説明

液滴吐出装置及び描画方法

【課題】吐出する機能液が所定の温度に調整されるまでの待機時間を短くする液滴吐出装置を提供する。
【解決手段】着色液31を液滴46にして吐出し所定のパターンを描画する液滴吐出装置8にかかわる。着色液31を加熱または冷却して着色液31を所定の温度に調整する第1加熱冷却装置41を備え、第1加熱冷却装置41は1つのパターンを描画するときに吐出する量の着色液31を所定の温度に調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出装置及び描画方法にかかわり、特に装置を起動してから描画するまでの時間を短縮する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
機能液を液滴にして吐出するインクジェット法を用いて塗布し、塗布された機能液を固化して膜を形成する方法が広く採用されている。そして、機能液には染料や顔料を含んで着色する機能を有する液状体や、金属粒子を含んで金属配線を形成する機能を有する液状体等の多種類の液状体が用いられている。
【0003】
機能液は温度により粘度が変わる場合が多く、粘度が変動するとき吐出された液滴の大きさが変動する。これにより、描画されたパターンが予定したパターンと異なることがある。液滴の大きさが変動しないようにするために、温度を所定の温度に調整して吐出する方法が特許文献1に開示されている。それによると、インクジェット記録装置は液滴を吐出するヘッドの内部に加熱手段と第1の温度検出手段とを備えている。さらに、インクジェット記録装置はインク供給路に第2の温度検出手段を備えている。そして、ヘッドの内部とインク供給路とでインクの温度差が大きいときには温度差が小さいときより大きい熱量を供給してインクの温度を調整していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−334967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液滴吐出装置を停止しているとき液滴吐出装置の内部では機能液の温度が液滴吐出装置を取り巻く空気の温度に近づく。液滴吐出装置を稼動するときには機能液の温度を所定の温度に調整する。そして、機能液が所定の温度に調整されるまでの時間待機し、機能液が所定の温度になった後で描画を開始していた。そこで、機能液が所定の温度に調整されるまでの待機時間の短い装置が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
本適用例にかかる液滴吐出装置は、機能液を液滴にして吐出し所定のパターンを描画する液滴吐出装置であって、前記機能液を加熱または冷却して前記機能液を所定の温度に調整する第1液温調整部を備え、前記第1液温調整部は1つの前記パターンを描画するときに吐出する量の前記機能液を前記所定の温度に調整することを特徴とする。
【0008】
この液滴吐出装置によれば、第1液温調整部が機能液を加熱または冷却して機能液を所定の温度に調整する。そして、第1液温調整部は1つのパターンを描画するときに吐出する量の機能液を調整する。第1液温調整部が温度を調整する機能液を用いて液滴吐出装置は1つのパターンを描画する。
【0009】
機能液の量が少ないときには多いときに比べて、少ない熱量で機能液の温度を変化させることができる。本適用例では、第1液温調整部は1つのパターンを描画するときに吐出する量の機能液を調整する。従って、第1液温調整部は2つ以上のパターンを描画するときに吐出する量の機能液を調整する場合に比べて短い時間で機能液を所定の温度にすることができる。その結果、機能液の温度が所定の温度と異なる温度のときにも液滴吐出装置は機能液が所定の温度になるまで待機する時間を短くすることができる。
【0010】
[適用例2]
上記適用例にかかる液滴吐出装置において、前記機能液を加熱または冷却して前記機能液を所定の温度に調整する第2液温調整部をさらに備え、前記第2液温調整部によって加熱または冷却された前記機能液は前記第1液温調整部に供給されることを特徴とする。
【0011】
この液滴吐出装置によれば、第2液温調整部は機能液を加熱または冷却して機能液を所定の温度に調整する。そして、所定の温度となった機能液は第1液温調整部に供給される。従って、第1液温調整部に供給される機能液は所定の温度に近い温度となっている。その結果、第1液温調整部は短時間で機能液を所定の温度にすることができる。
【0012】
[適用例3]
上記適用例にかかる液滴吐出装置において、前記第1液温調整部はペルチェ素子を有し、前記ペルチェ素子が前記機能液を加熱または冷却することを特徴とする。
【0013】
この液滴吐出装置によれば、ペルチェ素子が機能液を加熱または冷却している。ペルチェ素子はその内部に流れる電流の状態によって加熱と冷却とを切替えることができる。従って、簡便に機能液の加熱と冷却とを切り替えることができる。
【0014】
[適用例4]
上記適用例にかかる液滴吐出装置において、複数のパターンを描画する量の前記機能液を収納する収納容器を備え、前記第2液温調整部は前記収納容器内の前記機能液を所定の温度に調整することを特徴とする。
【0015】
この液滴吐出装置によれば、収納容器内には複数のパターンを描画する量の機能液が収納され、第2液温調整部は収納容器内の機能液を調整する。これにより、収納容器に収納された機能液を使って複数のパターンを描画することができる。従って、収納容器に機能液を補充する頻度を少なくすることができる。
【0016】
[適用例5]
本適用例にかかる液滴吐出装置は、パターンを描画する液滴吐出装置であって、機能液を液滴にして吐出する液滴吐出ヘッドと、前記機能液を加熱または冷却して前記機能液を所定の温度に調整し、前記液滴吐出ヘッドへ供給する第1液温調整部と、前記機能液を加熱または冷却して前記機能液を所定の温度に調整し、前記第1液温調整部へ供給する第2液温調整部と、を備え、前記第1液温調整部が調整する前記機能液の量は前記第2液温調整部が調整する前記機能液の量より少ないことを特徴とする。
【0017】
この液滴吐出装置によれば、第2液温調整部が機能液を加熱または冷却して機能液を所定の温度に調整して、調整した機能液を第1液温調整部へ供給する。第1液温調整部は供給された機能液を加熱または冷却して機能液を所定の温度に調整して、調整した機能液を液滴吐出ヘッドへ供給する。液滴吐出ヘッドは機能液を液滴にして吐出し、パターンを描画する。
【0018】
機能液の量が少ないときには多いときに比べて、少ない熱量で機能液の温度を変化させることができる。本適用例では、第1液温調整部は第2液温調整部が調整する量より少ない量の機能液の温度を調整する。従って、第1液温調整部は第2液温調整部が機能液を調整する場合に比べて短い時間で機能液を所定の温度にすることができる。その結果、機能液の温度が所定の温度と異なる温度のときにも液滴吐出装置は機能液が所定の温度になるまで待機する時間を短くすることができる。
【0019】
[適用例6]
本適用例にかかる描画方法は、第1液温調整部が1つのパターンを描画するときに吐出する量の機能液を加熱または冷却して所定の温度に調整する液温調整工程と、前記所定の温度の前記機能液を液滴にして吐出し描画する描画工程と、を有することを特徴とする。
【0020】
この描画方法によれば、液温調整工程にて第1液温調整部が機能液を加熱または冷却して機能液を所定の温度に調整する。そして、第1液温調整部は1つのパターンを描画するときに吐出する量の機能液の温度を調整する。描画工程では温度調整された機能液を用いて描画する。
【0021】
機能液の量が少ないときには多いときに比べて、少ない熱量で機能液の温度を変化させることができる。液温調整工程では1つのパターンを描画するときに吐出する量の機能液を第1液温調整部が温度調整する。従って、第1液温調整部は2つ以上のパターンを描画するときに吐出する量の機能液を調整する場合に比べて短い時間で機能液を所定の温度にすることができる。その結果、液温調整工程にて機能液の温度が所定の温度に調整されるまで待つ時間を短くすることができる。
【0022】
[適用例7]
上記適用例にかかる描画方法において、第2液温調整部が前記機能液を加熱または冷却して前記所定の温度に近づけて、前記機能液を前記第1液温調整部へ供給する機能液供給工程をさらに有することを特徴とする。
【0023】
この描画方法によれば、第2液温調整部は機能液を加熱または冷却して機能液を所定の温度に近づける。そして、所定の温度に近づいた機能液は第1液温調整部に供給される。従って、第1液温調整部に供給される機能液は所定の温度に近い温度となっている。その結果、第1液温調整部は短時間で機能液を所定の温度にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1の実施形態にかかわり、(a)は、ラベルの一例を示す模式平面図、(b)は、液滴吐出装置の構成を示す概略斜視図。
【図2】(a)は、キャリッジを示す模式側面図、(b)は、キャリッジを示す模式平面図。
【図3】(a)は、ヘッドユニットの構造を示す要部模式断面図、(b)は、液滴吐出ヘッドの構造を示す要部模式断面図。
【図4】液滴吐出装置の電気制御ブロック図。
【図5】(a)は、描画作業を示すフローチャート、(b)は、描画作業における描画方法を説明するための模式図。
【図6】描画作業における描画方法を説明するための模式図。
【図7】第2の実施形態にかかわるヘッドユニットの要部模式構成図。
【図8】第3の実施形態にかかわるラベルの一例を示す模式平面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。尚、各図面における各部材は、各図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて図示している。
【0026】
(第1の実施形態)
本実施形態では、被加工物であるラベル及び液滴吐出装置を説明する。次に、この液滴吐出装置を用いてラベルにマークを描画する本発明の特徴的な描画方法の例について、図1〜図6に従って説明する。液滴吐出装置に関しては様々な種類の装置があるが、インクジェット法を用いた装置が好ましい。インクジェット法は微小液滴の吐出が可能であるため、微細加工に適している。
【0027】
(ラベル)
図1(a)は、ラベルの一例を示す模式平面図である。最初に、パターンが描画されたラベル1について図1(a)に従って説明する。ラベル1は矩形のシート状の基材2上に図案3が描画されている。そして、図案3の外形の周囲には切取線4が設定され、切取線4に沿って基材2を切断することによりラベル1が基材2から分離する。これによりラベル1が完成する。本実施形態においては1つの基材2に3つの図案3が描画されている。各図案3の間は無地の背景部5となっており、描画された図案3の周囲は背景部5に囲まれている。このように、背景部5により囲まれた部分を1つのパターン6とする。尚、図中における図案3の図柄、形状、個数は一例であり特に限定されない。
【0028】
(液滴吐出装置)
図1(b)は、液滴吐出装置の構成を示す概略斜視図である。液滴吐出装置8により、膜を構成する材料を含む機能液が吐出されて塗布される。本実施形態では機能液は基材2に着色する機能を備えた液状体であるので、以下機能液を着色液と称す。図1(b)に示すように液滴吐出装置8は直方体形状に形成される基台9を備えている。本実施形態では、この基台9の長手方向をY方向とし、水平面内にてY方向と直交する方向をX方向とする。そして、鉛直方向をZ方向とする。
【0029】
基台9の上面9aには、Y方向に延びる一対の案内レール10が同Y方向全幅にわたり凸設されている。その基台9の上側には、一対の案内レール10に対応する図示しない直動機構を備えた移動部としてのステージ11が取付けられている。この直動機構の種類は、特に限定されないが、サーボモーターとボールネジとを組み合わせた機構やリニアモーターを用いることができる。このステージ11が移動するY方向を副走査方向とする。
【0030】
さらに、基台9の上面9aには、案内レール10と平行に副走査位置検出装置12が配置され、ステージ11のY方向の位置が計測できるようになっている。ステージ11の上面には載置面13が形成され、その載置面13には、図示しない吸引式の基板チャック機構が設けられている。操作者が載置面13に基材2を載置して所定の位置に位置決めする。その後、基板チャック機構により基材2は載置面13に固定される。
【0031】
載置面13上には基材2を設置する場所を示す枠状の位置決め用の印が描画されている。操作者は位置決め用の印を参照することにより、基材2を所定の場所に設置することができる。載置面13上の−Y側には模擬吐出部11aが設置されている。模擬吐出部11aは液滴吐出ヘッドの内部にある液体を吐出するときに、吐出された液体を受ける場所である。模擬吐出部11aには多孔質のマットが設置され、吐出された液体が跳ねないようになっている。
【0032】
基台9のX方向両側には、一対の支持台14が立設されている。その一対の支持台14には、X方向に延びる案内部材15が架設されている。案内部材15の下側には、X方向に延びる案内レール16がX方向全幅にわたり設置されている。そして、案内レール16に沿って略角柱状に形成された移動部としてのキャリッジ17が配置されている。キャリッジ17は直動機構を備え、X方向に走査移動することが可能になっている。この直動機構の種類は、特に限定されないが、例えば、リニアモーターを用いることができる。キャリッジ17が走査するX方向を主走査方向とする。案内部材15とキャリッジ17との間には、主走査位置検出装置18が配置され、キャリッジ17の位置が計測可能になっている。
【0033】
液滴を吐出するときに液滴吐出ヘッドと被吐出物とが相対移動する方向を主走査方向とする。そして、主走査方向と直交する方向を副走査方向とする。副走査方向は改行するときに液滴吐出ヘッドと被吐出物とが相対移動する方向である。本実施形態では主走査方向がX方向であり、副走査方向がY方向となっている。
【0034】
キャリッジ17の載置面13を向く側にはヘッドユニット19と一対の硬化ユニット20が配置されている。ヘッドユニット19の載置面13側には液滴を吐出する図示しない液滴吐出ヘッドが凸設されている。硬化ユニット20には吐出された液滴を硬化させる紫外線を照射する装置が配置されている。硬化ユニット20は主走査方向においてヘッドユニット19を挟んだ位置に配置されている。
【0035】
キャリッジ17の図中上側には収納容器としての収容タンク21が配置されている。収容タンク21には着色液が収容されている。ヘッドユニット19の液滴吐出ヘッドと収容タンク21とは図示しないチューブにより接続され、収容タンク21内の着色液が第1チューブ26を介して液滴吐出ヘッドに供給される。
【0036】
着色液は樹脂材料、光重合開始剤、溶媒を主材料とする。この主材料に顔料または染料等の色素や、親液性または撥液性等の表面改質材料等の機能性材料を添加することにより着色液が形成されている。着色液の樹脂材料は樹脂膜を形成する材料である。樹脂材料としては、常温で液状であり、重合させることによりポリマーとなる材料であれば特に限定されない。さらに、粘性の小さい樹脂材料が好ましく、オリゴマーの形態であるのが好ましい。モノマーの形態であればさらに好ましい。光重合開始剤はポリマーの架橋性基に作用して架橋反応を進行させる添加剤であり、例えば、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタールを用いることができる。溶媒は樹脂材料の粘度を調整するものである。着色液を液滴吐出ヘッドから吐出し易い粘度にすることにより、液滴吐出ヘッドは安定して着色液を吐出することができる。
【0037】
図2(a)は、キャリッジを示す模式側面図である。図2(a)に示すようにヘッドユニット19の載置面13側の面には4個の液滴吐出ヘッド24が配置されている。液滴吐出ヘッド24の個数は特に限定されず、吐出する着色液の種類に合わせて設定するのが良い。ヘッドユニット19と硬化ユニット20との間には一対のヘッド昇降装置25が配置されている。ヘッド昇降装置25はキャリッジ17に対してヘッドユニット19を昇降させる装置である。ヘッド昇降装置25はヘッドユニット19を昇降させることにより液滴吐出ヘッド24と基材2との距離を制御することができる。
【0038】
ヘッド昇降装置25はヘッドユニット19の移動方向を限定するガイドレールと直動機構とを備えている。直動機構は特に限定されないが、例えば、本実施形態ではボールねじとステップモーター等から構成されている。そして、ステップモーターに駆動パルス信号が入力されるとき、ステップモーターはボールねじを回転してヘッドユニット19をZ方向に昇降させる。
【0039】
キャリッジ17の上に配置された収容タンク21は第1タンク21a〜第4タンク21dから構成されている。第1タンク21aには赤色の着色液が収納され、第2タンク21bには青色の着色液が収納されている。第3タンク21cには緑色の着色液が収納され、第4タンク21dには白色の着色液が収納されている。収容タンク21の色及び着色液の色は特に限定されない。図案3を形成するために必要な色を設定するのが良い。
【0040】
図2(b)は、キャリッジを示す模式平面図である。図2(b)に示すようにキャリッジ17に配置されたヘッドユニット19には4個の液滴吐出ヘッド24が配置され、液滴吐出ヘッド24の下面には、それぞれノズルプレート27が備えられている。そのノズルプレート27には、それぞれ複数のノズル28がY方向に所定の間隔で配列されている。
【0041】
硬化ユニット20の載置面13と対向する面には吹出口29と照射窓30とが配置されている。硬化ユニット20の内部には温風装置と紫外光照射装置とが配置されている。温風装置はヒーターとファンとを備え、温風を形成する装置である。温風装置と吹出口29とが流路によって接続され、温風装置によって形成された温風は吹出口29から基材2に着弾した液滴に向けて吹出される。そして、着弾した液滴の表面が乾燥される。紫外光照射装置はLED(Light Emitting Diode)素子を備え、紫外線の光である紫外光を照射する装置である。紫外光は照射窓30を通過して基材2に着弾した液滴に向けて照射される。そして、着弾した液滴が硬化される。
【0042】
図3(a)は、ヘッドユニットの構造を示す要部模式断面図である。図3(a)に示すように、収容タンク21の内部には機能液としての着色液31が収納されている。収容タンク21内の底21eには第2加熱冷却装置32及び第2液温検出装置33が設置されている。第2加熱冷却装置32は着色液31に対して耐腐食性があり、着色液31を加熱及び冷却可能であれば良く。本実施形態では、例えば、ペルチェ素子をステンレス容器内に設置した装置を採用している。第2加熱冷却装置32とキャリッジ17とは熱を伝導し易い金属等により接続されている。これにより、第2加熱冷却装置32が過熱して破壊されることを防止している。
【0043】
第2液温検出装置33は着色液31に対して耐腐食性があり、着色液31の温度を検出可能であれば良く。熱電対、測温度抵抗体、サーミスタ、ダイオード等のセンサーやこれらのセンサーと駆動回路を一体化した装置を用いることができる。これらのセンサーを耐食性があり熱伝導性の良いステンレス等の金属容器に収納した装置を用いることができる。
【0044】
ヘッドユニット19はベース板34を備え、ベース板34の下側には支持部35を介して駆動回路基板36が配置されている。そして、駆動回路基板36の下側の面には液滴吐出ヘッド24を駆動するヘッド駆動回路37が配置されている。さらに、ベース板34には支持部38を介して、ヘッド取付板39が配置され、ヘッド取付板39の下面には液滴吐出ヘッド24が配置されている。ヘッド駆動回路37と液滴吐出ヘッド24とは図示しないケーブルにより接続され、ヘッド駆動回路37は液滴吐出ヘッド24に駆動信号を出力する。
【0045】
ベース板34の下面には液滴吐出ヘッド24と同数の圧力調整装置40が配置され、収容タンク21と圧力調整装置40との間は、第1チューブ26により接続されている。そして、圧力調整装置40と液滴吐出ヘッド24との間は第1加熱冷却装置41により接続されている。そして、収容タンク21から供給される着色液31が、圧力調整装置40により液滴吐出ヘッド24に供給される。
【0046】
圧力調整装置40は第1チューブ26を通して供給される着色液31の圧力を調整する装置である。そして、圧力調整した着色液31を第1加熱冷却装置41に供給する。第1加熱冷却装置41を経て液滴吐出ヘッド24に供給される着色液31の圧力は吐出に適した圧力に調整されている。これにより、液滴吐出ヘッド24は安定して吐出が可能となる。
【0047】
第1加熱冷却装置41は内部に着色液31が通過する流路を備えている。この流路を囲んでペルチェ素子が設置され、ペルチェ素子を囲んで放熱フィンが設置されている。そして、ペルチェ素子に電流を流すことにより、流路に位置する着色液31は加熱または冷却される。
【0048】
第1加熱冷却装置41内の流路の体積は1つのパターンを描画するときに吐出する液滴量の体積となっている。そして、第1加熱冷却装置41が調整する着色液31の量は第2加熱冷却装置32が調整する着色液31の量より少ない量となっている。着色液31の量が少ないときには多いときに比べて、少ない熱量で着色液31の温度を変化させることができる。従って、第1加熱冷却装置41は短い時間で着色液31を所定の温度にすることができる。その結果、着色液31の温度が所定の温度と異なる温度のときにも液滴吐出装置8は短時間で着色液31を所定の温度に調整することができる。
【0049】
第1加熱冷却装置41と隣接して第1液温検出装置42が設置されている。第1液温検出装置42は温度を検出する検出部が第1加熱冷却装置41内の流路と接して配置されている。これにより、第1加熱冷却装置41内の着色液31の温度を検出可能になっている。第1液温検出装置42は第2液温検出装置33と同様な装置を用いることができる。
【0050】
図3(b)は、液滴吐出ヘッドの構造を示す要部模式断面図である。図3(b)に示すように、ノズルプレート27の上側であってノズル28と相対する位置には、キャビティ43が形成されている。そして、キャビティ43には第1加熱冷却装置41で温度調整された着色液31が供給される。キャビティ43の上側には、上下方向に振動して、キャビティ43内の容積を拡大縮小する振動板44と、上下方向に伸縮して振動板44を振動させる圧電素子45が配設されている。
【0051】
液滴吐出ヘッド24が圧電素子45を制御駆動するためのノズル駆動信号を受けると、圧電素子45が上下方向に伸縮する。そして、圧電素子45は振動板44を振動させるので、振動板44と隣接するキャビティ43の容積が拡大縮小する。それにより、キャビティ43内に供給された着色液31のうち縮小した容積分の着色液31がノズル28を通り、液滴46となって吐出される。液滴吐出装置8はステージ11とキャリッジ17とを走査移動させる。そして、ノズル28が所定の場所に位置するときに液滴46を吐出することにより、所望のパターンを描画することができる。
【0052】
図4は、液滴吐出装置の電気制御ブロック図である。図4において、液滴吐出装置8は液滴吐出装置8の動作を制御する制御部としての制御装置49を備えている。そして、制御装置49はプロセッサーとして各種の演算処理を行うCPU(中央演算処理装置)50と、各種情報を記憶するメモリー51とを備えている。
【0053】
主走査駆動装置52、主走査位置検出装置18、副走査駆動装置53、副走査位置検出装置12は、入出力インターフェイス54及びデータバス55を介してCPU50に接続されている。さらに、液滴吐出ヘッド24を駆動するヘッド駆動回路37、ヘッド昇降装置25、第1液温検出装置42、第1加熱冷却装置41、第2液温検出装置33、第2加熱冷却装置32も入出力インターフェイス54及びデータバス55を介してCPU50に接続されている。他にも、入力装置57、表示装置58が入出力インターフェイス54及びデータバス55を介してCPU50に接続されている。
【0054】
主走査駆動装置52はキャリッジ17を駆動する装置であり、副走査駆動装置53はステージ11を駆動する装置である。主走査位置検出装置18がキャリッジ17の位置を検出し、主走査駆動装置52がキャリッジ17を駆動することにより、キャリッジ17を所望の速度にて走査することが可能となっている。同じく、副走査位置検出装置12がステージ11の位置を検出し、副走査駆動装置53がステージ11を駆動することにより、ステージ11を所望の位置に移動して停止させることが可能になっている。
【0055】
ヘッド駆動回路37は液滴吐出ヘッド24を駆動する回路である。そして、CPU50が指示する駆動電圧、吐出数、吐出間隔等の吐出条件に従って、ヘッド駆動回路37は液滴吐出ヘッド24を駆動する。ヘッド昇降装置25はキャリッジ17に対してヘッドユニット19を昇降させる装置である。ヘッド昇降装置25はCPU50の指示信号を受信し、指示信号に従って基材2とノズルプレート27との距離を制御する。
【0056】
第1液温検出装置42は第1加熱冷却装置41内に位置する着色液31の液温をCPU50へ出力する。CPU50は、着色液31の液温を参照して第1加熱冷却装置41に加熱または冷却の指示信号を出力する。同様に、第2液温検出装置33は収容タンク21内に位置する着色液31の液温をCPU50へ出力する。CPU50は、着色液31の液温を参照して第2加熱冷却装置32に加熱または冷却の指示信号を出力する。これにより、第1加熱冷却装置41内に位置する着色液31及び収容タンク21内に位置する着色液31は所定の温度に調整される。
【0057】
入力装置57は液滴46を吐出する各種加工条件を入力する装置であり、例えば、第1加熱冷却装置41及び第2加熱冷却装置32が調整する着色液31の温度の設定値を入力する装置である。表示装置58は加工条件や作業状況を表示する装置であり、例えば、第1液温検出装置42及び第2液温検出装置33が検出する着色液31の温度を表示する。表示装置58に表示される情報を基に、操作者は入力装置57を用いて操作を行う。
【0058】
メモリー51は、RAM、ROM等といった半導体メモリーや、ハードディスク、DVD−ROMといった外部記憶装置を含む概念である。機能的には、液滴吐出装置8の動作の制御手順が記述されたプログラムソフト59を記憶する記憶領域や、基材2上に吐出する液滴46の着弾位置の座標データである吐出位置データ60を記憶するための記憶領域が設定される。他にも、液滴吐出ヘッド24を駆動するときの駆動信号である駆動信号データ61を記憶するための記憶領域や、着色液31の温度を調整するときの設定温度等の液温関連データ62を記憶するための記憶領域が設定される。他にも、CPU50のためのワークエリアやテンポラリーファイル等として機能する記憶領域やその他各種の記憶領域が設定される。
【0059】
CPU50は、メモリー51内に記憶されたプログラムソフト59に従って、基材2の所定の場所に液滴46を吐出するための制御を行うものである。具体的な機能実現部として液滴吐出ヘッド24から液滴46を吐出して描画するための制御を行う描画制御部63を有する。
【0060】
描画制御部63を詳しく分割すれば、キャリッジ17を主走査方向へ所定の速度で走査移動させるための制御を行う主走査制御部64と、ステージ11を副走査方向へ所定の移動量で移動させるための制御を行う副走査制御部65を有する。さらに、描画制御部63は液滴吐出ヘッド24内の複数あるノズル28から液滴46を吐出させるノズル28を選択する吐出制御部66等を有する。吐出制御部66は選択したノズル28に対応する圧電素子45を作動させて液滴46を吐出させる。
【0061】
他にも、CPU50は第1液温制御部67及び第2液温制御部68を有する。第1液温制御部67は第1加熱冷却装置41内に位置する着色液31の温度を設定温度に調整する制御を行う。第2液温制御部68は収容タンク21内に位置する着色液31の温度を設定温度に調整する制御を行う。第1液温制御部67、第1加熱冷却装置41及び第1液温検出装置42等により第1液温調整部が構成されている。そして、第2液温制御部68、第2加熱冷却装置32及び第2液温検出装置33等により第2液温調整部が構成されている。
【0062】
着色液31は温度に対応して粘度が変化する。そして、着色液31の粘度が変動するとノズル28から吐出される液滴46の容量が変動する。従って、着色液31の温度変動を抑えることによりノズル28から吐出される液滴46の容量の変動が小さくなる。これにより液滴吐出装置8は品質良く図案3を描画することができる。
【0063】
尚、本実施形態では、上記の各機能がCPU50を用いてプログラムソフトで実現することとしたが、上記の各機能がCPUを用いない単独の電子回路(ハードウェア)によって実現できる場合には、そのような電子回路を用いることも可能である。
【0064】
(描画方法)
次に、上述した液滴吐出装置8を用いて、所定のパターンを描画する描画方法について図5〜図6にて説明する。図5(a)は、描画作業を示すフローチャートである。図5(b)及び図6は、描画作業における描画方法を説明するための模式図である。
【0065】
図5に示すフローチャートにおいて、ステップS1は、給材工程に相当する。この工程は、載置面に基材を載置して固定する工程である。次にステップS4に移行する。ステップS2は、液温調整工程に相当する。この工程は、第1加熱冷却装置にて液滴吐出ヘッドに流入する直前の着色液の温度を所定の温度に調整する工程である。次にステップS7に移行する。ステップS3は機能液供給工程に相当する。この工程は、収容タンク内に収納されている着色液の温度を所定の温度に調整する工程である。次にステップS7に移行する。ステップS4は待機工程に相当する。この工程は、第1加熱冷却装置内に位置する着色液の温度が所定の温度に調整されるまで待機する工程である。次にステップS5に移行する。
【0066】
ステップS5は、描画工程に相当する。この工程は、基材と液滴吐出ヘッドとを相対移動させながら液滴を基材に吐出して描画する工程である。次に、ステップS6に移行する。ステップS6は、除材工程に相当する。この工程は、載置面から基材を除去して次工程へ移動する工程である。ステップS1、ステップS4〜ステップS6と並行してステップS2及びステップS3が行われる。従って、給材、描画、除材の各工程が行われる間に、着色液の温度調整が行われる。
【0067】
ステップS7は、終了判断工程に相当する。この工程は、描画作業を終了するかの判断をする工程である。描画する予定の基材のうち描画していない基材があるときステップS1に移行する。予定した総ての基材にパターンを描画したとき基材への描画作業を終了する。
【0068】
次に、図5(b)及び図6を用いて、図5(a)に示したステップと対応させて、描画作業方法を詳細に説明する。図5(b)は、ステップS1の給材工程に対応する図である。図5(b)に示すように、ステップS1において載置面13上に基材2を載置する。そして、基板チャック機構を作動させることにより、操作者は基材2を載置面13上に固定させる。
【0069】
図6(a)及び図6(b)はステップS2の液温調整工程及びステップS3の機能液供給工程に対応する図である。図6(a)は液滴吐出装置8を起動したときに着色液31の温度が設定温度より低いときの例を示している。図6(b)は液滴吐出装置8を起動したときに着色液31の温度が設定温度より高いときの例を示している。
【0070】
図6(a)及び図6(b)において、縦軸は着色液温度を示し図中上側が下側より高い温度を示している。横軸は時間の推移を示し、時間は図中左側から右側へ推移する。横軸の左端は液滴吐出装置8を起動した時刻となっている。このときの着色液31の温度を初期温度71とする。初期温度71は液滴吐出装置8を構成する部材の温度の影響を受けて変動している温度である。そして、液滴46を吐出するときの着色液31の温度である設定温度72を定める。設定温度72は液滴46を吐出する実験を行って設定された温度であり、品質良く吐出するのに最適な温度である。図6(a)は初期温度71が設定温度72より低いときの例を示している。供給温度推移線73は、第1加熱冷却装置41において第1液温検出装置42に検出される着色液31の温度が推移する様子を示している。そして、タンク温度推移線74は、収容タンク21内において第2液温検出装置33に検出される着色液31の温度が推移する様子を示している。
【0071】
液滴吐出装置8が起動した後、第1液温検出装置42及び第2液温検出装置33は着色液31の温度を検出する。このときの着色液31の温度は初期温度71となっている。着色液31の温度と設定温度72とに差があることから第1液温制御部67は第1加熱冷却装置41を駆動して着色液31を加熱させる。同様に、第2液温制御部68は第2加熱冷却装置32を駆動して着色液31を加熱させる。これにより供給温度推移線73及びタンク温度推移線74は上昇する。
【0072】
第1加熱冷却装置41が加熱する着色液31の量は第2加熱冷却装置32が加熱する着色液31の量より少ない量となっている。そして、着色液31の単位量に対して投入される熱量は第2加熱冷却装置32より第1加熱冷却装置41が大きくなるように設定されている。従って、供給温度推移線73の変化はタンク温度推移線74の変化より大きくなっている。これにより、供給温度推移線73はタンク温度推移線74より早く設定温度72に到達する。
【0073】
液滴吐出装置8を起動した後ステップS1の給材工程が行われる。ステップS1が終了したときに供給温度推移線73が設定温度72まで達していないときには、ステップS4の待機工程が行われる。ステップS4は供給温度推移線73が設定温度72に到達するまで待機する工程である。供給温度推移線73が設定温度72に到達したとき液滴吐出装置8は液滴吐出ヘッド24内の着色液31を模擬吐出部11aに吐出して廃棄する。その後、ステップS5の描画工程に移行する。
【0074】
液滴吐出装置8を起動した後ステップS1、ステップS4からステップS5に移行した直後でもタンク温度推移線74は設定温度72に到達していないので、第2液温制御部68は第2加熱冷却装置32に収容タンク21内の着色液31を加熱させる。従って、タンク温度推移線74は設定温度72に達するまで上昇する。
【0075】
収容タンク21内における着色液31の温度が設定温度72に達していないときにも着色液31は第1加熱冷却装置41を通過するときに設定温度72まで加熱される。そして、供給温度推移線73は設定温度72に維持される。これにより液滴吐出ヘッド24には設定温度72の着色液31が供給される。
【0076】
ステップS5では収容タンク21内における着色液31の温度が設定温度72に近づく。従って、第1加熱冷却装置41を通過するときに設定温度72まで加熱し易くなる。収容タンク21内における着色液31の温度が低いため第1加熱冷却装置41を通過するときに設定温度72まで加熱できないときには、1つのパターンを描画した後に次のパターンを描画する区切りにステップS4に移行して待機しても良い。
【0077】
図6(b)は初期温度71が設定温度72より高いときの例を示している。例えば、気温の高い部屋で液滴吐出装置8を駆動するときにはこの状況となる。液滴吐出装置8が起動した後第1液温検出装置42及び第2液温検出装置33は着色液31の温度を検出する。着色液31の温度と設定温度72とに差があることから第1液温制御部67は第1加熱冷却装置41を駆動して着色液31を冷却させる。同様に、第2液温制御部68は第2加熱冷却装置32を駆動して着色液31を冷却させる。これにより供給温度推移線73及びタンク温度推移線74は下降する。
【0078】
第1加熱冷却装置41が冷却する着色液31の量は第2加熱冷却装置32が冷却する着色液31の量より少ない量となっている。そして、着色液31の単位量に対する冷却熱量は第2加熱冷却装置32より第1加熱冷却装置41が大きくなるように設定されている。従って、供給温度推移線73の変化はタンク温度推移線74の変化より大きくなる。これにより、供給温度推移線73はタンク温度推移線74より早く設定温度72に到達する。
【0079】
液滴吐出装置8を起動した後ステップS1の給材工程が行われる。ステップS1が終了したときに供給温度推移線73が設定温度72まで達していないときには、ステップS4の待機工程が行われる。ステップS4は供給温度推移線73が設定温度72に到達するまで待機する工程である。供給温度推移線73が設定温度72に到達したとき液滴吐出装置8は液滴吐出ヘッド24内の着色液31を模擬吐出部11aに吐出して廃棄する。その後、ステップS5の描画工程に移行する。
【0080】
液滴吐出装置8を起動した後ステップS1、ステップS4からステップS5に移行した直後でもタンク温度推移線74は設定温度72に到達していないので、第2液温制御部68は第2加熱冷却装置32に収容タンク21内の着色液31を冷却させる。従って、タンク温度推移線74は設定温度72に達するまで下降する。
【0081】
収容タンク21内における着色液31の温度が設定温度72に達していないときにも着色液31は第1加熱冷却装置41を通過するときに設定温度72まで冷却される。そして、供給温度推移線73は設定温度72に維持される。これにより液滴吐出ヘッド24には設定温度72の着色液31が供給される。
【0082】
ステップS5では収容タンク21内における着色液31の温度が設定温度72に近づく。従って、第1加熱冷却装置41を通過するときに設定温度72まで冷却し易くなる。収容タンク21内における着色液31の温度が高いため第1加熱冷却装置41を通過するときに設定温度72まで冷却できないときには、1つのパターンを描画した後に次のパターンを描画する区切りにてステップS4に移行して待機しても良い。
【0083】
図6(c)はステップS5の描画工程に対応する図である。図6(c)に示すように、ステップS5において、キャリッジ17を走査移動しながらノズル28から液滴46を吐出して基材2上に描画する。着弾した液滴46には硬化ユニット20から紫外線75が照射され、熱風76が吹き付けられる。これにより着弾した液滴46は硬化される。
【0084】
ステップS6の除材工程では操作者は基板チャック機構を解除させた後、基材2を載置面13上から除去して次工程に移動する。ステップS7の終了判断工程にて作業を継続するかの判断をする。予定した基材2への描画作業を総て行ったとき、操作者が終了する判断をして描画作業を終了する。
【0085】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、第1加熱冷却装置41が着色液31を加熱または冷却して着色液31を設定温度72に調整している。そして、第1液温制御部67は1つの図案3を描画するときに吐出する量の着色液31を調整する。第1加熱冷却装置41が温度を調整した着色液31を用いて液滴吐出装置8は1つのパターンを描画している。
【0086】
着色液31の量が少ないときには多いときに比べて、少ない熱量で着色液31の温度を変化させることができる。本実施形態では、第1加熱冷却装置41は1つのパターンを描画するときに吐出する量の着色液31を調整している。従って、第1加熱冷却装置41は2つ以上のパターンを描画するときに吐出する量の着色液31を調整する場合に比べて短い時間で着色液31を所定の温度にすることができる。その結果、着色液31の温度が設定温度72と異なる温度のときにも液滴吐出装置8は着色液31が設定温度72になるまで待機する時間を短くすることができる。
【0087】
(2)本実施形態によれば、第2加熱冷却装置32は収容タンク21内の着色液31を加熱または冷却して着色液31を所定の温度に調整している。そして、設定温度72となった着色液31は第1加熱冷却装置41に供給される。従って、第1加熱冷却装置41に供給される着色液31は設定温度72に近い温度となっている。その結果、第1加熱冷却装置41は短時間で着色液31を設定温度72に調整することができる。
【0088】
(3)本実施形態によれば、第1加熱冷却装置41及び第2加熱冷却装置32においてペルチェ素子が着色液31を加熱または冷却している。ペルチェ素子はその内部に流れる電流の状態によって加熱と冷却とを切替えることができる。従って、簡便な装置で着色液31を加熱または冷却することができる。
【0089】
(4)本実施形態によれば、収容タンク21内には複数のパターンを描画する量の着色液31が収納され、第2加熱冷却装置32は収容タンク21内の着色液31の温度を調整する。これにより、収容タンク21に収納された着色液31を使って複数のパターンを描画することができる。従って、収容タンク21に着色液31を補充する頻度を少なくすることができる。着色液31の量が多い方が少ないときに比べて蓄熱する熱容量を大きくできる。従って、収容タンク21内に収納された着色液31の温度変化を小さくできる為、着色液31の液温を調整し易くすることができる。
【0090】
(5)本実施形態によれば、ステップS2の液温調整工程では1つの図案3を描画するときに吐出する量の着色液31を第1加熱冷却装置41が温度調整する。従って、第1加熱冷却装置41は2つ以上の図案3を描画するときに吐出する量の着色液31を調整する場合に比べて短い時間で着色液31を設定温度72にすることができる。その結果、ステップS2の液温調整工程にて着色液31の温度が設定温度72に調整されるまで待つ時間を短くすることができる。
【0091】
(第2の実施形態)
次に、液滴吐出装置の一実施形態について図7のヘッドユニットの要部模式構成図を用いて説明する。本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、図3に示した第1加熱冷却装置41の形態が異なる点にある。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
【0092】
すなわち、本実施形態では、図7に示したように液滴吐出装置79はヘッドユニット80を備え、ヘッドユニット80には圧力調整装置40及び液滴吐出ヘッド24が設置されている。圧力調整装置40へは収容タンク21から第1チューブ26を介して着色液31が供給される。圧力調整装置40と液滴吐出ヘッド24とは第2チューブ81を介して接続されている。そして、着色液31は圧力調整装置40から第2チューブ81を通って液滴吐出ヘッド24に供給される。第2チューブ81に接触するように第1液温検出装置42が配置され、第1液温検出装置42の温度検出部は第2チューブ81の内部に位置する着色液31に接するように配置されている。これにより第1液温検出装置42は着色液31の温度を検出可能になっている。尚、駆動回路基板36及びヘッド駆動回路37は図を見易くするために省略してある。
【0093】
ヘッドユニット80には第1液温調整部としての第3加熱冷却装置82が設定されている。第3加熱冷却装置82は加熱部83、冷却部84及びポンプ85を備え、加熱部83及び冷却部84の内部とポンプ85を通るように熱交換用配管86が設置されている。熱交換用配管86は第2チューブ81を螺旋状に巻きつけるように配置されている。熱交換用配管86において第2チューブ81と接する場所及び第2チューブ81は熱伝導性の良い材質により形成されている。これにより、熱交換用配管86と第2チューブ81との間で熱交換が行われ易くなっている。
【0094】
熱交換用配管86の中には熱媒体が充填されている。熱媒体は熱を伝導し易く流体となる材質であれば良く特に限定されない、液体、気体、液相と気相との間で相変化する媒体を用いることができる。例えば、水、油、シリコン油が好適に用いることができる。
【0095】
加熱部83は熱媒体を短時間に加熱可能であれば良く、構造には限定されない。例えば、セラミックヒーター等の抵抗加熱、誘電加熱、マイクロ波加熱等の加熱方法を用いることができる。特に、セラミックヒーター等の昇温速度の高いヒーターが好ましい。冷却部84の冷却方式は特に限定されない。例えば、蒸気圧縮冷凍機、吸収式冷凍機、吸着冷凍サイクル、ケミカルヒートポンプ等の装置を用いることができる。ポンプ85は熱交換用配管86内の熱媒体を循環させられれば良く、ポンプ85の形式は特に限定されない。
【0096】
加熱部83、冷却部84、ポンプ85、熱交換用配管86は入出力インターフェイス54及びデータバス55を介してCPU50に接続されている。第1液温検出装置42は第2チューブ81内に位置する着色液31の液温をCPU50へ出力する。着色液31の液温が設定温度72より低い温度のとき第1液温検出装置42は加熱部83及びポンプ85を駆動して着色液31を加熱させる。着色液31の液温が設定温度72より高い温度のとき第1液温検出装置42は冷却部84及びポンプ85を駆動して着色液31を冷却させる。これにより、第2チューブ81内に位置する着色液31は設定温度72に調整される。
【0097】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、加熱部83及び冷却部84を第2チューブ81の周囲から離れた場所に設置できる。従って、加熱部83及び冷却部84を配置する空間を確保し易い。これにより、加熱部83及び冷却部84には加熱または冷却する能力の高い装置を設置することができる。その結果、確実に、着色液31を設定温度72に調整することができる。
【0098】
(第3の実施形態)
次に、ラベルの一実施形態について図8のラベルの一例を示す模式平面図を用いて説明する。本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、図1(a)に示したラベルの配置が異なる点にある。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
【0099】
すなわち、本実施形態では、ラベル1は矩形のシート状の基材87上に図案3が描画されている。そして、図案3の外形の周囲には切取線4が設定され、切取線4に沿って基材87を切断することによりラベル1が基材87から分離する。これによりラベル1が完成する。本実施形態においては1つの基材87に6つの図案3が描画されている。各図案3の間は無地の背景部5となっており、描画された図案3の周囲は背景部5に囲まれている。尚、図中における図案3の図柄、形状、個数は一例であり特に限定されない。
【0100】
図中左右方向を主走査方向88とし上下方向を副走査方向89するとき、主走査方向88に並んで配置された一対の図案3をまとめて1つのパターン90とする。従って、基材87には3つのパターン90が配置されている。パターン90を図中上側から第1パターン91、第2パターン92、第3パターン93とする。第1パターン91と第2パターン92との間は背景部5であり、描画しない場所となっている。第2パターン92と第3パターン93との間も背景部5であり、描画しない場所となっている。従って、第1パターン91、第2パターン92、第3パターン93は背景部5によって区切られた領域を占めている。
【0101】
第1パターン91において、図中左側の図案3を第1図案3aとし図中右側の図案3を第2図案3bとする。液滴吐出装置8が第1パターン91を描画するとき、液滴吐出装置8は第1パターン91内の主走査方向88の両端の間で液滴吐出ヘッド24を往復移動させる。次に、液滴吐出装置8は副走査方向89に液滴吐出ヘッド24を改行させる。続いて、液滴吐出装置8は主走査方向88への往復移動と副走査方向89への改行とを繰り返して描画する。従って、液滴吐出装置8は第1図案3aの一部と第2図案3bの一部とを交互に描画するので、第1図案3aと第2図案3bとは略同時に描画が完成する。
【0102】
第1加熱冷却装置41内の流路の体積は1つのパターン90を描画するときに吐出する液滴量の体積となっている。これにより、ステップS2の液温調整工程では第1パターン91を描画するときに吐出する液滴量の体積の着色液31の温度が設定温度72に調整される。その後、液滴吐出装置8はステップS5の描画工程において第1パターン91の描画が行われるので、第1図案3a及び第2図案3bは品質良く描画される。
【0103】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、パターン90の主走査方向88に複数の図案3が配置されているときにも、パターン90を描画するときに吐出する液滴量の体積の着色液31の温度が設定温度72に調整される。従って、パターン90内の各図案3を品質良く描画することができる。
【0104】
尚、本実施形態は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更や改良を加えることも可能である。変形例を以下に述べる。
(変形例1)
前記第1の実施形態では、基材2は矩形のシート状としたが、基材2はロール状に巻かれた長尺のシートでもよい。液滴吐出装置8のY方向にシートを供給する供給部と描画されたシートを回収する回収部とを配置しても良い。これにより、基材2の供給と回収とを簡便に行うことができる。
【0105】
(変形例2)
前記第1の実施形態では、第1加熱冷却装置41が調整する着色液31の容量は1つのパターン6を描画するときに吐出する着色液31の容量となっていた。1つのパターン6を描画する工程と並行して第1加熱冷却装置41を通過する着色液31を第1加熱冷却装置41が設定温度72に調整できるときには、温度調整する着色液31の容量は1つのパターンを描画するときの容量に限らない。このときには第1加熱冷却装置41が調整する着色液31の容量は1つのパターン6を描画するときに吐出する液滴量の体積より少ない量でも良い。描画と並行して第1加熱冷却装置41が加熱または冷却する着色液31を用いて1つのパターン6を描画することができる。
【0106】
(変形例3)
前記第1の実施形態では、ステップS4の待機工程からステップS5の描画工程へ移行するとき液滴吐出ヘッド24内の着色液31を模擬吐出部11aに吐出して廃棄した。液滴吐出ヘッド24内の着色液31の温度が設定温度72となるときには必ずしも液滴吐出ヘッド24内の着色液31を模擬吐出部11aに吐出しなくても良い。着色液31の温度が設定温度72であるので、品質良く液滴46を吐出して描画することができる。
【0107】
(変形例4)
前記第1の実施形態では、着色液31を吐出して図案3を描画する例を示した。他にも金属粒子を含む機能液を吐出して金属配線を形成するときにも液滴吐出装置8及び上記の方法を用いることができる。
【符号の説明】
【0108】
6,90…パターン、8,79…液滴吐出装置、21…収納容器としての収容タンク、24…液滴吐出ヘッド、31…機能液としての着色液、32…第2液温調整部としての第2加熱冷却装置、33…第2液温調整部としての第2液温検出装置、41…第1液温調整部としての第1加熱冷却装置、42…第1液温調整部としての第1液温検出装置、46…液滴、67…第1液温調整部としての第1液温制御部、68…第2液温調整部としての第2液温制御部、82…第1液温調整部としての第3加熱冷却装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能液を液滴にして吐出し所定のパターンを描画する液滴吐出装置であって、
前記機能液を加熱または冷却して前記機能液を所定の温度に調整する第1液温調整部を備え、
前記第1液温調整部は1つの前記パターンを描画するときに吐出する量の前記機能液を前記所定の温度に調整することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液滴吐出装置であって、
前記機能液を加熱または冷却して前記機能液を所定の温度に調整する第2液温調整部をさらに備え、
前記第2液温調整部によって加熱または冷却された前記機能液は前記第1液温調整部に供給されることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の液滴吐出装置であって、
前記第1液温調整部はペルチェ素子を有し、前記ペルチェ素子が前記機能液を加熱または冷却することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の液滴吐出装置であって、
複数のパターンを描画する量の前記機能液を収納する収納容器を備え、前記第2液温調整部は前記収納容器内の前記機能液を所定の温度に調整することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項5】
パターンを描画する液滴吐出装置であって、
機能液を液滴にして吐出する液滴吐出ヘッドと、
前記機能液を加熱または冷却して前記機能液を所定の温度に調整し、前記液滴吐出ヘッドへ供給する第1液温調整部と、
前記機能液を加熱または冷却して前記機能液を所定の温度に調整し、前記第1液温調整部へ供給する第2液温調整部と、を備え、
前記第1液温調整部が調整する前記機能液の量は前記第2液温調整部が調整する前記機能液の量より少ないことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項6】
第1液温調整部が1つのパターンを描画するときに吐出する量の機能液を加熱または冷却して所定の温度に調整する液温調整工程と、
前記所定の温度の前記機能液を液滴にして吐出し描画する描画工程と、
を有することを特徴とする描画方法。
【請求項7】
請求項6に記載の描画方法であって、
第2液温調整部が前記機能液を加熱または冷却して前記所定の温度に近づけて、前記機能液を前記第1液温調整部へ供給する機能液供給工程をさらに有することを特徴とする描画方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−235249(P2011−235249A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109933(P2010−109933)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】