液晶表示装置の製造方法
【課題】液晶表示装置の製造方法において、ディスクリネーションの発生を抑制するために、櫛歯型形状の開口部電極の開口部の長手方向端部が円弧状形状となることを抑制できるようにすることである。
【解決手段】櫛歯型形状の開口部を有する開口部電極形成の手順は、まず開口部電極膜が形成され(S10)、感光性レジスト膜が形成され(S12)、次に第1マスクを用いて第1露光が行われ(S14)、ついで第2マスクを用いて第2露光が行われる(S16)。第1マスクは、櫛歯型形状の他方側端部がそれぞれ閉じているものに対応したスリット型形状の開口部を有するものであり、第2マスクは、第1マスクに位置決めされ、そのスリット型形状の他方側端部を開くように、所定の傾斜角度を有する傾斜パターンを有するマスクである。第1露光と第2露光の後、レジスト膜の現像が行われる(S18)。
【解決手段】櫛歯型形状の開口部を有する開口部電極形成の手順は、まず開口部電極膜が形成され(S10)、感光性レジスト膜が形成され(S12)、次に第1マスクを用いて第1露光が行われ(S14)、ついで第2マスクを用いて第2露光が行われる(S16)。第1マスクは、櫛歯型形状の他方側端部がそれぞれ閉じているものに対応したスリット型形状の開口部を有するものであり、第2マスクは、第1マスクに位置決めされ、そのスリット型形状の他方側端部を開くように、所定の傾斜角度を有する傾斜パターンを有するマスクである。第1露光と第2露光の後、レジスト膜の現像が行われる(S18)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶表示装置の製造方法に係り、特に、液晶分子を介して対向する一対の基板のうち片方の基板に前記液晶分子を駆動する一対の電極が設けられる液晶表示装置の製造に用いられ、前記一対の電極のうち少なくとも一方側電極に電界を通す開口部として、開口部の長手方向の一方側端部が閉じており、他方側端部が開いている櫛歯型形状を形成してこれを開口部電極とする開口部電極形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置の表示方式としては従来TN(Twisted Nematic)方式が広く用いられてきているが、この方式は表示原理上、視野角に制限がある。これを解決する方法として、液晶分子を駆動するための一対の電極として同一基板上に画素電極と共通電極とを形成し、この画素電極と共通電極との間に電圧を印加し、基板にほぼ平行な電界を発生させ、液晶分子を基板面に平行な面内で駆動する横電界方式が知られている。
【0003】
横電界方式には、IPS(In Plane Switching)方式と、FFS((Fringe Field Switch)方式が知られている。IPS方式では、櫛歯状の画素電極と櫛歯状の共通電極とを組み合わせて配置される。櫛歯状とは、電界を通すための開口部として、開口部の長手方向の一方側端部が閉じており、他方側端部で開いているものであり、開口部を複数設ける場合に、各開口部のそれぞれの一方側端部は相互に接続されるので、1つの櫛歯状となる。
【0004】
一方、FFS方式では、絶縁層を介して形成された上部電極と下部電極について、いずれか一方を共通電極に割り当て、他方を画素電極に割り当て、上部電極を開口部電極として、例えば櫛歯状形状、あるいはスリット形状等の開口部が形成される。ここでスリット形状とは、電界を通すための開口部として、開口部の長手方向の両端部がそれぞれ閉じていて細長い溝状開口部となっているものである。溝状開口部を複数設ける場合は、相互に分離して配置される。
【0005】
このような開口部は、電極層薄膜をエッチングすることで形成されるが、例えば、開口部を細長い溝形状とするときは、その長手方向の端部であるエッジ部分は、丸みを帯びてラウンド形状あるいは円弧状の形状となることが多い。例えばFFS方式の場合、下部電極から、この開口部を通って開口部電極である上部電極に向かう電界は、この開口部のパターンに沿って流れるので、エッジ部分では円弧状のパターンに沿って横方向電界が形成されることになる。したがって、例えば、ラビング処理等によって液晶分子の初期配向を開口部の長辺にほぼ平行とし、横方向電界をかけて液晶分子を駆動すると、開口部の長辺の直線部分では、初期配向の状態から長辺に垂直な方向に回転するが、開口部のエッジ部分では、初期配向の状態から円弧状形状に垂直な方向に回転することになる。
【0006】
エッジ部分の円弧状形状に沿って液晶分子が初期配置の状態から回転するとき、液晶分子の回転方向が逆転することが生じ、場所によって液晶分子の回転方向が異なることが生じる。この回転方向が場所によって異なる現象はディスクリネーションと呼ばれる。回転方向が異なる境界部分においては、液晶分子が所望でない方向に回転し、あるいは回転できないために、透過率が低下し、目視で境界線が認識されることがあり、これらは、転傾線、あるいは転傾欠陥といわれるが、単にこれをディスクリネーションということもある。
【0007】
例えば、特許文献1には、FFS液晶表示装置において、上部基板のブラックマトリクスと下部基板の画素電極のエッジ部とが所定領域オーバーラップされこれらの両基板間に液晶が介在する構成の場合、ブラックマトリクスと画素電極との間の電気場干渉によって、画素電極のエッジ部の端部から中心部に行くにつれて液晶分子の捩れ角度がほぼ90度程度になって垂直方向に配置されるが、エッジ部が露光工程上の限界により曲線形状を有するので、ホワイト諧調のとき、ラビングの跡、すなわちディスクリネーション(転傾線)が発生することを指摘している。
【0008】
なお、ディスクリネーションについては、本発明に係る実施の形態と比較して、後にさらに詳述する。
【0009】
【特許文献1】特開2005−107535号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように、ディスクリネーションが発生すると、その部分で透過率が低下する。一般的には、ディスクリネーションが発生すると、画質が低下したと評価されることがある。上記のように、ディスクリネーションは、開口部電極の開口部の長手方向端部が、エッチング等のパターン形成において、矩形形状とすべきところが円弧状形状となることに起因する。
【0011】
本発明の目的は、開口部電極の開口部の長手方向端部が円弧状形状となることを抑制できる液晶表示装置の製造方法を提供することである。また、他の目的は、ディスクリネーションの発生が抑制される液晶表示装置の製造方法を提供することである。以下の手段は、上記目的の少なくとも1つに貢献する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る液晶表示装置の製造方法は、液晶分子を介して対向する一対の基板のうち片方の基板に前記液晶分子を駆動する一対の電極が設けられる液晶表示装置の製造に用いられ、前記一対の電極のうち少なくとも一方側電極に電界を通す開口部として、開口部の長手方向の一方側端部が閉じており、他方側端部が開いている櫛歯型形状を形成してこれを開口部電極とする開口部電極形成方法であって、前記開口部電極を構成する膜を形成する膜形成工程と、前記膜を覆って感光性レジストを形成するレジスト形成工程と、前記櫛歯型形状の前記開口部の前記長手方向に対応して、前記長手方向の両端部がそれぞれ閉じている細長い溝状開口部を複数分離して配置されるスリット型形状に対応する透光パターンまたは非透光パターンを有する第1マスクを用いて、前記感光性レジストを露光する第1露光工程と、前記櫛歯型形状の前記開口部の前記他方側端部に対応して、前記第1マスクの前記複数の溝状開口部の両端部のうちの他方側端部をそれぞれ開いて相互に接続するように、前記溝状開口部の長手方向に対し所定の傾斜角度で交差する所定形状に対応する透光パターンまたは非透光パターンを有する第2マスクを用いて、前記感光性レジストを再度露光する第2露光工程と、第1露光工程と第2露光工程に基づいて、前記感光レジストについて前記櫛歯状型形状を形成し、前記櫛歯型形状の開口部を有する開口部電極を形成することを特徴とする。
【0013】
上記構成により、液晶表示装置の製造方法は、櫛歯型形状を有する感光レジストを第1露光工程と第2露光工程の2度の露光によって形成する。第1露光工程は、スリット型開口部に対応するパターンを有する第1マスクを用い、第2露光工程は、櫛歯型形状において開口部が開いている他方側端部のそれぞれの所定領域について、溝状開口部の長手方向に対し所定の傾斜角度で交差する所定形状に対応するパターンを有する第2マスクを用いる。これにより、従来技術において露光パターンが円弧形状等となる開口部の長手方向の端部について、開口部の長手方向に所定の傾斜角度を有する形状とすることができる。したがって、開口部電極の開口部の長手方向端部が円弧状形状となることを抑制でき、ディスクリネーションの発生を抑制することができる。
【0014】
また、本発明に係る液晶表示装置の製造方法において、前記第2露光工程は、前記傾斜角度が、前記液晶分子を初期配向するラビング方向に対して0度と90度の間の角度範囲であり、櫛歯形状が形成できる角度範囲である前記第2マスクを用いることが好ましい。
【0015】
ディスクリネーションは、開口部の長手方向とラビング方向との関係で、開口部の接線方向がラビング方向となす角度が0度から−90度の間となる領域に起こる。上記構成では、開口部の端部において、傾斜角度がラビング方向に対し0度と90度の間の角度範囲であるので、ディスクリネーションの発生を抑制できる。
【0016】
また、本発明に係る液晶表示装置の製造方法において、前記第1露光工程は、前記一方側端部の前記開口部が拡張されている前記第1マスクを用いることが好ましい。
【0017】
開口部の一方側端部においては、エッチング工程等において円弧状形状となりやすいので、元々の開口部を拡張する。これにより、開口部電極形成工程において、開口部の長手方向端部が円弧状形状となることを抑制でき、ディスクリネーションが抑制された液晶表示装置を製造できる。
【0018】
また、本発明に係る液晶表示装置の製造方法において、前記第1露光工程は、前記長手方向端部の延びる方向が前記液晶分子を初期配向するラビング方向となす傾斜角度が正方向の角度であるときは、前記溝状開口部の長手方向の延びる方向をX軸としその垂直方向をY軸とした円形の第2象限部分に対応する前記一方側端部の前記開口部が拡張され、前記傾斜角度が負方向の角度であるときは、前記円形の第3象限部分に対応する前記一方側端部の前記開口部が拡張されている第1マスクを用いることが好ましい。
【0019】
ディスクリネーションは、開口部の長手方向とラビング方向との関係で、開口部の長手方向の一方側端部では、端部の左上隅、あるいは左下隅に現れる。上記構成により、ディスクリネーションの現れる可能性のある部分の開口部を拡張するので、その部分が円弧状形状となることを抑制でき、ディスクリネーションが抑制された液晶表示装置を製造できる。
【0020】
また、本発明に係る液晶表示装置の製造方法において、前記開口部が拡張される部分は、前記開口部が拡張されないときの溝状開口部の基本パターン部の最小パターン寸法よりも小さいパターン寸法を有することが好ましい。
【0021】
例えば、光近接効果を用いることで、基本パターン部は露光装置の解像度で処理できるパターン寸法とし、開口部を拡張するパターンを露光装置の解像度以下のパターン寸法とすることができる。これにより、開口部の長手方向端部について、露光装置の解像度以下の寸法での形状の微調整が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。以下では、 液晶分子を介して対向する一対の基板のうち片方の基板に液晶分子を駆動する一対の電極が設けられる構成として、FFS方式を説明する。すなわち、素子側基板に絶縁層を介して上部電極と下部電極を設け、上部電極を開口部電極として説明する。ここで、下部電極を画素電極とし、開口部電極である上部電極を共通電極として説明するが、これを逆の構成、すなわち、下部電極を共通電極、開口部電極である上部電極を画素電極としてもよい。また、FFS方式の構成の他に、IPS方式の構成としてもよい。
【0023】
また、以下のFFS方式では、共通電極を各画素ごとに分けて配置しているが、これを各画素ごとに分けない構成としてもよい。
【0024】
本発明の実施の形態は、液晶表示装置において櫛歯型形状を有する開口部電極を形成するための製造方法に関するものであるが、横電界駆動方式の液晶表示装置においてディスクリネーションを抑制することができる製造方法を提供するものであるので、本発明の実施の形態である製造方法の説明に先立ち、横電界駆動方式におけるディスクリネーションが発生する原理的機構について、液晶表示装置の構成を含めて、図1から図4を用いて説明する。
【0025】
ここでは、ディスクリネーションが発生する原理的機構を説明するために、開口部電極の形状として最も基本的なスリット型形状を有する開口部電極について最初に述べる。ついで、櫛歯状形状を有する開口部電極についてスリット型形状の場合との相違点を中心に述べ、その後に、本発明に係る実施の形態の製造方法及びその製造法によって形成される開口部電極について述べる。したがって、図1から図4においては、開口部電極形成のための露光工程は一般的なものとし、本発明の実施の形態に係る2段階の露光工程を用いていない。
【0026】
図1は、FFS方式のカラー液晶表示装置において1サブ画素の部分の断面図である。図2は、図1の断面図に対応する平面図であり、1画素に対応して3サブ画素分が示されている。図2では、開口部として、スリット型形状のものが示されている。図3は、FFS方式において、液晶分子を駆動する電界Eの様子を示す図である。図4は、ディスクリネーションの発生する様子を説明する図である。
【0027】
図1は、上記のように、液晶表示装置10の断面図で、1サブ画素の部分が示されている。ここで、サブ画素とは、例えば、R、G,Bでカラー表示を行う場合、R、G,Bに対応する各表示部分のことであり、いまの例では、Rのサブ画素、Gのサブ画素、Bのサブ画素の3つを単位として、1画素となる。なお、サブ画素をサブピクセルと呼ぶ場合もあり、その場合には、上記の1画素は、1ピクセルと呼ばれることになる。図1に示されるように、液晶表示装置10は、素子側基板20、対向側基板60、素子側基板20と対向側基板60との間に挟持される液晶分子50を含んで構成されている。
【0028】
対向側基板60は、液晶表示装置10において、ユーザに面する側である。対向側基板60は、いくつかの膜が積層されて構成される。図1の例では、対向ユーザに面する側から素子側基板20の側に向かって、ガラス基板62、ブラックマトリクス64、カラーフィルタ66を含んで構成される。図1の断面図において、ブラックマトリクス64は、カラーフィルタ66の陰に隠れ、あるいはその下に配置されるので、破線で示してある。これらの材料、寸法、形成方法等は、一般的なアクティブマトリクス型液晶表示装置の製造方法として周知のものを用いることができるので、詳細な説明を省略する。
【0029】
素子側基板20は、TFT基板あるいはTFT側基板とも呼ばれ、スイッチング素子80であるTFT素子が配置される側の基板で、対向側基板60に対する基板である。ここでは、液晶分子50を駆動する一対の電極が配置される基板でもある。素子側基板20の上には、周知の膜形成技術と、パターン形成技術によって、多層構造にパターン化された複数の膜が積層されている。
【0030】
図1の例では、ユーザに面していない側から液晶分子50の側に向かって、ガラス基板22、半導体層24、ゲート絶縁膜26、同一工程で形成されるゲート電極28、共通電極配線29、層間絶縁膜30、同一工程で形成されるソース・ドレイン配線32,33及び共通電極接続部34、絶縁膜36、画素電極38、FFS絶縁膜40、共通電極42が順次形成されている。これらの材料、寸法、形成方法等は、一般的なアクティブマトリクス型液晶表示装置の製造方法として周知のものを用いることができるので、詳細な説明を省略する。
【0031】
なお、図1には図示が省略されているが、共通電極42の上には配向膜が設けられる。対向側基板60の液晶分子50に向き合う面についても同様に配向膜が設けられる。
【0032】
図2は、図1の断面図に対応する平面図である。ここでは、3つのサブ画素からなる1つの画素について示されている。なお、図1は、図2に示すA−A線に沿った断面図に相当する。図1と同様の要素には同一の符号を付した。
【0033】
各サブ画素には、一部がゲート電極28となるゲートラインと、データライン35とが互いに直交するようにして配線され、その交差箇所にスイッチング素子80であるTFT素子が配置される。ゲートラインは、スイッチング素子80のところで、図1に示されるゲート電極28となり、データライン35は、図1に示されるソース・ドレイン配線32に接続される。このように、液晶表示装置10は、複数のゲートラインと複数のデータライン35との各交差箇所にスイッチング素子80であるTFT素子がそれぞれ配置されており、いわゆるアクティブマトリクス表示装置である。なお、ゲートラインは、走査ライン、走査線、走査信号線とも呼ばれ、データライン35は、信号ライン、信号線、ビデオ信号ライン、映像信号線等とも呼ばれる。
【0034】
スイッチング素子80であるTFT素子は、図1に示される半導体層24の上に形成されたゲート絶縁膜26と、その上に設けられるゲート電極28、及びソース・ドレイン配線32,33に接続されるソース・ドレインとから構成されるトランジスタ素子である。なお、TFTとは、Thin Film Transistorの略語である。スイッチング素子80であるTFT素子のソース・ドレインは、いずれか一方、例えばドレインがデータライン35に接続され、他方、例えばソースが画素電極38に接続される。ドレインとソースとは互換性があるので、ソースがデータライン35に接続され、ドレインが画素電極38に接続されるものとしてもよい。スイッチング素子80であるTFT素子は、ゲートラインが選択されることでドレインとソース間が導通し、上記の例でドレインに接続されるデータライン35からのビデオ信号が画素電極38に供給される。
【0035】
ここで、画素電極38は、図2において一点鎖線で示されており、データライン35と、共通電極配線29とで囲まれた領域に配置されている。また、共通電極42は、図2において太い実線で示されており、データライン35を除くサブ画素全領域に配置される。なお、図2の例では、共通電極42は、各サブ画素ごとに分離されて形成される様子が示されているが、場合によっては、これを各サブ画素にまたがって形成するものとできる。
【0036】
そして、共通電極42には、スリット43が形成される。スリット43は、図1で示されるように、FFS絶縁膜40を介して形成された上部電極である共通電極42と下部電極である画素電極38との間に電圧を印加し、その電界によって液晶分子を駆動するための開口部である。図2において、スリット43は、共通電極42において複数設けられ、それぞれのスリット43は、開口部の長手方向を平行として、相互の間が分離されて配置される。スリット43は、その長手方向の両端部がそれぞれ閉じている細長い溝状開口部であるので、長手方向の端部のところがエッチング加工の際に丸みを帯びる。以後、この丸みを帯びた端部をエッジ部分と呼ぶことにする。ディスクリネーションは、このエッジ部分に発生する。
【0037】
図3は、共通電極42と画素電極38との間にかかる電界Eの様子を模式的に説明する図である。ここでは、共通電極42に設けられるスリット43を通り、FFS絶縁膜40を介して画素電極38に向かう電界Eが示されている。なお、電界の向きは、この逆、すなわち画素電極38からスリット43を通り共通電極42に向かう場合もある。
【0038】
図4は、図2のB部分の拡大図で、スリット43の端部であるエッジ部分において、いわゆるディスクリネーションが生じる様子を模式的に説明する図である。ここでスリット43は、紙面の左右方向に平行とし、ラビング方向R−Rは、紙面の左右方向に対し若干右上がりに傾いているものとして示されている。傾き角度は、例えば、3度から5度の間の角度等のように数度とすることができる。すなわち、電界がかけられていない状態では、液晶分子Lは、スリット43に対し、若干右上がりに傾いていることになる。なお、このラビング方向は、説明のための一例であるので、これと異なる方向、あるいは傾き角度の大きさが異なっていてもよい。
【0039】
スリット43は、共通電極42を構成する透明導電材料膜に、例えばエッチング技術によって開口されるものであるので、上記のように、そのエッジ部分は、いくらか丸みを帯びて、図4に示すように、半円状に近い円弧形状となる。
【0040】
スリット43の縁の部分における液晶分子Lは、電界Eがかかっていないときは、初期配置状態であり、ラビング方向に揃っている。すなわちスリット43の縁から若干傾いているが、ほぼ平行の向きに揃っている。ここで電界Eがかかると、その電界Eの方向に、スリット43の縁にほぼ垂直方向になるまで回転する。この円弧形状の部分においても、電界はスリット43の縁に直交してかけられるので、電界の向きは、この円弧形状がスリット43の縁に沿って半回転することから、円弧形状に沿って180°変化することになる。例えば、図4において左上に示されるスリット43において電界がかけられると、そのスリット43の上側の長辺部分では、液晶分子Lは反時計方向に回転し、同様にスリット43の下側の長辺部分でも、液晶分子Lは反時計方向に回転する。ところが、半円の円弧形状の部分では、上側の4半円の円弧形状部分において液晶分子Lが反時計方向に回転するのに対し、下側の4半円の円弧形状においては、液晶分子Lが時計方向に回転してしまうことになる。
【0041】
このように、電界をかけて液晶分子Lを所望の方向に回転させようとするとき、スリット43の右側のエッジ部分においては、右下の4半円の円弧形状部分において、所望と反対の方向に液晶分子Lが回転することが起こる。すなわち所望の方向に回転しないことが起こる。このように、横方向電界を印加したときに、エッジ部分では、場所によって液晶分子Lの回転方向が異なることが生じる。このように回転方向が場所によって異なる現象がディスクリネーションである。回転方向が異なる境界部分においては、液晶分子Lが所望でない方向に回転し、あるいは回転できないために、透過率が低下し、目視で境界線が認識されることがあり、これらが、転傾線、あるいは転傾欠陥といわれ、あるいは単にこれをディスクリネーションといわれることがある。図4では、ディスクリネーションが生じる領域をDで示してある。
【0042】
図4において、領域Dはどのような領域かを見ると、スリット43の縁のエッジ部分である。詳しく述べれば、スリット43の法線方向が、液晶分子Lの初期配向方向、すなわちラビング方向R−Rと一致するところから、さらに時計方向回りに90°の角度をなすところまでの範囲である。図4のこの範囲においては、電界がかけられると、液晶分子Lが時計方向に回転して、エッジ部分の縁に直交するようになるが、これ以外の領域においては、液晶分子Lは反時計方向に回転して、スリット43の縁に直交する。換言すれば、スリット43のエッジ部分のディスクリネーションが生じる領域Dは、スリット43のエッジ部分の法線方向がラビング方向R−Rと一致するところから、さらに時計方向回りに90°の角度をなすところまでの範囲である。
【0043】
換言すれば、図4のように、スリット43のように開口部の端部が円弧状になる場合においては、ディスクリネーションの発生する領域Dは、図4に示す状態、すなわちスリット43の長手方向端部の延びる方向がラビング方向R−Rとなす傾斜角度が正方向、すなわち反時計方向回りの角度であるときは、スリット43の長手方向の延びる方向をX軸としその垂直方向をY軸とした円形の反時計回りに数えた第2象限部分と第4象限部分である。また、傾斜角度が負方向、すなわち時計方向回りの角度であるときは、この円形の第1象限部分と第3象限部分である。
【0044】
このように、共通電極がスリット型形状の開口部を有する場合には、細長い溝状開口部の端部がエッチング等によって円弧形状となることから、ディスクリネーションが発生する。共通電極が櫛歯型形状の開口部を有するときも、エッチング等によって円弧形状が形成されると、その円弧形状に沿って液晶分子が回転することから、ディスクリネーションが発生する。
【0045】
図5は、1サブ画素における櫛歯型開口部を有する共通電極81を模式的に示す図である。ここで、櫛歯型形状とは、開口部の形状として、長手方向の一方側端部が閉じており、他方側端部で開いているもので、開いている部分が開口部となり、複数の開口部をその長手方向が平行となるように配置すると、それぞれの一方側端部が閉じているので、開口部でない部分の形状が、一方端で接続された櫛歯状となるものである。
【0046】
図5における櫛歯型形状の開口部を有する共通電極81は、細長く延びる腕部を有する透明導電材料膜部82と、細長い開口部84とを有する。開口部84は、一方側端部88が閉じており、他方側端部86が開いている。ディスクリネーションは、開口部がエッチング等によって円弧形状となる領域に生じるので、図5の例では、開口部84の一方側端部88の部分の領域と、透明導電材料膜部82の他方側端部86の部分の領域に生じることになる。
【0047】
すなわち、櫛歯型形状の開口部を有する共通電極81においては、透明導電材料膜部82が円弧形状となる場合、その円弧形状のエッジ部分の法線方向がラビング方向R−Rと一致するところから、さらに時計方向回りに90°の角度をなすところまでの範囲にもディスクリネーションが生じる。
【0048】
この場合にも、ディスクリネーションの発生する領域Dは、透明導電材料膜部82の長手方向端部の延びる方向がラビング方向R−Rとなす傾斜角度が正方向、すなわち反時計方向回りの角度であるときは、透明導電材料膜部82の長手方向の延びる方向をX軸としその垂直方向をY軸とした円形の反時計回りに数えたと第4象限部分である。また、傾斜角度が負方向、すなわち時計方向回りの角度であるときは、この円形の第1象限部分である。
【0049】
これを、透明導電材料膜部82についてではなく、開口部84について述べれば、ディスクリネーションの発生する領域は、開口部84の長手方向端部の延びる方向がラビング方向R−Rとなす傾斜角度が正方向、すなわち反時計方向回りの角度であるときは、開口部84の長手方向の延びる方向をX軸としその垂直方向をY軸とした円形の反時計回りに数えた第2象限部分である。また、傾斜角度が負方向、すなわち時計方向回りの角度であるときは、この円形の第3象限部分である。このように、同じ領域を示すにもかかわらず、開口部84から見る場合と、透明導電材料膜部82から見る場合とでは、その位置が異なってくるので注意が必要である。
【0050】
共通電極の形成は、共通電極を構成する透明導電材料膜をエッチング等によって所定の開口部を形成することで行われる。エッチング等においては、所定の開口部を形成するようにレジストマスクが用いられる。例えば、図5の形状の共通電極81を形成するには、透明導電材料膜の上に、やはり図5と同じ形状を有するレジストマスクを形成する。図5の形状のレジストマスクを得るには、透明導電材料膜の上に全面に感光レジスト膜を形成し、これを所定の形状を有する露光マスクを用いて露光し、露光後の感光レジストを現像することが行われる。例えば、露光された部分が現像によって除去される性質の感光レジストを用いる場合は、図5の形状を有するレジストマスクを得るためには、やはり図5と同じ形状で、開口部84に対応する部分を透光パターンとし、透明導電材料膜部82に対応する部分を非透光パターンとする露光マスクを用いる。
【0051】
したがって、図5の共通電極81を得るためには、図5と同じ形状を有し、開口部84に対応する部分を透光パターンとし、透明導電材料膜部82に対応する部分を非透光パターンとする開口部電極形成露光マスクを用いればよい。この場合、図5の形状のままでは、上記のように、エッチング等によって共通電極81に円弧形状の部分が形成され、ディスクリネーションが発生する。
【0052】
図6は、ディスクリネーションの発生を抑制することができる開口部電極形成露光マスク90の例を示す図である。ここでは、非透光パターン92が櫛歯状形状を有していることが示されている。ここで、開口部は透光パターン94で示され、その長手方向の他方側端部が開いており、一方側端部98が閉じている。非透光パターン92でいえば、透光パターン94とほぼ同じ形状の細長い腕部パターンが一方側端部98に対応するところで接続された形状となっている。この細長い腕部パターンの部分は、開口部と対比するときに、開口部をスペースとして、一般にラインと呼ばれることがある。
【0053】
このように、図6の例では、透光パターン94が共通電極の開口部の形状となっている。勿論、レジストの種類を変更することで、共通電極の開口部の形状を非透光パターンとすることもできる。
【0054】
そして、図5と比較すると、ディスクリネーションの発生する箇所において、パターン形状が2箇所において補正されている。1つは、透光パターンとしては、細長い溝状形状の透光パターン94を基本パターン部として、この細長い溝状形状の長手方向の一方側端部98において、基本パターン部を拡張する部分補正用パターン99が設けられる。部分補正用パターン99は、基本パターン部の最小寸法よりも小さい寸法を有する角状の透光パターンである。後述するように、光の回折等を考慮してこの部分補正用パターン99を設定することで、光近接効果を利用し、露光装置の解像度を超えて、細長い溝状形状の長手方向の一方側端部98の形状が矩形に近くなるように露光することができる。これにより、細長い溝状形状の長手方向の一方側端部98において、共通電極形成の際に円弧形状になることが抑制される。
【0055】
もう1箇所は、非透光パターン92において、細長い腕部パターンの他方側端部96において、所定の傾斜角度を有する傾斜パターン97とされている。図7に、傾斜パターン97の詳細が示されている。図7では、非透光パターン92の部分に斜線が付されている。したがって、斜線の付されていない部分が透光パターン94を示している。
【0056】
ここで、傾斜パターン97を用いずに他方側端部が矩形形状の一部をなす場合であると、上記のように、他方側端部がエッチング等で円弧形状に形成される。そして、円弧形状の第4象限にディスクリネーションが発生する。詳しくは、図7に示されるラビング方向R−Rに対し、円弧形状の接線方向がなす角度が0度から−90度となる範囲の領域においてディスクリネーションが発生する。なお、角度は、図7に示されるように、反時計方向を正方向としている。
【0057】
そこで、傾斜パターン97は、ラビング方向R−Rとなす傾斜角度θが0度と+90度の間の角度範囲となるようにして設けられる。このように傾斜パターン97の傾斜角度をディスクリネーションが発生しない角度範囲とすることで、細長い腕部パターンの他方側端部96においてディスクリネーションの発生を抑制できる。したがって、傾斜パターン97は、傾斜パターン97を用いずに他方側端部が矩形形状の一部をなす場合にディスクリネーションが発生する領域を避けて設定する必要がなく、開口率等を考慮して、細長い腕部パターンの他方側端部96を適当に延ばし、細長い腕部パターンの長さを適当に設定することができる。
【0058】
このように、図6の形状を有する開口部電極形成露光マスク90を用いれば、ディスクリネーションの発生を防げるはずであるが、実際には、傾斜パターン97の角部が、エッチング等で小さな円弧形状となり、狭い領域であるがディスクリネーションが発生することがある。そこで、実施の形態においては、2つの種類の露光マスクを用いて、この傾斜パターンの角部が円弧形状となることを抑制する。2つの種類の露光マスクは、1つが図6における他方側端部以外の部分に関する形状を形成するためのもので、以下では第1マスクと呼ぶ。もう1つは、図6における他方側端部の部分に関する形状を形成するためのもので、以下では第2マスクと呼ぶ。そして、同じ感光性レジストに対し、第1マスクで露光した後、再度第2マスクで露光を行う。いわゆる2度露光によって、図6で達成しようとするレジスト形状を形成する。
【0059】
図8は、実施の形態における開口部電極形成方法の手順を示すフローチャートである。このフローチャートの手順は、液晶表示装置の製造法の一部を構成し、とくに、共通電極である開口部電極の形成工程の手順を示すものである。
【0060】
図8において、開口部電極形成の最初は、開口部電極膜形成工程である(S10)。図1を用いて説明すれば、FFS絶縁膜40を形成した後に、開口部電極を構成する透明導電材料膜を所定の膜厚で全面に形成する。透明導電材料膜としては、例えばITO(インジウム−錫−オキサイド)膜等を用いることができる。膜形成法としてはスパッタ技術等を用いることができる。
【0061】
次に感光性レジスト膜を形成する(S12)。ここでは、露光された部分が現像によって除去される特性の市販の感光性レジストを用いることができる。
【0062】
次に第1マスクを用いて第1露光が行われる(S14)。ここで第1とは、次の第2露光と区別するためである。第1マスクとしては、スリット型形状を透光パターンとするものが用いられる。図9に、第1マスク100の例を示す。
【0063】
図9には、第1マスク100について1サブ画素分の様子が示されている。ここで、スリット型形状とは、上記のように、開口部の形状として、長手方向の両端部がそれぞれ閉じている細長い溝状開口部を複数分離して配置されるものである。図9の例では、非透光パターン102は、1サブ画素に対応する矩形形状を有し、その中に透光パターン104が細長い溝状として、長手方向を互いに平行として、複数設けられる。そして、細長い溝状の透光パターン104を基本パターン部として、さらに、細長い溝状形状の一方側端部108に、補正パターン部である部分補正用の透光パターン109を有する。すなわち、透光パターンとしては、基本パターン部として細長い溝状形状の透光パターン104と、補正パターン部として細長い溝状形状の長手方向の一方側端部108の部分を拡張する透光パターン109とを有する。
【0064】
このように、第1マスク100は、図6で説明した形状のうちで、他方側端部以外の部分を除いた形状を形成するためのものである。つまり、非透光パターン102の細長い腕部が、他方側端部106で相互に接続され、これによって、開口部である透光パターン104が他方側端部でそれぞれ閉じて、分離したスリット型形状の開口部となっている。
【0065】
補正パターン部としての透光パターン109は、ディスクリネーションが発生する部分に設けられる。すなわち、上記のように、開口部の長手方向端部の延びる方向がラビング方向となす傾斜角度が正方向の角度であるときは、長手方向の延びる方向をX軸としその垂直方向をY軸とした円形の反時計周りに数えた第2象限部分に、また、傾斜角度が負方向の角度であるときは、円形の第3象限部分に、補正パターン部としての透光パターン109が設けられる。
【0066】
図10は、補正パターンとしての透光パターン109の部分の詳細図である。図10においては、非透光パターン102が斜線で示されており、斜線が付されていない部分が透光パターン104,109である。
【0067】
図10に示されるように、補正パターン部としての透光パターン109は、基本パターン部としての透光パターン104の左上隅を拡張するようにして設けられる。この左上隅は、上記の円形の第2象限部分に対応するもので、基本パターン部としての透光パターン104の長手方向端部の延びる方向がラビング方向となす傾斜角度が正方向の角度の場合である。透光パターン104の長手方向端部の延びる方向がラビング方向となす傾斜角度が負方向の角度の場合には、補正パターン部としての透光パターン109は、基本パターン部としての透光パターン104の左下隅、すなわち、上記の円形の第3象限を拡張するようにして設けられる。
【0068】
補正パターン部としての透光パターン109は、基本パターン部の透光パターン104の左上隅に角形状で拡張されるようにして設けられる。その角形状は、中心線の傾きが、透光パターン104の長手方向に対し約45度で、中心線に沿った幅寸法B、長手方向の延び寸法Cは、いずれも、基本パターン部の透光パターン104の幅寸法Aよりも小さい。
【0069】
寸法の一例を上げると、エッチング後に形成される共通電極のスリットの幅Sを約4.0μmとするときは、透光パターン104の幅寸法Aを約3.4μmとすることができ、この場合、補正パターン部としての透光パターン109の延び寸法Cを約1.75μm、幅寸法Bを約1.4μmとすることができる。
【0070】
高精細な液晶表示装置においては、基本パターン部の透光パターン104の幅寸法Aは、露光装置の解像度の限度近くの最小寸法に設定されることが多い。したがって、通常では、開口部電極形成マスクのパターンの最小寸法は、露光装置の解像度を超えて小さくしても、所望の寸法、形状に露光することができない。ここで、光近接効果を利用することで、露光装置の解像度以下の微細パターンを得ることができる。これは、露光装置の解像度の限度近くの基本パターン部の周辺部に、光の回折等を考慮した形状、寸法の補正パターン部を設けることで、基本パターン部の周辺部の形状を補正し、露光装置の解像度以上の精度のパターンを形成できることに基づく。図10の例では、基本パターン部である透光パターン104のみでは、露光装置の解像度の限界によって、露光パターンがその長手方向の端部において円弧状になるが、補正パターン部である微細な透光パターン109を設けることで、円弧状形状を補正して、かなり矩形に近い露光パターンとすることができる。
【0071】
したがって、光近接効果を利用するため、補正パターン部である透光パターン109の寸法は、基本パターン部である透光パターン104の最小寸法よりも小さく設定される。上記の例で、露光装置の分解能が約3μmとすれば、基本パターン部である透光パターン104の最小寸法を露光装置の分解能の約3μmよりも大きい約3.4μmとし、補正パターン部としての透光パターン109の最小寸法を露光装置の分解能の約3μmより小さい約1.4μmとすることができる。
【0072】
再び図8に戻り、第1露光工程の後は、第2マスクを用いて第2露光が行われる(S16)。第2マスクは、図6で説明した他方側端部における傾斜パターンを円弧形状化しないように形成するために用いられる。図11に、第2マスク110の例を示す。
【0073】
図11には、第2マスク110について1サブ画素分の様子が示されている。第2マスク110は、第1マスク100によって露光された状態と位置合わせされた状態で露光が行われるので、図11には、位置合わせされた状態の第1マスク100が破線で示されている。図11に示されているように、第2マスク110は、第1マスク100の一方側端部を含んで広い範囲が非透光パターン112で、第1マスク100の他方側端部のところが透光パターン114として構成されている。
【0074】
透光パターン114は、第1マスク100の非透光パターン102の細長い腕部の他方側端部106において、第1マスク100の複数の溝状開口部である透光パターン104の他方側端部をそれぞれ開いて相互に接続するように、第1マスク100の透光パターン104の長手方向に対し所定の傾斜角度で交差する傾斜パターン116を有する。
【0075】
図12に、傾斜パターン116付近の詳細図を示す。ここでは、非透光パターン112に斜線が付されて示されており、したがって、斜線が付されていない部分が透光パターン114である。なお、第1マスクの透光パターン104が破線で示されている。非透光パターン112は、鋸歯状の形状を有する。この鋸歯形状は、傾斜パターン116を、第1マスクにおいて、幅寸法Wを有する複数の非透光パターンのそれぞれの他方側端部において、傾斜パターン116を同じように配置するために、傾斜パターン116をピッチMで繰り返し配置するためのものである。ピッチMは、第1マスクの非透光パターンの配置ピッチ、すなわち透光パターン104の配置ピッチと同じであり、したがって、非透光パターンの幅Wよりも十分大きい。
【0076】
傾斜パターン116の傾斜角度は、図7で説明したように、ラビング方向R−Rとなす傾斜角度θが0度から+90度の間の角度範囲となるように設定される。このように、傾斜パターン116の傾斜角度を設定することで、ディスクリネーションの発生を抑制できる。したがって、図7に関連して説明したように、傾斜パターン116は、図12における右方向に適当に延ばすことができる。これに伴い、第1マスクの透光パターン104の他方側端部も、図12における右方向に適当に延ばすことができる。すなわち、開口率等を考慮すると、第1マスクの透光パターン104は、通常の場合の透光パターンよりも、他方側端部がさらに他方側である右方向に延びて、長手方向にさらに長いパターンとすることが好ましい。どこまで長手方向を延ばせるかは、隣接するパターンとの関係で定めることができる。
【0077】
再び図8に戻り、第1露光と第2露光が行われた感光性レジスト膜の現像が行われる(S18)。現像液としては、上記の例で、感光性レジストの露光された部分を除去する特性の適当な市販現像液を用いることができる。現像されたレジスト膜の形状は、図6で目標とされた形状となる。すなわち、細長い腕部における傾斜パターンは、図6のように閉じたパターンを露光するのではなく、第2露光工程(S16)において、細長い腕部の幅Wよりも十分長い傾斜パターンとして露光されるので、円弧形状となることが抑制される。
【0078】
そして、このようにして形成された感光性レジストをエッチングマスクとして、開口部電極膜のエッチングが行われる(S20)。エッチングとしては、上記の例では、ITOをエッチングできる適当な腐食液を用いることができる。可能であれば、腐食液を用いずに、ドライエッチング技術を用いるものとしてもよい。
【0079】
エッチングが終了すると、用済みとなった感光性レジスト膜の除去が行われる(S22)。レジスト膜の除去には、適当な反応ガスを用いたアッシャを用いることができ、あるいは除去液を用いることもできる。このようにして、櫛歯型形状の開口部の端部において、円弧形状となることが抑制された共通電極が形成される(S24)。
【0080】
なお、上記では、第1マスクに、部分補正用パターンを有するものとして説明したが、光近接効果を利用しない場合には、部分補正用パターンを有しない第1マスクを用いるものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】ディスクリネーションを説明するための液晶表示装置の断面図である。
【図2】図1に対応する平面図である。
【図3】共通電極と画素電極との間に形成される電界の様子を説明する図である。
【図4】スリットのエッジ部分でディスクリネーションが発生する様子を説明する図である。
【図5】本発明に係る実施の形態において、櫛歯型開口部を有する共通電極を模式的に示す図である。
【図6】本発明に係る実施の形態を説明するために、ディスクリネーションの発生を抑制することができる開口部電極形成露光マスクの例を示す図である。
【図7】図6における傾斜パターンの詳細を示す図である。
【図8】本発明に係る実施の形態において、開口部電極形成方法の手順を示すフローチャートである。
【図9】本発明に係る実施の形態において、第1マスクの様子を示す図である。
【図10】図9における一部詳細図である。
【図11】本発明に係る実施の形態において、第2マスクの様子を示す図である。
【図12】図11における一部詳細図である。
【符号の説明】
【0082】
10 液晶表示装置、20 素子側基板、22,62 ガラス基板、24 半導体層、26 ゲート絶縁膜、28 ゲート電極、29 共通電極配線、30 層間絶縁膜、32,33 ソース・ドレイン配線、34 共通電極接続部、35 データライン、36 絶縁膜、38 画素電極、40 FFS絶縁膜、42,81 共通電極、43 スリット、50 液晶分子、60 対向側基板、64 ブラックマトリクス、66 カラーフィルタ、80 スイッチング素子、82 透明導電材料膜部、84 開口部、86,96,106 他方側端部、88,98,108 一方側端部、90 開口部電極形成露光マスク、92,102,112 非透光パターン、94,104,109,114 透光パターン、97,116 傾斜パターン、99 部分補正用パターン、100 第1マスク、110 第2マスク。
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶表示装置の製造方法に係り、特に、液晶分子を介して対向する一対の基板のうち片方の基板に前記液晶分子を駆動する一対の電極が設けられる液晶表示装置の製造に用いられ、前記一対の電極のうち少なくとも一方側電極に電界を通す開口部として、開口部の長手方向の一方側端部が閉じており、他方側端部が開いている櫛歯型形状を形成してこれを開口部電極とする開口部電極形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置の表示方式としては従来TN(Twisted Nematic)方式が広く用いられてきているが、この方式は表示原理上、視野角に制限がある。これを解決する方法として、液晶分子を駆動するための一対の電極として同一基板上に画素電極と共通電極とを形成し、この画素電極と共通電極との間に電圧を印加し、基板にほぼ平行な電界を発生させ、液晶分子を基板面に平行な面内で駆動する横電界方式が知られている。
【0003】
横電界方式には、IPS(In Plane Switching)方式と、FFS((Fringe Field Switch)方式が知られている。IPS方式では、櫛歯状の画素電極と櫛歯状の共通電極とを組み合わせて配置される。櫛歯状とは、電界を通すための開口部として、開口部の長手方向の一方側端部が閉じており、他方側端部で開いているものであり、開口部を複数設ける場合に、各開口部のそれぞれの一方側端部は相互に接続されるので、1つの櫛歯状となる。
【0004】
一方、FFS方式では、絶縁層を介して形成された上部電極と下部電極について、いずれか一方を共通電極に割り当て、他方を画素電極に割り当て、上部電極を開口部電極として、例えば櫛歯状形状、あるいはスリット形状等の開口部が形成される。ここでスリット形状とは、電界を通すための開口部として、開口部の長手方向の両端部がそれぞれ閉じていて細長い溝状開口部となっているものである。溝状開口部を複数設ける場合は、相互に分離して配置される。
【0005】
このような開口部は、電極層薄膜をエッチングすることで形成されるが、例えば、開口部を細長い溝形状とするときは、その長手方向の端部であるエッジ部分は、丸みを帯びてラウンド形状あるいは円弧状の形状となることが多い。例えばFFS方式の場合、下部電極から、この開口部を通って開口部電極である上部電極に向かう電界は、この開口部のパターンに沿って流れるので、エッジ部分では円弧状のパターンに沿って横方向電界が形成されることになる。したがって、例えば、ラビング処理等によって液晶分子の初期配向を開口部の長辺にほぼ平行とし、横方向電界をかけて液晶分子を駆動すると、開口部の長辺の直線部分では、初期配向の状態から長辺に垂直な方向に回転するが、開口部のエッジ部分では、初期配向の状態から円弧状形状に垂直な方向に回転することになる。
【0006】
エッジ部分の円弧状形状に沿って液晶分子が初期配置の状態から回転するとき、液晶分子の回転方向が逆転することが生じ、場所によって液晶分子の回転方向が異なることが生じる。この回転方向が場所によって異なる現象はディスクリネーションと呼ばれる。回転方向が異なる境界部分においては、液晶分子が所望でない方向に回転し、あるいは回転できないために、透過率が低下し、目視で境界線が認識されることがあり、これらは、転傾線、あるいは転傾欠陥といわれるが、単にこれをディスクリネーションということもある。
【0007】
例えば、特許文献1には、FFS液晶表示装置において、上部基板のブラックマトリクスと下部基板の画素電極のエッジ部とが所定領域オーバーラップされこれらの両基板間に液晶が介在する構成の場合、ブラックマトリクスと画素電極との間の電気場干渉によって、画素電極のエッジ部の端部から中心部に行くにつれて液晶分子の捩れ角度がほぼ90度程度になって垂直方向に配置されるが、エッジ部が露光工程上の限界により曲線形状を有するので、ホワイト諧調のとき、ラビングの跡、すなわちディスクリネーション(転傾線)が発生することを指摘している。
【0008】
なお、ディスクリネーションについては、本発明に係る実施の形態と比較して、後にさらに詳述する。
【0009】
【特許文献1】特開2005−107535号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように、ディスクリネーションが発生すると、その部分で透過率が低下する。一般的には、ディスクリネーションが発生すると、画質が低下したと評価されることがある。上記のように、ディスクリネーションは、開口部電極の開口部の長手方向端部が、エッチング等のパターン形成において、矩形形状とすべきところが円弧状形状となることに起因する。
【0011】
本発明の目的は、開口部電極の開口部の長手方向端部が円弧状形状となることを抑制できる液晶表示装置の製造方法を提供することである。また、他の目的は、ディスクリネーションの発生が抑制される液晶表示装置の製造方法を提供することである。以下の手段は、上記目的の少なくとも1つに貢献する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る液晶表示装置の製造方法は、液晶分子を介して対向する一対の基板のうち片方の基板に前記液晶分子を駆動する一対の電極が設けられる液晶表示装置の製造に用いられ、前記一対の電極のうち少なくとも一方側電極に電界を通す開口部として、開口部の長手方向の一方側端部が閉じており、他方側端部が開いている櫛歯型形状を形成してこれを開口部電極とする開口部電極形成方法であって、前記開口部電極を構成する膜を形成する膜形成工程と、前記膜を覆って感光性レジストを形成するレジスト形成工程と、前記櫛歯型形状の前記開口部の前記長手方向に対応して、前記長手方向の両端部がそれぞれ閉じている細長い溝状開口部を複数分離して配置されるスリット型形状に対応する透光パターンまたは非透光パターンを有する第1マスクを用いて、前記感光性レジストを露光する第1露光工程と、前記櫛歯型形状の前記開口部の前記他方側端部に対応して、前記第1マスクの前記複数の溝状開口部の両端部のうちの他方側端部をそれぞれ開いて相互に接続するように、前記溝状開口部の長手方向に対し所定の傾斜角度で交差する所定形状に対応する透光パターンまたは非透光パターンを有する第2マスクを用いて、前記感光性レジストを再度露光する第2露光工程と、第1露光工程と第2露光工程に基づいて、前記感光レジストについて前記櫛歯状型形状を形成し、前記櫛歯型形状の開口部を有する開口部電極を形成することを特徴とする。
【0013】
上記構成により、液晶表示装置の製造方法は、櫛歯型形状を有する感光レジストを第1露光工程と第2露光工程の2度の露光によって形成する。第1露光工程は、スリット型開口部に対応するパターンを有する第1マスクを用い、第2露光工程は、櫛歯型形状において開口部が開いている他方側端部のそれぞれの所定領域について、溝状開口部の長手方向に対し所定の傾斜角度で交差する所定形状に対応するパターンを有する第2マスクを用いる。これにより、従来技術において露光パターンが円弧形状等となる開口部の長手方向の端部について、開口部の長手方向に所定の傾斜角度を有する形状とすることができる。したがって、開口部電極の開口部の長手方向端部が円弧状形状となることを抑制でき、ディスクリネーションの発生を抑制することができる。
【0014】
また、本発明に係る液晶表示装置の製造方法において、前記第2露光工程は、前記傾斜角度が、前記液晶分子を初期配向するラビング方向に対して0度と90度の間の角度範囲であり、櫛歯形状が形成できる角度範囲である前記第2マスクを用いることが好ましい。
【0015】
ディスクリネーションは、開口部の長手方向とラビング方向との関係で、開口部の接線方向がラビング方向となす角度が0度から−90度の間となる領域に起こる。上記構成では、開口部の端部において、傾斜角度がラビング方向に対し0度と90度の間の角度範囲であるので、ディスクリネーションの発生を抑制できる。
【0016】
また、本発明に係る液晶表示装置の製造方法において、前記第1露光工程は、前記一方側端部の前記開口部が拡張されている前記第1マスクを用いることが好ましい。
【0017】
開口部の一方側端部においては、エッチング工程等において円弧状形状となりやすいので、元々の開口部を拡張する。これにより、開口部電極形成工程において、開口部の長手方向端部が円弧状形状となることを抑制でき、ディスクリネーションが抑制された液晶表示装置を製造できる。
【0018】
また、本発明に係る液晶表示装置の製造方法において、前記第1露光工程は、前記長手方向端部の延びる方向が前記液晶分子を初期配向するラビング方向となす傾斜角度が正方向の角度であるときは、前記溝状開口部の長手方向の延びる方向をX軸としその垂直方向をY軸とした円形の第2象限部分に対応する前記一方側端部の前記開口部が拡張され、前記傾斜角度が負方向の角度であるときは、前記円形の第3象限部分に対応する前記一方側端部の前記開口部が拡張されている第1マスクを用いることが好ましい。
【0019】
ディスクリネーションは、開口部の長手方向とラビング方向との関係で、開口部の長手方向の一方側端部では、端部の左上隅、あるいは左下隅に現れる。上記構成により、ディスクリネーションの現れる可能性のある部分の開口部を拡張するので、その部分が円弧状形状となることを抑制でき、ディスクリネーションが抑制された液晶表示装置を製造できる。
【0020】
また、本発明に係る液晶表示装置の製造方法において、前記開口部が拡張される部分は、前記開口部が拡張されないときの溝状開口部の基本パターン部の最小パターン寸法よりも小さいパターン寸法を有することが好ましい。
【0021】
例えば、光近接効果を用いることで、基本パターン部は露光装置の解像度で処理できるパターン寸法とし、開口部を拡張するパターンを露光装置の解像度以下のパターン寸法とすることができる。これにより、開口部の長手方向端部について、露光装置の解像度以下の寸法での形状の微調整が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。以下では、 液晶分子を介して対向する一対の基板のうち片方の基板に液晶分子を駆動する一対の電極が設けられる構成として、FFS方式を説明する。すなわち、素子側基板に絶縁層を介して上部電極と下部電極を設け、上部電極を開口部電極として説明する。ここで、下部電極を画素電極とし、開口部電極である上部電極を共通電極として説明するが、これを逆の構成、すなわち、下部電極を共通電極、開口部電極である上部電極を画素電極としてもよい。また、FFS方式の構成の他に、IPS方式の構成としてもよい。
【0023】
また、以下のFFS方式では、共通電極を各画素ごとに分けて配置しているが、これを各画素ごとに分けない構成としてもよい。
【0024】
本発明の実施の形態は、液晶表示装置において櫛歯型形状を有する開口部電極を形成するための製造方法に関するものであるが、横電界駆動方式の液晶表示装置においてディスクリネーションを抑制することができる製造方法を提供するものであるので、本発明の実施の形態である製造方法の説明に先立ち、横電界駆動方式におけるディスクリネーションが発生する原理的機構について、液晶表示装置の構成を含めて、図1から図4を用いて説明する。
【0025】
ここでは、ディスクリネーションが発生する原理的機構を説明するために、開口部電極の形状として最も基本的なスリット型形状を有する開口部電極について最初に述べる。ついで、櫛歯状形状を有する開口部電極についてスリット型形状の場合との相違点を中心に述べ、その後に、本発明に係る実施の形態の製造方法及びその製造法によって形成される開口部電極について述べる。したがって、図1から図4においては、開口部電極形成のための露光工程は一般的なものとし、本発明の実施の形態に係る2段階の露光工程を用いていない。
【0026】
図1は、FFS方式のカラー液晶表示装置において1サブ画素の部分の断面図である。図2は、図1の断面図に対応する平面図であり、1画素に対応して3サブ画素分が示されている。図2では、開口部として、スリット型形状のものが示されている。図3は、FFS方式において、液晶分子を駆動する電界Eの様子を示す図である。図4は、ディスクリネーションの発生する様子を説明する図である。
【0027】
図1は、上記のように、液晶表示装置10の断面図で、1サブ画素の部分が示されている。ここで、サブ画素とは、例えば、R、G,Bでカラー表示を行う場合、R、G,Bに対応する各表示部分のことであり、いまの例では、Rのサブ画素、Gのサブ画素、Bのサブ画素の3つを単位として、1画素となる。なお、サブ画素をサブピクセルと呼ぶ場合もあり、その場合には、上記の1画素は、1ピクセルと呼ばれることになる。図1に示されるように、液晶表示装置10は、素子側基板20、対向側基板60、素子側基板20と対向側基板60との間に挟持される液晶分子50を含んで構成されている。
【0028】
対向側基板60は、液晶表示装置10において、ユーザに面する側である。対向側基板60は、いくつかの膜が積層されて構成される。図1の例では、対向ユーザに面する側から素子側基板20の側に向かって、ガラス基板62、ブラックマトリクス64、カラーフィルタ66を含んで構成される。図1の断面図において、ブラックマトリクス64は、カラーフィルタ66の陰に隠れ、あるいはその下に配置されるので、破線で示してある。これらの材料、寸法、形成方法等は、一般的なアクティブマトリクス型液晶表示装置の製造方法として周知のものを用いることができるので、詳細な説明を省略する。
【0029】
素子側基板20は、TFT基板あるいはTFT側基板とも呼ばれ、スイッチング素子80であるTFT素子が配置される側の基板で、対向側基板60に対する基板である。ここでは、液晶分子50を駆動する一対の電極が配置される基板でもある。素子側基板20の上には、周知の膜形成技術と、パターン形成技術によって、多層構造にパターン化された複数の膜が積層されている。
【0030】
図1の例では、ユーザに面していない側から液晶分子50の側に向かって、ガラス基板22、半導体層24、ゲート絶縁膜26、同一工程で形成されるゲート電極28、共通電極配線29、層間絶縁膜30、同一工程で形成されるソース・ドレイン配線32,33及び共通電極接続部34、絶縁膜36、画素電極38、FFS絶縁膜40、共通電極42が順次形成されている。これらの材料、寸法、形成方法等は、一般的なアクティブマトリクス型液晶表示装置の製造方法として周知のものを用いることができるので、詳細な説明を省略する。
【0031】
なお、図1には図示が省略されているが、共通電極42の上には配向膜が設けられる。対向側基板60の液晶分子50に向き合う面についても同様に配向膜が設けられる。
【0032】
図2は、図1の断面図に対応する平面図である。ここでは、3つのサブ画素からなる1つの画素について示されている。なお、図1は、図2に示すA−A線に沿った断面図に相当する。図1と同様の要素には同一の符号を付した。
【0033】
各サブ画素には、一部がゲート電極28となるゲートラインと、データライン35とが互いに直交するようにして配線され、その交差箇所にスイッチング素子80であるTFT素子が配置される。ゲートラインは、スイッチング素子80のところで、図1に示されるゲート電極28となり、データライン35は、図1に示されるソース・ドレイン配線32に接続される。このように、液晶表示装置10は、複数のゲートラインと複数のデータライン35との各交差箇所にスイッチング素子80であるTFT素子がそれぞれ配置されており、いわゆるアクティブマトリクス表示装置である。なお、ゲートラインは、走査ライン、走査線、走査信号線とも呼ばれ、データライン35は、信号ライン、信号線、ビデオ信号ライン、映像信号線等とも呼ばれる。
【0034】
スイッチング素子80であるTFT素子は、図1に示される半導体層24の上に形成されたゲート絶縁膜26と、その上に設けられるゲート電極28、及びソース・ドレイン配線32,33に接続されるソース・ドレインとから構成されるトランジスタ素子である。なお、TFTとは、Thin Film Transistorの略語である。スイッチング素子80であるTFT素子のソース・ドレインは、いずれか一方、例えばドレインがデータライン35に接続され、他方、例えばソースが画素電極38に接続される。ドレインとソースとは互換性があるので、ソースがデータライン35に接続され、ドレインが画素電極38に接続されるものとしてもよい。スイッチング素子80であるTFT素子は、ゲートラインが選択されることでドレインとソース間が導通し、上記の例でドレインに接続されるデータライン35からのビデオ信号が画素電極38に供給される。
【0035】
ここで、画素電極38は、図2において一点鎖線で示されており、データライン35と、共通電極配線29とで囲まれた領域に配置されている。また、共通電極42は、図2において太い実線で示されており、データライン35を除くサブ画素全領域に配置される。なお、図2の例では、共通電極42は、各サブ画素ごとに分離されて形成される様子が示されているが、場合によっては、これを各サブ画素にまたがって形成するものとできる。
【0036】
そして、共通電極42には、スリット43が形成される。スリット43は、図1で示されるように、FFS絶縁膜40を介して形成された上部電極である共通電極42と下部電極である画素電極38との間に電圧を印加し、その電界によって液晶分子を駆動するための開口部である。図2において、スリット43は、共通電極42において複数設けられ、それぞれのスリット43は、開口部の長手方向を平行として、相互の間が分離されて配置される。スリット43は、その長手方向の両端部がそれぞれ閉じている細長い溝状開口部であるので、長手方向の端部のところがエッチング加工の際に丸みを帯びる。以後、この丸みを帯びた端部をエッジ部分と呼ぶことにする。ディスクリネーションは、このエッジ部分に発生する。
【0037】
図3は、共通電極42と画素電極38との間にかかる電界Eの様子を模式的に説明する図である。ここでは、共通電極42に設けられるスリット43を通り、FFS絶縁膜40を介して画素電極38に向かう電界Eが示されている。なお、電界の向きは、この逆、すなわち画素電極38からスリット43を通り共通電極42に向かう場合もある。
【0038】
図4は、図2のB部分の拡大図で、スリット43の端部であるエッジ部分において、いわゆるディスクリネーションが生じる様子を模式的に説明する図である。ここでスリット43は、紙面の左右方向に平行とし、ラビング方向R−Rは、紙面の左右方向に対し若干右上がりに傾いているものとして示されている。傾き角度は、例えば、3度から5度の間の角度等のように数度とすることができる。すなわち、電界がかけられていない状態では、液晶分子Lは、スリット43に対し、若干右上がりに傾いていることになる。なお、このラビング方向は、説明のための一例であるので、これと異なる方向、あるいは傾き角度の大きさが異なっていてもよい。
【0039】
スリット43は、共通電極42を構成する透明導電材料膜に、例えばエッチング技術によって開口されるものであるので、上記のように、そのエッジ部分は、いくらか丸みを帯びて、図4に示すように、半円状に近い円弧形状となる。
【0040】
スリット43の縁の部分における液晶分子Lは、電界Eがかかっていないときは、初期配置状態であり、ラビング方向に揃っている。すなわちスリット43の縁から若干傾いているが、ほぼ平行の向きに揃っている。ここで電界Eがかかると、その電界Eの方向に、スリット43の縁にほぼ垂直方向になるまで回転する。この円弧形状の部分においても、電界はスリット43の縁に直交してかけられるので、電界の向きは、この円弧形状がスリット43の縁に沿って半回転することから、円弧形状に沿って180°変化することになる。例えば、図4において左上に示されるスリット43において電界がかけられると、そのスリット43の上側の長辺部分では、液晶分子Lは反時計方向に回転し、同様にスリット43の下側の長辺部分でも、液晶分子Lは反時計方向に回転する。ところが、半円の円弧形状の部分では、上側の4半円の円弧形状部分において液晶分子Lが反時計方向に回転するのに対し、下側の4半円の円弧形状においては、液晶分子Lが時計方向に回転してしまうことになる。
【0041】
このように、電界をかけて液晶分子Lを所望の方向に回転させようとするとき、スリット43の右側のエッジ部分においては、右下の4半円の円弧形状部分において、所望と反対の方向に液晶分子Lが回転することが起こる。すなわち所望の方向に回転しないことが起こる。このように、横方向電界を印加したときに、エッジ部分では、場所によって液晶分子Lの回転方向が異なることが生じる。このように回転方向が場所によって異なる現象がディスクリネーションである。回転方向が異なる境界部分においては、液晶分子Lが所望でない方向に回転し、あるいは回転できないために、透過率が低下し、目視で境界線が認識されることがあり、これらが、転傾線、あるいは転傾欠陥といわれ、あるいは単にこれをディスクリネーションといわれることがある。図4では、ディスクリネーションが生じる領域をDで示してある。
【0042】
図4において、領域Dはどのような領域かを見ると、スリット43の縁のエッジ部分である。詳しく述べれば、スリット43の法線方向が、液晶分子Lの初期配向方向、すなわちラビング方向R−Rと一致するところから、さらに時計方向回りに90°の角度をなすところまでの範囲である。図4のこの範囲においては、電界がかけられると、液晶分子Lが時計方向に回転して、エッジ部分の縁に直交するようになるが、これ以外の領域においては、液晶分子Lは反時計方向に回転して、スリット43の縁に直交する。換言すれば、スリット43のエッジ部分のディスクリネーションが生じる領域Dは、スリット43のエッジ部分の法線方向がラビング方向R−Rと一致するところから、さらに時計方向回りに90°の角度をなすところまでの範囲である。
【0043】
換言すれば、図4のように、スリット43のように開口部の端部が円弧状になる場合においては、ディスクリネーションの発生する領域Dは、図4に示す状態、すなわちスリット43の長手方向端部の延びる方向がラビング方向R−Rとなす傾斜角度が正方向、すなわち反時計方向回りの角度であるときは、スリット43の長手方向の延びる方向をX軸としその垂直方向をY軸とした円形の反時計回りに数えた第2象限部分と第4象限部分である。また、傾斜角度が負方向、すなわち時計方向回りの角度であるときは、この円形の第1象限部分と第3象限部分である。
【0044】
このように、共通電極がスリット型形状の開口部を有する場合には、細長い溝状開口部の端部がエッチング等によって円弧形状となることから、ディスクリネーションが発生する。共通電極が櫛歯型形状の開口部を有するときも、エッチング等によって円弧形状が形成されると、その円弧形状に沿って液晶分子が回転することから、ディスクリネーションが発生する。
【0045】
図5は、1サブ画素における櫛歯型開口部を有する共通電極81を模式的に示す図である。ここで、櫛歯型形状とは、開口部の形状として、長手方向の一方側端部が閉じており、他方側端部で開いているもので、開いている部分が開口部となり、複数の開口部をその長手方向が平行となるように配置すると、それぞれの一方側端部が閉じているので、開口部でない部分の形状が、一方端で接続された櫛歯状となるものである。
【0046】
図5における櫛歯型形状の開口部を有する共通電極81は、細長く延びる腕部を有する透明導電材料膜部82と、細長い開口部84とを有する。開口部84は、一方側端部88が閉じており、他方側端部86が開いている。ディスクリネーションは、開口部がエッチング等によって円弧形状となる領域に生じるので、図5の例では、開口部84の一方側端部88の部分の領域と、透明導電材料膜部82の他方側端部86の部分の領域に生じることになる。
【0047】
すなわち、櫛歯型形状の開口部を有する共通電極81においては、透明導電材料膜部82が円弧形状となる場合、その円弧形状のエッジ部分の法線方向がラビング方向R−Rと一致するところから、さらに時計方向回りに90°の角度をなすところまでの範囲にもディスクリネーションが生じる。
【0048】
この場合にも、ディスクリネーションの発生する領域Dは、透明導電材料膜部82の長手方向端部の延びる方向がラビング方向R−Rとなす傾斜角度が正方向、すなわち反時計方向回りの角度であるときは、透明導電材料膜部82の長手方向の延びる方向をX軸としその垂直方向をY軸とした円形の反時計回りに数えたと第4象限部分である。また、傾斜角度が負方向、すなわち時計方向回りの角度であるときは、この円形の第1象限部分である。
【0049】
これを、透明導電材料膜部82についてではなく、開口部84について述べれば、ディスクリネーションの発生する領域は、開口部84の長手方向端部の延びる方向がラビング方向R−Rとなす傾斜角度が正方向、すなわち反時計方向回りの角度であるときは、開口部84の長手方向の延びる方向をX軸としその垂直方向をY軸とした円形の反時計回りに数えた第2象限部分である。また、傾斜角度が負方向、すなわち時計方向回りの角度であるときは、この円形の第3象限部分である。このように、同じ領域を示すにもかかわらず、開口部84から見る場合と、透明導電材料膜部82から見る場合とでは、その位置が異なってくるので注意が必要である。
【0050】
共通電極の形成は、共通電極を構成する透明導電材料膜をエッチング等によって所定の開口部を形成することで行われる。エッチング等においては、所定の開口部を形成するようにレジストマスクが用いられる。例えば、図5の形状の共通電極81を形成するには、透明導電材料膜の上に、やはり図5と同じ形状を有するレジストマスクを形成する。図5の形状のレジストマスクを得るには、透明導電材料膜の上に全面に感光レジスト膜を形成し、これを所定の形状を有する露光マスクを用いて露光し、露光後の感光レジストを現像することが行われる。例えば、露光された部分が現像によって除去される性質の感光レジストを用いる場合は、図5の形状を有するレジストマスクを得るためには、やはり図5と同じ形状で、開口部84に対応する部分を透光パターンとし、透明導電材料膜部82に対応する部分を非透光パターンとする露光マスクを用いる。
【0051】
したがって、図5の共通電極81を得るためには、図5と同じ形状を有し、開口部84に対応する部分を透光パターンとし、透明導電材料膜部82に対応する部分を非透光パターンとする開口部電極形成露光マスクを用いればよい。この場合、図5の形状のままでは、上記のように、エッチング等によって共通電極81に円弧形状の部分が形成され、ディスクリネーションが発生する。
【0052】
図6は、ディスクリネーションの発生を抑制することができる開口部電極形成露光マスク90の例を示す図である。ここでは、非透光パターン92が櫛歯状形状を有していることが示されている。ここで、開口部は透光パターン94で示され、その長手方向の他方側端部が開いており、一方側端部98が閉じている。非透光パターン92でいえば、透光パターン94とほぼ同じ形状の細長い腕部パターンが一方側端部98に対応するところで接続された形状となっている。この細長い腕部パターンの部分は、開口部と対比するときに、開口部をスペースとして、一般にラインと呼ばれることがある。
【0053】
このように、図6の例では、透光パターン94が共通電極の開口部の形状となっている。勿論、レジストの種類を変更することで、共通電極の開口部の形状を非透光パターンとすることもできる。
【0054】
そして、図5と比較すると、ディスクリネーションの発生する箇所において、パターン形状が2箇所において補正されている。1つは、透光パターンとしては、細長い溝状形状の透光パターン94を基本パターン部として、この細長い溝状形状の長手方向の一方側端部98において、基本パターン部を拡張する部分補正用パターン99が設けられる。部分補正用パターン99は、基本パターン部の最小寸法よりも小さい寸法を有する角状の透光パターンである。後述するように、光の回折等を考慮してこの部分補正用パターン99を設定することで、光近接効果を利用し、露光装置の解像度を超えて、細長い溝状形状の長手方向の一方側端部98の形状が矩形に近くなるように露光することができる。これにより、細長い溝状形状の長手方向の一方側端部98において、共通電極形成の際に円弧形状になることが抑制される。
【0055】
もう1箇所は、非透光パターン92において、細長い腕部パターンの他方側端部96において、所定の傾斜角度を有する傾斜パターン97とされている。図7に、傾斜パターン97の詳細が示されている。図7では、非透光パターン92の部分に斜線が付されている。したがって、斜線の付されていない部分が透光パターン94を示している。
【0056】
ここで、傾斜パターン97を用いずに他方側端部が矩形形状の一部をなす場合であると、上記のように、他方側端部がエッチング等で円弧形状に形成される。そして、円弧形状の第4象限にディスクリネーションが発生する。詳しくは、図7に示されるラビング方向R−Rに対し、円弧形状の接線方向がなす角度が0度から−90度となる範囲の領域においてディスクリネーションが発生する。なお、角度は、図7に示されるように、反時計方向を正方向としている。
【0057】
そこで、傾斜パターン97は、ラビング方向R−Rとなす傾斜角度θが0度と+90度の間の角度範囲となるようにして設けられる。このように傾斜パターン97の傾斜角度をディスクリネーションが発生しない角度範囲とすることで、細長い腕部パターンの他方側端部96においてディスクリネーションの発生を抑制できる。したがって、傾斜パターン97は、傾斜パターン97を用いずに他方側端部が矩形形状の一部をなす場合にディスクリネーションが発生する領域を避けて設定する必要がなく、開口率等を考慮して、細長い腕部パターンの他方側端部96を適当に延ばし、細長い腕部パターンの長さを適当に設定することができる。
【0058】
このように、図6の形状を有する開口部電極形成露光マスク90を用いれば、ディスクリネーションの発生を防げるはずであるが、実際には、傾斜パターン97の角部が、エッチング等で小さな円弧形状となり、狭い領域であるがディスクリネーションが発生することがある。そこで、実施の形態においては、2つの種類の露光マスクを用いて、この傾斜パターンの角部が円弧形状となることを抑制する。2つの種類の露光マスクは、1つが図6における他方側端部以外の部分に関する形状を形成するためのもので、以下では第1マスクと呼ぶ。もう1つは、図6における他方側端部の部分に関する形状を形成するためのもので、以下では第2マスクと呼ぶ。そして、同じ感光性レジストに対し、第1マスクで露光した後、再度第2マスクで露光を行う。いわゆる2度露光によって、図6で達成しようとするレジスト形状を形成する。
【0059】
図8は、実施の形態における開口部電極形成方法の手順を示すフローチャートである。このフローチャートの手順は、液晶表示装置の製造法の一部を構成し、とくに、共通電極である開口部電極の形成工程の手順を示すものである。
【0060】
図8において、開口部電極形成の最初は、開口部電極膜形成工程である(S10)。図1を用いて説明すれば、FFS絶縁膜40を形成した後に、開口部電極を構成する透明導電材料膜を所定の膜厚で全面に形成する。透明導電材料膜としては、例えばITO(インジウム−錫−オキサイド)膜等を用いることができる。膜形成法としてはスパッタ技術等を用いることができる。
【0061】
次に感光性レジスト膜を形成する(S12)。ここでは、露光された部分が現像によって除去される特性の市販の感光性レジストを用いることができる。
【0062】
次に第1マスクを用いて第1露光が行われる(S14)。ここで第1とは、次の第2露光と区別するためである。第1マスクとしては、スリット型形状を透光パターンとするものが用いられる。図9に、第1マスク100の例を示す。
【0063】
図9には、第1マスク100について1サブ画素分の様子が示されている。ここで、スリット型形状とは、上記のように、開口部の形状として、長手方向の両端部がそれぞれ閉じている細長い溝状開口部を複数分離して配置されるものである。図9の例では、非透光パターン102は、1サブ画素に対応する矩形形状を有し、その中に透光パターン104が細長い溝状として、長手方向を互いに平行として、複数設けられる。そして、細長い溝状の透光パターン104を基本パターン部として、さらに、細長い溝状形状の一方側端部108に、補正パターン部である部分補正用の透光パターン109を有する。すなわち、透光パターンとしては、基本パターン部として細長い溝状形状の透光パターン104と、補正パターン部として細長い溝状形状の長手方向の一方側端部108の部分を拡張する透光パターン109とを有する。
【0064】
このように、第1マスク100は、図6で説明した形状のうちで、他方側端部以外の部分を除いた形状を形成するためのものである。つまり、非透光パターン102の細長い腕部が、他方側端部106で相互に接続され、これによって、開口部である透光パターン104が他方側端部でそれぞれ閉じて、分離したスリット型形状の開口部となっている。
【0065】
補正パターン部としての透光パターン109は、ディスクリネーションが発生する部分に設けられる。すなわち、上記のように、開口部の長手方向端部の延びる方向がラビング方向となす傾斜角度が正方向の角度であるときは、長手方向の延びる方向をX軸としその垂直方向をY軸とした円形の反時計周りに数えた第2象限部分に、また、傾斜角度が負方向の角度であるときは、円形の第3象限部分に、補正パターン部としての透光パターン109が設けられる。
【0066】
図10は、補正パターンとしての透光パターン109の部分の詳細図である。図10においては、非透光パターン102が斜線で示されており、斜線が付されていない部分が透光パターン104,109である。
【0067】
図10に示されるように、補正パターン部としての透光パターン109は、基本パターン部としての透光パターン104の左上隅を拡張するようにして設けられる。この左上隅は、上記の円形の第2象限部分に対応するもので、基本パターン部としての透光パターン104の長手方向端部の延びる方向がラビング方向となす傾斜角度が正方向の角度の場合である。透光パターン104の長手方向端部の延びる方向がラビング方向となす傾斜角度が負方向の角度の場合には、補正パターン部としての透光パターン109は、基本パターン部としての透光パターン104の左下隅、すなわち、上記の円形の第3象限を拡張するようにして設けられる。
【0068】
補正パターン部としての透光パターン109は、基本パターン部の透光パターン104の左上隅に角形状で拡張されるようにして設けられる。その角形状は、中心線の傾きが、透光パターン104の長手方向に対し約45度で、中心線に沿った幅寸法B、長手方向の延び寸法Cは、いずれも、基本パターン部の透光パターン104の幅寸法Aよりも小さい。
【0069】
寸法の一例を上げると、エッチング後に形成される共通電極のスリットの幅Sを約4.0μmとするときは、透光パターン104の幅寸法Aを約3.4μmとすることができ、この場合、補正パターン部としての透光パターン109の延び寸法Cを約1.75μm、幅寸法Bを約1.4μmとすることができる。
【0070】
高精細な液晶表示装置においては、基本パターン部の透光パターン104の幅寸法Aは、露光装置の解像度の限度近くの最小寸法に設定されることが多い。したがって、通常では、開口部電極形成マスクのパターンの最小寸法は、露光装置の解像度を超えて小さくしても、所望の寸法、形状に露光することができない。ここで、光近接効果を利用することで、露光装置の解像度以下の微細パターンを得ることができる。これは、露光装置の解像度の限度近くの基本パターン部の周辺部に、光の回折等を考慮した形状、寸法の補正パターン部を設けることで、基本パターン部の周辺部の形状を補正し、露光装置の解像度以上の精度のパターンを形成できることに基づく。図10の例では、基本パターン部である透光パターン104のみでは、露光装置の解像度の限界によって、露光パターンがその長手方向の端部において円弧状になるが、補正パターン部である微細な透光パターン109を設けることで、円弧状形状を補正して、かなり矩形に近い露光パターンとすることができる。
【0071】
したがって、光近接効果を利用するため、補正パターン部である透光パターン109の寸法は、基本パターン部である透光パターン104の最小寸法よりも小さく設定される。上記の例で、露光装置の分解能が約3μmとすれば、基本パターン部である透光パターン104の最小寸法を露光装置の分解能の約3μmよりも大きい約3.4μmとし、補正パターン部としての透光パターン109の最小寸法を露光装置の分解能の約3μmより小さい約1.4μmとすることができる。
【0072】
再び図8に戻り、第1露光工程の後は、第2マスクを用いて第2露光が行われる(S16)。第2マスクは、図6で説明した他方側端部における傾斜パターンを円弧形状化しないように形成するために用いられる。図11に、第2マスク110の例を示す。
【0073】
図11には、第2マスク110について1サブ画素分の様子が示されている。第2マスク110は、第1マスク100によって露光された状態と位置合わせされた状態で露光が行われるので、図11には、位置合わせされた状態の第1マスク100が破線で示されている。図11に示されているように、第2マスク110は、第1マスク100の一方側端部を含んで広い範囲が非透光パターン112で、第1マスク100の他方側端部のところが透光パターン114として構成されている。
【0074】
透光パターン114は、第1マスク100の非透光パターン102の細長い腕部の他方側端部106において、第1マスク100の複数の溝状開口部である透光パターン104の他方側端部をそれぞれ開いて相互に接続するように、第1マスク100の透光パターン104の長手方向に対し所定の傾斜角度で交差する傾斜パターン116を有する。
【0075】
図12に、傾斜パターン116付近の詳細図を示す。ここでは、非透光パターン112に斜線が付されて示されており、したがって、斜線が付されていない部分が透光パターン114である。なお、第1マスクの透光パターン104が破線で示されている。非透光パターン112は、鋸歯状の形状を有する。この鋸歯形状は、傾斜パターン116を、第1マスクにおいて、幅寸法Wを有する複数の非透光パターンのそれぞれの他方側端部において、傾斜パターン116を同じように配置するために、傾斜パターン116をピッチMで繰り返し配置するためのものである。ピッチMは、第1マスクの非透光パターンの配置ピッチ、すなわち透光パターン104の配置ピッチと同じであり、したがって、非透光パターンの幅Wよりも十分大きい。
【0076】
傾斜パターン116の傾斜角度は、図7で説明したように、ラビング方向R−Rとなす傾斜角度θが0度から+90度の間の角度範囲となるように設定される。このように、傾斜パターン116の傾斜角度を設定することで、ディスクリネーションの発生を抑制できる。したがって、図7に関連して説明したように、傾斜パターン116は、図12における右方向に適当に延ばすことができる。これに伴い、第1マスクの透光パターン104の他方側端部も、図12における右方向に適当に延ばすことができる。すなわち、開口率等を考慮すると、第1マスクの透光パターン104は、通常の場合の透光パターンよりも、他方側端部がさらに他方側である右方向に延びて、長手方向にさらに長いパターンとすることが好ましい。どこまで長手方向を延ばせるかは、隣接するパターンとの関係で定めることができる。
【0077】
再び図8に戻り、第1露光と第2露光が行われた感光性レジスト膜の現像が行われる(S18)。現像液としては、上記の例で、感光性レジストの露光された部分を除去する特性の適当な市販現像液を用いることができる。現像されたレジスト膜の形状は、図6で目標とされた形状となる。すなわち、細長い腕部における傾斜パターンは、図6のように閉じたパターンを露光するのではなく、第2露光工程(S16)において、細長い腕部の幅Wよりも十分長い傾斜パターンとして露光されるので、円弧形状となることが抑制される。
【0078】
そして、このようにして形成された感光性レジストをエッチングマスクとして、開口部電極膜のエッチングが行われる(S20)。エッチングとしては、上記の例では、ITOをエッチングできる適当な腐食液を用いることができる。可能であれば、腐食液を用いずに、ドライエッチング技術を用いるものとしてもよい。
【0079】
エッチングが終了すると、用済みとなった感光性レジスト膜の除去が行われる(S22)。レジスト膜の除去には、適当な反応ガスを用いたアッシャを用いることができ、あるいは除去液を用いることもできる。このようにして、櫛歯型形状の開口部の端部において、円弧形状となることが抑制された共通電極が形成される(S24)。
【0080】
なお、上記では、第1マスクに、部分補正用パターンを有するものとして説明したが、光近接効果を利用しない場合には、部分補正用パターンを有しない第1マスクを用いるものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】ディスクリネーションを説明するための液晶表示装置の断面図である。
【図2】図1に対応する平面図である。
【図3】共通電極と画素電極との間に形成される電界の様子を説明する図である。
【図4】スリットのエッジ部分でディスクリネーションが発生する様子を説明する図である。
【図5】本発明に係る実施の形態において、櫛歯型開口部を有する共通電極を模式的に示す図である。
【図6】本発明に係る実施の形態を説明するために、ディスクリネーションの発生を抑制することができる開口部電極形成露光マスクの例を示す図である。
【図7】図6における傾斜パターンの詳細を示す図である。
【図8】本発明に係る実施の形態において、開口部電極形成方法の手順を示すフローチャートである。
【図9】本発明に係る実施の形態において、第1マスクの様子を示す図である。
【図10】図9における一部詳細図である。
【図11】本発明に係る実施の形態において、第2マスクの様子を示す図である。
【図12】図11における一部詳細図である。
【符号の説明】
【0082】
10 液晶表示装置、20 素子側基板、22,62 ガラス基板、24 半導体層、26 ゲート絶縁膜、28 ゲート電極、29 共通電極配線、30 層間絶縁膜、32,33 ソース・ドレイン配線、34 共通電極接続部、35 データライン、36 絶縁膜、38 画素電極、40 FFS絶縁膜、42,81 共通電極、43 スリット、50 液晶分子、60 対向側基板、64 ブラックマトリクス、66 カラーフィルタ、80 スイッチング素子、82 透明導電材料膜部、84 開口部、86,96,106 他方側端部、88,98,108 一方側端部、90 開口部電極形成露光マスク、92,102,112 非透光パターン、94,104,109,114 透光パターン、97,116 傾斜パターン、99 部分補正用パターン、100 第1マスク、110 第2マスク。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶分子を介して対向する一対の基板のうち片方の基板に前記液晶分子を駆動する一対の電極が設けられる液晶表示装置の製造に用いられ、前記一対の電極のうち少なくとも一方側電極に電界を通す開口部として、開口部の長手方向の一方側端部が閉じており、他方側端部が開いている櫛歯型形状を形成してこれを開口部電極とする開口部電極形成方法であって、
前記開口部電極を構成する膜を形成する膜形成工程と、
前記膜を覆って感光性レジストを形成するレジスト形成工程と、
前記櫛歯型形状の前記開口部の前記長手方向に対応して、前記長手方向の両端部がそれぞれ閉じている細長い溝状開口部を複数分離して配置されるスリット型形状に対応する透光パターンまたは非透光パターンを有する第1マスクを用いて、前記感光性レジストを露光する第1露光工程と、
前記櫛歯型形状の前記開口部の前記他方側端部に対応して、前記第1マスクの前記複数の溝状開口部の両端部のうちの他方側端部をそれぞれ開いて相互に接続するように、前記溝状開口部の長手方向に対し所定の傾斜角度で交差する所定形状に対応する透光パターンまたは非透光パターンを有する第2マスクを用いて、前記感光性レジストを再度露光する第2露光工程と、
第1露光工程と第2露光工程に基づいて、前記感光レジストについて前記櫛歯状型形状を形成し、前記櫛歯型形状の開口部を有する開口部電極を形成することを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の液晶表示装置の製造方法において、
前記第2露光工程は、
前記傾斜角度が、前記液晶分子を初期配向するラビング方向に対して0度と90度の間の角度範囲であり、櫛歯形状が形成できる角度範囲である前記第2マスクを用いることを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の液晶表示装置の製造方法において、
前記第1露光工程は、
前記一方側端部の前記開口部が拡張されている前記第1マスクを用いることを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の液晶表示装置の製造方法において、
前記第1露光工程は、
前記長手方向端部の延びる方向が前記液晶分子を初期配向するラビング方向となす傾斜角度が正方向の角度であるときは、前記溝状開口部の長手方向の延びる方向をX軸としその垂直方向をY軸とした円形の第2象限部分に対応する前記一方側端部の前記開口部が拡張され、前記傾斜角度が負方向の角度であるときは、前記円形の第3象限部分に対応する前記一方側端部の前記開口部が拡張されている第1マスクを用いることを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
【請求項5】
請求項3に記載の液晶表示装置の製造方法において、
前記第1露光工程は、
前記開口部が拡張される部分は、前記開口部が拡張されないときの溝状開口部の基本パターン部の最小パターン寸法よりも小さいパターン寸法を有することを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
【請求項1】
液晶分子を介して対向する一対の基板のうち片方の基板に前記液晶分子を駆動する一対の電極が設けられる液晶表示装置の製造に用いられ、前記一対の電極のうち少なくとも一方側電極に電界を通す開口部として、開口部の長手方向の一方側端部が閉じており、他方側端部が開いている櫛歯型形状を形成してこれを開口部電極とする開口部電極形成方法であって、
前記開口部電極を構成する膜を形成する膜形成工程と、
前記膜を覆って感光性レジストを形成するレジスト形成工程と、
前記櫛歯型形状の前記開口部の前記長手方向に対応して、前記長手方向の両端部がそれぞれ閉じている細長い溝状開口部を複数分離して配置されるスリット型形状に対応する透光パターンまたは非透光パターンを有する第1マスクを用いて、前記感光性レジストを露光する第1露光工程と、
前記櫛歯型形状の前記開口部の前記他方側端部に対応して、前記第1マスクの前記複数の溝状開口部の両端部のうちの他方側端部をそれぞれ開いて相互に接続するように、前記溝状開口部の長手方向に対し所定の傾斜角度で交差する所定形状に対応する透光パターンまたは非透光パターンを有する第2マスクを用いて、前記感光性レジストを再度露光する第2露光工程と、
第1露光工程と第2露光工程に基づいて、前記感光レジストについて前記櫛歯状型形状を形成し、前記櫛歯型形状の開口部を有する開口部電極を形成することを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の液晶表示装置の製造方法において、
前記第2露光工程は、
前記傾斜角度が、前記液晶分子を初期配向するラビング方向に対して0度と90度の間の角度範囲であり、櫛歯形状が形成できる角度範囲である前記第2マスクを用いることを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の液晶表示装置の製造方法において、
前記第1露光工程は、
前記一方側端部の前記開口部が拡張されている前記第1マスクを用いることを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の液晶表示装置の製造方法において、
前記第1露光工程は、
前記長手方向端部の延びる方向が前記液晶分子を初期配向するラビング方向となす傾斜角度が正方向の角度であるときは、前記溝状開口部の長手方向の延びる方向をX軸としその垂直方向をY軸とした円形の第2象限部分に対応する前記一方側端部の前記開口部が拡張され、前記傾斜角度が負方向の角度であるときは、前記円形の第3象限部分に対応する前記一方側端部の前記開口部が拡張されている第1マスクを用いることを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
【請求項5】
請求項3に記載の液晶表示装置の製造方法において、
前記第1露光工程は、
前記開口部が拡張される部分は、前記開口部が拡張されないときの溝状開口部の基本パターン部の最小パターン寸法よりも小さいパターン寸法を有することを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−216501(P2008−216501A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−51976(P2007−51976)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(304053854)エプソンイメージングデバイス株式会社 (2,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(304053854)エプソンイメージングデバイス株式会社 (2,386)
【Fターム(参考)】
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