説明

液滴吐出方法および液滴吐出装置

【課題】ノズルから吐出される液滴の状態を変化させることができ、高精度に、受容物上に液状材料からなる膜を形成することのできる液滴吐出方法および液滴吐出装置を提供すること。
【解決手段】導電性を有するノズルプレート26に形成されたノズル261から帯電性を有する液状材料10を液滴Dとして吐出する液滴吐出ヘッド2と、液滴吐出ヘッド2と液状材料10の吐出方向に対向配置された電極31との間に、基材Sを配置し、ノズルプレート26と電極31との間に電位差を生じさせた状態でノズル261から液状材料10を液滴として吐出することにより、液滴を該液滴よりも小さな複数の微小液滴に分裂した霧状にして基材Sに供給する第1吐出方法と、ノズルプレート261と電極31との間の電位差を第1吐出方法よりも小さな状態としノズル261から吐出した液状材料10の液滴を基材Sに供給する第2吐出方法とを選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出方法および液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、基板上に導体パターン(配線)用の液状材料や、カラーフィルター用の液状材料や、印刷用の液状材料を塗布する方法として、液体吐出ヘッドから液状材料を液滴状に吐出するインクジェット法が広く知られている(例えば、特許文献1参照)。
インクジェット法で用いられる液体吐出ヘッドは、ノズルが形成されたノズルプレートと、ノズルに連通し液状材料が充填されたキャビティと、キャビティ内の圧力を変化させる圧電素子とを有している。そして、圧電素子によってキャビティ内の圧力を高めることによりノズルから液状材料を液滴として吐出する。
【0003】
しかしながら、このような吐出ヘッドでは、ノズルから吐出される液滴をそのままの状態、すなわち1つの液滴として基板上に供給することしかできない。言い換えれば、ノズルから吐出される液滴の状態を必要に応じて変化させることができないため、液状材料によって基板上に形成される膜(導体パータン、カラーフィルター、画像等)を高精度に形成することができないという問題がある。
【0004】
導体パターンの場合を例に挙げて、より具体的に説明すれば、導体パターンには、配線などの線状の部分や、端子(接続パッド)などの面状の部分が含まれる。従来の方法では、ノズルから吐出される液滴を比較的小さくすることができるため、配線については、細い配線を形成することができる。しかしながら、端子については、吐出位置をずらしながら液滴を面状に複数回にわたって供給しなければならず、形成された端子の厚さが不均一となり、他の部材との接続に不具合が生じたり、端子の電気抵抗が不均一になったりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−84387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ノズルから吐出される液滴の状態を変化させることができ、高精度に、受容物上に液状材料からなる膜を形成することのできる液滴吐出方法および液滴吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の液滴吐出方法は、導電性を有するノズルプレートに形成されたノズルから帯電性を有する液状材料を液滴として吐出する液滴吐出ヘッドと、前記液滴吐出ヘッドと前記液状材料の吐出方向に対向配置された電極との間に、前記液滴吐出ヘッドから吐出した前記液状材料を供給する受容物を配置し、前記ノズルプレートと前記電極との間に電位差を生じさせた状態で前記ノズルから前記液状材料を液滴として吐出することにより、前記液滴を該液滴よりも小さな複数の微小液滴に分裂した霧状にして前記受容物に供給する第1吐出方法と、前記ノズルプレートと前記電極との間の電位差を前記第1吐出方法よりも小さな状態とし前記ノズルから吐出した前記液状材料の液滴を前記受容物に供給する第2吐出方法とを選択することを特徴とする。
これにより、ノズルから吐出される液滴の状態を変化させることができ、高精度に、受容物上に液状材料からなる膜を形成することのできる液滴吐出方法を提供することができる。
【0008】
本発明の液滴吐出方法では、前記第1吐出方法において、前記ノズルから吐出された前記液状材料の液滴は、前記ノズルプレートと前記電極との間に発生した電位空間で帯電し、該帯電により発生する静電反発力によって前記複数の微小液滴に分裂することが好ましい。
これにより、第1吐出方法において、より確実に、液滴を複数の微小液滴に分裂させることができる。
【0009】
本発明の液滴吐出方法では、前記第1吐出方法において、前記ノズルから吐出された前記液状材料の液滴は、該液滴に働く電荷反発力が表面張力よりも大きいことが好ましい。
これにより、第1吐出方法において、より確実に、液滴を複数の微小液滴に分裂させることができる。
本発明の液滴吐出方法では、前記第1吐出方法において、前記ノズルから吐出された前記液状材料の液滴に働く表面張力をTとし、前記液滴の帯電量をQとし、前記液滴の半径をRとし、真空の誘電率をεとし、円周率をπとしたとき、T≦Q/64πεなる関係を満足することが好ましい。
これにより、第1吐出方法において、より確実に、液滴を複数の微小液滴に分裂させることができる。
【0010】
本発明の液滴吐出方法では、前記液状材料の電気伝導率は、1×10-12S/m以上、1×10−2S/m以下であることが好ましい。
これにより、より確実に、液滴を複数の微小液滴に分裂させることができる。
本発明の液滴吐出方法では、前記第2吐出方法において、前記ノズルから吐出された前記液状材料の液滴は、該液滴に働く電荷反発力が表面張力よりも小さいことが好ましい。
これにより、第2吐出方法において、液滴が第1吐出方法のように分裂するのを防止することができる。
【0011】
本発明の液滴吐出方法では、前記液滴吐出ヘッドは、前記液状材料が充填され、前記ノズルに連通するキャビティと、前記キャビティ内の圧力を変化させる圧力発生部とを有し、前記圧電素子を駆動することにより前記ノズルから前記液状材料を吐出することが好ましい。
これにより、液滴の吐出を圧電発生部の駆動により行うことができるため、液滴の霧状化を省電力で実現することができる。
【0012】
本発明の液滴吐出方法では、前記第1吐出方法において、前記微小液滴の平均滴径は、1nm以上、10μm以下であることが好ましい。
これにより、受容物上に形成される液状材料からなる膜を充分に薄くすることができると共に、膜の厚さを均一化することができる。
本発明の液滴吐出方法では、前記第1吐出方法で吐出した前記液滴の前記受容物に対する着弾面積は、前記第2吐出方法で吐出した前記液滴の前記受容物に対する着弾面積よりも大きいことが好ましい。
これにより、第1吐出方法によって受容物上に形成される端子の膜厚を充分に薄くすることができると共に、膜厚を均一化することができる。
【0013】
本発明の液滴吐出方法では、前記液状材料は、前記受容物に導体パターンを形成するための配線形成用の液状材料であることが好ましい。
これにより、受容物に回路が形成された回路基板の製造が簡単となると共に、回路基板の電気的特性が向上する。
本発明の液滴吐出方法では、前記受容物に形成する前記導体パターンの線状をなす配線については、前記第2供給方法で前記液状材料を供給し、面状をなす端子については、前記第1供給方法で前記液状材料を供給することが好ましい。
これにより、電気的特性に優れる導体パターンを形成することができる。
【0014】
本発明の液滴吐出方法では、前記液状材料は、金属粒子を分散媒に分散したものであることが好ましい。
これにより、導体パターンを形成するのに適した液状材料となる。
本発明の液滴吐出装置は、導電性を有するノズルプレートに形成されたノズルから帯電性を有する液状材料を液滴として吐出する液滴吐出ヘッドと、
前記液滴吐出ヘッドと前記液状材料の吐出方向に対向配置された電極と、
前記ノズルプレートと前記電極との間に電位差を発生させる電位差発生手段とを有し、
前記電位差発生手段によって前記ノズルプレートと前記電極との間に電位差を生じさせた状態で前記ノズルから前記液状材料を液滴として吐出することにより、前記液滴を該液滴よりも小さな複数の微小液滴に分裂した霧状にして、前記液滴吐出ヘッドと前記電極との間に配置された受容物に供給する第1吐出方法と、前記ノズルプレートと前記電極との間の電位差を前記第1吐出方法よりも小さな状態とし前記ノズルから吐出した前記液状材料の液滴を前記霧状に分裂させずに前記受容物に供給する第2吐出方法とを選択可能であることを特徴とする。
これにより、ノズルから吐出される液滴の状態を変化させることができ、高精度に、受容物上に液状材料からなる膜を形成することのできる液滴吐出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の液滴吐出装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示す液滴吐出装置が備えるインクジェットヘッドおよびテーブルの概略構成を説明するための模式図である。
【図3】図1に示す液滴吐出装置の作動を説明するための模式図である。
【図4】図1に示す液滴吐出装置の作動を説明するための模式図である。
【図5】回路基板の製造方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
《液滴吐出装置》
まず、本発明の液滴吐出装置の一例について説明する。
図1は、本発明の液滴吐出装置の概略構成を示す斜視図、図2は、図1に示す液滴吐出装置が備えるインクジェットヘッドおよびテーブルの概略構成を説明するための模式図、図3および図4は、図1に示す液滴吐出装置の作動を説明するための模式図、図5は、回路基板の製造方法を説明するための模式図である。なお、図1において、X方向、Y方向およびZ方向は、互いに直交する方向である。
図1および図2に示すように、液滴吐出装置1は、インクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)2と、基材(受容物)Sを載置するテーブル3と、電圧印加手段(電位差発生手段)4と、これらの駆動を制御する制御装置100とを有している。以下、これら各構成要素について順次詳細に説明する。
【0017】
(インクジェットヘッド)
インクジェットヘッド2は、第1移動手段61によりX方向に移動および位置決め可能とされている。また、インクジェットヘッド2は、リニアモータ51によりZ方向に移動および位置決め可能とされている。また、インクジェットヘッド2は、モータ52、53、54により、それぞれα、β、γ方向に揺動(回転)および位置決め可能とされている。
【0018】
図2に示すように、インクジェットヘッド2は、ヘッド本体21を有している。そして、このヘッド本体21には、リザーバ211と、リザーバ211から分岐された複数のインク室212が形成されている。リザーバ211は、各インク室212に液状材料10を供給するための流路になっている。
リザーバ211には、図示しないインク貯留槽が搬送路を介して接続されている。インク貯留槽には、液状材料10が貯留されており、インク貯留槽に貯留された液状材料10が搬送路を介してリザーバ211へ搬送される。
【0019】
ヘッド本体21の下端面(テーブル3側の面)には、インク吐出面を構成するノズルプレート26が装着されている。このノズルプレート26には、液状材料10を吐出する複数のノズル261が、各インク室212に対応して形成されている。そして、各インク室212から対応するノズル261に向かって液状材料10の流路が形成されている。
このノズルプレート26は、例えば、金、銀、銅、アルミニウムまたはこれらを含む合金等の金属材料で構成されており、導電性を有している。そして、ノズルプレート26は、電圧印加手段4と電気的に接続されている。
【0020】
なお、ノズルプレート26は、導電性を有していれば、その構成材料は特に限定されず、例えば、上述した金属材料の他、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレン等の炭素系材料、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリフルオレンまたはこれらの誘導体等の電子導電性高分子材料、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート等のマトリックス樹脂中に、NaCl、Cu(CFSO等のイオン性物質を分散させたイオン導電性高分子材料、インジウム酸化物(IO)、インジウムスズ酸化物(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)等の導電性酸化物材料のような各種導電性材料が挙げられる。
【0021】
また、ノズルプレート26は、例えば、後述するシート状の電極31に対向する面以外を電気的に絶縁する処理が施されていてもよい。これにより、インクジェットヘッド2の内部への不本意な漏電等を防ぐことができる。
また、ノズルプレート26は、例えば、絶縁性の樹脂材料で構成された基体の表面に上述したような導電性の材料で構成された導電層を形成したものであってもよい。
【0022】
ヘッド本体21の上端面には、振動板22が装着されている。この振動板22は、各インク室212の壁面の一部を構成している。その振動板22の外側には、各インク室212に対応してピエゾ素子(圧電素子:圧力発生部)23が設けられている。ピエゾ素子23は、水晶等の圧電材料を一対の電極で挟持したものである。このピエゾ素子23(一対の電極)は、駆動回路24に電気的に接続されている。
【0023】
そして、駆動回路24からピエゾ素子23に電気信号を入力すると、ピエゾ素子23が膨張変形または収縮変形する。ピエゾ素子23が収縮変形すると、インク室212の圧力が低下して、リザーバ211からインク室212に液状材料10が流入する。また、ピエゾ素子23が膨張変形すると、インク室212の圧力が増加して、ノズル261から液状材料10が吐出される。
なお、印加電圧を変化させることにより、ピエゾ素子23の変形量を制御することができる。また、印加電圧の周波数を変化させることにより、ピエゾ素子23の変形速度を制御することができる。すなわち、ピエゾ素子23への印加電圧を制御することにより、液状材料10の吐出条件を制御することができる。
【0024】
インクジェットヘッド2として、このようなピエゾ方式を用いることにより、省電力駆動を図ることができる。すなわち、ピエゾ方式によれば、ピエゾ素子23の駆動によって液状材料10を吐出することができるため、ノズルプレート26と電極31との間に電圧を印加することにより発生する静電力は、液状材料10の分裂(霧状化)にのみ作用する。これにより、ノズルプレート26と電極31との間に印加する電圧をより小さくすることができるため、装置の省電力化を図ることができる。
また、ピエゾ方式は、熱がほとんど発生しないため、液状材料10に熱が加わることがなく、液状材料10の変質等を防止することができる。なお、液状材料10を吐出する方法としては、前述したピエゾ方式に限定されず、例えば、液状材料10を加熱して発生した泡によりインクを吐出させるバブルジェット(登録商標)方式を適用することができる。
【0025】
(テーブル3)
図1に示すように、テーブル3は、第2移動手段62によりY方向に移動および位置決め可能とされ、モータ55によりθz方向に揺動(回転)および位置決め可能とされている。
また、テーブル3の上面には、膜状(板状)の電極31が形成されている。この電極31は、電圧印加手段4に電気的に接続されている。
【0026】
電極31の構成材料としては、導電性を有していれば特に限定されず、例えば、金、銀、銅、アルミニウムまたはこれらを含む合金等の金属材料、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレン等の炭素系材料、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリフルオレンまたはこれらの誘導体等の電子導電性高分子材料、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート等のマトリックス樹脂中に、NaCl、Cu(CFSO等のイオン性物質を分散させたイオン導電性高分子材料、インジウム酸化物(IO)、インジウムスズ酸化物(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)等の導電性酸化物材料のような各種導電性材料が挙げられる。
なお、テーブル3を例えば金属材料で構成することにより、テーブル3に電極機能を発揮させることができ、電極31を省略することができる。言い換えれば、テーブル3が電極31を兼ねることができる。
【0027】
(電圧印加手段)
図2に示すように、電圧印加手段4には、インクジェットヘッド2が有するノズルプレート26とテーブル3が有する電極31とが電気的に接続されている。電圧印加手段4は、ノズルプレート26と電極31との間に電圧を印加する機能、すなわち、ノズルプレート26と電極31とに電位差を発生させる機能を有している。
このような電圧印加手段4を備えることにより、以下に説明するように、インクジェットヘッド2から吐出する液滴の状態が互いに異なる第1吐出方法および第2吐出方法を変化させることができる。
【0028】
−第1吐出方法−
第1吐出方法は、インクジェットヘッド2から吐出する液滴を霧状にして基材Sに供給する吐出方法である。
例えば、図3に示すように、電圧印加手段4によって、ノズルプレート26と電極31との間に、ノズルプレート26が負電位、電極31が正電位となるような電圧を印加すると、ノズルプレート26と電極31との間に電界Eが発生する。この電界Eを発生させた状態で、インクジェットヘッド2から液状材料10の液滴Dを吐出すると液滴Dが霧状に分散する。すなわち、インクジェットヘッド2から吐出された液滴Dが、それよりも体積の小さい複数の微小液滴D1に分裂する。
【0029】
この現象について詳細に説明すると、電界Eが発生している状態でインクジェットヘッド2から液状材料10を液滴Dとして吐出すると、電界Eの作用によって液滴Dがマイナスに帯電する。このように、マイナスに帯電した液滴Dには、主に、図4(a)に示す外向き方向の電荷反発力と、図4(b)に示す内向き方向の表面張力とが働く。そして、電荷反発力が表面張力より大きいと、液滴Dは、安定した球面形状を維持できなくなり、複数の微小液滴D1に分裂(分散)する。
【0030】
なお、電圧印加手段4によって、ノズルプレート26と電極31との間に、ノズルプレート26が正電位、電極31が負電位となるような電圧を印加しても、液滴Dがプラスに帯電する以外は、前述と同様に複数の微小液滴D1に分裂する。
このように、液滴Dを複数の微小液滴D1に分裂させるための方法として、例えば、液滴Dに働く電荷反発力を表面張力よりも大きくする方法が挙げられる。すなわち、液滴Dを過剰帯電の状態とする方法が挙げられる。この条件を満たすためには、液滴Dに働く表面張力をTとし、液滴Dの帯電量をQとし、液滴Dの半径をRとし、真空の誘電率をεとし、円周率をπとしたとき、下記式(1)を満足すればよい。
T≦Q/64πε‥‥(1)
【0031】
ここで、上記式(1)を満たすためには、必要に応じて、ピエゾ素子23の変形量を制御することにより液滴Dの半径Rを小さくしたり、ノズルプレート26と電極31との間に印加する電圧の大きさを制御することにより帯電量Qを大きくしたりすればよい。また、半径Rと帯電量Qの両方を制御してもよい。
これら2つの方法は、共に制御が比較的簡単であるため、いずれも好ましいが、帯電量Qを制御する方法がより好ましい。これにより、液滴Dの半径Rを一定に保ったままで液滴Dを微小液滴D1に分裂させることができるため、基材S上に、より均一な膜を形成することができる。また、ノズルプレート26と電極31との間に印加する電圧の大きさを制御することは、ピエゾ素子23の変形量を制御することに比べて簡単でもあるし、その制御も精度を要求されない。
【0032】
なお、前記式(1)は、インクジェットヘッド2から吐出された瞬間の液滴Dが満足していなくても、液滴Dの飛翔中に溶媒等の液体の蒸発が生じて過剰帯電となることにより満足することとなってもよい。
なお、微小液滴D1の平均滴径は、特に限定されないが、1nm以上10μm以下程度であるのが好ましい。これにより、基材S上に供給された液状材料10からなる塗布膜を乾燥等して形成される膜の厚さをより薄くすることができると共に、前記塗布膜の乾燥時間をより短くすることができる。
【0033】
このような第1吐出方法によって基材S上に供給された液滴D(微小液滴D1の集合体)の着弾面積は、後述する第2吐出方法によって基材S上に供給され液滴Dの着弾面積よりも大きい。言い換えれば、第1吐出方法によれば、液滴D、1滴で比較した場合に、第2吐出方法よりも広い範囲に液状材料10を供給することができるため、より短時間で端子等の面状の部分を形成することができる。
【0034】
−第2吐出方法−
第2吐出方法は、インクジェットヘッド2から吐出する液滴をそのまま、すなわち、1つの液滴のまま基材Sに供給する吐出方法である。
このような第2吐出方法では、電圧印加手段4によるノズルプレート26と電極31との間への電圧印加を行わずに、すなわちノズルプレート26と電極31との間に電界が発生していない状態で、インクジェットヘッド2から液状材料10を液滴Dとして吐出する。これにより、インクジェットヘッド2から吐出した液滴Dに電荷反発力が実質的に作用しないため、インクジェットヘッド2から吐出した液滴Dが、第1吐出方法のように微小液滴D1に分裂することなく飛翔し、そのまま(1つの液滴のまま)基材Sに供給される。
【0035】
なお、第2吐出方法では、液滴Dに電荷反発力が作用していてもよいが、作用する電荷反発力は、液滴Dに作用する表面張力よりも小さくなければならない。言い換えれば、下記式(2)を満足する限り、電圧印加手段4によるノズルプレート26と電極31との間への電圧印加を行ってもよい。このように、液滴Dに作用する電荷反発力を表面張力よりも小さくすることにより、第1吐出方法のような液滴Dの分裂を確実に防止することができる。
T>Q/64πε‥‥(2)
【0036】
以上、第1吐出方法および第2吐出方法について説明した。第1吐出方法と第2吐出方法との切り替えは、ノズルプレート26と電極31との間に電圧を印加するか否か、すなわち、電圧印加手段4の制御により簡単かつ確実に行うことができる。また、第1吐出方法と第2吐出方法との切り替えを瞬時に行うことができため、基材Sへの液状材料10の供給をスムーズに行うことができる。
【0037】
第1吐出方法によれば、液滴Dを霧状にして基材Sに供給するため、例えば、第2吐出方法と比較して、基材S上に形成される膜の厚さを薄くかつ均一にすることができる。これに対して第2吐出方法によれば、第1吐出方法のように液滴Dを霧状としないため、例えば、第1吐出方法と比較して、より狭い範囲に液状材料10を供給することができる(すなわち、液滴Dの着弾面積を第1吐出方法と比較して小さくすることができる)。このように、第1吐出方法および第2吐出方法は、それぞれ、異なる特徴を有しており、これら2つの吐出方法を使い分けることにより、基材S上により高精度な膜を形成することができる。
【0038】
液滴吐出装置1は、特に、液状材料10によって、基材S上に導体パターンを形成するのに有効な装置である。具体的には、導体パターンには、線状の配線と、面状の端子(接続パッド)とが含まれており、導体パターン(回路)の機能性の向上を目的として、配線には狭幅化が求められており、端子には膜厚の均質化が求められている。そのため、液滴吐出装置1を用いれば、導体パターンの配線に対応する部分については第2吐出方法によって液状材料10を供給し、端子に対応する部分については第1吐出方法によって液状材料10を供給することにより、狭幅化が図られた配線および膜厚の均質化が図られた端子を有する導体パターンを簡単かつ高精度に形成することができる。
以上、液滴吐出装置1について説明した。
【0039】
《液状材料》
次いで、液滴吐出装置1により供給される液状材料10について説明する。
液状材料10としては、電界Eが作用したときに液滴Dが帯電することができれば特に限定されず、例えば、導体パターンを形成ための材料であってもよく、液晶ディスプレイ等に設けられるカラーフィルターを形成するための材料であってもよく、画像を印刷するための印刷用の材料であってもよい。
【0040】
液状材料10が導体パターンを形成ための材料である場合には、後述するように電気的特性に優れた回路基板を形成することができ、カラーフィルターを形成するための材料である場合には、薄くかつ膜厚が均一なカラーフィルターを容易に形成することができ、印刷用の材料である場合には、階調表現に優れた画像を印刷することができる。
以下では、配線を形成するための材料について代表して説明する。
導体パターンを形成するための液状材料10としては、例えば、銀粒子(金属粒子)を水系分散媒(分散媒)に分散してなる分散液を好適に用いることができる。このような構成とすることにより、導体パターンを形成するのに適した液状材料となる。
【0041】
〔水系分散媒〕
本明細書において、「水系分散媒」とは、水および/または水との相溶性に優れる液体(例えば、25℃における水100gに対する溶解度が30g以上の液体)で構成されたもののことを指す。このように、水系分散媒は、水および/または水との相溶性に優れる液体で構成されたものであるが、主として水で構成されたものであるのが好ましく、特に、水の含有率が70wt%以上のものであるのが好ましく、90wt%以上のものであるのがより好ましい。これにより、上述した効果がより顕著に発揮される。
【0042】
水系分散媒の具体例としては、例えば、水、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶媒、ピリジン、ピラジン、ピロール等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、アセトアルデヒド等のアルデヒド系溶媒等が挙げられ、これらのうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、液状材料10中における水系分散媒の含有量は、20wt%以上80wt%以下であることが好ましく、25wt%以上70wt%以下であることがより好ましい。これにより、液状材料10の粘度を好適なものとしつつ、分散媒の揮発による粘度の変化を少ないものとすることができる。
【0043】
〔銀粒子〕
次に、銀粒子(金属粒子)について説明する。
銀粒子は、形成される導体パターンの主成分であり、導体パターンに導電性を付与する成分である。このような銀粒子は、液状材料10中において分散している。
銀粒子の平均粒径は、1nm以上100nm以下であるのが好ましく、10nm以上40nm以下であるのがより好ましい。これにより、液状材料10の吐出安定性をより高くすることができるとともに、微細な導体パターンを容易に形成することができる。なお、本明細書では、「平均粒径」とは、特に断りのない限り、体積基準の平均粒径のことを指す。
【0044】
また、液状材料10中に含まれる銀粒子(分散剤が表面に吸着していない銀粒子の含有量は、0.5wt%以上60wt%以下であるのが好ましく、10wt%以上45wt%以下であるのがより好ましい。これにより、導体パターンの断線をより効果的に防止することができ、より信頼性の高い導体パターンを形成することができる。
また、銀粒子は、その表面に分散剤が付着した銀コロイド粒子として、水系分散媒中に分散していることが好ましい。これにより、銀粒子の水系分散媒への分散性が特に優れたものとなり、液状材料10の吐出安定性が特に向上する。
【0045】
分散剤としては、特に限定されないが、COOH基とOH基とを合わせて3個以上有し、かつ、COOH基の数がOH基と同じか、それよりも多いヒドロキシ酸またはその塩を含むことが好ましい。これらの分散剤は、銀粒子の表面に吸着してコロイド粒子を形成し、分散剤中に存在するCOOH基の電気的反発力によって銀コロイド粒子を水溶液中に均一に分散させてコロイド液を安定化する働きを有する。
【0046】
このように、銀コロイド粒子が安定して液状材料10中に存在することにより、より容易に微細な導体パターンを形成することができる。また、液状材料10によって形成されたパターンにおいて銀粒子が均一に分布し、クラック、断線等が発生し難くなる。このような分散剤としては、例えば、クエン酸、りんご酸、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸三リチウム、クエン酸三アンモニウム、りんご酸二ナトリウム、タンニン酸、ガロタンニン酸、五倍子タンニン等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
液状材料10中における銀コロイド粒子の含有量は、1wt%以上60wt%以下であるのが好ましく、5wt%以上50wt%以下であるのがより好ましい。
また、銀コロイド粒子の熱重量分析における500℃までの加熱減量は、1wt%以上25wt%以下が好ましい。
【0047】
〔有機バインダー〕
また、液状材料10は、有機バインダーを含んでいてもよい。有機バインダーは、液状材料10を用いて形成された導体パターン前駆体において、銀粒子の凝集を防止するものである。また、有機バインダーは、基材Sに対する液状材料10の密着性を向上させる機能を有している。
【0048】
有機バインダーとしては、特には限定されないが、例えば、ポリエチレングリコール#200(重量平均分子量200)、ポリエチレングリコール#300(重量平均分子量300)、ポリエチレングリコール#400(平均分子量400)、ポリエチレングリコール#600(重量平均分子量600)、ポリエチレングリコール#1000(重量平均分子量1000)、ポリエチレングリコール#1500(重量平均分子量1500)、ポリエチレングリコール#1540(重量平均分子量1540)、ポリエチレングリコール#2000(重量平均分子量2000)等のポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール#200(重量平均分子量:200)、ポリビニルアルコール#300(重量平均分子量:300)、ポリビニルアルコール#400(平均分子量:400)、ポリビニルアルコール#600(重量平均分子量:600)、ポリビニルアルコール#1000(重量平均分子量:1000)、ポリビニルアルコール#1500(重量平均分子量:1500)、ポリビニルアルコール#1540(重量平均分子量:1540)、ポリビニルアルコール#2000(重量平均分子量:2000)等のポリビニルアルコール、ポリグリセリン、ポリグリセリンエステル等のポリグリセリン骨格を有するポリグリセリン化合物が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、ポリグリセリンエステルとしては、例えば、ポリグリセリンのモノステアレート、トリステアレート、テトラステアレート、モノオレエート、ペンタオレエート、モノラウレート、モノカプリレート、ポリシノレート、セスキステアレート、デカオレエート、セスキオレエート等が挙げられる。
【0049】
〔乾燥抑制剤〕
また、液状材料10は、乾燥抑制剤を含んでいてもよい。乾燥抑制剤は、液状材料10中の水系分散媒の不本意な揮発を防止するものである。その結果、液滴吐出装置1のノズル261付近において水系分散媒が揮発することを防止でき、液状材料10の粘度の上昇、乾燥が抑えられる。このような乾燥抑制剤としては、下記式(I)で示される化合物、アルカノールアミン、糖アルコール等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
【化1】

(ただし、R、R’は、それぞれ、Hまたはアルキル基である。)
【0051】
〔表面張力調整剤〕
また、液状材料10は、表面張力調整剤を含んでいてもよい。表面張力調整剤は、液状材料10と基材Sとの接触角を所定の角度に調整する機能を有している。また、表面張力調整剤は、液状材料10が式(1)を満足するよう調整する機能を有していてもよい。表面張力調整剤としては、各種界面活性剤を用いることができ、1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、少ない添加量で、液状材料10と基材Sとの接触角を所定の範囲に調整することができる観点からアセチレングリコール系化合物を含むことが好ましい。
【0052】
アセチレングリコール系化合物としては、例えば、サーフィノール104シリーズ(104E、104H、104PG−50、104PA等)、サーフィノール400シリーズ(420、465、485等)、オルフィンシリーズ(EXP4036、EXP4001、E1010等)(「サーフィノール」および「オルフィン」は、日信化学工業株式会社の商品名)等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
〔その他の成分〕
なお、液状材料10の構成成分は、上記成分に限定されず、上記以外の成分を含んでいてもよい。このような成分としては、例えば、チオ尿素等が挙げられる。
また、液状材料10の粘度は、特に限定されないが、1.0mPa・s以上15.0mPa・s以下であることが好ましく、4.0mPa・s以上11.0mPa・s以下であることがより好ましい。これにより、液滴の吐出安定性が向上するとともに、基材Sに供給された液状材料10の不本意な濡れ広がりをより確実に防止することができる。また、容易に液滴Dが、複数の微小液滴D1に分裂することができる。
以上、液状材料10の一例を説明した。
このような液状材料10の誘電率は、1×10-12S/m以上、1×10−2S/m以下程度であるのが好ましい。これにより、より確実に、液滴Dを複数の微小液滴D1に分裂させることができる。
【0054】
《基材》
液状材料10が供給される基材Sとしては、特に限定されず、液状材料10によって種々のものを用いることができる。具体的には、液状材料10が導体パターンを形成ための材料である場合には、基材Sとしてセラミックス成形体(セラミックグリーンシート)を用いることができ、液状材料10がカラーフィルターを形成するための材料である場合には、基材Sとしてガラス板等を用いることができ、液状材料10が印刷用の材料である場合には、基材Sとして各種印刷紙等を用いることができる。
【0055】
《液滴吐出装置の使用方法(液滴吐出方法)》
次いで、液滴吐出装置1の使用方法(液滴吐出方法)について、配線基板(積層基板)を形成する場合を例に挙げて説明する。なお、配線基板は、各種の電子機器に用いられる電子部品となるもので、各種配線や電極等からなる回路パターン、積層セラミックスコンデンサ、積層インダクター、LCフィルタ、複合高周波部品等を基板に形成してなるものである。
【0056】
まず、テーブル3に基材Sとしてのセラミックグリーンシートを載置する。このセラミックグリーンシートは、例えば、次のように製造することができる。
図5に示すように、まず、原料粉体として、平均粒径が1〜2μm程度のアルミナ(Al)や酸化チタン(TiO)等からなるセラミックス粉末と、平均粒径が1〜2μm程度のホウ珪酸ガラス等からなるガラス粉末とを用意し、これらを適宜な混合比、例えば1:1の重量比で混合する。次に、得られた混合粉末に適宜なバインダー(結合剤)や可塑剤、有機溶剤(分散剤)等を加え、混合・撹拌することにより、スラリーを得る。ここで、バインダーとしては、ポリビニルブチラールが好適に用いられるが、これは水に不溶であり、かつ、いわゆる油系の有機溶媒に溶解しあるいは膨潤し易いものである。次に、得られたスラリーを、ドクターブレード、リバースコーター等を用いてPETフィルム上にシート状に形成し、製品の製造条件に応じて数μm〜数百μm厚のシートに成形し、その後、ロールに巻き取る。
【0057】
続いて、製品の用途に合わせて切断し、さらに所定寸法のシートに裁断する。本実施形態では、例えば1辺の長さを200mmとする正方形状に裁断する。次に、必要に応じて所定の位置に、COレーザー、YAGレーザー、機械式パンチ等によって孔開けを行うことでスルーホールを形成する。そして、このスルーホールに、金属粒子が分散した厚膜導電ペーストを充填することにより、コンタクト(導体ポスト)となるべき部位を形成する。このようにしてセラミックグリーンシートが得られる。なお、厚膜導電ペーストとしては、液状材料10を用いることができる。
【0058】
次いで、電圧印加手段4を制御することにより第1吐出方法と第2吐出方法から吐出方法を選択かつ切り替えながら、インクジェットヘッド2のノズル261から液状材料10を複数の微小液滴D1または液滴Dとして吐出し、液状材料を10を基材S状に供給する。このような液状材料10の基材Sへの供給を、前記第1、第2移動手段61、62、リニアモータ51、モータ52、53、54、55を必要に応じて駆動して、インクジェットヘッド2と基材Sとを相対的に移動させながら行うことにより、基材Sの所定箇所に液状材料10を供給し、基材S上に導体パターン前駆体200が形成される。
【0059】
ここで、前述したように、導体パターン前駆体200のうち、配線などの線状の部分については、第2吐出方法によって液状材料10を供給するのが好ましい。これにより、狭幅化されたより細い配線を形成することができ、また、隣り合う配線の離間距離をより短くすることができる。
また、導体パターン前駆体200のうち、端子等の面状の部分については、第1吐出方法によって液状材料10を供給するのが好ましい。これにより、膜厚が薄く均一な端子を形成することができる。そのため、端子表面の凹凸が抑えられ、端子と、それに接続されるものとをより確実に接続することができる。また、端子の全域で電気抵抗を均一にすることができるため導体パターンの電気的特性が向上する。また、微小液滴D1が基材S上の比較的広い範囲(第2の吐出方法に比較して広い範囲)に均一に分散して供給されるため、より短時間で端子を形成することができる。
【0060】
このようにして導体パターン前駆体200を形成したら、同様の工程により、導体パターン前駆体200を形成した基材Sを必要枚数(例えば10枚から20枚程度)作製する。次に、これら基材SからPETフィルムを剥がし、これらを積層する。このとき、積層する基材Sについては、上下に重ねられる基材S間で、それぞれの導体パターン前駆体200が必要に応じてコンタクトを介して接続するように配置する。その後、基材Sを構成するバインダーのガラス転移点以上に加熱しつつ、各基材S同士を圧着する。これにより、積層体300を得る。
このようにして積層体300を形成したら、例えば、ベルト炉などによって加熱処理する。これにより、各基材Sは、焼結されることで配線基板となり、また、導体パターン前駆体200は、これを構成する銀コロイド粒子が焼結して配線パターンや電極パターンからなる回路(導体パターン)となる。
【0061】
ここで、積層体300の加熱温度としては、基材S中に含まれるガラスの軟化点以上とするのが好ましく、具体的には、600℃以上900℃以下とするのが好ましい。また、加熱条件としては、適宜な速度で温度を上昇させ、かつ下降させるようにし、さらに、最大加熱温度、すなわち前記の600℃以上900℃以下の温度では、その温度に応じて適宜な時間保持するようにする。
【0062】
このようにガラスの軟化点以上の温度、すなわち前記温度範囲にまで加熱温度を上げることにより、得られるセラミックス基板のガラス成分を軟化させることができる。したがって、その後常温にまで冷却し、ガラス成分を硬化させることにより、積層基板を構成する各セラミックス基板と回路との間がより強固に固着するようになる。
また、このような温度範囲で加熱することにより、得られるセラミックス基板は、900℃以下の温度で焼結されて形成された、低温焼結セラミックス(LTCC)となる。
【0063】
ここで、基材S上に配された液状材料10中の金属は、加熱処理によって互いに融着し、連続することによって導電性を示すようになる。
このような加熱処理によって、回路は、セラミックス基板中のコンタクトに直接接続させられ、導通させられて形成されたものとなる。ここで、この回路が単にセラミックス基板上に載っているだけでは、セラミックス基板に対する機械的な接続強度が確保されず、したがって衝撃等によって破損してしまうおそれがある。しかしながら、本実施形態では、前述したように基材S中のガラスを一旦軟化させ、その後硬化させることにより、回路を基材Sに対し強固に固着させている。したがって、形成された回路は、機械的にも高い強度を有するものとなる。
以上、本発明の液滴吐出方法および液滴吐出装置を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1‥‥液滴吐出装置 10‥‥液状材料 2‥‥インクジェットヘッド 21‥‥ヘッド本体 211‥‥リザーバ 212‥‥インク室 22‥‥振動板 23‥‥ピエゾ素子 24‥‥駆動回路 26‥‥ノズルプレート 261‥‥ノズル 3‥‥テーブル 31‥‥電極 4‥‥電圧印加手段(電位差発生手段) 51‥‥リニアモータ 52‥‥モータ 53‥‥モータ 54‥‥モータ 55‥‥モータ 61‥‥第1移動手段 62‥‥第2移動手段 100‥‥制御装置 200‥‥導体パターン前駆体 300‥‥積層体 D‥‥液滴 D1‥‥微小液滴 E‥‥電界 S‥‥基材(受容物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有するノズルプレートに形成されたノズルから帯電性を有する液状材料を液滴として吐出する液滴吐出ヘッドと、前記液滴吐出ヘッドと前記液状材料の吐出方向に対向配置された電極との間に、前記液滴吐出ヘッドから吐出した前記液状材料を供給する受容物を配置し、前記ノズルプレートと前記電極との間に電位差を生じさせた状態で前記ノズルから前記液状材料を液滴として吐出することにより、前記液滴を該液滴よりも小さな複数の微小液滴に分裂した霧状にして前記受容物に供給する第1吐出方法と、前記ノズルプレートと前記電極との間の電位差を前記第1吐出方法よりも小さな状態とし前記ノズルから吐出した前記液状材料の液滴を前記受容物に供給する第2吐出方法とを選択することを特徴とする液滴吐出方法。
【請求項2】
前記第1吐出方法において、前記ノズルから吐出された前記液状材料の液滴は、前記ノズルプレートと前記電極との間に発生した電位空間で帯電し、該帯電により発生する静電反発力によって前記複数の微小液滴に分裂する請求項1に記載の液滴吐出方法。
【請求項3】
前記第1吐出方法において、前記ノズルから吐出された前記液状材料の液滴は、該液滴に働く電荷反発力が表面張力よりも大きい請求項1または2に記載の液滴吐出方法。
【請求項4】
前記第1吐出方法において、前記ノズルから吐出された前記液状材料の液滴に働く表面張力をTとし、前記液滴の帯電量をQとし、前記液滴の半径をRとし、真空の誘電率をεとし、円周率をπとしたとき、T≦Q/64πεなる関係を満足する請求項3に記載の液滴吐出方法。
【請求項5】
前記液状材料の電気伝導率は、1×10-12S/m以上、1×10−2S/m以下である請求項3または4に記載の液滴吐出方法。
【請求項6】
前記第2吐出方法において、前記ノズルから吐出された前記液状材料の液滴は、該液滴に働く電荷反発力が表面張力よりも小さい請求項1ないし5のいずれかに記載の液滴吐出方法。
【請求項7】
前記液滴吐出ヘッドは、前記液状材料が充填され、前記ノズルに連通するキャビティと、前記キャビティ内の圧力を変化させる圧力発生部とを有し、前記圧電素子を駆動することにより前記ノズルから前記液状材料を吐出する請求項1ないし6のいずれかに記載の液滴吐出方法。
【請求項8】
前記第1吐出方法において、前記微小液滴の平均滴径は、1nm以上、10μm以下である請求項1ないし7のいずれかに記載の液滴吐出方法。
【請求項9】
前記第1吐出方法で吐出した前記液滴の前記受容物に対する着弾面積は、前記第2吐出方法で吐出した前記液滴の前記受容物に対する着弾面積よりも大きい請求項1ないし8のいずれかに記載の液滴吐出方法。
【請求項10】
前記液状材料は、前記受容物に導体パターンを形成するための配線形成用の液状材料である請求項1ないし9のいずれかに記載の液滴吐出方法。
【請求項11】
前記受容物に形成する前記導体パターンの線状をなす配線については、前記第2供給方法で前記液状材料を供給し、面状をなす端子については、前記第1供給方法で前記液状材料を供給する請求項10に記載の液滴吐出方法。
【請求項12】
前記液状材料は、金属粒子を分散媒に分散したものである請求項10または11に記載の液滴吐出方法。
【請求項13】
導電性を有するノズルプレートに形成されたノズルから帯電性を有する液状材料を液滴として吐出する液滴吐出ヘッドと、
前記液滴吐出ヘッドと前記液状材料の吐出方向に対向配置された電極と、
前記ノズルプレートと前記電極との間に電位差を発生させる電位差発生手段とを有し、
前記電位差発生手段によって前記ノズルプレートと前記電極との間に電位差を生じさせた状態で前記ノズルから前記液状材料を液滴として吐出することにより、前記液滴を該液滴よりも小さな複数の微小液滴に分裂した霧状にして、前記液滴吐出ヘッドと前記電極との間に配置された受容物に供給する第1吐出方法と、前記ノズルプレートと前記電極との間の電位差を前記第1吐出方法よりも小さな状態とし前記ノズルから吐出した前記液状材料の液滴を前記霧状に分裂させずに前記受容物に供給する第2吐出方法とを選択可能であることを特徴とする液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−135744(P2012−135744A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291292(P2010−291292)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】