説明

液処理装置及び液処理方法

【課題】基板上に処理液を供給する複数のノズルのうちの処理に供される選択された1つのノズル先端部の処理液の状態を安定して画像処理する液処理装置及び液処理方法を提供すること。
【解決手段】基板に液処理を行う液処理装置において、基板を保持するスピンチャック41と、スピンチャックに保持された基板に処理液を供給する複数のノズル10と、複数のノズルを搬送するノズル搬送機構10Aと、ノズルの先端を撮像するカメラ17と、カメラを複数のノズルの1つに対して移動させる移動機構と、ノズルの処理液供給部、ノズル搬送機構及びカメラの移動機構の処理動作を制御すると共に、複数のノズルの中から1つのノズルを選択する処理プログラムを備える制御部9と、を備える。これにより、ノズル先端部の液だれまたは滴下の発生状況に応じて所定の対処動作を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体ウエハや液晶ディスプレイ用のガラス基板(FPD基板)といった基板に対して、塗布ノズルよりレジスト液や現像液等の塗布液を塗布する液処理装置及び液処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体デバイスやFPD基板の製造プロセスの一つである基板上にレジストパターンを形成する工程は、基板例えば半導体ウエハ(以下、ウエハという)にレジスト膜を形成し、フォトマスクを用いてこのレジスト膜を露光した後、現像処理を行うことにより所望のパターンを得る一連の工程により行われ、これら一連の工程は従来から塗布、現像装置によって行われている。
【0003】
例えば、塗布液としてレジスト液を塗布する塗布ユニットにおいては、基板保持部であるスピンチャックの周囲を囲むようにカップ体が設けられており、このスピンチャックに保持されたウエハの略中央にレジスト液を供給してスピンチャックを回転させることによりレジスト液のスピンコーティングや振り切り乾燥、更にサイドリンス等の処理が行われるようになっている。
【0004】
ウエハへのレジスト液の供給は、供給ユニットより供給されたレジスト液をノズル(塗布ノズル)から吐出することによって行われる。そしてこのノズルは、ウエハの搬入出動作の邪魔にならないように通常時はウエハの搬入出経路から離れた位置に待機され、レジスト液を吐出するときだけスピンチャックに保持されたウエハ中央まで搬送する構成となっている場合が多い。
【0005】
これら塗布ユニットはレジスト膜を形成する下地膜の種類や形成する膜厚などの条件によって複数種のレジスト液が用いられている。これら種類の異なるレジスト液毎に塗布ノズルを備え、共通の駆動アームにより塗布ノズルの待機位置と、レジスト液の塗布処理を行う処理位置との間で移動させる構成となっている。この構成は、駆動アームにより塗布ノズルを持ち替え作業が必要になって動作工程が多くなり、基板に対する吐出位置の調整も個別に行わなくてはならず手間が掛かる。
【0006】
これらのことから塗布ユニットには、塗布ユニットを一列に複数並べて構成して、これらで使用する塗布ノズルの複数を一体的にまとめた構成にし、前述の一列に並べた複数の塗布ユニット間を共通に移動できる駆動アームに取り付けた構造のレジスト塗布装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
通常、これら複数の塗布ノズルの先端状態は、レジストと大気との界面の汚れ抑制や乾燥抑制のためにレジスト液をサックバックした状態で待機することとなる。なおこれら複数の塗布ノズルにおいて、塗布プロセスで不使用に関わらず駆動アームによって移動させられる複数の塗布ノズルについては塗布ノズルの状態を夫々確認することが望まれる。このことから特許文献1では、塗布ノズル先端を撮像する方法が考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−103131号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、複数ノズルを一括撮像する場合には、解像度の問題、周辺部分歪、被写界深度が深いことによる背景の写りこみ影響の問題がある。さらに、対象ノズルのみ撮像する場合には、対象物との距離変動によるピントずれが生じ、ノズル稼動する場合には、カメラ視野から外れてしまい撮像できない問題があった。
【0010】
本発明は、このような事情の下になされたものであり、その目的は、基板上に処理液を供給する複数のノズルのうちの処理に供される選択された1つのノズル先端部の処理液の状態を安定して画像処理する液処理装置及び液処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、本発明は、基板に液処理を行う液処理装置であって、基板を保持する基板保持部と、前記基板保持部に保持された基板に処理液を供給する複数のノズルと、前記複数のノズルを搬送するノズル搬送機構と、前記ノズルの先端を撮像する撮像手段と、前記撮像手段を前記複数のノズルの1つに対して移動させる移動機構と、前記ノズルの処理液供給部、前記ノズル搬送機構及び前記撮像手段の移動機構の処理動作を制御すると共に、前記複数のノズルの中から1つのノズルを選択する処理プログラムを備える制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
このように、撮像手段を移動させて、選択された処理に供されるノズルの1つを撮像することで、周辺部分歪や背景の写りこみ影響等の問題を解消し、安定してノズル先端部を撮像することができる。
【0013】
また、本発明において、前記制御部は、前記ノズルの先端部からの処理液の滴下の発生の有無及び処理液の状態を判定する判定部を備えると共に、前記判定部の判定結果に基づいて前記ノズルの処理液供給部及び又は前記ノズル搬送機構に処理動作を実行させる方が好ましい。
【0014】
このように構成することにより、発生した事象に応じて、例えば液だれの生じた場合には、ノズルをノズルバスへ退避させて、この中に処理液を吐出するダミーディスペンスを行ったり、処理液が滴下してしまった場合にはその液処理を停止させたりする適切な対処動作を実行することができる。
【0015】
また、本発明において、前記ノズル搬送機構は、複数のノズルを同時に搬送するように構成されており、前記撮像手段は、ノズル搬送機構に取り付けられている方が好ましい。
【0016】
このように、撮像手段がノズル搬送機構に取り付けられていることにより、例えば撮像手段を独立して移動させる機構を必要とせず装置コストを低減することができる。
【0017】
また、本発明において、前記移動機構は、前記選択されたノズルと前記撮像手段との距離を一定に保つべく前記撮像手段を移動させる駆動機構を具備する方が好ましい。この場合、駆動機構は、正逆方向に回転する回動駆動源と、この回動駆動源の正逆回転運動を直線運動に変換する直線移動部材と、この直線移動部材の直線運動を揺動運動に変換して撮像手段に伝達する揺動部材とで構成することができる。
【0018】
また、前記移動機構は、前記選択されたノズルに向けて前記撮像手段の撮像領域の中心軸線状に指定したノズル先端を含む画像が入るように移動させる方が好ましい。
【0019】
このように構成することで、ディスペンス指定されたノズルと撮像機構との距離を一定に保つことができ、ピントずれが生じないので、安定してノズル先端部を撮像することができる。また、カメラによる撮像を対象ノズル1つに絞ることで、安定してノズル先端部を監視することができる。
【0020】
また、本発明において、前記撮像手段は、前記選択されたノズルと撮像手段との距離に対応して撮像焦点を調整するオートフォーカス機能を具備するする方が好ましい。
【0021】
このように構成することで、駆動機構を用いずに撮像手段の向きを調節し、レシピでディスペンス指定されたノズルの先端部を撮像することができる。また、撮像手段にオートフォーカス機能を備えることで、安定して吐出状態を監視することができる。
【0022】
また、本発明において、前記ノズル搬送機構を移動させて位置し、前記塗布ノズルから塗布液をダミーディスペンスするためのノズルバスを備え、前記撮像手段の移動は、前記ノズルバスで行う方が好ましい。さらに、前記撮像手段は、前記ノズル搬送機構が、前記ノズルバスで待機された位置から複数の塗布ノズルを同時に搬送する区間を含み、前記選択されたノズルの先端を監視する方が好ましい。
【0023】
また、本発明は、基板保持部に保持された基板の表面に、複数のノズルを搬送し、複数のノズルの中の任意の1つのノズルから処理液を供給して、液処理する液処理方法において、前記複数のノズルの中から1つのノズルを選択し、前記選択されたノズルに向けて、撮像手段を移動させ、前記撮像手段により前記選択されたノズルの先端部を撮像すると共に、ノズル先端部からの処理液の滴下の発生の有無及び処理液の状態を判定する、ことを特徴とする。
【0024】
本発明において、前記判定の結果に基づいて前記ノズルの処理液供給部及び又は前記ノズル搬送機構に処理動作を実行させる方がよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ノズル搬送機構によって搬送される複数のノズルの内、選択された対象ノズルに向けて撮像手段が移動し、対象ノズルと撮像手段との距離を一定に保ちながら撮像することができるので、ノズルの処理液の液だれや滴下が発生したことを安定して検出することができる。
【0026】
これにより、目的外の位置での処理液の滴下を未然に防止できた場合には、不良品の発生が防止され歩留まり向上に貢献することができる。また、未然に防止されなかった場合でも、液処理を自動的に停止すれば、滴下した処理液を拭き取る等、直ちに適切な措置を採ることができるので被害の拡大を抑えてロスを最小限に留めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る液処理装置を適用した塗布ユニットを示す概略断面図(a)及びその縦断面図(b)である。
【図2】上記塗布ユニット内の液処理部と塗布液を供給する供給ユニットとを示した構成図である。
【図3】塗布液を供給する塗布ノズルとカメラをノズルアームに取り付けた状態を示す斜視図である。
【図4】前記ノズルアームに取り付けられたカメラの移動を示す概略平面図(a)、カメラの駆動機構を示す概略平面図(b)及びオートフォーカス機能を具備するカメラの移動状態を示す概略平面図(c)である。
【図5】上記塗布ユニットの電気的構成を示すブロック図である。
【図6】本発明における塗布ノズル先端部の液だれの様子を説明するための模式図で、(a)は塗布ノズルの先端部の概略側面図、(b),(c)はそれぞれ(a)のI部拡大図で、液だれ小の状態,液だれ中の状態を示す概略側面図ある。
【図7】液だれの発生を判断する動作の流れを説明するためのフローチャートである。
【図8】上記塗布ユニットを適用した塗布、現像装置の実施の形態を示す平面図である。
【図9】上記塗布、現像装置の斜視図である。
【図10】上記塗布、現像装置の縦断面図である。
【図11】上記塗布ノズル先端の異なる状態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明に係る液処理装置を、ウェハにレジスト液を塗布する塗布ユニットに適用した実施の形態について説明する。初めに実施の形態に係る塗布ユニットの構成の概要を説明する。
【0029】
図1に示すように、本実施の形態に係る塗布ユニット1は、偏平な箱状の筐体30内に、横方向(図中のY方向)に一列に配列された3つの液処理部2a、2b、2cと、これらの液処理部2a、2b、2cにレジスト液やシンナー等の塗布液を供給する複数本のノズル10と、このノズル10を搬送するためのノズル搬送機構10Aと、塗布ノズル10(以下にノズル10という)を待機させるノズルバス14と、ウエハWに塗布されたレジスト膜の周縁部を除去するためのエッジ・ビード・リムーバ(Edge Bead Remover:EBR)機構6と、を備えている。
【0030】
液処理部2a,2b,2c(以下に符号2で代表する)は、共通の構成を備えており、基板保持部としてのス
ピンチャック41と、このスピンチャック41に保持されウエハWを取り囲むように設置
されたカップ体5とを備えている。以下、液処理部2の構成について説明する。
【0031】
スピンチャック41は、ウエハWの裏面側中央部を吸引吸着して水平に保持するための基板保持部としての役割を果たす。図2に示すようにスピンチャック41は軸部42を介して駆動機構(スピンチャックモータ)43に接続されており、ウエハWを保持した状態で回転及び昇降自在に構成されている。スピンチャック41の側方には、昇降機構44Aと接続された昇降ピン44がウエハWの裏面を支持して昇降可能なように設けられており、後述する搬送手段(搬送アームA3)との協働作用によって筐体30の外部から搬入されてきたウエハWの受け渡しを行えるようになっている。なお図1(a)に示した30aは、搬送手段に臨む筐体30壁面に形成されたウエハWの搬入出口である。
【0032】
カップ体5は、スピンコーティング等の際にウエハWを回転させることによって飛散したミストが筐体30内に飛び散るのを抑え塗布ユニット1外に排出する役割を果たす。カップ体5は、ドーナツ状の外観を備えており、その内部は図2に示したような構造となっている。
【0033】
カップ体5の内部構造を説明すると、ドーナツ状のカップ本体50の内部には、図2に
示すように傾斜したリング状の第1のリング部材51と第2のリング部材52とが設置さ
れており、これらのリング部材51、52との間の隙間は、ウエハWから飛散したミスト
を含む気体の通流する気体流路51aとなっている。また第2のリング部材52は、スピ
ンチャック41に保持されたウエハWの周縁部下方に位置するように取り付けられており
、その上面が「への字」状に屈曲している。この第2のリング部材52の外端面には、カ
ップ本体50底部の液受け部54に進入するように下方に伸びる筒状の端板53が設けられている。これによりウエハWから飛散したレジスト液の一部はドレインとして第2のリング部材52及び端板53の表面を伝って液受け部54へと案内されるようになっている。
【0034】
カップ本体50の下部側は液受け部54となっており、その底部にはカップ体5内を通流した気流を排気するための例えば2つの排気ポート55と、液受け部54に溜まったレジスト液のドレインを排出するためのドレインポート56とが設けられている。排気ポート55は図示しない排気ダクトに接続されており、また各液処理部2a,2b,2cの排気ポート55と接続された排気ダクトは、筐体30外にて排気用力設備に接続されている。
【0035】
ここで排気ポート55は、図2に示すように液受け部54内の上方に延伸されており、液受け部54から排気ポート55へのドレインの溢流を防ぐための溢流防止壁54aを構成している。またドレインポート56も図示しないドレイン管に接続されており、ドレインを塗布ユニット1外に排出できるようになっている。
【0036】
更に図1(b)に示すように、カップ体5と対向する筐体30の天井部にはフィルタユニット31が取り付けられており、フィルタユニット31から例えば清浄空気を所定流量で供給することにより、筐体30内に清浄空気のダウンフローが形成されるようになっている。清浄空気の一部は、筐体30内に設けられた図示しない排気部より排気されるが、残りの清浄空気はカップ体5内に取り込まれ、図2のカップ体5断面図内に矢印で示したような気流を形成して排気ポート55から排出されるようになっている。
【0037】
次に、ノズル10及びその搬送機構の構成について説明する。ノズル10は、スピンチャック41に保持されたウエハW表面にレジスト液を供給する役割を果たす。図3は、ノズル10とこのノズル10を保持するノズルアーム11との詳細な構成を示した斜視図である。本実施の形態に係る塗布ユニット1は、例えば濃度や成分の異なる10種類のレジスト液と、ウエハW上でレジスト液を広がり易くするためのシンナーと(以下、これらを総称して塗布液という)を供給できるように、11本のノズル10を備えている。図3に示すように、各ノズル10はペン先のような形状をした筒状体であって、その基部をノズルアーム11のノズルヘッド部11aに取り付けることができるようになっている。各ノズル10の内部には流路が形成されており、ノズルアーム11側から供給された塗布液をノズル10の先端部からウエハWへ向けて吐出できるようになっている。なお図1(a)及び図2では図示の便宜上ノズル10の本数を省略して示してある。
【0038】
図1(a)に示すように、ノズル搬送機構10Aはノズル10を保持するノズルアーム11と、このノズルアーム11を支える基台12と、基台12の走行軌道をなすレール13と、レール13上で基台12を移動させる機構(図示せず)とから構成されている。
【0039】
図3に示すようにノズルアーム11は、11本のノズル10を保持するノズルヘッド部11aと、このノズルヘッド部11aを支えるアーム部11bとから構成されている。ノズルヘッド部11aの先端部下面には、上述したノズル10の基部を嵌入可能な形状となっており、ノズル10の基部を差し込むだけでそれぞれのノズル10を保持できるようになっている。この結果、11本のノズル10は先端部を下向きにした状態で一列に並び、且つそれらの配列方向が図1(a)に示したノズル10の搬送方向と一致するように配置される。一方、ノズルヘッド部11aの基部側には後述する供給ユニット7の供給管71が接続されており、ノズルヘッド部11a内部を介してノズル10へ塗布液を供給できるようになっている。
【0040】
アーム部11bは、スピンチャック41に保持されたウエハWの略中央部の上方でノズル10を搬送できるように、ノズルヘッド部11aと基台12との間に介設された支持部材である。基台12は、ノズルアーム11を移動させるスライダとしての役割を果たす。基台12は図示しない昇降機構を備えており、アーム部11bの基部はこの昇降機構に取り付けられている。これによりノズルアーム11は、図1(b)に示したZ方向を自在に昇降できるようになっている。またレール13は、液処理部2の側方に、液処理部2a,2b,2cの配列方向と平行して敷設されている。ここで塗布ユニット1は、塗布液の供給を行わないときにノズル10を載置して待機させるためのノズルバス14を備えており、レール13は、このノズルバス14とそこから最も遠い液処理部2aに保持されたウエハWに塗布液を供給可能な位置との間で基台12を移動させることの可能な長さを有している。なお、ノズルバス14はノズル10の待機中にレジスト液が乾燥しないようにシンナー雰囲気となっている。
【0041】
また基台12を移動させる機構は例えば、レール13に沿って配設した巻き掛け軸に基台12を固定した図示しない搬送ベルトを巻きつけて、この巻掛軸の一つに例えばモータ等の駆動機構15(図5参照)を接続した構造となっており、巻き掛け軸の回転方向と回転数とを調整することにより所望の位置に基台12を移動させることができるようになっている。
【0042】
以上の構成により、レール13上で基台12を移動させることによって、一列に並んで保持されたノズル10を、ノズルバス14と液処理部2a,2b,2cの略中央部とを結んだ直線上で搬送することができる。これにより、いずれの液処理部2a,2b,2cにウエハWが保持されている場合であっても、基台12の停止位置を調整することによって、所望の塗布液を供給するノズル10をウエハWの略中央部上方まで移動させ、その位置からウエハWへ塗布液を供給することができる。
【0043】
次にEBR機構6の説明をする。EBR機構は、ウエハWに塗布されたレジスト膜の周縁部の剥がれ等を防止するためにレジスト膜を除去するリンス液をウエハW周縁部に供給する役割を果たす。各々の液処理部2に設けられたEBR機構6は夫々略共通の構成を有しており、図1(a)に示すように、リンス液を吐出するノズルを保持するEBRアーム61と、このEBRアーム61を移動させる基台62と、基台62の走行軌道をなすレール63と、リンス液の供給を行わないときにノズル10を載置して待機させるEBRノズルバス64とを備えている。
【0044】
EBRアーム61は、既述の塗布液のノズルアーム11を小型化したような水平方向に伸びるアーム形状の部材であって、スピンチャック41に保持されたウエハWの周縁部にリンス液を供給することができるように、その先端部には図示しないリンス液ノズルが保持されている。基台62は、図示しない搬送ベルトによってレール63上を移動しEBRアーム61を搬送するスライダとしての役割を果たす。レール63は、ノズル搬送機構10Aと各液処理部2a,2b,2cとの間にノズル搬送機構10Aのレール13と略平行に敷設され、夫々のEBRノズルバス64とリンス液の供給位置との間で基台62を移動させることの可能な長さを有している。
【0045】
以上の構成により、駆動機構を用いて夫々のEBRアーム61バスからウエハWの周縁部に対向する位置までリンス液ノズルを移動させてリンス液を供給することが可能となる。なお液処理部2b、2cに夫々付設されたEBRノズルバス64は、塗布液のノズル10の退避先としての中間バス16の役割も果たすため、ノズル10より吐出させた塗布液を受けることのできるように、図1(a)に示すような受け口の細長い箱状に構成されている。また、このEBRノズルバス64もシンナー雰囲気で満たされており、中間バス16の役割も果たすことでシンナーの供給系や排出系を共用化し、装置構成を簡素化している。
【0046】
次に、ノズル10に塗布液を供給する供給ユニット7の構成について図2を参照しながら説明する。供給ユニット7は、例えば塗布液を溜めた図示しない供給タンクと、この供給タンクにガスを供給してその内部を加圧することにより供給タンク内の塗布液を塗布ユニット1へ向けて送液するための図示しない加圧部と、を含む塗布液供給機構70(塗布液供給部)を塗布液の種類に対応する数だけ備えている。
【0047】
夫々の塗布液供給機構70は、塗布液の給断を切り替えるためのエアオペレーティドバルブ72と、塗布液を供給していないときにノズル10の先端部から塗布液を引き込むためのサックバックバルブ73とを介して供給管71により各ノズル10に接続されており、10種類のレジスト液とシンナーとを切り替えて供給することができるようになっている。なお図2においては図示の便宜上、シンナーを供給する塗布液供給機構70を図に向かって左から2番目のノズル10に接続してあるが、実際には図3に示すよう図に向かって左から6番目のノズル10に接続されている。これはレジスト液の塗布前に毎回供給されるシンナーと、シンナーの供給後に供給されるレジスト液とを夫々供給するノズル10をこの順にウエハWの中心に移動させる際に、基台12の平均の移動距離を最短とするためである。
【0048】
また図2に示すように、塗布ユニット1や供給ユニット7は各機器の動作を統括制御する制御部9と接続されている。例えば、制御部9は、塗布ノズル10の中からレシピで設定されたノズルを1つ選択する制御等を処理するように構成される。また、本実施の形態に係る塗布ユニット1を備える塗布、現像装置全体の動作を統括制御する機能も兼ね備えている。
【0049】
以上の構成に基づいて塗布ユニット1によりウエハWにレジスト液を塗布する動作について簡単に説明する。外部の搬送手段によって3つの搬入出口30aのいずれか一つより筐体30内に搬入されたウエハWは、昇降ピン44により裏面側を支持され、搬送手段を筐体30外へ退避させて昇降ピン44を下降させることにより、搬入された搬入出口30aに対応する液処理部2のスピンチャック41に受け渡される。
【0050】
そしてノズル搬送機構10Aを作動させ、ノズルバス14上で待機させたノズルアーム11を持ち上げて、図1のY方向に搬送する。次いでシンナーを供給するノズル10がウエハWの略中央上方の位置に到達したらノズルアーム11の移動を停止し、その位置にてノズルアーム11を降下させる。その後静止しているウエハW上にノズル10からシンナーを供給した後、当該処理にて塗布するレジスト液の供給ノズル10がウエハWの略中央上方に位置するように、ノズルアーム11を移動させる。この移動動作と並行して、スピンチャック41を例えば高速回転させ、その回転中のウエハW上にレジスト液を供給、停止してウエハWの径方向に広げるスピンコーティングを行う。
【0051】
続けてスピンチャック41を低速で回転させ、スピンコーティングしたレジスト膜の膜圧を均一にし、次いで再び高速回転させることによりコーティングしたレジスト液の振り切り乾燥を行う。この間、ノズル搬送機構10Aは上述の経路とは反対の経路でノズルアーム11を移動させて、塗布液の供給の完了したノズル10をノズルバス14で待機させる。
【0052】
一方、振り切り乾燥の完了したウエハWに対しては対応するEBR機構6を稼働させて、リンス液ノズルをEBRノズルバス64からウエハWの周縁部まで搬送して、ここにリンス液を塗布し、スピンチャック41を回転させることでウエハW周縁部に塗布したレジスト膜を除去した後、レジスト膜の場合と同様にリンス液の振り切り乾燥を行って一連の液処理を完了する。
【0053】
リンス液ノズルをEBRノズルバス64まで退避させた後、レジスト膜の形成されたウエハWは、搬入時とは逆の順序で搬送手段に受け渡され塗布ユニット1から搬出される。こうして各液処理部2には、塗布、現像装置に決められたウエハWの搬送サイクルに従ってウエハWが例えば24秒間隔で順次搬送され、同様の処理が行われる。なおノズル10は一つの液処理部2にてウエハW上に塗布液(シンナー及びレジスト液)の吐出を終えた後、例えば塗布ユニット1の一端に位置するノズルバス14に退避され、レジスト液の乾燥を抑えている。
【0054】
以上に説明した構成に加え、本実施の形態に係る塗布ユニット1は、例えばノズルバス14から塗布液を供給する位置までの搬送中に、ノズル10の先端部より塗布液の滴下を生じた場合にはこれを光学的に撮像し、夫々の事象に応じた対処動作を実行する機能を備えている。以下、これらの機能の詳細について説明する。
【0055】
ここで本実施の形態において「液だれ」とはノズル10の先端面より下方に塗布液の露出した状態を意味し、「滴下」とはこの液だれが成長した結果、前記先端面より塗布液が分離した状態を意味し、ノズル先端部の汚れとはノズル10の先端部に付着した異物や処理液の固着物を意味している。その例を図11に示す。図11(a)は適正な吐出された後の状態を示し、吐出されたレジスト液Rは適正なサックバック量l例えば、1.5mmほど塗布ノズル10内部に引き込まれる。図11(b)は液だれの状態やサックバック不良の状態を示し、ノズル先端部に液溜まりができる。図11(c)(d)はノズル先端部に付着したレジスト液Rを示し、処理時の液の吐出スピードが速い場合の跳ね返りやサックバックを行うスピードが速い場合などに発生する不具合である。図11(e)はレジスト液Rの滴下時に吐出をする液滴DPが一旦途切れて吐出されてしまう現象を示している。
【0056】
図4に示すように、ノズル搬送機構10Aのノズルアーム11には、撮像手段であるカメラ17が、移動機構80によって複数のノズル10の1つに対して移動可能に装着されている。カメラ17は、例えばCCDカメラ等のカメラで、ノズルヘッド部11aに保持されたノズル10の先端部の画像をイメージセンサにて側方より撮像する。このカメラ17は、各ノズル10の先端部を撮像できるようにノズルヘッド部11aに保持されたノズル10の配列方向と略直行する方角からノズル10を撮像する構成となっている。また、カメラ17は、イメージセンサであればよく、CCD以外のC-MOSタイプのものであっても勿論よい。
【0057】
次に、カメラ17及び移動機構80の動作の詳細について、説明する。図4(a)に示すように、カメラ17は、ノズルヘッド部11aに保持されたノズル10の内、レシピでディスペンス指定された1つのノズルに向けて、カメラ17の撮像領域の中心軸線状に、指定された1つのノズルの先端を含む画像が入るように、移動機構80を介して移動できるように構成される。この場合、カメラ17とディスペンス指定されたノズルとの距離が、一定になるように移動する。なお、カメラの回動は、ノズル搬送アームがノズルバスに待機している際に実行され、ノズルアーム11の移動中も選択されたノズルの先端部を監視するように構成する。
【0058】
移動機構80は、例えば、図4(b)に示すように、正逆方向に回転する回動駆動源である正逆回転可能なモータ81と、このモータ81の回転軸に一端が連結される略クランク状の揺動リンク82と、揺動リンク82の他端部に垂設されたガイドピン82aを摺動可能に嵌挿する直状のガイド溝84を有する直線移動部材83と、直線移動部材83に固定されて直線移動部材83と共に直線運動する、カメラ17を固定する揺動可能な揺動部材85と、揺動部材85の先端側に設けられた円弧状のガイド溝86内に摺動可能に嵌挿される位置決めピン87を垂設した支持部材88と、で構成される駆動機構89を具備している。なお、揺動リンク82のガイドピン82aと直線移動部材83の直状のガイド溝84に代えて、揺動リンク82と直線移動部材83とを一方に設けた直状キー溝に対して他方に設けたキーを摺動可能に嵌挿させる構造としてもよい。
【0059】
このように構成される駆動機構89によれば、モータ81の正逆回転運動を揺動リンク82を介して直線移動部材83の直線運動に変換し、この直線移動部材83の直線運動を揺動部材85を介して揺動運動に変換してカメラ17に首振り機能を持たせることができ、選択された1つのノズル10とカメラ17との距離Lを一定に保つことができる。
【0060】
このように構成することで、ディスペンス指定されたノズルとカメラ17との距離を一定に保つことができ、ピントずれが生じないので、オートフォーカス機能を用いずに安定してノズル先端部を撮像することができる。また、カメラによる撮像を対象ノズル1つに絞ることで、周辺部分歪や背景の写りこみ影響等の問題を解消することができる。
【0061】
上述した実施形態では、駆動機構80を用いたが、駆動機構80を用いずにカメラの動作を実行してもよい。図4(c)に示すように、ノズルヘッド部11aに保持されたノズル10の内、レシピでディスペンス指定された1つのノズルに、カメラの向きを調節し、カメラの撮像領域の中心軸線状に、指定された1つのノズルの先端を含む画像が入るように構成する。この場合、カメラと対象ノズルとの距離L,L1,L2…は変動するので、ノズル先端部を安定して検出するために、オートフォーカス機能を備えたカメラを使用することが望ましい。なお、図4(c)において、符号80Aはカメラ17の移動機構を構成する揺動アームである。
【0062】
このように構成することで、駆動機構を用いずに、レシピでディスペンス指定されたノズルに向けて、カメラの向きを調節し、ノズル先端部を撮像することができる。また、カメラにオートフォーカス機能を備えることで、安定して吐出状態を監視することができる。
【0063】
また、ノズルヘッド部11a下面のノズル10とカメラ17との間には、撮像されるノズル10照明用の光源19が設置されている。光源19は、例えば黄色やオレンジ色、赤色までの比較的波長の長い可視光を照射するLEDランプ等により構成され、塗布されるレジスト液を感光させないようになっている。
【0064】
次に通常の基板処理状態におけるノズル10の状態を撮像する撮像手段である例えばCCD式のカメラ17を設けた場合について説明する。図2に示すようにカメラ17は、図示しないA/D変換器を介して既述の制御部9と接続されている。制御部9はカメラ17より取得した撮像結果に基づいて各ノズル10先端部からの塗布液の液だれや滴下の発生したことを判定し、その判定結果に基づいてノズル搬送機構10A等に所定の処理動作を実行させる機能を更に備えている。以下、これらの機能の詳細について説明する。
【0065】
図2は、塗布ユニット1、供給ユニット7の各機器と制御部9との関係を説明するためのブロック図である。例えば制御部9は、本実施の形態に係る塗布ユニット1を含む塗布・現像装置全体を統括制御する主制御部9aと、塗布液の液だれや滴下発生の判定に必要な画像処理や、その処理結果に基づいてこれらの事象が発生したことを判定する液だれ判定部9bと、を備えている。
【0066】
主制御部9aは、中央演算処理装置(CPU)90と、プログラム格納部91とを備えたコンピュータとして構成されている。プログラム格納部91は、液だれ判定部9bにて独立に判定された塗布液の液だれや滴下発生の情報に基づいて、塗布ユニット1、供給ユニット7内の各機器を作動させ、これらの事象に対する対処動作やメンテナンス管理を実行するためのステップ群を備えたコンピュータプログラム(「対処動作用プログラム」、「メンテナンス管理用プログラム」と示してある)を格納する役割を果たす。プログラム格納部91は、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリーカード等の記憶手段により構成されている。
【0067】
主制御部9aは更に、メンテナンス管理用の情報として各ノズル10にて液だれの発生した回数を計数するためのカウンタ92と、このカウンタ92にて計数された液だれの発生回数に基づいてメンテナンスの要否を判定するための基準値となるしきい値(「メンテナンス管理用しきい値」と示してある)を記憶した設定値記憶部93とを備えている。カウンタ92は例えば書き換え可能なフラッシュメモリ等により構成され、設定値記憶部93は例えば上述のプログラム格納部91を構成するハードディスク等の一部として構成されている。
【0068】
液だれ判定部9bは例えば図示しないCPUと、プログラム格納部94とを備えたマイクロコントローラとして構成されている。プログラム格納部94は例えばROM、RAM等により構成され、カメラ17より取得した画像情報に画像処理を施して液だれ等の発生を判定するための撮像結果を得たり、この撮像結果に基づいて液だれ等の発生を判定したりするためのステップ群を備えたコンピュータプログラム(「画像処理用プログラム」、「液だれ判定用プログラム」と示してある)を格納する役割を果たす。
【0069】
液だれ判定部9bは更に、塗布液の滴下発生を判定するために過去の撮像結果を一時的に記憶するための一時メモリ95と、液だれ発生の基準となる液だれ判定用しきい値を記憶する設定値記憶部96とを備えている。一時メモリ95は、例えば書き換え可能なフラッシュメメモリ等により構成され、設定値記憶部96は例えば上述のプログラム格納部94を構成するROM等の一部として構成される。
【0070】
また主制御部9aは、カメラ17、ノズル搬送機構10Aの駆動機構15や塗布液供給機構70、エアオペレーティドバルブ72、サックバックバルブ73と接続されており、液だれ等の発生を判定した結果に基づいてこれらの機器を作動させ、所定の対処動作を実行することができるようになっている。
【0071】
制御部9には更に表示操作部8が接続されており、表示操作部8は主制御部9aの指示に基づいてユーザに各種の案内表示をする役割を果たす。
【0072】
次に塗布処理稼動中に発生するノズル10の先端からの液だれについて説明する。液だれ判定部9bにて実行される画像処理や撮像結果に基づく判定の内容について説明する。図6は、液だれの発生したノズル10の先端部の様子を示した模式図である。図中のDPは、当該液だれに係る塗布液の液滴を表している。図6(b)は液だれの程度の小さな状態、図6(c)は液だれの程度の大きな状態を示している。
【0073】
液だれ判定部9bは、例えば200msの間隔でカメラ17より画像情報を取得する。この画像情報は、カメラ17にて撮像されたアナログ画像を例えば256階調表示が可能な所定解像度の8ビットのディジタル信号に変換されている。そして、取得した画像情報について、例えば階調差等に基づいて液滴DPとその周辺の空間との境界を特定することにより撮像面への液滴DPの投影形状を特定する。表面張力により液滴DPは球体の一部を切り取ったような形状となるため、上述の投影形状は図6(b)、図6(c)に示すような円弧となる。
【0074】
そこで液だれ判定部9bは、同図中に示した液滴DPの下端Pにおける曲率Cを撮像結果として算出し、この曲率の大きさによって液だれの程度を判定するようになっている。即ち、算出した曲率Cの値の小さな場合は図6(b)に示すように液だれの程度が小さく、大きな場合は図6(c)に示すように液だれの程度が大きいと判定される。設定値記憶部96には、液だれの程度を判定する基準情報が液だれ判定用しきい値として予め記憶されており、液だれ判定部9bはこのしきい値(基準情報)と画像情報から算出した曲率C(撮像結果)とを比較した結果に基づいて液だれ発生の有無や発生した液だれの大きさを判定する。
【0075】
本実施の形態に係る設定値記憶部96には、第1の曲率C1と第2の曲率C2(C1<C2)とがしきい値として記憶されており、撮像結果の曲率Cとこれらのしきい値とを比較した結果が、「C<C1」の場合には液だれ発生なし、「C1<C<C2」の場合には小さな液だれ(以下、液だれ小という)発生、「C2<C」の場合には大きな液だれ(以下、液だれ大という)発生と判定するようになっている。
【0076】
また、液だれの大きさを特定する手法は上述のものに限定されず、例えばカメラ17より取得した画像の階調差等に基づいて、液滴DPとその周辺空間及びノズル10との境界を画定し、その境界内に含まれる画素数等から決定される液滴DP投影画像の面積を撮像結果とし、この撮像結果と設定値記憶部96に予め記憶させておいたしきい値(基準情報)と比較して液だれ発生の有無やその大小を判定するように構成してもよい。
【0077】
以上の手順に基づいて液だれが発生したと判定した場合には、液だれ判定部9bは液だれの程度(液だれ小、液だれ大)を識別する情報と、液だれの発生したノズル10を識別する情報とを主制御部9aに対して出力するようになっている。
【0078】
主制御部9aは、液だれ判定部9bより取得した液だれや滴下の発生を示す情報に基づいて、所定の対処動作やメンテナンス管理に係る動作を実行するようになっている。この動作は、ノズルアーム11の移動中も各ノズル10の先端部を監視するものであるが、その詳細については後述する。
【0079】
以上の構成に基づき、ノズル10先端部からの塗布液の液だれや滴下の発生の判定及びその対処動作等に関する塗布ユニット1の作用について説明する。なお以下に示すフローチャートの説明では、液だれと滴下とを便宜上一括して「液だれ」と表現し、「液だれ小」、「液だれ大」、「滴下」の3レベルに区分されるものとして説明をする。
【0080】
初めに液だれ判定部9bにて液だれの発生を判定する動作について説明する。図7は、当該動作の流れを説明するためのフローチャートである。塗布、現像装置が稼働を開始すると(スタート)、液だれ判定部9bは、例えばダミーディスペンスを行うタイミングや、プロセス処理を実行しているタイミング等の予め決められた期間中にノズル10先端部の画像情報を取得し(ステップS101)、既述の判定手法に基づいて液だれが発生しているか否かを判定する(ステップS102)。液だれが発生していなかった場合には(ステップS102;NO)、例えば200msの所定時間待機して(ステップS106)画像情報の取得と液だれの判定の動作を繰り返す(ステップS101〜S102)。
【0081】
液だれが発生していた場合には(ステップS102;YES)、更に「液だれ小」、「液だれ大」、「滴下」の3レベルの中から発生した事象に応じたレベルを特定する(ステップS103)。そして、液だれの発生したノズル10と液だれのレベルとに関する液だれ情報を出力して(ステップS104)、再びノズル10先端部の画像情報を取得する動作に戻る(ステップS101)。
【0082】
本実施の形態によれば、以下のような効果がある。ノズル搬送機構10Aによって移動するノズル10の動きに合わせて、カメラ17がこのノズル10の先端部の状態を光学的に撮像するので、移動中のノズル10にて塗布液の液だれや滴下が発生した場合にこれを撮像することができる。そして、発生した事象に応じて、例えば液だれの生じた場合には、制御部9からディスペンス制御部100に信号を送り、ノズル10をノズルバス14、中間バス16へ退避させて、この中に塗布液を吐出するダミーディスペンスを行ったり、塗布液が滴下してしまった場合にはその液処理を停止させたりする適切な対処動作を実行することができる。この結果、目的外の位置での塗布液の滴下を未然に防止できた場合には、不良品の発生が防止され歩留まり向上に貢献することができる。また未然に防止されなかった場合でも、塗布、現像装置を自動的に停止すれば、滴下した塗布液を拭き取る等、直ちに適切な措置を採ることができるので被害の拡大を抑えてロスを最小限に留めることができる。
【0083】
特に本実施の形態においては、ノズル搬送機構10Aのノズルアーム11に複数本例えば10本のノズル10を保持し、これらのノズル10を同時に移動させ、更に複数の例えば3つの液処理部2に対してノズル10及びノズル搬送機構10Aが共通化されている。このためノズル10の移動中に塗布液の液だれや滴下の発生する確率は、ノズル10が1本の場合や各液処理部2のノズル10が共通化されていない場合に比べて高くなっているので、ノズル10先端部の処理液の状態を撮像する撮像精度が向上して正確に状態検出することができる。ノズル10の処理液の状態の検出精度が向上することで上記の対処動作により得られる歩留まり向上やロス低減の効果は一層高くなる。
【0084】
また、カメラ17がノズル搬送機構10Aに取り付けられていることにより、例えばカメラ17を独立して移動させる機構を必要せず装置コストを低減することができる。但し、ノズル搬送機構10Aとは独立した移動機構にカメラ17を取り付けて、これらの移動機構の動きを同期させることにより、搬送されているノズル10の動きに合わせてその先端部の状態を撮像してもよいことは勿論である。
【0085】
また光学的な撮像手段としてカメラ17を用いることにより、撮像した画像情報から液だれの大きさを示す液滴DPの曲率等の撮像結果を得ることが可能となる。この結果、液だれ発生の有無だけでなくその大きさも把握することが可能となり、ダミーディスペンスを行うタイミングを液だれの小さな場合には塗布液の塗布後とし、大きな場合には塗布前とする等、発生した事象の緊急度に応じた対処動作を実行することができる。これによりダミーディスペンスを実行している間の待ち時間の発生等、プロセス処理の効率低下を極力抑えることができる。
【0086】
また、例えば3つの液処理部2同士の間に、他のスピンチャック41上を横切らずにノズル10を退避させてダミーディスペンスを実行するための中間バス16を備えていることにより、退避先がノズルバス14しかない場合に比べて移動距離を短くでき、液だれが成長して滴下してしまう危険性を小さくできる。
【0087】
また、大きな液だれや滴下の発生したことを表示操作部8に表示したり、発生した液だれが小さい場合でも、その発生回数をカウントしてその数が所定回数を超えたらメンテナンスの必要な旨を表示操作部8に表示したりすることにより、オペレータや保全担当者は直ちに必要な措置を採ることができる。
【0088】
なおノズル10の先端部の状態を光学的に撮像する手法は、カメラ17により可視光を撮像する場合に限定されない。例えばノズル10先端部の熱イメージを赤外線カメラにより画像情報に変換して、液だれや滴下の有無を撮像するように構成してもよい。ノズル10を撮像するカメラ17の用途は、実施の形態中に示した液だれの監視のみの使用に限定されない。例えば、吐出開始・終了のタイミングを監視することで、レジスト塗布時間を測定するようにしてもよい。また、例えば、吐出開始前もしくはロットの切り換え等の非吐出時において、ノズル先端からの液面距離測定、ノズル位置測定、ノズル先端汚れや傷の検出、ノズル取付間違いを検出するようにカメラ17を使用してもよい。
【0089】
また、塗布、現像装置の稼動開始前にウエハW搬送位置の調整等を目的として、実際のプロセス処理は行わないダミー基板を装置内で搬送する場合がある。このようなダミー基板の使用時に、例えばノズル位置の確認、調整用にカメラ17を使用してもよい。
【0090】
次に塗布、現像装置に上述した塗布ユニット1を適用した一例について、図8乃至図10を参照して簡単に説明する。この装置にはキャリアブロックS1が設けられており、その載置台100a上に載置された密閉型のキャリア100から受け渡しアームCがウエハWを取り出して処理ブロックS2に受け渡し、処理ブロックS2から受け渡しアームCが処理済みのウエハWを受け取ってキャリア100に戻すように構成されている。
【0091】
前記処理ブロックS2は、図10に示すようにこの例では現像処理を行うための第1のブロック(DEV層)B1、レジスト膜の下層側に形成される反射防止膜の形成処理を行うための第2のブロック(BCT層)B2、レジスト膜の塗布を行うための第3のブロック(COT層)B3、レジスト膜の上層側に形成される反射防止膜の形成を行うための第4のブロック(TCT層)B4を、下から順に積層して構成されている。
【0092】
第2のブロック(BCT層)B2と第4のブロック(TCT層)B4とは、各々反射防止膜を形成するための薬液をスピンコーティングにより塗布する本形態に係わる塗布ユニット1と、この塗布ユニット1にて行われる処理の前処理及び後処理を行うための加熱・冷却系の処理ユニット群と、前記塗布ユニット1と処理ユニット群との間に設けられ、これらの間でウエハWの受け渡しを行う搬送アームA2、A4と、で構成されている。第3のブロック(COT層)B3についても前記薬液がレジスト液であることを除けば同様の構成である。
【0093】
一方、第1のブロック(DEV層)B1については図10に示すように一つのDEV層B1内に現像ユニットが2段に積層されている。そして当該DEV層B1内には、これら2段の現像ユニットにウエハWを搬送するための搬送アームA1が設けられている。つまり2段の現像ユニットに対して搬送アームA1が共通化されている構成となっている。
【0094】
更に処理ブロックS2には、図8及び図10に示すように棚ユニットU5が設けられ、キャリアブロックS1からのウエハWは前記棚ユニットU5の一つの受け渡しユニット、例えば第2のブロック(BCT層)B2の対応する受け渡しユニットCPL2に、前記棚ユニットU5の近傍に設けられた昇降自在な第1の受け渡しアームD1によって順次搬送される。第2のブロック(BCT層)B2内の搬送アームA2は、この受け渡しユニットCPL2からウエハWを受け取って各ユニット(反射防止膜ユニット及び加熱・冷却系の処理ユニット群)に搬送し、これらユニットにてウエハWには反射防止膜が形成される。
【0095】
その後、ウエハWは棚ユニットU5の受け渡しユニットBF2、受け渡しアームD1、棚ユニットU5の受け渡しユニットCPL3及び搬送アームA3を介して第3のブロック(COT層)B3に搬入され、レジスト膜が形成される。更にウエハWは、搬送アームA3→棚ユニットU5の受け渡しユニットBF3→受け渡しアームD1を経て棚ユニットU5における受渡しユニットBF3に受け渡される。なおレジスト膜が形成されたウエハWは、第4のブロック(TCT層)B4にて更に反射防止膜が形成される場合もある。この場合は、ウエハWは受け渡しユニットCPL4を介して搬送アームA4に受け渡され、反射防止膜の形成された後搬送アームA4により受け渡しユニットTRS4に受け渡される。
【0096】
一方DEV層B1内の上部には、棚ユニットU5に設けられた受け渡しユニットCPL11から棚ユニットU6に設けられた受け渡しユニットCPL12にウエハWを直接搬送するための専用の搬送手段であるシャトルアームEが設けられている。レジスト膜や更に反射防止膜の形成されたウエハWは、受け渡しアームD1を介して受け渡しユニットBF3、TRS4から受け取り受け渡しユニットCPL11に受け渡され、ここからシャトルアームEにより棚ユニットU6の受け渡しユニットCPL12に直接搬送され、インターフェイスブロックS3に取り込まれることになる。なお図10中のCPLが付されている受け渡しユニットは温調用の冷却ユニットを兼ねており、BFが付されている受け渡しユニットは複数枚のウエハWを載置可能なバッファユニットを兼ねている。
【0097】
次いで、ウエハWはインターフェイスアームBにより露光装置S4に搬送され、ここで所定の露光処理が行われた後、棚ユニットU6の受け渡しユニットTRS6に載置されて処理ブロックS2に戻される。戻されたウエハWは、第1のブロック(DEV層)B1にて現像処理が行われ、搬送アームA1により棚ユニットU5の受け渡し台TRS1に受け渡される。その後、第1の受け渡しアームD1により棚ユニットU5における受け渡しアームCのアクセス範囲の受け渡し台に搬送され、受け渡しアームCを介してキャリア100に戻される。なお図8においてU1〜U4は各々加熱部と冷却部とを積層した熱系ユニット群である。
【符号の説明】
【0098】
DP 液滴
W 半導体ウエハ(基板)
1 塗布ユニット
2、2a,2b,2c 液処理部
8 表示操作部
9 制御部
9a 主制御部
9b 液だれ判定部
10 ノズル
10A ノズル搬送機構
11 ノズルアーム
11a ノズルヘッド部
11b アーム部
15 ノズル搬送機構の駆動機構
17 カメラ
41 スピンチャック(基板保持部)
80 移動機構
89 駆動機構
90 中央演算処理装置(CPU)
91 プログラム格納部
92 カウンタ
93 設定値記憶部
94 プログラム格納部
95 一時メモリ
96 設定値記憶部
100 ディスペンス制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に液処理を行う液処理装置であって、
基板を保持する基板保持部と、
前記基板保持部に保持された基板に処理液を供給する複数のノズルと、
前記複数のノズルを搬送するノズル搬送機構と、
前記ノズルの先端を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段を前記複数のノズルの1つに対して移動させる移動機構と、
前記ノズルの処理液供給部、前記ノズル搬送機構及び前記撮像手段の移動機構の処理動作を制御すると共に、前記複数のノズルの中から1つのノズルを選択する処理プログラムを備える制御部と、
を備えたことを特徴とする液処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記ノズルの先端部からの処理液の滴下の発生の有無及び処理液の状態を判定する判定部を備えると共に、前記判定部の判定結果に基づいて前記ノズルの処理液供給部及び又は前記ノズル搬送機構に処理動作を実行させる、ことを特徴とする請求項1に記載の液処理装置。
【請求項3】
前記ノズル搬送機構は、複数のノズルを同時に搬送するように構成されており、前記撮像手段は、前記ノズル搬送機構に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の液処理装置。
【請求項4】
前記移動機構は、前記選択されたノズルと前記撮像手段との距離を一定に保つべく前記撮像手段を移動させる駆動機構を具備していることを特徴とする請求項1に記載の液処理装置。
【請求項5】
前記移動機構は、前記選択されたノズルに向けて前記撮像手段の撮像領域の中心軸線状に指定したノズル先端を含む画像が入るように移動させることを特徴とする請求項1又は4に記載の液処理装置。
【請求項6】
前記撮像手段は、前記選択されたノズルと撮像手段との距離に対応して撮像焦点を調整するオートフォーカス機能を具備することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の液処理装置。
【請求項7】
前記ノズル搬送機構を移動させて位置し、前記ノズルから処理液をダミーディスペンスするためのノズルバスとを備え、前記撮像手段の移動は、前記ノズルバスで行うことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の液処理装置。
【請求項8】
前記撮像手段は、前記ノズル搬送機構が、前記ノズルバスで待機された位置から複数のノズルを同時に搬送する区間を含み、前記選択されたノズルの先端を監視することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の液処理装置。
【請求項9】
基板保持部に保持された基板の表面に、複数のノズルを搬送し、複数のノズルの中の任意の1つのノズルから処理液を供給して、液処理する液処理方法において、
前記複数のノズルの中から1つのノズルを選択し、
前記選択されたノズルに向けて、撮像手段を移動させ、前記撮像手段により前記選択されたノズルの先端部を撮像すると共に、ノズル先端部からの処理液の滴下の発生の有無及び処理液の状態を判定する、
ことを特徴とする液処理方法。
【請求項10】
前記判定の結果に基づいて前記ノズルの処理液供給部及び又は前記ノズル搬送機構に処理動作を実行させる、ことを特徴とする請求項9に記載の液処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−49153(P2012−49153A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186746(P2010−186746)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】