説明

液化燃料貯留装置

【課題】 過充填防止弁40の作動時におけるウォーターハンマの発生を簡易な構成にて抑制する。
【解決手段】 気相連通外配管33に均圧電磁弁60を設ける。車載ECU70は、充填装置100から燃料タンク11に液化燃料を充填しているときに、燃料タンク11内の液化燃料の充填量が過充填防止弁40の作動する第1基準レベルL1よりも小さい第2基準レベルL2未満となる場合は均圧電磁弁60を開弁状態に維持し、充填量が第2基準レベルL2以上になると均圧電磁弁60を閉弁状態に切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化燃料の充填装置に接続され、充填装置から供給される液化燃料を貯留する液化燃料貯留装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液化燃料を使用してエンジンを駆動する車両が知られている。液化燃料としては、液化石油ガス(LPG)燃料がよく知られているが、ディーゼルエンジンの燃料である軽油の代替としてジメチルエーテル(以下、DMEと呼ぶ)燃料を使用する車両も知られている。
【0003】
液化燃料は、一般に、車両のトランクや車体下部に取り付けられたタンク内に充填される。タンク内の液化燃料が少なくなった場合には、燃料スタンドにおいて、車両の燃料供給口に燃料充填用ホースを接続し、スタンドの充填装置から液化燃料をタンクに充填できるようになっている。タンクは、最大充填量が規定されており、この最大充填量を超えないようにするために過充填防止弁を備えている。過充填防止弁は、例えば、タンク内の液化燃料の液面の昇降にあわせて浮動するフロートと、タンク内へ燃料が流入する流入口をフロートの高さ位置に応じて開閉する弁体とを備え、タンク内の液化燃料の液面が最大充填量に相当する設定レベルに達すると自動的に弁体が閉弁するように構成されている。
【0004】
DME燃料を使用する場合、DME燃料の単位容積当たりの発熱量が軽油に比べて小さいことから、軽油と同程度の時間で燃料補給を完了しようとすると、高速充填する必要がある。この場合、スタンドの充填装置のポンプ能力を増しても、密閉したタンク内の圧力上昇の影響で、あまり充填速度を上げることができない。そこで、特許文献1に提案された液化ガス充填システムにおいては、タンク内の上部空間であって液化燃料が貯留されない気相領域と、燃料供給元となる貯層タンク内の上部空間であって液化燃料が貯留されない気相領域とを連通する配管(以下、均圧用配管と呼ぶ)を設けることによりタンク内の圧力上昇を抑えて高速充填を可能にしている。
【0005】
しかし、高速充填を行う場合には、ウォーターハンマにより衝撃が発生するという問題が生じる。これは、タンク内の液化燃料の液面が設定レベルに到達して過充填防止弁が閉弁したとき、液化燃料の流れが急に遮断されるため、燃料供給路において圧力衝撃が働くからである。このウォーターハンマによる衝撃ため、液化燃料貯留装置や充填装置における燃料供給路の部品を破損させるおそれがある。
【0006】
そこで、特許文献1に提案された液化ガス充填システムにおいては、タンク内の液化燃料の液面の高さを検出する液面センサを設け、液面センサで検出された液面検出データを車両の無線機からスタンドの充填装置の無線機に送信し、充填装置側でタンク内の液化燃料の液面の高さを検出できるようなシステムを構成している。そして、充填装置においては、液面検出データに基づいて、タンクの液化燃料の液面が過充填防止弁の作動するレベルよりも低い設定レベルに達したときに、充填装置に設けられた開閉弁を閉弁して均圧用配管による気相領域間の連通を遮断する。これにより、それ以降、タンク内の圧力上昇によって、充填装置から供給される液化燃料の充填圧力とタンク内圧との差が減少して充填流量が減少し、過充填防止弁が作動したときのウォーターハンマが低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−255809号公報
【発明の概要】
【0008】
しかしながら、特許文献1のものでは、車両と、燃料スタンドの充填装置とのそれぞれに、無線通信装置を設ける必要がある。従って、車両、充填装置の双方が、そうした通信機能を有するものであれば実施できるものの、何れか一方でも、通信機能を備えていない場合には実施することができない。このため、通信機能を有さない汎用の充填装置を使って燃料補給する場合には、ウォーターハンマが発生して、液化燃料貯留装置や充填装置における燃料供給路の部品を破損させるおそれがある。また、充填装置が、こうした通信による液面検知機能を備えていても、車両側がそれに対応した送信機能を備えていない場合には、やはり、ウォーターハンマを抑制することができない。
【0009】
従って、特許文献1のものでは、専用の大掛かりなシステムが必要となり汎用性に欠ける。
【0010】
本発明は、上記問題に対処するためになされたもので、専用の大掛かりなシステムを必要とすることなく、簡易な構成でウォーターハンマの発生を抑制することを目的とする。
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、液化燃料を貯留するための貯留容器と、充填装置の燃料充填用ホースが着脱可能に接続される充填用接続口と、充填装置の気相連通用ホースが着脱可能に接続される気相連通用接続口と、先端を前記貯留容器内に臨ませて前記貯留容器と前記充填用接続口とを連通し前記液化燃料を前記貯留容器に供給する流路となる燃料供給路と、先端を前記貯留容器内の上部空間であって前記液化燃料が貯留されない気相領域に臨ませて前記気相領域と前記気相連通用接続口とを連通する気相連通路と、前記貯留容器内に臨んで前記燃料供給路の先端側に設けられ、前記貯留容器内の液化燃料の充填量が第1基準量に達しないあいだは開弁状態を維持し、前記充填量が第1基準量に達すると閉弁して前記貯留容器への液化燃料の充填を遮断する過充填防止弁とを備えた液化燃料貯留装置において、
前記気相連通路の流路を開閉する電磁弁と、前記貯留容器内に充填された液化燃料の充填量を検出する充填量検出手段と、前記充填装置から前記貯留容器に液化燃料を充填しているときに、前記充填量検出手段により検出された充填量が前記第1基準量よりも小さい第2基準量未満となる場合は前記電磁弁を開弁状態に維持し、前記充填量が前記第2基準量以上になると前記電磁弁を閉弁状態に切り替える電磁弁制御手段とを備えたことにある。
【0012】
本発明においては、貯留容器に液化燃料を充填する場合、オペレータが、充填装置の燃料充填用ホースを充填用接続口に接続し、充填装置の気相連通用ホースを気相連通用接続口に接続する。充填装置は、例えば、ポンプを作動させて供給元燃料タンク内の液化燃料を燃料充填用ホースに送り出す。これにより、液化燃料は、燃料供給路を流れて貯留容器に流入する。貯留容器内の上部には液化燃料が貯留されない空間(液化燃料の液面より上部の空間)となる気相領域が形成される。気相領域は、気相連通路を介して気相連通用接続口と連通する。従って、貯留容器の気相領域と、充填装置側の供給元燃料タンクの気相領域とを連通させることができる。このため、液化燃料の充填中においては、貯留容器の圧力上昇を抑えることができ高速充填が可能となる。
【0013】
貯留容器内の液化燃料の充填量が第1基準量に達すると過充填防止弁が閉弁して貯留容器への液化燃料の充填を遮断するが、高速充填の状態で過充填防止弁が閉弁するとウォーターハンマが発生してしまう。そこで、本発明においては、気相連通路の流路を開閉する電磁弁と、充填量検出手段と、電磁弁制御手段とを備えている。
【0014】
充填量検出手段は、貯留容器内に充填された液化燃料の充填量を検出する。例えば、充填量検出手段は、貯留容器内に充填された液化燃料の液面の高さを検出することにより充填量を検出する。電磁弁制御手段は、充填装置から貯留容器に液化燃料を充填しているときに、充填量検出手段により検出された充填量が第1基準量よりも小さい第2基準量未満となる場合は電磁弁を開弁状態に維持し、充填量が第2基準量以上になると電磁弁を閉弁状態に切り替える。従って、液化燃料の充填開始当初においては、電磁弁が開弁状態となるため、貯留容器の気相領域と充填装置側の燃料タンクの気相領域との連通により、貯留容器の圧力上昇が抑えられ、高速で液化燃料を充填することができる。そして、貯留容器内の液化燃料の充填量が増加して第2基準量に達すると、電磁弁制御手段は、電磁弁を閉弁状態に切り替える。従って、貯留容器内の気相領域は密閉される。この段階では、まだ過充填防止弁が閉弁動作していないため、液化燃料の充填が継続される。
【0015】
液化燃料の充填が進むにつれて、貯留容器内の圧力が上昇し、一方で充填装置からの供給圧は一定である。このため、液化燃料の充填速度が徐々に低下する。そして、液化燃料の充填量が第1基準量に達すると過充填防止弁が閉弁して充填が完了する。過充填防止弁が閉弁した時点においては、充填速度が低下しているため、閉弁によるウォーターハンマの発生を抑制することができる。このため、燃料供給路の上流側に伝達される圧力衝撃が抑制され、液化燃料貯留装置や充填装置の部品の破損を抑制することができる。
【0016】
また、本発明によれば、液化燃料貯留装置側で、充填装置とは独立して貯留容器内の圧力調整による充填速度調整を行うことができるため、充填装置に対して、充填量に関するデータを送信する必要がない。このため、液化燃料貯留装置と充填装置との双方に通信装置を設ける必要が無く、大掛かりなシステムを構成しなくてもよい。従って、低コストにて実施することができる。また、充填装置を選ばないため、汎用性が高いものとなる。
【0017】
尚、本発明の液化燃料貯留装置は、例えば、車両に搭載することにより、エンジンの燃料貯留装置として利用することができる。また、例えば、コジェネレーションに使用するエンジンの燃料貯留装置として利用することもできる。特に、ディーゼルエンジンの燃料である軽油の代替としてDME燃料を使用する場合には、高速充填が必要となるため、本発明は有効なものとなる。
【0018】
本発明の他の特徴は、前記電磁弁と前記気相連通用接続口との間における前記気相連通路内の圧力を検出する圧力検出手段と、前記充填装置から前記貯留容器に液化燃料を充填しているときに、前記圧力検出手段により検出された圧力が異常判定基準値よりも低下した場合に、前記充填量にかかわらず前記電磁弁を閉弁状態にする異常時閉弁手段とを備えたことにある。
【0019】
本発明においては、圧力検出手段が電磁弁と気相連通用接続口との間における気相連通路内の圧力を検出する。気相連通用ホースが気相連通用接続口に接続され、気相領域の圧力が気相連通路内に働いている場合には、所定値以上の圧力を検出することができるが、気相連通路の破損等により気化燃料が気相連通路から漏れている場合には、気相連通路内の圧力が低下する。そこで、異常時閉弁手段は、充填装置から貯留容器に液化燃料を充填しているときに、圧力検出手段により検出された圧力が異常判定基準値よりも低下した場合に、充填量にかかわらず電磁弁を閉弁状態にする。従って、気相連通路からの燃料漏れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】車両に搭載される液化燃料貯留装置、および、燃料スタンドの充填装置の概略構成図である。
【図2】均圧電磁弁制御ルーチンを表すフローチャートである。
【図3】充填速度の推移を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。図1は、実施形態としての車両に搭載される液化燃料貯留装置10、および、燃料スタンドに設けられる充填装置100の概略構成図である。
【0022】
本実施形態の液化燃料貯留装置10は、車両に搭載され、ディーゼルエンジンで使用する液化ガス燃料(単に、液化燃料と呼ぶ)を貯留する装置である。本実施形態においては、液化燃料としてDME燃料を使用する。液化燃料貯留装置10は、液化燃料を貯留するための容器となる燃料タンク11を備えている。燃料タンク11は、略円筒状に形成され、車両のフレーム等に固定される。車体の側面には、燃料充填用接続口21と気相連通用接続口31とが並べて設けられる。燃料充填用接続口21は、充填装置100の燃料充填用ホース120の先端に設けられた雄カップリング120aと着脱可能に接続される雌カップリングである。また、気相連通用接続口31は、充填装置100の気相連通用ホース130の先端に設けられた雄カップリング130aと着脱可能に接続される雌カップリングである。尚、燃料充填用接続口21および気相連通用接続口31は、それぞれ雄カップリング120aあるいは雄カップリング130aが接続されたとき、内部通路を開き、雄カップリング120aあるいは雄カップリング130aが外されたとき、内部通路を閉じる弁機構(図示略)を備えている。
【0023】
燃料タンク11の壁面には、燃料供給管接続部22と気相連通管接続部32とが形成されている。燃料供給管接続部22と燃料充填用接続口21とは、燃料供給外配管23により連結される。また、気相連通管接続部32と気相連通用接続口31とは、気相連通外配管33により連結される。燃料タンク11内においては、燃料供給管接続部22に燃料供給内配管24が接続される。燃料供給内配管24は、中間部で上方向に向けて曲げられて形成されている。これにより、燃料供給外配管23と燃料供給内配管24とで、燃料充填用接続口21から燃料タンク11内へ液化燃料を供給する燃料供給路20を形成する。
【0024】
また、燃料タンク11内においては、気相連通管接続部32に気相連通内配管34が接続される。気相連通内配管34は、中間部で上方向に向けて曲げられ、その先端が燃料タンク11の上部空間に臨むように形成されている。これにより、気相連通外配管33と気相連通内配管34とで、気相連通用接続口31と燃料タンク11内の上部空間とを連通する気相連通路30を形成する。
【0025】
燃料供給内配管24には、その先端に過充填防止弁40が設けられる。過充填防止弁40は、液化燃料の充填時において、燃料タンク11内への過充填を防止するもので、液化燃料の液面の高さにしたがって浮動するフロート41を備え、フロート41の動作により図示しないカムを介して弁体を開閉するフロート弁である。この過充填防止弁40は、液化燃料の液面の高さが第1基準レベルL1より低いときに開弁状態となり、液化燃料の液面の高さが第1基準レベルL1に達すると閉弁状態となって燃料供給路20からの燃料供給を遮断する。これにより、満充填量が規定される。本実施形態においては、燃料タンク11の容量の85%を満充填としている。従って、燃料タンク11内には、その上部に、液化燃料が貯留されない空間である気相領域Aが必ず形成される。気相連通内配管34は、燃料タンク11に液化燃料が満充填されている状態においても、その先端が気相領域Aに臨むように形成されている。
【0026】
燃料タンク11には、液化燃料の液面の高さを検出する液面センサ50が設けられる。液面センサ50は、例えば、上下方向に延びたガイド軸51に沿って移動可能なフロート52を設け、このフロート52の高さ位置に応じた信号を出力する。本実施形態においては、後述するように、液化燃料の液面の高さが、第2基準レベルL2以上であるか否かについての判定ができればよいため、液面の高さを必ずしもリニアに検出する必要は無く、第2基準レベルL2に達したときに検出信号が変化するスイッチ形式のものであればよい。この第2基準レベルL2は、過充填防止弁40が閉弁動作する第1基準レベルL1よりも低い位置に設定されている。
【0027】
燃料供給外配管23には、燃料タンク11に近い位置(燃料供給管接続部22)に手動式の開閉弁25が設けられ、更に、開閉弁25よりも燃料充填用接続口21側に、逆止弁26が開閉弁25と並べて設けられる。開閉弁25には図示しないハンドルが設けられており、このハンドルの操作により開弁状態と閉弁状態とが切り替えられるようになっている。逆止弁26は、燃料タンク11から燃料充填用接続口21へ向かう液化燃料の流れを規制(遮断)し、燃料充填用接続口21から燃料タンク11へ向かう液化燃料の流れを許容するものである。尚、本実施形態においては、燃料供給外配管23に開閉弁25と逆止弁26とを並設しているが、燃料タンク11から燃料充填用接続口21へ向かう液化燃料の流れを遮断可能な弁が設けられていればよいので、逆止弁26を省略した構成であってもよい。
【0028】
気相連通外配管33には、燃料タンク11に近い位置(気相連通管接続部32)において電磁弁60が設けられる。この電磁弁60は、開弁により燃料タンク11の内圧と後述する燃料供給元の貯層タンク200の内圧とを均等にするものであるため、以下、この電磁弁60を均圧電磁弁60と呼ぶ。また、気相連通外配管33には、均圧電磁弁60よりも気相連通用接続口31側に圧力センサ61が設けられる。圧力センサ61は、気相連通外配管33内の圧力Pに応じた検出信号を出力する。
【0029】
液化燃料貯留装置10は、更に、燃料タンク11内の圧力を調整するための電子制御装置70を備えている。この電子制御装置70を、以下、車載ECU70と呼ぶ。車載ECU70は、マイコンにて構成してもよいし、ディスクリート回路等にて構成してもよい。車載ECU70は、車両内の任意の場所に設けることができる。車載ECU70は、液面センサ50により検出される液面レベルLを表す液面検出信号と、圧力センサ61により検出される圧力Pを表す圧力検出信号とを入力する。また、車載ECU70は、電磁弁60を駆動するための駆動回路を備えており、電磁弁60に対して駆動信号を出力して電磁弁60の開閉を制御する。
【0030】
また、車載ECU70は、操作スイッチ71と警報ブザー72とを接続している。操作スイッチ71は、液化燃料の充填を行うときにオペレータが操作するものであるため、車両の操作しやすい位置に設ければよく、例えば、車両の運転席に設けてもよいし、燃料タンク11あるいは燃料充填用接続口21の近くに設けてもよい。
【0031】
次に、燃料スタンドに設けられる充填装置100について説明する。尚、本発明は、充填装置に係るものではないため、ここでは、基本的な構成例についての説明に留める。充填装置100は、液化燃料の貯蔵元となる貯層タンク200の液相領域bと燃料充填用ホース120とを連通する燃料供給管121と、貯層タンク200の気相領域aと気相連通用ホース130とを連通する気相連通管131とを備える。燃料供給管121にはポンプ122と流量センサ123と電磁弁124とが設けられ、気相連通管131には電磁弁132が設けられる。
【0032】
充填装置100は、電子制御装置(以下、スタンドECUとよぶ)140を備えており、図示しない操作器により充填開始操作が行われると、スタンドECU140がポンプ122を駆動するとともに2つの電磁弁124,132を開弁する。これにより、液化燃料の供給が開始される。また、貯層タンク200の気相領域aの内圧が、車両の液化燃料貯留装置10の気相連通用接続口31に付与される。また、スタンドECU140は、流量センサ123により検出される流量を積算することにより、液化燃料の供給量(燃料タンク11への充填量)を逐次計算し、図示しない表示器に計算値(充填量)を表示する。そして、操作器により充填終了操作が行われると、スタンドECU140は、ポンプ122を停止するとともに2つの電磁弁124,132を閉弁する。
【0033】
このように、充填装置100は、単に、オペレータの操作により、車両側に対して貯層タンク200の液化燃料を圧送するとともに気相領域aの内圧を付与するだけのものであり、車両とデータ通信を行う構成を全く備えていない。
【0034】
次に、車両側の液化燃料貯留装置10の作動について説明する。オペレータは、充填装置100の燃料充填用ホース120の雄カップリング120aを燃料充填用接続口21に接続し、気相連通用ホース130の雄カップリング130aを気相連通用接続口31に接続し、車両側において開閉弁25を手動で開弁する。尚、燃料充填用ホース120と気相連通用ホース130とをツインチューブで構成すれば、一度に、2個所の接続を行うことができる。そして、オペレータは、充填装置100の操作器を使って充填開始操作を行う。これにより、貯層タンク200の液相領域bと燃料タンク11とが連通し、ポンプ122により貯層タンク200内の液化燃料が燃料タンク11内に圧送される。この充填開始操作とあわせて、オペレータは、車両側において、操作スイッチ71をオン操作する。これにより、車載ECU70は、図2に示す均圧電磁弁制御ルーチンを開始する。
【0035】
車載ECU70は、まず、ステップS11において、均圧電磁弁60を開弁する。これにより、燃料タンク11の気相領域Aと貯層タンク200の気相領域aとが連通する。従って、燃料タンク11の内圧と貯層タンク200の内圧が均等になる。このため、液化燃料の充填開始とともに、燃料タンク11内の液化燃料の液面が上昇しても、燃料タンク11の気相領域Aの気体を燃料タンク11の外に逃がすことができ、燃料タンク11の内圧の上昇を抑えることができる。従って、ポンプ122の吐出圧力を充填するための圧力として有効に利用することができ、高速充填を行うことができる。以下、このような充填方式を、均圧充填と呼ぶ。
【0036】
続いて、車載ECU70は、ステップS12において、液面センサ50から出力される液面レベルLを表す検出信号を読み込み、続く、ステップS13において、圧力センサ61から出力される圧力Pを表す検出信号を読み込む。続いて、ステップS14において、液面センサ50から出力される検出信号に基づいて、液面レベルLが第2基準レベルL2以上になっているか否かを判断する。充填開始当初は、液面レベルLは第2基準レベルL2に達していない。従って、車載ECU70は、「No」と判定して、その処理をステップS15に進める。
【0037】
車載ECU70は、ステップS15において、圧力センサ61から出力される検出信号に基づいて、気相連通外配管33の漏れチェックを行う。この場合、車載ECU70は、気相連通路30における圧力Pが異常判定基準値Prefよりも低下しているか否かを判断する。気相連通外配管33に破損等の異常が生じている場合には、燃料タンク11内の液化燃料がその破損部から漏れてしまう。液化燃料が漏れる場合には、気相連通路30における圧力が低下する。異常判定基準値Prefは、正常時において圧力センサ61の検出する圧力Pがとりうる想定範囲よりも低い値に設定されている。従って、気相連通外配管33に異常が生じていなければ、「No」と判定される。
【0038】
車載ECU70は、こうしたステップS12〜S15の処理を繰り返す。そして、液面レベルLが第2基準レベルL2に到達すると(S14:Yes)、ステップS17において、均圧電磁弁60を閉弁状態に切り替えて本ルーチンを終了する。
【0039】
この第2基準レベル2は、過充填防止弁40が閉弁作動する第1基準レベル1よりも低い位置に設定されている。従って、液面レベルLが第2基準レベル2に到達しても、そのまま液化燃料の燃料タンク11への充填は継続される。この場合、燃料タンク11の気相領域Aと貯層タンク200の気相領域aとの連通が遮断されるため、燃料タンク11の気相領域Aは、密閉されることになる。従って、液化燃料の充填が進むにつれて、燃料タンク11内の圧力が上昇する。このため、液化燃料の充填速度が徐々に低下していく。以下、このような充填方式を、押し込み充填と呼ぶ。
【0040】
こうした押し込み充填が継続されて、液面レベルが第1基準レベル1に到達すると、過充填防止弁40が閉弁作動する。これにより、燃料タンク11への液化燃料の充填が終了する。この過充填防止弁40が閉弁作動するときにおいては、充填速度がかなり低下している。このため過充填防止弁40の閉弁作動に伴うウォーターハンマの発生が抑制される。
【0041】
図3は、液化燃料の充填速度の推移を表す。時刻t0において液化燃料の充填が開始される。充填開始当初は、均圧充填が行われるため、高速充填となる。そして、時刻t1において液面レベルが第2基準レベル2に到達すると、均圧電磁弁60が閉弁して均圧充填から押し込み充填に切り替わる。これにより、充填速度は、自然に低下していき、液面レベルが第1基準レベル1に達する時点、つまり、過充填防止弁40が閉弁作動する時刻t2においては、ウォーターハンマの影響が少ない低速度領域Zに入るようになる。従って、過充填防止弁40の閉弁時に、燃料供給路30の上流側に加わる圧力衝撃が低減されて、液化燃料貯留装置10および充填装置100の部品、例えば、開閉弁25、逆止弁26、電磁弁124、ポンプ122、流量センサ123等に悪影響を与えにくくなる。この結果、液化燃料貯留装置10および充填装置100の部品の破損を抑制することができる。
【0042】
車載ECU70は、均圧充填を行っているときに、ステップS15において、気相連通外配管33の漏れチェックを行っている。そして、液面レベルLが第2基準レベル2に到達する前、つまり、均圧電磁弁60を閉弁する前に、気相連通外配管33の異常を検出した場合には(S15:Yes)、ステップS16において、警報ブザー72を駆動してオペレータに異常を知らせる。この場合には、液面レベルLが第2基準レベル2に到達することを待たずに、即座にステップS17において均圧電磁弁60を閉弁状態にする。従って、燃料漏れを防止することができる。
【0043】
尚、従来から、燃料タンクの気相領域と燃料供給元となる貯層タンクの気相領域とを連通して均圧充填を行う液化燃料貯留装置が知られているが、こうした従来の液化燃料貯留装置においては、気相連通路からの燃料漏れを防止するために、燃料タンクの気相領域の出口に過流防止弁を設けている。しかし、過流防止弁は、弁体を開弁方向に付勢するバネ力に打ち勝つ押圧力が弁体に働いたときに閉弁して気相連通路を遮断するものであるためバネ力の設定が難しい。つまり、夏場と冬場とでは、燃料タンク内の温度がかなり異なるため、過流防止弁の上流側と下流側との圧力差が変動する。このため、季節によっては、過流防止弁が過剰に働いてしまうおそれがある。これに対して、本実施形態では、気相連通外配管33内の圧力異常を検出して均圧電磁弁60を閉弁するものであるため、そうしたバネ力の設定が必要なく、適切に燃料漏れを防止することができる。
【0044】
また、過流防止弁が閉弁動作した場合には、オペレータによって弁体を開弁位置に戻すリセット作業が必要であったが、本実施形態においては、そうしたリセット作業も不要となる。
【0045】
以上説明した本実施形態の液化燃料貯留装置10によれば、気相連通路30に設けた均圧電磁弁60の開閉制御により、充填開始当初は均圧充填(高速充填)を行い、途中から押し込み充填に切り替える。従って、過充填防止弁40が作動する時点での充填速度を低くすることができウォーターハンマの発生を抑制することができる。この結果、液化燃料貯留装置10および充填装置100の部品の破損を抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態の液化燃料貯留装置10においては、充填装置100とは独立して燃料タンク11内の圧力調整により充填速度調整を行うことができるため、充填装置100に対して、液面レベル等の充填量に関するデータを送信する必要がない。このため、液化燃料貯留装置10と充填装置100との双方に通信インタフェースを設ける必要が無く、大掛かりなシステムを構成しなくてもよい。また、充填装置100に、燃料タンク11への充填速度制御機能を設ける必要も無い。従って、ウォーターハンマを低減するという目的に対して低コストにて実施することができる。また、充填装置100を選ばないため、汎用性が高いものとなる。このため、液化燃料車両の普及促進を図ることができる。
【0047】
また、圧力センサ61により気相連通路30の異常を検出した場合には、充填方式切替用の均圧電磁弁60を使って気相連通路を遮断するため、燃料漏れを適切に防止することができ、また、警報ブザー72の鳴動によりオペレータに異常を知らせることができる。また、従来装置のような過流防止弁のリセット操作が不要となり使い勝手がよい。
【0048】
以上、本実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。
【0049】
例えば、本実施形態においては、DME燃料に適用した液化燃料貯留装置について説明したが、DME燃料に限らず液化石油ガス(LPG)燃料等、他の液化燃料に適用した液化燃料貯留装置であってもよい。また、本実施形態の液化燃料貯留装置は、車両に搭載されるものであるが、コジェネレーションに使用するエンジンの燃料貯留装置など、施設に設置される液化燃料貯留装置に適用することもできる。この場合は、液化燃料の補給は、タンクローリーなどを利用することになる。
【0050】
また、本実施形態においては、燃料供給外配管23に手動式の開閉弁25を設けているが、この開閉弁25に代えて電磁弁(充填電磁弁と呼ぶ)を設け、車載ECU70から出力される駆動信号により充填電磁弁を開閉する構成であってもよい。この構成においては、例えば、充填開始を指示する操作スイッチの操作により均圧電磁弁60とともに充填電磁弁を開弁し、充填終了を指示する別の操作スイッチの操作により充填電磁弁を閉弁するようにすればよい。
【0051】
また、操作スイッチ71に代えて、気相連通用接続口31に気相連通用ホース130の先端に設けられた雄カップリング130aが接続されたことを検出する接続検知器62(図1に破線にて示す)を設け、この接続検知器62の検知信号Sを車載ECU70に入力して、気相連通用接続口31に雄カップリング130aが接続されたことが検出されたときに、車載ECU70が均圧電磁弁60を開弁するようにしてもよい。接続検知器62として、気相連通用接続口31に雄カップリング130aが接続されたときに接点状態が切り替わるメカスイッチなどを採用すれば簡単に実施することができる。
【符号の説明】
【0052】
10…液化燃料貯留装置、11…燃料タンク、20…燃料供給路、21…燃料充填用接続口、23…燃料供給外配管、24…燃料供給内配管、25…開閉弁、26…逆止弁、30…気相連通路、31…気相連通用接続口、33…気相連通外配管、34…気相連通内配管、40…過充填防止弁、50…液面センサ、60…電磁弁(均圧電磁弁)、61…圧力センサ、70…電子制御装置(車載ECU)、100…充填装置、120…燃料充填用ホース、120a,130a…雄カップリング、130…気相連通用ホース、200…貯層タンク、A…気相領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化燃料を貯留するための貯留容器と、
充填装置の燃料充填用ホースが着脱可能に接続される充填用接続口と、
充填装置の気相連通用ホースが着脱可能に接続される気相連通用接続口と、
先端を前記貯留容器内に臨ませて前記貯留容器と前記充填用接続口とを連通し前記液化燃料を前記貯留容器に供給する流路となる燃料供給路と、
先端を前記貯留容器内の上部空間であって前記液化燃料が貯留されない気相領域に臨ませて前記気相領域と前記気相連通用接続口とを連通する気相連通路と、
前記貯留容器内に臨んで前記燃料供給路の先端側に設けられ、前記貯留容器内の液化燃料の充填量が第1基準量に達しないあいだは開弁状態を維持し、前記充填量が第1基準量に達すると閉弁して前記貯留容器への液化燃料の充填を遮断する過充填防止弁と
を備えた液化燃料貯留装置において、
前記気相連通路の流路を開閉する電磁弁と、
前記貯留容器内に充填された液化燃料の充填量を検出する充填量検出手段と、
前記充填装置から前記貯留容器に液化燃料を充填しているときに、前記充填量検出手段により検出された充填量が前記第1基準量よりも小さい第2基準量未満となる場合は前記電磁弁を開弁状態に維持し、前記充填量が前記第2基準量以上になると前記電磁弁を閉弁状態に切り替える電磁弁制御手段と
を備えたことを特徴とする液化燃料貯留装置。
【請求項2】
前記電磁弁と前記気相連通用接続口との間における前記気相連通路内の圧力を検出する圧力検出手段と、
前記充填装置から前記貯留容器に液化燃料を充填しているときに、前記圧力検出手段により検出された圧力が異常判定基準値よりも低下した場合に、前記充填量にかかわらず前記電磁弁を閉弁状態にする異常時閉弁手段と
を備えたことを特徴とする請求項1記載の液化燃料貯留装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−233493(P2012−233493A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100476(P2011−100476)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(391006430)中央精機株式会社 (128)
【Fターム(参考)】