説明

減速機、これを備える電動パワーステアリング装置、ならびに減速機の製造方法

【課題】転がり軸受の予圧量を容易に管理することのできる減速機、これを備える電動パワーステアリング装置、および減速機の製造方法を提供する。
【解決手段】減速機22は、ハウジング23に収容されるウォーム軸31と、このウォーム軸31に取り付けられる第1玉軸受33および第2玉軸受34と、各玉軸受33,34に予圧を付与する予圧付与部材35とを備えている。予圧付与部材35の接触部62の先端面62Aがハウジング23の第1接触面53および第1玉軸受33の基端面33Dと接触し、かつ第2玉軸受34の先端面34Dがハウジング23の第2接触面54に接触するとき、各玉軸受33,34の予圧の調整が完了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動機構が取り付けられるハウジングと、駆動機構の出力軸に連結されるとともにハウジングに収容されるシャフトと、このシャフトを回転可能に支持する第1転がり軸受および第2転がり軸受と、第1転がり軸受および第2転がり軸受に予圧を付与する予圧付与部材とを備える減速機、これを備える電動パワーステアリング装置、ならびに減速機の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記減速機としては、例えば特許文献1に記載の電動パワーステアリング装置の減速機が知られている。以下、図7を参照して、従来の減速機の構成について説明する。
減速機のハウジング110には、電動モータ100の出力軸101に連結されるウォーム軸120と、このウォーム軸120を回転可能に支持する転がり軸受130とが収容されている。ハウジング110の開口部111には、ウォーム軸120とウォームホイール140とが設けられている。ウォーム軸120とウォームホイール140とは互いに噛み合わせられている。
【0003】
ハウジング110には、予圧付与部材150が取り付けられている。具体的には、予圧付与部材150の外周面の雄ねじ151がハウジング110の雌ねじ112にねじ込まれることにより予圧付与部材150がハウジング110に固定されている。予圧付与部材150により転がり軸受130の外輪131が押されることにより、同軸受130に予圧が付与されている。
【0004】
また、予圧付与部材150の雄ねじ151には、同部材150の緩みを抑制する固定ナット160がねじ込まれている。固定ナット160の端面は、ハウジング110の端面113に接触している。
【0005】
転がり軸受130の予圧の調整は、次のように行われる。
予め設定された規定量に達するまで予圧付与部材150をねじ込んだ後、ウォーム軸120を回転させてその回転トルクを測定する。そして、測定した回転トルクが所定範囲内のとき、転がり軸受130の予圧の調整が完了した旨判定して調整作業を終了する。一方、測定した回転トルクが所定範囲外のとき、転がり軸受130の予圧の調整が完了していない旨判定し、再び予圧付与部材150を所定量ねじ込んだ後、回転トルクを測定する。そして、測定した回転トルクが所定範囲内のとき、調整作業を終了する。一方、回転トルクが所定範囲外のとき、回転トルクが所定範囲内になるまで予圧付与部材150のねじ込み作業およびウォーム軸120の回転トルクの測定を繰り返し行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002―211418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、シャフトの回転トルクに基づいて転がり軸受の予圧量を管理する方法においては、回転トルクと予圧量との関係を予め把握したうえ、測定した回転トルクを同関係に照らし合わせてそのときどきの予圧量を確認する必要がある。すなわち、転がり軸受の予圧量の管理に手間がかかる。なお、このような問題は、電動パワーステアリング装置の減速機についてその転がり軸受の予圧の調整に限り生じるものではなく、シャフトを転がり軸受により回転可能に支持する減速機であれば同様に生じる。
【0008】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、転がり軸受の予圧量を容易に管理することのできる減速機、これを備える電動パワーステアリング装置、ならびに減速機の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記目的を達成するための手段およびその作用効果について記載する。
(1)請求項1に記載の発明は、駆動機構が取り付けられるハウジングと、このハウジング内に収容されるとともに前記駆動機構の出力軸に連結されるシャフトと、このシャフトを回転可能に支持する第1転がり軸受および第2転がり軸受と、前記第1転がり軸受および前記第2転がり軸受に予圧を付与する予圧付与部材とを備える減速機において、前記シャフトの軸方向において前記駆動機構が配置される側を入力側とし、前記シャフトの軸方向において前記入力側とは反対側を出力側として、前記第1転がり軸受が前記第2転がり軸受よりも前記入力側に設けられていること、前記予圧付与部材の前記出力側の端面が前記ハウジングの第1接触面および前記第1転がり軸受の前記入力側の端面に接触していること、前記第2転がり軸受の前記出力側の端面が前記ハウジングの第2接触面に接触していること、ならびに、前記第1転がり軸受および前記第2転がり軸受の予圧の調整が完了していることを要旨とする。
【0010】
上記発明では、予圧付与部材の出力側の端面がハウジングの第1接触面に接触した状態で第1転がり軸受および前記第2転がり軸受の予圧の調整が完了する構造を採用しているため、減速機を組み立てるにあたり、予圧付与部材が第1接触面に接触したことをもって予圧の調整が完了したことを確認することが可能となる。したがって、転がり軸受の予圧量を容易に管理することができる。
【0011】
(2)請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の減速機において、前記第1転がり軸受の前記入力側の端面および前記ハウジングの第1接触面により形成される平面を複合接触面として、前記予圧付与部材の前記出力側の端面の全体が前記複合接触面に接触していることを要旨とする。
【0012】
(3)請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の減速機において、前記シャフトと一体的に回転する入力ギヤが前記シャフトに設けられていること、前記入力ギヤに噛み合わされる出力ギヤが設けられていること、前記入力ギヤには、前記出力ギヤに噛み合わされることにより同ギヤを回転させることができる歯車形成部と、前記シャフトの軸方向において同歯車形成部に連続して形成されるとともに前記出力ギヤに噛み合わされても同ギヤを回転させることができない切り上げ部とが設けられていること、前記ハウジングにおいて前記第1転がり軸受よりも前記入力側の部分に前記駆動機構のケースが取り付けられていること、前記ケースの前記出力側の端面と前記第1転がり軸受の前記入力側の端面との間に前記予圧付与部材が設けられていること、前記ケースの前記出力側の端面と前記予圧付与部材の前記入力側の端面とが前記軸方向において隙間を介して対向していること、前記出力ギヤが前記歯車形成部に噛み合わされた状態を回転可能状態とし、前記出力ギヤが前記切り上げ部に噛み合わされた状態を回転不能状態とし、前記入力ギヤが前記出力ギヤに対して前記軸方向に移動することにより前記回転可能状態から前記回転不能状態に移行するまでに必要となる前記入力ギヤの移動量を噛合距離とし、前記ケースの出力側の端面と前記予圧付与部材の前記入力側の端面との前記軸方向の距離を対向距離としたとき、前記対向距離が前記噛合距離よりも小さいことを要旨とする。
【0013】
上記発明では、対向距離が噛合距離よりも小さいため、回転可能状態において入力ギヤが出力ギヤに対して軸方向に移動したとき、回転不能状態に移行する前にケースと予圧付与部材とが互いに接触する。これにより、回転不能状態に移行することが妨げられるため、入力ギヤを軸方向に移動させる力が同ギヤに加えられたことに起因して回転不能状態となることを抑制することができる。
【0014】
(4)請求項4に記載の発明は、操舵角を変更するステアリングシャフトと、このステアリングシャフトにトルクを付与する減速機とを備え、前記ステアリングシャフトが前記減速機の出力軸として設けられる電動パワーステアリング装置において、前記減速機として請求項1〜3のいずれか一項に記載の減速機が設けられていることを要旨とする。
【0015】
(5)請求項5に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の減速機の製造方法において、前記第1転がり軸受および前記第2転がり軸受に予圧が付与される前の状態において、前記第1転がり軸受の前記入力側の端面と前記第2転がり軸受の前記出力側の端面との前記軸方向の距離を軸寸法A1とし、前記第1転がり軸受および前記第2転がり軸受に予圧が付与された状態において、前記第1転がり軸受の前記入力側の端面と前記第2転がり軸受の前記出力側の端面との前記軸方向の距離を軸寸法A2とし、前記軸寸法A1と前記軸寸法A2との差を寸法差DAとし、前記第1転がり軸受および前記第2転がり軸受がそれぞれ前記シャフトに組み付けられたアッセンブリを軸受付きシャフトとして、前記軸受付きシャフトを組み立てる工程K1と、前記工程K1の後に前記軸寸法A1および前記軸寸法A2を測定する工程K2と、前記工程K2の後に前記寸法差DAが「0」となるように前記ハウジングの第1接触面および前記ハウジングの第2接触面の少なくとも一方を加工する工程K3と、前記工程K3の後に前記第2転がり軸受の前記出力側の端面が前記第2接触面に接触するように前記軸受付きシャフトを前記ハウジングに組み付ける工程K4と、前記工程K4の後に前記予圧付与部材の前記出力側の端面が前記ハウジングの第1接触面および前記第1転がり軸受の前記入力側の端面に接触するまで前記予圧付与部材を前記ハウジングに圧入する工程K5とを含むことを要旨とする。
【0016】
上記発明では、寸法差DAが「0」となるようにハウジングの第1接触面および第2接触面の少なくとも一方を加工するため、軸受付きシャフトをハウジングに組み付ける工程において、予圧付与部材の出力側の端面をハウジングの第1接触面に接触さえることにより第1転がり軸受および第2転がり軸受の予圧の調整を完了させることができる。
【0017】
(6)請求項6に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の減速機の製造方法において、前記第1転がり軸受および前記第2転がり軸受に予圧が付与される前の状態において、前記第1転がり軸受の前記入力側の端面と前記第2転がり軸受の前記出力側の端面との前記軸方向の距離を軸寸法A1とし、前記第1転がり軸受および前記第2転がり軸受に予圧が付与された状態において、前記第1転がり軸受の前記入力側の端面と前記第2転がり軸受の前記出力側の端面との前記軸方向の距離を軸寸法A2とし、前記軸寸法A1と前記軸寸法A2との差を寸法差DAとし、前記第1転がり軸受および前記第2転がり軸受がそれぞれ前記シャフトに組み付けられたアッセンブリを軸受付きシャフトとして、前記軸受付きシャフトを組み立てる工程L1と、前記工程K1の後に複数の前記アッセンブリの前記軸寸法A1および複数の前記ハウジングの前記軸寸法A2を測定する工程L2と、前記工程L2の後に前記寸法差DAが「0」となる前記軸受付きシャフトおよび前記ハウジングの組み合わせを前記複数の軸受付きシャフトおよび前記複数のハウジングの中から選択する工程L3と、前記工程L3の後に前記第2転がり軸受の前記出力側の端面が前記第2接触面に接触するように前記軸受付きシャフトを前記ハウジングに組み付ける工程L4と、前記工程L4の後に前記予圧付与部材の前記出力側の端面が前記ハウジングの第1接触面および前記第1転がり軸受の前記入力側の端面に接触するまで前記予圧付与部材を前記ハウジングに圧入する工程L5とを含むことを要旨とする。
【0018】
上記発明では、寸法差DAが「0」となるように軸受付きシャフトとハウジングとの組み合わせを選択するため、軸受付きシャフトをハウジングに組み付ける工程において、予圧付与部材の出力側の端面をハウジングの第1接触面に接触させることにより第1転がり軸受および第2転がり軸受の予圧の調整を完了させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、転がり軸受の予圧量を容易に管理することのできる減速機、これを備える電動パワーステアリング装置、ならびに減速機の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の電動パワーステアリング装置を具体化した一実施形態について、同装置の全体構成を示す模式図。
【図2】同実施形態の減速機の断面構造を示す断面図。
【図3】同実施形態の減速機の製造工程を示すフローチャート。
【図4】同実施形態の軸寸法A2を測定する態様を模式的に示す減速機の断面構造を示す断面図。
【図5】同実施形態の減速機のハウジングについて、図2のA−A線の断面構造を示す断面図。
【図6】本発明のその他の実施形態の減速機の断面構造を示す断面図。
【図7】従来の減速機の断面構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1〜図5を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
図1に示されるように、電動パワーステアリング装置1には、ステアリング2の回転を転舵輪3に伝達する操舵角伝達機構10が設けられている。操舵角伝達機構10には、ステアリング2の操作を補助するための力(以下、「アシスト力」)を付与するアクチュエータ20が連結されている。
【0022】
操舵角伝達機構10には、ステアリング2とともに回転するステアリングシャフト11が設けられている。ステアリングシャフト11は、ラックアンドピニオン機構12を介して転舵シャフト13に接続されている。転舵シャフト13は、タイロッド14およびナックル(不図示)を介して転舵輪3に接続されている。
【0023】
アクチュエータ20には、その駆動源となる電動モータ21と、この電動モータ21の回転を減速してステアリングシャフト11に伝達する減速機22とが設けられている。減速機22は、ステアリングシャフト11に連結されている。
【0024】
電動パワーステアリング装置1の動作について説明する。
運転者がステアリング2を回転させたとき、ステアリング2の回転にともないステアリングシャフト11が回転する。このとき、電動モータ21が駆動するとともに減速機22を介してステアリングシャフト11にアシスト力が付与される。ステアリングシャフト11の回転は、ラックアンドピニオン機構12により転舵シャフト13の往復直線運動に変換される。そして転舵シャフト13の往復直線運動により転舵輪3の舵角が変更される。
【0025】
図2を参照して、アクチュエータ20の構成について説明する。
アクチュエータ20のハウジング23には、電動モータ21が取り付けられている。また、ハウジング23には減速機22が収容されている。減速機22には、ウォーム軸31と、このウォーム軸31と噛み合うウォームホイール32とが設けられている。ウォーム軸31は、電動モータ21の出力軸21Aに円筒形状の軸継手21Bを介して連結されている。ウォームホイール32は、ステアリングシャフト11と一体に回転する。
【0026】
以下では、ウォーム軸31の軸線方向に沿う方向を「軸方向」とし、ウォーム軸31の径方向に沿う方向を「径方向」とする。軸方向において、ウォーム軸31を中心として電動モータ21が配置される側に向かう方向を「基端方向」とし、その反対方向を「先端方向」とする。径方向において、ウォーム軸31の回転中心に向かう方向を「内方」とし、ウォーム軸31の回転中心から離れる方向を「外方」とする。また、ウォーム軸31の基端方向の端部を「ウォーム軸31の基端部」とし、ウォーム軸31の先端方向の端部を「ウォーム軸31の先端部」とする。
【0027】
ウォーム軸31の基端部には、第1玉軸受33が取り付けられている。ウォーム軸31の先端部には、第2玉軸受34が取り付けられている。これら玉軸受33,34は、ハウジング23に対してウォーム軸31を回転可能に支持している。
【0028】
各玉軸受33,34は、ウォーム軸31の軸方向の各端部に圧入される内輪33A,34Aと、ハウジング23に挿入される外輪33B,34Bと、内輪33A,34Aおよび外輪33B,34Bの間で自転および公転する転動体33C,34Cとを備えている。
【0029】
以下では、第1玉軸受33の外輪33Bの基端方向の端面を「第1玉軸受33の基端面33D」とする。また、第1玉軸受33の内輪33Aの先端方向の端面を「第1玉軸受33の先端面」とする。また、第2玉軸受34の外輪34Bの先端方向の端面を「第2玉軸受34の先端面34D」とする。また、第2玉軸受34の内輪34Aの基端方向の端面を「第2玉軸受の基端面」とする。
【0030】
ハウジング23において第1玉軸受33よりも基端方向の部位には、各玉軸受33,34に予圧を付与する予圧付与部材35が取り付けられている。予圧付与部材35は、第1玉軸受33の基端面33Dに接触している。これにより、各玉軸受33,34にそれぞれ予圧が付与されている。
【0031】
予圧付与部材35には、円筒部61と、第1玉軸受33の基端面33Dに接触する接触部62と、円筒部61と接触部62とを連結する屈曲部63とが設けられている。接触部62は、屈曲部63の径方向の内方の端部から径方向の内方に向かい延びている。以下では、円筒部61の基端方向の端面を「円筒部61の基端面61A」とし、接触部62の先端方向の端面を「接触部62の先端面62A」とする。
【0032】
ウォーム軸31には、ウォームホイール32との噛み合い部分としてのギヤ部41が設けられている。以下では、ギヤ部41の基端方向の端面を「ギヤ部41の基端面」とし、ギヤ部41の先端方向の端面を「ギヤ部41の先端面」とする。
【0033】
ウォーム軸31の基端部には、ギヤ部41よりも外径が小さい第1取付部42が設けられている。一方、ウォーム軸31の先端部には、ギヤ部41よりも外径が小さい第2取付部43が設けられている。第1取付部42には、第1玉軸受33の内輪33Aが圧入される第1固定部44と、軸継手21Bが固定される第2固定部45とが設けられている。第2取付部43には、第2玉軸受34の内輪34Aが圧入されている。ギヤ部41の基端面には、第1玉軸受33の先端面が接触している。ギヤ部41の先端面には、第2玉軸受34の基端面が接触している。
【0034】
ギヤ部41には、有効歯たけを有する歯車が形成された歯車形成部41Aが設けられている。この歯車形成部41Aの軸方向の両端部には、歯車形成部41Aに連続して形成されるとともに、歯車を成形するためのホブカッター(不図示)が切り上げられた切り上げ部41Bが形成されている。この切り上げ部41Bには、有効歯たけよりも小さい歯車が形成されている。歯車形成部41Aは、ウォームホイール32に噛み合わされることによりウォーム軸31を回転させることができる。切り上げ部は、ウォームホイール32に噛み合わされてもウォーム軸31を回転させることができない。以下では、ウォームホイール32が歯車形成部41Aに噛み合わされた状態を「回転可能状態」とし、ウォームホイール32が切り上げ部41Bに噛み合わされた状態を「回転不能状態」とする。
【0035】
ギヤ部41には、噛み合い有効長T2、先端長さT3および基端長さT4がそれぞれ設定されている。噛み合い有効長T2は、ギヤ部41とウォームホイール32とが噛み合うことが許容される軸方向の長さである。先端長さT3は、噛み合い有効長T2に対応するギヤ部41の部分の先端方向の端部から切り上げ部41Bのうちの先端方向の切り上げ部41Bの基端方向の端部までの長さである。基端長さT4は、噛み合い有効長T2に対応するギヤ部41の部分の基端方向の端部から切り上げ部41Bのうちの基端方向の切り上げ部41Bの先端方向の端部までの長さである。なお、噛み合い有効長T2と先端長さT3と基端長さT4との合計の長さが歯車形成部41Aの軸方向の長さT1となる。
【0036】
軸方向において、予圧付与部材35の円筒部61の基端面61Aとこの基端面61Aと軸方向に対向する電動モータ21のケース21Cの軸方向の先端側の端面(以下、「先端面21D」)との軸方向の距離である対向距離S1は、下記計算式を満たすように設定されている。
【0037】

S1≦(T1−T2)/(T3/(T3+T4))

ここで、上記計算式の右辺は、歯車形成部41Aから切り上げ部41Bのうちの先端方向の切り上げ部41Bまでの軸方向の長さである。すなわち、ウォーム軸31がウォームホイール32に対して軸方向に移動することにより回転可能状態から回転不能状態に移行するまでに必要なるウォーム軸31の移動量である噛合距離である。
【0038】
ハウジング23には、ウォーム軸31および各玉軸受33,34が収容されるウォーム軸収容部51が設けられている。このウォーム軸収容部51には、ウォームホイール32が収容されるウォームホイール収容部52がウォーム軸収容部51と径方向に連続するように設けられている。ウォーム軸収容部51の基端方向の端部には開口部が設けられている。この開口部には電動モータ21が取り付けられている。
【0039】
ウォーム軸収容部51には、予圧付与部材35の接触部62の先端面62Aが軸方向に接触する第1接触面53と、第2玉軸受34の先端面34Dが接触する第2接触面54とが設けられている。接触部62の先端面62Aの全面は、第1玉軸受33の基端面33Dおよび第1接触面53により形成される平面である複合接触面に接触している。
【0040】
ところで、図7に示す従来の減速機では、予圧付与部材150のねじ込みの量によって変化する回転トルクに基づいて転がり軸受130の予圧量を推定している。この場合、上述のように、転がり軸受130の予圧量(予圧荷重)を直接検出することができない。
【0041】
この点に鑑みて、本実施形態では、図2に示されるように、各玉軸受33,34が取り付けられたウォーム軸31において、各玉軸受33,34に予圧が加えられた状態の第1玉軸受33の基端面33Dと第2玉軸受34の先端面34Dとの距離(以下、「軸寸法A2」)を測定する。そして、ハウジング23の第1接触面53と第2接触面54との軸方向の距離(以下、「軸寸法B」)が軸寸法A2と等しくなるように第1接触面53および第2接触面54を切削加工する。すなわち、図2のように減速機が組み立てられた状態では、軸寸法A2と軸寸法Bとが等しくなる。このように本実施形態では、各玉軸受33,34の予圧量を軸寸法A2および軸寸法Bといった寸法によって管理する。ここで、第1接触面53および第2接触面54の加工誤差により軸寸法A2と軸寸法Bとは多少異なることもあるが、その差は無視できる程度に小さい。このため、このような加工誤差があったとしても、「軸寸法A2と軸寸法Bとは等しい」とする。
【0042】
図3〜図5を参照して、減速機22の製造方法について説明する。
図3に示されるように、ステップS11において、軸寸法A2を測定する。
具体的には、図4に示されるように、軸受付きシャフトを構成する各玉軸受33,34が取り付けられたウォーム軸31(以下、単に「ウォーム軸31」)を収容可能な収容部71が設けられた治具70を用意する。収容部71には、第2玉軸受34の先端面34Dに対応した位置に接触面72が形成されている。そして、第2玉軸受34の先端面34Dが接触面72と接触するようにウォーム軸31を治具70に挿入する。この状態において、予圧付与治具73を第1玉軸受33の基端面33Dに接触させる。このとき、予圧付与治具73は予め設定された適切な予圧量に相当する荷重(予圧荷重)で外輪33Bを押す。そして、軸寸法A2を測定する。軸寸法A2は、治具70の接触面72から図中の破線にて示す予圧付与治具73の先端方向への移動が開始される前の基準位置までの軸方向の距離D1を予め測定し、その距離D1から予圧付与治具73が転がり軸受の予圧付与のために移動した距離D2を差分することにより軸寸法A2が算出される。
【0043】
図3に示されるように、ステップS12において、軸寸法Bが軸寸法A2に等しくなるように第1接触面53および第2接触面54を切削加工する。すなわち、切削加工する前の軸寸法BFを予め測定する。そして、軸寸法BFと軸寸法A2との差を算出するとともに、この差が「0」となるように第1接触面53および第2接触面54を切削加工する。具体的には、図5に示されるように、ハウジング23を治具80に載せた後、エンドミル81によって第1接触面53および第2接触面54を切削する。
【0044】
図3に示されるように、ステップS13において、ハウジング23のウォーム軸収容部51にウォーム軸31を収容する。このとき、第2玉軸受34の先端面34Dが第2接触面54と接触するようにする(図4参照)。
【0045】
ステップS14において、ハウジング23に予圧付与部材35を取り付ける。このとき、図2に示されるように、予圧付与部材35の接触部62の先端面62Aが第1接触面53と接触するまで、第1玉軸受33の基端面33Dを押すように予圧付与部材35をハウジング23に対して圧入する。このため、軸寸法A1と軸寸法A2との寸法差DAが「0」となる。これにより、接触部62が第1接触面53に接触したときに各玉軸受33,34に予め設定された予圧量が付与される。
【0046】
本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本実施形態では、予圧付与部材35の接触部62の先端面62Aがハウジング23の第1接触面53に接触した状態で各玉軸受33,34の予圧の調整が完了する。このため、減速機22を組み立てるにあたり、予圧付与部材35が第1接触面53に接触したことをもって各玉軸受33,34の予圧の調整が完了したことを確認することが可能となる。したがって、各玉軸受33,34の予圧量を容易に管理することができる。
【0047】
(2)本実施形態では、予圧付与部材35がハウジング23から外れるような力が加わった場合、予圧付与部材35は電動モータ21のケース21Cに接触することにより予圧付与部材35がハウジング23から外れることを抑制している。
【0048】
また、図7に示す従来の予圧付与部材150には、ハウジング110から予圧付与部材150が外れるのを抑制するため、予圧付与部材150には固定ナット160が取り付けられている。
【0049】
しかし、固定ナット160が設けられるため、部品点数が増大してしまう問題がある。特に電動パワーステアリング装置では、部品点数の増大にともない減速機の重量が増大するため、この装置が搭載される車両の燃費に影響がでてしまう。
【0050】
その点、本実施形態では、予圧付与部材35は電動モータ21のケース21Cにより抜け止めされるため、予圧付与部材35の抜け止めを行うための専用の部材を省略することができる。したがって、従来の減速機と比較して、部品点数を削減することができ、減速機22の重量を低減することができる。
【0051】
(4)本実施形態では、減速機22の製造方法において、軸寸法Bが軸寸法A2に等しくなるように第1接触面53および第2接触面54を切削加工する。このため、予圧付与部材35をハウジング23に取り付けるのみで各玉軸受33,34に適切な予圧を付与することができる。
【0052】
(5)本実施形態では、対向距離S1が噛合距離以下となるように設定される。このため、回転不能状態に移行する前に予圧付与部材35の円筒部61の基端面61Aと電動モータ21のケース21Cの先端面21Dとが互いに接触する。これにより、回転不能状態に移行することが妨げられるため、ウォーム軸31を軸方向に移動させる力がウォーム軸31に加えられたことに起因して回転不能状態となることを抑制することができる。
【0053】
(その他の実施形態)
本発明の実施態様は、上記実施形態の内容に限定されるものではなく、例えば以下の変更が可能である。また、以下の変形例は、上記実施形態についてのみ適用されるものではなく、異なる変形例同士を互いに組み合わせて実施することもできる。
【0054】
・上記実施形態では、減速機22の製造方法において、軸寸法Bと軸寸法A2とを等しくするために第1接触面53および第2接触面54の両方を切削したが、軸寸法Bを軸寸法A2に等しくする方法はこれに限られない。軸寸法Bが軸寸法A2に等しくなるように第1接触面53のみを切削加工することもできる。また同様に、軸寸法Bが軸寸法A2に等しくなるように第2接触面54のみを切削加工することもできる。
【0055】
・また、第1接触面53および第2接触面54の切削加工に代えて、ウォーム軸31のギヤ部41の軸方向の両端面を切削加工することにより軸寸法A2を軸寸法Bに等しくさせることもできる。
【0056】
具体的には、ハウジング23の第1接触面53と第2接触面54との軸方向の距離である軸寸法Bを測定する。そして、各玉軸受33,34が取り付けられたウォーム軸31を治具70の収容部71に収容した後、予圧付与治具73により各玉軸受33,34に予圧を付与した状態での軸寸法A2を測定する。そして、軸寸法A2が軸寸法Bと等しくなるようにギヤ部41の両端面を切削加工する。なお、軸寸法A2を測定するときにウォーム軸31に取り付ける各玉軸受33,34としては実際の製品としての減速機には用いない治具としての玉軸受を用いる。このため、第1玉軸受33の内輪33Aは第1固定部44にすきま嵌めの関係にて挿入される。第2玉軸受34の内輪34Aは第2取付部43にすきま嵌めの関係にて挿入される。第1玉軸受33の内輪33Aがウォーム軸31に対して基端方向に移動することを規制するための移動規制治具が取り付けられている。
【0057】
またこの場合、軸寸法Bが軸寸法A2に等しくなるようにギヤ部41の基端面のみを切削加工することもできる。また同様に、軸寸法Bが軸寸法A2に等しくなるようにギヤ部41の先端面のみを切削加工することもできる。
【0058】
・上記実施形態では、減速機22の製造方法において、軸寸法Bと軸寸法A2とが等しくなるように第1接触面53および第2接触面54を切削したが、軸寸法Bと軸寸法A2とを等しくする方法はこれに限られない。例えば、まず、ハウジング23および各玉軸受33,34が取り付けられたウォーム軸31をそれぞれ多数用意する。次いで、ハウジング23の全品の軸寸法A2、および各玉軸受33,34が取り付けられたウォーム軸31の全品の軸寸法Bをそれぞれ測定する。そして、これら全品の中で軸寸法A2と軸寸法Bとが一致するペアを選出する。そして、ペアとなったハウジング23とウォーム軸31とを組み立てる。このような方法により第1接触面53および第2接触面54の切削加工を省略することもできる。ここで、軸寸法A2と軸寸法Bとは、各玉軸受33,34の予圧量に大きく影響を与えない程度に誤差があってもよい。この場合にも軸寸法A2と軸寸法Bとは等しいとする。
【0059】
・また、軸寸法Bを軸寸法A2よりも予め小さく設定し、かつ第1接触面53および第2接触面54にシム等のスペーサを配置することもできる。この場合、第1接触面53と第2接触面54との軸方向の間の距離にスペーサを加算した合計距離が軸寸法A2に等しくなるようにスペーサの厚さや数を調整する。
【0060】
・上記実施形態では、軸寸法A2と軸寸法Bとを等しくさせることにより、予圧付与部材35が各玉軸受33,34に予め設定された予圧量を付与したが、予圧付与部材35が各玉軸受33,34に予め設定された予圧量を付与する方法はこれに限られない。例えば、以下の方法が考えられる。
【0061】
各玉軸受33,34に予圧が付与されていない状態の第1玉軸受33の基端面33Dと第2玉軸受34の先端面34Dとの軸方向の距離を軸寸法A1として、軸寸法A1と軸寸法A2との寸法差DAが各玉軸受33,34に予め設定された予圧量分の第1玉軸受33の外輪33Bおよび第2玉軸受34の外輪34Bの移動量の合計となる。したがって、上記寸法差DAが「0」となるように予圧付与部材35が第1玉軸受33の基端面33Dを押し付ければよい。
【0062】
具体的には、図6に示されるように、予圧付与部材35には、円筒部61の基端方向の端部から径方向の外方に向かい延びる位置規制部64が設けられる。ハウジング23には、予圧付与部材35がハウジング23に圧入されるとき、位置規制部64と軸方向に接触することにより予圧付与部材35の先端方向への移動を規制する規制端面55が設けられている。そして、規制端面55に位置規制部64が接触したときに軸寸法A1と軸寸法A2との寸法差DAが「0」となるように、規制端面55を切削加工する。また、規制端面55は、切削加工に限られず、ハウジング23の全製品の中から規制端面55に位置規制部64が接触したときに軸寸法A1と軸寸法A2との寸法差DAが「0」となるようなハウジング23を選出することもできる。
【0063】
・上記実施形態において、円筒部61と電動モータ21のケース21Cとの軸方向の距離である対向距離S1に代えて、ウォーム軸31の第2固定部45の基端方向の端面と、電動モータ21の出力軸21Aの先端方向の端面との軸方向の間の距離を対向距離S1に等しくすることもできる。この場合、円筒部61とケース21Cとの軸方向の間の距離は、対向距離S1よりも大きくすることもできる。
【0064】
・上記実施形態において、第2玉軸受34を省略することもできる。
・上記実施形態において、第2玉軸受34に代えて、第2取付部43を外囲する円筒形状のすべり軸受を用いることもできる。また、第2玉軸受34に代えて、第2取付部43の先端方向の端面に対向するウォーム軸収容部51の面により回転可能に支持するピボット軸受を用いることもできる。
【0065】
・上記実施形態において、予圧付与部材35を図7に示す従来の予圧付与部材150に変更することもできる。この場合、ハウジング23には、予圧付与部材150の雄ねじ151と噛み合う雌ねじ(図7の雌ねじ112と同様)が形成される。そして、予圧付与部材35をねじ込むことにより、第1玉軸受33の基端面33Dを押すとともに第1接触面53に接触させる。そして、予圧付与部材35のねじ緩みを抑制するための固定ナット(図7の固定ナット160と同様)を取り付ける。
【0066】
・上記実施形態において、第1玉軸受33および第2玉軸受34に代えて、ころ軸受等の他の転がり軸受を用いることもできる。
・上記実施形態では、電動パワーステアリング装置1の減速機22に対して本発明を適用したが、電動パワーステアリング装置1の減速機22以外の減速機、例えばパワーウィンドウ駆動用のギヤユニットの減速機に本発明を適用することもできる。また、ウォーム軸31およびウォームホイール32を用いた減速機に限られず、平歯車やはすば歯車等の他の歯車を用いた減速機に本発明を適用することもできる。
【符号の説明】
【0067】
1…電動パワーステアリング装置、2…ステアリング、3…転舵輪、10…操舵角伝達機構、11…ステアリングシャフト(減速機の出力軸)、12…ラックアンドピニオン機構、13…転舵シャフト、14…タイロッド、20…アクチュエータ、21…電動モータ(駆動機構)、21A…出力軸、21B…軸継手、21C…ケース、21D…先端面、22…減速機、23…ハウジング、31…ウォーム軸(シャフト)、32…ウォームホイール(出力ギヤ)、33…第1玉軸受(第1転がり軸受)、33A…内輪、33B…外輪、33C…転動体、33D…基端面、34…第2玉軸受(第2転がり軸受)、34A…内輪、34B…外輪、34C…転動体、34D…先端面、35…予圧付与部材、41…ギヤ部(入力ギヤ)、41A…歯車形成部、41B…切り上げ部、42…第1取付部、43…第2取付部、44…第1固定部、45…第2固定部、51…ウォーム軸収容部、52…ウォームホイール収容部、53…第1接触面、54…第2接触面、55…規制端面、61…円筒部、61A…基端面、62…接触部、62A…先端面、63…屈曲部、64…位置規制部、70…治具、71…収容部、72…接触面、73…予圧付与治具、80…治具、81…エンドミル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動機構が取り付けられるハウジングと、このハウジング内に収容されるとともに前記駆動機構の出力軸に連結されるシャフトと、このシャフトを回転可能に支持する第1転がり軸受および第2転がり軸受と、前記第1転がり軸受および前記第2転がり軸受に予圧を付与する予圧付与部材とを備える減速機において、
前記シャフトの軸方向において前記駆動機構が配置される側を入力側とし、前記シャフトの軸方向において前記入力側とは反対側を出力側として、
前記第1転がり軸受が前記第2転がり軸受よりも前記入力側に設けられていること、
前記予圧付与部材の前記出力側の端面が前記ハウジングの第1接触面および前記第1転がり軸受の前記入力側の端面に接触していること、
前記第2転がり軸受の前記出力側の端面が前記ハウジングの第2接触面に接触していること、
ならびに、前記第1転がり軸受および前記第2転がり軸受の予圧の調整が完了していること
を特徴とする減速機。
【請求項2】
請求項1に記載の減速機において、
前記第1転がり軸受の前記入力側の端面および前記ハウジングの第1接触面により形成される平面を複合接触面として、前記予圧付与部材の前記出力側の端面の全体が前記複合接触面に接触していること
を特徴とする減速機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の減速機において、
前記シャフトと一体的に回転する入力ギヤが前記シャフトに設けられていること、
前記入力ギヤに噛み合わされる出力ギヤが設けられていること、
前記入力ギヤには、前記出力ギヤに噛み合わされることにより同ギヤを回転させることができる歯車形成部と、前記シャフトの軸方向において同歯車形成部に連続して形成されるとともに前記出力ギヤに噛み合わされても同ギヤを回転させることができない切り上げ部とが設けられていること、
前記ハウジングにおいて前記第1転がり軸受よりも前記入力側の部分に前記駆動機構のケースが取り付けられていること、
前記ケースの前記出力側の端面と前記第1転がり軸受の前記入力側の端面との間に前記予圧付与部材が設けられていること、
前記ケースの前記出力側の端面と前記予圧付与部材の前記入力側の端面とが前記軸方向において隙間を介して対向していること、
前記出力ギヤが前記歯車形成部に噛み合わされた状態を回転可能状態とし、前記出力ギヤが前記切り上げ部に噛み合わされた状態を回転不能状態とし、前記入力ギヤが前記出力ギヤに対して前記軸方向に移動することにより前記回転可能状態から前記回転不能状態に移行するまでに必要となる前記入力ギヤの移動量を噛合距離とし、前記ケースの出力側の端面と前記予圧付与部材の前記入力側の端面との前記軸方向の距離を対向距離としたとき、前記対向距離が前記噛合距離よりも小さいこと
を特徴とする減速機。
【請求項4】
操舵角を変更するステアリングシャフトと、このステアリングシャフトにトルクを付与する減速機とを備え、前記ステアリングシャフトが前記減速機の出力軸として設けられる電動パワーステアリング装置において、
前記減速機として請求項1〜3のいずれか一項に記載の減速機が設けられていること
を特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の減速機の製造方法において、
前記第1転がり軸受および前記第2転がり軸受に予圧が付与される前の状態において、前記第1転がり軸受の前記入力側の端面と前記第2転がり軸受の前記出力側の端面との前記軸方向の距離を軸寸法A1とし、前記第1転がり軸受および前記第2転がり軸受に予圧が付与された状態において、前記第1転がり軸受の前記入力側の端面と前記第2転がり軸受の前記出力側の端面との前記軸方向の距離を軸寸法A2とし、前記軸寸法A1と前記軸寸法A2との差を寸法差DAとし、前記第1転がり軸受および前記第2転がり軸受がそれぞれ前記シャフトに組み付けられたアッセンブリを軸受付きシャフトとして、
前記軸受付きシャフトを組み立てる工程K1と、
前記工程K1の後に前記軸寸法A1および前記軸寸法A2を測定する工程K2と、
前記工程K2の後に前記寸法差DAが「0」となるように前記ハウジングの第1接触面および前記ハウジングの第2接触面の少なくとも一方を加工する工程K3と、
前記工程K3の後に前記第2転がり軸受の前記出力側の端面が前記第2接触面に接触するように前記軸受付きシャフトを前記ハウジングに組み付ける工程K4と、
前記工程K4の後に前記予圧付与部材の前記出力側の端面が前記ハウジングの第1接触面および前記第1転がり軸受の前記入力側の端面に接触するまで前記予圧付与部材を前記ハウジングに圧入する工程K5と
を含むことを特徴とする減速機の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の減速機の製造方法において、
前記第1転がり軸受および前記第2転がり軸受に予圧が付与される前の状態において、前記第1転がり軸受の前記入力側の端面と前記第2転がり軸受の前記出力側の端面との前記軸方向の距離を軸寸法A1とし、前記第1転がり軸受および前記第2転がり軸受に予圧が付与された状態において、前記第1転がり軸受の前記入力側の端面と前記第2転がり軸受の前記出力側の端面との前記軸方向の距離を軸寸法A2とし、前記軸寸法A1と前記軸寸法A2との差を寸法差DAとし、前記第1転がり軸受および前記第2転がり軸受がそれぞれ前記シャフトに組み付けられたアッセンブリを軸受付きシャフトとして、
前記軸受付きシャフトを組み立てる工程L1と、
前記工程K1の後に複数の前記アッセンブリの前記軸寸法A1および複数の前記ハウジングの前記軸寸法A2を測定する工程L2と、
前記工程L2の後に前記寸法差DAが「0」となる前記軸受付きシャフトおよび前記ハウジングの組み合わせを前記複数の軸受付きシャフトおよび前記複数のハウジングの中から選択する工程L3と、
前記工程L3の後に前記第2転がり軸受の前記出力側の端面が前記第2接触面に接触するように前記軸受付きシャフトを前記ハウジングに組み付ける工程L4と、
前記工程L4の後に前記予圧付与部材の前記出力側の端面が前記ハウジングの第1接触面および前記第1転がり軸受の前記入力側の端面に接触するまで前記予圧付与部材を前記ハウジングに圧入する工程L5と
を含むことを特徴とする減速機の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−117649(P2012−117649A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270526(P2010−270526)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】