説明

混合流体噴射装置

【課題】微小洗浄水粒子を含んだ空気との混合流体を噴射して、塗装表面に付着したカーボン等を含んだ埃を除去できる混合流体噴射装置を提供すること。
【解決手段】混合流体噴射装置10は、流入した空気1と洗剤を含む洗浄水3Aを同じ圧力にする二流体混合タンク11と、二流体混合タンク11から接続する空気通路12と、洗浄水通路13Aと、空気通路12と洗浄水通路13Aとを接続して洗浄水3Aを微小洗浄水粒子に形成するエジェクタ部15と、圧縮空気1と微小洗浄水粒子との混合流体5を高速で噴射する噴射ノズル16とを備えている。エジェクタ部15において空気通路12を狭小の絞り部151を形成することにより、負圧室を構成し、少量の水3を送って洗浄水3Aを微小洗浄水粒子に形成する。微小洗浄水粒子3を含んだ混合流体5を高速で噴射することにより、微小洗浄水粒子3を破壊させて少量の残留汚染物質を塗装表面から除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は混合流体噴射装置に関し、例えば、空気と洗浄水との混合流体を噴射して車体の表面に付着した残留汚染物質を確実に除去できる混合流体噴射装置に関する。この場合、洗浄水とは、洗剤が含まれていない単なる水や純水、水や純水に洗剤が含まれている液体を言う。また、単に「水」「純水」といった場合は、洗剤が含まれていない水や純水を言うものとする。
【背景技術】
【0002】
車体の塗装面に付着した泥やばい煙等の汚れは、高圧水を衝突させることによってほとんど除去することができるものの、塗装面に付着した少量の残留汚染物質は高圧水を衝突させるだけでは、その汚れを完全に除去することはできなかった。この残留汚染物質の多くは、カーボン粒子や酸化ケイ素でできた泥の微小な粒子であることが分析結果により明らかになっている。
【0003】
この少量の残留汚染物質を除去するために、従来では、特許文献1で知られている手作業用清掃具や、ブラシ、布、スポンジ等で拭き取ることによって行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3109888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、自動洗車装置で洗車する場合、手作業用清掃具を使用して手作業で行うことは、人手を要することになって作業性を低下させることになっていた。そのため、洗車時間が長くなるとともに、人件費を要することになっていた。また、ブラシ、布、スポンジ等で拭き取ることは車体に傷をつけることになっていた。
【0006】
また、高圧水を噴き付けてもどうしても汚染物質の微小な残留粒子を除去できない原因は、汚染物質の微小な残留粒子がファンデルワールス力で塗装表面に付着している状態で、高圧水を塗装表面に噴射して塗装表面に衝突したとき、塗装表面上に「水の膜」を発生させることになり、高圧水の水流が「水の膜」の内側に到達することができず、水の膜を破壊することができずに残留粒子を動かすことができないことにある。
【0007】
これを解決するために、従来では、塗装表面に衝突させる高圧水の中に、微小な固形物やプラスチックス粒、氷、でんぷんなどの微小粉、化学物質等を混入させて、塗装表面に衝突させていた。しかし、この方法では、塗装自体をも破壊してしまう可能性があり、「水の膜」だけを破壊することには限度があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、微小な水の粒子を発生させて、塗装表面を破壊せずに「水の膜」だけを破壊できるように構成する混合流体噴射装置を提供することを目的とする。
【0009】
そのため、本発明に係る混合流体噴射装置は、以下のように構成するものである。すなわち、
請求項1記載の発明は、空気と洗浄水との混合流体を高速・高密度で噴射する混合流体噴射装置であって、圧縮された前記空気が流れる空気通路に,加圧された前記洗浄水が流れる洗浄水通路を合流させて、前記洗浄水の微小洗浄水粒子を形成するエジェクタ部を介して、ノズルから、圧縮空気と前記微小洗浄水粒子とが混合された混合流体を噴射することを特徴とするものである。
【0010】
請求項2記載の発明は、空気と水との混合流体を高速・高密度で噴射する混合流体噴射装置であって、前記空気と前記水とをそれぞれ流入して、前記空気と前記水とを同一の圧力に形成する二流体圧力発生装置と、前記二流体圧力発生装置に接続されて一方で大量の圧縮空気を流出する空気通路と、前記二流体圧力発生装置に接続されて他方で少量の加圧水を流出する水通路と、前記空気通路の一部を狭小に形成した絞り部を配設するとともに、前記絞り部に向かって前記加圧水を流入して前記空気通路に合流させることにより、前記加圧水が粒状化して微小水粒子を形成するエジェクタ部と、前記圧縮空気と前記微小水粒子とで混合された混合流体を外部に高速で噴射するノズルと、を備えて構成されていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項2の発明に係るものであって、前記混合流体の割合が、圧縮空気容量:微小水粒子容量=99:1〜94:6の範囲であることを特徴としている。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項2又は3の発明に係るものであって、前記水が、純水であることを特徴としている。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項2,3又は4の発明のいずれかに係るものであって、前記水通路を流れる前記加圧水は、前記エジェクタ部において前記圧縮空気が流れる方向と同方向に流れて合流されることを特徴としている。
【0014】
請求項6記載の発明は、請求項1,2,3,4又は5の発明のいずれかに係るものであって、車体を洗車する洗車装置に装着されて、前記混合流体を前記車体に向かって噴射することを特徴としている。
【0015】
請求項7記載の発明は、請求項2,3,4,5又は6の発明のいずれかに係るものであって、前記混合流体が、空気と、水に洗剤を含んだ液体と、を含んでいることを特徴としている。
【0016】
請求項8記載の発明は、空気と洗浄水との混合流体を高速・高密度で噴射する混合流体噴射装置であって、圧縮された圧縮空気を流通する空気通路と、加圧された加圧洗浄水を流通する洗浄水通路と、前記空気通路の一部を狭小に形成した絞り部を配設するとともに、前記絞り部に向かって前記加圧洗浄水を流入して前記空気通路に合流させることにより、前記加圧洗浄水が粒状化して微小洗浄水粒子を形成するエジェクタ部と、前記圧縮空気と前記微小洗浄水粒子とが混合された混合流体を外部に高速で噴射するノズルと、を備えて構成され、前記混合流体の割合が、圧縮空気容量:微小洗浄水粒子容量=99.9:0.1〜70:30の範囲であることを特徴とするものである。
【0017】
請求項9記載の発明は、請求項8の発明に係るものであって、前記洗浄水が、水、又は水に洗剤を含んだ液体であることを特徴としている。
【0018】
請求項10記載の発明は、請求項9の発明に係るものであって、前記液体に含まれる洗剤が、界面活性剤又はアルカリ剤又はキレート剤であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明によれば、混合流体噴射装置は、空気と洗浄水との混合流体を高速・高密度で噴射するものであって、エジェクタ部で合流された混合流体は、圧縮された微小洗浄粒子を形成することになり、この圧縮された微小洗浄粒子をノズルから噴射するから、被噴射物体が、例えば、車両であれば、車両の塗装面に微小水粒子を含んだ混合流体が衝突することにより、車両の塗装面に付着した少量の残留汚染物質を除去することができる。
【0020】
請求項2の発明によれば、空気と水は同一の圧力に形成される二流体圧力発生装置に流入される。同一の圧力に形成された圧縮空気と加圧水は、それぞれに流体圧力発生装置に接続された空気通路及び水通路で下流側に送られる。水通路で送られた少量の加圧水はエジェクタ部において空気通路で送られた大量の圧縮空気内に合流する。エジェクタ部において空気通路を狭小に形成した絞り部を設けていることから、絞り部により圧縮空気の流れが加速され、ベルヌーイの法則で空気の圧力が下がり負圧が発生する。この負圧部分に少量の加圧水が流れると、加圧水は空気中で粒状に拡散され微小粒子となって空気通路内に流入することになる。これにより圧縮空気と微小水粒子との混合流体が形成されることとなる。この混合流体を高速かつ高密度でノズルから外部の被噴射物体に向かって噴出する。
【0021】
この被噴射物体が、例えば、車両であれば、車両の塗装面に微小水粒子を含んだ混合流体が衝突することになる。この際、微小水粒子が集合した密度の高い部分で塗装表面に衝突すると、塗装表面に一瞬、水の膜が発生するものの、水の体積があまりにも小さいため、水の膜は厚くならない。そのため、直後に微小水粒子が衝突することにより薄い水の膜が破壊され、その繰り返しによって水の膜が断続的に破壊される。そして、水の微小粒子が汚染物質の残留粒子に直接衝突することになり、残留粒子が塗装表面に付着したファンデルワールス力を上回ることになり、残留粒子を除去することができる。これにより、例えば、被噴射物が車両であれば、車両の塗装面に付着した少量の残留汚染物質を除去することができる。
【0022】
請求項3の発明によれば、実験結果において、混合流体の割合が、圧縮空気容量:微小水粒子容量=99:1〜94:6の範囲の場合に、例えば、車両の塗装面に付着した少量の残留汚染物質を効果的に洗い落とすことができることが実証されている。
【0023】
請求項4の発明によれば、水が純水であるから、純水は、水の分子以上の物質が溶け込んでいる状態よりも水の分子同士の鎖状の連続、クラスターが分子レベルでの細かい状態にあり、非常に微小な水の粒子を形成することができる。
【0024】
請求項5の発明によれば、合流部に流入する加圧水を、圧縮空気の流れの方向と同方向に流入させる(例えば、エジェクタ部内にエルボ状のパイプを配設して、水の流入案内をする)ことにより、空気の流れの中に水の微小粒子の流れを作ることができ、水の微小粒子(微小水粒子)を外部に噴射し易くなる。
【0025】
請求項6の発明によれば、混合流体が噴射される被噴射物体が車両であれば、混合噴射装置を洗車装置内に配設して、混合流体を噴射することにより車両に付着した少量の残留汚染物質を除去することができる。
【0026】
請求項7記載の発明によれば、前記混合流体が、空気と、水に洗剤を含んだ液体と、を含んでいるから、混合流体における微小液体粒子の比率を増やすことができる。例えば、液体の比率を増やすことによって、ノズルから噴射する混合液体の拡散を防止しやすくすることになるので、ノズルの噴射口の位置を被噴射物体の表面から遠ざけることができる。
【0027】
請求項8記載の発明によれば、混合流体は、空気と、洗浄水とを混合して形成されるものであって、圧縮された圧縮空気と加圧された加圧洗浄水は、それぞれ空気通路及び洗浄水通路で下流側に送られる。洗浄水通路で送られた少量の加圧洗浄水はエジェクタ部において空気通路で送られた大量の圧縮空気内に合流する。エジェクタ部において空気通路を狭小に形成した絞り部を設けていることから、絞り部により圧縮空気の流れが加速され、ベルヌーイの法則で空気の圧力が下がり負圧が発生する。この負圧部分に少量の加圧洗浄水が流れると、加圧洗浄水は空気中で粒状に拡散され微小粒子となって空気通路内に流入することになる。これにより圧縮空気と微小洗浄水粒子との混合流体が形成されることとなる。この混合流体を高速かつ高密度でノズルから外部の被噴射物体に向かって噴出する。
【0028】
この被噴射物体が、例えば、車両であれば、車両の塗装面に微小洗浄水粒子を含んだ混合流体が衝突することになる。この際、微小洗浄水粒子が集合した密度の高い部分で塗装表面に衝突すると、塗装表面に一瞬、洗浄水の膜が発生するものの、微小洗浄水粒子の体積があまりにも小さいことや、洗剤の表面張力低下効果などにより、洗浄水の膜は厚くならない。そのため、直後に微小洗浄水粒子が衝突することにより薄い洗浄水の膜が破壊され、その繰り返しによって液体の膜が断続的に破壊される。そして、洗浄水の微小粒子が汚染物質の残留粒子に直接衝突することになり、洗剤の洗浄効果に加え、残留粒子が塗装表面に付着したファンデルワールス力を上回ることになり、残留粒子を除去することができる。これにより、例えば、被噴射物が車両であれば、車両の塗装面に付着した少量の残留汚染物質を除去することができる。
【0029】
この際、洗浄水が単なる水の場合、混合流体は空気と単なる水とで混合されたもので形成される。この混合流体においては、空気の比率が大きいと、混合流体がノズルから噴射される時に大気に当たって拡散される力が働くことから、ノズルから離れた地点での洗浄力が低下する傾向がある。そこで、ノズルと被噴射物、つまり車両との距離を短くする必要があった。
【0030】
このため、混合流体が、空気と単なる水で構成するものではなく、空気と、水に洗剤を含んだ液体としての洗浄水と、で構成することによって、混合流体における空気の比率を小さくすることができ、ノズルからの噴射時に拡散し難くなって、ノズルを車両から遠ざけることができる。しかも、空気と洗浄水との混合流体の割合において、圧縮空気容量:微小洗浄水粒子容量=99.9:0.1〜70:30の範囲にすることによって、洗浄水の比率を大きくして混合流体における空気の比率を、小さくすることができるから、ノズルを車両から遠ざけることが可能となる。なお、新たな実験結果によって、圧縮空気容量:微小洗浄水粒子容量を99.9:0.1〜70:30であっても、効果を達成するできたものである。
【0031】
なお、洗浄水は、請求項9記載の発明によれば、水、又は水に洗剤を含んだ液体であってもよい。
【0032】
請求項10の発明によれば、前記液体に含まれる洗剤が、具体的には界面活性剤又はアルカリ剤又はキレート剤であれば、請求項8の効果を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態における混合流体噴射装置を示すフロー図である。
【図2】図1におけるエジェクタ部を示す拡大図である。
【図3】噴射ノズルの別の実施形態を示す図である。
【図4】純水生成装置の原理を示す図である。
【図5】洗車装置における洗浄剤噴射処理工程を示す正面図である。
【図6】同混合流体噴射処理工程の復路を示す正面図である。
【図7】同乾燥処理工程を示す正面図である。
【図8】同最終乾燥工程を示す正面図である。
【図9】ノズルと車体表面との距離を示す説明図である。
【図10】洗剤処理工程を示す正面図である
【図11】純水処理工程を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
次に、本発明の混合流体噴射装置の実施形態を図面に基づいて説明する。第1実施形態としては、図1の噴射ノズル16から噴射される混合流体5は、空気と単なる水、あるいは空気と単なる水から生成された純水で説明する。図1は、混合流体噴射装置10のフロー図を示すものであり、図2は、空気1と純水3の二流体を合流して微小水粒子を発生させるエジェクタ部15を示すものである。
【0035】
図1に示すように、混合流体噴射装置10は、空気1と純水3とを流入して空気1の圧力と純水3の圧力とを同一に形成する二流体圧力発生装置(以下、二流体合流タンクという。)11と、二流体合流タンク11に接続されて、大量の空気(圧縮空気ともいう)1を流す空気通路12と、二流体合流タンク11に接続されて、少量の純水(単に水又は微小水粒子ともいう)3を流す水通路13と、空気通路12と水通路13を接続するとともに純水3の微小粒子である微小水粒子を発生させるエジェクタ部15と、エジェクタ部15に接続された噴射ノズル16とを備えて構成されている。
【0036】
二流体合流タンク11に流入する純水3は、後述の純水発生装置で生成されている。二流体合流タンク11では、圧縮空気1と純水3とを同じ圧力、例えば0.7MPa〜0.8MPaに形成してその圧力内で流出する。
【0037】
エジェクタ部15においては、空気通路12と水通路13はほぼ平行となるように配管され、エジェクタ部15に形成された流入口14に、水通路13から配管されたエルボ131が接続されている。図2に示すように、エジェクタ部15の空気通路12内において、流入口14側から空気通路12の下流側に向かってL字状パイプ17が埋設されている。L字状パイプ17は、空気通路12内において、管の中心が空気通路12の中心と一致した位置に埋設されている。
【0038】
一方、エジェクタ部15は、空気通路12を狭小にした絞り部151を形成している。なお、流入側端部171を流入口14側に配置したL字状パイプ17の流出側端部172は、絞り部151内を通るように配置されている。これによって水通路13内を流れる純水3は、空気通路12内に合流する際に、絞り部151に向かって流れるとともに、圧縮空気1の流れと同方向に流れて合流されることになる。
【0039】
絞り部151を形成することによって、「ベルヌーイの法則」を適応することができる。つまり、絞り部151の形成により空気通路12内を流れる圧縮空気1の流速が加速してその部位を負圧にすることができる。負圧にすることにより、圧縮空気1と同じ方向に流れてきた少量の純水3は粒状に拡散されて微小水粒子となって空気通路12内に流入されることとなる。大量の圧縮空気1と少量の微小水粒子3とは、混合流体5となって下流側に流れる。
【0040】
噴射ノズル16は、混合流体5を、被噴射物体、例えば、車両の車体表面にできるだけ広い範囲で衝突させるために、図2に示すように、1本の噴射ノズル16の先端に幅の広い管状のアタッチメント18を取り付け、直線的に移動させることもできる。また、別の形態では、図3(a)に示すように、2本の噴射ノズル161,161を配置し、2本の噴射ノズル161、161を空気通路12の管軸を中心にモータ162で回転させるように構成する。さらに、この構成に限定するものではなく、別の形態では、図3(b)に示すように複数(例えば5本)の噴射ノズル161を一直線状に並べて、平行に移動させることもできる。
【0041】
純水3は、図4に示すように、逆浸透膜式純水生成装置(以下、逆浸透膜モジュールという。)30によって生成される。この逆浸透膜モジュール30は逆浸透膜法によって純水3を生成する。逆浸透膜法は、図4(a)に示すように、濃度の薄い希薄溶液を充填する第1槽31と、第1槽31と半透膜32を間にして配置されて濃度の濃い濃厚溶液を充填する第2槽33とを有している。半透膜32には水の分子より僅かに大きな孔が形成されている。通常、両溶液が各槽に充填されると、図4(a)のように、溶液は、濃度を平衡となるように第1槽(希薄溶液側)31の水の分子が半透膜32を通って第2槽(濃厚溶液側)33に移動する。これを「浸透」と呼ぶ。そして、図4(b)に示すように濃度が平衡に達したとき、両液間に生じる圧力差を「浸透圧P0」と呼ぶ。
【0042】
これに対して、図4(c)に示すように、第2槽(濃厚溶液側)33に浸透圧P0以上の強制圧力Pをかけることで、第2槽(濃厚溶液側)33の水の分子が第1槽(希薄溶液側)31に移動する。これを「逆浸透圧」と呼ぶ。この逆浸透圧によって,第2槽(濃厚溶液側)33から第1槽(希薄溶液側)31に水の分子のみが移動する。さらに、純水を第1槽31から取り出して加圧タンクに貯留し、加圧タンクの圧力によって、送り出し用減圧弁を介して純水供給口から外部に供給することになる。
【0043】
次に、上記のように構成された混合流体噴射装置10の作用について説明する。空気1と逆浸透膜モジュール30で生成された純水3とは、二流体合流タンク11に流入されて加圧され、同じ圧力(0.7MPa〜0.8MPa)となって流出される。圧縮空気1は空気通路12内を下流側に向かって送られ、加圧された純水3は水通路13内を下流側に送られる。水通路13を通った純水3は、エジェクタ部15で圧縮空気1と合流する。この際、純水3は、エジェクタ部15内でL字状パイプ17内を通ることにより、圧縮空気1の流れと同じ方向に空気通路12内に合流することになる。
【0044】
圧縮空気1はエジェクタ部15において、絞り部151内を突入すると、加速されるとともに圧力が低下する。圧力が低下することによって、前述のように、絞り部151では負圧室が形成されることになって、少量の純水3が送られることになる。少量の純水3は粒状化し微小水粒子となって下流側に送られる。圧縮空気1と微小水粒子3は混合流体5となって、噴射ノズル16から外部に向かって噴射されることとなる。
【0045】
被噴射物体が、例えば、図5〜8に示すように、車両42の車体42Aであれば、噴射された混合流体5は、微小水粒子3が集合した密度の高い部分で車体の塗装表面に衝突する。塗装表面に一瞬、水の膜が発生するものの、水の体積があまりにも小さいため、水の膜は厚くならない。そのため、直後に微小水粒子3が衝突することにより薄い水の膜が破壊され、その繰り返しによって水の膜が断続的に破壊される。そして、微小水粒子3が汚染物質の残留粒子に直接衝突することになり、残留粒子が車体の塗装表面に付着したファンデルワールス力を上回ることになり、残留粒子を除去することができる。これにより、車両の塗装面に付着した少量の残留汚染物質を除去することができる。
【0046】
次に第1実施形態の洗車方法について、図5〜8に基づいて説明する。車両42を洗車装置41に停車させて、門型の洗車装置41を往復移動させて洗車するものである。この洗車方法では、人手を要さない無接触洗車で洗車するものである。
【0047】
無接触洗車を行う実施形態の洗車方法としては、まず、車体42Aに付着した大きなゴミや埃は、洗浄剤を含んだ高圧水43を噴射することによって除去され、塗装表面に付着した少量の残留汚染物質は、微小水粒子3を含んだ高圧の混合流体5を噴射ノズル16で噴射することによって除去される。さらに純水3を生成することによって微小な水の粒子を形成するとともに、水道水に含まれるカルシウム塩やマグネシウム塩等のミネラル分が付着して発生するシミを防止するものである。いずれも移動する洗車装置41から車体42Aに向けて各流体を噴射させることから、人手や回転ブラシ等の洗車具を必要としない。
【0048】
図5は、第1工程として、洗浄剤噴射処理工程M1を示すものであり、走行可能な門型の洗車装置41が、停車している車両42を跨ぐようにして往路Aを移動する。そして移動する間に洗浄剤を含んだ高圧水43を噴射するものである。洗浄剤を含んだ高圧水43は洗車装置41に洗浄剤通路44を介して装着された可動式スプレー45から噴射される。洗浄剤を含んだ高圧水43は、車両42の車体42Aに付着した大きなゴミや埃を除去する。
【0049】
図6は、第2工程として微小水粒子3を含んだ混合流体5を噴射する混合流体噴射処理工程M2を示すものであり、洗車装置41は復路Bを移動することによって、車体42Aに混合流体5を高速で噴き付ける。車両42の上方や側方に配置された噴射ノズル16から噴射された混合流体5は、上述のように、車体42Aの塗装表面に付着した少量の残留汚染物質を除去する。この際、微小水粒子3は純水3であることから、より微小な水粒子を作ると同時に車体42Aに噴き付けた純水3は、水道水のミネラル分が除去されているからシミ等は発生しない。
【0050】
次に、図7に示すように、洗車装置41は、往路Aを移動することによって、車体42Aにエア46を噴き付ける第3工程としての乾燥処理工程M3に移行する。エア46は洗車装置41の上部又は側部に上下移動可能に装着されたエアノズル47から、車体42A全体にわたって噴き付けられる。エア46を噴き付けることによって、車体42Aの表面に付着していた混合流体5の水を吹飛ばす。
【0051】
乾燥処理工程M3を終了して、洗車装置41が最初の位置に戻ると、最後に、図8に示すように、第4工程としての最終乾燥工程M4に移行する。この工程では、車両42が洗車装置41を通過してドライボックス48内に移動する。ドライボックス48内では、収納された車両42全体にわたって図示しない送風機により風を送って乾燥させ、前工程の乾燥処理工程M3で除去されなかった混合流体5の水を、完全に除去することになる。
【0052】
上述のように、実施形態の無接触洗車方法では、微小なゴミや埃を除去するために、微小水粒子3を含んだ混合流体5を車体42Aに衝突させて、車体42Aに付着したゴミや埃を除去し、車体42Aに洗浄液をかけて回転ブラシ等で車体42Aに接触させる作業を削除することができ無接触で行うことができる。また、他の処理工程においても、自動的に洗浄剤やエアを噴射することができることから、全ての処理工程を無接触で行うことができ、完全なる無接触洗車を達成することができる。これによって、車体42Aを傷つける虞がなく、また、短時間での洗車を行うことができる。
【0053】
次に、混合流体が、空気と、水に洗剤を含んだ洗浄水で形成されているものであってもよく、以下のように、第2実施形態で説明する。
【0054】
請求項7に係る発明の効果の欄で説明したように、第1実施形態における洗浄水が洗剤を含まない単なる水の場合、混合流体は空気と単なる水とで混合されたもので形成される。この混合流体においては、空気の比率が大きいから、混合流体がノズルから噴射される時に大気に当たって拡散される力が働くことになる。ノズルから噴射される混合流体が拡散されるとノズルの口を車体42A表面に近づけない限り洗浄力が低下する傾向があった。そこで、噴射ノズル16と車体42Aとの距離Hを短くする必要があった。
【0055】
このため、第2実施形態で説明するように、混合流体が、空気と単なる水で構成する洗浄水との混合流体ではなく、空気と、水に洗剤を含んだ液体である洗浄水で構成することによって、混合流体における洗浄水の比率を多くし空気の比率を小さくすることができる。これによって、図9に示すように、噴射ノズル16からの噴射時に、混合流体5が拡散し難くなって噴射ノズル16の噴射口と車両42の車体42A表面との距離Hを10cm程度遠くするように変更することができる。なお、新たな実験結果によって、圧縮空気容量:微小洗浄水粒子容量が99.9:0.1〜70:30(望ましくは、99:1〜94:6)であっても、効果を達成できたものである。
【0056】
なお、洗浄水は、純水に界面活性剤又はアルカリ剤或いはキレート剤等の洗剤を含んで構成されている。
【0057】
界面活性剤は、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、フッ素系界面活性剤等である。また、アルカリ剤は、苛性ソーダ、炭酸水素ナトリウム、苛性カリ、炭酸ソーダ、メタ珪酸ソーダ、オルソ珪酸ソーダ、セスキ炭酸ソーダ等である。更に、キレート剤は、エチレンジアミン・テトラアセート(EDTA)4酢酸、Lグルタミン酸、アミノカルボン酸等及び塩類など、又はりんご酸、クエン酸、シュウ酸等の有機酸等及び塩類などである。その他として、過炭酸ソーダ、過酸化水素等の酸素系、次亜塩素酸ソーダ等の塩素系漂白剤など、又各成分を活性化するための酵素など、又安定化のためにC1〜3のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、グリコールエーテル類等を添加する場合がある。
【0058】
第2実施形態は、洗浄水3Aを、水(純水)に洗剤を含んだ液体であるものとして説明する。第2実施形態の構成は、第1実施形態における水または純水或いは微小水粒子3を、水または純水に洗剤を含んだ液体としての洗浄水3Aとするものである。また、第1実施形態における混合流体5は、空気1と、水に洗剤を含んだ液体としての洗浄水3Aからなる混合流体5Aとなり、また、第1実施形態の水通路13は、洗浄水通路13Aとなり、洗浄水3A、混合流体5A、洗浄水通路13A以外の部品は第1実施形態と同様である。そして図1〜4に示す構成図及びその説明に関しては第1実施形態と同様とする。
【0059】
また、噴射ノズル16と車体42Aとの間の距離Hの説明を、図9に示すものとして追加するとともに、本件の作用説明において、図10と図11を図6〜7との間の新たな工程として追加する。
【0060】
つまり、次に実施形態の洗車方法について、図6〜11に基づいて以下のように説明する。第2実施形態では、車両42を洗車装置41に停車させて、門型の洗車装置41を往復移動させることにより洗車するものである。この洗車方法では、人手を要さない無接触洗車で洗車するものである。
【0061】
無接触洗車を行う実施形態の洗車方法としては、まず、車体42Aに付着した大きなゴミや埃は、洗浄剤を含んだ高圧水43を噴射することによって除去され、塗装表面に付着した少量の残留汚染物質は、微小水粒子3を含んだ高圧の混合流体5を噴射ノズル16で噴射することによって除去される。さらに純水3を生成することによって微小な水の粒子を形成するとともに、水道水に含まれるカルシウム塩やマグネシウム塩等のミネラル分が付着して発生するシミを防止するものである。いずれも移動する洗車装置41から車体42Aに向けて各流体を噴射させることから、人手や回転ブラシ等の洗車具を必要としない。
【0062】
図5〜6は、第1実施形態と同様であり、図6で示した混合流体噴射処理工程M2の後で、洗剤を流す洗剤処理工程M1、純水処理工程M2を行う。
【0063】
図6は、第2工程として微小水粒子3を含んだ混合流体5を噴射する混合流体噴射処理工程M2を示すものであり、洗車装置41は復路Bを移動することによって、車体42Aに混合流体5を高速で噴き付ける。車両42の上方や側方に配置された噴射ノズル16から噴射された混合流体5は、上述のように、車体42Aの塗装表面に付着した少量の残留汚染物質を除去する。
【0064】
この後、図10に示すように、洗剤処理工程M1として洗車装置41が往路Aを移動して車体42A表面に付着した洗剤を、ノズル49から水3を噴射することによって流し落す。
【0065】
次に、図11に示すように、純水処理工程M2として洗車装置41は復路Bを移動して、車体42A全体にノズル50から純水3をかける。車体42Aに噴き付けた純水3には、水道水のミネラル分が除去されているからシミ等は発生しない。
【0066】
次に、図7に示すように、洗車装置41は、往路Aを移動することによって、車体42Aにエア46を噴き付ける第3工程としての乾燥処理工程M3に移行する。エア46は洗車装置41の上部又は側部に上下移動可能に装着されたエアノズル47から、車体42A全体にわたって噴き付けられる。エア46を噴き付けることによって、車体42Aの表面に付着していた混合流体5の水を吹飛ばす。
【0067】
乾燥処理工程M3を終了して、洗車装置41が最初の位置に戻ると、最後に、図8に示すように、第4工程としての最終乾燥工程M4に移行する。この工程では、車両42が洗車装置41を通過してドライボックス48内に移動する。ドライボックス48内では、収納された車両42全体にわたって図示しない送風機により風を送って乾燥させ、前工程の乾燥処理工程M3で除去されなかった混合流体5の水を、完全に除去することになる。
【0068】
上述のように、実施形態の無接触洗車方法では、微小なゴミや埃を除去するために、微小水粒子3を含んだ混合流体5を車体42Aに衝突させて、車体42Aに付着したゴミや埃を除去し、車体42Aに洗浄液をかけて回転ブラシ等で車体42Aに接触させる作業を削除することができ無接触で行うことができる。また、他の処理工程においても、自動的に洗浄剤やエアを噴射することができることから、全ての処理工程を無接触で行うことができ、完全なる無接触洗車を達成することができる。これによって、車体42Aを傷つける虞がなく、また、短時間での洗車を行うことができる。
【0069】
なお、本発明の混合流体噴射装置では、上述の形態に限るものではなく、例えば、エジェクタ部15においては、水3や洗浄水3Aを圧縮空気の流れの方向に沿って合流できるのであれば、L字状パイプ17を埋設しなくてもよい。
【0070】
また、上述の無接触洗車方法では、微小水粒子3(微小洗浄水粒子3A)を含んだ混合流体5(5A)を噴き付けて洗車できれば、洗車装置41自体は上述の形態に限定するものではない。例えば、各ノズルや噴射ノズル16を洗車装置41のどの場所にどのような状態で設置してもよい。
【0071】
さらに、洗車装置41は、門型に限定しなくてもよく、また、洗車装置41自体が移動せずに車両側が移動するものであってもよい。
【0072】
また、この混合流体噴射装置10を、洗車装置41に装着するものではなく、手で直接車体42Aに向けて噴射してもよく、さらには、車体42A以外の被噴射物体に向けて噴射させてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1、空気(圧縮空気)
3、純水(水)
3A、洗浄水
5(5A)、混合流体
10、混合流体噴射装置
11、二流体合流タンク
12、空気通路
13、水通路
13A、洗浄水通路
15、エジェクタ部
151、絞り部
16、噴射ノズル
17、L字状パイプ
42、車両(被噴射物体)
42A、車体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気と洗浄水との混合流体を高速・高密度で噴射する混合流体噴射装置であって、
圧縮された前記空気が流れる空気通路に,加圧された前記洗浄水が流れる洗浄水通路を合流させて、前記洗浄水の微小洗浄水粒子を形成するエジェクタ部を介して、ノズルから、圧縮空気と前記微小洗浄水粒子とが混合された混合流体を噴射することを特徴とする混合流体噴射装置。
【請求項2】
空気と水との混合流体を高速・高密度で噴射する混合流体噴射装置であって、
前記空気と前記水とをそれぞれ流入して、前記空気と前記水とを同一の圧力に形成する二流体圧力発生装置と、
前記二流体圧力発生装置に接続されて一方で大量の圧縮空気を流出する空気通路と、
前記二流体圧力発生装置に接続されて他方で少量の加圧水を流出する水通路と、
前記空気通路の一部を狭小に形成した絞り部を配設するとともに、前記絞り部に向かって前記加圧水を流入して前記空気通路に合流させることにより、前記加圧水が粒状化して微小水粒子を形成するエジェクタ部と、
前記圧縮空気と前記微小水粒子とが混合された混合流体を外部に高速で噴射するノズルと、
を備えて構成されていることを特徴とする混合流体噴射装置。
【請求項3】
前記混合流体の割合が、圧縮空気容量:微小水粒子容量=99:1〜94:6の範囲であることを特徴とする請求項2記載の混合流体噴射装置。
【請求項4】
前記水が、純水であることを特徴とする請求項2又は3記載の混合流体噴射装置。
【請求項5】
前記水通路に合流する加圧水は、前記エジェクタ部において前記圧縮空気が流れる方向と同方向に流れて合流されることを特徴とする請求項2,3又は4のいずれかに記載の混合流体噴射装置。
【請求項6】
車体を洗車する洗車装置に装着されて、前記混合流体を前記車体に向かって噴射することを特徴とする請求項1,2,3,4又は5のいずれかに記載の混合流体噴射装置。
【請求項7】
前記混合流体が、空気と、水に洗剤を含んだ液体と、を含んでいることを特徴とする請求項2,3,4,5又は6記載の混合流体噴射装置。
【請求項8】
空気と洗浄水との混合流体を高速・高密度で噴射する混合流体噴射装置であって、
圧縮された圧縮空気を流通する空気通路と、
加圧された加圧洗浄水を流通する洗浄水通路と、
前記空気通路の一部を狭小に形成した絞り部を配設するとともに、前記絞り部に向かって前記加圧洗浄水を流入して前記空気通路に合流させることにより、前記加圧洗浄水が粒状化して微小洗浄水粒子を形成するエジェクタ部と、
前記圧縮空気と前記微小洗浄水粒子とが混合された混合流体を外部に高速で噴射するノズルと、
を備えて構成され、
前記混合流体の割合が、圧縮空気容量:微小洗浄水粒子容量=99.9:0.1〜70:30の範囲であることを特徴とする混合流体噴射装置。
【請求項9】
前記洗浄水が、水、又は水に洗剤を含んだ液体であることを特徴とする請求項8記載の混合流体噴射装置。
【請求項10】
前記液体に含まれる洗剤が、界面活性剤又はアルカリ剤又はキレート剤であることを特徴とする請求項9記載の混合流体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−224541(P2011−224541A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286800(P2010−286800)
【出願日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(397016828)アイ・タック技研株式会社 (5)
【出願人】(510089926)株式会社トップウォーターシステムズ (1)
【Fターム(参考)】