説明

液滴吐出装置及び液滴吐出ヘッドへの液状体充填方法

【課題】 供給チューブを利用して外部に設けられた容器から液滴吐出ヘッドに液状体を充填する際に、気泡が混入しない液状体を液滴吐出ヘッドに充填できるようにした、液滴突出装置及び液滴吐出ヘッドへの液状体充填方法を提供する。
【解決手段】 液状体が充填された容器45と、液滴吐出ヘッド34と、容器45と液滴吐出ヘッド34との間を接続する配管46と、を備えた液滴吐出装置30において、配管46に、液状体の有無を判定する複数のセンサー20が間隔をおいて設けられている。液滴吐出ヘッド34を介して配管46内を減圧し、液状体を配管51内に吸引する減圧手段51が設けられ、減圧手段51に、減圧度を調整する調整手段51aが設けられ、センサー20の判定を基に調節手段51aを制御する制御部21が備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出装置及び液滴吐出ヘッドへの液状体充填方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット式記録装置(液滴吐出装置)は、圧力発生室のインク(液状体)を加圧してインク滴を発生させる関係上、インクに気泡が含まれていると、インクの加圧力が低下してインク滴の吐出性能も低下する。したがって、記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)には溶存空気を含まないインクを供給する必要がある。
このため、例えば、工場で十分に脱気されたインクをインクカートリッジや、インク袋に収容し、遮気容器に梱包したものが製品として提供されている。
【0003】
ところで、このようなインクジェット式記録装置では、印刷途中でインク切れを起こした場合、インクカードリッジやインク袋の交換が必要となる。しかし、インク袋等を交換した場合、空気がインク供給流路に侵入するため、記録ヘッドへのインクの再充填操作が必要となり、作業能率が低下してしまう。
そこで、インクが充填されたインク容器を外部に設け、供給チューブ(配管)を介して前記容器を記録ヘッドに接続し、この供給チューブ中に設けられた脱気手段によりインクを脱気してから記録ヘッドにインクを供給することで、インクカートリッジ交換後の空気の混入を防止し、記録ヘッドへのインク充填操作を不要としたインクジェット式記録装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−048491号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、液状体が充填された容器(インク容器)を外部に設けて、この容器から供給チューブを用いて液状体を吸引し、液滴吐出ヘッドに充填する場合、液状体を吸引する速度が速いと、供給チューブ内に残っている空気と液状体との界面部分に乱れが生じ、供給チューブ内の空気が液状体に気泡となって混入してしまう。したがって、液状体中に気泡を混入させないためには、極力ゆっくりと液状体を吸引する事が重要となる。また、このように外部に設けた容器から液状体を吸引する構成では、供給チューブは当然長くなってしまう。
しかし、供給チューブが長いと、液状体を吸引した際、液状体が液滴吐出ヘッドに近づくにつれて供給チューブ内の流動抵抗が増大する。よって、供給チューブの途中で液状体の流動が停止する恐れがある。そのため、液状体の吸引力については、液滴吐出ヘッドに確実に液状体が充填出来る強さまで上げる必要がある。
しかしながら、液状体の流動方向の上流となる容器側での液状体の流動抵抗は、下流側となる液状体吐出ヘッド側に比べると小さく、したがって容器側では液状体の流速が早く、よって、前述したように供給チューブ内の空気が、液状体内に気泡となって混入し、この気泡が液滴吐出ヘッド内に入り込むことにより、吐出不良が引き起こされてしまう。
【0005】
本発明は前記課題に鑑みなされたもので、供給チューブを利用して外部に設けられた容器から液滴吐出ヘッドに液状体を充填する際に、気泡が混入しない液状体を液滴吐出ヘッドに充填できるようにした、液滴突出装置及び液滴吐出ヘッドへの液状体充填方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液滴吐出装置は上記課題を解決するために、液状体が充填された容器と、該液状体を吐出する液滴吐出ヘッドと、前記容器と前記液滴吐出ヘッドとの間を接続する配管と、を備えた液滴吐出装置において、前記配管に、前記液状体の有無を判定する複数のセンサーが間隔をおいて設けられ、前記液滴吐出ヘッド側に、該液滴吐出ヘッドを介して前記配管内を減圧し、前記液状体を配管内に吸引する減圧手段が設けられ、前記減圧手段に、減圧度を調整する調整手段が設けられ、前記センサーの判定を基に前記調節手段を制御する制御部が備えられたことを特徴としている。
【0007】
この液滴吐出装置によれば、まず、前記減圧手段により前記液滴吐出ヘッドを介して前記配管内を減圧し、前記容器内の液状体を配管内に吸引することにより、前記液状体を、容器内(上流側)から減圧手段側(下流側)に向けて、十分にゆっくりと流動させる。
その際、配管中の上流側に位置するセンサー(第1のセンサー)で、例えば、配管内の液状体の有無を判定する。そして、液状体が「有」と判定された場合には、判定を行ったセンサーの下流側に位置するセンサー(第2のセンサー)で再度液状体の有無を判定を行う。しかし、「無」と判定された場合には前記減圧手段の減圧度を調整し前記配管内の減圧度を上げて、再度「無」と判定したのセンサーで液状体の有無の判定を行う。このように、センサーによる液状体の有無の判定を順次行い、かつ、「無」と判定された場合に前記減圧手段の減圧度を上げる処理を行う。そして、配管中の最も下流側に位置するセンサーで液状体が「有」と判定されるまで前記の処理を順次繰り返す。すると、液状体は必要最低限の減圧度で吸引されることとなり、十分に遅い速度で流動するので、配管内の空気が気泡となって液状体に混入することが防止される。
よって、気泡の混入しない液状体が液滴吐出ヘッドに充填されるので、良好な液滴吐出性能を得ることができる。
【0008】
また、前記配管は、透光性を備えたものであることが好ましい。
このようにすれば、例えば、光センサーを用いることができ、配管外部に設けることができる。
【0009】
また、前記液滴吐出ヘッドの最も近くに設けられている前記センサーは、気泡の有無を検出する気泡検出センサーであるのが好ましく、例えば、CCDカメラを備えたものであるのが好ましい。
このようにすれば、実際に液状体を吐出する際、液状体に気泡が混入している場合にこれが液滴吐出ヘッドに入り込む前に検出し、気泡が液滴吐出ヘッドに入り込むのを防止することが可能となる。したがって、安定した液滴吐出が可能となり、液滴吐出の信頼性が向上する。
【0010】
本発明の液滴吐出ヘッドへの液状体充填方法は、前記液滴吐出装置において、前記液滴吐出ヘッドに前記容器の液状体を供給してここに充填する液状体充填方法であって、減圧手段により液滴吐出ヘッドを介して液状体が充填された容器と、該液状体を吐出する前記液滴吐出ヘッドとの間を接続する配管内を減圧し、前記容器内の液状体を前記配管内に吸引する第1の工程と、前記配管に設置してある複数のセンサーの上流側に位置する第1のセンサーで前記配管内の液状体の状態を判定する第2の工程と、判定結果に基づいて、前記第1のセンサーの下流側に位置する第2のセンサーで再度液状体の状態を判定する第3の工程もしくは前記減圧手段の減圧度を調整し前記配管内の減圧度を上げて再度前記第1のセンサーで液状体の状態を判定する第4の工程、とを備え、以下、前記第2の工程と、第3の工程もしくは第4の工程とを、最も配管の下流側に位置するセンサーで液状体の状態を判定し、前記第3の工程を選択する判定結果になるまで順次繰り返し、前記液状体を液滴吐出ヘッドに充填することを特徴としている。
【0011】
この液滴吐出ヘッドへの液状体充填方法によれば、前記の液滴吐出装置で説明したように、前記減圧手段により前記配管内を減圧し、前記容器内の液状体を配管内に吸引して、前記第1のセンサーで配管内の液状体の位置を判定し、液状体が第2のセンサー位置まで流動しない場合には、前記配管内の減圧度を上げて、再び第2のセンサーによる液状体の位置を判定し、その判定に応じて、減圧度を上げることを、最も減圧手段側に位置するセンサーの位置まで液状体が到達したと判定されるまで順次繰り返すので、液状体を必要最低限の減圧度で吸引することにより、配管内の空気が気泡となって液状体に混入することを防止して、気泡が混入していない液状体を液滴吐出ヘッドに充填することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について詳しく説明する。
まず、本発明の液滴吐出装置30について説明する。
図1は、本発明に係る液滴吐出装置30の一例を示す図である。
図1に示すように、液滴吐出装置30は、ベース31と、基板移動手段32と、ヘッド移動手段33と、液滴吐出ヘッド34と、液状体供給手段35と、制御装置40とを備えて構成されたものである。前記ベース31は、その上に前記基板移動手段32、ヘッド移動手段33を設置したものである。
また、液滴吐出装置30は、後述する液状体を前記液滴吐出ヘッド34に初期充填する際に使用する吸引用キャップ47とこれに液状体吸引チューブ48を介して接続される吸引ポンプ51とを備えている。
【0013】
基板移動手段32は、ベース31上に設けられたもので、Y軸方向に沿って配置されたガイドレール36を有したものである。この基板移動手段32は、例えばリニアモータ(図示せず)により、スライダ37をガイドレール36に沿って移動させるよう構成されたものである。
スライダ37上にはステージ39が固定されており、このステージ39は、基板Sを位置決めし保持するためのものである。すなわち、このステージ39は、公知の吸着保持手段(図示せず)を有し、この吸着保持手段を作動させることにより、基板Sをステージ39の上に吸着保持するようになっている。基板Sは、例えばステージ39の位置決めピン(図示せず)により、ステージ39上の所定位置に正確に位置決めされ、保持されるようになっている。
【0014】
ヘッド移動手段33は、ベース31の後部側に立てられた一対の架台33a、33aと、これら架台33a、33a上に設けられた走行路33bとを備えてなるもので、この走行路33bをX軸方向、すなわち前記の基板移動手段32のY軸方向と直交する方向に沿って配置したものである。走行路33bは、架台33a、33a間に渡された保持板33cと、この保持板33c上に設けられた一対のガイドレール33d、33dとを有して形成されたもので、ガイドレール33d、33dの長さ方向に液滴吐出ヘッド34を搭載するキャリッジ42を移動可能に保持したものである。キャリッジ42は、リニアモータ(図示せず)等の作動によってガイドレール33d、33d上を走行し、これにより液滴吐出ヘッド34をX軸方向に移動させるように構成されたものである。
【0015】
ここで、このキャリッジ42は、ガイドレール33d、33dの長さ方向、すなわちX軸方向に例えば1μm単位で移動が可能になっており、このような移動はコンピュータ等からなる制御装置40によって制御されるようになっている。
前記制御装置40は、液滴吐出ヘッド34の位置情報、すなわち液滴吐出ヘッド34のガイドレール33d、33d上での位置(X座標)とそのときの各ノズルの位置(X座標)とを検知して記憶するものである。
【0016】
液滴吐出ヘッド34は、前記キャリッジ42に取付部43を介して回動可能に取り付けられたものである。取付部43にはモータ44が設けられており、液滴吐出ヘッド34はその支持軸(図示せず)がモータ44に連結している。このような構成のもとに、液滴吐出ヘッド34はその周方向に回動可能となっている。また、モータ44も前記制御装置40に接続されており、これによって液滴吐出ヘッド34はその周方向への回動が、制御装置40に制御されるようになっている。
【0017】
液滴吐出ヘッド34は、図2(a)に示すように例えばステンレス製のノズルプレート12と振動板13とを備え、両者を仕切部材(リザーバプレート)14を介して接合したものである。ノズルプレート12と振動板13との間には、仕切部材14によって複数の空間15と液溜まり16とが形成されている。各空間15と液溜まり16の内部は液状体で満たされており、各空間15と液溜まり16とは供給口17を介して連通したものとなっている。また、ノズルプレート12には、空間15から液状体を噴射するためのノズル孔18が縦横に整列させられた状態で複数形成されている。一方、振動板13には、液溜まり16に液状体を供給するための孔19が形成されており、この孔19には、後述する液状体供給手段35に備えられた液状体供給チューブ46を介して液状体供給容器45が接続されている。
【0018】
また、振動板13の空間15に対向する面と反対側の面上には、図2(b)に示すように圧電素子(ピエゾ素子)20が接合されている。この圧電素子20は、一対の電極21の間に位置し、通電するとこれが外側に突出するようにして撓曲するよう構成されたものである。そして、このような構成のもとに圧電素子20が接合されている振動板13は、圧電素子20と一体になって同時に外側へ撓曲するようになっており、これによって空間15の容積が増大するようになっている。したがって、空間15内に増大した容積分に相当する液状材料が、液溜まり16から供給口17を介して流入する。また、このような状態から圧電素子20への通電を解除すると、圧電素子20と振動板13はともに元の形状に戻る。したがって、空間15も元の容積に戻ることから、空間15内部の液状材料の圧力が上昇し、ノズル孔18から前記基板Sに向けて液状体が液滴22となって吐出される。
液滴吐出ヘッド34は、前述したように、キャリッジ42に取付部43を介し回動し、前記キャリッジ42が、ガイドレール33d、33dに沿って、X方向に1μm単位で移動可能となっている。また、基板Sは、基板移動手段32によってY方向する可能となっている。このような構成から、液滴吐出ヘッド34は基板S上に液状体を吐出することが可能になっている。
【0019】
液状体供給手段35は、液状体が充填された液状体供給容器45(容器)と、この液状体供給容器45から液滴吐出ヘッド34に液状体を送るための液状体供給チューブ46(配管)とを備えたものである。また、前記液状体供給チューブ46は、透光性あるいは半透明性を有した材料からなるもので、例えば、シリコーン、フッ素樹脂等から形成されたものである。
また、前記液滴吐出ヘッド34における液状体の吐出面と液状体供給容器45に充填されている液状体とは、水頭圧の影響を無くすため、液状態供給容器45の水頭が低くなるように取りつけてある。
【0020】
本発明の液滴吐出装置30には、液滴吐出ヘッド34に液状体を初期充填する機構が備えられている。
図3は、液滴吐出ヘッド34に液状体を初期充填する機構を示したものである。
図3に示すように、液滴吐出ヘッド34に液状体を初期充填する際には、液滴吐出ヘッド34に吸引用キャップ47が被着されるようになっている。
この吸引用キャップ47は、例えば液滴吐出装置30内に設けられたガイド(図示せず)などに沿って上下方向に移動することで、液滴吐出ヘッド34の吐出面に当接し、これに被着されるよう構成されたものである。また、液状体を吐出する際には、吸引用キャップ47は前記液滴吐出ヘッド34に干渉しない位置に保持されるようになっている。
前記吸引用キャップ47は、前記液状体供給チューブ46と同様にシリコーン、フッ素樹脂等からなり、透光性あるいは半透光性を備えた液状体吸引チューブ48を介して、液状体を吸引する吸引ポンプ51(減圧手段)に接続されている。
吸引ポンプ51には、前記液状体を吸引する減圧度を調整するための、圧力調整弁等からなるを備えた調整機構51a(調整手段)が設けられている。
【0021】
前記液状体供給チューブ46の外側には、前記液状体供給チューブ46内の液状体の有無を判定し、前記液状体が供給チューブ46内を流動しているかどうかについて判定する5つのセンサー20が間隔をおいて取付けられている。
液状体供給容器45の側に設けられた順に取付けられた4つのセンサー20は、光センサー20a、20b、20c、20dからなっており、液滴吐出ヘッド34の最も近くに設けられたセンサー20は、CCDカメラ20eからなっている。光センサー20a、20b、20c、20dは、レーザー光等を発光する発光部と、この発光を受光する受光部とからなる透過型のもので、これら発光部と受光部とが、液状体供給チューブ46を挟んで相対向して設けられたものである。このような構成のもとに光センサー20a、20b、20c、20dは、これが設けられた位置において、液状体供給チューブ46内に液状体があるか否かを判定できるようになっている。すなわち、液状体が無い場合には、発光部からの光が透光性または半透光性の液状体供給チューブ46を透過して受光部で良好に受光される。一方、液状体がある場合には、発光部からの光が液状体によって反射し、または吸収され、または屈折することなどにより、受光部で良好に受光されなくなる。したがって、このような受光部での受光度の違いにより、光センサー20a、20b、20c、20dは、液状体の有無を判定できるようになっているのである。
【0022】
CCDカメラからなるセンサー20eは、これが設けられた位置での液状体供給チューブ46内を撮影し、得られた画像データを制御部21に伝送するものである。制御部21では、伝送された画像データから各画像毎の濃淡などを検出し、検出結果を積算することなどにより、液状体の有無の判定や、液状体に気泡が混入しているか否かの判定を行うことが出来るようになっている。したがって、これらのデータを予め制御部21内に記憶したデータと比較することにより、液状体の有無を判定することができる。また、液状体供給チューブ46内に液状体が有り、この液状体中に気泡が混入している場合には、得られるくらい画像データの中に、気泡に対応して部分的に明るい画像が得られる。したがって、例えば制御部21によってこの明るい部分を積算し、得られた値が予め規定した値を超えた場合に、液状体中に気泡が混入していると判断することができる。
【0023】
前記吸引用キャップ47と吸引ポンプ51との間に取り付けられている液状体吸引チューブ48(配管)の外側には、光センサー20fが6番目のセンサー20として取付けられていて、同様に液状体の有無を判定可能となっている。
なお、前記光センサー20a、20b、20c、20d、20fの代わりに、レーザー光の発光部と受光部とを同じ面上に備えた反射型のものを用いることで、例えば液状体と液状体供給チューブ46との界面部分で反射した光を受光部で受光することによって、液状体供給チューブ46内の液状体の有無を判定するようにしてもよい。
【0024】
前記6つのセンサー20(20a、20b、20c、20d、20e、20f)は、各センサー20の位置における液状体の有無の判定を基に、液状体が液状体供給チューブ50内を流動しているかどうかを判定する前記制御部21に配線22により、それぞれ電気的に接続されている。
また、前記制御部21は、前記調整機構51aに対しても、配線22により電気的に接続されている。よって、吸引ポンプ51は、前記制御部21による指示により、前記調整機構51aが調整されて、例えば、減圧度を上げることで液状体を吸引する力が増加するようになっている。
【0025】
次に、図4に示すフローチャートに基づき、液状体を液滴吐出ヘッド34に初期充填する方法について詳しく説明する。
このとき、6つのセンサー20は液状体供給容器45に近い方から順にn=1〜6とする。
液滴吐出ヘッド34の液状体吐出面側に液滴吐出装置30内に保持されている吸引用キャップ47を隙間無く当接するようにして被着させる。
このとき、液状体が流動する区間は閉じられた状態となっている。よって、液状体供給チューブ46、及び液状体吸引チューブ48内を流動する液状体には、これらチューブが上下に引き回されている場合でも、チューブの内面から受ける流動抵抗のみが働くものとなっている。
このようにして、液状体を液状体供給チューブ46内に吸引可能な状態とする(ステップ1;以下、ST1と記す)。
【0026】
次に、前記吸引ポンプ51により、液滴吐出ヘッド34を介して、液状体供給チューブ46内を減圧して、液状体供給容器45に充填されている液状体を液状体供給チューブ46内に吸引する。
このとき、吸引開始時の減圧度は、調整機構51aを調節することで、液状体が液状体供給容器45から液状体供給チューブ46内に流動できる圧力範囲の中で最低の強さの圧力値に設定する。
よって、液状体は前記液状体供給容器45側(上流側)から吸引ポンプ51側(下流側)に向けて、十分にゆっくりと流動し始める(ST2)。
また、吸引開始時の吸引力は、液状体と液状体供給チューブ46内の空気との界面に乱れが生じないように、液状体がわずかに動く程度の小さな力となっている。
【0027】
次に、液状体の吸引を開始時から一定時間Tを計測する(ST3)。
このとき、液状体は一定時間Tの間に液状体供給チューブ46内を光センサー20aの位置に向かって流動する。
次に、前記一定時間Tが経過した後、液状体供給容器45に最も近い光センサー20a(第1のセンサー)(n=1)の位置を前記液状体供給チューブ46内での液状体が通過したかどうかの判定を行う(ST4)。
【0028】
このとき、光センサー20aの位置において、液状体供給チューブ46内に液状体が無い場合には、液状体が前記光センサー20aの位置を通過していないと判定し、前記制御部21は、前記調整機構51aを調整して、液状体供給チューブ46内の減圧度を液状体が十分にゆっくり流動する程度まで上昇させ、経過時間Tをリセットする(ST5)。そして、ST3に戻り、一定時間Tが経過した後、液状体供給チューブ46内に液状体が無いと判定した光センサー20aの位置において、再び液状体が通過しているかどうか判定する。
【0029】
また、光センサー20aの位置において、液状体供給チューブ46内に液状体が有る場合には、液状体が前記センサー20a(n=1)の位置を通過したと判定し、n<6として、後述するST7へと進む(ST6)。
ST7では、液状体供給チューブ46内の減圧度を一定に保ったまま、次の液状体の位置判定のセンサー20を前記光センサー20aの1つ下流側(吸引ポンプ51側)に位置する光センサー20b(第2のセンサー)(n=2)として、経過時間Tをリセットした後、ST3に戻り液状体が前記光センサー20bの位置を通過しているかどうかを判定する。
【0030】
以下、ST6において、液状体が光センサー20f(n=6)を通過したと判定されるまで、前述したようなセンサー20の位置で液状体が通過しているかどうかの判定を行い、液状体が通過してないと判定された場合は、調整機構51aを調整して、液状体供給チューブ46内の減圧度を液状体が十分にゆっくり流動する程度まで上昇させる操作を繰り返し行う。
液状体が光センサー20f(n=6)の位置を通過すると、液滴吐出ヘッド34に対して液状体の初期充填が終了したものと判断し、制御部21が吸引ポンプ51の調整機構51aに対し、吸引停止の指示を出して、液状体の吸引を停止する(ST8)。
これにより、液滴吐出ヘッド34への液状体の初期充填が終了する。
【0031】
次に本発明の液滴吐出装置30を用いて、液状体を吐出する場合について説明する。
前述したように、液状体の充填が終わったら、再び液滴吐出ヘッド34に取付けられている吸引用キャップ47を取り外して、液滴22を基板S上に吐出する。
液滴吐出ヘッド34から液状体を吐出された際に、液状体供給チューブ46を介して液状体供給容器45内から液状体が液滴吐出ヘッド34に充填される。
液状体を吐出した際に、液滴吐出ヘッド34へ充填される液状体に混入した気泡が、前記液滴吐出ヘッド34に入り込まないことが重要となっている。
そこで、液状体の吐出時においても、CCDカメラ20fを用いることで、例えば、気泡の混入時に警報を出すことによって、液滴22の吐出を停止して、液滴吐出ヘッド34に気泡が混入するのを防止するようになっている。
【0032】
本発明の液滴吐出装置によれば、吸引ポンプ51により液滴吐出ヘッド34を介して前記液状体供給チューブ46内を減圧し、前記液状体供給容器45に充填されている液状体を配管内に初期的に十分にゆっくりと吸引する。
そして、前記センサー20で液状体供給チューブ46内の液状体の位置を判定し、液状体が一定時間T経過後にセンサー20位置まで流動しない場合には、前記液状体供給チューブ46内の減圧度を上昇させ、再び、一定時間T経過後に前記センサー20による液状体の位置を判定し、その判定に応じて、同様に減圧度を上げること繰り返して、液滴吐出ヘッド34に液状体が充填される。
よって、前記液状体は各センサー20の位置まで、液状体供給チューブ46内に生じる流動抵抗に逆らい流動できる最低の減圧度で吸引されているので、十分に遅い速度で液状体供給チューブ46内を流動することで、この液状体供給チューブ46内に残っている空気と液状体との界面における乱れを無くし、空気が気泡となって液状体に混入することを防止できる。
また、気泡の混入しない液状体を液滴吐出ヘッドに充填するので、良好な液滴吐出性能を得ることができ、液滴吐出の信頼性が向上できる。
【0033】
また、液状体供給チューブ46は、透光性あるいは半透光性を備えているので、例えば、光センサー20a,20b,20c,20d,20fを用いた場合には、液状体供給チューブ46の外部に取り付け可能となり、外側から液状体の有無を確認することができる。
また、前記光センサー20a,20b,20c,20d,20fは、液状体供給チューブ46の外側に設けられているので、液状体供給チューブ46を途中で切断して、その間に挿入しなくてもよい。
よって、これらセンサー20と液状体供給チューブ46との接合部から空気が混入して、液状体に気泡が混入してしまうことが防止でき、安定した液滴吐出性能を得ることができる。
【0034】
また、前記液滴吐出ヘッド34の最も近い液状体供給チューブ46上に取り付けられたセンサー20eは、気泡の有無も検出できる気泡検出センサーとなっていて、CCDカメラを用いた。
よって、本発明の液滴吐出装置30で液状体を吐出する際、液状体供給容器45から液滴吐出ヘッド34に充填される液状体に気泡が混入している場合に、これが液滴吐出ヘッドに入り込む前に検出し、例えば警報等を鳴らして、液状体の吐出を停止することで、気泡が液滴吐出ヘッド34に入り込むのを防止できる。
したがって、液滴吐出ヘッド34は、安定した液滴吐出が可能となり、これを備えた液滴吐出装置30の信頼性が向上できる。
【0035】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更し得ることは勿論である。例えば、液状体供給チューブ46上に取り付けるセンサー20の数を6つとしたが、センサー20の数を増やすことで、液状体のより細かい位置において吸引力の調節がされ、早い液状体の初期充填ができ、より確実に液状体に気泡が混入することを防止して、液滴吐出性能を向上するようにしてもよい。
また、光センサー20a、20b、20c、20d、20fの代わりにCCDカメラ20fを用いてもよい。例えば、特に液状体供給チューブ46の上流側(液状体供給容器45側)に近い光センサー20a、20bに代えてCCDカメラ20fを用いることで、液状体吸引時により早期の段階で液状体に混入する気泡の検出を行うことができ、確実に液滴吐出ヘッド34に気泡の混入を防止するようにしてもよい。
【0036】
本発明の液滴吐出ヘッド34への液状体充填方法によれば、本発明の滴吐出装置30において、液滴吐出ヘッド34へ液状体充填する場合と実質的に同一であるため、吸引ポンプ51により液滴吐出ヘッド34を介して前記液状体供給チューブ46内を減圧し、液状
体を配管内に初期的に十分にゆっくりと吸引し、前記液状体供給チューブ46内の減圧度は液状体供給チューブ46内に生じる流動抵抗に液状体が、逆らって流動できる最低の減圧度となっていて、液状体を吸引するので、液状体供給チューブ46内の空気が気泡となり液状体に混入することを防止し、気泡が混入していない液状体を液滴吐出ヘッド34に充填することができる。
よって、良好な液滴吐出性能を得ることができ、液滴吐出の信頼性が向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の液滴吐出装置を示す斜視図。
【図2】液滴吐出ヘッドにおける、(a)は要部斜視図、(b)は要部側断面図。
【図3】液状体供給手段を模式的に示した図。
【図4】液滴吐出ヘッドへの液状体充填方法を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0038】
20…センサー、20a…光センサー(センサー)、20b…光センサー(センサー)、20c…光センサー(センサー)、20d…光センサー(センサー)、20e…CCDカメラ(センサー)、20f…光センサー(センサー)、21…制御部、30…液滴吐出装置、34…液滴吐出ヘッド、45…液状体供給容器(容器)、46…液状体供給チューブ(配管)、48、液状体吸引チューブ(配管)、51…吸引ポンプ(減圧手段)、51a…調整機構(調整手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状体が充填された容器と、該液状体を吐出する液滴吐出ヘッドと、前記容器と前記液滴吐出ヘッドとの間を接続する配管と、を備えた液滴吐出装置において、
前記配管に、前記液状体の有無を判定する複数のセンサーが間隔をおいて設けられ、
前記液滴吐出ヘッド側に、該液滴吐出ヘッドを介して前記配管内を減圧し、前記液状体を配管内に吸引する減圧手段が設けられ、
前記減圧手段に、減圧度を調整する調整手段が設けられ、
前記センサーの判定を基に前記調節手段を制御する制御部が備えられたことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項2】
前記配管は、透光性を備えたものであることを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項3】
前記液滴吐出ヘッドの最も近くに設けられている前記センサーは、気泡の有無を検出する気泡検出センサーであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液滴吐出装置。
【請求項4】
前記気泡検出センサーは、CCDカメラを備えたものであることを特徴とする請求項3に記載の液滴吐出装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の液滴吐出装置において、前記液滴吐出ヘッドに前記容器の液状体を供給してここに充填する液状体充填方法であって、
減圧手段により液滴吐出ヘッドを介して液状体が充填された容器と、該液状体を吐出する前記液滴吐出ヘッドとの間を接続する配管内を減圧し、前記容器内の液状体を前記配管内に吸引する第1の工程と、
前記配管に設置してある複数のセンサーの上流側に位置する第1のセンサーで前記配管内の液状体の状態を判定する第2の工程と、
判定結果に基づいて、前記第1のセンサーの下流側に位置する第2のセンサーで再度液状体の状態を判定する第3の工程もしくは前記減圧手段の減圧度を調整し前記配管内の減圧度を上げて再度前記第1のセンサーで液状体の状態を判定する第4の工程、とを備え、
以下、前記第2の工程と、第3の工程もしくは第4の工程とを、最も配管の下流側に位置するセンサーで液状体の状態を判定し、前記第3の工程を選択する判定結果になるまで順次繰り返し、前記液状体を液滴吐出ヘッドに充填することを特徴とする液滴吐出ヘッドへの液状体充填方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−15631(P2006−15631A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−196557(P2004−196557)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】