説明

液滴吐出装置、液滴吐出方法、及びカラーフィルターの製造方法

【課題】スジムラを目立たなくして画質の低下を抑制することが可能な、さらに生産効率に優れる液滴吐出装置、液滴吐出方法、及びカラーフィルターの製造方法を提供する。
【解決手段】複数のノズルと、複数のノズルに対応して設けられた複数の駆動素子と、を有する液滴吐出ヘッド5と、シート部材15を供給する供給リール12と、シート部材15を巻き取る巻取リール13と、シート部材15の表面を乾燥処理する乾燥ガス噴出装置34と、乾燥処理されたシート部材15に対して複数のノズルから吐出された機能液の画像を撮影する撮像装置14と、撮像装置14によって撮影された画像を画像処理して機能液のシート部材15上の着弾面積を測定し、複数のノズルから吐出された機能液の吐出量の分布を求める解析手段32と、分布から複数のノズルにおける吐出量が所定の適正量に近づくように複数の駆動素子に印加する電圧を調整する制御手段31と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出装置、液滴吐出方法、及びカラーフィルターの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機、携帯型コンピューターなどの電子機器の表示部に液晶装置、有機EL(Electro-Luminescent)装置等の電気光学装置が用いられている。これらの電気光学装置は、一般にフルカラー表示が行われる。例えば、液晶装置によるフルカラー表示は、液晶層によって変調される光をカラーフィルターに通すことによって表示される。このようなカラーフィルターは、液滴吐出法を用いた成膜技術によって、基板表面にインクをドット状に吐出することで形成される。
【0003】
ところで、液滴吐出法を用いた成膜技術においては、複数のノズルのインク吐出量に僅かながらばらつきが生じる。そして、インク吐出量にばらつきを有した状態で描画した場合には、カラーフィルターに筋状の濃淡ムラ(スジムラ)が発生する場合がある。このようなスジムラは視認されやすく、カラーフィルターを介して表示される画像の画質が低下してしまう惧れがある。
【0004】
このような問題点を解決するための技術が検討されており、例えば特許文献1では、複数の異なるインク吐出密度で被着色媒体を着色し、この着色部分の色濃度を測定して、複数の異なるインク吐出密度で着色された着色部分の各々の色濃度と、それに対応するインク吐出密度と、の関係を算出している。この関係に基づいて、所望の色濃度が得られるインク吐出密度になるように補正することにより、表示画像の画質の低下を抑えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−260306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、複数の異なるインク吐出密度で着色された着色部分の各々の色濃度を、被着色媒体の着色部の吸光度により表している。この吸光度の測定の際に誤差が生じると、精度の高い補正ができず、画質の低下を抑制することが困難な場合がある。
【0007】
一方、複数のノズルから吐出されたインクの重量を測定する方法が、従来用いられている。しかしながら、インクの重量を測定することは、測定が容易ではなく膨大な工数を要するので、生産効率に劣るため量産面で好ましくない。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、スジムラを目立たなくして画質の低下を抑制することが可能であり、さらに生産効率に優れる液滴吐出装置、液滴吐出方法、及びカラーフィルターの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明の液滴吐出装置は、機能液を吐出させる複数のノズルと、前記複数のノズルに対応して設けられた複数の駆動素子と、を有する液滴吐出ヘッドと、前記複数のノズルから吐出された前記機能液を着弾させるシート部材を供給する供給リールと、前記供給リールから供給された前記シート部材を巻き取る巻取リールと、前記供給リールから供給された前記シート部材の表面を乾燥処理する乾燥ガス噴出装置と、前記乾燥ガス噴出装置によって乾燥処理された前記供給リールと前記巻取リールとの間の前記シート部材に対して前記複数のノズルから吐出された前記機能液の画像を撮影する撮像装置と、前記撮像装置によって撮影された前記画像を画像処理して前記機能液の前記シート部材上の着弾面積を測定し、前記複数のノズルから吐出された前記機能液の吐出量の分布を求める解析手段と、前記分布から前記複数のノズルにおける前記吐出量が所定の適正量に近づくように前記複数の駆動素子に印加する電圧を調整する制御手段と、を有することを特徴とする。
この構成によれば、乾燥ガス噴出装置によってシート部材の表面が乾燥処理される。そして、撮像装置により複数のノズルから吐出されるインク(機能液)の着弾した画像が撮影される。そして、解析手段により複数のノズルから吐出されるインクの着弾面積に基づいて、複数のノズルから吐出されるインクの吐出量の分布が求められる。すると、制御手段により駆動素子への印加電圧は、複数のノズルにおけるインク吐出量が所定の適正量に近づくように調整される。つまり、制御手段により複数のノズルにおけるインク吐出量のばらつきが補正されることになる。このため、液滴吐出ヘッドの全ノズルから均一な量のインクを吐出することが可能となる。また、シート部材の表面が乾燥処理されるので、シート部材におけるインクの着弾面積のばらつきが小さくなる。すなわち、シート部材の表面はインクに対して所定の浸透性を有しており、その浸透性は均一に制御されるべきものとされるが、実際にはシート部材の保管から使用(例えば、インクの着弾工程)に至るまでに何らかの原因(例えば、シート部材表面のインク受容層による空気中の水分の浸透など)で表面の浸透性が不均一になり、それがシート部材におけるインクの着弾面積の測定において不具合を生じさせる原因となる。そこで、本発明の液滴吐出装置では、インクを着弾させる前に、予めシート部材の表面に乾燥処理を行い、表面の浸透性を均一化している。これにより、シート部材におけるインクの着弾面積の測定を精度良く行うことが可能になる。そして、その後のインク吐出量の調整においても高い制御性が得られるようになる。このため、液滴吐出ヘッドの全ノズルにおけるインクの着弾面積を均一化することが可能となる。したがって、スジムラを目立たなくして画質の低下を抑制することができる。また、乾燥ガス噴出装置によってシート部材の表面を乾燥処理し、複数のノズルにおけるインクの着弾面積に基づいて、複数のノズルから吐出されるインクの吐出量の分布を求める方法は、従来の複数のノズルから吐出されたインクの重量を測定する方法に比べて、膨大な工数がかからないので生産効率に優れる。また、複数のノズルから吐出されたインクが着弾したシート部材が適宜搬送されるので、着弾面積の測定が効率よく行われる。
【0010】
前記シート部材は、顔料をバインダーで結着させた多孔質のインク受容層を有していてもよい。
この構成によれば、液滴吐出ヘッドの全ノズルから格段に均一な量のインクが吐出されるとともに、全ノズルにおけるインクの着弾面積が格段に均一化される。特に、シート部材が多孔質のインク受容層を有している場合は、インク受容層の空隙が吸湿によって埋まってしまいその空隙の大きさが不均一になりやすいため、インク受容層の表面の浸透性は均一に制御されるべきものとされることから、格段の効果を奏する。
【0011】
本発明の液滴吐出方法は、機能液を吐出させる複数のノズルと、前記複数のノズルに対応して設けられた複数の駆動素子と、を有する液滴吐出ヘッドを用いた液滴吐出方法であって、シート部材の表面を乾燥処理する第1乾燥処理工程と、前記第1乾燥処理工程の後に、前記機能液を前記シート部材に着弾する第1着弾工程と、前記第1着弾工程の後に、前記シート部材に着弾された前記機能液の第1着弾面積を測定し、前記複数のノズルから吐出された前記機能液の吐出量の分布を求める第1解析工程と、前記分布から前記複数のノズルにおける前記吐出量が所定の適正量に近づくように前記複数の駆動素子に印加する電圧を調整する第1制御工程と、を有することを特徴とする。
この製造方法によれば、第1乾燥処理工程によってシート部材の表面が乾燥処理され、シート部材におけるインクの着弾面積のばらつきが小さくなる。そして、第1着弾工程の後の第1解析工程により複数のノズルにおけるインクの吐出量の分布が求められる。そして、第1制御工程により複数のノズルにおけるインク吐出量が所定の適正量に近づくように調整される。これにより、複数のノズルにおけるインク吐出量のばらつきが補正される。このため、液滴吐出ヘッドの全ノズルから均一な量のインクを吐出するとともに、全ノズルにおけるインクの着弾面積を均一化することが可能となる。したがって、スジムラを目立たなくして画質の低下を抑制することができる。
【0012】
また、上記液滴吐出方法においては、前記第1制御工程の後に、前記シート部材の表面を乾燥処理する第2乾燥処理工程と、前記第2乾燥処理工程の後に、前記機能液をシート部材に着弾する第2着弾工程と、前記第2着弾工程の後に、前記シート部材に着弾された前記機能液の第2着弾面積を測定し、前記複数のノズルから吐出された前記機能液の吐出量の分布を求める第2解析工程と、前記分布から前記複数のノズルにおける前記吐出量が所定の適正量に近づくように前記複数の駆動素子に印加する電圧を調整する第2制御工程と、を少なくとも1回有することが望ましい。
この製造方法によれば、第1制御工程の後に、乾燥処理工程と着弾工程と解析工程と制御工程とを複数回繰り返して行うことにより、複数のノズルにおけるインク吐出量のばらつきと、複数のノズルにおける着弾面積のばらつきと、が確実に調整される。このため、液滴吐出ヘッドの全ノズルから格段に均一な量のインクを吐出するとともに、全ノズルにおけるインクの着弾面積を格段に均一化することが可能となる。したがって、スジムラをより目立たなくして画質の低下を格段に抑制することができる。
【0013】
本発明のカラーフィルターの製造方法は、上記の液滴吐出方法を用いて、基材上に設けられた所定領域に前記機能液を配置してカラーフィルターを形成することを特徴とする。
この製造方法によれば、上述したように液滴吐出ヘッドの全ノズルから均一な量のインクが吐出されるとともに、全ノズルにおけるインクの着弾面積が均一化されるので、スジムラの無い高品質なカラーフィルターを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の液滴吐出装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】液滴吐出ヘッドの概略構成を示す模式図である。
【図3】カラーフィルター基板上にカラーフィルターを形成する方法の説明図である。
【図4】液滴吐出方法の工程を示すフローチャートである。
【図5】水分の浸透前後のシート部材表面のインク受容層の状態を示す図である。
【図6】着弾面積のばらつきの補正前後のインクの配置状態を示す図である。
【図7】インク吐出量のばらつき補正前後の液滴吐出ヘッドの吐出特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。かかる実施の形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等が異なっている。
【0016】
以下の説明においては、図1中に示されたXYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材について説明する。XYZ直交座標系は、X軸及びY軸がワークステージ16に対して平行な方向に設定され、Z軸がワークステージ16に対して直交する方向に設定されている。図1中のXYZ座標系は、実際にはXY平面が水平面に平行な面に設定され、Z軸が鉛直上方向に設定される。
【0017】
(液滴吐出装置)
図1は本発明に係る液滴吐出装置1の概略構成を示す模式図である。液滴吐出装置1は、例えばインクジェット方式によりカラーフィルター基板(基材)Pの所定領域にカラーフィルター材料(機能液)の液滴を吐出してカラーフィルター層を形成する装置である。また、液滴吐出装置1は、本発明の液滴吐出方法を行うものでもある。
【0018】
液滴吐出装置1は、ワークステージ16、液滴吐出ヘッド5、チューブ45、タンク33、シート部材搬送台11、供給リール12、巻取リール13、面積計測用カメラ(撮像装置)14、制御ユニット(制御手段)31、解析ユニット(解析手段)32、乾燥ガス噴出装置34、第1配線41、第2配線42、第3配線43、第4配線44を備えている。
【0019】
ワークステージ16は、ステージ移動装置(図示略)によってX軸方向に移動可能に設置されている。また、ワークステージ16は、搬送装置(図示略)から搬送されるカラーフィルター基板Pを、真空吸着機構(図示略)によりXY平面上に保持する。
【0020】
液滴吐出ヘッド5は、第1配線41を介して制御ユニット31に電気的に接続されている。液滴吐出ヘッド5は、複数のノズルN(図2参照)を有し、制御ユニット31から入力される描画データや駆動制御信号に基づいて、カラーフィルター材料の液滴を吐出する。また、液滴吐出ヘッド5は、カラーフィルター材料のR(赤)、G(緑)、B(青)に対応して設けられている。また、液滴吐出ヘッド5は、チューブ45を介してタンク33と連結されている。
【0021】
液滴吐出ヘッド5は、Y軸方向及びZ軸方向に対してポールネジまたはリニアガイド等の軸受け機構(図示略)を備えている。そして、液滴吐出ヘッド5は、制御ユニット31から入力されるY座標及びZ座標を示す位置制御信号に基づいて、Y軸方向及びZ軸方向に移動可能になっている。
【0022】
チューブ45は、タンク33と液滴吐出ヘッド5とを連結するカラーフィルター材料の供給用チューブである。タンク33は、R(赤)用のカラーフィルター材料、G(緑)用のカラーフィルター材料、B(青)用のカラーフィルター材料、の3色のカラーフィルター材料を貯蔵している。タンク33は、3色のカラーフィルター材料を貯蔵するとともに、チューブ45を介して3色に対応する液滴吐出ヘッド5にカラーフィルター材料を供給する。
【0023】
シート部材搬送台11は、搬送台移動装置(図示略)によってX軸方向に移動可能になっている。シート部材搬送台11は、供給リール12から供給される帯状のシート部材15を搬送するシート部材15の搬送台である。供給リール12から供給されたシート部材15は、巻取リール13によって巻き取られる。
【0024】
シート部材15は、液滴吐出ヘッド5の複数のノズルNから吐出されたインク(機能液)のドット状の着弾面積が記録可能な記録媒体である。このシート部材15としては、例えばロール紙等の記録紙を用いることができる。なお、シート部材15としては、ロール紙に代えて例えばガラス基板等の撥水性を有する基板を用いることもできる。また、その他のシート部材15としては、例えば、紙やプラスチックフィルム等の基材にインク受容層を設けたシートを用いることができる。
【0025】
本実施形態では、シート部材15として、プラスチックフィルムにインク受容層を設けたシートを用いる。なお、インク受容層については後述する(図5参照)。
【0026】
また、シート部材15は、生産前、つまりカラーフィルター基板P上への描画前に、液滴吐出ヘッド5の複数のノズルNの吐出状態(ノズル抜け、曲がり)を確認するために用いられるものでもある。
【0027】
面積計測用カメラ14は、シート部材搬送台11上のシート部材15の記録面(上面)に対向する位置に配置されている。面積計測用カメラ14は、複数のノズルNからシート部材15に吐出されたインクの着弾面積を撮影するカメラである。面積計測用カメラ14は、第2配線42を介して解析ユニット32に電気的に接続されている。面積計測用カメラ14は、撮影したインクの着弾面積の画像データを解析ユニット32に出力する。
【0028】
解析ユニット32は、面積計測用カメラ14によって撮影されたインクの着弾面積の画像データを画像処置して着弾面積を測定し、得られた着弾面積の測定データに基づいて複数のノズルNにおけるインク吐出量の分布を求める機能を有するものである。解析ユニット32は、第3配線43を介して制御ユニット31に電気的に接続されている。解析ユニット32は、複数のノズルNにおけるインク吐出量の分布の測定データを制御ユニット31に出力する。
【0029】
乾燥ガス噴出装置34は、シート部材搬送台11上のシート部材15の記録面(上面)に対向する位置に配置されている。乾燥ガス噴出装置34は、シート部材15のインクに対する浸透性を調整するように乾燥処理を行う機能を有するものである、乾燥ガス噴出装置34は、第4配線44を介して制御ユニット31に電気的に接続されている。
【0030】
制御ユニット31は、解析ユニット32から入力される複数のノズルNにおけるインク吐出量の測定データに基づいて、駆動素子PZ(図2参照)に印加する電圧を調整する。具体的には、制御ユニット31は、複数のノズルNにおけるインク吐出量が所定の適正量に近づくように、駆動素子PZに印加する電圧を調整する。そして、駆動素子PZにより複数のノズルNにおけるインク吐出量のばらつきが調整される。つまり、複数のノズルNにおけるインク吐出量のばらつきが補正される。
【0031】
複数のノズルNにおけるインク吐出量のばらつきが補正された後、ワークステージ16がステージ移動装置によって乾燥ガス噴出装置34の乾燥ガスの噴出面(下面)に対向する位置に配置される。そして、乾燥ガス噴出装置34によって、ワークステージ16上に保持されたカラーフィルター基板Pの乾燥処理が行われる。その後、液滴吐出ヘッド5の複数のノズルNからカラーフィルター基板P上の所定の位置にカラーフィルター材料の液滴が吐出される。
【0032】
図2は液滴吐出ヘッド5の概略構成を示す模式図である。図2(a)は液滴吐出ヘッド5をワークステージ16から見た平面図、図2(b)は、液滴吐出ヘッド5の部分斜視図、図2(c)は液滴吐出ヘッド5の1ノズルの部分断面図である。
【0033】
図2(a)に示すように、液滴吐出ヘッド5は、Y軸方向に配列された複数(例えば180個)のノズルN〜N180を備えている。ノズルN〜N180によってノズル列NAが形成されている。図2(a)では1列分のノズルを示しているが、液滴吐出ヘッド5に設けるノズル数及びノズル列数は任意に変更可能であり、Y軸方向に配列した1列分ノズルをX軸方向に複数列設けても良い。
【0034】
図2(b)に示すように、液滴吐出ヘッド5は、チューブ45と連結される材料供給孔20aが設けられた振動板20と、ノズルN〜N180が設けられたノズルプレート21と、振動板20とノズルプレート21との間に設けられた液溜まり22と、複数の隔壁23と、複数の収容室24とを備えている。振動板20上には、各ノズルN1〜N180に対応して駆動素子PZ〜PZ180が配置されている。駆動素子PZ〜PZ180は、例えばピエゾ素子である。
【0035】
液溜まり22には、材料供給孔20aを介して供給される液状のカラーフィルター材料が充填されるようになっている。収容室24は、振動板20と、ノズルプレート21と、1対の隔壁23とによって囲まれるようにして形成されている。また、収容室24は、各ノズルN〜N180に1対1に対応して設けられている。また、各収容室24には、一対の隔壁23の間に設けられた供給口24aを介して、液溜まり22からカラーフィルター材料が導入されるようになっている。
【0036】
図2(c)に示すように、駆動素子PZは、圧電材料25を一対の電極26で挟持したものである。この駆動素子PZは、一対の電極26に駆動信号を印加すると圧電材料25が収縮するよう構成されたものである。そして、このような駆動素子PZが配置されている振動板20は、一対の電極26に駆動信号を印加すると駆動素子PZと一体になって同時に外側(収容室24の反対側)へ撓曲するようになっており、これによって収容室24の容積が増大するようになっている。
【0037】
したがって、収容室24内に増大した容積分に相当するカラーフィルター材料が、液溜まり22から供給口24aを介して流入する。また、このような状態から駆動素子PZへの駆動信号の印加を停止すると、駆動素子PZと振動板20はともに元の形状に戻り、収容室24も元の容積に戻る。これにより、収容室24内のカラーフィルター材料の圧力が上昇し、ノズルNからカラーフィルター基板Pに向けてカラーフィルター材料の液滴Lが吐出される。また、駆動素子PZを用いることにより、収容室24内に微振動を生じさせてインク吐出量を精度よく調整することができる。
【0038】
図3は、液滴吐出ヘッド5を用いてカラーフィルター基板P上にカラーフィルター層(カラーフィルター)CFを形成する方法の説明図である。図3(a)は、インクの吐出対象物であるカラーフィルター基板Pの概略平面図である。図3(b)は、カラーフィルター基板Pの部分拡大平面図である。
【0039】
図3(a)において、ガラス、プラスチック等によって形成された大面積のカラーフィルター基板Pの表面には複数のパネル領域CAが設定されている。各パネル領域CAは、互いに分離(切断)されて個々のカラーフィルター基板として提供される。各パネル領域CAの内部には、図3(b)に示すように、ドット状に配列された複数の画素PX(所定領域)が設けられている。画素PXは各パネル領域CA内にマトリクス状に配列されており、それぞれの画素PX毎にカラーフィルター層(着色層)CFが形成される。
【0040】
図3(b)の図示上下方向(矢印A1及び矢印A2で示す方向)を主走査方向とし、主走査方向と直交する方向(図示左右方向)を副走査方向として、液滴吐出ヘッド5をカラーフィルター基板P上に配置する。そして、カラーフィルター基板Pを液滴吐出ヘッド5に対して主走査方向及び副走査方向に相対的に移動(走査)させながら、液滴吐出ヘッド5の複数のノズルNから着色材料を含むインク(カラーフィルター材料)を吐出させ、カラーフィルター基板P上の各画素PXにカラーフィルター層CFを形成する。
【0041】
液滴吐出ヘッド5の走査は、1つのパネル領域CAに関して複数回行う。例えば、主走査方向に液滴吐出ヘッド5を走査した後、副走査方向に液滴吐出ヘッド5を移動(走査)し、再度主走査方向に走査を行う。1つのパネル領域CAの左端から右端まで移動(副走査)したら、再びパネル領域CAの左端に戻り、既に吐出を行った位置とは若干異なる位置で主走査方向に走査を行う。そして、このような走査を複数回行うことによって、パネル領域CA内の全ての画素PXに所望の膜厚のカラーフィルター層CFを形成する。
【0042】
なお、図3(b)において液滴吐出ヘッド5が副走査方向に対して斜めに傾いているのは、液滴吐出ヘッド5のノズルNのピッチを画素PXのピッチに合わせるためである。ノズルNのピッチと画素PXのピッチとが所定の対応関係を満たして設定されていれば、液滴吐出ヘッド5を斜めに傾ける必要はない。
【0043】
カラーフィルター層CFは、R、G、Bの各色をいわゆるストライプ配列、デルタ配列、モザイク配列等といった適宜の配列形態で配列することによって形成される。したがって、図3(b)に示すインクの吐出工程においては、R、G、Bのカラーフィルター材料を吐出する液滴吐出ヘッド5を、R、G、Bの3色分だけ予め用意する。そして、これらの液滴吐出ヘッド5を順次に用いて1つのカラーフィルター基板P上にR、G、Bの3色のカラーフィルター層CFの配列を形成する。
【0044】
ところで、一般的に液滴吐出ヘッドにおいては、ノズル間でインクの吐出特性(吐出量)に僅かながらばらつきが存在する(図6(a)参照)。ノズル間でインクの吐出量にばらつきがあると、これに起因してカラーフィルター基板P上へのインクの配置量(着弾面積)がばらついてしまい、カラーフィルターにスジムラを発生させる原因となってしまう。
【0045】
図6は、複数のノズルNにおけるインクの着弾面積のばらつきの補正前後のシート部材15上におけるインクの配置状態を示す図である。図6(a)は着弾面積のばらつきの補正前におけるインクの配置状態を示している。また、図6(b)は着弾面積のばらつきの補正後におけるインクの配置状態を示している。図6において、M(M1〜M5)は、上述したY軸方向に配列された複数のノズルNに対応するインクの配置状態を示している。また、MA(MA1〜MA5)は、上述したY軸方向に配列した1列分ノズルがX軸方向に複数列設けられた複数のノズル列NAに対応するインクの配置列を示している。図6(a)に示すように、複数のノズルN及び複数のノズル列NAに対応するインクの配置状態を見ると、全体的に着弾面積のばらつきが存在することが確認される。
【0046】
そこで、本発明の液滴吐出方法では、補正前(生産前)となるカラーフィルター基板P上への描画前に、液滴吐出ヘッド5の駆動素子PZに印加する電圧を調整し、複数のノズルNにおけるインクの吐出特性を調整する工程を設けるとともに、乾燥ガス噴出装置34によって表面を乾燥処理し、複数のノズルNにおけるインクの着弾面積を調整する工程を設けている。以下、本発明の液滴吐出方法について一例を挙げて説明する。
【0047】
(液滴吐出方法)
図4は、本発明の液滴吐出方法の工程を示すフローチャートである。本発明の液滴吐出方法は、装置を所定の位置に配置して装置の位置合わせを行う「装置の位置合わせ工程」(ステップS1)と、シート部材15の表面を乾燥処理する「第1乾燥処理工程」(ステップS2)と、駆動素子PZに印加する電圧を一定にしてインクをシート部材15に着弾する「第1着弾工程」(ステップS3)と、第1着弾工程の後にシート部材15に着弾された第1着弾面積を測定し、複数のノズルNにおけるインク吐出量の分布を求める「第1解析工程」(ステップS4)と、シート部材15を巻き取る「シート部材巻取工程」(ステップS5)と、複数のノズルNにおけるインク吐出量が所定の適正量に近づくように駆動素子PZに印加する電圧を調整する「第1制御工程」(ステップS6)と、を有する。
【0048】
先ず、装置を所定の位置に配置して装置の位置合わせを行う(図4のステップS1)。具体的には、シート部材搬送台11をX軸方向に移動させ、乾燥ガス噴出装置34の直下に配置する。これにより、シート部材搬送台11上のシート部材15が乾燥ガス噴出装置34の乾燥ガス噴出面(下面)に対向するように配置される。
【0049】
次に、乾燥ガス噴出装置34によってシート部材15のインクに対する浸透性を調整する乾燥処理を行う。(図4のステップS2)。具体的には、乾燥ガス噴出装置34からシート部材15上にインクに対する浸透性を均一化させる乾燥ガスが噴出される。シート部材15のインクに対する浸透性を均一化させる乾燥ガスの照射は、例えば空気や窒素ガスを用いることができる。
【0050】
このようにして、乾燥ガス噴出装置34によって複数のノズルNにおける着弾面積のばらつきが調整される。これにより、複数のノズルNにおけるインクの着弾面積のばらつきが補正される。このため、液滴吐出ヘッド5の全ノズルNにおけるインクの着弾面積を均一化することが可能となる。
【0051】
本実施形態では、従来の複数のノズルから吐出されたインクの重量を測定する方法に対して、乾燥ガス噴出装置34によってシート部材15の表面を乾燥処理し、複数のノズルNにおけるインクの着弾面積に基づいて、複数のノズルNから吐出されるインクの吐出量の分布を求める方法を用いている。これにより、従来のようにインクの重量を測定する必要が無くなり、膨大な工数がかからなくなる。
【0052】
また、シート部材15の表面が乾燥処理されるので、シート部材15におけるインクの着弾面積のばらつきが小さくなる。これは、シート部材15の表面が乾燥処理されることにより、シート部材15表面のインクに対する浸透性が均一化されることによる。以下、シート部材15のインクに対する浸透性について、水分の吸湿前後のシート部材15のインク受容層の状態を挙げて説明する。
【0053】
図5は、水分の吸湿前後のシート部材15のインク受容層の状態を示す図である。図5(a)は、水分の吸湿前のインク受容層50aの状態を示す図である。また、図5(b)は、水分の吸湿後のインク受容層50bの状態を示す図である。
【0054】
図5(a)及び図5(b)に示すように、インク受容層50a,50bは、顔料51とバインダー52とを複数含んで構成される。顔料51はバインダー52に包含されている。また、インク受容層50a,50bは、複数のバインダー52の間に、多数の空隙53を有する多孔質構造となっている。インク受容層50bは、インク受容層50aよりも空隙53の大きさが小さくなっている。これは、インク受容層を構成する顔料51及びバインダー52が吸湿によって膨張したことによる。
【0055】
多孔質のインク受容層に使用可能な顔料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナ水和物、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、加水ハロサイト、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂等の有機顔料が挙げられる。インク受容層中には、これらのうち1種を単独で含有させてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
また、上記顔料の結着材としてインク受容層に含有されるバインダーとしては、インクと親和性を有する水溶性あるいは非水溶性の高分子化合物を含有させることができる。水溶性高分子化合物としては、例えば、メチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系接着剤、澱粉及びその変性物、ゼラチン及びその変性物、カゼイン、プルラン、アラビアゴム、及びアルブミン等の天然高分子樹脂またはこれらの誘導体、ポリビニルアルコール及びその変性物、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリル共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のラテックスやエマルジョン類、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等のビニルポリマー、ポリエチレンイミン、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、及び無水マレイン酸またはその共重合体が挙げられる。
【0057】
非水溶性高分子化合物としては、例えば、エタノール、2−プロパノール等のアルコール類やこれらのアルコール類と水との混合溶媒に溶解する非水溶性接着剤が挙げられる。このような非水溶性接着剤としては、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール等のアセタール樹脂が挙げられる。
【0058】
ところで、一般にシート部材15はインク受容層に水分が浸透しないように、所定の雰囲気下で保管される。しかしながら、インク受容層を構成する顔料51やバインダー52は良好な吸湿性を有しているため、保管から使用(例えばインクの着弾工程)に至るまでに、顔料51やバインダー52への空気中の水分の浸透などによって、シート部材15表面の浸透性が不均一になる。シート部材15表面の浸透性が不均一になると、シート部材15におけるインクの着弾面積の測定において不具合を生じさせる原因となる。
【0059】
そこで、本発明の液滴吐出装置1では、インクを着弾させる前に、予めシート部材15の表面に乾燥処理を行い、インク受容層を構成する複数のバインダー52の間に存在する複数の空隙53の大きさを全体的に均一化することにより、表面の浸透性を均一化している。これにより、シート部材15におけるインクの着弾面積の測定を精度良く行うことが可能になる。そして、その後のインク吐出量の調整においても高い制御性が得られるようになる。つまり、図6(a)の初期状態(補正前)において複数のノズルN間で生じていたインクの着弾面積のばらつきを、図6(b)の補正後に示すように略平均化することができる。
【0060】
次に、駆動素子PZに電圧を印加してインクをシート部材15に着弾させる(図4のステップS3)。具体的には、シート部材搬送台11をワークステージ16に向かってX軸方向に移動させ、液滴吐出ヘッド5の直下に配置する。これにより、シート部材搬送台11上のシート部材15が液滴吐出ヘッド5の複数のノズルNに対向するように配置される。そして、駆動素子PZに印加する電圧を一定にして、インクをシート部材15に着弾させる。インクは、カラーフィルター層CFにならって、ストライプ配列、デルタ配列、モザイク配列等といった適宜の配列形態で着弾するのがよい。これにより、液滴吐出ヘッド5の複数のノズルNにおける補正前(シート部材15への吐出時)のインクの吐出状態と、補正後(カラーフィルター基板Pへの吐出時)のインクの吐出状態と、が確実に整合するようになる。
【0061】
また、インクをシート部材15に着弾させる際は、複数回に分けて着弾させるのがよい。具体的には、先ず、第1のインクをシート部材15上の所定の領域に着弾させる。次に、第2のインクを第1のインクの着弾されていない領域に着弾させる。これにより、インクをシート部材15へ複数回繰り返して着弾できるので、シート部材15を無駄なく有効に利用することができる。
【0062】
次に、シート部材15に着弾されたインクの着弾面積を測定し、得られた着弾面積の測定データに基づいて複数のノズルNにおけるインク吐出量の分布を求める(図4のステップS4)。具体的には、シート部材15の上面に対向する位置に配置された面積計測用カメラ14により、複数のノズルNからシート部材15に吐出されたインクの着弾面積を撮影する。このとき、面積計測用カメラ14のレンズの倍率は、測定精度と測定時間の点から、例えば4〜10倍に設定するのがよい。また、インクの着弾面積を測定する際のN数は、測定精度の点から、例えばN=20〜30に設定するのがよい。
【0063】
面積計測用カメラ14によって撮影されたインクの着弾面積の画像データは、解析ユニット32に出力される。そして、解析ユニット32よって複数のノズルNにおけるインクの着弾面積が測定されるとともに、着弾面積の測定データに基づいて複数のノズルNにおけるインク吐出量の分布が求められる。複数のノズルNにおけるインク吐出量の分布データは制御ユニット31に出力される。
【0064】
次に、シート部材15を巻き取る(図4のステップS5)。具体的には、巻取リール13によってインクが着弾されたシート部材15が巻き取られる。つまり、供給リール12からインクが着弾されていない新たなシート部材15が供給される。
【0065】
次に、駆動素子PZに印加する電圧が調整される(図4のステップS6)。具体的には、複数のノズルNにおけるインク吐出量が所定の適正量に近づくように制御ユニット31によって複数のノズルN毎に備えられた駆動素子PZに印加する電圧が調整される。
【0066】
図7は、インク吐出量のばらつきの補正前後の液滴吐出ヘッドの吐出特性を示す図である。図7において、横軸はノズル列NAのノズル番号1〜180、縦軸は各ノズル番号に対応するノズルの吐出量を示している。図7に示すように、インク吐出量のばらつきの補正前の実線を見ると、両端部と中央部のノズルにおけるインク吐出量が相対的に多くなる傾向があることがわかる。
【0067】
例えば、初期状態(図7中の補正前の実線参照)におけるインク吐出量が相対的に少ない領域のノズルに対応する駆動素子PZに対して所定の電圧を印加する。一方、初期状態におけるインク吐出量が相対的に多い領域のノズルに対応する駆動素子PZに対しては電圧を印加しない。
【0068】
このようにして、駆動素子PZによって複数のノズルN間で生じている吐出量のばらつきが調整される。これにより、複数のノズルNにおけるインクの吐出量のばらつきが補正される。つまり、初期状態(補正前の実線)において複数のノズルN間で生じていたインク吐出量のばらつきを、補正後の実線に示すように略平均化することができる。
【0069】
本実施形態の液滴吐出装置1によれば、乾燥ガス噴出装置34によってシート部材15の表面が乾燥処理される。そして、面積計測用カメラ14により複数のノズルNから吐出されるインクの着弾した画像が撮影される。そして、解析ユニット32により複数のノズルNから吐出されるインクの着弾面積に基づいて、複数のノズルNから吐出されるインクの吐出量の分布が求められる。すると、制御ユニット31により駆動素子PZへの印加電圧は、複数のノズルNにおけるインク吐出量が所定の適正量に近づくように調整される。つまり、制御ユニット31により複数のノズルNにおけるインク吐出量のばらつきが補正されることになる。このため、液滴吐出ヘッド5の全ノズルNから均一な量のインクを吐出することが可能となる。また、シート部材15の表面が乾燥処理されるので、シート部材15におけるインクの着弾面積のばらつきが小さくなる。すなわち、シート部材15の表面はインクに対して所定の浸透性を有しており、その浸透性は均一に制御されるべきものとされるが、実際にはシート部材15の保管から使用(例えば、インクの着弾工程)に至るまでに何らかの原因(例えば、シート部材15表面のインク受容層による空気中の水分の浸透など)で表面の浸透性が不均一になり、それがシート部材15におけるインクの着弾面積の測定において不具合を生じさせる原因となる。そこで、本発明の液滴吐出装置1では、インクを着弾させる前に、予めシート部材15の表面に乾燥処理を行い、表面の浸透性を均一化している。これにより、シート部材15におけるインクの着弾面積の測定を精度良く行うことが可能になる。そして、その後のインク吐出量の調整においても高い制御性が得られるようになる。このため、液滴吐出ヘッド5の全ノズルNにおけるインクの着弾面積を均一化することが可能となる。したがって、スジムラを目立たなくして画質の低下を抑制することができる。また、乾燥ガス噴出装置34によってシート部材15の表面を乾燥処理し、複数のノズルNにおけるインクの着弾面積に基づいて、複数のノズルNから吐出されるインクの吐出量の分布を求める方法は、従来の複数のノズルNから吐出されたインクの重量を測定する方法に比べて、膨大な工数がかからないので生産効率に優れる。また、複数のノズルNから吐出されたインクが着弾したシート部材15が適宜搬送されるので、着弾面積の測定が効率よく行われる。
【0070】
この構成によれば、シート部材15が顔料51をバインダー52で結着させた多孔質のインク受容層を有しているので、液滴吐出ヘッド5の全ノズルNから格段に均一な量のインクが吐出されるとともに、全ノズルNにおけるインクの着弾面積が格段に均一化される。特に、シート部材15が多孔質のインク受容層を有している場合は、インク受容層の空隙が吸湿によって埋まってしまいその空隙の大きさが不均一になりやすいため、インク受容層の表面の浸透性は均一に制御されるべきものとされることから、格段の効果を奏する。
【0071】
本実施形態の液滴吐出方法によれば、第1乾燥処理工程によってシート部材15の表面が乾燥処理され、シート部材15におけるインクの着弾面積のばらつきが小さくなる。そして、第1着弾工程の後の第1解析工程により複数のノズルNにおけるインクの吐出量の分布が求められる。そして、第1制御工程により複数のノズルNにおけるインク吐出量が所定の適正量に近づくように調整される。これにより、複数のノズルNにおけるインク吐出量のばらつきが補正される。このため、液滴吐出ヘッド5の全ノズルNから均一な量のインクを吐出するとともに、全ノズルNにおけるインクの着弾面積を均一化することが可能となる。したがって、スジムラを目立たなくして画質の低下を抑制することができる。
【0072】
なお、上記液滴吐出方法においては、第1制御工程の後に、シート部材15の表面を乾燥処理する第2乾燥処理工程と、第2乾燥処理工程の後に、インクをシート部材15に着弾する第2着弾工程と、第2着弾工程の後に、シート部材15に着弾されたインクの第2着弾面積を測定し、複数のノズルNから吐出されたインクの吐出量の分布を求める第2解析工程と、前記分布から複数のノズルNにおけるインク吐出量が所定の適正量に近づくように複数の駆動素子PZに印加する電圧を調整する第2制御工程と、を少なくとも1回有していてもよい。
【0073】
この製造方法によれば、第1制御工程の後に、乾燥処理工程と着弾工程と解析工程と制御工程とを複数回繰り返して行うことにより、複数のノズルNにおけるインク吐出量のばらつきと、複数のノズルNにおける着弾面積のばらつきと、が確実に調整される。このため、液滴吐出ヘッド5の全ノズルNから格段に均一な量のインクを吐出するとともに、全ノズルNにおけるインクの着弾面積を格段に均一化することが可能となる。したがって、スジムラをより目立たなくして画質の低下を格段に抑制することができる。
【0074】
なお、上記液滴吐出方法においては、第2着弾工程で着弾するインクについても、カラーフィルター層CFにならって、上述の第1着弾工程(図4のステップS3)と同様に適宜の配列形態で着弾するのがよい。これにより、液滴吐出ヘッド5の複数のノズルNにおける補正前の吐出状態と、補正後の吐出状態と、が確実に整合するようになる。
【0075】
また、本発明のカラーフィルターの製造方法によれば、上述したように液滴吐出ヘッドの全ノズルから均一な量のインクが吐出されるとともに、全ノズルにおけるインクの着弾面積が均一化されるので、スジムラの無い高品質なカラーフィルターを製造することができる。
【0076】
なお、上記実施形態では、ノズル間のインクの着弾面積のばらつきが調整された液滴吐出装置1を用いてカラーフィルターを製造する場合について説明したが、これに限らない。例えば、本発明の液滴吐出装置1はカラーフィルターの製造だけでなく、均一な膜厚を必要とされ、スジムラの形成が問題となる成膜工程においても適用可能である。
【符号の説明】
【0077】
1…液滴吐出装置、5…液滴吐出ヘッド、12…供給リール、13…巻取リール、14…面積計測用カメラ(撮像装置)、15…シート部材、31…制御ユニット(制御手段)、32…解析ユニット(解析手段)、34…乾燥ガス噴出装置、50a,50b…インク受容層、51…顔料、52…バインダー、CF…カラーフィルター層(カラーフィルター)、N…ノズル、P…カラーフィルター基板(基材)、PZ…駆動素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能液を吐出させる複数のノズルと、前記複数のノズルに対応して設けられた複数の駆動素子と、を有する液滴吐出ヘッドと、
前記複数のノズルから吐出された前記機能液を着弾させるシート部材を供給する供給リールと、
前記供給リールから供給された前記シート部材を巻き取る巻取リールと、
前記供給リールから供給された前記シート部材の表面を乾燥処理する乾燥ガス噴出装置と、
前記乾燥ガス噴出装置によって乾燥処理された前記供給リールと前記巻取リールとの間の前記シート部材に対して前記複数のノズルから吐出された前記機能液の画像を撮影する撮像装置と、
前記撮像装置によって撮影された前記画像を画像処理して前記機能液の前記シート部材上の着弾面積を測定し、前記複数のノズルから吐出された前記機能液の吐出量の分布を求める解析手段と、
前記分布から前記複数のノズルにおける前記吐出量が所定の適正量に近づくように前記複数の駆動素子に印加する電圧を調整する制御手段と、を有することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項2】
前記シート部材は、顔料をバインダーで結着させた多孔質のインク受容層を有することを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項3】
機能液を吐出させる複数のノズルと、前記複数のノズルに対応して設けられた複数の駆動素子と、を有する液滴吐出ヘッドを用いた液滴吐出方法であって、
シート部材の表面を乾燥処理する第1乾燥処理工程と、
前記第1乾燥処理工程の後に、前記機能液を前記シート部材に着弾する第1着弾工程と、
前記第1着弾工程の後に、前記シート部材に着弾された前記機能液の第1着弾面積を測定し、前記複数のノズルから吐出された前記機能液の吐出量の分布を求める第1解析工程と、
前記分布から前記複数のノズルにおける前記吐出量が所定の適正量に近づくように前記複数の駆動素子に印加する電圧を調整する第1制御工程と、を有することを特徴とする液滴吐出方法。
【請求項4】
前記第1制御工程の後に、前記シート部材の表面を乾燥処理する第2乾燥処理工程と、
前記第2乾燥処理工程の後に、前記機能液をシート部材に着弾する第2着弾工程と、
前記第2着弾工程の後に、前記シート部材に着弾された前記機能液の第2着弾面積を測定し、前記複数のノズルから吐出された前記機能液の吐出量の分布を求める第2解析工程と、
前記分布から前記複数のノズルにおける前記吐出量が所定の適正量に近づくように前記複数の駆動素子に印加する電圧を調整する第2制御工程と、を少なくとも1回有することを特徴とする請求項3に記載の液滴吐出方法。
【請求項5】
請求項3または4に記載の液滴吐出方法を用いて、基材上に設けられた所定領域に前記機能液を配置してカラーフィルターを形成することを特徴とするカラーフィルターの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−204412(P2010−204412A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−50320(P2009−50320)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】