説明

液晶表示装置およびその製造方法

【課題】凹凸形状を有する光反射部やフォトスペーサなどの立体構造物をTFT基板の絶縁膜における所定位置に好適な形状で形成した表示装置を提供する。
【解決手段】本液晶表示装置には、無段階に光透過率が変化する半透明部を有するハーフトーンマスクを使用したフォトリソグラフィ処理により、良好な散乱反射特性を有する所定の曲面形状を有するマルチギャップ部170上に形成される反射電極17や、表示部において目立ちにくい立体形状を有するフォトスペーサ51、ステップカバレッジ性を向上させることができるテーパ面を有するコンタクトホール16を層間絶縁膜19に形成することができる。このことから液晶表示装置の表示品質を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置およびその製造方法に関し、より詳しくは、液晶層等を挟持する2枚の基板のうちの薄膜トランジスタを含む基板に形成される構造物に特徴を有する表示装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にアクティブマトリックス型の液晶表示装置では、液晶層を挟持する2枚の基板を含む表示部を備えており、当該2枚の基板のうち一方の基板には、映像信号線としての複数のデータ線と走査信号線としての複数のゲート線とが格子状に配置され、それら複数のデータ線とゲート線との交差点にそれぞれ対応してマトリクス状に配置された複数の画素形成部が設けられている。各画素形成部は、上記ゲート線にゲート端子が接続され上記データ線にソース端子が接続されたスイッチング素子であるTFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)と、そのTFTのドレイン端子に接続された画素電極とを含む。これら画素形成部を含む上記基板は、TFT基板またはアクティブマトリクス基板と呼ばれる。
【0003】
また、上記2枚の基板のうちTFT基板に対向する他方の基板には、上記複数の画素形成部に共通的に設けられた対向電極である共通電極と、加法混色により所望する色を表示するためのカラーフィルタ(CF:Color Filter)とが設けられている。この基板はCF基板または対向基板と呼ばれる。
【0004】
液晶層は、これらTFT基板における各画素電極とCF基板における共通電極との間に挟持されており、これらの電極により印加される電圧に応じてその光透過率を制御され、所望の表示が行われる。したがって、この液晶層の厚みは光透過率を決定する重要な要素となる。そこで従来より、この液晶層を挟持するTFT基板とCF基板との間隔(セルギャップと呼ばれる)を一定に保つため、スペーサという構造物が設けられる。特に、フォトリソグラフィ処理により形成されるものはフォトスペーサと呼ばれる。
【0005】
このフォトスペーサは、一般的にはCF基板に形成されることが多いが、TFT基板に形成することもできる。例えば、特開2006−243323号公報に開示されている液晶表示装置では、TFT基板の層間絶縁層に対して3段階の多階調露光マスクを使用した1回の露光および現像が行われることにより、コンタクトホールとフォトスペーサとが同時に形成される。このことによりフォトスペーサを所定位置に高精度に形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−243323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特開2006−243323号公報に開示されている従来の液晶表示装置に形成されるフォトスペーサは、3段階の多階調露光マスクにより形成されるため、基板面に対して垂直方向の側面のみで構成される簡単な形状の立体構造となる。したがって、表示品質が向上するようフォトスペーサを好適な立体形状に形成することができない。
【0008】
また上記従来の液晶表示装置は、半透過型の液晶表示装置であって、CF基板側に光反射膜が形成されている。これは光反射膜が形成される基材となる樹脂膜をフォトエッチング処理することにより、ランダムな凹凸形状を簡単に得られるようにするためである。
【0009】
しかし、上記従来の液晶表示装置のように光反射膜がCF基板側に形成されている場合、CF基板とTFT基板とを貼り合わせる際に位置ずれが生じることにより、画素における反射領域の大きさが予め定めた大きさから変化することがある。この場合には液晶表示装置の表示品質が低下する。したがって、光反射膜はTFT基板側に形成されることが好ましい。
【0010】
また上記従来の液晶表示装置のように光反射膜の凹凸形状がランダムに形成される場合、反射膜のカバレッジ性が部分的に低下したり、液晶の配向方向に悪影響を与えることがある。この場合には液晶表示装置の表示品質が低下する。したがって、光反射膜の凹凸形状もフォトスペーサと同様、表示品質が向上するよう好適な立体形状に形成することが好ましい。
【0011】
そこで、本発明の目的は、凹凸形状を有する光反射部やフォトスペーサなどの立体構造物をTFT基板の絶縁膜における所定位置に好適な形状で形成した表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の発明は、画像を表示する電気光学素子と、当該電気光学素子を挟持する平面を有する第1および第2の基板とを備えるアクティブマトリクス型の表示装置であって、
前記第1の基板は、
画像を表示するための表示部において複数の映像信号線と複数の走査信号線との交差部にそれぞれ対応してマトリクス状に配置された複数の画素形成部および当該複数の画素形成部に設けられた複数の画素電極と、
表面の一部に前記複数の画素電極が形成されるとともに、前記平面に対して平行または垂直でない法線を有する傾斜平面また曲面を含む複数種類の立体構造がそれぞれ複数形成される、感光性の素材からなる絶縁層と
を含むことを特徴とする。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、
前記絶縁層は、前記立体構造における前記複数種類のうちの1つとして、前記第2の基板との距離を一定に保持するためのスペーサを複数含み、
前記スペーサは、前記第2の基板と接するべき面よりも、前記第1の基板における前記平面との接線で囲まれた面の方が大きくなるように、前記平面に対して平行または垂直でない法線を有する面が形成されていることを特徴とする。
【0014】
第3の発明は、第1または第2の発明において、
前記絶縁層は、前記立体構造における前記複数種類のうちの1つとして、前記複数の画素電極のうちの1つと当該画素電極に対応する画素形成部とを接続するためのコンタクトホールを複数含み、
前記コンタクトホールは、前記第1の基板における前記平面との接線で囲まれた面である開口面よりも、底面の方が大きくなるように、前記平面に対して平行または垂直でない法線を有する面が形成されていることを特徴とする。
【0015】
第4の発明は、第1から第3までのいずれか1つの発明において、
前記電気光学素子は、液晶からなり、
前記絶縁層は、前記立体構造における前記複数種類のうちの1つとして、表面の少なくとも一部に外光を反射するための金属反射膜または当該金属反射膜に接する前記画素電極を形成されるマルチギャップ部を含み、
前記マルチギャップ部は、複数の曲面となるよう、前記平面に対して平行または垂直でない法線を有する面が形成されていることを特徴とする。
【0016】
第5の発明は、第2から第4までのいずれか1つの発明において、
前記電気光学素子は、液晶からなり、
前記絶縁層は、前記立体構造における前記複数種類のうちの1つとして、前記液晶の配向方向を規定するための構造物および前記配向方向の中心となる構造物のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする。
【0017】
第6の発明は、第1から第5までのいずれか1つの発明において、
前記絶縁層は、前記第1の基板に形成される層間絶縁膜であることを特徴とする。
【0018】
第7の発明は、画像を表示する電気光学素子と、当該電気光学素子を挟持する平面を有する第1および第2の基板とを備えるアクティブマトリクス型表示装置の製造方法であって、
前記第1の基板上に前記電気光学素子を駆動するための薄膜トランジスタを形成する工程と、
前記第1の基板面に沿って平坦となるよう、感光性を有する絶縁層を形成する工程と、
光透過度を少なくとも複数段階変化させる半透過部を含む多階調マスクを用いて、前記平面に対して平行または垂直でない法線を有する傾斜平面または曲面を含む複数種類の立体構造を前記絶縁層に形成する露光・現像工程と、
前記第2の基板の対向する面に設けられる共通電極との間に電圧を印加しまたは電流を流すための画素電極を形成する工程と
を備え、
前記傾斜平面または曲面は、前記多階調マスクに含まれる半透過部の光透過度に応じて前記絶縁層の感光が進むことにより形成されることを特徴とする。
【0019】
第8の発明は、第7の発明において、
前記多階調マスクは、前記半透過部としてハーフトーンマスクを含むことを特徴とする。
【0020】
第9の発明は、第7の発明において、
前記多階調マスクは、前記半透過部としてグレイトーンマスクを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
上記第1の発明によれば、基板面に対して平行または垂直でない法線を有する傾斜平面また曲面を含む複数種類の立体構造がそれぞれ複数形成される、感光性の素材からなる絶縁層が備えられるので、例えば凹凸形状を有する光反射部やフォトスペーサなどの立体構造物を第1の基板の絶縁膜層における所定位置に傾斜平面や曲面を有する好適な形状で形成することができる。
【0022】
上記第2の発明によれば、フォトスペーサの形状に例えば先細りのテーパを付すことができるので、フォトスペーサの先端部分が第2の基板に形成されるブラックマトリクスなどの不透明な部分に隠れる程度の大きさに形成することができる。よって、表示装置の表示部において目立ちにくくすることができ、かつ構造的に安定させることができる。その結果、表示装置の表示品質を向上させることができる。
【0023】
上記第3の発明によれば、コンタクトホールの側面を傾け、テーパを付すことができるので、例えばコンタクトホール上に画素電極を形成したときにその側面に大きな段差が生じることがなくステップカバレッジ性を向上させることができる。その結果画素電極の切断や断裂を抑制することができるので、表示装置の表示品質を向上させることができる。
【0024】
上記第4の発明によれば、マルチギャップ部の表面を曲面形状にすることができるので、その上に形成される反射膜を同じ曲面形状にすることができる。したがって、鏡面反射成分(すなわち基板面が平面である場合の反射光の成分)を少なくして良好な散乱反射特性を得ることができ、そのため高いコントラスト比を有し、紙に近い白(ペーパーホワイト)が表示可能な高い品位の表示特性を得ることができる。
【0025】
上記第5の発明によれば、例えば液晶の配向方向を規定するための土手として機能する立体構造物や、液晶の配向方向の中心となるリベットと呼ばれる立体構造物などを、同一のフォトリソグラフィ処理により形成することができるので、これらの立体構造物により表示装置の表示品質を向上させることができ、またこれらの立体構造物を別に形成する工程を省略することができる。
【0026】
上記第6の発明によれば、第1の基板に形成される層間絶縁膜により各種立体構造物をフォトリソグラフィ処理により形成することができるので、これらの立体構造物を別に形成する工程を省略することができる。
【0027】
上記第7の発明によれば、多階調マスクを使用した露光・現像工程により、第1の発明と同様の効果を表示装置の製造方法において得ることができる。
【0028】
上記第8の発明によれば、ハーフトーンマスクを使用した露光・現像工程により、第1の発明と同様の効果を表示装置の製造方法において得ることができる。
【0029】
上記第9の発明によれば、グレイトーンマスクを使用した露光・現像工程により、第1の発明と同様の効果を表示装置の製造方法において得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係る半透過型の液晶表示装置の概略構成を示す断面図および平面図である。
【図2】上記実施形態における液晶表示装置の部分断面図である。
【図3】上記実施形態における露光前の層間絶縁膜とフォトマスクとを示す断面図である。
【図4】上記実施形態における露光途中のフォトスペーサ近傍の層間絶縁膜とフォトマスクとを示す断面図である。
【図5】上記実施形態における露光および現像終了後のフォトスペーサ近傍の層間絶縁膜とフォトマスクとを示す断面図である。
【図6】上記実施形態の変形例における露光および現像終了後のフォトスペーサ近傍の層間絶縁膜とフォトマスクとを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
<1.液晶表示装置の構成>
図1(a)は、本発明の一実施形態に係る半透過型液晶表示装置10の概略構成を示す断面図であり、図1(b)は、液晶表示装置10に含まれるアクティブマトリクス基板11の一部を示す概略平面図である。図1(a)に示す液晶表示装置10は、データ信号線13、画素電極15等がガラス基板12上に形成されたアクティブマトリクス基板11と、アクティブマトリクス基板11に対向して配置され、カラーフィルター23、ブラックマトリクス24、共通電極25等がガラス基板22上に形成された対向基板21と、アクティブマトリクス基板11と対向基板21によって挟持された液晶層30とを含む。なお、液晶層30と接するアクティブマトリクス基板11の面と反対側の面には、図示されないバックライトユニットが設けられている。
【0032】
図1(b)に示すアクティブマトリクス基板11には、データ信号線13と走査信号線14とが形成されている。データ信号線13と走査信号線14とは、互いに交差するように配置され、それらが交差する交差部毎に、スイッチング素子として機能するTFTと画素電極15とが設けられている。また対向基板21と接する交差部直上にはアクティブマトリクス基板11と対向基板21との間隔であるセルギャップを正確に維持するためのフォトスペーサ51が形成されている。走査信号線14には、TFTのゲート電極181が接続され、データ信号線13には、TFTのソース電極182が接続されている。また、画素電極15は、コンタクトホール16を介してTFTのドレイン電極183に接続されている。TFTがオン状態になると、データ信号に応じた電圧がデータ信号線13からTFTを介して、画素電極15と共通電極25によって構成される画素容量に与えられる。この画素容量に与えられた電圧は、TFTがオフ状態にある間、画素容量に保持され、この電圧により液晶の光透過率が制御される。
【0033】
また、TFT近傍を含む画素電極の上には反射電極17が形成されている。この反射電極17へ入射しこれにより反射される外光、および図示されないバックライトユニットから出射され反射電極17等が配置されていない光透過領域を透過する光のうちの一方または双方の光は、各画素毎に光透過率を制御された液晶層を介して外部に出射され、表示画像を形成する。なお、特に反射型の液晶表示装置では、透明電極である画素電極15に代えて、外光を反射する金属製の画素電極を使用し、反射電極17を省略してもよい。
【0034】
<2. 液晶表示装置の製造工程>
図2は、本実施形態における液晶表示装置10の部分断面図である。この図2は、説明の便宜のため、図1(b)のA−A断面のうち、走査信号線14に沿った方向の断面のみを示すものであって、かつ大きさや形状等が見やすくなるよう適宜変更して示されている。
【0035】
この図に示されるガラス基板12上には、前述したコンタクトホール16やフォトスペーサ51、反射電極17直下の複数の曲面を有するマルチギャップ部170などが形成されているが、これらの特徴的な立体形状は層間絶縁膜19をフォトリソグラフィ処理により部分的に取り除くことにより形成される。このようにアクティブマトリクス基板11を製造する際に一般的に使用される層間絶縁膜19およびそれに対するフォトリソグラフィ処理を使用することにより、上記立体形状を形成するために新たな材料および工程を追加すること必要がなく、製造コストを下げることができる。ここで上記マルチギャップ部170の曲面は、基板面に対して凸の曲面であるが、凹の曲面であってもよいし、これらが複合されて構成されていてもよい。また多数の平面から構成されていてもよい。
【0036】
なお、このマルチギャップ部170により反射電極17直上の液晶層の厚みd2は、(コンタクトホール16を除く)それ以外の液晶層の厚みd1の半分となっている。これは液晶層を通って反射電極17へ入射しこれにより反射されて液晶層を通過する外光の光路長を、図示されないバックライトユニットから出射され反射電極17等が配置されていない光透過領域を透過する光の光路長と等しくするためである。この構成により、正確な階調を表現することができ、また色純度を向上させることができる。続いて、上記立体形状の形成過程を含む本液晶表示装置の製造工程について説明する。
【0037】
まず、ガラス基板12の表面に、例えばTi(チタン)/Al(アルミニウム)/Tiからなる積層膜をスパッタ法により成膜する。なお、ガラス基板に代えて石英やプラスチック等の透明な絶縁体からなる絶縁性基板を使用してもよいし、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、および銅(Cu)などまたはこれらの物質に微量の不純物を添加した合金を単層でまたは積層させて使用してもよい。
【0038】
次に、積層膜上にレジストを塗布し、露光および現像を行うことによってゲート電極181のエッチング時のマスクとなるレジストパターンを形成する。形成したレジストパターンをマスクとして、Ti、Al、Tiの順にドライエッチングを行った後、レジストパターンを剥離する。この結果、ガラス基板12上にゲート電極181が形成される。
【0039】
さらにゲート電極181を覆うように、例えばSiNx膜からなるゲート絶縁膜を形成する。SiNx膜は、SiH4(モノシラン)、NH3(アンモニア)およびN2(窒素)の混合ガスを用いて、プラズマCVD法(Chemical Vapor Deposition)により成膜される。このゲート絶縁膜の表面に、非晶質シリコン膜を結晶化させた多結晶シリコン膜や微結晶シリコン膜などの半導体膜を成膜する。この半導体膜を積層した後、プラズマCVD法により、N型不純物として例えばP(リン)が高濃度にドーピングされた(微結晶)シリコン膜からなる高濃度不純物膜を積層する。
【0040】
次に上記高濃度不純物膜の上面に、スパッタ法によって、例えばMo(モリブデン)等からなる金属膜を形成する。この金属膜の上面にさらにレジストパターンを形成し、形成したレジストパターンをマスクとして、ドライエッチングを行った後、レジストパターンを剥離する。この結果、ガラス基板12上にソース電極182およびドレイン電極183が形成される。なお、これまでの製造工程は周知であるので詳しい説明は省略する。
【0041】
続いて例えば有機樹脂からなる層間絶縁膜19を例えば3〜4μm程度の膜厚で形成する。上記有機樹脂の組成や膜厚は、形成後の表面がほぼ平坦になるような条件に設定するのが好ましい。具体的には層間絶縁膜19は、たとえばPET(ポリエチレンテレフタレート)からなるベースフィルム上に層状に形成された有機樹脂を基板に転写したのち、ベースフィルムを除去して形成する方法や、ノズルから有機樹脂を基板に吐出し、スピンコート法を用いて塗布する方法などの周知の方法で形成することができる。
【0042】
ここで、上記有機樹脂には、感光性の素材が使用され、所定の膜厚になるように塗布および成膜された後、特徴的な構成を有するフォトマスクを使用することにより、特徴的な形状を有するフォトスペーサ51、マルチギャップ部170、およびコンタクトホール16を形成することができる。ここでは現像工程により感光部分が脱落する(溶解する)ポジ型の感光性素材が使用されるものとするが、現像工程により感光部分のみが脱落しない(溶解しない)ネガ型の感光性素材が使用されてもよい。以下、図3ないし図5を参照してその製造工程について詳しく説明する。
【0043】
図3は、露光前の層間絶縁膜とフォトマスクとを示す断面図である。この図3では、露光後における層間絶縁膜19の表面の位置が点線で示されており、図中上部の矢印方向に光源からフォトマスク60を通して層間絶縁膜19に対して光が照射される。ここで光源からフォトマスク60には均等に光が照射されるにもかかわらず、層間絶縁膜19は均等に感光が進まない。それは、層間絶縁膜19が図3に示す点線の位置まで感光が進むように、言い換えればそれ以上は感光しないように、フォトマスク60の光透過度は部分的に小さくなっている。このように(膜厚を調整するなどして)膜構造上光透過度が異なる部分を有するフォトマスクは、ハーフトーンマスクと呼ばれる。
【0044】
もっとも、ハーフトーンマスクとは、光透過率が100%の透明部分、および遮光膜が形成されている光透過率が0%の不透明部分のほかに、典型的には所定の光透過率に調整された膜構造を有する半透明部分を含む、3段階の光透過率を有する部分を備えるフォトマスクを指すのが一般的である。なお、上記半透明部分の膜構造は、光をやや透過するように膜厚が調整された薄い遮光膜や、光を半透過する物質からなる半透過膜で形成されている。
【0045】
以上のような従来のハーフトーンマスクとは異なり、本実施形態で使用されるフォトマスク60は、上記透明部分および不透明部分以外の部分の光透過率は0%より大きく100%より小さい透過率を複数(ここでは無段階に)有するハーフトーンマスクである。このフォトマスク60は、典型的にはパターンの位置により連続的に光透過率が変化する半透明部分を含んでいる。さらに図4および図5を参照して詳しく説明する。
【0046】
図4は、露光途中のフォトスペーサ近傍の層間絶縁膜とフォトマスクとを示す断面図であり、図5は、露光および現像終了後のフォトスペーサ近傍の層間絶縁膜とフォトマスクとを示す断面図である。
【0047】
図4および図5に示されるフォトマスク60に付された範囲p1〜p5の色は、黒くなるほど(濃くなるほど)光透過率が小さくなることを意味している。したがって、その色が白の場合は光透過率100%を意味し、黒の場合は光透過率0%を意味している。ここでは、範囲p3が黒色で示されており、光透過率が0%の不透明部分であることがわかる。
【0048】
また図4において、実線は、露光途中(ここでは露光開始から露光完了までのほぼ中間時点)での層間絶縁膜19の感光されていない部分と既に感光された部分との境界部分を示し、点線は、露光終了時の上記境界部分を示している。したがって、もし図4に示す状態で露光を終了し現像すれば、実線の位置が層間絶縁膜19の表面となる。
【0049】
この図4と図5を参照すればわかるように、フォトマスク60のうち、範囲p1,p5は、上記半透明部分であって比較的色が薄い、すなわち光透過率が大きく、かつこの範囲内では位置に応じて色が変化していない、すなわち光透過率が変化していない。したがって、対応する層間絶縁膜19には比較的大きい強度の光が一様に照射されるため、感光が一様にかつ比較的進んでいる。そのため、現像液により感光部分が溶解された後は、平らでかつ低い(すなわちガラス基板12に近い位置にある)領域を有する層間絶縁膜19が形成される。
【0050】
また範囲p3は、一様に上記不透明部分であるので、対応する層間絶縁膜19には光が照射されず感光が全く進まない。したがって、現像後は平らでかつ高い(すなわちガラス基板12から遠い位置にある)領域を有する層間絶縁膜19が形成される。
【0051】
さらに領域p2は図の右へ行くほど、また領域p4は図の左へ行くほど色が黒くすなわち光透過率が大きくなっているので、範囲p3に近い層間絶縁膜19の対応する領域ほど、強度が小さくなる光が照射されるため、感光が進まなくなる。そのため、現像後は斜めの(すなわちガラス基板12の面に対して垂直方向から傾いている)平面領域を有する層間絶縁膜19が形成されることになる。
【0052】
このようにしてフォトスペーサ51を形成すれば、フォトスペーサ51の形状に先細りのテーパを付すことができる。そうすれば、フォトスペーサ51の先端部分(範囲p3に対応する部分)がブラックマトリクス24に隠れる程度の大きさであれば表示部において目立ちにくくすることができ、かつ構造的に安定させることができる。その結果、本液晶表示装置の表示品質を向上させることができる。
【0053】
また、図3に示すフォトマスク60の半透明部分を上記のように構成することにより、同様にコンタクトホール16の側面を傾け、テーパを付すことができる。したがって、画素電極15を形成したときにその側面に大きな段差が生じることがなくステップカバレッジ性を向上させることができるので、画素電極15の切断や断裂を抑制することができる。その結果、本液晶表示装置の表示品質を向上させることができる。
【0054】
さらに、図3に示すフォトマスク60の半透明部分の光透過率を上記のように位置に対して一定の変化率で変化させるのではなく、その変化率を適宜変化させるように光透過率を変化させれば、現像後においてマルチギャップ部170の表面を曲面形状にすることができる。そうすれば反射電極17を同じ曲面形状にすることができるので、鏡面反射成分(すなわち基板面が平面である場合の反射光の成分)を少なくして良好な散乱反射特性を得ることができ、そのため高いコントラスト比を有し、紙に近い白(ペーパーホワイト)が表示可能な高い品位の表示特性を得ることができる。
【0055】
なお、このマルチギャップ部170の平面形状は、円形もしくは円形に近い多角形または楕円もしくは楕円に近い多角形とすれば良好な散乱反射特性が得られるが、これらの形状は規則的な配列パターンとすることが好ましい。もしランダムな配列パターンとすれば、反射電極のカバレッジ性が(その曲率によっては)低下したり、液晶の配向方向に悪影響を与えることがあるからである。
【0056】
以上のように適宜の形状になるよう層間絶縁膜19を露光し現像したのち、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明な金属膜をスパッタ法によって形成し、透明な金属膜をパターンニングして画素電極15を形成する。さらにその上からスパッタ法などによって所定の位置に反射電極17を形成する。なお、この反射電極17は、反射率の高い物質、例えばAl、Agまたはこれらの物質に微量の不純物を添加した合金が使用される。また、密着力や画素電極15である金属薄膜との電気的コンタクト特性を向上させるために、下層にCr、Mo、Ta、TiまたはWなどの金属薄膜を設けた積層構成としてもよい。
【0057】
<3. 効果>
以上のように、本実施形態の液晶表示装置には、ハーフトーンマスク60を使用したフォトリソグラフィ処理により、良好な散乱反射特性を有する所定の曲面形状を有するマルチギャップ部170上に形成される反射電極17や、表示部において目立ちにくい立体形状を有するフォトスペーサ51、ステップカバレッジ性を向上させることができるテーパ面を有するコンタクトホール16を形成することができるので、液晶表示装置の表示品質を向上させることができる。
【0058】
<4. 変形例>
<4.1 主たる変形例>
図6は、上記一実施形態の変形例における露光および現像終了後のフォトスペーサ近傍の層間絶縁膜とフォトマスクとを示す断面図である。図6に示されるフォトマスクは、例えば図5に示されるハーフトーンマスク60とは異なって、位置によって膜厚等の膜構造が異なることはなく、所定範囲内に存在する透明部分の面積と不透明部分との面積の割合が異なるものであり、グレイトーンマスクと呼ばれる。ここでは説明の便宜上、このグレイトーンマスク65上の領域p1〜p5の各光透過率およびその位置に応じた変化量は、ハーフトーンマスク60上の領域p1〜p5の各光透過率およびその位置に応じた変化量と同一であるものとする。
【0059】
このグレイトーンマスク65は、上記フォトリソグラフィ処理において使用される露光機の解像度限界以下の範囲内に透明部分と不透明部分とが所定の面積割合となるように構成されている。この面積割合は、1つの透明部分に対する1つの不透明部分の大きさにより規定されてもよいし、同一の大きさの不透明部分が形成される数により規定されてもよい。
【0060】
このように露光機の解像度限界以下の範囲内に透明部分と不透明部分とが形成される場合、当該範囲に対応する層間絶縁膜19の範囲内に感光される部分と感光されない部分とが生じることはなく、上記面積割合により規定される光透過量に対応する光透過度で、当該範囲に対応する層間絶縁膜19の範囲内に一様に光が照射されることになり、その光強度に応じて感光が進むことになる。したがって、グレイトーンマスク65は、ハーフトーンマスク60と全く同一の機能を有していると言え、層間絶縁膜19に形成したい上記立体形状に合わせて適宜に上記透明部分と不透明部分とを配置すればよい。このようにグレイトーンマスク65は、ハーフトーンマスク60と置き換えることができる。
【0061】
また、このことから、上記フォトリソグラフィ処理に使用されるマスクは、例えばハーフトーンマスク60の部分と、グレイトーンマスク65の部分とが含まれる構成であってもよい。すなわち、上記フォトリソグラフィ処理に使用されるマスクは、層間絶縁膜19に形成したい立体形状に合わせて適宜に設定される多数の階調を有する多階調マスクであればよい。
【0062】
<4.2 その他の変形例>
上記実施形態では、層間絶縁膜19に対するフォトリソグラフィ処理により複数の各種立体構造物が同時に形成される構成であるが、アクティブマトリクス基板11において使用可能な層間絶縁膜19以外の絶縁層であっても、一回の露光および現像工程により、上記複数の各種立体構造物が形成することができるものであればよい。
【0063】
上記実施形態では、マルチギャップ部170上に形成される反射電極17や、フォトスペーサ51、コンタクトホール16が所望の立体形状に形成されているが、その他の立体構造物、例えば液晶の配向方向を規定するための土手として機能する立体構造物や、液晶の配向方向の中心となるリベットと呼ばれる立体構造物を、同一のフォトリソグラフィ処理により形成してもよい。そうすれば、これらの立体構造物により表示装置の表示品質を向上させることができ、またこれらの立体構造物を別に形成する工程を省略することができる。
【0064】
また、上記実施形態の液晶表示装置は、アクティブマトリクス基板面に対して垂直方向から傾いた傾斜平面を有するフォトスペーサ51やコンタクトホール16、または曲面を有するマルチギャップ部170上に形成される反射電極17を備えるが、これらの傾斜平面や曲面は、基板面に対して垂直な複数の平面と平行な複数の平面とにより、いわば階段状に形成されていもよい。このような構造は、微細に見れば階段状に形成されているとしても、全体として見れば傾斜平面や曲面としてよいし、反射電極17の良好な散乱反射特性を有する面や、フォトスペーサ51の表示部において目立ちにくい側面、またはコンタクトホール16のステップカバレッジ性を向上させるテーパ面は、上記のような階段形状であっても実現することができるからである。
【0065】
なお、上記実施形態における立体構造は、液晶表示装置だけでなく、2つの基板に間に有機EL(Organic Electro Luminescence)層が挟持される有機EL表示装置などにも使用することができる。
【符号の説明】
【0066】
10…液晶表示装置
11…アクティブマトリクス基板
12…ガラス基板
15…画素電極
16…コンタクトホール
17…反射電極
19…層間絶縁膜
21…対向基板
30…液晶層
51…フォトスペーサ
60…ハーフトーンマスク
65…グレイトーンマスク
170…マルチギャップ部
181…ゲート電極
182…ソース電極
183…ドレイン電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示する電気光学素子と、当該電気光学素子を挟持する平面を有する第1および第2の基板とを備えるアクティブマトリクス型の表示装置であって、
前記第1の基板は、
画像を表示するための表示部において複数の映像信号線と複数の走査信号線との交差部にそれぞれ対応してマトリクス状に配置された複数の画素形成部および当該複数の画素形成部に設けられた複数の画素電極と、
表面の一部に前記複数の画素電極が形成されるとともに、前記平面に対して平行または垂直でない法線を有する傾斜平面また曲面を含む複数種類の立体構造がそれぞれ複数形成される、感光性の素材からなる絶縁層と
を含むことを特徴とする、アクティブマトリクス型表示装置。
【請求項2】
前記絶縁層は、前記立体構造における前記複数種類のうちの1つとして、前記第2の基板との距離を一定に保持するためのスペーサを複数含み、
前記スペーサは、前記第2の基板と接するべき面よりも、前記第1の基板における前記平面との接線で囲まれた面の方が大きくなるように、前記平面に対して平行または垂直でない法線を有する面が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のアクティブマトリクス型表示装置。
【請求項3】
前記絶縁層は、前記立体構造における前記複数種類のうちの1つとして、前記複数の画素電極のうちの1つと当該画素電極に対応する画素形成部とを接続するためのコンタクトホールを複数含み、
前記コンタクトホールは、前記第1の基板における前記平面との接線で囲まれた面である開口面よりも、底面の方が大きくなるように、前記平面に対して平行または垂直でない法線を有する面が形成されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のアクティブマトリクス型表示装置。
【請求項4】
前記電気光学素子は、液晶からなり、
前記絶縁層は、前記立体構造における前記複数種類のうちの1つとして、表面の少なくとも一部に外光を反射するための金属反射膜または当該金属反射膜に接する前記画素電極を形成されるマルチギャップ部を含み、
前記マルチギャップ部は、複数の曲面となるよう、前記平面に対して平行または垂直でない法線を有する面が形成されていることを特徴とする、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のアクティブマトリクス型表示装置。
【請求項5】
前記電気光学素子は、液晶からなり、
前記絶縁層は、前記立体構造における前記複数種類のうちの1つとして、前記液晶の配向方向を規定するための構造物および前記配向方向の中心となる構造物のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項2から請求項4までのいずれか1項に記載のアクティブマトリクス型表示装置。
【請求項6】
前記絶縁層は、前記第1の基板に形成される層間絶縁膜であることを特徴とする、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のアクティブマトリクス型表示装置。
【請求項7】
画像を表示する電気光学素子と、当該電気光学素子を挟持する平面を有する第1および第2の基板とを備えるアクティブマトリクス型表示装置の製造方法であって、
前記第1の基板上に前記電気光学素子を駆動するための薄膜トランジスタを形成する工程と、
前記第1の基板面に沿って平坦となるよう、感光性を有する絶縁層を形成する工程と、
光透過度を少なくとも複数段階変化させる半透過部を含む多階調マスクを用いて、前記平面に対して平行または垂直でない法線を有する傾斜平面または曲面を含む複数種類の立体構造を前記絶縁層に形成する露光・現像工程と、
前記第2の基板の対向する面に設けられる共通電極との間に電圧を印加しまたは電流を流すための画素電極を形成する工程と
を備え、
前記傾斜平面または曲面は、前記多階調マスクに含まれる半透過部の光透過度に応じて前記絶縁層の感光が進むことにより形成されることを特徴とする、アクティブマトリクス型表示装置の製造方法。
【請求項8】
前記多階調マスクは、前記半透過部としてハーフトーンマスクを含むことを特徴とする、請求項7に記載の、アクティブマトリクス型表示装置の製造方法。
【請求項9】
前記多階調マスクは、前記半透過部としてグレイトーンマスクを含むことを特徴とする、請求項7または請求項8に記載の、アクティブマトリクス型表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−70079(P2011−70079A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222448(P2009−222448)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】