説明

液晶表示装置

【課題】ブルー相液晶を用いた液晶表示装置において、ヒステリシスの発生や立ち下がり時間の遅れを補正することが可能な技術を提供することである。
【解決手段】
線状の第1電極と第2電極とが配置される第1基板と、前記第1基板と対向配置される第2基板とを有する液晶表示装置であって、Y方向に延在しX方向に並設される第1ドレイン線及び第2ドレイン線と、前記X方向に延在し前記Y方向に並設されるゲート線と、前記ゲート線からの走査信号に同期して当該第1ドレイン線からのドレイン信号を前記第1電極に供給する第1薄膜トランジスタと、前記画素毎に、前記ゲート線からの走査信号に同期して当該第2ドレイン線からのドレイン信号を前記第2電極に供給する第2薄膜トランジスタと、前記第2基板の対向面側に形成され、少なくとも前記画素の形成領域を覆うようにして形成される平板状の第3電極とを備える液晶表示装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に係わり、特に、ブルー相を示す液晶層を用いた液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高コントラストかつ高速応答が可能な高分子安定化ブルー相液晶が知られている。高分子安定化ブルー相液晶は、電圧無印加時に光学等方性を示し、電界の印加により光学異方性が変化する特性を有している。この高分子安定化ブルー相液晶を用いた液晶表示装置として、例えば、特許文献1に記載の液晶表示素子がある。この特許文献1に記載の技術では、高分子安定化ブルー相液晶を一対の透明基板で挟持される構成となっている。一方の透明基板には櫛歯状の一対の電極が形成され、一方の櫛歯状電極(画素電極)に表示画像に対応した階調信号(映像信号、ドレイン信号)が供給され、他方の櫛歯状電極(共通電極)に階調信号の基準となる共通信号が供給され、透明基板の表面方向に平行な電界を印加するIPS(In-Plane Switching)方式の液晶表示装置を形成している。
【0003】
このような高分子安定化ブルー相液晶を用いた液晶表示装置では、駆動電圧の低減のために、誘電率異方性(Δε)が高い高分子安定化ブルー相液晶を用いられている。しかしながら、誘電率異方性の高い液晶層は不純物イオンを取り込みやすいと考えられており、動画ボケや焼き付きの発生原因になると考えられている。このような不純物イオンの偏りを緩和した液晶表示装置として、特許文献2に記載の液晶表示装置がある。この特許文献2に記載の液晶表示装置では、画像表示を行う際に、画素電極と共通電極とを同じ電位とする構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2005/090520号
【特許文献2】特開2006−343697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、本願発明の発明者らがIPS方式の素子において、高分子安定化ブルー相液晶で液晶層を形成した液晶表示装置において、画素の印加する電圧Vと画素の透過率TとのV−T特性を評価したところ、印加電圧Vと透過率Tとの間にヒステリシスが発生することが判明した。さらには、応答特性を評価したところ、立ち上がり時間は早いが、立ち下がり時間が相対的に遅いことが判明した。
【0006】
このヒステリシスの発生や立ち上がり時間よりも立ち下がり時間の方が遅い原因としては、液晶粘度が非常に高いことや、電界印加による任意の液晶配向状態と格子構造の変形状態から、電圧無印加としたときの元の状態に戻る過程が、液晶配向と格子構造の両方の変化速度に依存するためと考えられる。また、高分子安定化ブルー相液晶では、電界の印加に伴って、液晶配向の変化による格子の歪みが生じるためとも考えられ、その解決方法が切望されている。
【0007】
本発明はこれらの問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、ブルー相液晶を用いた液晶表示装置において、ヒステリシスの発生や立ち下がり時間の遅れを補正することが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)前記課題を解決すべく、線状の第1電極と第2電極とが櫛歯状に形成される画素がマトリクス状に配置される第1基板と、前記第1基板とブルー相液晶を介して対向配置される第2基板と、前記第1基板の裏面側からバックライト光を照射するバックライト装置とを有し、前記第1電極と前記第2電極との間に生じる電界により前記ブルー相液晶を駆動する液晶表示装置であって、Y方向に延在しX方向に並設される第1ドレイン線と、前記Y方向に延在し前記X方向に並設される第2ドレイン線と、前記X方向に延在し前記Y方向に並設されるゲート線と、前記第1ドレイン線にドレイン電極が接続され、前記ゲート線からの走査信号に同期して当該第1ドレイン線からのドレイン信号を前記第1電極に供給する第1薄膜トランジスタと、前記画素毎に、前記第2ドレイン線に接続され、前記ゲート線からの走査信号に同期して当該第2ドレイン線からのドレイン信号を前記第2電極に供給する第2薄膜トランジスタと、前記第2基板の前記ブルー相液晶層側の表面に形成され、少なくとも前記画素の形成領域を覆うようにして形成される平板状の第3電極とを備える液晶表示装置である。
【0009】
(2)前記課題を解決すべく、線状の第1電極と第2電極とが櫛歯状に形成される画素がマトリクス状に配置される第1基板と、前記第1基板とブルー相液晶を介して対向配置される第2基板と、前記第1基板の裏面側からバックライト光を照射するバックライト装置とを有し、前記第1電極と前記第2電極との間に生じる電界により前記ブルー相液晶を駆動する液晶表示装置であって、前記第2基板は、前記ブルー相液晶層側の表面に形成され、少なくとも前記画素の形成領域を覆うようにして形成される平板状の第3電極を備え、前記第1電極と前記第2電極とに電圧を印加し、前記第1基板の面内方向に平行な電界を生じさせ、表示画像に対応して前記ブルー相液晶を変調駆動する第1期間と、前記第1電極と前記第2電極とに略同一電圧を印加すると共に、前記第3電極に所定電圧を印加し、前記第1基板の法線方向に平行な電界を生じさせ、前記ブルー相液晶を変調駆動する第2期間とを順次切り替え、前記ブルー相液晶を変調駆動する駆動回路を備える液晶表示装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ブルー相液晶を用いた液晶表示装置において、ヒステリシスの発生や立ち下がり時間の遅れを補正することができる。
【0011】
本発明のその他の効果については、明細書全体の記載から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態1の液晶表示装置の概略構成を説明するための断面図である。
【図2】本発明の実施形態1の液晶表示装置における画素の等価回路及び駆動システムの概略構成を説明するための図である。
【図3】本発明の実施形態1の液晶表示装置における電界印加動作を説明するための図である。
【図4】本発明の実施形態1の液晶表示装置における横電界印加時の動作を説明するための拡大図である。
【図5】本発明の実施形態1の液晶表示装置における縦電界印加時の動作を説明するための拡大図である。
【図6】本発明の液晶表示装置における印加電圧Vと透過率Tとの特性(V−T特性)を示す図である。
【図7】従来のブルー相液晶を用いた液晶表示装置における印加電圧Vと透過率Tとの特性(V−T特性)を示す図である。
【図8】本発明の実施形態2の液晶表示装置における各電極への電圧印加の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明は省略する。
【0014】
〈実施形態1〉
図1は本発明の実施形態1の液晶表示装置の概略構成を説明するための断面図であり、特に、マトリクス状に配置される画素領域の断面図である。ただし、中に示すX,Y,Zは、それぞれX軸,Y軸,Z軸を示す。また、第1画素電極PX1及び第2画素電極PX2等の各薄膜層は公知のフォトリソグラフィ技術により形成可能であるので、形成方法の詳細な説明は省略する。
【0015】
実施形態1の液晶表示装置は、図1に示すように、導電膜からなる第1画素電極(第1電極)PX1及び第2画素電極(第2電極)PX2並びに薄膜トランジスタ等が形成される第1基板SUB1と、第1基板SUB1に対向して配置され、透明導電膜からなる共通電極(第3電極)及びカラーフィルタ(着色層)等が形成される第2基板SUB2と、第1基板SUB1と第2基板SUB2とで挟持される光学的等方性を有するブルー相液晶(例えば、高安定化ブルー相液晶)LCとで構成される液晶表示パネルPNLを有する。この液晶表示パネルPNLと該液晶表示パネルPNLの光源となる図示しないバックライト装置とを組み合わせることにより、液晶表示装置が構成されている。なお、バックライト装置は、所望の白表示が可能な色調を有するものであれば、液晶表示パネルPNLの裏面側に光源を配置する直下型方式、及び液晶表示パネルPNLの裏面側に導光板を配置し、該導光板の側壁部分に光源を配置するサイドライト方式等の何れの方式であってもよい。
【0016】
第1基板SUB1と第2基板SUB2との固定及びブルー相液晶LCの封止は、第2基板の周辺部に環状に塗布された図示しないシール材で固定され、ブルー相液晶LCも封止される構成となっている。また、第1基板SUB1及び第2基板SUB2としては、例えば周知のガラス基板が基材として用いられるのが一般的であるが、樹脂性の透明絶縁基板であってもよい。さらには、実施形態1の液晶表示装置では、ブルー相液晶LCが封入された領域の内で表示画素(以下、画素と略記する)の形成される領域が表示領域となる。従って、液晶が封入されている領域内であっても、画素が形成されておらず表示に係わらない領域は表示領域とはならない。なお、以下の説明では、液晶表示パネルPNLの説明においても、液晶表示装置と記すことがある。
【0017】
図1に示すように、第1基板SUB1のブルー相液晶LCの側(対向面側)には、Y方向に延在しX軸方向に並設される線状の第1画素電極PX1と、該第1画素電極と同様にY方向に延在しX方向に並設される線状の第2画素電極PX2とが画素毎に形成され、第1画素電極PX1と第2画素電極PX2とがX方向に交互に櫛歯状に並設される構成となっている。なお、第1画素電極PX1と第2画素電極PX2とは同層に限定されることはなく、例えば、絶縁膜を介して、第1画素電極PX1と第2画素電極PX2とが上面から見てX方向に交互に櫛歯状に並設される構成であってもよい。また、本発明の効果を得るためには、第1画素電極PX1及び第2画素電極PX2の電極の材質と電極の幅は限定されることはなく、例えば、ITO(Indium-Tin-Oxide)等の透明導電膜で第1画素電極PX1及び第2画素電極PX2を形成してもよい。
【0018】
また、後に詳述するように、第1画素電極PX1は図示しない第1薄膜トランジスタのソース電極に電気的に接続され、該第1薄膜トランジスタを介して第1階調電圧が入力される構成となっている。同様にして、第2画素電極PX2は図示しない第2薄膜トランジスタのソース電極に接続され、該第2薄膜トランジスタを介して第2階調電圧が入力される構成となっている。
【0019】
第1画素電極PX1及び第2画素電極PX2の上層の全面には、例えば、無機化合物である窒化珪素(Si)膜からなる絶縁膜PASが形成されている。ただし、絶縁膜PASは窒化珪素膜に限定されることはなく、酸化シリコン膜(SiO,SiO)等の他の無機化合物であってもよい。また、第1画素電極PX1及び第2画素電極PX2と絶縁膜PASとの形成順番はこれに限定されることはなく、絶縁膜PASの上層に第1画素電極PX1及び第2画素電極PX2を形成する構成であってもよい。さらには、実施形態1の液晶表示装置では、ブルー相液晶LCを用いる構成としているので、配向膜が不要であるが、絶縁膜PASの上層に格子面をそろえるために第1基板SUB1及び/又は第2基板SUB2のブルー相液晶LCの側の面に公知の配向膜を形成してもよい。
【0020】
一方、第2基板SUB2のブルー相液晶LCの側には、第2基板SUB2の少なくとも表示領域の全面を覆うように共通電極CTが形成され、該共通電極CTの上層に赤(R),緑(G),青(B)の着色層からなるカラーフィルタCFが形成されている。
【0021】
また、実施形態1の液晶表示パネルPNLでは、第1基板SUB1のブルー相液晶LCに面しない側の面、すなわち液晶表示パネルPNLのバックライト装置側の面には偏光板POL1が配置されている。また、第2基板SUB2のブルー相液晶LCに面しない側の面、すなわち液晶表示パネルPNLの画像表示側の面には偏光板POL2が配置されている。このバックライト装置側の偏光板POL1と表示面側の偏光板POL2とは、偏光方向が90°の角度をなす、いわゆるクロスニコル(直交ニコル)配置とされている。
【0022】
さらには、隣接する第1画素電極PX1と第2画素電極PX2との電極間隔をd1、第1及び第2画素電極PX1,PX2と共通電極CTとの電極間隔をd2とした場合、第1画素電極PX1と第2画素電極PX2との電極間隔d1よりも第1及び第2画素電極PX1,PX2と共通電極CTとの電極間隔d2が大きいことが好ましい。電極間隔d1よりも電極間隔d2を大きくすることにより、第1画素電極PX1及び第2画素電極PX2に画像表示を行うための諧調電圧を印加した際に、画像表示に有効な横電界を得ることができるからである。
【0023】
図2は本発明の実施形態1の液晶表示装置における画素の等価回路及び駆動システムの概略構成を説明するための図である。ただし、容量Chは同一画素内に配置される一対の櫛歯状に形成される第1画素電極PX1と第2画素電極PX2との間におけるブルー相液晶の等価回路を示す。また、容量Cv1は第1画素電極PX1と共通電極CTとの間におけるブルー相液晶の等価回路、容量Cv2は第2画素電極PX2と共通電極との間におけるブルー相液晶の等価回路を示す。
【0024】
図2に示すように、実施形態1の液晶表示装置は、例えば、第1基板SUB1上にY方向(列方向)に延在しX方向(行方向)にそれぞれ並設される第1ドレイン線(第1の映像信号線)DL1及び第2ドレイン線(第2の映像信号線)DL2と、X方向に延在しY方向に並設されるゲート線(走査信号線)が形成される構成となっている。このような構成からなる実施形態1の液晶表示装置では、例えば、隣接する2本の第1ドレイン線DL1と隣接する2本のゲート線GLとで囲まれる領域(点線で示す領域)が1つの画素PXLを構成し、複数の画素PXLが、第1ドレイン線DL1及びゲート線GLに沿って、表示領域内においてマトリックス状に配置される構成となっている。
【0025】
各画素PXLには、それぞれ第1薄膜トランジスタTFT1と第2薄膜トランジスタTFT2との2つの薄膜トランジスタが配置される構成となっており、第1薄膜トランジスタTFT1のドレイン電極は第1ドレイン線DL1に接続され、第2薄膜トランジスタTFT2のドレイン電極は第2ドレイン線DL2に接続されている。このとき、X方向に配列される各画素PXLに配置される第1薄膜トランジスタTFT1及び第2薄膜トランジスタTFT2のゲート電極は同一のゲート線GLに接続されている。また、第1薄膜トランジスタTFT1は第1ドレイン線DL1とゲート線GLとが交差する近傍に配置され、第2薄膜トランジスタTFT2は第2ドレイン線DL2とゲート線GLとが交差する近傍に配置される。なお、第1薄膜トランジスタTFT1及び第2薄膜トランジスタTFT2は、例えば、周知のアモルファスシリコン層、低温ポリシリコン層、あるいは微結晶シリコン層等を半導体層とする薄膜トランジスタや、アモルファス酸化物半導体(IGZO)等を用いることが可能である。
【0026】
この構成からなる実施形態1の液晶表示パネルは、X方向の同一行に配列される第1薄膜トランジスタTFT1及び第2薄膜トランジスタTFT2は、ゲート線GLからのゲート信号に同期して、それぞれが接続される第1ドレイン線DL1又は第2ドレイン線DL2からドレイン信号を取り込む。このとき、後に詳述するように、第1ドレイン線DL1に液晶表示における基準電圧が出力され、第2ドレイン線DL2に映像表示に対応した階調電圧が出力されている場合には、ゲート信号に同期して第1薄膜トランジスタTFT1のソース電極が接続される第1画素電極PX1に基準電圧が供給されると共に、第2薄膜トランジスタTFT2のソース電極が接続される第2画素電極PX2に階調電圧が供給される。この結果、第1薄膜トランジスタTFT1に対応する第1画素電極PX1と、第2薄膜トランジスタTFT2に対応する第2画素電極PX2との間に第1基板SUB1の面内方向に平行な電界(横電界、水平電界)がブルー相液晶LC(当該ブルー相液晶LCの等価回路である容量Ch)に印加され、当該ブルー相液晶LCが駆動される。
【0027】
一方、第1ドレイン線DL1と第2ドレイン線DL2とに映像表示に対応した同じ電圧レベルの階調電圧が出力されている場合には、ゲート信号に同期して第1薄膜トランジスタTFT1に対応する第1画素電極PX1と第2薄膜トランジスタTFT2に対応する第2画素電極PX2には同じ電圧レベルの階調電圧が供給される。その結果、第1画素電極PX1と第2画素電極PX2とが同じ電圧レベルとなる、すなわち第1基板SUB1の面内方向に平行な電界(横電界)は印加されないこととなる。
【0028】
また、実施形態1の液晶表示装置では、第2基板SUB2に共通電極CTを備えている。これにより、第1薄膜トランジスタTFT1に対応する第1画素電極PX1と共通電極CTとの間、及び第2薄膜トランジスタTFT2に対応する第2画素電極PX2と共通電極CTとの間にもそれぞれ電界が印加可能となっている。このとき、実施形態1の液晶表示装置では、第1基板SUB1と第2基板SUB2とはブルー相液晶LCを介して対向配置される構成となっているので、第1基板SUB1及び第2基板SUB2の面外方向すなわち第1基板SUB1及び第2基板SUB2の法線方向の電界(縦電界、垂直電界)をブルー相液晶LC(当該ブルー相液晶LCの等価回路である容量Cv1,Cv2)に印加可能である。
【0029】
さらには、実施形態1の液晶表示装置では、各画素に信号を供給する走査ドライバ(走査線駆動回路)SDR、第1の映像信号(第1のドレイン信号)を供給する第1信号ドライバ(第1ドレイン線駆動回路)DDR1、第2の映像信号(第2のドレイン信号)を供給する第2信号ドライバ(第2ドレイン線駆動回路)DDR2、及び共通電極CTに基準電圧と同じ電圧を供給する共通電極ドライバ(共通電極駆動回路)CDRからなる駆動回路(ドライバ回路)を備えている。また、実施形態1の液晶表示装置は、外部からの図示しない映像信号に基づいて、実施形態1の液晶表示パネルの動作を制御する表示制御回路DCを備えている。この表示制御回路DCは信号制御回路SCを備えると共に、共通電極ドライバCDR及び走査ドライバSDRを制御する構成となっており、信号制御回路SCは第1信号ドライバDDR1と第2信号ドライバDDR2とに送る信号を制御する構成となっている。
【0030】
なお、実施形態1の液晶表示装置においては、例えば、前述の駆動回路や制御回路をフレキシブルプリント基板FPCにテープキャリア方式やCOF(Chip On Film)方式で搭載し、第1基板SUB1に設けた図示しない接続部を介して各駆動信号を入力する構成としたが、これに限定されることはなく、これらの駆動回路を半導体チップで形成し、その一部又は全てを第1基板SUB1に搭載する構成であってもよい。さらには、第1及び第2薄膜トランジスタTFT1,TFT2と共に、駆動回路を第1基板SUB1上に直接形成してもよい。
【0031】
このように、実施形態1の液晶表示パネルでは、第1薄膜トランジスタTFT1と第2薄膜トランジスタTFT2との二つのスイッチ素子を備え、第1及び第2画素電極PX1,PX2と共通電極CTとの三つの電極のそれぞれに任意の電圧を印加することができる。これにより第1及び第2画素電極PX1,PX2と共通電極CTとの三つの電極間に任意の電界分布を形成することが可能になる。その結果、ブルー相液晶LCに印加する電界方向の制御が可能となり、ブルー相液晶LCに印加する電圧が諧調変化の前後において増加する時(立ち上がり時)と、減少する時(立ち下がり時)とを共に駆動可能となる。ただし、好ましくは、後に詳述するように、第1及び第2画素電極PX1,PX2と共通電極CTとの三つの電極のうちの二つに任意の同じ電圧を印加することにより、本願発明の特徴的な液晶駆動に必要な電界分布を形成することが好ましい。このように制御することにより、簡易な構成で、後に詳述するブルー相液晶LCに印加する電界方向の制御が可能となり、ブルー相液晶LCに印加する電圧が諧調変化の前後において増加する時(立ち上がり時)と、減少する時(立ち下がり時)とを共に駆動可能となるからである。
【0032】
図3に本発明の実施形態1の液晶表示装置における電界印加時動作を説明するための図、図4に本発明の実施形態1の液晶表示装置における横電界印加時の動作を説明するための拡大図、図5に本発明の実施形態1の液晶表示装置における縦電界印加時の動作を説明するための拡大図を示し、以下、図1〜図5に基づいて、実施形態1の液晶表示装置における画像表示動作を説明する。ただし、以下の説明では、一例として、図2中に点線で示す画素PXLにおける動作を詳細に説明する。また、以下の説明では、基準電圧V0が0(V)(ゼロボルト)の場合について説明するが、これに限定されることはない。さらには、以下の動作は、基準電圧V0よりも各画素電極に印加する電圧が高い場合について説明するが、共通電極と各画素電極との電位差及び第1画素電極と第2画素電極との電位差が同じであればよく、フレーム反転駆動等に好適である。
【0033】
図3に示す時刻t0〜t1の期間(画像表示期間、第1期間)においては、図2に示す実施形態1の回路構成において、第2ドレイン線DL2には第2信号ドライバDDR2から基準電圧V0=0Vが供給され、第1ドレイン線DL1には第1信号ドライバDDR1から電圧VT1が供給される。このとき、走査ドライバSDRからのゲート信号(例えば、ハイレベル)に同期して、第2薄膜トランジスタTFT2がONとなり、第2画素電極PX2に基準電圧V0=0Vが印加され、ゲート信号のローレベルへの変化で第2薄膜トランジスタTFT2はOFFとなり、第2画素電極PX2は0Vに保持される。同様に、ゲート信号に同期して第1薄膜トランジスタTFT1もON/OFFされ、第1画素電極PX1に電圧VT1が印加・保持される。このとき、共通電極ドライバCDRの出力はハイインピーダンス状態となっており、共通電極CTはフローティング(浮遊)状態となる。
【0034】
その結果、図3(a)に示すように、時刻t0〜t1の期間では、第2画素電極PX2の電圧Vpx2は基準電圧V0=0(V(ボルト))、第1画素電極PX1の電圧Vpx1は電圧VT1にそれぞれ保持される。また、共通電極CTは電圧が印加されない状態に保持される。このとき、第1画素電極PX1と第2画素電極PX2との間には、VT1−V0=VT1−0(V)の電位差が生じ、図3(b)及び図4に示すように、第1基板SUB1の面内方向と平行な電界(横電界)EF1が生じる。これにより、ブルー相液晶LCには電位差VT1に対応する横電界が印加され、透過率T1での画像表示(画素表示)が行われる。このとき、実施形態1においては、図4に示すように、ブルー相液晶LCには横電界EF1のみが印加されることとなるので、黒表示時における光漏れを小さくでき、ダイナミックレンジを向上できる。
【0035】
次の時刻t1〜t2の期間(非表示期間、第2期間)においては、第2ドレイン線DL2には第2信号ドライバDDR2から電圧VT3が供給され、第1ドレイン線DL1には第1信号ドライバDDR1から電圧VT3が供給される。このとき、走査ドライバSDRからのゲート信号に同期して、第1薄膜トランジスタTFT1及び第2薄膜トランジスタTFT2がON/OFFされ、第1画素電極PX1と第2画素電極PX2とに電圧VT3が印加・保持される。このとき、共通電極ドライバCDRの出力は基準電圧V0=0Vになり、共通電極CTに0Vが印加される。
【0036】
その結果、時刻t1〜t2の期間においては、第1画素電極PX1及び第2画素電極PX2の電圧Vpx1,Vpx2は同じ電圧VT3に保持される。また、共通電極CTの電圧Vcは基準電圧V0=0(V)となり、期間t1〜t2において保持される。これにより、図3(c)及び図5に示すように、第1画素電極PX1と第2画素電極PX2との間には電界が生じない状態となる。一方、第1画素電極PX1と共通電極CTとの間、及び第2画素電極PX2と共通電極CTとの間には、VT3−V0=VT3−0(V)の電位差が生じ、第1基板SUB1の面外方向(法線方向)の電界(縦電界)EF2が生じる。すなわち、縦電界の印加期間では、第1基板SUB1の面内方向の電界である横電界EF1を印加しない構成とすると共に、縦電界EF2を印加する構成とすることによって、前の期間での電位差VT1の印加に伴うブルー相液晶LCの配向状態を、透過率T3に対応する配向状態にすみやかに変化させることができる。これにより、ブルー相液晶LCに透過率がT3となる横電界のみを印加した場合よりも、速い応答速度でブルー相液晶LCの配向を変化させることが可能となる。このときの電圧VT3は、次の表示期間である期間t2〜t3における透過率T2を得るための印加電圧VT2よりも小さい電圧であり、特に、ヒステリシス特性における下降時における透過率T2を得るための印加電圧よりも小さい電圧である。
【0037】
次の時刻t2〜t3の期間(画像表示期間、第1期間)においては、第2ドレイン線DL2には第2信号ドライバDDR2から基準電圧V0=0Vが供給され、第1ドレイン線DL1には第1信号ドライバDDR1から電圧VT2が供給される。ここで、走査ドライバSDRからのゲート信号に同期して、第2薄膜トランジスタTFT2がON/OFFされて第2画素電極PX2に基準電圧V0=0Vが印加・保持されると共に、第1薄膜トランジスタTFT1もON/OFFされて第1画素電極PX1に電圧VT2が印加・保持される。このとき、共通電極ドライバCDRの出力はハイインピーダンス状態となり、共通電極CTはフローティング状態となる。
【0038】
その結果、時刻t2〜t3の期間においては、第2画素電極PX2の電圧Vpx2は基準電圧V0=0V、第1画素電極PX1の電圧Vpx1は電圧VT2にそれぞれ保持される。また、共通電極CTは電圧が印加されない状態に保持される。このとき、第1画素電極PX1と第2画素電極PX2との間には、VT2−V0=VT2−0(V)の電位差が生じ、図3(d)及び図4に示すように、横電界EF1が生じる。これにより、ブルー相液晶LCには電圧VT2の横電界が印加され、透過率T2での画像表示が行われる。このときに第2画素電極PX2の電圧Vpx2は、立ち上がり時に透過率T2を得るために必要となる電圧VT2である。
【0039】
時刻t3以降においても、順次、前の画像表示を行う期間と次の画像表示を行う期間との間において、縦電界EF2を印加する期間が設けられる。
【0040】
このように、実施形態1の液晶表示パネルでは、第1画素電極PX1及び第2画素電極PX2に画像表示に対応した電圧を供給して生じる横電界EF1により、ブルー相液晶LCを変調して所望の階調表示を行う画像表示期間と、次の画像表示期間において透過率が小さくなる画像表示を行う場合には、前の画像表示期間に続いて共通電極CTに基準電圧を印加すると共に、第1画素電極PX1及び第2画素電極PX2に次の画像表示期間における透過率よりも小さい透過率となる電圧を供給する非表示期間とを設ける構成となっている。すなわち、実施形態1の液晶表示装置では、横電界をブルー相液晶に印加する画像表示期間と、この画像表示期間に続く縦電界をブルー相液晶LCに印加する非表示期間とにより順次、画像表示を行う構成となっており、さらに非表示期間において、第1画素電極PX1及び第2画素電極PX2と共通電極CTとの電位差が、次の画像表示期間での透過率での第1画素電極PX1と第2画素電極PX2との電位差よりも小さくなるような電圧を、第1画素電極PX1及び第2画素電極PX2と共通電極CTとに供給する構成としている。従って、各画像表示期間においては、第1画素電極PX1及び第2画素電極PX2に供給する電圧は、前の画像表示期間での表示輝度(透過率)に依存することなく、すなわちブルー相液晶LCの有する印加電圧の上昇時と下降時におけるヒステリシス特性に依存することなく、透過率の上昇時の印加電圧の供給のみでの画像表示が可能となる。その結果、連続する画像表示期間では、常に上昇時の応答時間でブルー相液晶LCを駆動することとなるので、画像表示期間毎の応答時間を高速にすることができる。
【実施例】
【0041】
実施形態1の液晶表示装置の実施例として、第1基板SUB1及び第2基板SUB2として、厚みが0.7 mmのガラス基板を用い、この第1基板SUB1の液晶面側に、半導体層にアモルファスシリコンを用いた薄膜トランジスタTFT1,TFT2を形成する。また、これらの薄膜トランジスタTFT1,TFT2のソース電極に電気的に接続される第1画素電極PX1及び第2画素電極PX2として、例えば、クロムモリブデンを電極材料とする幅が10μmの線状の電極のそれぞれがほぼ平行となるように形成した。また、第2基板SUB2の液晶面側には、当該第2基板SUB2の表示領域を被うようにして、ITOからなる平板状の共通電極CTを形成した。また、絶縁膜PASは窒化珪素からなり、その膜厚を0.8μm で形成した。
【0042】
さらには、第1基板SUB1と第2基板SUB2の間に、直径25μmの高分子ビーズを分散させ、ブルー相液晶LCからなる液晶層のギャップを均一に保つ構成とした。ただし、ギャップを均一とするための構成はビーズに限定されることはなく、柱状スペーサ等の他の構成であってもよい。また、液晶層の厚さは、所望の電気光学特性が得られるように、任意の層厚とすればよく、25μmに限定されるものではない。そしてこの液晶層には、ブルー相液晶LCとして高分子安定化ブルー相液晶を狭持した。
【0043】
高分子安定化ブルー相液晶LCは、ネマチック液晶JC1041XX(チッソ社製)と4−pentyl−4’−cyanobiphenyl(5CB)(Aldrich社製)を等モルで混合した。さらに、カイラル剤としてZLI4572(メルク社製)を7.0(mol%)添加した。そこに、2―ethylhexyl acrylate(EHA)(Aldrich社製),RM257(Merck社製)を7:3で混合した混合モノマーを6.3(mol%)調整し、光重合開始剤として2,2―dimethoxyphenylacetophenone(DMPAP)(Aldrich社製)をモノマー量に対して10wt%加え加熱し、均一にした。さらには、365 nmの紫外光を1800 mJ照射し、高分子鎖を形成することで高分子安定化ブルー相液晶LCを作製した。
【0044】
この構成からなる本願発明の実施例1の液晶表示装置では、図6に示す表示期間における印加電圧Vに対する透過率Tの計測値を示すV−T特性の図に示すように、非表示期間(t1〜t2の期間)を除く表示期間(t0〜t1、t2〜t3の期間)に印加する電圧のみに着目した場合には、第1画素電極PX1と第2画素電極PX2との間の印加電圧Vに対する透過率TのグラフL1がヒステリシスを有しないV−T特性とすることができる。すなわち、矢印R1に示すように、第1画素電極PX1と第2画素電極PX2との間の印加電圧Vを0(V)から電圧V1まで順次大きくした場合と、矢印R2に示すように、印加電圧Vを電圧V1から0(V)まで順次小さくした場合とで、表示期間における所望の透過率Tを得るための印加電圧Vを所定の電圧Vとすることが可能となった。
【0045】
このように、表示期間(透過率T1)と次の表示期間(透過率T2<T1)との間の期間に、非表示期間を設け、この非表示期間における透過率をT2以下の透過率T3にすることにより、次の表示期間に高分子安定化ブルー相液晶LCに印加する電圧を矢印R1方向の電圧とすることが可能となり、表示期間では所望の透過率を得るための印加電圧Vを一定とすることができる。
【0046】
これに対して、高分子安定化ブルー相液晶を液晶層に用いた従来の液晶表示装置における印加電圧Vに対する透過率Tの計測値を示すV−T特性の図として、前述する実施形態1の液晶表示パネルにおいて、共通電極CTの電圧を印加しない状態とすると共に、第2画素電極PX2に基準電圧V0を印加して、第1画素電極PX1に印加する電圧を順次変化させて、高分子安定化ブルー相液晶LCへの印加電圧Vを変化させた場合の印加電圧Vに対する当該高分子安定化ブルー相液晶LCの透過率(光透過率)Tを計測した図7を示す。
【0047】
図7に示すグラフL2から明らかなように、高分子安定化ブルー相液晶LCを用いた従来の液晶表示装置では、高分子安定化ブルー相液晶LCに印加される印加電圧が矢印R1で示すように順次大きくなる場合と、矢印R2で示すように順次小さくなる場合とでは、異なる特性を示した。例えば、点a(透過率T=0(ゼロ))の状態から点b(透過率T=T2)に変化させる場合には、高分子安定化ブルー相液晶LCへの印加電圧Vを電圧VT2にする必要がある。一方、点cで示す透過率T1の状態から点bと同じ透過率T(=T2)を得るためには、高分子安定化ブルー相液晶LCへの印加電圧Vを電圧V’T2とする必要がある。ここで、印加電圧Vが点aから点bに変化させた場合と同じ電圧VT2であった場合には、点dでの透過率すなわち立ち下がり時の透過率T(=T’2)となり、所望の透過率T2よりも大きな透過率T’2となってしまう。
【0048】
これに対して、本願発明の実施形態1の液晶表示装置では、高分子安定化ブルー相液晶LCに対する表示期間でのV−T特性はグラフL1となるので、例えば、点a(透過率T=0(ゼロ))の状態から点b(透過率T=T2)に変化させる場合には、表示期間における高分子安定化ブルー相液晶LCへの印加電圧Vを電圧VT2にする。また、点cで示す透過率T1の状態から点bと同じ透過率T(=T2)を得るためにも、表示期間における高分子安定化ブルー相液晶LCへの印加電圧Vを電圧VT2とするのみで、所望の透過率T=T2での表示が可能となる。
【0049】
ただし、実施形態1の液晶表示装置において、非表示期間(t1〜t2)に共通電極CTに印加する電圧は、基準電圧V0=0Vに限定されることはなく、基準電圧V0以外であってもよい。この場合には、非表示期間(t1〜t2)における第1画素電極PX1及び第2画素電極PX2に印加する電圧VT3を、共通電極CTに印加する電圧Vcに応じて、その電位差がVT3となるように変更することにより、前述する効果を得ることができる。
【0050】
〈実施形態2〉
図8は本発明の実施形態2の液晶表示装置における各電極への電圧印加の動作を説明するための図であり、実施形態2の液晶表示装置は実施形態1の液晶表示装置における横電界の印加時及び縦電界印加時に共通電極CTが所定の電圧に保持される実施形態となる。実施形態2の液晶表示装置においては、共通電極CTに基準電圧V0=0Vが印加される場合について説明する。ただし、実施形態2の液晶表示装置では、共通電極ドライバCDRが共通電極CTに基準電圧V0を常に出力する構成が異なるのみで、他の構成は実施形態1と同様の構成である。従って、以下の説明では、共通電極CTが基準電圧V0に保持される場合の表示動作について詳細に説明する。
【0051】
実施形態2の液晶表示装置では、図8に示す時刻t0〜t1の期間において、共通電極CTに基準電圧V0=0Vが印加される構成となっている。このとき、第1画素電極PX1には透過率T1に対応する電圧VT1が印加され、第2画素電極PX2には基準電圧V0=0Vが印加される構成となっている。これにより、第1画素電極PX1の電圧Vpx1=VT1、第2画素電極PX2の電圧Vpx2=0V、及び共通電極CTの電圧Vc=0Vとなる。このとき、前述する実施形態1と同様に、実施形態2の液晶表示装置においても、第1画素電極PX1と第2画素電極PX2との電極間隔d1よりも第1及び第2画素電極PX1,PX2と共通電極CTとの電極間隔d2が大きく形成されている。従って、ブルー相液晶LCには、第1画素電極PX1と第2画素電極PX2との間の電位差VT1による横電界が、第1画素電極PX1と共通電極CTとの電位差VT1による縦電界よりも大きく作用することとなり、横電界に従った透過率T1の画素表示となる。
【0052】
時刻t1〜t2の期間においては、実施形態1と同様に、第1画素電極PX1及び第2画素電極PX2の電圧Vpx1,Vpx2は同じ電圧VT3に保持され、共通電極CTの電圧Vcは基準電圧V0=0(V)に保持される。従って、第1画素電極PX1と第2画素電極PX2との間には横電界が生じない状態となり、第1画素電極PX1と共通電極CTとの間、及び第2画素電極PX2と共通電極CTとの間には、電位差VT3の縦電界が生じることとなる。その結果、前の期間での電位差VT1の印加に伴うブルー相液晶LCの配向状態を、透過率T3に対応する配向状態にすみやかに変化させることができ、ブルー相液晶LCに透過率がT3となる横電界のみを印加した場合よりも、速い応答速度でブルー相液晶LCの配向を変化させることが可能となる。
【0053】
次の時刻t2〜t3の期間においては、共通電極CTに基準電圧V0=0Vが印加されると共に、第1画素電極PX1には透過率T2に対応する電圧VT2が印加され、第2画素電極PX2には基準電圧V0=0Vが印加される構成となっている。これにより、第1画素電極PX1の電圧Vpx1=VT2、第2画素電極PX2の電圧Vpx2=0V、及び共通電極CTの電圧Vc=0Vとなる。従って、ブルー相液晶LCには、第1画素電極PX1と第2画素電極PX2との間の電位差VT2による横電界が、第1画素電極PX1と共通電極CTとの電位差VT2による縦電界よりも大きく作用することとなり、横電界に従った透過率T2の画素表示となる。
【0054】
このように、実施形態2の液晶表示装置は共通電極CTに一定の電圧を印加する構成となっているので、実施形態1の液晶表示装置の効果に加えて、共通電極ドライバCDRの簡易な構成と形成可能とであるという格別の効果を得ることができる。
【0055】
ただし、実施形態2の液晶表示装置において、共通電極CTに印加する電圧は、基準電圧V0=0Vに限定されることはなく、基準電圧V0以外であってもよい。この場合には、非表示期間(t1〜t2)における第1画素電極PX1及び第2画素電極PX2に印加する電圧VT3を、共通電極CTに印加する電圧Vcに応じて、その電位差がVT3となるように変更する必要がある。
【0056】
さらには、実施形態2の液晶表示装置において、表示期間(t0〜t1,t2〜t3)における共通電極CTに印加する電圧Vcをそれぞれ異なる電圧にしてもよい。すなわち、表示期間(t0〜t1,t2〜t3)と非表示期間(t1〜t2)とにそれぞれ共通電極CTに印加する電圧Vcを異なる電圧としてもよい。この場合であっても、非表示期間(t1〜t2)における第1画素電極PX1及び第2画素電極PX2と共通電極CTとの電位差はVT3とすることにより、前述する効果を得ることができる。
【0057】
以上に説明した実施形態1,2の液晶表示装置では、画像表示期間(時刻t0〜t1及びt2〜t3)の後に非表示期間(時刻t1〜t2)を設ける構成としている。従って、例えば、1フレーム期間を2つの期間に分けて、一方の期間を表示期間とし、他方の期間を非表示期間とすることが可能である。
【0058】
なお、実施形態1,2の液晶表示装置では、画像表示期間に続く次の画像表示期間における透過率が減少する画素に対してのみ、非表示期間における縦電界の印加を行う構成であってもよい。
【0059】
以上、本発明者によってなされた発明を、前記発明の実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、前記発明の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【符号の説明】
【0060】
PNL……液晶表示パネル、SUB1……第1基板、SUB2……第2基板
CT……共通電極、PAS……絶縁膜、CF……カラーフィルタ、LC……ブルー相液晶
PX1……第1画素電極、POL1,2……偏光板、PX2……第2画素電極
DDR1……第1信号ドライバ、DL1……第1ドレイン線、DL2……第2ドレイン線
DDR2……第2信号ドライバ、CDR……共通電極ドライバ、SDR……走査ドライバ
DC……表示制御回路、SC……信号制御回路、GL……ゲート線、PXL……画素
TFT1……第1薄膜トランジスタ、TFT2……第2薄膜トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状の第1電極と第2電極とが櫛歯状に形成される画素がマトリクス状に配置される第1基板と、前記第1基板とブルー相液晶を介して対向配置される第2基板と、前記第1基板の裏面側からバックライト光を照射するバックライト装置とを有し、前記第1電極と前記第2電極との間に生じる電界により前記ブルー相液晶を駆動する液晶表示装置であって、
Y方向に延在しX方向に並設される第1ドレイン線と、前記Y方向に延在し前記X方向に並設される第2ドレイン線と、前記X方向に延在し前記Y方向に並設されるゲート線と、
前記第1ドレイン線にドレイン電極が接続され、前記ゲート線からの走査信号に同期して当該第1ドレイン線からのドレイン信号を前記第1電極に供給する第1薄膜トランジスタと、
前記画素毎に、前記第2ドレイン線に接続され、前記ゲート線からの走査信号に同期して当該第2ドレイン線からのドレイン信号を前記第2電極に供給する第2薄膜トランジスタと、
前記第2基板の前記ブルー相液晶層側の表面に形成され、少なくとも前記画素の形成領域を覆うようにして形成される平板状の第3電極とを備えることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記走査信号に同期して、前記第3電極に所定電位を供給する第1期間とフローティング状態に保持する第2期間とを切り替える前記第3電極の駆動回路を備えることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記第3電極を所定電位に保持する前記第3電極の駆動回路を備えることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記走査信号に同期して、
前記第1ドレイン線に映像信号を供給する第1駆動回路と、
前記第2ドレイン線に供給する電圧を制御し、前記映像信号の基準電位となる基準電圧と、前記第1駆動回路と同じ電圧の映像信号とを切り替えて供給する第2駆動回路とを備えることを特徴とする請求項1乃至3の内の何れかに記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記第1薄膜トランジスタと前記第2薄膜トランジスタは、同一の前記ゲート線に接続されることを特徴とする請求項1乃至4の内の何れかに記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記第1薄膜トランジスタは、前記ゲート線と前記第1ドレイン線との交差領域の近傍に形成され、
前記第2薄膜トランジスタは、前記ゲート線と前記第2ドレイン線との交差領域の近傍に形成されることを特徴とする請求項1乃至5の内の何れかに記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記ブルー相液晶は高分子安定化ブルー相液晶からなることを特徴とする請求項1乃至6の内の何れかに記載の液晶表示装置。
【請求項8】
線状の第1電極と第2電極とが櫛歯状に形成される画素がマトリクス状に配置される第1基板と、前記第1基板とブルー相液晶を介して対向配置される第2基板と、前記第1基板の裏面側からバックライト光を照射するバックライト装置とを有し、前記第1電極と前記第2電極との間に生じる電界により前記ブルー相液晶を駆動する液晶表示装置であって、
前記第2基板は、前記ブルー相液晶層側の表面に形成され、少なくとも前記画素の形成領域を覆うようにして形成される平板状の第3電極を備え、
前記第1電極と前記第2電極とに電圧を印加し、前記第1基板の面内方向に平行な電界を生じさせ、表示画像に対応して前記ブルー相液晶を変調駆動する第1期間と、
前記第1電極と前記第2電極とに略同一電圧を印加すると共に、前記第3電極に所定電圧を印加し、前記第1基板の法線方向に平行な電界を生じさせ、前記ブルー相液晶を変調駆動する第2期間と
を順次切り替え、前記ブルー相液晶を変調駆動する駆動回路を備えることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項9】
前記第2期間における前記第1電極及び前記第2電極と前記第3電極との電位差は、当該第2期間に続く第1期間における前記ブルー相液晶の透過率よりも小さい透過率に対応する電位差に制御されることを特徴とする請求項8に記載の液晶表示装置。
【請求項10】
前記第1期間は、前記第1電極と前記第2電極との間に形成した横電界により前記ブルー相液晶の配向方向を揃え、
前記第2期間は、前記第1電極及び前記第2電極と前記第3電極との間に形成した縦電界により、前記第1期間における前記ブルー相液晶の配向を元の状態に戻すことを特徴とする請求項8又は9に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−133247(P2012−133247A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286874(P2010−286874)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(502356528)株式会社ジャパンディスプレイイースト (2,552)
【Fターム(参考)】