説明

液体試料を検査するためのシステムおよび方法

【課題】液体試料の検査、とくに血中グルコース測定を行うためのシステムおよび方法において、テストエレメントの位置決めを的確に行うこと。
【解決手段】液体試料の被着されたテストエレメントの湿潤領域を測定箇所に正確にポジショニングするため、テストエレメント上の液体試料の存在に応答するポジショニング装置によってテープ送りを断続する。テストエレメントの位置決め(ポジションニング)には光反射率を測定するセンサユニットの使用が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましくはテープカセット中に蓄えられた、多数のテストエレメントを有する検査テープと、テープの繰出しによってテストエレメントを連続的に試料被着箇所に搬送するテープ送り装置と、液体試料の被着されたテストエレメントを測定箇所において走査する測定装置とを備え、測定箇所はテープ送り方向において試料被着箇所から離間配置されてなる、液体試料の検査とくに血中グルコース測定を行うためのシステムに関する。本発明は当該の方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2004/056269号パンフレットは、キャリアテープ上に区域ごとに配置された多数のテストユニットを供する検査テープを備えた、コンパクトな手持ち式器具の形の体液検査システムを記載している。これは当該ユーザによって通例毎日複数回にわたって実施される自己血糖検査に際する操作ステップ数をできるだけ少なくしようとするものである。付与血液量ができるだけ僅かですむように、テストエレメントは同時に測定箇所を形成する尖端ガイド(deflecting tip)を経て案内される。またその他に、測定ポジションが採血ポジションから離間しているために、読み取り光学系または電気化学分析ユニットを器具内において別個にポジショニングし得ることも記載されている。
【0003】
米国特許第6707554号明細書は、器具ストッパを経てポジショニングされるテストストリップの形のテストエレメントの光度分析システムを記載している。この場合、許容差を補償し得るように、テストストリップ上の検出ゾーンの異なった領域を照射するために複数の点光源が設けられており、こうして、得られた信号に基づいてセレクトが行われる。
【発明の開示】
【0004】
上記から出発して、本発明の目的は、従来の技術から公知のシステムを発展改良して、特に最適な器具構造の実現を可能にするとともに、できるだけ僅少量の試料で高信頼度の測定を実現することである。
【0005】
上記課題を達成するために、独立した請求項に記載の特徴の組み合わせが提案される。本発明の有利な実施態様および発展態様は従請求項に記載した通りである。
【0006】
本発明は、機械的なポジショニング手段なしにテストエレメントの的確な測定を可能にすることを基本思想としている。この点からして、本発明により、その都度の活性テストエレメント上の液体試料の存在に応答してテープ送り装置を制御し、液体試料の被着されたテストエレメントの湿潤領域を測定箇所にポジショニングするためにテープ送りを断続するポジショニング装置を設けることが提案される。こうした方法により、試料被着のために比較的大きなテスト面(test area)を供することが可能であり、その際、テスト面が全面にわたって湿潤される必要はない。したがって、特に血糖測定に際して、僅かな苦痛で採取することのできる微視量の血液で十分であり、その際、採血箇所が測定ユニットによって調節される必要がないために、穿刺ユニットの組み込みによってさらなる操作性向上がもたらされる。送りポジショニングによってシステム構造は単純化され、構造空間の利用は向上し、試料被着場所に多少の変動が生じても常に的確な検出が行われるように保証することができる。
【0007】
有利にはポジショニング装置は、テープ駆動装置と接続された、特にマイクロプロセッサのプログラムルーチンによって実現された、測定箇所における的確なテープ停止を行うための制御ユニットを有している。ポジショニング装置が、湿潤領域の通過に際して応答する少なくとも1つの光学的検出ユニット(optical detection unit)を有することによって、更にいっそうの改善が達成される。
【0008】
正確な試料センタリングを保証するために、ポジショニング装置は測定装置の実効信号(useful signal)検出ゾーンの前後のテープ通過箇所に向けられた2個の光源を有しているのが有利である。これはポジショニング装置が、共通の集束レンズを経て検査テープ上にビームスポットとしてテープ送り方向に連続して集束される複数の発光ダイオードを有することによって特に容易に実現される。
【0009】
有利にはポジショニング装置は、好ましくは反射率測定(reflectometry)によってテストエレメントを走査(scan)するための少なくとも1個の光センサ(photosensor)を有している。この場合、光センサは湿潤していないテストゾーン領域において空試験値(blank value)を検出し、湿潤領域において該試験値とは異なるターゲット値(target value)を検出するのが好適である。
【0010】
信号検出に求められる高度な質的要件を満足させるため、測定装置は液体試料中の検体を検出するための実効信号検出を行う、ポジショニング装置とは別個の検出器を有しているのが有利である。
【0011】
有利にはテストエレメントは検査テープ上に好ましくは試薬層(reagent area)として形成された面状テストゾーン(flat test field)によって形成され、その際、テストゾーンは好ましくは液体バリア(liquid barrier)によって液体試料から切り離された、空試験値測定用の参照領域(reference area)を有していてよい。
【0012】
精密ポジショニングは、検査テープが少なくとも区域ごとにテープマーキング(tape marking)、特にバースケール(line scale)、マーキングホール(marking hole)またはカラーマーク(colour mark)を備え、
ポジショニング装置が、走査手段、特にテープ送りの過程でテープマーキングを走査するための光電ビーム装置を有することによっても実現することができる。バースケールまたはマーキングホールをテープの製造中にレーザーで作り出すことも考えられる。
【0013】
必要とされる試料量を減少させるために、テストエレメントの湿潤領域は5mm以下の直径、特に1〜2mmの直径を有するように形成されている。
【0014】
測定装置のためのスペースが十分に得られるようにするため、測定箇所は試料被着箇所から5mm〜5cmだけ離間して位置しているのが有利である。
【0015】
特に血糖測定のためのシステム設計のさらなる改善は、試料被着箇所に好ましくは検査テープを刺通して身体部分を穿刺する穿刺装置が配置されることによって達成される。
【0016】
方法面において、冒頭に述べた課題は、テストエレメント上の液体試料の存在に応答するポジショニング装置によってテープ送りが制御されて、液体試料の被着されたテストエレメントの湿潤領域が測定箇所にポジショニングされることによって解決される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面によって示した一連の実施例に基づいて、本発明を詳細に説明する。
【0018】
図面に示した検査システムは、手持ち式器具10にカセットとして装着された、多数のテストエレメント14の配置された検査テープ12と、テープ送り用の送り装置16と、テストエレメント14の光学的検査を行う測定装置18と、測定装置18の検出領域にテストゾーン14をポジショニングするポジショニング装置20とからなっている。
【0019】
図1および2から看取されるように、検査テープ12は供給スプール22(supply spool)から引き出されて、一連の案内ローラ24(deflector roller)と尖端ガイド(deflector head)26とを経てテープ送り方向(矢印28)に繰り出され、再び巻取りスプール(take-up reel)30に巻き取られる。テープ送りは巻取りスプール30に作用する電動式テープ駆動装置(motorized tape drive)32によって実施される。適宜なテープ停止によって、テストエレメント14には試料被着箇所としての尖端ガイド26の領域で的確に体液(血液)が被着され、続いて、器具内部の測定箇所36で測定装置18による光学的走査が行われる。
【0020】
図3から最もよく看取されるように、テストエレメント14は透明な薄いキャリアテープ(transparent thin support tape)40上に塗着された試薬層38からなる面状テストゾーンとして形成されている。血滴が同所に被着されると試薬層38は、色変によって、血中に含有された検体(グルコース)に反応するため、測定装置18による光学的検出が可能である。
【0021】
ユーザにとっては、できるだけ僅かな血液を被着すればよいと同時に広い被着ゾーン38が得られているのが望ましい。この点からして、血液ないし液体試料で湿潤される領域42は測定ごとに変動し得るため、被着箇所34から離間した測定箇所36での湿潤領域42の的確な検出はマイクロプロセッサを内蔵したポジショニングユニット20によって保証される。このためテープ駆動装置32はしかるべく制御されるため、ポジショニングはテープ送りの断続によって達成され、そのために補助的な機械要素が必要となることはない。テストゾーン14は、被着ゾーン38に加えて更に、疎水性液体バリア44によって切り離された、空試験値測定のための参照領域46を有している。
【0022】
図4は、測光式ポジショニング装置20による測定箇所36における湿潤領域42の精密ポジショニングを図示したものである。図4aに示した側面図には、テープ送り方向28に直列配置された3個の発光ダイオード48が示されており、これらは通過するテープ12上に集束レンズ50を経て当該ビームスポット(light spot)52として連続して集束される。外側に配されたLED48の相互間隔は湿潤ゾーン42の通常の広がりの程度、つまり数ミリメートルの範囲にある。図4bは、テープ送り方向の図を示し、光54が、発光ダイオード48によって発され、検査テープ12上のテストエレメント14によって拡散反射され、ポジショニング装置20の光センサ56によって側方の、直接の反射領域外で検出されることを図示する。得られた信号の対応付けを1個のセンサのみで可能とするために、LED48は互いに別々に制御されることができる。センサ56は湿潤認識の他に、同時に実効信号の検出に使用することも基本的に可能である。ただし、種々異なった要件に適正に対処するには、そのための別個の検出器を使用するのが好適である。
【0023】
図5には、センサ56の様々な出力信号が、それぞれの信号の上方に示したテストゾーン14の湿潤場所(wetting state)に対応付けて表されている。テストゾーン14が完全に乾燥している場合、つまり反応領域38ならびに参照領域46が液体試料で湿潤されていない場合に、双方の領域で空試験値Lが検出される(図5a)。図5bに示した、領域38の中央部が湿潤されているケースでは、反応層に生じた色変に応じ、より低い拡散反射値(lower reflectance value)Bが同所において測定される。図5cおよび5dは反応領域38の始端部と終端部がそれぞれ湿潤された状況を示しており、他方、図5eには全面にわたって湿潤された状態が表されている。
【0024】
なお、検査テープ12はテストエレメント14に前置された、試料被着箇所34の領域に配置された穿刺ユニット用の刺通穴58を有していてよい。これにより一体式の器具で、穿刺ユニットによって例えば指から毛細管血を採取し、テープ送りによって該血液を試料被着箇所でテストエレメント14に被着させ、続いて更にテープを送ることによって当該テストエレメントを測定箇所36にポジショニングすることができる。
【0025】
この場合、精密ポジショニングは図4に関連して説明した列に配置された発光ダイオード48によって行うことができる。(図4aにおいて右側の発光ダイオード48によってつくりだされた)第1のビームスポット52を参照領域46が通過する際に空試験値Lが検出されて、比較のためにメモリされる。ついで湿潤領域42が通過する場合に、被着された血液はLよりも小さくかつゼロよりも大きい、低下したプラトー値(lowered plateau)またはターゲット値Bによって認識される。この値が再び変化すると、ポジショニング装置20の制御ユニットはテープ駆動装置32を一時停止するため、血液で湿潤された領域42は中央のLED48の照射領域内に位置し、次いでこのLEDによって実際の検出測定も実施される。信頼度を更に高めるために、第3の発光ダイオード(図4aにおいて左側のLED)が設けられていてよく、これにより、血液に対する付加的な応答が生ずる場合に、中央のLEDによって照射された実効信号検出領域全体が血液で湿潤されたテストゾーン領域42内にあることが保証される。
【0026】
図6に示した実施例において、同一の要素には上記実施例の場合と同一の符号が付されている。検査テープ12上には更に、それぞれのテストエレメント14から所定の間隔をおいてバースケール60が被着されている。この実施例において、ポジショニングユニット20は検査テープ12が、ケーシング端縁66またはシール68を通過する際に、該検査テープを走査するための2個の光電ビーム装置62、64を有している。試料被着箇所で穿刺ユニット70によって血液が採取され(図6a)、続いて相応したテープ送りの後にテストゾーン14に血液が被着される(図6b)。テープ送りが更に続行される過程で、第1の光電ビーム装置62によって湿潤領域42の始端が検知される(図6c)。同時に、第2の光電ビーム装置64でバースケール60を経て当該テープポジションが検知される。図6dに示したように、湿潤領域のエンドポジションも検知するように選択することもできる。その後、ポジショニング装置20の制御ユニットにおいて、検知されたテープポジションに基づいて、測定装置18に至る正確なポジショニングのために必要な送りが計算されて、更にスケール60を走査させることとテープ駆動装置32の制御とによって、所要の送りが実施される結果、図6eに示したように、到着したポジションにおいて的確なポイント測定が可能である。
【0027】
基本的に、血液以外のその他の液体試料ないし体液、特に間質液も、上述した方法で検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】血中グルコース測定用の検査テープシステムを概略的に示す図である。
【図2】測定箇所に検査テープをポジショニングするためのポジショニング装置をブロック図として示す図である。
【図3】テストエレメントを備えた検査テープの一部を示す図である。
【図4】検査テープに向けられたポジショニング装置を示す2つの図である。
【図5】テストゾーンの湿潤の相違と相当する拡散反射信号を示す図である。
【図6】更に別の実施形態の、様々な送りポジションにある検査テープを有するポジショニング装置の図である。
【符号の説明】
【0029】
12 検査テープ
14 テストエレメント
16 テープ送り装置
18 測定装置
20 ポジショニング装置
32 テープ駆動装置
34 試料被着箇所
36 測定箇所
38 テストゾーン
42 湿潤領域
44 液体バリア
46 テストゾーン(参照領域)
48 発行ダイオード(光学式検出ユニット)
50 収束レンズ
56 光センサ(光学式検出ユニット)
60 テープマーキング
62 走査手段(光学式検出ユニット)
70 穿刺装置
L 空試験値
B ターゲット値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
好ましくはテープカセット中に蓄えられた、多数のテストエレメント(14)を有する検査テープ(12)と、
前記テープの繰出しによってテストエレメント(14)を連続的に試料被着箇所(34)に搬送するテープ送り装置(16)と、
前記液体試料の被着されたテストエレメント(14)を測定箇所(36)において走査する測定装置(18)と、
を備えた液体試料の分析、とくに血中グルコース測定を行うためのシステムであって、
前記測定箇所(36)がテープ送り方向において試料被着箇所(34)から離間配置され、
テストエレメント(14)上の液体試料の存在に応答してテープ送り装置を制御して、液体試料の被着されたテストエレメント(14)の湿潤領域(42)を測定箇所(36)にポジショニングするためにテープ送りを断続するポジショニング装置(20)を備えること
を特徴とするシステム。
【請求項2】
前記ポジショニング装置(20)が、測定箇所(36)において的確なテープ停止を行うためにテープ駆動装置(32)と接続された制御ユニットを有することを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記ポジショニング装置(20)が、湿潤領域(42)の通過に際して応答する少なくとも1つの光学式検出ユニット(48、56、62)を有することを特徴とする請求項1または2記載のシステム。
【請求項4】
前記ポジショニング装置(20)が、測定装置(18)の実効信号検出ゾーンの前後のテープ通過箇所に向けられた2個の光源(48)を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記ポジショニング装置(20)が、共通の集束レンズ(50)を経て検査テープ(12)上にビームスポットとしてテープ送り方向に連続して集束される複数の発光ダイオード(48)を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記ポジショニング装置(20)が、テストエレメント(14)の好ましくは反射率測定走査を行うための少なくとも1個の光センサ(56)を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記ポジショニング装置(20)が、湿潤していないテストゾーン(46)において空試験値(L)を検出し、湿潤領域において該試験値とは異なるターゲット値(B)を検出することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記測定装置(18)が、液体試料中の検体を検出するための実効信号検出を行う、ポジショニング装置(20)とは別個の検出器を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
前記テストエレメント(14)が、検査テープ(12)上に好ましくは試薬層として形成された面状テストゾーン(38)によって形成され、テストゾーン(38)は好ましくは液体バリア(44)によって液体試料から切り離された、空試験値測定用の参照領域(46)を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記検査テープ(12)が、少なくとも区域ごとにテープマーキング(60)とくにバースケールを備え、ポジショニング装置(20)が走査手段(62)、特にテープ送りの過程でテープマーキング(60)を走査するための光電ビーム装置を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
前記テストエレメント(14)の湿潤領域(42)が、5mm以下の直径、特に1〜2mmの直径を有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
前記測定箇所(36)が、試料被着箇所(34)から5mm〜5cmだけ離間して位置していることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
前記試料被着箇所(34)に好ましくは検査テープ(12)を刺通して身体部分を穿刺する穿刺装置(70)が配置されていることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
前記検査テープ(12)上の多数のテストエレメント(14)が、テープ送りによって試料被着箇所(34)から、同所から離間して位置する測定箇所(36)に連続的に搬送されるように構成してなる、液体試料の検査とくに血中グルコース測定を行うための方法であって、
それぞれのテストエレメント(14)上の液体試料の存在に応答するポジショニング装置(20)によってテープ送りが制御されて、液体試料の被着されたテストエレメント(14)の湿潤領域(42)が測定箇所(36)にポジショニングされることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−139770(P2007−139770A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−307205(P2006−307205)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【出願人】(501205108)エフ ホフマン−ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト (285)
【Fターム(参考)】