合わせてチューニングすることができるから、全開加速時と急減速時のそれぞれに最適な防振特性を実現できる。
【0069】
尚、図示のように環状ゴム部90には、液室90aに臨むストッパ金具8の内周面に当接することにより、過大な変形によるゴム部90の破損を防止するためのブロック部90eが設けられている。
【0070】
尚、本発明に係る防振支持装置の構成は、前記した実施形態1〜3に限定されるものではなく、その以外の種々の構成をも包含する。例えば実施形態1、2では、ストッパ部7の外周の筒部材71を金属製としているが、これはゴムよりも剛性の高いものであればよく、例えば樹脂製とすることもできる。
【0071】
また、図11には前記実施形態1について一例を示すが、前記各実施形態においてストッパ金具8に、その上端フランジの内周縁から折れ曲がって上方に延びる筒状の突出部8aを設けて、その内周のゴム層を介して連結金具1の軸部12と当接させるようにしてもよい。すなわち、各実施形態のようにストッパ部7,9の内部に液室70a,…90a,…等を形成すると、大きな負荷が加わったときに破壊する虞れがあるので、特に負荷の大きいときには、その一部を前記突出部8aと軸部12との間で受け止めるものである。
【0072】
前記各実施形態では、本発明の防振支持装置をいわゆる縦置きのエンジンマウントAに適用しているが、これに限らず、横置きのエンジンマウントにも適用することができるし、エンジンマウントに限らずサスペンションブッシュ等にも適用できる。さらに、自動車用途に限定されることもない。
【産業上の利用可能性】
【0073】
以上、説明したように、本発明の防振支持装置は、ストッパの機能を確保しつつ自動車の全開加速時のこもり音を十分に軽減できるので、自動車用のエンジンマウントとして好適である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】エンジンマウントの外観を示す斜視図である。
【図2】同ストッパの構造を示す分解斜視図である。
【図3】同内部構造を縦断面で示す斜視図である。
【図4】同横断面図である。
【図5】ストッパが作動した状態の図4相当図である。
【図6】実施形態2に係るマウントの縦断面図である。
【図7】同横断面図である。
【図8】同ストッパの構造を示す分解斜視図である。
【図9】実施形態3に係るマウントの縦断面図である。
【図10】同横断面図である。
【図11】他の実施形態に係る図3相当図である。
【符号の説明】
【0075】
A エンジンマウント(液体封入式防振支持装置)
F 第1液室
f1 受圧室
f2 平衡室
P 第1オリフィス通路
Z 軸線
1 連結金具
2 ゴム弾性体
3 支持金具
4 オリフィス盤(仕切り部)
7 ストッパ部(ストッパ)
70 環状ゴム部
70a,70b 第2液室
70e 第2オリフィス通路
71 筒部材(環状壁部)
8 ストッパ金具(囲繞壁部)
9 ストッパ部
90 環状ゴム部
90a,90b 第2液室
90c 第2オリフィス通路
90d 膜状部
12 ボルト穴(第1連通路)
13 第2オリフィス通路
14 上側連通路(第1連通路)
15 下側連通路(第2連通路)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被支持体側に連結される連結金具と、これをゴム弾性体を介して支持する支持金具と、そのゴム弾性体の変形に伴い容積が変化するように前記両金具間に形成された第1液室と、この第1液室の内部を受圧室及び平衡室に仕切る仕切り部と、それら受圧室及び平衡室を連通する第1オリフィス通路と、を備えた液体封入式の防振支持装置であって、
前記連結金具及び支持金具の少なくとも一方には、それらの相対変位に伴い他方の金具に当接するように、ゴム部を有するストッパが設けられ、
前記ストッパには、前記他方の金具との当接によるゴム部の変形に伴い容積が変化するように、少なくとも2つの第2液室と、それらを連通する第2オリフィス通路とが、設けられている
ことを特徴とする液体封入式の防振支持装置。
【請求項2】
連結金具及び支持金具の一方には、被支持体の静荷重が入力する方向の軸線を周回する周回部が、また、他方の金具には前記周回部の外周を離間して囲む囲繞壁部が、それぞれ設けられ、
ストッパは、前記一方の金具の周回部の外周に全周に亘って設けられた環状ゴム部と、その外周を覆う相対的に高剛性の環状壁部と、を有し、この環状壁部の外周と前記他方の金具の囲繞壁部の内周との間に隙間が形成されている、請求項1の防振支持装置。
【請求項3】
ストッパの環状ゴム部と環状壁部との間には、一方の金具を間に挟んで所定方向に対峙するように一対の第2液室が形成され、
前記一方の金具には、前記対をなす第2液室同士を連通する第2オリフィス通路が貫通形成されている、請求項2の防振支持装置。
【請求項4】
一方の金具には、一端が外部に開放し、他端が第2オリフィス通路に連通する第1連通路と、この第1連通路との連通部位に対向して一端が前記第2オリフィス通路に連通し、他端が第1液室に連通する第2連通路と、が形成されている、請求項3の防振支持装置。
【請求項5】
ストッパの環状ゴム部と環状壁部との間には、一方の金具を間に挟んで所定方向に対峙するように一対の第2液室が形成されるとともに、その対をなす第2液室同士を連通する第2オリフィス通路が周方向に延びて形成されている、請求項2の防振支持装置。
【請求項6】
連結金具及び支持金具の一方には、被支持体の静荷重が入力する方向の軸線を周回する周回部が、また、他方の金具には前記周回部の外周を離間して囲む囲繞壁部が、それぞれ設けられ、
ストッパは、前記他方の金具の囲繞壁部の内周に全周に亘って設けられた環状ゴム部を有し、この環状ゴム部の内周と前記一方の金具の周回部の外周との間に隙間が形成されている、請求項1の防振支持装置。
【請求項7】
ストッパの環状ゴム部には、一方の金具を間に挟んで所定方向に対峙するように2つの第2液室が形成されるとともに、その所定方向と交差する交差方向に対峙するように、さらに2つの第2液室が形成され、
前記4つの第2液室のうち、互いに周方向に隣り合う2つずつを連通させて、それぞれ周方向に延びる2つの第2オリフィス通路が形成され、
前記交差方向に対峙する2つの第2液室のそれぞれに臨むように、前記環状ゴム部の内周面には他の部位よりも薄肉の膜状部が形成されている、請求項6の防振支持装置。
【請求項1】
被支持体側に連結される連結金具と、これをゴム弾性体を介して支持する支持金具と、そのゴム弾性体の変形に伴い容積が変化するように前記両金具間に形成された第1液室と、この第1液室の内部を受圧室及び平衡室に仕切る仕切り部と、それら受圧室及び平衡室を連通する第1オリフィス通路と、を備えた液体封入式の防振支持装置であって、
前記連結金具及び支持金具の少なくとも一方には、それらの相対変位に伴い他方の金具に当接するように、ゴム部を有するストッパが設けられ、
前記ストッパには、前記他方の金具との当接によるゴム部の変形に伴い容積が変化するように、少なくとも2つの第2液室と、それらを連通する第2オリフィス通路とが、設けられている
ことを特徴とする液体封入式の防振支持装置。
【請求項2】
連結金具及び支持金具の一方には、被支持体の静荷重が入力する方向の軸線を周回する周回部が、また、他方の金具には前記周回部の外周を離間して囲む囲繞壁部が、それぞれ設けられ、
ストッパは、前記一方の金具の周回部の外周に全周に亘って設けられた環状ゴム部と、その外周を覆う相対的に高剛性の環状壁部と、を有し、この環状壁部の外周と前記他方の金具の囲繞壁部の内周との間に隙間が形成されている、請求項1の防振支持装置。
【請求項3】
ストッパの環状ゴム部と環状壁部との間には、一方の金具を間に挟んで所定方向に対峙するように一対の第2液室が形成され、
前記一方の金具には、前記対をなす第2液室同士を連通する第2オリフィス通路が貫通形成されている、請求項2の防振支持装置。
【請求項4】
一方の金具には、一端が外部に開放し、他端が第2オリフィス通路に連通する第1連通路と、この第1連通路との連通部位に対向して一端が前記第2オリフィス通路に連通し、他端が第1液室に連通する第2連通路と、が形成されている、請求項3の防振支持装置。
【請求項5】
ストッパの環状ゴム部と環状壁部との間には、一方の金具を間に挟んで所定方向に対峙するように一対の第2液室が形成されるとともに、その対をなす第2液室同士を連通する第2オリフィス通路が周方向に延びて形成されている、請求項2の防振支持装置。
【請求項6】
連結金具及び支持金具の一方には、被支持体の静荷重が入力する方向の軸線を周回する周回部が、また、他方の金具には前記周回部の外周を離間して囲む囲繞壁部が、それぞれ設けられ、
ストッパは、前記他方の金具の囲繞壁部の内周に全周に亘って設けられた環状ゴム部を有し、この環状ゴム部の内周と前記一方の金具の周回部の外周との間に隙間が形成されている、請求項1の防振支持装置。
【請求項7】
ストッパの環状ゴム部には、一方の金具を間に挟んで所定方向に対峙するように2つの第2液室が形成されるとともに、その所定方向と交差する交差方向に対峙するように、さらに2つの第2液室が形成され、
前記4つの第2液室のうち、互いに周方向に隣り合う2つずつを連通させて、それぞれ周方向に延びる2つの第2オリフィス通路が形成され、
前記交差方向に対峙する2つの第2液室のそれぞれに臨むように、前記環状ゴム部の内周面には他の部位よりも薄肉の膜状部が形成されている、請求項6の防振支持装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−2478(P2009−2478A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−166216(P2007−166216)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【出願人】(000201869)倉敷化工株式会社 (282)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【出願人】(000201869)倉敷化工株式会社 (282)
【Fターム(参考)】
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