説明

液透過性シートの製造方法及び製造装置

【課題】液透過性シート17の接合凹部15の接合強度低下を有効に防ぐ。
【解決手段】互いの回転軸を平行に揃えつつ外周面61a,71aを対向させて回転する一対のロール61,71の間隙に、複数枚のシート16,14を通して挟圧することにより前記複数枚のシート16,14を接合して液透過性シート17を製造する方法である。前記一対のロール61,71のうちの一方のロールの外周面61aには複数の凸部63が形成されている一方、他方のロール71の外周面71aには、前記凸部63に対応させて、前記凸部63とで前記複数枚のシート16,14を挟圧して接合凹部15を形成するための凸部73が形成されている。前記一方のロール61の凸部63の頂面63aと、前記凸部63に対応する前記他方のロール71の凸部73の頂面73aとは、所定方向に関して大きさが異なる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液透過性シートの製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
経血などの人体から排泄される液体を吸収する吸収性物品として、例えば生理用ナプキンが知られている。この吸収性物品は、粉砕パルプ等からなる吸収体を有しており、この吸収体の表面側(人の肌と触れる側、肌側)は、液透過性シート17で覆われている。
【0003】
この液透過性シート17は、例えば二枚の不織布シート16,14が所謂エンボス加工によって溶着接合されてなる。図1に、このエンボス加工の説明図を側面視で示す。このエンボス加工は、回転する上ロール31と下ロール51との間隙に二枚の不織布シート16,14を通して挟圧し、これにより前記不織布シート16,14に複数の接合凹部15(以下エンボスとも言う)を形成して両シート16,14を接合するものである。
【0004】
より詳しく言えば、下ロール51は平滑ロールであるが、上ロール31は、外周面31aに複数の凸部33が形成されたエンボスロールであり、更にこれらロール31,51は不織布シート16,14の融点近傍にまで加熱されている。よって、図2に示すように、上ロール31と下ロール51との間隙を二枚の不織布シート16,14が通過する際には、上ロール31の凸部33の頂面33aと下ロール51の平滑な外周面51aとで挟圧された部分が溶融して接合凹部15(エンボス)が形成され、これら接合凹部15により二枚の不織布シート16,14が接合される(特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開2002−159534号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
但し、図2に示すように、平滑ロール51はエンボスロール31と比べて、凸部33と凸部33との間の空間Sが無い分だけ不織布シート14を全面に亘ってほぼ一様に圧下してしまい、もって、液透過性シート17の嵩高性が悪化する。また、上記空間Sが無い分だけ平滑ロール51は不織布シート14との接触時間が長くなり、その結果、不織布シート14における平滑ロール51側の面14bが全面に亘って溶け易くなり、上記嵩高性の悪化を助長させてしまう。
【0006】
そこで、この嵩高性の改善策として、例えば、図3に示すように上ロール31の凸部33に対応させて、下ロール41にも上ロール31と同寸の凸部43を形成することが考えられる。そして、理想的な設計条件下においては、図4Aに示すように上ロール31の凸部33の頂面33aと下ロール41の凸部43の頂面43aとが挟圧時にぴたりと一致して、これら凸部33,43で挟圧される範囲はこれら凸部33,43の頂面33a,43aの面積と等しくなる。
【0007】
しかしながら、一般にロールには、その回転駆動用の歯車のバックラッシやロール軸受けの回転軸方向(回転軸に沿う方向のこと)の機械的ガタ等が存在し、これにより、上ロール31と下ロール41との相対位置がロールの周方向や回転軸方向に関してずれる。
【0008】
よって、上述の図3の如き上ロール31の凸部33と下ロール41の凸部43とが同寸の仕様下において、このようなずれが生じた場合には、図4Bの模式図に示すように、上ロール31の凸部33の頂面33aと下ロール41の凸部41aの頂面43aとで挟圧される範囲(斜線部)が、図4Aに示した設計寸法(斜線部)よりも小さくなってしまい、その結果として前記接合凹部の接合強度が低下する虞があった。
【0009】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みてなされたものであって、接合凹部の接合強度低下を有効に防ぐことが可能な液透過性シートの製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための主たる発明は、
互いの回転軸を平行に揃えつつ外周面を対向させて回転する一対のロールの間隙に、複数枚のシートを通して挟圧することにより前記複数枚のシートを接合して液透過性シートを製造する方法であって、
前記一対のロールのうちの一方のロールの外周面には複数の凸部が形成されている一方、他方のロールの外周面には、前記凸部に対応させて、前記凸部とで前記複数枚のシートを挟圧して接合凹部を形成するための凸部が形成されており、
前記一方のロールの凸部の頂面と、前記凸部に対応する前記他方のロールの凸部の頂面とは、所定方向に関して大きさが異なることを特徴とする液透過性シートの製造方法である。
【0011】
また、互いの回転軸を平行に揃えつつ外周面を対向させて回転する一対のロールの間隙に、複数枚のシートを通して挟圧することにより前記複数枚のシートを接合して液透過性シートを製造する装置であって、
前記一対のロールのうちの一方のロールの外周面には複数の凸部が形成されている一方、他方のロールの外周面には、前記凸部に対応させて、前記凸部とで前記複数枚のシートを挟圧して接合凹部を形成するための凸部が形成されており、
前記一方のロールの凸部の頂面と、前記凸部に対応する前記他方のロールの凸部の頂面とは、所定方向に関して大きさが異なることを特徴とする液透過性シートの製造装置である。
【0012】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、接合凹部の接合強度低下を有効に防ぐことが可能な液透過性シートの製造方法及び製造装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0015】
互いの回転軸を平行に揃えつつ外周面を対向させて回転する一対のロールの間隙に、複数枚のシートを通して挟圧することにより前記複数枚のシートを接合して液透過性シートを製造する方法であって、
前記一対のロールのうちの一方のロールの外周面には複数の凸部が形成されている一方、他方のロールの外周面には、前記凸部に対応させて、前記凸部とで前記複数枚のシートを挟圧して接合凹部を形成するための凸部が形成されており、
前記一方のロールの凸部の頂面と、前記凸部に対応する前記他方のロールの凸部の頂面とは、所定方向に関して大きさが異なることを特徴とする液透過性シートの製造方法である。
このような液透過性シートの製造方法によれば、前記一対のロールの前記所定方向に関する相対位置のずれに伴って前記接合凹部の接合強度が低下することを、有効に防止できる。
【0016】
詳しくは次のとおりである。挟圧時に互いに対向する前記一方のロールの凸部と前記他方のロールの凸部とのうちで、前記所定方向に関して頂面が大きい方の凸部は、前記所定方向に関して頂面が小さい方の凸部よりも同方向に関して外側にはみ出している。従って、そのはみ出し分だけ前記所定方向に前記一対のロール同士の相対位置がずれても、凸部同士で挟圧される範囲の大きさに変化は無く、もって、前記接合凹部の接合強度低下を有効に防ぐことができる。
【0017】
かかる液透過性シートの製造方法であって、
前記所定方向は、前記回転軸に沿う方向であり、
前記一方のロールの凸部の頂面は、前記回転軸に沿う方向の両方の側において、前記他方の凸部の頂面よりも外側にはみ出しているのが望ましい。
このような液透過性シートの製造方法によれば、前記一対のロール同士の相対位置が、前記回転軸に沿う方向のどちらの側にずれたとしても、前記接合凹部の接合強度低下を有効に防ぐことができる。
【0018】
かかる液透過性シートの製造方法であって、
前記一方のロールの凸部は、前記回転軸に沿う方向に関する前記複数枚のシートの全幅に亘って連続して延在するリブであるのが望ましい。
このような液透過性シートの製造方法によれば、前記一対のロール同士の相対位置が、前記回転軸に沿う方向のどちらの側にずれたとしても、前記接合凹部の接合強度低下を確実に防ぐことができる。
【0019】
かかる液透過性シートの製造方法であって、
前記所定方向は、前記ロールの周方向であり、
前記他方のロールの凸部の頂面は、前記ロールの周方向の両方の側において、前記一方の凸部の頂面よりも外側にはみ出しているのが望ましい。
このような液透過性シートの製造方法によれば、前記一対のロール同士の相対位置が、前記ロールの周方向のどちらの方向にずれたとしても、前記接合凹部の接合強度低下を有効に防ぐことができる。
【0020】
かかる液透過性シートの製造方法であって、
前記他方のロールの凸部は、前記周方向の全長に亘って連続して延在するリブであるのが望ましい。
このような液透過性シートの製造方法によれば、前記一対のロール同士の相対位置が、前記周方向のどちらの側にずれたとしても、前記接合凹部の接合強度低下を確実に防ぐことができる。
【0021】
かかる液透過性シートの製造方法であって、
前記ロールの間隙の入り側には、前記複数枚のシートのうちの少なくとも一枚のシートを前記ロールの凸部に押し付けるための押し付けロールが設けられているのが望ましい。
このような液透過性シートの製造方法によれば、前記押し付けロールによって前記ロールの凸部に押し付けられたシートは、前記ロールにおいて互いに隣り合う凸部と凸部との間の空間に入り込む。よって、前記隣り合う凸部と凸部との間の空間への前記シートの入り込み量を多くすることができて、その結果として、液透過性シートの嵩高性を高めることができる。
【0022】
かかる液透過性シートの製造方法であって、
前記液透過性シートは、人体から排泄される液体を吸収する吸収体を前記人体の肌側から覆うためのシートであり、
前記複数枚のシートは、装着時に前記肌側に位置する表面シートと、前記吸収体側に位置する中間シートとからなり、
前記一対のロールのうちで、前記間隙において前記表面シートと当接するロールに対してのみ、前記押し付けロールが設けられているのが望ましい。
このような液透過性シートの製造方法によれば、人体への肌触り性に優れるとともに、吸収体への液体の浸透性に優れた液透過性シートを製造可能となる。
【0023】
また、互いの回転軸を平行に揃えつつ外周面を対向させて回転する一対のロールの間隙に、複数枚のシートを通して挟圧することにより前記複数枚のシートを接合して液透過性シートを製造する装置であって、
前記一対のロールのうちの一方のロールの外周面には複数の凸部が形成されている一方、他方のロールの外周面には、前記凸部に対応させて、前記凸部とで前記複数枚のシートを挟圧して接合凹部を形成するための凸部が形成されており、
前記一方のロールの凸部の頂面と、前記凸部に対応する前記他方のロールの凸部の頂面とは、所定方向に関して大きさが異なることを特徴とする液透過性シートの製造装置である。
このような液透過性シートの製造装置によれば、前記一対のロールの前記所定方向に関する相対位置のずれに伴って前記接合凹部の接合強度が低下することを、有効に防止できる。
【0024】
===第1実施形態の製造方法===
<<液透過性シート17の適用例>>
始めに、第1実施形態の製造方法で製造された液透過性シート17の適用例について説明する。ここでは、液透過性シート17は、吸収性物品1としての生理用ナプキンに適用されており、以下では、人体に接触する側を表面側とし、下着に接する側を裏面側として説明する。
【0025】
図5Aは、吸収性物品1の表面側の平面図である。また、図5Bは図5A中のB−B断面図である。図5Aに示すように、吸収性物品1は全体的に所定方向に長い形状をなしている。以下、この所定方向を長手方向と言い、この長手方向と直交する方向を幅方向と言う。
【0026】
この吸収性物品1は、図5A及び図5Bに示すように、高吸収性ポリマーが混入された粉砕パルプをティッシュペーパー等の透液性シート(不図示)にて包んでなる略矩形平板状の吸収体12と、少なくとも吸収体12の表面側をその全面に亘って覆って設けられた表面シート14と、表面シート14と吸収体12との間に配置された中間シート16と、吸収体12に吸収された液体の裏面側への漏れを防止するための裏面シート18と、吸収性物品1の幅方向の両端部からの液体の漏れを防止すべく表面シート14の幅方向の両端部を前記長手方向に沿って覆って設けられた一対のサイドシート20と、を有している。
【0027】
図5Aに示すように、表面シート14は、吸収体12の平面形状よりも若干大きめの略長方形の透液性シートであり、その素材には例えば0.02〜0.15(g/cm)の密度で15〜70(g/cm)の坪量の不織布等が使用される。不織布の種類としては、エアスルーや、スパンボンド、ニードルパンチ、メルトブローン、サーマルボンド、ケミカルボンドなどが挙げられる。また、不織布の構成繊維は、熱可塑性樹脂の繊維であり、例えば、ポリエチレンや、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレートの鞘芯構造の複合繊維、ポリエチレン/ポリプロピレンの鞘芯構造の複合繊維、ポリエステル系やポリアミド系の繊維などが挙げられる。
【0028】
中間シート16は、上記表面シート14よりも液体保持力の高い矩形の透液性シートであり、表面シート14で例示した上記素材が使用される。但し、表面シート14からの液体の吸収性を良くすべく、表面シート14よりも高い密度のシートが用いられる。
【0029】
なお、これら表面シート14と中間シート16とは、後述するエンボス加工にて形成された複数の接合凹部15にて接合されており、もって、図5A及び図5Bに示すように、表面シート14の表面及び中間シート16の裏面には、前記接合凹部15としてのエンボス15がほぼ全面に亘って形成されている。そして、これら両シート14,16が接合されてなるシート17が、当該第1実施形態の製造方法で製造される「液透過性シート」に相当する。この製造方法については後述する。
【0030】
裏面シート18は、例えばポリエチレンやポリプロピレン等を素材とする不透液性シートであり、その形状は、図5Aに示すように、その長手方向及び幅方向の両者共に吸収体12よりも大きな略長方形状である。そして、当該裏面シート18は、その表面に吸収体12を載せた状態で、少なくとも長手方向の両端部において液透過性シート17と接合され、これにより、裏面シート18と液透過性シート17との間に吸収体12が保持される。
【0031】
なお、図5Bに示すように、裏面シート18の裏面には、使用時に吸収性物品1を下着の内面に固定するための下着固定用接着剤19が塗布されている。また、裏面シート18の幅方向の両端には、ウイング部18fが幅方向の外側に延出形成されており、これらウイング部18f,18fの裏面にも下着固定用接着剤19が塗布されている。そして、吸収性物品1を下着に固定する際には、これらウイング部18f,18fは外側に折り返され、その下着固定用接着剤19により下着の外面に固定される。
【0032】
<<液透過性シート17の製造方法>>
図6は、液透過性シート17の製造ラインの側面図である。この液透過性シート17の製造ラインは、例えば吸収性物品1の製造ラインの一部である。つまり、当該液透過性シート17の製造ラインで製造された液透過性シート17は、連続シートの状態でラインの流れ方向の下流側へと搬送されるが、その搬送過程において、別の製造ラインで製造された吸収体12等の別パーツが順次取り付けられて最終的に吸収性物品1となる。ここでは液透過性シート17の製造ラインについてのみ説明する。
【0033】
図6に示すように、当該液透過性シート17の製造ラインの最初の処理ポジションP1には、上下一対のリール201,203が設置されている。上リール201及び下リール203には、それぞれ、ロール状に巻かれてなる中間シートロール16r及びロール状に巻かれてなる表面シートロール14rが取り付けられている。そして、上リール201からは、中間シート16が連続シートの状態で繰り出される一方、下リール203からは表面シート14が連続シートの状態で繰り出され、これら中間シート16と表面シート14とは、ラインの流れ方向の下流にある次の処理ポジションP2へと送られる。
【0034】
ちなみに、ここでは、上リール201に中間シートロール16rを取り付けるとともに、下リール203に表面シートロール14rを取り付けたが、上下逆でも構わない。但し、この下流において、液透過性シート17上に吸収体12を載置して供給する場合には、表面シート14の上に中間シート16が位置している方が都合が良いので、望ましくは図示のように上リール201に中間シートロール16rを割り当てて下リール203に表面シートロール14rを割り当てると良い。
【0035】
処理ポジションP2には、中間シート16と表面シート14とを上下に重ね合わせつつエンボス加工を施してこれら両シート16,14を接合する接合装置211が設置されている。
【0036】
図7は、この接合装置211の正面図(つまり図6中でVII-VII線矢視で示す図)である。接合装置211は、互いの回転軸C61,C71を平行に揃えつつ外周面61a,71aを対向させて回転する上下一対のエンボスロール61,71と、これらエンボスロール61,71を前記回転軸C61,C71周りに回転させるための回転駆動機構221とを有している。
【0037】
上下のエンボスロール61,71は、互いに同じ直径の鋼製円柱体であり、それぞれに、その回転軸方向の両端部を、ラジアル軸受けやスラスト軸受け215等を介して接合装置211のハウジング213に支持されて、回転軸周りに回転自在である。なお、この例では、上エンボスロール61は昇降不能にハウジング213に支持されているが、下エンボスロール71は、例えば油圧シリンダー等の昇降機構217によって昇降可能に支持されている。よって、この昇降機構217の昇降動作により上エンボスロール61と下エンボスロール71との間の間隙の大きさが調整される。また、各エンボスロール61,71の内部には、そのエンボスロール61,71を加熱するための発熱体(不図示)が組み込まれており、その発熱量の調整によって、前記エンボスロール61,71の外周面61a,71aの後記凸部63,73の温度調整がなされる。
【0038】
回転駆動機構221は、図7に示すように、上下のエンボスロール61,71の回転動作の駆動源となるモータ223と、このモータ223からの駆動トルクを上下のエンボスロール61,71に分配するためのピニオンスタンド225と、分配された駆動トルクを上下のエンボスロール61,71に伝達する上下一対のスピンドル227a,227bと、を有している。そして、モータ223から供給される1軸の駆動トルクが、ピニオンスタンド225内で互いに噛み合う一対の歯車225a,225bにより2軸の駆動トルクに分配され、これら2軸の駆動トルクは、それぞれ前記歯車225a,225bに連結された上スピンドル227a及び下スピンドル227bを介して、上エンボスロール61及び下エンボスロール71に伝達され、これにより、上下のエンボスロール61,71が互いに同じ周速で回転するようになっている。
【0039】
このような接合装置211によれば、図6に示すように、回転する上下のエンボスロール61,71の間の間隙に、中間シート16と表面シート14とが互いに上下に重ね合わされた状態で通される際には、上エンボスロール61の外周面61aに形成された凸部63と、前記凸部63に対応させて下エンボスロール71の外周面71aに形成された凸部73とによって、中間シート16と表面シート14とは挟圧される。ここで、この時には、これら凸部63,73は、前記発熱体によって前記中間シート16及び表面シート14の構成繊維の融点近傍の温度にまで加熱されている。よって、これら凸部63と凸部73とで挟圧された中間シート16及び表面シート14の部分は溶融して接合凹部15となり、もって、中間シート16と表面シート14とは一体に接合され、これら接合されたシート17は、液透過性シート17として流れ方向の下流へと送られる。
【0040】
図8乃至図10は、上下のエンボスロール61,71の外周面61a,71aに形成された凸部63,73の配置パターンの説明図である。図8には、上エンボスロール61及び下エンボスロール71の正面図を示し、図9には、上エンボスロール61及び下エンボスロール71の外周面61a,71aを周方向に展開して示している。また、図10Aは、上エンボスロール61の凸部63の説明図であり、図10Bは、下エンボスロール71の凸部73の説明図である。図11A及び図11Bは、上エンボスロール61の凸部63と下エンボスロール71の凸部73とで挟圧される挟圧範囲の説明図である。
【0041】
図8及び図9に示すように、上エンボスロール61の平滑な外周面61aには、回転軸方向に形成ピッチP1で、且つ、周方向に形成ピッチP2で格子状に島状の凸部63が形成されている一方、これらの各凸部63に対応させて、下エンボスロール71の平滑な外周面71aにも、回転軸方向に形成ピッチP1で、且つ、周方向に形成ピッチP2で格子状に島状の凸部73が形成されている。そして、回転軸方向及び周方向に関する機械的ガタが接合装置211に無いという理想状態においては、図11Aに示すように、挟圧時に、互いに対応する凸部63,73同士の頂面中心C63a,C73aが一致するようになっている。
【0042】
凸部63,73の形状は、図10A及び図10Bに示すように、上下のエンボスロール61,71の何れについても略直方体形状であり、その平坦な頂面63a,73aの形状は互いに同寸の長方形である。但し、ここで上エンボスロール61と下エンボスロール71とは、互いに凸部63,73の頂面63a,73aの長手方向の向きが異なっており、すなわち、上エンボスロール61の凸部63の頂面63aの長手方向はロールの回転軸方向を向いているが、下エンボスロール71の凸部73の頂面73aの長手方向はロールの周方向を向いており、互いに直交している。
【0043】
よって、図11Aに示すように、回転軸方向に関しては上エンボスロール61の凸部63の頂面63aの方が下エンボスロール71の凸部73の頂面73aよりも大きいが、周方向に関しては、図11Bに示すように、逆に下エンボスロール71の凸部73の頂面73aの方が上エンボスロール61の凸部63の頂面63aよりも大きくなっている。より詳しく言えば、図11Aに示すように、上エンボスロール61の凸部63の頂面63aは、回転軸方向の両方の側において下エンボスロール71の凸部73の頂面73aよりもX1だけ外側にはみ出しているともに、逆に下エンボスロール71の凸部73の頂面73aは、図11Bに示すように、周方向の両方の側において上エンボスロール61の凸部63の頂面63aよりも外側にX1だけはみ出している。
【0044】
従って、上下エンボスロール61,71同士の相対位置が上述の理想状態から回転軸方向及び周方向にずれたとしても、それらのずれ量が、上述のはみ出し量X1の範囲内であれば、図12Bに示すように、挟圧時における上エンボスロール61の凸部63と下エンボスロール71の凸部73とで挟圧される挟圧範囲は、図12Aの斜線で示す設計寸法と同じになり、その結果として、これら凸部63,73にて形成される接合凹部15の接合強度低下は有効に防止される。
【0045】
なお、この回転軸方向のはみ出し量X1は、例えば、図7の接合装置211の回転軸方向に関する寸法公差を積み上げてなる回転軸方向の累計公差に基づいて決められる一方、周方向のはみ出し量X1は、例えば、接合装置211のロールの周方向に関する寸法公差を全て積み上げてなる周方向の累計公差に基づいて決められる。前者の公差の主なものとしては、前記スラスト軸受け215等の回転軸方向のクリアランス等が挙げられる一方、後者の公差の主なものとしては、ピニオンスタンド225内の前記一対の歯車225a、225bのバックラッシ等が挙げられる。但し、これ以外の理由に基づいてはみ出し量X1を決めても良い。
【0046】
図13は、この第1実施形態に係るエンボスロール61,71で製造された液透過性シート17の上面側及び下面側の平面図である。この液透過性シート17は、上エンボスロール61の凸部63と下エンボスロール71の凸部73との交点にて挟圧されて製造されるので、当該液透過性シート17の上面及び下面には、複数の接合凹部15が、ラインの流れ方向にピッチP2で、且つ、流れ方向と直交する幅方向にピッチP1で格子状に形成されている。
【0047】
===第2乃至第7実施形態の製造方法===
以下、第2乃至第7実施形態の製造方法について説明する。なお、何れの実施形態も上エンボスロール61と下エンボスロール71の外周面61a,71aにおける凸部の配置パターンの点で、上述の第1実施形態と相違する。
【0048】
<<第2実施形態>>
図14及び図15は、第2実施形態に係る凸部の配置パターンの説明図である。図14には上エンボスロール61及び下エンボスロール71の正面図を示し、図15には、上エンボスロール61及び下エンボスロール71の外周面61a,71aを周方向に展開して示している。
【0049】
この第2実施形態では、上エンボスロール61の凸部63の配置パターンは第1実施形態と同じであるが、下エンボスロール71の凸部の配置パターンが異なっている。すなわち、下エンボスロール71の外周面71aの凸部のなかで、回転軸方向の位置が同じ全ての凸部は、周方向の全長に亘って繋がっており、これにより、図14及び図15に示すように、下エンボスロール71の外周面71aには、周方向に沿った円環状のリブ74が、回転軸方向にピッチP1で形成されている。
【0050】
よって、この第2実施形態の場合には、上エンボスロール61と下エンボスロール71との相対位置が周方向に大きくずれようとも、下エンボスロール71のリブ74は周方向の全長に亘っているので、上エンボスロール61の凸部63との挟圧範囲を設計寸法と同寸に維持することができて、その結果として、これら凸部63及びリブ74にて形成される接合凹部15の接合強度低下は確実に防止される。
【0051】
図16は、当該第2実施形態に係るエンボスロール61、71で製造された液透過性シート17の上面側及び下面側の平面図である。上エンボスロール61の凸部63と下エンボスロール71のリブ74との交点において挟圧されるので、図16に示すように、液透過性シート17の上面及び下面には、幅方向にピッチP1且つ流れ方向にピッチP2の格子状に接合凹部15が形成されている。但し、下エンボスロール71と接触する液透過性シート17の下面については、前記周方向に沿ったリブ74が当接することから、当該下面には、図16に示すように流れ方向に沿った溝15aが幅方向にピッチP1で形成されている。
【0052】
<<第3実施形態>>
図17及び図18は、第3実施形態の凸部の配置パターンの説明図である。図17には上エンボスロール61及び下エンボスロール71の正面図を示し、図18には、上エンボスロール61及び下エンボスロール71の外周面61a,71aを周方向に展開して示している。
【0053】
この第3実施形態にあっては、上述の第2実施形態とは逆に、下エンボスロール71の凸部73の配置パターンは第1実施形態と同じであるが、上エンボスロール61の凸部の配置パターンが第1実施形態と異なっている。すなわち、上エンボスロール61の外周面61aの凸部のなかで、前記周方向の位置が同じ全ての凸部は、前記回転軸方向に亘って繋がっており、これにより、図17及び図18に示すように、上エンボスロール61の外周面61aには、前記回転軸方向に沿った直線状のリブ64が、前記周方向にピッチP2で形成されている。
【0054】
よって、この第3実施形態の場合には、上エンボスロール61と下エンボスロール71との相対位置が前記回転軸方向に大きくずれようとも、上エンボスロール61のリブ64は、回転軸方向に関して液透過性シート17の全幅に相当する長さに亘っているので、下エンボスロール71の凸部73との挟圧範囲を設計寸法と同寸に維持することができて、その結果として、これらリブ64及び凸部73にて形成される接合凹部15の接合強度低下は確実に防止される。
【0055】
図19は、当該第3実施形態に係るエンボスロール61,71で製造された液透過性シート17の上面側及び下面側の平面図である。上エンボスロール61のリブ64と下エンボスロール71の凸部73との交点において挟圧されるので、図19に示すように、液透過性シート17の上面及び下面には、幅方向にピッチP1且つ流れ方向にピッチP2の格子状に接合凹部15が形成されている。但し、上エンボスロール61のリブ64と接触する液透過性シート17の上面については、前記回転軸方向に沿ったリブ64が当接するため、当該上面には、図19に示すように、幅方向に沿った溝15bが流れ方向にピッチP2で形成されている。
【0056】
<<第4実施形態>>
図20及び図21は、第4実施形態の凸部の配置パターンの説明図である。図20には上エンボスロール61及び下エンボスロール71の正面図を示し、図21には、上エンボスロール61及び下エンボスロール71の外周面61a,71aを周方向に展開して示している。
【0057】
この第4実施形態は、第2実施形態と第3実施形態とを組み合わせたものであり、つまり、下エンボスロール71の凸部の配置パターンは第2実施形態と同じであるが、上エンボスロール61の凸部の配置パターンは第3実施形態と同じである。詳しくは、図21に示すように、下エンボスロール71の外周面71aには、前記周方向に沿った円環状のリブ74が、前記回転軸方向にピッチP1で形成されているとともに、上エンボスロール61の外周面61aには、前記回転軸方向に沿った直線状のリブ64が、前記周方向にピッチP2で形成されている。
【0058】
よって、この第4実施形態の場合には、上エンボスロール61と下エンボスロール71との相対位置が前記周方向及び前記回転軸方向のどちらに大きくずれようとも、上エンボスロール61のリブ64と下エンボスロール71のリブ74との挟圧範囲を設計寸法と同寸に維持することができて、その結果として、これらリブ64,74にて形成される接合凹部15の接合強度低下は確実に防止される。
【0059】
図22は、当該第4実施形態に係るエンボスロール61,71で製造された液透過性シート17の上面側及び下面側の平面図である。上エンボスロール61のリブ64と下エンボスロール71のリブ74との交点において挟圧されるので、図22に示すように、液透過性シート17の上面及び下面には、幅方向にピッチP1且つ流れ方向にピッチP2の格子状に接合凹部15が形成される。また、上エンボスロール61と接触する液透過性シート17の上面には、前記回転軸方向に沿ったリブ64が当接するために、当該上面には、図22に示すように幅方向に沿った溝15bが周方向にピッチP2で形成されているが、他方、下エンボスロール71と接触する液透過性シート17の下面については、前記周方向に沿ったリブ74が当接するために、当該下面には、図22に示すように流れ方向に沿った溝15aが幅方向にピッチP1で形成されている。
【0060】
ちなみに、この第4実施形態においては、上エンボスロール61に円環状のリブ64を回転軸方向に亘って一定のピッチP1で形成するとともに、下エンボスロール71に直線状のリブ74を周方向に亘って一定のピッチP2で形成していたが、何らこれに限るものではない。例えば、図23の上下エンボスロール61,71の外周面61a,71aの周方向への展開図に示すように、上エンボスロール61における直線状のリブ64の周方向の位置に応じて、当該リブ64が形成されるピッチP21,P22,…P26を周方向に関して変化させても良いし、また、下エンボスロール71における円環状のリブ74の回転軸方向の位置に応じて、当該リブ74が形成されるピッチP11,P12,P13を回転軸方向に関して変化させても良い。
【0061】
<<第5実施形態>>
図24及び図25は、第5実施形態の凸部の配置パターンの説明図である。図24には上エンボスロール61及び下エンボスロール71の正面図を示し、図25には、上エンボスロール61及び下エンボスロール71の外周面61a,71aを周方向に展開して示している。
【0062】
この第5実施形態にあっては、上下のエンボスロール61,71には、リブではなく、第1実施形態と同様に略直方体の島状の凸部65,73が、回転軸方向に形成ピッチP1で且つ周方向に形成ピッチP2で形成されている。但し、上エンボスロール61の凸部65の頂面65aの長手方向と、下エンボスロール71の凸部73の頂面73aの長手方向とが揃っている点で、第1実施形態と相違する。すなわち、上エンボスロール61の凸部65の頂面65aの長手方向も下エンボスロール71の凸部73の頂面73aの長手方向も、どちらも周方向を向いていて、これらの向きは揃っている。そして、このような第5実施形態では、図25に示すように、上エンボスロール61の凸部65の頂面65aの大きさが下エンボスロール71の凸部73の頂面73aよりも、回転軸方向及び周方向の何れについても小さく形成されることによって、上エンボスロール61と下エンボスロール71との相対位置が回転軸方向及び周方向にずれた際に起こりうる接合凹部15の接合強度低下を防いでいる。
【0063】
図26は、当該第5実施形態に係るエンボスロール61,71で製造された液透過性シート17の上面側及び下面側の平面図である。上エンボスロール61の凸部65と下エンボスロール71の凸部73とで挟圧されるので、図26に示すように、液透過性シート17の上面及び下面には、幅方向にピッチP1且つ流れ方向にピッチP2の格子状に接合凹部15cが形成されている。但し、その接合凹部15cの形状は、頂面65aが小さい方の上エンボスロール61の凸部65の頂面65aと同形の長方形になっている。
【0064】
<<第6実施形態>>
図27及び図28は、第6実施形態の凸部の配置パターンの説明図である。図27には上エンボスロール61及び下エンボスロール71の正面図を示し、図28には、上エンボスロール61及び下エンボスロール71の外周面61a,71aを周方向に展開して示している。
【0065】
この第6実施形態にあっては、上下のエンボスロール61,71には、第1実施形態の凸部と同様に、略直方体の島状の凸部63,73が、回転軸方向に形成ピッチP1で且つ周方向に形成ピッチP2で形成されており、更には、第1実施形態と同様に、上エンボスロール61の凸部63の頂面63aの長手方向と、前記凸部63に対応する下エンボスロール71の凸部73の頂面73aの長手方向とは互いに直交している。
【0066】
但し、この第6実施形態の凸部の配置パターンは、全体として、周方向に隣り合う凸部が、回転軸方向に関して交互に位置してなる千鳥状を呈している。詳しくは、上エンボスロール61の外周面61aには、回転軸方向に沿って形成ピッチP1で凸部63が並んでなる凸部63の列(以下、凸部列と言う)が、周方向に形成ピッチP2で配置されているが、互いに周方向に隣り合う凸部列同士は、回転軸方向に半ピッチ(=P1/2)だけずれて位置しており、互いの凸部列を構成する凸部63は、回転軸方向に関して交互に位置している。そして、これらの各凸部63に対応させて下エンボスロール71の外周面71aにも、同様に、回転軸方向に沿って形成ピッチP1で凸部73が並んでなる凸部列が、互いに周方向に隣り合う凸部列とは、回転軸方向に半ピッチ(=P1/2)だけずれて配置されている。
【0067】
図29は、当該第6実施形態に係るエンボスロール61,71で製造された液透過性シート17の上面側及び下面側の平面図である。上エンボスロール61の凸部63と下エンボスロール71の凸部73とで挟圧されるので、図29に示すように、液透過性シート17の上面及び下面には、全体として、流れ方向に隣り合う接合凹部15が、幅方向に関して交互に位置してなる千鳥状のパターンで形成されている。
【0068】
<<第7実施形態>>
図30及び図31は、第7実施形態の凸部の配置パターンの説明図である。図30には上エンボスロール61及び下エンボスロール71の正面図を示し、図31には、上エンボスロール61及び下エンボスロール71の外周面61a,71aを周方向に展開して示している。また、図32は、当該第7実施形態に係るエンボスロール61,71で製造された液透過性シート17の上面側及び下面側の平面図である。
【0069】
この第7実施形態は、上述の第4実施形態と第2実施形態とを組み合わせたものである。つまり、基本的には、上エンボスロール61には回転軸方向のリブ64が形成され、下エンボスロール71には周方向のリブ74が形成されているが、上エンボスロール61の外周面61aにおける一部の領域R61には、リブ74に代えて、島状の凸部63が設けられている。そして、この島状の凸部63を、前述の第2実施形態の形成ピッチP1×P2よりも間引いて形成することにより、図32に示すように、液透過性シート17における所定範囲R17に対して、接合凹部15の数を前述の第2実施形態の形成ピッチP1×ピッチP2よりも間引いて形成するようにしている。
【0070】
当該一部の領域R61は、図31に示すように、例えば、回転軸方向の中央部であり、周方向には2箇所形成されている。そして、この一部の領域R61においては、島状の凸部63は1つおきに間引かれている。よって、このような第7実施形態に係るエンボスロール61,71によれば、図32に示すように、液透過性シート17の幅方向の中央における流れ方向の所定範囲R17に亘り、周囲よりも接合凹部15の密度の低い領域が形成される。なお、この所定領域R17には、上エンボスロール61のリブ74が無い部分に相当するので、液透過性シート17の上面については、幅方向に沿った溝15bが形成されていない。
【0071】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではなく、以下に示すような変形が可能である。
【0072】
上述の実施形態では、複数枚のシートの一例として、表面シート14及び中間シート16という二枚のシートを例示したが、複数枚であれば、シートの枚数は何らこれに限るものではなく、三枚以上であっても良い。
【0073】
上述の実施形態では、図6に示すように、上下のエンボスロール61,71の間隙の入り側には、これら上下のエンボスロール61,71に近接させて特に別途ロールを設置していなかったが、図33の側面図に示すように、前記間隙の入り側に位置させつつ下エンボスロール71に対向させて押し付けロール81を配置し、これによって、前記間隙の入り側において、表面シート14を下エンボスロール71の外周面71aの凸部73に予め押し付けるようにしても良い。そして、このような構成によれば、下エンボスロール71に押し付けられた表面シート14は、下エンボスロール71において互いに隣り合う凸部73,73同士の間の空間Sに入り込んで、その入り込み量が増えるので、液透過性シート17の嵩高性を一段と改善することができる。
【0074】
なお、押し付けロール81を、上下のエンボスロール61,71の両者に対して設けるか、それとも上又は下のいずれか一方のエンボスロールに対して設けるかについては、製造される液透過性シート17に対する要求品質等に応じて決定される。
【0075】
例えば、単に嵩高性の高い液透過性シート17が希望であれば、上下のエンボスロール61,71の両者に対して設ければ良いが、上述の適用例のように、生理用ナプキンの液透過性シート17の場合には、図33に示すように、表面シート14が当接する下エンボスロール71に対してのみ、押し付けロール81を設けると良い。この理由は、人体の肌側に位置する表面シート14にあっては、凹凸が有ると接触面積が少なくなって肌触り性に優れるために良いのであるが、他方、吸収体12側に位置する中間シート16については、シート面に凹凸が有っても当該シート面は肌に触れないために肌触り性に寄与しないばかりか、逆に、当該シート面に凹凸が有ると吸収体12との接触部が減少してしまい、その結果、表面シート14を通過した液体(経血)の吸収体12へのスムーズな移行がし難くなるからである。
【0076】
また、望ましくは、下エンボスロール71において互いに隣り合う凸部73と凸部73との間の空間S(図33)に対応させて、押し付けロール81の外周面に凸部(図33では不図示)を形成すると良く、そうすれば、前記押し付けロール81の凸部によって、より一層、表面シート14は前記空間Sに入り込み易くなり、もって、液透過性シート17の嵩高性を更に改善することができる。例えば、下エンボスロール71の凸部が図20に示すようなリブ74の場合には、図34の斜視図に示すように、隣り合うリブ74,74同士の間の空間Sたる溝部74tに対応させて、押し付けロール81の外周面81aにリブ84を形成すれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】従来のエンボス加工の様子を示す側面図である。
【図2】同エンボス加工の様子を示す側面図である。
【図3】改善策のエンボス加工の様子を示す側面図である。
【図4】同エンボス加工の問題点の説明用の模式図である。
【図5】図5Aは、吸収性物品1の表面側の平面図であり、図5Bは、図5A中のB−B断面図である。
【図6】液透過性シート17の製造ラインの側面図である。
【図7】接合装置211の正面図である。
【図8】第1実施形態に係る上エンボスロール61及び下エンボスロール71の正面図である。
【図9】上エンボスロール61及び下エンボスロール71の外周面61a,71aを周方向に展開して示す図である。
【図10】図10Aは、上エンボスロール61の凸部63の説明図であり、図10Bは、下エンボスロール71の凸部73の説明図である。
【図11】図11A及び図11Bは、上エンボスロール61の凸部63の頂面63aと下エンボスロール71の凸部73の頂面73aとの間のはみ出し量X1の関係の説明図である。
【図12】接合凹部15の強度低下が防止される理由の説明図である。
【図13】第1実施形態に係るエンボスロール61,71で製造された液透過性シート17の上面側及び下面側の平面図である。
【図14】第2実施形態に係る上エンボスロール61及び下エンボスロール71の正面図である。
【図15】上エンボスロール61及び下エンボスロール71の外周面61a,71aを周方向に展開して示す図である。
【図16】第2実施形態に係るエンボスロール61、71で製造された液透過性シート17の上面側及び下面側の平面図である。
【図17】第3実施形態に係る上エンボスロール61及び下エンボスロール71の正面図である。
【図18】上エンボスロール61及び下エンボスロール71の外周面61a,71aを周方向に展開して示す図である。
【図19】第3実施形態に係るエンボスロール61,71で製造された液透過性シート17の上面側及び下面側の平面図である。
【図20】第4実施形態に係る上エンボスロール61及び下エンボスロール71の正面図である。
【図21】上エンボスロール61及び下エンボスロール71の外周面61a,71aを周方向に展開して示す図である。
【図22】第4実施形態に係るエンボスロール61,71で製造された液透過性シート17の上面側及び下面側の平面図である。
【図23】第4実施形態に係る変形例のエンボスロール61,71の外周面61a,71aを周方向に展開して示す図である。
【図24】第5実施形態に係る上エンボスロール61及び下エンボスロール71の正面図である。
【図25】上エンボスロール61及び下エンボスロール71の外周面61a,71aを周方向に展開して示す図である。
【図26】第5実施形態に係るエンボスロール61,71で製造された液透過性シート17の上面側及び下面側の平面図である。
【図27】第6実施形態に係る上エンボスロール61及び下エンボスロール71の正面図である。
【図28】上エンボスロール61及び下エンボスロール71の外周面61a,71aを周方向に展開して示す図である。
【図29】第6実施形態に係るエンボスロール61,71で製造された液透過性シート17の上面側及び下面側の平面図である。
【図30】第7実施形態に係る上エンボスロール61及び下エンボスロール71の正面図である。
【図31】上エンボスロール61及び下エンボスロール71の外周面61a,71aを周方向に展開して示す図である。
【図32】第7実施形態に係るエンボスロール61,71で製造された液透過性シート17の上面側及び下面側の平面図である。
【図33】その他の実施の形態の説明用の側面図である。
【図34】その他の実施の形態の説明用の斜視図である。
【符号の説明】
【0078】
1 吸収性物品、
12 吸収体、14 表面シート、14r 表面シートロール、
15 接合凹部、15a 溝、15b 溝、15c 接合凹部、
16 中間シート、16r 中間シートロール、17 液透過性シート、
18 裏面シート、18f ウイング部、19 下着固定用接着剤、
20 サイドシート、61 上エンボスロール、61a 外周面、
63 凸部、63a 頂面、64 リブ、65 凸部、65a 頂面、
71 下エンボスロール、71a 外周面、73 凸部、73a 頂面、
74 リブ、74t 溝部、81 押し付けロール、81a 外周面、84 リブ、
201 リール、203 リール、
211 接合装置、213 ハウジング、217 昇降機構、
221 回転駆動機構、223 モータ、225 ピニオンスタンド、
225a 歯車、225b 歯車、227a スピンドル、227b スピンドル、
C61 回転軸、C71 回転軸、C63a 頂面中心、C73a、
P1 処理ポジション、P2 処理ポジション、S 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いの回転軸を平行に揃えつつ外周面を対向させて回転する一対のロールの間隙に、複数枚のシートを通して挟圧することにより前記複数枚のシートを接合して液透過性シートを製造する方法であって、
前記一対のロールのうちの一方のロールの外周面には複数の凸部が形成されている一方、他方のロールの外周面には、前記凸部に対応させて、前記凸部とで前記複数枚のシートを挟圧して接合凹部を形成するための凸部が形成されており、
前記一方のロールの凸部の頂面と、前記凸部に対応する前記他方のロールの凸部の頂面とは、所定方向に関して大きさが異なることを特徴とする液透過性シートの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の液透過性シートの製造方法であって、
前記所定方向は、前記回転軸に沿う方向であり、
前記一方のロールの凸部の頂面は、前記回転軸に沿う方向の両方の側において、前記他方の凸部の頂面よりも外側にはみ出していることを特徴とする液透過性シートの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の液透過性シートの製造方法であって、
前記一方のロールの凸部は、前記回転軸に沿う方向に関する前記複数枚のシートの全幅に亘って連続して延在するリブであることを特徴とする液透過性シートの製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか記載の液透過性シートの製造方法であって、
前記所定方向は、前記ロールの周方向であり、
前記他方のロールの凸部の頂面は、前記ロールの周方向の両方の側において、前記一方の凸部の頂面よりも外側にはみ出していることを特徴とする液透過性シートの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の液透過性シートの製造方法であって、
前記他方のロールの凸部は、前記周方向の全長に亘って連続して延在するリブであることを特徴とする液透過性シートの製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の液透過性シートの製造方法であって、
前記ロールの間隙の入り側には、前記複数枚のシートのうちの少なくとも一枚のシートを前記ロールの凸部に押し付けるための押し付けロールが設けられていることを特徴とする液透過性シートの製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の液透過性シートの製造方法であって、
前記液透過性シートは、人体から排泄される液体を吸収する吸収体を前記人体の肌側から覆うためのシートであり、
前記複数枚のシートは、装着時に前記肌側に位置する表面シートと、前記吸収体側に位置する中間シートとからなり、
前記一対のロールのうちで、前記間隙において前記表面シートと当接するロールに対してのみ、前記押し付けロールが設けられていることを特徴とする液透過性シートの製造方法。
【請求項8】
互いの回転軸を平行に揃えつつ外周面を対向させて回転する一対のロールの間隙に、複数枚のシートを通して挟圧することにより前記複数枚のシートを接合して液透過性シートを製造する装置であって、
前記一対のロールのうちの一方のロールの外周面には複数の凸部が形成されている一方、他方のロールの外周面には、前記凸部に対応させて、前記凸部とで前記複数枚のシートを挟圧して接合凹部を形成するための凸部が形成されており、
前記一方のロールの凸部の頂面と、前記凸部に対応する前記他方のロールの凸部の頂面とは、所定方向に関して大きさが異なることを特徴とする液透過性シートの製造装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図1】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−132631(P2008−132631A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−319364(P2006−319364)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】