説明

液晶表示装置

【課題】光センサの検出精度が安定している液晶表示装置を提供する。
【解決手段】液晶表示装置1は、複数の受光素子2a,2bと画像表示用の複数の電極と当該複数の電極と接続される複数の液晶駆動素子とを備えるアレイ基板と、複数の画素又はサブピクセルに対応し平面視でマトリクス状に区分けされた複数の画素開口部AP1を形成するブラックマトリクスBMを備える対向基板とが、液晶層を介して互いに対向する。複数の受光素子2a,2bは、青色波長領域に感度を持つ第1の受光素子2aと、信号補償用の第2の受光素子2bとを含み、金属酸化物を含む透明チャネル層を備えるフォトトランジスタである。ブラックマトリクスBMは、平面視で互いに対向する2辺に形成された斜め光開口部AP2を具備する。複数の電極は、画素開口部AP1に対応する液晶を駆動するための画素電極と、斜め光開口部AP2に対応する液晶を駆動するための導光電極とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受光素子を備えた液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置を用いた電子機器の軽量化が進んでいる。携帯電話、モバイルPCなどのような情報機器は、公共の場で使用される機会が増加している。公共の場で情報機器が使用されると、液晶表示装置に表示された機密情報又はプライベート情報が、周辺の第三者に視認される可能性がある。
【0003】
情報機器に備えられる液晶表示装置において、立体画像表示が用いられる場合がある。例えば、立体表示効果が与えられた表示ボタンに対するクリック感の実現、指入力での誤動作防止などのような技術的要求が増えている。指入力では、液晶表示装置の表面にタッチパネルを外付けする方式がある。また、軽量化のために光センサを液晶パネルに内蔵させ、この光センサを用いた入力方式の開発が進められている。この光センサを内蔵する液晶表示装置では、光センサの感度が温度及びバックライト光源の影響を受ける。指入力について誤動作が発生することを防止するために、光センサの補償が必要な場合がある。
【0004】
ポリシリコン又はアモルファスシリコンをチャネル層とするシリコンフォトダイオードにおいては、環境温度などの変化により暗電流が発生し、観測データに観測光ではないノイズが加わる場合がある。例えばポリシリコン又は連続粒界シリコンなどのような結晶の粒界を持つシリコンフォトダイオードは、粒界の位置のばらつきがそのままフォトダイオード特性のばらつきとなり、液晶表示装置の画面内で均質な複数の光センサを形成しにくい場合がある。このシリコンフォトダイオードと比較して、後述する酸化物半導体による光センサのフォトトランジスタ特性は、極めて均質である。
【0005】
暗電流の補正を行うフォトダイオードを用いて演算補正する技術は、特許文献1(特開2002−335454号公報)、特許文献2(特開2007−18458号公報)に開示されている。これらの特許文献1,2は、撮像素子による暗電流補正技術を開示している。しかしながら、特許文献1,2は、表示装置に酸化物半導体によるフォトトランジスタを適用した場合の安定入力及び反射光に起因するノイズに対する処理技術を開示していない。
【0006】
受光素子をタッチセンサとして用いた場合に、安定した入力を行うために、斜め方向からセンシング専門光を出射させる技術が、特許文献3(WO2009/116205)に開示されている。しかしながら、特許文献3は、液晶セル内の反射光に起因するノイズの処理技術、複数素子の特性のバラツキが少なく特性の均質な酸化物半導体の受光素子を用いること、及び、信号補償のための受光素子を用いてさらに安定した入力技術、を開示していない。特許文献3は、液晶表示装置の使用目的(画質優先、セキュリティ、又は、指入力などの目的)によって斜め出射光の強度を切り替えるユニット、画像表示の明暗差(輝度差)によって増長される反射光に基づく信号ばらつきを軽減するユニット、画素の2辺に位置するブラックマトリクスに斜め光出射のための開口部を設けて第三者視認を妨げるための視野角制御技術、について開示していない。斜め光のための開口部は、画素の縦方向(観察者視線の上下方向)に配列させても、液晶表示画面を覗き込む左側又は右側の第三者の視認防止にはほぼ効果がない。
【0007】
視野角制御方式として、1枚の表示用液晶表示素子の画素に新たに視野角制御用画素を加える方式、又は、表示用画素の一部に視野角制御用領域を設ける方式がある。この視野角制御方式は、視野角制御用液晶素子を含むパネルを付加する必要がないため、携帯用表示機器に適している。特許文献4(特開2010−128126号公報)は、表示用液晶表示素子に視野角制御用画素を加える方式の一例である。特許文献4では、視野角制御用サブ画素が視野角制御に用いられる。特許文献5(特開2007−65046号公報)は、視野角制御用領域を設ける方式の一例である。特許文献5では、一画素内に第1の対向電極と第2の対向電極が設けられており、薄膜トランジスタと接続される第1の対向電極と第2の対向電極との間で、異なる対向電圧が印加され、第2の対向電極が視野角制御に用いられる。視野角制御用画素を用いる場合、及び対向電極が別形成された視野角制御領域を設ける場合においては、実効的な表示面積は減少し、表示が暗くなる場合がある。視野角制御用画素又は視野角制御領域を採用することにより、表示内容が周囲の第三者に視認されにくくなる。しかしながら、観察者(液晶表示装置の使用者)であっても、視野角制御用画素又は視野角制御領域の光が目に入りやすいため、表示品質が低下する場合がある。加えて、特許文献5に示される技術では、2種の対向電圧が必要で電源系が複雑になる。特許文献5では、高コントラストの液晶表示装置に適用されるVA(垂直配向:Vertically Alignment)液晶又はECB(Electrically Changed Birefringence)液晶について検討されていない。
【0008】
画像表示を行う液晶表示装置に視野角制御用液晶素子を含むパネルを加える視野角制御技術を適用した場合には、液晶表示装置が重くかつ厚くなる場合がある。
【0009】
近年、IGZOと呼称される酸化物半導体が注目されている。シリコンフォトダイオードと比較してバンドギャップが2.5〜3.5evと高い酸化物半導体は、暗電流が極めて小さいため、上記のシリコンフォトダイオードのように暗電流を減算する補償の必要性が低くなる。さらに、酸化物半導体を透明チャネル層とするフォトトランジスタは、大面積で複数個形成されても、ばらつきの少ない均質な特性で形成される。このような観点に基づいて、酸化物半導体を光センサとして用いる技術開発が進められている。
【0010】
特許文献6(特開2010−186997号公報)、特許文献7(特開2011−118888号公報)は、酸化物半導体を用いた光センサ(受光素子)技術を開示している。特許文献6は、主に有機物を発光層として用いるディスプレイに適用される光センサ技術を開示している。特許文献7は、エリアセンサとしての光センサに加えて、位置検出用の光センサを具備した表示装置に関する。特許文献6及び特許文献7では、斜め光を出射させるための液晶駆動技術が開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−335454号公報
【特許文献2】特開2007−18458号公報
【特許文献3】WO09/116205
【特許文献4】特開2010−128126号公報
【特許文献5】特開2007−65046号公報
【特許文献6】特開2010−186997号公報
【特許文献7】特開2011−118888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、以上のような実情に鑑みてなされたもので、受光素子による検出結果が高精度で安定している液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の態様において、液晶表示装置は、複数の受光素子と液晶駆動用の複数の電極と当該複数の電極と接続される複数の液晶駆動素子とを備えるアレイ基板と、複数の画素又はサブピクセルに対応し平面視でマトリクス状に区分けされた複数の画素開口部を形成するブラックマトリクスを備える対向基板とが、液晶層を介して互いに対向する液晶パネルを具備する。
【0014】
複数の受光素子は、青色波長領域に感度を持つ第1の受光素子と、信号補償用の第2の受光素子とを含み、ガリウム、インジウム、亜鉛、ハフニウム、錫、イットリウムのうちの2種以上の金属酸化物を含む透明チャネル層を備えるフォトトランジスタである。
【0015】
ブラックマトリクスは、平面視で互いに対向する2辺に形成された斜め光開口部を具備する。
【0016】
複数の電極は、画素開口部に対応する液晶を駆動するための画素電極と、斜め光開口部に対応する液晶を駆動するための導光電極とを含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明の態様においては、液晶表示装置に備えられている受光素子による検出結果を高精度で安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施形態に係る液晶表示装置の一例を示す部分平面図。
【図2】第1の実施形態に係る液晶表示装置の一例を示す部分断面図。
【図3】第1の実施形態に係る液晶表示装置のサブピクセルの配列状態の一例を示す平面図。
【図4】第1の実施形態に係る液晶表示装置の受光素子の配置の一例を示す断面図。
【図5】第1の実施形態に係る液晶表示装置の第1の画素電極のみに液晶駆動電圧を印加した状態の一例を示す部分断面図。
【図6】第1の実施形態に係る液晶表示装置の第2の画素電極のみに液晶駆動電圧を印加した状態の一例を示す部分断面図。
【図7】第1の実施形態に係る液晶表示装置の第1の導光電極のみに液晶駆動電圧を印加した状態の一例を示す部分断面図。
【図8】第1の実施形態に係る液晶表示装置の第2の導光電極のみに液晶駆動電圧を印加した状態の一例を示す部分断面図。
【図9】第2の実施形態に係る液晶表示装置の一例を示す部分断面図。
【図10】第3の実施形態に係る液晶表示装置の一例を示す断面図。
【図11】第4の実施形態に係るサブピクセルの平面形状と画素電極及び導光電極の形状との関係の第1の例を示す平面図。
【図12】第4の実施形態に係るサブピクセルの平面形状と画素電極及び導光電極の形状との関係の第2の例を示す平面図。
【図13】第4の実施形態に係るサブピクセルの平面形状と画素電極及び導光電極の形状との関係の第3の例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一又は実質的に同一の機能及び構成要素については、同一符号を付し、必要に応じて説明を行う。
【0020】
以下の実施形態においては、特徴的な部分についてのみ説明し、通常の液晶表示装置の構成要素と差異のない部分については説明を省略する。
【0021】
以下の実施形態において、液晶表示装置の単一色の表示単位は、1サブピクセル又は1画素であるとする。
【0022】
(第1の実施形態)
本実施の形態においては、光センサとして受光素子を備え、この受光素子による観測値から液晶パネル内での反射光に基づくノイズを除去し、高精度、均質で安定した観測値を得ることが可能であり、3次元画像表示(立体表示)可能な液晶表示装置について説明する。
【0023】
本実施形態では、主に、受光素子、斜め光を出射する斜め光開口部、当該受光素子及び斜め光開口部に付随する液晶動作、3次元画像表示用の光と視野角制御用の斜め光との出射について説明する。
【0024】
本実施形態においては、初期垂直配向の液晶又は初期水平配向の液晶を備えるノーマリーブラックの液晶表示装置について説明する。本実施形態においては、サブピクセル単位の構成について説明するが、本実施形態と同様の構成を画素単位に適用してもよい。
【0025】
図1は、本実施形態に係る液晶表示装置の一例を示す部分平面図である。この図1は、本実施形態に係る液晶表示装置1の平面視の状態(観察者側から見られた状態)を表している。
【0026】
図2は、本実施形態に係る液晶表示装置1の一例を示す部分断面図である。この図2は、図1のA−A’断面であり、液晶表示装置1に備えられているブラックマトリクスBMの枠部BM1の長辺(側辺)、及び櫛歯状又はストライプ状の画素電極及び導光電極の長軸方向にほぼ垂直な断面を表している。図2において、垂直配向膜、偏光板、位相差板、図1で示されている受光素子2a,2bは、図示されていない。後述するように、本実施形態に係る液晶表示装置1は、3次元画像表示と通常の2次元画像表示とを切り替え可能である。
【0027】
図3は、本実施形態に係る液晶表示装置1のサブピクセルの配列状態の一例を示す平面図である。
【0028】
図4は、本実施形態に係る液晶表示装置1の受光素子2a,2bの配置の一例を示す断面図である。この図4は、図1のB−B’断面であり、液晶表示装置1に備えられているブラックマトリクスBMの枠部BM1の長辺(側辺)及び櫛歯状の画素電極3a,3b及び導光電極3c,3dの長軸方向に垂直な断面を表している。
【0029】
本実施形態の液晶表示装置1は、アレイ基板4と、対向基板5とを、液晶層6を介して対向させた構成の液晶パネル7を具備する。
【0030】
アレイ基板4は、透明基板8、遮光パターン9、絶縁層10a、複数の受光素子2a,2b、絶縁層10b、共通電極11、絶縁層10c、画像表示用の画素電極3a,3b、視野角制御用の導光電極3c,3d、画像表示用の液晶駆動素子12a,12b、視野角制御用の液晶駆動素子12c,12dを具備する。
【0031】
遮光パターン9は、例えばガラスなどのような透明基板8の一方の面に形成される。
【0032】
絶縁層10aは、遮光パターン9の形成された透明基板8の上に形成される。
【0033】
複数の受光素子2a,2bは、絶縁層10aの上に形成される。受光素子2aは、ブラックマトリクスBMの画素開口部AP1を通過した光を検出するが、液晶パネル7内で反射した光もこの受光素子2aによって検出される場合がある。受光素子2aは、平面視で、画素開口部AP1と遮光パターン9と重なり、断面の垂直方向において、画素開口部AP1と遮光パターン9との間に備えられる。遮光パターン9は、後述するボトムゲート構造のトランジスタのゲート電極としてもよい。受光素子2aは、青色波長領域に感度を持つ。受光素子2bは、液晶パネル7内で反射された光を検出する。例えば、受光素子2bによって検出される光としては、対向基板5側の様々な界面からの反射光、対向基板5と液晶層6との界面からの反射光などがある。受光素子2bは、平面視で、ブラックマトリクスBMの枠部BM1と遮光パターン9と重なり、断面の垂直方向において、ブラックマトリクスBMの枠部BM1と遮光パターン9との間に備えられる。受光素子2bは、信号補償用の受光素子である。
【0034】
複数の受光素子2a,2bとしては、例えば、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、ハフニウム(Hf)、錫(Sn)、イットリウム(Y)のうちの2種以上の金属酸化物を含む透明チャネル層を備えるフォトトランジスタが用いられる。
【0035】
液晶駆動素子12a〜12dのトランジスタとして、例えば、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、ハフニウム(Hf)、錫(Sn)、イットリウム(Y)のうちの2種以上の金属酸化物を含む透明チャネル層を備えるトランジスタが用いられる。
【0036】
透明チャネル層を2種以上又は3種以上の金属酸化物によって形成することにより、透明チャネル層を非晶質化させることができる。酸化物半導体である金属酸化物による透明チャネル層を持つダイオード又はトランジスタのそれぞれの電気特性は均質化することができる。なお、透明チャネル層の形成後、又は、透明チャネル層のパターン形成後に、180℃〜400℃の範囲内で熱処理を実施し、複合酸化物を結晶化させることができる。透明チャネル層の結晶化により、フォトトランジスタ及び同一の基板に形成されたトランジスタの電気特性をさらに安定させることができる。前記の熱処理を、レーザー光を用いたアニールにより複数の受光素子の一部に対して実施することにより、受光特性の異なる受光素子を提供することができる。
【0037】
本実施形態における青色波長領域は、例えば、近紫外域である300nmから500nmまでの光の波長範囲とする。カラー表示のために青フィルタ14Bを用いる本実施形態においては、青フィルタ14Bの透過率の観点から、360nmから500nmまでの範囲を青色波長領域とする。360nmより小さい短波長域においては、青フィルタ14Rの透過率が極めて小さくなり、実用域とならない。本実施形態においてはカラーフィルタ層14を備えない構成が採用されてもよい。このようなカラーフィルタ層14を備えない構成では、青色波長領域は、300nmから360nmまでの短波長域を含むように拡張されてもよい。青色波長領域に感度を付与できるフォトトランジスタ(受光素子)として、ポリシリコン、連続粒界シリコン、酸化物半導体をチャネル層とするフォトトランジスタがある。フォトトランジスタにおいては、液晶画面の大きさで均質な素子を作ることができる酸化物半導体が用いられることが好ましい。酸化物半導体によって透明なチャネル層が形成されるフォトトランジスタは、430nm以下の短波長の光に対して高い変換効率を持つ。青フィルタ14Bなどを含むカラーフィルタ層14と、高い変換効率を持つ酸化物半導体を含む受光素子2a,2bとを併用する構成において、青色波長域は、例えば、360nmから430nmの範囲とすることが好ましい。なお、青フィルタ14Bとしては、様々なフィルタを用いることができる。
【0038】
受光素子2a,2bは、互いに隣接する画素又はサブピクセルに対して備えられる。例えば、受光素子2aと受光素子2bとを直列に接続し、これら2つの受光素子2a,2bの信号の差分処理を行ってもよい。受光素子2aと隣接するトランジスタが別途設置されてもよい。受光素子2aのドレイン電極又はソース電極にこのトランジスタを接続し、このトランジスタのゲート電極へ電圧を印加することにより、受光素子2aの信号読み出し機能あるいは増幅機能を実現することができる。
【0039】
絶縁層10bは、複数の受光素子2a,2b及び液晶駆動素子12a〜12d上に形成される。
【0040】
共通電極11は、絶縁層10bの上に形成される。
【0041】
画像表示用の画素電極3a,3b、視野角制御用の導光電極3c,3dは、絶縁層10cの上に形成される。
【0042】
画像表示用の液晶駆動素子12a,12bは、画像表示用の画素電極3a,3bと電気的に接続される。
【0043】
視野角制御用の液晶駆動素子12c,12dは、視野角制御用の画素電極3c,3dと電気的に接続される。
【0044】
画像表示用の液晶駆動素子12a,12bと、視野角制御用の液晶駆動素子12c,12dとしては、例えば、例えば薄膜トランジスタ(TFT)などが用いられる。
【0045】
アレイ基板4は、透明基板8の他方の面側が液晶パネル7の裏面側となり、画素電極3a,3b及び導光電極3c,3dの形成側が液晶層6側となる。
【0046】
液晶層6に含まれる液晶は、例えば、初期垂直配向であるとする。なお、液晶表示装置1は、初期垂直配向の液晶を用いるVA液晶方式でもよく、初期水平配向の液晶を用いるECB方式でもよい。以下においては、VA液晶として、誘電率異方性が負の液晶について説明するが、誘電率異方性が正の液晶が使用されてもよい。VA液晶として、誘電率異方性が正の液晶を用いることもできる。
【0047】
対向基板5は、透明基板13、ブラックマトリクスBM、カラーフィルタ層14、透明樹脂層(保護層)15、対向電極16a〜16dを具備する。
【0048】
ブラックマトリクスBMは、複数の画素又はサブピクセルに対応し平面視でマトリクス状に区分けされた複数の画素開口部AP1を形成するように、透明基板13の一方の面に形成される。複数の画素開口部AP1からは、観察者に提供される画像表示用の光が出射される。
【0049】
本実施形態において、ブラックマトリクスBMは、画素又はサブピクセル単位で、画素開口部AP1を形成する平行な2つの長辺である枠部BM1と、この画素開口部AP1を2分割する垂直方向の中央部BM2とを備える。中央部BM2の形成は、省略されてもよい。
【0050】
さらに、本実施形態において、ブラックマトリクスBMは、平面視で、水平方向において互いに対向する枠部BM1の側辺に、スリット状に形成された斜め光開口部AP2を具備する。斜め光開口部AP2からは、第三者に提供される視野角制御用の斜め光が出射される。
【0051】
透明基板13上のブラックマトリクスBMによって形成される画素開口部AP1には、それぞれ青フィルタ14B、赤フィルタ14R、緑フィルタ14Gのいずれかが形成される。カラーフィルタ層14は、青フィルタ14B、赤フィルタ14R、緑フィルタ14Gを含む。
【0052】
ブラックマトリクスBM及びカラーフィルタ層14の形成された透明基板13の上に、透明樹脂層15が形成される。
【0053】
対向電極16a〜16dは、透明樹脂層15の上に形成される。
【0054】
対向基板5は、透明基板13の他方の面側が観察者側となり、対向電極16a〜16dの形成側が液晶層6側となる。
【0055】
本実施形態において、図2の断面に示されている対向基板5は、サブピクセルの中央軸Cに対して線対称に配置される。
【0056】
本実施形態において、図2の断面に示されているアレイ基板4の遮光パターン9、画素電極3a,3b及び導光電極3c,3d、共通電極11は、サブピクセルの中央軸Cに対して線対称に配置される。
【0057】
演算部17は、受光素子2aの観測値から、受光素子2bの観測値を引いた値を、実測補償値として算出する。換言すれば、受光素子2aの観測値から受光素子2bの観測値を差し引いて、受光素子2aの実際の観測値が求められる。
【0058】
本実施形態においては、サブピクセルに対して、2以上の液晶駆動素子12a〜12dと、この2以上の液晶駆動素子12a〜12dに対応する1以上の画素電極3a,3b及び1以上の導光電極3c,3dが、配置される。より具体的に説明すると、液晶駆動素子12a,12bは、断面視で、観察者へ提供されるべき画像表示用の光の透過制御を行うために、画素開口部AP1の下の液晶を駆動する画素電極3a,3bと電気的に接続される。液晶駆動素子12c,12dは、断面視で、斜め光開口部AP2の下の液晶を駆動する導光電極3c,3dと電気的に接続される。なお、液晶駆動素子12c,12dのうちの一方は省略され、導光電極3c,3dが共通の1つの液晶駆動素子によって駆動されてもよい。
【0059】
図1は、青サブピクセル、赤サブピクセル、緑サブピクセル、ブラックマトリクスBM、スリット状の斜め光開口部AP2、受光素子2a,2bについての平面視での位置関係の一例を示している。この図1に示すように、受光素子2a,2bは、それぞれ隣接した青サブピクセルと赤サブピクセルとに配置されている。
【0060】
多角形サブピクセルの画素開口部AP1は、マトリクス状に形成される。画素開口部AP1の平面形状は、例えば、正方形、長方形、平行四辺形、くの字状に折れ曲がった(「<」状、又は、ブーメラン形状)多角形などのような、対向する辺が互いに平行な多角形とすることができる。対向基板5では、ブラックマトリクスBMの互いに向かい合う側辺の中央部分に、透明なスリット状の斜め光開口部AP2が形成される。換言すると、ブラックマトリクスBMの側辺においては、線状の遮光部分が斜め光開口部AP2を挟んでいる。
【0061】
図1に示すように、斜め光開口部AP2は、指認識と第三者視認防止のため、サブピクセルの両側に設けることが好ましい。例えば、平面視で、垂直方向に長尺なサブピクセルの上下に設けて、上下方向の斜め光を出射しても、液晶の表示画面を横から覗き込む第三者の視認を抑制する効果は小さい。斜め光開口部AP2の平面視形状は、スリット状又はストライプ状に限定されず、ドット状、楕円形状、矩形状などとしてもよい。複数の斜め光開口部AP2の配置は、平面視で、サブピクセルの中央軸から非対称、対称のいずれの関係でもよい。斜め光開口部AP2は、サブピクセルの長手方向にそって配置されることが好ましい。
【0062】
本実施形態において、斜め光開口部AP2からの斜め光の出射状態は、液晶を駆動するための導光電極3c、共通電極11、対向電極16cの形状又は位置と、液晶動作とに依存する。したがって、導光電極3c、共通電極11、対向電極16cの形状又は位置に応じて、斜め光開口部AP2の形状又は位置を調整することにより、効率的に斜め光を出射させることができる。
【0063】
なお、斜め光の出射方向は、後述される第3の実施形態に係る光制御素子に含まれるプリズムシートの光軸(三角形断面を持つプリズムシートの稜線方向)とほぼ直交することが望ましい。
【0064】
図2では、対向基板5の透明樹脂層15上に、対向電極16a〜16dが形成されている。この図2は、櫛歯状の対向電極16a〜16dの長手方向に対して垂直な断面である。この図2は、赤サブピクセルの断面図を例示している。赤サブピクセルは緑サブピクセル及び青サブピクセルと隣接している。
【0065】
液晶層6の液晶には垂直配向液晶が用いられている。したがって、液晶層6の配向は基板面に対して基本的には垂直である。液晶分子L1〜L14は、対向基板5及びアレイ基板4の表面に対して垂直に配向している。本実施形態においては、基板に対して斜めの電界を発生させる。これにより、図示しない垂直配向膜について光配向及びラビングなどのような配向処理を省略することができる。斜め電界を用いる本実施形態においては、従来のVA方式で必要であった89度などの厳密なプレチルト角制御が必要でなく、例えば90度などのような単純な初期垂直配向の液晶を用いることができる。
【0066】
本実施形態において、液晶の材料として、例えば、分子構造内にフッ素原子を含む液晶材料(以下、フッ素系液晶という)を用いることができる。フッ素系液晶は、誘電率が低いため、イオン性不純物の取り込みを少なくすることができ、不純物による電圧保持率の低下などのような性能劣化を防止することができ、表示ムラ発生を抑制することができる。
【0067】
図2において、画像表示用の画素電極3a,3b、視野角制御用の導光電極3c,3dは、それぞれ異なる液晶駆動素子12a〜12dと電気的に接続されている。液晶駆動素子の数を減らすために、視野角制御用の導光電極3c,3dは同じ液晶駆動素子で駆動されてもよい。3次元画像表示を目的としない場合、画像表示用の画素電極3a,3bは同じ液晶駆動素子で駆動されてもよい。画素電極3a,3bに1つの液晶駆動素子を接続し、導光電極3c,3dに1つの液晶駆動素子を接続した場合には、サブピクセルに2つの液晶駆動素子が備えられる。対向電極16a〜16dは、共通電極11と同じように共通電位(コモン)としてもよい。なお、視野角制御用の導光電極3cと導光電極3dとを異なる液晶駆動素子12c,12dに接続することによって、液晶表示に合わせて、第三者視認防止のために異なる電位又は異なるタイミングで斜め光を出射させ、第三者視認抑制効果を増長させることができる。
【0068】
図2で示されていない偏光板は、クロスニコルでノーマリーブラックとしてもよい。例えば、2枚の偏光板の光軸をパラレルにしてノーマリーホワイトが実現されると、液晶駆動電圧が印加されていない場合であっても、後述する短波長固体発光素子からの出射光を液晶パネル面から出射させることができ、指又はポインタなどに対する照明光として活用することができる。
【0069】
図3において、表示素子走査部18、センサ走査部19、表示素子駆動部20、センサ読取部21は、液晶パネル7と電気的に接続される。光源を含むバックライトユニットは、液晶パネル7の裏面側に備えられているが、この図3では省略されている。バックライトユニットの例えばLEDなどのような固体発光素子は、液晶パネル7の両側辺の端部に並べられる。なお、固体発光素子は、液晶パネル7の両側辺の端部に加えて、液晶パネル7の上辺の端部及び液晶パネル7の下辺の端部に配置されるとしてもよい。液晶パネル7の4つの辺に並べられた固体発光素子は、ローカルデミング法によって、表示内容と整合させ、それぞれの発光強度が調整されるとしてもよい。これにより、液晶表示のコントラストを向上させることができる。
【0070】
各サブピクセルは、表示領域22とセンサ領域23とを含む。本実施形態においては、サブピクセルを最小表示単位としているが、画素を最小表示単位としてもよい。例えば、1画素は、少なくとも1つの赤サブピクセル、少なくとも1つの青サブピクセル、少なくとも1つの緑サブピクセルを含むとしてもよい。
【0071】
図1の平面図及び図4の断面図では、受光素子2a,2bが示されている。受光素子2a,2bは、センサ領域23に備えられる。センサ領域23には、例えば、受光素子2a,2bの信号処理を行う図示されていないトランジスタ、ダイオード、減算処理を行う演算部17、受光データの蓄積を行うキャパシタ、受光素子2a,2bのリセット信号を配信する信号線などを備えることができる。複数の信号処理を行うトランジスタが、青サブピクセル、赤サブピクセル、緑サブピクセルを含む1画素のセンサ領域に、備えられてもよい。受光素子2a,2bの出力値の信号処理を行うトランジスタ又はダイオードなどを備えることにより、出力値に対する高速処理が可能であり、指又はポインタなどを用いた高速入力が可能になる。液晶駆動素子12a〜12dは、表示領域22に形成されるとしてもよい。液晶駆動素子12a〜12dは、図示されていないゲート線、ソース線などの金属薄膜による配線と電気的に接続される。
【0072】
図4に示すように、受光素子2bの上部に、ブラックマトリクスBMが配置され、受光素子2bの下部に、遮光パターン9が配置される。ブラックマトリクスBMと遮光パターン9との間に受光素子2bを配置することにより、液晶表示装置1の正面の法線方向から受光素子2bへの光の入射と、液晶パネル7の裏面に位置するバックライトユニットから受光素子2bへの光の直接入射とを防ぐ。受光素子2bは、正確な受光値を得るための信号補償の役割を果たす。
【0073】
液晶表示装置1の表示内容は、明るい表示と暗い表示など、その画面部位で差を生じる。また、バックライトユニットからの光は、対向基板5のカラーフィルタ層14、透明基板13の一方の面、偏光フィルムなど種々の界面で一部が反射し、反射光として受光素子2a,2bに入射する。この反射光は受光強度のノイズとなる。ライトペンやレーザー光などの光入力機器を用いる場合においても同様であり、再反射光がノイズとなる。
【0074】
このような反射光又は再反射光によるノイズを除去し、高い精度の入力値を得るために、演算部17は、受光素子2aの観測値(受光強度)から受光素子2bの観測値を減算する。これによりノイズ補償が実現される。この信号補償は、小さいながらも、酸化物半導体によって透明チャネル層が形成される受光素子のばらつき、ダークカレント、温度の補償も行うことができ、極めて高い精度の入力値を得ることができる。
【0075】
明るい表示と暗い表示などその画面部位で差のある受光素子間で補償演算を行うことは、反射光又は再反射光によるノイズ量が大きく異なるため、好ましくない場合がある。ライトペン又はレーザー光などの光入力機器を用いる場合においても同様であり、光照射される部位の受光素子と光照射されない部位の受光素子との間でノイズのレベルは大きく相違する。ゆえに、本実施形態においては、補償演算は、隣接する受光素子2a,2bの出力値の引き算で行われる。
【0076】
切替部24は、例えば、導光電極3c,3dに印加される電圧を高電圧に変更するなどの手法により、斜め光開口部AP2から出射される斜め光の強度を切り替える。
【0077】
演算部17からの測定値が液晶表示画面に指が近づいたことを示す場合に、切替部24は、液晶駆動素子12c,12dを介して導光電極3c,3dによって高電圧を印加し、自動的に斜め光の出射強度をアップさせることができる。斜め光の出射強度を大きくすることにより、液晶表示画面と指との距離が7mm前後であっても認識可能になり、液晶画面の3Dボタン表示においてクリック感を持たせた入力を容易に実現することができる。例えば、指の認識は、受光素子2a,2bに基づく補償演算後の出力値に対して、2水準又は複数の水準の大きさの異なる区分を設定し、それぞれの区分に属する出力値又は受光素子の数(例えば、液晶表示画面に接近する指の面積に相当する)、それぞれの区分に属する出力値又は受光素子の数の変化速度とその位置などに基づいて、実行される。この認識処理によって、液晶表示画面と指などのポインタとの距離、移動方向を検出することができる。可視光(例えば青色光)とこの可視光よりも波長の短い短波長光とを同期させて斜め開口部から出射し、指又はポインタのセンシングを短波長光と可視光との受光タイミングのずれ(位相差)で行うとしてもよい。受光特性の異なる受光素子と併用することにより、指又はポインタなどの入力指示体の位置の検出精度を向上させることができる。
【0078】
例えば、液晶表示装置1の切替部24は、指示受付部を備えるとしてもよい。例えば、液晶表示装置1は画面に切替要求を表示し、切替指示を受け付けるとしてもよい。切替部24は、入力した切替指示に応じて、斜め光の出射状態を切り替える。例えば、切替部24は、斜め光を出射しない「表示優先モード」、指入力を行うための「指操作モード」、第三者視認防止のための「セキュリティモード」のうち、観察者に指定されたモードを実現する。切替部24は、「セキュリティモード」が選択された場合、強い強度の斜め光を出射させる。出射される光の強度は、上述したように、導光電極3c,3dに印加される液晶駆動電圧に基づいて制御される。
【0079】
図4のB−B’断面の例では、対向基板5側の液晶層6に接する透明樹脂層15の表面に、透明導電膜である対向電極が積層されていない。例えば、透明導電膜(ITO)は、一般的にインジウムと錫の混合酸化物を用いて形成される。対向基板5側の部材であるカラーフィルタ層14、透明樹脂層15、透明基板13などの屈折率は、およそ1.5から1.6の範囲であるのに対し、透明導電膜の屈折率は、1.8から1.9と高い屈折率を持つ。したがって、対向基板5において、透明樹脂層15に対して例えば対向電極16a〜16dなどの透明導電膜が積層されると、受光素子2a,2bの観測値に透明導電膜からの反射光の観測値が加算される場合がある。しかしながら、表示領域22の受光素子2aと対向する対向基板5の位置と、センサ領域23の受光素子2bと対向する対向基板5の位置とに透明導電膜を形成しないことで、反射光によるノイズを低減することができる。このように、高屈折率の材料を用いる透明導電膜は、その表面反射が多いため、表示領域22の必要部分のみに形成されることが望ましい。なお、図4では、受光素子2a,2bのそれぞれに備えられるソース電極及びドレイン電極が省略されている。
【0080】
以下で、対向基板5とアレイ基板4とによる液晶の動作と、この動作によって出射される光について、図5乃至図8を用いて説明する。
【0081】
図5は、本実施形態に係る液晶表示装置1の第1の画素電極3aのみに液晶駆動電圧が印加された状態の一例を示す部分断面図である。
【0082】
液晶表示装置1の液晶分子L1〜L14は、負の誘電率異方性を持つ。液晶分子L1〜L14の長軸方向は、駆動電圧印加前において垂直であるが、液晶駆動素子12a〜12dによって画素電極3a,3b及び導光電極3c,3dのいずれかに電圧が印加されると傾斜する。図5は、画像電極3aにのみ、駆動電圧が印加された場合の液晶の駆動状態の例を示している。
【0083】
液晶分子L4〜L10は、電気力線に対して垂直になる方向に倒れる。出射光D1は、液晶の傾斜した部分を通過して例えば観察者の一方の目(右目)方向に出射される。液晶分子L4は、画素電極3aの端部と共通電極11との間に形成される強い電場で他の液晶分子より早く倒れ始める。この液晶分子L24の動作は、液晶動作のトリガとなり、液晶の応答性を高める。
【0084】
図6は、本実施形態に係る液晶表示装置1の第2の画素電極3bのみに液晶駆動電圧が印加された状態の一例を示す部分断面図である。
【0085】
画素電極3bに液晶駆動電圧が印加されると、液晶分子L5〜L11は、電気力線に垂直になる方向に倒れる。出射光D2は、液晶の傾斜した部分を通過して例えば観察者の一方の目(左目)方向に出射される。液晶分子L11は、画素電極3bの端部と共通電極11との間に形成される強い電場で他の液晶分子より早く倒れ始める。この液晶分子L11の動作は、液晶動作のトリガとなり、液晶の応答性を高める。
【0086】
図7は、本実施形態に係る液晶表示装置1の第1の導光電極3cのみに液晶駆動電圧が印加された状態の一例を示す部分断面図である。
【0087】
導光電極3cに液晶駆動電圧が印加されると、液晶分子L1〜L3は、電気力線に垂直になる方向に倒れる。斜め光D3は、傾斜した液晶L1〜L3を斜めに横切る状態で透過し、図示されていない偏光板を透過し、漏れ光として外部に出射される。この場合、観察者方向からは黒表示として視認されるが、斜め方向の第三者には漏れ光が観察され、黒表示として視認されない。導光電極3cに液晶駆動電圧が印加され、斜め光D3が出射されることにより、観察者の周囲にいる第三者の視認を妨げることができる。さらに、斜め光D3を出射させることで、受光素子2aに対する安定入力を実現することができ、液晶画面上での指操作時における安定した指認識を実現することができる。
【0088】
この漏れ光の量及び斜め光D3の角度は、斜め光開口部AP2の幅W1、ブラックマトリクスBMの枠部の幅W2、透明基板13の一方の面から対向基板5の液晶層6側の界面までの厚さHt、液晶層6の厚さLt、遮光パターン9の幅W3などに基づいて制御可能である。
【0089】
液晶分子L3は、導光電極3cの端部と共通電極11との間に形成される強い電場で他の液晶分子より早く倒れ始める。この液晶分子L3の動作は、液晶動作のトリガとなり、液晶の応答性を高める。
【0090】
図8は、本実施形態に係る液晶表示装置1の第2の導光電極3dのみに液晶駆動電圧が印加された状態の一例を示す部分断面図である。
【0091】
導光電極3dに液晶駆動電圧が印加されると、液晶分子L12〜L14は、電気力線に対して垂直になる方向に倒れ、斜め光D4が出射される。液晶分子L12は、導光電極3dの端部と共通電極11との間に形成される強い電場で他の液晶分子より早く倒れ始める。この液晶分子L12の動作は、液晶動作のトリガとなり、液晶の応答性を高める。導光電極3dに駆動電圧が印加されることにより、斜め光D4が出射され、観察者の周囲にいる第三者の視認を妨げる。なお、図7の斜め光D3と図8の斜め光D4とは、同時に出射させるとしてもよい。
【0092】
以上説明した本実施形態においては、受光素子2a,2bを酸化物半導体によって形成することにより、液晶パネル7内に均質な受光素子2a,2bを形成することができる。
【0093】
本実施形態においては、受光素子2aによって検出された観測値を、受光素子2bによって検出された観測値で補償することができるため、例えば画面に対する指入力などを高精度かつ安定的に検出することができる。
【0094】
本実施形態に係る3次元画像表示用の液晶表示装置1においては、入力検出を行うことができる。
【0095】
本実施形態においては、斜め光D3,D4を出射することにより、視野角制御を行うとともに、液晶パネル7内の反射光が受光素子2a,2bの観測値に悪影響を与えることを防止することができる。
【0096】
本実施形態においては、実効的な表示面積が減少することを抑制でき、また、観察者に斜め光D3,D4が観察されることを防止することができるため、表示品質を保つことができる。
【0097】
本実施形態においては、液晶表示装置1が重く及び厚くなることを防止することができる。
【0098】
(第2の実施形態)
本実施形態においては、上記第1の実施形態の変形例について説明する。
【0099】
図9は、本実施形態に係る液晶表示装置の一例を示す部分断面図である。この図9は、櫛歯状又はストライプ状の電極の櫛歯の長手方向に垂直な断面である。図9では、対向基板25とアレイ基板3との間の液晶分子L1〜L16の配向状態と、これら液晶分子L1〜L16の動作に基づいて出射される斜め光D3,D4とが示されており、配向膜、偏光板、位相差板、液晶駆動素子、受光素子は省略されている。この図9では、液晶駆動電圧が印加されてない液晶の初期配向状態を示している。
【0100】
液晶表示装置26は、アレイ基板4と対向基板25とが液晶層6を介して対向している液晶パネル29を備える。本実施形態に係る液晶表示装置26は、斜め光開口部AP2に備えられる透明パターン27に特徴がある。透明パターン27の垂直方向の厚さH1は、ブラックマトリクスBMの垂直方向の厚さ、及びカラーフィルタ層14の厚さより大きい。対向基板25の透明パターン27の形成部分は、他の部分よりも液晶層6側に突出している。
【0101】
さらに、各サブピクセルの中央部において、対向基板25には凹部28が形成されている。
【0102】
対向基板25の生成においては、まず、ガラスなどの透明基板13上に、ブラックマトリクスBMと斜め光開口部AP2の透明パターン27とが形成される。次に、ブラックマトリクスBMと透明パターン27とを覆うようにITOである対向電極16が形成される。それぞれの画素開口部AP1の対向電極16上に、青フィルタ14B、赤フィルタ14R、又は、緑フィルタ14Gが積層され、さらに、保護層として透明樹脂層15が形成される。
【0103】
アレイ基板4は、多角形のサブピクセルごとに、画素電極3e,3fと導光電極3fと共通電極11を備える。
【0104】
画素電極3e,3fと対向電極16との間、画素電極3e,3fと共通電極11との間、導光電極3gと対向電極16との間、導光電極3gと共通電極11との間には、液晶を駆動するための電圧が印加される。なお、アレイ基板4は、共通電極11を備えなくてもよい。画素電極3e,3f及び導光電極3gの平面視でのパターンは、櫛歯状パターン、ストライプ状パターン、又は、帯状(ベタ状)の透明導電膜に複数のスリット状開口を形成したパターン、としてもよい。
【0105】
斜め光D3,D4の出射角度θは、透明パターン27の幅W1、透明パターン27の厚さH1、液晶層6の厚さLt、遮光パターン9の幅W3などを用いて制御可能である。
【0106】
櫛歯状パターンの画素電極3e,3f及び導光電極3gと、櫛歯状パターンの共通電極11とは、絶縁層10cを介して配置される。水平方向の位置において、画素電極3e,3f及び導光電極3gと共通電極11とは、ずれている。この図9では、水平方向において、画素電極3e,3f及び導光電極3gと共通電極11とは一部が重なり、他の一部がはみ出た状態となる。水平方向において、共通電極11は、画素電極3e,3f及び導光電極3gよりも透明パターン27側(サブピクセルの端側)にずれている。
【0107】
画素電極3e,3fの櫛歯状パターン、導光電極3gの櫛歯状パターン、共通電極11の櫛歯状パターンは、例えば2μmから20μmの幅の線状導体を電気的に2本以上連結することによって形成される。線状導体の連結部は片側の端部のみに形成されてもよく、両側の端部に形成されてもよい。連結部は、多角形のサブピクセルの周辺部であり、平面視で画素開口部AP1外に配置されることが好ましい。櫛歯状パターンの間隔は、例えば、およそ3μmから100μmの範囲とし、液晶セル条件、液晶材料に基づいて選択される。櫛歯状パターンの形成密度、ピッチ、電極幅は、サブピクセル内又は画素内で変更可能である。水平方向における画素電極3e,3f及び導光電極3gと共通電極11のはみ出し量W4は、液晶4の材料、駆動条件、液晶セル厚みなどのディメンションで種々調整可能である。はみ出し部の幅W4は、例えば、1μmから6μmまでのいずれかの値のように小さい量でも十分である。重なり部分の幅W5は、液晶駆動に係わる補助容量として用いることができる。液晶分子L1,L3〜L7,L10〜L14,L16は、基板表面に対して、ほぼ垂直に配向している。
【0108】
液晶表示装置26の大きさ又は使用目的に応じて、櫛歯状パターンの画素電極3e,3f及び導光電極3gと共通電極11におけるサブピクセル又は画素の開口幅方向の櫛歯本数、密度、及び間隔は、適宜調整可能である。
【0109】
本実施形態においては、対向電極16としての透明導電膜が透明基板13とカラーフィルタ層14との間に形成される。本実施形態においては、対向基板25の製造において、透明導電膜より後にカラーフィルタ層14が形成される。バックライトユニットから出射された光が対向電極16の界面で反射された場合であっても、この反射光は、カラーフィルタ層14で吸収される。したがって、本実施形態においては、液晶パネル29の裏面に設置されるバックライトユニットから出射された光が、液晶パネル29の対向電極16の界面で反射して受光素子2a,2bに観測されることを防止することができる。
【0110】
本実施形態のように、対向電極16に、誘電体でもあるカラーフィルタ層14や透明樹脂層15を積層する対向基板25の構成においては、画素電極3e,3f及び導光電極3gと対向電極16との間に印加される液晶駆動電圧に係わる等電位線を、液晶厚み方向に広げることができ、透過率を向上させることができる。
【0111】
本実施形態においては、対向基板25の透明パターン27の近傍の液晶分子L2,L15、及び、対向基板25の中央部の凹部28の近傍の液晶分子L8,L9を、予め所定の角度だけ傾かせることができる。これにより、駆動電圧印加時に、液晶分子L1〜L16を効果的に傾斜させることができる。
【0112】
なお、図9における透明導電膜の形成位置は、ブラックマトリクスBMとカラーフィルタ層14との間であるが、透明基板13とブラックマトリクスBMとの間としてもよい。
【0113】
(第3の実施形態)
本実施形態においては、液晶表示装置1,26に備えられる光制御素子とバックライトユニットとについて説明する。以下においては、液晶表示装置1の場合について説明するが、液晶表示装置26の場合についても同様である。
【0114】
図10は、本実施形態に係る液晶表示装置1の一例を示す断面図である。
【0115】
本実施形態に係る液晶表示装置1は、アレイ基板4と対向基板5とを液晶層6を挟んで対向させた構成を持つ液晶パネル7と、液晶パネル7の裏面側に設置されたバックライトユニット30と、光制御素子31とを具備する。
【0116】
バックライトユニット30は、液晶パネル7の裏面の両側部、又は、液晶パネル7の裏面に、LEDなどの固体発光素子32a,32bの並びを備える。
【0117】
光制御素子31は、観察者(使用者)の目に入りにくく、第三者の視認を防止するために、液晶パネル7の裏面側とバックライトユニット30との間に設置され、出射光に方向性を与える。光制御素子31は、例えば、メタクリル樹脂などを用いて生成される。光制御素子31は、プリズムシート33とレンズシート34とが互いに背中合わせの状態で一体化された構成を持つ。換言すると、光制御素子31は、レンズシート34とプリズムシート33とを表裏に一体化した樹脂シートである。
【0118】
プリズムシート33は、複数の三角柱状プリズムを、この三角柱状プリズムの側面の長手方向(長尺の方向、稜線方向、又は、軸方向)が平行となるように、かつ、断面の三角形が同じ方向を向くように並べて形成される。
【0119】
レンズシート34は、複数の半円柱状レンズを、この半円柱状レンズの側面の長手方向が平行となるように、かつ、断面の半円の円弧が同じ方向を向くように並べて形成される。
【0120】
平面視で、半円柱状レンズ又は三角柱状プリズムの長手方向と、液晶表示装置1の画素配列方向との間に角度θ1を付与することで、3次元画像表示におけるモアレを軽減することができる。モアレの緩和は、θ1が45度に近いほどよい効果を得ることができる。しかしながら、θ1が45度の場合には、偏光板又は位相差の光軸と干渉することがあるため、θ1は45度より小さい角度とすることが好ましい。偏光板と液晶パネル7のアライメント誤差(±2°)を考慮すると、角度θ1の最大値は、43度以下とすることが好ましい。3次元画像表示においては、θ1がゼロに近いと、低周波の大きなモアレが目立ち、明暗又は色ムラとして視認されやすくなる。したがって、モアレを緩和させるために、三角柱状プリズムの長手方向と液晶表示装置1の画素配列との角度θ1を3度より大きくすることが好ましい。
【0121】
断面形状が二等辺三角形の三角柱状プリズムの先端の角度によって、液晶パネル7の法線方向に対する光の出射角(配光角)を設定することができる。なお、光制御素子31として、角度θ1の異なる2以上のプリズムシートが用いられてもよい。
【0122】
例えば、バックライトユニット30の固体発光素子32a,32bを、液晶表示装置1の液晶動作と同期させて交互に発光させることにより、3次元画像表示が実現される。
【0123】
なお、バックライトユニット30は、拡散板、導光板、偏光分離フィルム、再帰反射偏光素子などをさらに具備するとしてもよい。液晶パネル7の表裏には、偏光板、位相差板などが貼付されるとしてもよい。
【0124】
バックライトユニット30は、複数の固体発光素子32a,32bとして、例えば、発光波長域に赤、緑、青の3波長を含む複数の白色LEDを備えるとしてもよい。固体発光素子32a,32bとして、GaN系青色LEDとYAG系蛍光物質とを組み合わせた擬似白色LEDが用いられてもよい。擬似白色LEDを用いる場合、演色性を高めるために、赤色LEDなど1色以上の主要ピークを有するLEDを組み合わせて用いられてもよい。固体発光素子32a,32bとして、例えば、青色LEDに、赤・緑色の蛍光体を組み合わせた光源が用いられてもよい。
【0125】
カラーフィルタ層14を用いなくても、それぞれ赤色、緑色、青色を個別発光する固体発光素子を光源とて用い、液晶駆動と同期させてフィールドシーケンシャル(時分割)の発光を行うことにより、カラー表示を実現することができる。
【0126】
バックライトユニット30の両端にある固体発光素子32a,32bを液晶表示と同期するように交互に発光させ、光を観察者の右目、左目にそれぞれ入射させることで、3次元画像表示を行うことができる。
【0127】
なお、液晶表示装置1(液晶表示装置26でも同様)の画素電極3a,3bに液晶駆動電圧を同時に印加し、かつ、上記の固体発光素子32a,32bを同時に発光させることにより、明るい2次元画像表示を行うことができる。本実施形態においては、3次元画像表示と2次元画像表示とを切り替え可能である。また、本実施形態においては、3次元画像表示の解像度を落とすことなく、2次元画像表示と同レベルの高画質で3次元画像表示を実現することができる。
【0128】
以上説明した本実施形態においては、表示画面を観察する観察者が、第三者の視認を防止するための斜め光から影響を受けることを抑制することができる。本実施形態に係る光制御素子31は、3次元画像表示に有効に活用できる。
【0129】
(第4の実施形態)
本実施形態においては、サブピクセルの平面形状と画素電極及び導光電極の形状との関係について説明する。
【0130】
図11は、本実施形態に係るサブピクセルの平面形状と画素電極及び導光電極の形状との関係の第1の例を示す平面図である。
【0131】
この図11において、サブピクセルは、平面視で、縦に長い長方形である。櫛歯状の画素電極3e,3f及び導光電極3gは、それぞれ別の3つの液晶駆動素子に電気的に接続される。
【0132】
導光電極3gは、共通電極とともに、斜め光開口部AP2近傍の液晶を駆動し、斜め光D3,D4の出射を行う。図11の構成の場合、スリット状の斜め光開口部AP2は、導光電極3gで駆動される液晶との関係で、導光電極3gの櫛歯と平行に形成される。本実施形態において、画素電極3e,3fにおける櫛歯間の連結部は、平面視で、サブピクセルのブラックマトリクスBMの下側と重なる。導光電極3gにおける櫛歯間の連結部は、平面視で、サブピクセルのブラックマトリクスBMの上側と重なる。画素電極3e,3f及び導光電極3gの櫛歯本数、その密度、電極幅は、液晶セルの条件によって種々変更できる。
【0133】
図12は、本実施形態に係るサブピクセルの平面形状と画素電極3e画素電極3e,3f及び導光電極3gの形状との関係の第2の例を示す平面図である。
【0134】
図13は、本実施形態に係るサブピクセルの平面形状と画素電極3e,3f及び導光電極3gの形状との関係の第3の例を示す平面図である。
【0135】
この図12において、サブピクセルは、平面視で、平行四辺形である。図13において、サブピクセルは、平面視で、「くの字」状の多角形である。F1〜F4は、画素電極3e,3f及び導光電極3gに液晶駆動電圧が印加された場合の液晶の傾斜方向である。
【0136】
視野角制御に用いる斜め光D3,D4の出射方向を考慮すると、サブピクセルの平面形状は、平行四辺形又は「くの字」状の多角形が好ましい。特に液晶表示装置1で文字を表示する場合には、文字表示の構成サブピクセル毎に、出射方向が変わる平行四辺形のサブピクセルを適用することにより、第三者の視認性を広い範囲で低下させることが容易になる。1つのサブピクセルに対して2個の液晶駆動素子を形成し、それぞれの液晶駆動素子で画像表示用の画素電極3e,3fと視野角制御用の導光電極3gとを分割駆動する場合、画素形状要因の寄与は、少し低下する。なぜなら、このように画像表示用の画素電極3e,3fと視野角制御用の導光電極3gとを分割駆動する場合には、視野角制御用の導光電極3gによって画像表示と切り離して斜め光D3,D4を制御することができるためである。さらに、画像表示用の画素電極3e,3fと視野角制御用の導光電極3gとを分割駆動する場合には、視野角制御用の導光電極3gを用いて斜め光D3,D4による第三者視認性をさらに低下させるために、駆動電圧信号のランダマイズ及び透明パターン27の形状・配置のランダマイズを行ってもよい。1つのサブピクセルに対して2個の液晶駆動素子を形成することは、必要時に、個別に斜め光D3,D4を出射させ、ランダマイズさせることにより表示画面の文字表示などに対して高いレベルの視認防止を行うことができる。
【0137】
(第5の実施形態)
本実施形態においては、液晶駆動素子12a〜12dの製造について説明する。本実施形態において、液晶駆動素子12a〜12dは、例えば、ボトムゲート型トップコンタクトエッチストッパー構造を持つとする。
【0138】
本実施形態に係る液晶駆動素子12a〜12dの整合方法では、まず、アルミニウム合金薄膜をDCマグネトロンスパッタ法でおよそ140nm形成する。次に、アルミニウム合金薄膜を所望の形状にパターニングし、ゲート電極及び補助コンデンサ電極を形成する。さらにその上に、プラズマCVD法を用いて、SiH4、NH3、H2を原料ガスとし、SiNX薄膜をおよそ350nm形成することにより透明な絶縁層であるゲート絶膜とする。さらに、InGaZnO4ターゲットを用いて、DCスパッタ法により、アモルファスIn−Ga−Zn−O薄膜をおよそ40nm形成し、所望の形状にパターニングし、透明チャネル層を形成する。さらに、SiNターゲットを用い、RFスパッタ法でAr及びO2を導入しながらSiON薄膜を形成し、所望の形状にパターニングし、チャネル保護層を形成する。さらに、ITO薄膜をDCマグネトロンスパッタ法によっておよそ140nm形成し、所望の形状にパターニングし、ソース・ドレイン電極を形成する。さらにプラズマCVD法を用いて、SiH4、NH3、H2を原料ガスとしてSiNX薄膜をおよそ500nm形成し保護膜とする。
【0139】
なお、受光素子2a,2bは、上記の液晶駆動素子12a〜12dと同様の方法、同一の工程で、同時に製造することができる。
【0140】
液晶駆動素子12a〜12dと、フォトトランジスタである受光素子2a,2bは、トップゲート構造としてもよい。液晶駆動素子12a〜12dと受光素子2a,2bとは、透明チャネル層の形成領域が1つ形成されるシングルゲート構造でも、2つ形成されるダブルゲート構造でも、3つ形成されるトリプルゲート構造でもよい。液晶駆動素子12a〜12dと受光素子2a,2bとは、透明チャネル層の領域の上下にゲート絶縁膜を介して配置された2つのゲート電極を備えたデュアルゲート構造でもよい。これらのマルチゲート構造では、それぞれのゲート電極に異なる電圧を印加することができる。
【0141】
本実施形態においては、ゲート電極をアルミニウム合金薄膜とし、ソース・ドレイン電極をITO薄膜としている。しかしながら、これら電極材料に、チタン、タンタル、タングステン、モリブデン、クロム、銅などの金属・合金の薄膜を適用してもよい。また、電極は、銅又はアルミニウムの薄膜を含む積層構造としてもよい。上記のアルミニウム合金薄膜は、ニオジム(Nd)、ランタン(La)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、ゲルマニウム(Ge)、シリコン(Si)、マグネシウム(Mg)、銅(Cu)などの金属の1種以上を3at%以下の量でアルミニウムに添加したアルミニウム合金で形成されてもよい。
【0142】
例えば、透明チャネル層に不純物準位を形成し、そのハンドキャップを小さくすることにより、光の波長の長波長側である可視域に、受光素子2a,2bの感度域をシフトさせることができる。例えば、透明チャネル層の厚みは、5nmから200nmの範囲内で調整可能である。
【0143】
(第6の実施形態)
本実施形態においては、上記各実施形態に係る液晶表示装置1,26の対向基板5,25で用いられる透明樹脂及び有機顔料などの各種材料の例について説明する。
【0144】
遮光パターン9又はカラーフィルタ層14の形成に用いられる感光性着色組成物は、顔料分散体に加え、多官能モノマー、感光性樹脂又は非感光性樹脂、重合開始剤、溶剤などを含有する。感光性樹脂又は非感光性樹脂などのような本実施形態で用いられる透明性の高い有機樹脂を総称して透明樹脂と呼ぶ。
【0145】
ブラックマトリクスBM、透明樹脂層15、カラーフィルタ層14には、フォトリソグラフィによるパターン形成可能な感光性樹脂組成物、又は、熱硬化樹脂などの透明樹脂を用いることが好ましい。ブラックマトリクスBMとカラーフィルタ層14に用いられる樹脂は、アルカリ可溶性を与えられた樹脂であることが望ましい。アルカリ可溶性樹脂としては、カルボキシル基又は水酸基を含む樹脂であればよい。例えば、アルカリ可溶性樹脂としては、エポキシアクリレート系樹脂、ノボラック系樹脂、ポリビニルフェノール系樹脂、アクリル系樹脂、カルボキシル基含有エポキシ樹脂、カルボキシル基含有ウレタン樹脂などが用いられる。これらの中でも、エポキシアクリレート系樹脂、ノボラック系樹脂、アクリル系樹脂が好ましく、特に、エポキシアクリレート系樹脂又はノボラック系樹脂が好ましい。
【0146】
赤色顔料としては、例えば、C.I.Pigment Red 7、9、14、41、48:1、48:2、48:3、48:4、81:1、81:2、81:3、97、122、123、139、146、149、168、177、178、179、180、184、185、187、192、200、202、208、210、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、242、246、254、255、264、272、279などを用いることができる。
【0147】
黄色顔料としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、4、5、6、10、12、13、14、15、16、17、18、20、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、86、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、125、126、127、128、129、137、138、139、144、146、147、148、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、188、193、194、199、213、214などを用いることができる。
【0148】
青色顔料としては、例えばC.I.Pigment Blue 15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64、80などを用いることができ、これらの中では、C.I.Pigment Blue 15:6が好ましい。
【0149】
紫色顔料として、例えば、C.I.Pigment Violet 1、19、23、27、29、30、32、37、40、42、50などを用いることができ、これらの中では、C.I. Pigment Violet 23が好ましい。
【0150】
緑色顔料としては、例えば、C.I.Pigment Green 1、2、4、7、8、10、13、14、15、17、18、19、26、36、45、48、50、51、54、55、58などを用いることができ、これらの中では、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン緑色顔料であるC.I.Pigment Green 58が好ましい。ハロゲン化亜鉛フタロシアニン緑色顔料を用いた緑フィルタは、緑色顔料として旧来より一般的に用いられているハロゲン化銅フタロシアニンの緑フィルタより比誘電率が低くなる。ハロゲン化亜鉛フタロシアニン緑色顔料を緑フィルタ14Gに用いることにより、カラーフィルタ層14に含まれる赤フィルタ14R、及び、青フィルタ14Bの比誘電率にほぼ揃えることができる。また、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン緑色顔料の緑フィルタ14Gは、急峻な分光特性カーブで、かつ、高い透過率を持つ。
【0151】
ブラックマトリクスBMに用いられる遮光性の着色剤としては、上記の各種の有機顔料の混合を用いることができ、又は、遮光性に優れるカーボンを用いることができる。
【0152】
上記の各実施形態は、発明の趣旨が変わらない範囲で様々に変更して適用することができる。
【符号の説明】
【0153】
1,26…液晶表示装置、2a,2b…受光素子、BM…ブラックマトリクス、BM1…枠部、BM2…中央部、22…表示領域、23…センサ領域、17…演算部、AP1…画素開口部、AP2…斜め光開口部、3a,3b,3e,3f…画素電極、3c,3g…導光電極、4…アレイ基板、5,25…対向基板、6…液晶層、7,29…液晶パネル、8,13…透明基板、9…遮光パターン、10a〜10c…絶縁層、11…共通電極、12a〜12d…液晶駆動素子、14…カラーフィルタ層、14B…青フィルタ、14R…赤フィルタ、14G…緑フィルタ、15…透明樹脂層、16a〜16d…対向電極、L1〜L16…液晶分子、17…演算部、18…表示素子走査部、19…センサ走査部、20…表示素子駆動部、21…センサ読取部、24…切替部、27…透明パターン、28…凹部、30…バックライトユニット、31…光制御素子、32a,32b…固体発光素子、33…プリズムシート、34…レンズシート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の受光素子と画像表示用の複数の電極と当該複数の電極と接続される複数の液晶駆動素子とを備えるアレイ基板と、複数の画素又はサブピクセルに対応し平面視でマトリクス状に区分けされた複数の画素開口部を形成するブラックマトリクスを備える対向基板とが、液晶層を介して互いに対向する液晶パネルを具備し、
前記複数の受光素子は、青色波長領域に感度を持つ第1の受光素子と、信号補償用の第2の受光素子とを含み、ガリウム、インジウム、亜鉛、ハフニウム、錫、イットリウムのうちの2種以上の金属酸化物を含む透明チャネル層を備えるフォトトランジスタであり、
前記ブラックマトリクスは、平面視で互いに対向する2辺に形成された斜め光開口部を具備し、
前記複数の電極は、前記画素開口部に対応する液晶を駆動するための画素電極と、前記斜め光開口部に対応する液晶を駆動するための導光電極とを含む
ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
請求項1記載の液晶表示装置において、
前記アレイ基板は、遮光パターンをさらに具備し、
前記第2の受光素子は、平面視で、前記ブラックマトリクス及び前記遮光パターンと重なる位置に、かつ、断面視で、前記ブラックマトリクスと前記遮光パターンとの間の位置に配置され、前記液晶パネル内で反射した光を検出する、
ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の液晶表示装置において、
前記第1の受光素子の観測値から、第2の受光素子の観測値を引いた値を、実測補償値として算出する演算手段を更に具備する、
ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の液晶表示装置において、
前記第1の受光素子と前記第2の受光素子とは、互いに隣接する画素又はサブピクセルに対して備えられる、ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の液晶表示装置において、
前記複数の画素開口部は、平行な2つの長辺を持つ多角形状で前記ブラックマトリクスにより区分される形状であり、
前記斜め光開口部は、前記ブラックマトリクスの前記2つの長辺に形成される、
ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の液晶表示装置において、
前記複数の斜め光開口部は、前記ブラックマトリクスの前記2つの長辺に、スリット状に形成される、
ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の液晶表示装置において、
1つの画素又はサブピクセルに対して、2以上の前記液晶駆動素子と、前記2以上の液晶駆動素子のそれぞれに対応する1以上の前記画素電極と1以上の前記導光電極を配置する、
ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項8】
請求項7記載の液晶表示装置において、
前記2以上の液晶駆動素子のうちの少なくとも1つは、断面視で、前記斜め光開口部の下の液晶を駆動する2以上の前記導光電極のうちの少なくもと一つと電気的に接続される、
ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の液晶表示装置において、
前記斜め光開口部から出射される斜め光の強度を切り替える手段をさらに具備する、ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の液晶表示装置において、
青フィルタ、緑フィルタ、赤フィルタのいずれのいずれかが、複数の画素又はサブピクセルのそれぞれに備えられる、ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の液晶表示装置において、
前記対向基板は、
透明基板上に形成された前記ブラックマトリクスと、
前記ブラックマトリクスの形成された透明基板に形成された透明導電膜と、
前記透明導電膜上に形成されたカラーフィルタ層と、
前記カラーフィルタ層上に形成された透明樹脂層と
を具備することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項12】
請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の液晶表示装置において、
前記対向基板は、
透明基板上に形成された前記ブラックマトリクスと、
前記ブラックマトリクスの形成されたカラーフィルタ層と、
前記カラーフィルタ層上に形成された透明樹脂層と
透明樹脂層上に形成された透明導電膜と
を具備し、前記透明導電膜は、前記複数の受光素子と対向する位置には形成されない、
ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載の液晶表示装置において、
前記液晶層は、初期配向が垂直配向の液晶を含む、ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項14】
請求項1乃至請求項13のいずれか1項に記載の液晶表示装置において、
前記液晶パネルの裏面側に備えられ、前記液晶パネルの両側辺側から光を照射する光源を含むバックライトユニットと、
前記液晶パネルと前記バックライトユニットとの間に備えられ、前記バックライトユニットから照射された光を、前記液晶パネルの法線方向に対して傾きを持つ斜め方向に出射する光制御素子と、
を更に具備する、液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−109317(P2013−109317A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−154544(P2012−154544)
【出願日】平成24年7月10日(2012.7.10)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】