説明

液漏れ検知構造

【課題】液体を取扱う装置から液漏れが生じた場合に、その液漏れを検知するとともに、漏れた液体を吸液処理することが可能な液漏れ検知構造を提供する。
【解決手段】液漏れ検知構造は、下壁6bを有する筐体6と、筐体6に収容される液体が循環される循環装置11と、筐体6の下壁6bと循環装置11との間に介在される液漏れセンサ13と、液漏れセンサ13と循環装置11との間に介在されるとともに、循環装置11からの液体の一部を液漏れセンサ13に向かって通過させる吸液部材12と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を取扱う装置からの液漏れを検知する構造に係り、特に漏れた液体を吸液処理する液漏れ検知構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えばポータブルコンピュータのような電子機器の電源として、高出力で充電を要しない小型の燃料電池装置が注目されている。この種の燃料電池装置としては、例えばメタノール水溶液を燃料とするダイレクトメタノール型の燃料電池装置(以下DMFC:Direct Methanol Fuel Cell)が提供されている。
【0003】
さらに近年、例えばポータブルコンピュータは、CPUのような電子部品の放熱性能を高めるために、不凍液または水のような液体冷媒を用いた液冷タイプの冷却装置を装備している。
【0004】
このように、近年の電子機器は、筐体の内部に液体を取扱う装置を備えることが多くなりつつある。筐体の内部に液体を取扱う装置を収容する機会が多くなれば、どうしても筐体内で液漏れが生じるおそれが大きくなってしまう。
【0005】
燃料電池装置の液漏れを検知する構造として、例えば燃料電池スタックからの冷却水漏れを検出することが可能な燃料電池水漏れ検出装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の検出装置は、傾斜した底面を有する筐体と、この底面の下端部に設けられた水分検出器とを有する。
【0006】
一方、吸水部材を有する燃料電池システムが提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に記載の吸水部材は、燃料電池システムのカソード排ガス排出口と、酸化剤の供給口とに亘って設けられている。この吸水部材は、カソード排ガス排出口で回収した凝縮水を用いて酸化剤供給口を通過する酸化剤を加湿することで、アノードとカソードとの間に位置する電解質膜を湿潤に保つ。
【特許文献1】特開2002−164070号公報
【特許文献2】特開2000−331699号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の検出装置の場合、燃料電池スタックから液漏れが生じたとき、その液漏れは水分検出器により検出される。しかし、その液漏れ量が多いと、水分検出器により検出された漏液は、そのまま筐体の外部に漏れ出すおそれがある。
【0008】
一方、特許文献2に記載の燃料電池システムで液漏れが生じた場合、この燃料電池システムは液漏れセンサを有しないので、液漏れを検知することができない。さらに、この燃料電池システムの吸水部材は、酸化剤を加湿するために設けられたものであり、液漏れが生じたときにその漏液を吸水処理するものではない。したがって、この燃料電池システムの筐体内部の漏液は、そのまま筐体の外部に漏れ出すおそれがある。
【0009】
本発明の目的は、液体を取扱う装置から液漏れが生じた場合に、その液漏れを検知するとともに、漏れた液体を吸液処理する液漏れ検知構造を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の一つの形態に係る液漏れ検知構造は、
下壁を有する筐体と、上記筐体に収容される液体が循環される循環装置と、上記筐体の下壁と上記循環装置との間に介在される液漏れセンサと、上記液漏れセンサと上記循環装置との間に介在されるとともに、上記循環装置からの液体の一部を上記液漏れセンサに向かって通過させる吸液部材と、を具備する。
【発明の効果】
【0011】
この構成によれば、液漏れセンサにより液漏れが検出されるとともに、吸液部材により漏れた液体が吸液処理される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態を、燃料電池装置に適用した図面に基づいて説明する。
図1ないし図9は、本発明の第1の実施形態に係る液漏れ検知構造としてのDMFC1を開示している。図1は、DMFC1の全体を開示する。図2に示すように、DMFC1は、例えばポータブルコンピュータ2の電源として使用可能な大きさを有する。
【0013】
図1に示すように、DMFC1は、装置本体3と載置部4とを備えている。装置本体3は、ポータブルコンピュータ2の幅方向に沿う細長い形状をしている。載置部4は、ポータブルコンピュータ2の後端部を載置し得るように、装置本体3の前端から水平に突出している。載置部4の上面には、電源コネクタ5が配置されている。電源コネクタ5は、ポータブルコンピュータ2を載置部4の上に載せた時に、ポータブルコンピュータ2に電気的に接続される。
【0014】
図3に示すように、装置本体3は、箱状の筐体6を備えている。筐体6は、トップカバー7と、ベース8とを有する。トップカバー7がベース8に上方から取付けられることで、筐体6は、上壁6a、下壁6b、および側壁6cを有する箱状に形成される。図3および図4に示すように、筐体6は、DMFCユニット11、吸液シート12、および液漏れセンサ基板13を収容している。なお図4では、トップカバー7は省略している。
【0015】
DMFCユニット11は、発電装置の一例であり、すなわち循環装置の一例でもある。図3および図5に示すように、DMFCユニット11は、ホルダ21、燃料カートリッジ22、混合部23、吸気部24、DMFCスタック25、冷却部26、ベースマニホールド27、および制御部28を備えている。
【0016】
図5に示すように、ホルダ21は、DMFCユニット11の一端に設けられている。ホルダ21には、燃料カートリッジ22が着脱自在に取付けられる。燃料カートリッジ22の内部には、例えば発電に供する液体燃料としての高濃度メタノールが充填されている。
【0017】
ホルダ21は、第1の送液ジョイント21aを有する。燃料カートリッジ22は、第1の送液ジョイント21aに対応する第2の送液ジョイント22aを有する。燃料カートリッジ22がホルダ21に取付けられると、第1および第2の送液ジョイント21a,22aが互いに接続され、燃料カートリッジ22が混合部23に接続される。
【0018】
混合部23は、燃料カートリッジ22から供給される高濃度のメタノールを希釈して例えば濃度数%〜数十%のメタノール水溶液を生成する。混合部23は、生成したメタノール水溶液をDMFCスタック25へと送る。
図5に示すように、吸気部24は、DMFCユニット11の外部に開口する吸気孔24aを有する。吸気部24は、吸気孔24aを通じて外部の空気をDMFCユニット11の内部に取込み、その取込んだ空気をDMFCスタック25へと送る。
【0019】
DMFCスタック25は、起電部の一例である。DMFCスタック25は、メタノール水溶液および空気中の酸素を化学反応させて、発電動作を行なう。この発電動作により、二酸化炭素および水蒸気が生成される。生成された二酸化炭素、水蒸気および未反応のメタノールは、冷却部26へと送られる。
【0020】
冷却部26は、DMFCユニット11の他端に設けられ、DMFCスタック25で生成された水蒸気、二酸化炭素、および未反応のメタノールを冷却する。冷却されて液体の状態に戻った水、およびメタノールは、再び混合部23に還流され、メタノール水溶液の生成に用いられる。生成された二酸化炭素は、DMFCユニット11の外部に排気される。
【0021】
図3および図5に示すように、ベースマニホールド27は、混合部23、吸気部24およびDMFCスタック25の下方の全部、ならびに冷却部26の下方の一部を覆うように取付けられる。図6に示すように、ベースマニホールド27は、ベース基板27aとベースカバー27bとを有する。ベース基板27aの下面には、DMFCユニット11の長手方向に沿って延びる複数の溝が掘られている。
【0022】
ベースカバー27bは、この溝を覆うようにしてベース基板27aに下方から取付けられる。これにより、図6に示すように、ベースマニホールド27は、内部に複数の流路27cを有する。さらにベースマニホールド27は、必要な箇所に応じて流路27cの天井からベース基板27aの上面に開口する複数の連通孔27dを有する。
【0023】
一方、混合部23、DMFCスタック25、および冷却部26は、連通孔27dに対応する位置にそれぞれ連通管29を有する。図6に代表して混合部23の連通管29を示すように、連通管29は、混合部23、DMFCスタック25、および冷却部26の下面から下方に突出している。混合部23、DMFCスタック25、および冷却部26は、連通管29が連通孔27dに挿入されると、ベースマニホールド27の流路27cを介してそれぞれ互いに連通する。
【0024】
すなわち、流路27cは、メタノールや水などをDMFCユニット11内で流通させる流路の一部を構成する。これにより、混合部23、DMFCスタック25、冷却部26、およびベースマニホールド27は、液体燃料を循環させる循環部31として機能する。
【0025】
図4に示すように、制御部28は、載置部4の中に収容されている。制御部28は、混合部23、吸気部24、DMFCスタック25、および冷却部26の状態を監視するとともに、これらのユニット23,24,25,26の運転を制御する。さらに制御部28は、DMFCスタック25で発電された電力を電源コネクタ5に供給する。
【0026】
なお、本発明が適用される発電装置は、DMFCユニット11に限らない。例えばエタノールのような他の液体燃料を用いる燃料電池や、例えば灯油やガソリンのような液体燃料を用いる燃料電池以外の発電装置であっても良く、その種類は問わない。
【0027】
吸液シート12は、吸液部材の一例である。図3および図4に示すように、吸液シート12は、DMFCユニット11と液漏れセンサ基板13との間に介在する。図3に示すように、吸液シート12は、DMFCユニット11のホルダ21先端部を除いてDMFCユニット11の下方全体を覆う外形を有する。すなわち、吸液シート12は、循環部31の下方全体を覆う。
【0028】
吸液シート12は、DMFCユニット11と向かい合う第1の面12aと、液漏れセンサ基板13と向かい合う第2の面12bとを有する。吸液シート12は、第1の面12aに付着した液体の一部を第2の面12bまで通過させる浸透性のある素材で形成される。吸液シート12は、例えば細かなメッシュ状に形成された不織布のようなものが好適である。不織布の一例としては、バイブラック(日本バイリーン製、登録商標)がある。
【0029】
ただし、吸液シート12は、浸透性を有する素材で形成されたものであれば、その種類は問わない。吸液シート12の素材は、DMFC1において吸液処理能力に比べて液漏れ検知能力を優先させたい場合は、浸透性の高いものを用い、一方、液漏れ検知能力に比べて吸液処理能力を優先させた場合は、浸透性の低いものを用いるなど、必要に合わせて適宜選択可能である。
【0030】
図3および図4に示すように、液漏れセンサ基板13は、筐体6の下壁6bと、DMFCユニット11との間に介在する。液漏れセンサ基板13は、吸液シート12と略同じ外形を有する。すなわち液漏れセンサ基板13は、DMFCユニット11のホルダ21先端部を除いてDMFCユニット11の下方全体を覆う。
【0031】
液漏れセンサ基板13は、吸液シート12と向かい合う第3の面13aと、筐体6の下壁6bと向かい合う第4の面13bとを有する。液漏れセンサ基板13は、第3の面13a上に第1の導電層33および第2の導電層34を有する。
【0032】
図7に示すように、第1および第2の導電層33,34は、それぞれ所定の幅を有するとともに、互いに所定間隔の距離を保ちながら、第3の面13a上の全体に亘って並んで設けられている。第1および第2の導電層33,34は、互いに絶縁されている。第1の導電層33には、第1の端子35が電気的に接続されている。第2の導電層34には、第2の端子36が電気的に接続されている。
【0033】
なお、第1および第2の導電層33,34の外形形状、すなわち導電層のパターンは、本実施形態の液漏れセンサ基板13に限らず、第3の面13aの全体を覆うパターンであれば、任意に設定できる。
【0034】
制御部28は、抵抗検知器41を有する。図8に模式的に示すように、液漏れセンサ基板13の第1および第2の端子35,36は、制御部28まで引き出され、抵抗検知器41に接続されている。抵抗検知器41は、第1および第2の端子35,36の間の抵抗値の変化を検出する。さらに制御部28は、非常停止スイッチ42、およびアラーム43に電気的に接続されている。非常停止スイッチ42は、DMFCユニット11の運転を停止するスイッチである。
なお、液漏れセンサの構成は、本実施形態のような2つの導電層を有するタイプの液漏れセンサ基板13に限られず、液体を検出できるセンサであれば、その種類は問わない。
【0035】
次に、DMFC1の作用について説明する。
DMFCユニット11から例えばメタノール水溶液や水などの液漏れが生じた場合、その漏液Lは、DMFCユニット11の下方に位置する吸液シート12にまず付着する。吸液シート12に付着した漏液Lの大部分は、吸液シート12により吸われる。付着した漏液Lの一部は、吸液シート12の中を液漏れセンサ基板13に向かって浸透して、液漏れセンサ基板13の第3の面13aに到達する。
【0036】
図8に模式的に示すように、液漏れセンサ基板13に到達した漏液Lが、第3の面13a上に形成された第1の導電層33と第2の導電層34との間にまたがって付着すると、第1の導電層33と第2の導電層34とは漏液Lを介して互いに導通する。第1の導電層33と第2の導電層34とが導通すると、第1の端子35と第2の端子36との間の抵抗値が低下する。この抵抗値の低下は、抵抗検知器41により検知される。
【0037】
抵抗検知器41が抵抗値の低下を検知すると、制御部28は液漏れが生じたと判断し、非常停止スイッチ42を制御してDMFCユニット11の運転を停止するとともに、アラーム43を鳴らすことで操作者に液漏れが生じた旨を報知する。
【0038】
吸液シート12に吸われた漏液Lは、吸液シート12の形状にしたがって吸液シート12の端部を向いて拡散する。吸液シート12を一度通過して液漏れセンサ基板13に到達した漏液Lは、再び第2の面12bから吸液シート12に吸液される。
【0039】
このような構成のDMFC1によれば、液漏れが生じたとしても、その液漏れが検知されるとともに、漏れた液体Lが吸液処理される。すなわち、DMFCユニット11から液漏れが生じた場合、その液漏れは液漏れセンサ基板13により検出される。これにより、DMFCユニット11の運転を停止して安全を図るとともに、アラーム43を鳴らすことで液漏れがあった旨を操作者に知らせることができる。
【0040】
DMFC1は、さらに吸液シート12を備える。これにより、微量でない量の液漏れが生じたとしても、吸液シート12が漏液Lを吸液処理、つまり漏液Lを吸込んで保持するので、漏液Lがさらに筐体6の外部に漏れ出すことを防ぐことができる。吸液シート12は、付着した漏液Lを液漏れセンサ基板13に向かって通過させるので、吸液シート12がDMFCユニット11と液漏れセンサ基板13との間に介在しても、液漏れセンサ基板13により液漏れを検出できる。
【0041】
液漏れ検知構造に吸液処理機能を持たせるためには、吸液シートを液漏れセンサ基板13の周囲に配置することや、液漏れセンサ基板13の下方に配置することも考えられる。しかし、吸液シートを液漏れセンサ基板13の周囲を取り囲むような形状にすると、吸液シートの面積を十分に確保できず、吸液シートの吸液処理能力が低くなってしまう。吸液シートを液漏れセンサ基板13の下方に配置する場合、この吸液シートは液漏れセンサ基板13とDMFCユニット11との間にある漏液Lを吸液処理することができない。したがって、操作者がDMFCユニット11の不具合に対処しようとする時、手が漏液Lに触れてしまうおそれがある。
【0042】
一方、本実施形態の吸液シート12のように液漏れセンサ基板13の上方に配置すれば、吸液シート12の外形をDMFCユニット11の形状に沿うように大きくすることができ、吸液シート12の面積を十分に確保できる。さらに、液漏れセンサ基板13とDMFCユニット11との間にある漏液Lは吸液シート12により吸液処理される。したがって、操作者は、漏液Lに触れることなく、安全にDMFCユニット11の不具合に対処できる。
【0043】
特に、液体燃料を取扱う発電装置に本発明を適用することは、非常に有効である。すなわち、発電装置で取扱われる液体燃料は一般に引火性を有することが多い。しかし、液漏れセンサ基板13と吸液シート12とを組み合わせて用いることで、液漏れの早期発見・早期対処が可能となり、大きな事故に発展することを未然に防ぐことができる。
【0044】
さらに、吸液シート12および液漏れセンサ基板13を循環部31の下方を全て覆うように配置することで、循環部31のどこから液漏れが生じようと、その液漏れを確実に検出するとともに、漏液Lの確実な処理が可能となる。特に、DMFC1においては、最も液漏れが生じるおそれが高いホルダ21と燃料カートリッジ22との間にある第1および第2の送液ジョイント21a,22a周辺、ならびにベースマニホールド27の周辺の下方を覆うように、吸液シート12および液漏れセンサ基板13を配置することは有効である。
【0045】
吸液シート12を、浸透性を有する材料で形成することで、吸液シート12に例えば貫通孔などを設けなくても、吸液シート12に付着する漏液Lを液漏れセンサ基板13を向いて通過させることができる。
【0046】
なお、吸液シート12は、液漏れセンサ基板13と略同じ大きさの外形を有する必要は無いが、液漏れセンサ基板13と同じかそれより大きな外形を有することが望ましい。
【0047】
本実施形態に係る吸液シート12は、第1の面12aから第2の面12bに向かう方向、および第2の面12bから第1の面12aに向かう方向の両方向に液体を浸透させる素材で形成されている。これに代えて、吸液シート12を、例えば第1の面12aから第2の面12bに向かっては液体を通過させるものの、第2の面12bから第1の面12aに向かっては液体を通過させない素材で形成することも可能である。
【0048】
その場合、吸液シート12を第2の面12bまで一度通過した漏液Lは、吸液シート12の下方から再び吸液シート12の上方ににじみ出て来ない。したがって、操作者は、より一層漏液Lに触れることなくDMFCユニット11の不具合に対して対処できる。
【0049】
さらに、本実施形態に係る吸液シート12の代わりに、図9に示すような吸液シート45を用いることもできる。吸液シート45は、第1の面12aから第2の面12bに貫通する複数の貫通孔45aを有する。このように吸液シート45に貫通孔45aを設けることで、吸液シート45を浸透性を有しない素材、すなわち一般的な吸液材で形成することが可能となる。吸液シート45の材料は、例えば、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、レーヨンなどを主成分とするフェルト材が好適である。
【0050】
なお、貫通孔45aの数および大きさは特に限定されるものではなく、例えばDMFC1において吸液処理能力に比べて液漏れ検知能力を優先させたい場合は、貫通孔45aの径を大きくしたり、貫通孔45aの数を多くし、一方、液漏れ検知能力に比べて吸液処理能力を優先させた場合は、貫通孔45aの径を小さくしたり、貫通孔45aの数を少なくするなど、必要に合わせてその数、大きさは適宜選択可能である。
【0051】
次に、本発明の第2の実施形態に係る液漏れ検知構造としてのDMFC51を図10を参照して説明する。なお第1の実施形態に係るDMFC1と同じ機能を有する構成は、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0052】
DMFC51は、他の吸液部材としての第2の吸液シート52を有する。図10に2点鎖線で示すように、第2の吸液シート52は、吸液シート12(以下区別するため、第1の吸液シート12)の長手方向の両端において、それぞれ第1の吸液シート12と一体に形成されている。すなわち、第1および第2の吸液シート12,52は、一続きのシート状に成形されている。
【0053】
図10中に示すように、第2の吸液シート52は、液漏れセンサ基板13の下面を覆うように第1の吸液シート12の端部から折り返されて、筐体6内に収容されている。これにより、第2の吸液シート52は、液漏れセンサ基板13と筐体6の下壁6bとの間に介在する。
【0054】
このような構成のDMFC51によれば、液漏れが生じたとしても、その液漏れが検知されるとともに、漏れた液体Lが吸液処理される。すなわち、DMFC51は、液漏れセンサ基板13、および第1の吸液シート12を有する。したがって、第1の実施形態に係るDMFC1と同様に、DMFCユニット11からの液漏れは液漏れセンサ基板13により検出される。微量でない量の液漏れが生じたとしても、第1の吸液シート12により漏液Lが吸液処理されるので、漏液Lがさらに筐体6の外部に漏れ出すことを防ぐことができる。
【0055】
本実施形態のDMFC51は、さらに、液漏れセンサ基板13と筐体6の下壁6bとの間に第2の吸液シート52を有する。これにより、第1の吸液シート12を通過して液漏れセンサ基板13に到達し、さらに液漏れセンサ基板13の下方へ移動しようとする漏液Lを吸液処理できる。すなわち、第2の吸液シート52は、第1の吸液シート12では吸うことができない液漏れセンサ基板13より下方まで達した漏液Lを吸液処理することができる。これにより、漏液Lが筐体6の外部に漏れ出すおそれをさらに小さくできる。さらに、第1および第2の吸液シート12,52を併せて用いることで、DMFC51の吸液処理の許容量が向上する。
【0056】
なお、第2の吸液シート52は、第1の吸液シート12と一体に形成される必要はなく、例えば別部材で形成しても良い。第2の吸液シート52を浸透性を有しない素材で形成することで、液漏れセンサ基板13より下方まで達した漏液Lを確実に筐体6の内部に留めることができる。
【0057】
次に、本発明の実施の形態を、ポータブルコンピュータに適用した図面に基づいて説明する。
本発明の第3の実施形態に係る液漏れ検知構造としてのポータブルコンピュータ61を図11ないし図13を参照して説明する。なお第1および第2の実施形態に係るDMFC1,51と同じ機能を有する構成は、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0058】
図11に示すように、ポータブルコンピュータ61は、本体62と表示ユニット63とを備えている。本体62は、偏平な箱状に形成された筐体64を備えている。筐体64は、上壁64a、下壁64b、および側壁64cを有する。筐体64の上壁64aは、キーボード65を支持する。
【0059】
表示ユニット63は、ディスプレイハウジング66と、このディスプレイハウジング66に収容された液晶表示パネル67とを備えている。液晶表示パネル67は、表示画面67aを有する。表示画面67aは、ディスプレイハウジング66の前面の開口部66aを通じてディスプレイハウジング66の外部に露出している。
【0060】
表示ユニット63は、筐体64の後端部に図示しないヒンジ装置を介して支持されている。そのため、表示ユニット63は、上壁64aを上方から覆うように倒される閉じ位置と、上壁64aおよび表示画面67aを露出させるように起立する開き位置との間で回動可能である。
【0061】
図12に示すように、筐体64は、内部に回路基板71を収容している。回路基板71は、後端部にCPU72を実装している。筐体64の下壁64bは、膨張部74を有する。膨張部74は、下壁64bの後半部に位置するとともに、下壁64bの前半部よりも下向きに突出している。
【0062】
図13に示すように、膨張部74は、ボトムカバー75を有する。ボトムカバー75は、筐体64の下壁64bの一部を構成する。図12に示すように、膨張部74は、液冷式の冷却装置81、吸液シート12、および液漏れセンサ基板13を収容する。
【0063】
冷却装置81は、循環装置の一例である。図13に示すように、冷却装置81は、受熱部82、一対の放熱部83a,83b、および循環部としての循環流路84を備えている。図12に示すように、受熱部82は、CPU72に隣接して設けられ、発熱体であるCPU72に熱的に接続されている。図13に示すように、放熱部83a,83bは、受熱部82の左右に別れて配置されている。放熱部83a,83bは、放熱フィン86と放熱ファン87とを有する。
【0064】
循環流路84は、受熱部82と放熱部83a,83bとを取り囲むように設けられ、受熱部82と放熱部83a,83bの放熱フィン86と熱的に接続されている。循環流路84は、図示しないポンプにより、受熱部82と放熱部83a,83bとの間で液体冷媒を循環させる。
【0065】
受熱部82には、CPU72が放出する熱が伝達される。受熱部82に伝達された熱は受熱部82に隣接する循環流路84を介して循環流路84内を流れる液体冷媒に伝達される。液体冷媒に伝達された熱は、液体冷媒に吸収される。熱を吸収した液体冷媒は、放熱部83a,83bまで循環した際に、放熱部83a,83bの放熱フィン86および放熱ファン87により冷却され、吸収した熱を放出する。熱を放出した液体冷媒は再び受熱部82に還流され、受熱部82で熱を吸収する。
なお、冷却装置81に用いられる液体冷媒は、不凍液、または水などが好適であるが、その種類は問わない。
【0066】
図12および図13に示すように、吸液シート12は、冷却装置81と液漏れセンサ基板13との間に介在する。吸液シート12は、冷却装置81の下方全体を覆う外形を有する。すなわち、吸液シート12は、冷却装置81の循環流路84の下方全体を覆う。
【0067】
図12および図13に示すように、液漏れセンサ基板13は、筐体64の下壁64bと、冷却装置81との間に介在する。液漏れセンサ基板13は、吸液シート12と略同じ外形を有する。すなわち液漏れセンサ基板13は、冷却装置81の下方全体を覆う。
【0068】
このような構成のポータブルコンピュータ61によれば、冷却装置81から液体冷媒が漏れたとしても、その液漏れが検知されるとともに、漏れた液体Lが吸液処理される。すなわち、ポータブルコンピュータ61は、液漏れセンサ基板13、および吸液シート12を有する。したがって、第1の実施形態に係るDMFC1と同様に、冷却装置81からの液漏れは液漏れセンサ基板13により検出される。微量でない量の液漏れが生じたとしても、吸液シート12により漏液Lが吸液処理されるので、漏液Lがさらに筐体64の外部に漏れ出すことを防ぐことができる。
【0069】
特に、液体冷媒を取扱う冷却装置81に本発明を適用することは、非常に有効である。すなわち、冷却装置81により冷却されるような電子部品は、液体に弱いことが多い。漏れた液体冷媒が吸液処理されないまま操作者が不具合の調整を行おうとすると、漏れた液体Lが飛散って電子部品などに付着し、電子部品が損傷を受けるおそれがある。しかし、本実施形態のように、漏液Lを吸液処理する吸液シート12を有することで、電子部品が損傷を受けるおそれが小さくなる。
【0070】
なお、本実施形態に係る吸液シート12の代わりに、第1の実施形態に係る吸液シート45を用いても良いし、第2の実施形態のように、吸液シート12に加えて第2の吸液シート52を併せて用いても良い。
【0071】
以上、第1および第2の実施形態に係るDMFC1,51、ならびに第3の実施形態に係るポータブルコンピュータ61について説明したが、本発明はもちろんこれらに限定されない。例えば、本発明が適用できる「液体」は、液体燃料や液体冷媒に限らず、流動性を有する物質であればその種類、用途は問わない。さらに本発明の適用は、発電装置や冷却装置に限られるものでなく、例えば液体を貯留するタンクのようなものに適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るDMFCの斜視図。
【図2】本発明の第1の実施形態において、DMFCにポータブルコンピュータを接続した状態を示す斜視図。
【図3】図1中に示された装置本体のA−A線に沿う断面図。
【図4】図1中に示された装置本体の斜視図。
【図5】図3中に示されたDMFCユニットの斜視図。
【図6】図3中に示されたDMFCユニットの断面図。
【図7】図3中に示された液漏れセンサ基板の平面図。
【図8】図7中に示された液漏れセンサ基板および制御部を模式的に示す図。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る吸液シートの変形例を示す斜視図。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る装置本体の断面図。
【図11】本発明の第3の実施形態に係るポータブルコンピュータの斜視図。
【図12】図11中に示されたポータブルコンピュータの断面図。
【図13】図12中に示された冷却装置周辺を示す斜視図。
【符号の説明】
【0073】
L…漏液、1…DMFC、3…装置本体、4…載置部、6…筐体、6b…下壁、11…DMFCユニット、12…吸液シート、12a…第1の面、12b…第2の面、13…液漏れセンサ基板、31…循環部、45…吸液シート、45a…貫通孔、51…DMFC、52…第2の吸液シート、61…ポータブルコンピュータ、64…筐体、64b…下壁、81…冷却装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下壁を有する筐体と、
上記筐体に収容される液体が循環される循環装置と、
上記筐体の下壁と上記循環装置との間に介在される液漏れセンサと、
上記液漏れセンサと上記循環装置との間に介在されるとともに、上記循環装置からの液体の一部を上記液漏れセンサに向かって通過させる吸液部材と、
を具備することを特徴とする液漏れ検知構造。
【請求項2】
請求項1に記載の液漏れ検知構造において、
上記循環装置は、液体燃料を取扱う発電装置であることを特徴とする液漏れ検知構造。
【請求項3】
請求項1に記載の液漏れ検知構造において、
上記循環装置は、液体冷媒を取扱う冷却装置であることを特徴とする液漏れ検知構造。
【請求項4】
請求項1に記載の液漏れ検知構造において、
上記吸液部材は、上記循環装置と向かい合う第1の面と、上記液漏れセンサと向かい合う第2の面と、上記第1の面から上記第2の面に貫通する貫通孔とを有することを特徴とする液漏れ検知構造。
【請求項5】
請求項1に記載の液漏れ検知構造において、
上記吸液部材は、この吸液部材に付着する液体が浸透する材料で形成されることを特徴とする液漏れ検知構造。
【請求項6】
請求項1に記載の液漏れ検知構造において、
上記循環装置は、液体を循環させる循環部を有し、
上記液漏れセンサおよび上記吸液部材は、上記循環部の下方全体を覆うように設けられることを特徴する液漏れ検知構造。
【請求項7】
請求項1に記載の液漏れ検知構造において、
上記筐体の下壁と上記液漏れセンサとの間に他の吸液部材が介在することを特徴とする液漏れ検知構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−66624(P2007−66624A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−249520(P2005−249520)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】