説明

温度測定方法、温度測定装置、温度制御方法、温度制御装置、補正方法、及び補正装置

【課題】被測定物の温度分布が異なる場合であっても、被測定物の温度を正確に測定することができる温度測定方法を提供する。
【解決手段】被測定物aの物理量を測定する際に、被測定物aの温度を測定する温度測定方法である。外部気流流入防止手段10にて、被測定物aの物理量測定部位を外部からの気流を遮断する気流流入防止雰囲気に形成し、その雰囲気中で被測定物aの温度又は被測定物aの近傍の温度を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に紙、シート、フィルム等のウェブ又は板状の被測定物及び被測定物付近の雰囲気の温度測定を行う温度測定方法、及びそれを用いた装置、被測定物の温度を制御する温度制御方法、及びそれを用いた装置、被測定物の物理量を補正する補正方法、及びそれを用いた装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、走行移動中又は停止中のフィルムの厚みを測定する装置がある(特許文献1)。特許文献1に記載の装置は、図16に示すように、本体フレーム100と、シート厚み計測センサ102と、計測ヘッド103と、移動機構104とを備えている。aは被計測物としてのシートを示している。
【0003】
本体フレーム100は、シートaを通過させるべき枠状をなしている。シート厚み計測センサ102は、電磁波や放射線や粒子線を出射するものの他、エア式、静電容量式、超音波式等の非接触式のもの、又は接触式のものを使用するものであって、特許文献1ではエア式のものを示している。このシート厚み計測センサ102は、シートaの上下に対向して設置されるものである。シート厚み計測センサ102は、計測ヘッド103の先端にシートaに向けてエアシリンダ等の接近離隔手段(図示省略)を介して接近離隔可能に支持されている。移動機構104は、計測ヘッド103をシートaの通過方向に直交する幅方向に移動させるためのものである。この移動機構104は、シートaの通過位置に対して、本体フレーム100の上下に対向して設置してある。
【0004】
このような厚み測定装置において、例えばX線を出射してシートaの厚みを計測する場合、シート厚み計測センサ102は、シートaの上下に対向して配置されるX線発生部とX線検出部にて構成される。すなわち、X線発生部から供給されたX線を、シートaの下方から厚み方向に向かって出射し、出射したX線がX線検出部に供給される。そして、X線検出器に供給されたX線の量を計測することにより、シートaの厚みを計測する。
【特許文献1】特開平9−159438号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記のように、X線等の電磁波を出射する装置を用いてシートの厚みを測定すると、実測した厚みのプロファイル(例えば、40μm付近)は実際の厚みのプロファイル(例えば、44μm)よりも薄く表れる。これは、シート厚み計測センサは、シートの体積、及びその上下の空気層を測定することに起因している。すなわち、被測定物であるシートは一般的に、測定器の配置されている雰囲気温度より高い温度を有しているため、シートとシート厚み計測センサとの間の温度が高くなる傾向がある。このように、温度が高いと空気層の密度が薄くなり、シート厚み計測センサからの出射物(例えば、X線、β線、γ線)の減衰量(変化量)が減少することになる。このため、厚みのプロファイルが実際のプロファイルと異なる。
【0006】
このような装置においては、シート厚み計測センサの測定エリア(X線の出射範囲のうち、X線検出部にて検出可能なX線の出射範囲)又はその近傍の実際の温度が正確に測定できれば、シート厚み計測センサからの出射物の減衰量を正確に予測することができて、実測したシートの厚みを補正することができる。すなわち、測定する物理量(この場合、シートの厚み)が0となるシートの無い参照場所の温度を測定し、次に、シートを測定する計測領域で計測領域の温度を測定しながら、厚み計測センサを用いてシートの厚みを測定する。そして、参照場所と計測領域との温度差に基づいて、計測領域雰囲気にてシート厚み計測センサから出射される出射物の減衰量を求めることができる。これにより、その減衰量に基づいて、実測した物理量と実際の物理量とのずれ量が求まり、ずれ量を実測した物理量から加算又は減算して補正することにより実際の物理量を求めることができる。このように、計測領域において、正確な温度プロファイルを得ることができれば、実測した厚みを正確に補正することができ、実際の厚みにほぼ等しい厚みプロファイルを得ることができる。
【0007】
従来においては、シート厚み計測センサの測定部の温度を検出するために、温度センサを測定部から離れた位置に設置していた。この場合、温度センサは、シートが移動することにより発生する気流や、外部環境により発生する気流の影響を受けて、正確な温度測定が困難であった。また、温度センサは、測定部内又は近傍に配置されていないため、測定部内の温度を正確に測定できなかった。さらに、シートの温度分布は異なっているため、温度分布に応じて補正を行うことが必要であり、シートの温度分布が一定であることを前提とすると正確に厚みを測定することができない。
【0008】
また、放射温度計を用いた場合は、他の熱源からシートを透過して温度計に到達した出射物の影響を受けて測定誤差を生じることがある。加えて、計測ヘッドのトラバース速度又はシートのライン速度が速くなるに従って、熱容量の小さい高応答な熱電対が必要となるが、熱電対が外乱の影響を受けやすくなるため、適用することができなかった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みて、被測定物の温度が位置により異なる場合であっても、被測定物の温度を正確に測定することができる温度測定方法及び温度測定装置を提供する。また、被測定物の温度分布に応じた物理量の誤差補正が可能となる補正方法及び補正装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の温度測定方法は、測定物の物理量を測定する際に、この被測定物の温度を測定する温度測定方法であって、外部気流流入防止手段にて、被測定物の物理量の測定エリアを外部からの気流を遮断する気流流入防止雰囲気に形成し、その雰囲気中で被測定物の温度又は被測定物の近傍の温度を測定するものである。
【0011】
本発明の温度測定方法は、外部気流流入防止手段にて被測定物から発生する気流や、外部環境により発生する気流を遮断することができ、気流流入防止雰囲気を形成することにより、この雰囲気の内部は外側の気流等の外乱の影響を受けることがない。これにより、この気流流入防止雰囲気内で温度を測定すると、外側の気流等の外乱の影響を受けることなく、温度測定を行うことができる。ここで、測定エリアとは、非接触式で測定する場合には、ある時点において物理量の測定対象箇所となっている被測定物の一部の箇所、及びその近傍をいう。つまり、出射物の出射範囲のうち、検出可能な出射物の出射範囲である。一方、物理量を接触式で測定する場合には、ある時点において物理量の測定対象箇所となっている被測定物の一部の箇所をいう。
【0012】
本発明の温度制御方法は、被測定物を加熱又は冷却して加工を行う際に、この被測定物の温度を制御する温度制御方法であって、物理量測定手段にて加工後の被測定物の物理量を測定するとともに、前記本発明の温度測定方法にて被測定物の気流流入防止雰囲気での温度を測定した後、加工後の被測定物の物理量と被測定物の気流流入防止雰囲気での温度との相関関係を検出し、この相関関係に基づいて、予め設定した物理量の理想値が得られるように被測定物の温度を制御するものである。
【0013】
本発明の温度制御方法は、加熱又は冷却して加工が行われる被測定物であっても、気流流入防止雰囲気で被測定物の温度を測定することができるため、正確に温度測定ができる。これにより、被測定物の気流流入防止雰囲気での温度と加工後の被測定物の物理量との相関関係を検出することができ、この相関関係に基づいて被測定物の温度を制御すると、所望の物理量を得ることができる。
【0014】
本発明の補正方法は、被測定物の物理量を補正する補正方法であって、被測定物の無い参照場所の温度を測定し、その後、物理量測定手段にて被測定物の物理量を測定するとともに、前記本発明の温度測定方法にて被測定物の物理量を測定する計測領域内において気流流入防止雰囲気での被測定物の温度を測定した後、参照場所の温度と計測領域内で測定した温度との温度差を算出し、前記温度差に基づいて物理量測定手段の変化量を計算し、この変化量から物理量測定手段にて実測した被測定物の物理量のずれ量を換算し、実測した被測定物の物理量に対して前記ずれ量を加算又は減算して、被測定物の物理量を補正するものである。
【0015】
本発明の補正方法は、計測領域内において気流流入防止雰囲気で温度を測定することができるため、参照場所での被測定物の温度と、実測した被測定物の温度との温度差を正確に測定することができる。これにより、この温度差に起因する物理量のずれ量を補正することができる。すなわち、温度差により、計測領域雰囲気において物理量測定手段から出射される出射物の変化量を正確に求めることができるため、変化量に基づいて、実測した物理量と実際の物理量とのずれ量が求まり、ずれ量を実測した物理量から加算又は減算して実際の物理量を求めることができる。ここで、測定領域とは、被測定物の物理量の測定対象となる全領域をいい、測定エリアよりも広い領域を意味している。また、変化量とは、出射物の減衰量等をいう。
【0016】
本発明の温度測定装置は、物理量測定手段にて被測定物の物理量を測定する際に、この被測定物の温度を測定する温度測定装置であって、被測定物の物理量の測定エリアに、外部からの気流を遮断して気流流入防止雰囲気を形成する外部気流流入防止手段と、その雰囲気中で被測定物の温度又は被測定物の近傍の温度を測定する温度センサとを設けたものである。
【0017】
前記外部気流流入防止手段は、被測定物へのエアの流出にてエアーカーテンを形成して気流流入防止雰囲気となるエアーカーテン部を形成することができる。
【0018】
前記物理量測定手段は電磁波又は放射線又は粒子線を被測定物に出射し、被測定物を透過した電磁波又は放射線又は粒子線を検出するものであって、その物理量測定手段から出射される電磁波又は放射線又は粒子線の出射範囲内にて温度を測定したり、その物理量測定手段から出射される電磁波又は放射線又は粒子線の出射範囲外にて温度を測定したりすることができる。また、前記物理量測定手段は静電容量式、エア式、超音波式、接触式から選択することもできる。
【0019】
前記物理量測定手段から出射される電磁波又は放射線又は粒子線は、α線、β線、γ線、X線、中性子線、可視光線、紫外線、赤外線、レーザから選択されるものとすることができる。
【0020】
前記被測定物は長手方向に走行するものであって、被測定物の走行速度よりも、流体の被測定物の到達部位における速度を大とすることができる。これにより、外気が気流流入防止雰囲気内に侵入するのを防止することができる。
【0021】
気流流入防止雰囲気に、外気の温度、湿度に影響を受けない環境を作る温度調整用気体及び/又は湿度調整用気体を噴射する噴射ノズルを設けることができる。
【0022】
前記物理量は、被測定物の厚み寸法、長さ寸法、質量、密度、坪量、電流、電荷、電圧、電位差、力、エネルギー、速度、磁性、光学的特性から選択することができる。
【0023】
本発明の温度制御装置は、被測定物を加熱又は冷却して加工を行う際に、この被測定物の温度を制御する温度制御装置であって、加工後の被測定物の物理量を測定する物理量測定手段と、被測定物の気流流入防止雰囲気での温度を測定する前記請求項4〜請求項12に記載の温度測定装置と、加工後の被測定物の物理量と被測定物の気流流入防止雰囲気での温度との相関関係を検出する演算手段と、この相関関係に基づいて、予め設定した物理量の理想値が得られるように被測定物の温度を制御する調整手段を設けたものである。
【0024】
本発明の補正装置は、物理量測定手段にて測定される被測定物の物理量を補正する補正装置であって、被測定物の無い参照場所の温度、及び被測定物の物理量を測定する計測領域内での気流流入防止雰囲気の温度を測定する前記本発明の温度測定装置と、参照場所にて測定した温度と計測領域内にて測定した温度との温度差を算出し、前記温度差に基づいて物理量測定手段から出射される出射物の変化量を算出し、この変化量から被測定物の物理量と、実測した被測定物の物理量とのずれ量を換算し、実測した被測定物の物理量から前記ずれ量を加算又は減算して、被測定物の物理量を補正して被測定物の物理量を計測する演算手段とを設けたものである。
【0025】
物理量測定手段は、被測定物の幅方向及びそれに直交する方向にトラバースしつつ、被測定物の物理量を測定するものとできる。
【0026】
前記被測定物は長手方向に走行するものであって、物理量測定手段のトラバース速度と被測定物の走行速度とのベクトルの和の速度よりも、流体の被測定物の到達部位における速度を大とすることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の温度測定方法及び温度測定装置では、気流流入防止雰囲気内で温度を測定しているので、外側の気流等の外乱の影響を受けることなく、被測定物の温度とほぼ同じ雰囲気温度を高応答に正確に測定することができる。これにより、被測定物の温度が一律に同じ温度ではなく、位置によってその分布が異なる場合であっても、高応答かつ正確な温度測定が可能となる。
【0028】
外部気流流入防止手段が、被測定物へのエアの流出にてエアーカーテンを形成するものでは、確実に気流流入防止雰囲気を形成することができる。
【0029】
被測定物の物理量の測定に電磁波又は放射線又は粒子線を被測定物に出射する物理量測定手段を用い、その物理量測定手段から出射される電磁波又は放射線又は粒子線の出射範囲内にて温度を測定すると、測定エリアの温度を正確に測定することができる。また、その物理量測定手段から出射される電磁波又は放射線又は粒子線の出射範囲外にて温度を測定すると、温度センサが出射する電磁波又は放射線又は粒子線を遮るのを防止することができて、正確に物理量を測定することができる。
【0030】
前記物理量測定手段から出射される電磁波は、γ線、X線、可視光線、紫外線、赤外線、レーザであってもよく、また、α線やβ線等の放射線であってもよい。さらには、中性子線等の粒子線であってもよい。被測定物の物理量の測定に静電容量式、エア式、超音波式、接触式から選択したりすることができ、種々の形式のものに適用することができて汎用性に優れたものとなる。
【0031】
被測定物の走行速度よりも、流体の被測定物の到達部位における速度を大とすると、外気が気流流入防止雰囲気内に侵入するのを防止することができ、安定した状態の気流流入防止雰囲気を形成することができる。
【0032】
温度調整用気体及び/又は湿度調整用気体を噴射するものでは、気流流入防止雰囲気内において、外気の温度、湿度に影響を受けない環境を作ることができるため、高精度の測定を可能とすることができる。
【0033】
前記物理量は、被測定物の厚み寸法とすることができる。これにより、被測定物と物理量測定手段との間に空気または他の気体が存在する厚み計や、シート・フィルム製造工程中の温度分布測定を行うことができる。その他、長さ寸法、質量、密度、坪量、電流、電荷、電圧、電位差、力、エネルギー、速度、磁性、光学的特性とすることにより、厚み計以外の種々の装置に適用することができ、汎用性に優れたものとなる。
【0034】
本発明の温度制御方法及び温度制御装置では、加熱又は冷却して加工が行われる被測定物であっても、被測定物の温度を正確に測定することができるため、被測定物の温度と物理量との相関関係を得ることができ、この相関関係に基づいて物理量を高精度に制御することができる。従って、被測定物の温度が一律に同じ温度ではなく、位置によってその分布が異なる場合であっても、高応答かつ正確な温度測定が可能となり、正確に被測定物の物理量を測定することができる。
【0035】
本発明の補正方法及び補正装置では、被測定物の物理量を測定する計測領域内での温度を正確に測定することができるため、この温度差に起因する物理量のずれ量を補正することができる。従って、被測定物の温度が一律に同じ温度ではなく、位置によってその分布が異なる場合であっても、高応答かつ正確な温度測定が可能となり、正確に被測定物の物理量を測定することができる。
【0036】
物理量測定手段を、被測定物の幅方向及びそれに直交する方向にトラバースしつつ、被測定物の物理量を測定するものとすると、被測定物の厚みを測定するのに最適となる。
【0037】
この場合、物理量測定手段のトラバース速度と被測定物の走行速度とのベクトルの和の速度よりも、流体の被測定物の到達部位における速度を大とすれば、被測定物が長手方向に走行し、かつ、物理量測定手段がトラバースする場合であっても、外気が気流流入防止雰囲気内に侵入するのを防止することができる。このため、安定した状態の気流流入防止雰囲気を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図15に基づいて説明する。
【0039】
本発明の第1実施形態の温度測定装置は、走行移動中又は停止中の紙・シート・フィルム等のウェブ又は板状の被測定物の温度を測定するものである。また、補正装置は、実測した被測定物の物理量を補正するものである。図1は、物理量測定装置を示し、被測定物の温度を測定する温度測定装置1a、1bと、被測定物の物理量を測定する物理量測定手段2a、2bと、移動機構4a、4bとを備えている。本実施形態では、被測定物はその長手方向に所定の速度で走行しているシートaであり、物理量はシートaの厚みである。そして、シートaの無い参照場所C(厚み計測領域W外)の温度と、シートaの厚みを測定する厚み計測領域Wの温度とを測定し、この温度差に基づいて厚み計測領域Wで実測した厚みを補正するものである。ここで、厚み計測領域Wとは、シートaの厚みの測定対象となる全領域をいう。
【0040】
物理量測定装置は、シートaを測定する厚み計測領域Wと、シートが無い参照場所Cとを有している。参照場所Cには、図2に示すように、中央に開口部16を有する環状の整流板14が設けられている。これにより、参照場所Cにおいても、厚み計測領域Wとほぼ同一の温度測定条件とすることができる。
【0041】
物理量測定手段2(図1)は、シートaの厚みを測定するシート厚み計測センサである。シート厚み計測センサには、非接触式のものと接触式のものとに大別される。非接触式のものとしては、α線、β線、γ線、X線、中性子線、可視光線、紫外線、赤外線、レーザから選択される電磁波又は放射線又は粒子線を出射するもの、エア式、静電容量式、超音波式等の非接触式のものがある。接触式のものは、シートaを挟むようにその上下に変位センサを設けて、その先端をシートaに接触させるものである。シート厚み計測センサの一例として、本実施形態ではX線式のものを示す。シート厚み計側センサ2は、シートaの上下に対向してX線発生部2aとX線検出部2bが設置されている。X線発生部2aのX線発生器2cから供給されたX線を、シートaの下方から厚み方向に向かって出射し、出射したX線がX線検出部2bのX線検出器2d(図2)に供給される。このX線検出器2dに供給されたX線の量を計測することにより、シートaの厚みを計測するものである。
【0042】
移動機構4a、4bは搬送手段8a、8bを備え、搬送手段8a、8bは駆動側プーリ5a、5bと従動側プーリ6a、6bと、これらプーリ6a、6bに掛け回されるベルト部材7a、7b等を備え、駆動側プーリ5a、5bがモータM等の駆動手段にて駆動することにより、物理量測定手段2a、2bをシートaに沿って往復させることができる。また、物理量測定手段2a、2bは、図示省略の搬送手段をさらに備え、被測定物の長手方向及び幅方向にトラバースしつつ、シートaの幅方向一端から他端まで幅方向に連続的に移動または等間隔でピッチ移動する。
【0043】
温度測定装置1a、1bは、図3に示すように外部気流流入防止手段10a、10bと、温度センサ11a、11bとから構成されている。一方の外部気流流入防止手段10aは、シート厚み計測センサ2のX線発生部2a側に設けられている。他方の外部気流流入防止手段10bは、シート厚み計測センサ2のX線検出部2b側に設けられている。この場合、外部気流流入防止手段10a、10bは、図示省略のエア供給源と、エアをシートaに供給するノズル12a、12bと、エア供給源からノズル12a、12bにエアを導入するエア供給路13a、13bとを備えている。ノズル12a、12bは、内周壁と外周壁とを備えた二重の筒状体から構成されている。このため、エアの噴出口は円環状となっている。ノズル12a、12bからシートaに向かってエアを噴き出すと、エアーカーテン3a、3bを形成し、シートaの厚み計測部の周辺にエアーカーテン部Tを形成する。このように形成されたエアーカーテン部Tは、図3の矢印Aのように走行中のシートaから発生する気流(矢印B、矢印C)や、外部環境により発生する気流を遮断することができる気流流入防止雰囲気となる。これにより、図3に示すように、エアーカーテン部Tの外側のシートaの上面雰囲気の温度をt´、下面雰囲気の温度をt´´とすると、エアーカーテン部Tでは、外側の気流等の外乱の影響を受けることがないため、エアーカーテン部Tの温度はシートaの温度tのみに影響を受けることとなる。つまり、エアーカーテン部Tの温度がtと略同一もしくはtに近くなる。
【0044】
この場合、図4に示すようにシート厚み計測センサ2のトラバース速度とシートaの走行速度とのベクトルの和の速度V1よりも、エアのシートaの到達部位における速度Vnを大としている。シート厚み計測センサ2のトラバース速度とシートaの走行速度とのベクトルの和の速度がV1である場合、このシートaの走行に伴う気流の流速は、図5のグラフ図で示すように、シートaから遠くなる程0に近づき、シートaから近い位置(表面付近)ではV1に近づいて最大でV1となる。このため、Vn>V1とすることにより、外気がエアーカーテン部Tに侵入するのを防止することができ、確実にエアーカーテン部Tを形成することができる。
【0045】
前記エアーカーテン部Tには、図3に示すように、エアーカーテン内部雰囲気(気流流入防止雰囲気)中でシートaの温度を測定する温度センサ11a、11bを設けている。この場合、温度センサ11a、11bは高い応答性を有する熱容量の小さい温度センサ(例えば、放射温度計ではない熱電対、測温抵抗体等)を用いるのが好ましい。一方の温度センサ11aは、シート厚み計測センサ2から出射されるX線の出射範囲内に設けている。他方の温度センサ11bは、シート厚み計測センサ2から出射されるX線の出射範囲外に設けている。
【0046】
また、図6に示すように、温度測定装置1にて測定した参照場所C(図1)の温度と、厚み計測領域内にて測定した温度とから、厚み計測領域W内(図1)で実測したシートaの厚みを補正する演算手段20を設けている。演算手段20は、参照場所Cの温度と厚み計測領域Wでの気流流入防止雰囲気内の温度との温度差を算出する温度差算出手段21と、温度差に基づいて厚み計測センサ2から出射されるX線の変化量(本実施形態では減衰量)を算出する減衰量算出手段22と、この減衰量からシートaの厚みと、実測したシートaの厚みとのずれ量を換算する換算手段23と、実測したシートaの厚みから前記ずれ量を加算又は減算して、シートaの厚みを補正してシートaの厚みを計測する補正手段24とを備えている。演算手段20は、例えばマイクロコンピュータ(図示省略)にて構成されている。
【0047】
次に、前記補正装置にてシートaの厚みを補正する補正方法について図7のフローチャートを用いて説明する。まず、図1の温度測定装置1(シート厚み計測センサ2)を、シートaの無い参照場所Cにまで移動させ、参照場所Cの温度tを取得する(ステップS1)。
【0048】
次に、図1のモータMを駆動して、移動機構4にてシート厚み計測センサ2を、厚み計測領域内にあるシートaの長手方向及び幅方向に連続的又は間欠的にピッチ移動させる。このとき、図3のX線発生部2aのX線発生器2cからX線検出部2bの検出器2dに向かってX線を出射させて各位置でのシートaの厚みを計測する。また、シート厚み計測センサ2の周囲に設けられたノズルからシートaに向かってエアーカーテン状にエアを噴き出して、シートaの厚み計測部の周辺にエアーカーテン部Tを形成し、この内部にある温度センサ11a、11bにて、気流流入防止雰囲気における測定エリアS及びその近傍でシートaの温度プロファイルtを取得する(ステップS2)。なお、本実施形態で測定エリアSとはX線の出射範囲のうち、検出器2dにて検出可能なX線の出射範囲をいい、例えば図3の点線に示すような範囲をいう。
【0049】
図6の温度差算出手段21は、参照場所の温度tと、計測領域Wの気流流入防止雰囲気で測定した温度tとの温度差t−tを算出し(ステップS3)、温度差t−tに基づいて、減衰量算出手段22がシート厚み計測センサ2から出射されるX線の減衰量を算出する(ステップS4)。その後、この減衰量から、換算手段23が実測したシートaの厚みのずれ量を換算し(ステップS5)、補正手段24が、実測したシートaの厚みから、ずれ量を加算又は減算してシートaの厚みを補正する(ステップS6)。このような方法で、実測したシートaの厚みに対して補正を行ってシートaの厚みを正確に計測することができる。
【0050】
このように、本発明の第1実施形態の補正装置では、外部気流流入防止手段10(図2、3、4、)にてシートaから発生する気流や、外部環境により発生する気流を遮断することができ、気流流入防止雰囲気を形成することにより、気流流入防止雰囲気の内部は外側の気流等の外乱の影響を受けることがない。これにより、この気流流入防止雰囲気内で温度を測定すると、外側の気流等の外乱の影響を受けることなく、計測領域W内でのシートaの温度とほぼ同じ雰囲気温度を高応答に正確に測定することができる。これにより、シートaの温度が一律に同じ温度ではなく、位置によってその分布が異なる場合であっても、高応答かつ正確な温度測定が可能となる。
【0051】
シートaの厚みを測定する厚み計測領域W内での温度を正確に測定することができるため、参照場所Cでのシートaの温度と、実測したシートaの温度との温度差を正確に測定することができる。この温度差により、シート厚み計測センサ2から出射されるX線の減衰量が定まるため、減衰量に基づいて実測した厚みのずれ量が求まり、ずれ量を実測した厚みから加算又は減算して実際の厚みを求めることができる。
【0052】
外部気流流入防止手段10が、シートaへのエアの流出にてエアーカーテン3a、3bを形成するものでは、確実に外部気流流入防止手段10を形成することができる。
【0053】
シートaの厚みの測定にシート厚み計測センサ2を用い、そのシート厚み計測センサ2から出射されるX線の出射範囲内にて温度を測定すると、測定エリアの温度を正確に測定することができ、X線の減衰量を正確に測定することができる。また、シート厚み計測センサ2から出射されるX線の出射範囲外にて温度を測定すると、温度センサ11bがX線を遮るのを防止することができて、正確に物理量を測定することができる。
【0054】
前記シート厚み計測センサ2から出射される電磁波は、X線の他に、可視光線、紫外線、γ線、赤外線、レーザであってもよい。また、α線やβ線等の放射線であってもよい。さらには、中性子線等の粒子線であってもよい。これにより、種々の形式のものに適用することができ、汎用性に優れたものとなる。
【0055】
前記シートaは長手方向に走行するものであって、シート厚み計測センサ2のトラバース速度とシートaの走行速度とのベクトルの和V1の速度よりも、流体のシートaの到達部位における速度Vnを大とすることができる。これにより、外気がエアーカーテン部T内に侵入するのを防止することができ、安定した状態の気流流入防止雰囲気を形成することができる。
【0056】
前記実施形態では、物理量はシートaの厚み寸法であるので、被測定物と物理量測定手段との間に空気または他の気体が存在する厚み計や、シート・フィルム製造工程中の温度分布測定を行うことができる。その他、長さ寸法、質量、密度、坪量、電流、電荷、電圧、電位差、力、エネルギー、速度、磁性、光学的特性とすることにより、厚み計以外の種々の装置に適用することができ、汎用性に優れたものとなる。
【0057】
また、前記実施形態では、シート厚み計測センサ2は、シートaの幅方向及びそれに直交する方向にトラバースするものであったが、トラバースしない(停止している)ものであってもよい。この場合、シートaは長手方向に走行するものであって、シートaの走行速度よりも、流体のシートaの到達部位における速度を大とするのが望ましい。これにより、外気が気流流入防止雰囲気内に侵入するのを防止することができ、安定した状態の気流流入防止雰囲気を形成することができる。
【0058】
次に、本発明の第1実施形態の温度測定装置の変形例について説明する。この場合、図8に示すように、気流流入防止雰囲気に、所定温度を有する温度調整用気体及び所定湿度を有する湿度調整用気体を噴射する噴射ノズル15を設けている。これにより、気流流入防止雰囲気は、外気の温度、湿度に影響を受けない環境を作ることができ、高精度の測定が可能となる。
【0059】
図9は第2実施形態の温度測定装置を示す。前記第1実施形態では、物理量測定手段2として電磁波であるX線式のシート厚み計側センサを用いたが、図9に示すように、静電容量式のシート厚み計測センサであってもよい。静電容量式のシート厚み計測センサは、2つのセンサヘッド40a、40bによって、シートaを挟むものであり、センサヘッド40a、40bは、センサ電極41a、41bと、絶縁物42a、42bと、ガードリング43a、43bとを備えている。すなわち、円筒形状のセンサ電極41a、41bを絶縁物42a、42bで同心円状に被覆し、さらに、絶縁物42a、42bの外周を導電体のガードリング43a、43bによって同心円状に被覆している。そして、両電極間の静電容量の変化によりシートaの厚みを検出するようにした方式である。この方式は、シートaの厚みの変化を両電極41a、41b間の静電容量の変化として検出することにより、シートaの厚みを計測するものである。
【0060】
この場合、ガードリング43a、43bに外部気流流入防止手段10a、10bを設けている。外部気流流入防止手段10a、10bは、図示省略のエア供給源と、エアをシートaに供給するノズル45a、45bと、エア供給源からノズル45a、45bにエアを導入するエア供給路50a、50bとを備えている。そして、ノズルの内周面かつ、電極41a、41bの外周面に、温度センサ44a、44bを設けている。この場合も、温度センサ44a、44bは高い応答性を有する熱容量の小さい温度センサ(例えば、放射温度計ではない熱電対、測温抵抗体等)を用いるのが好ましい。これにより、温度センサ44a、44bは外側の気流等の外乱の影響を受けることなく、シートaの温度を高応答に正確に測定することができる。このようにして、静電容量式のシート厚み計測センサにおいても、X線式のシート厚み計測センサと同様の作用効果を奏する。
【0061】
また、図9は、静電容量式のシート厚み計測センサにおいて、2つの電極がシートaを挟む方式のものであったが、図10(a)(b)のように、シートaの片方より測定する方式のものであってもよい。すなわち、円筒形状の第1のセンサ電極46を第1の絶縁物49で同心円状に被覆し、さらに、第2のセンサ電極47を、第2の絶縁物48で被覆して、第2の絶縁物48の外周を導電体のガードリング43によって同心円状に被覆している。そして、両電極間の静電容量の変化によりシートaの厚みを検出するようにした方式である。この方式は、シートaの厚みの変化を両電極46、47間の静電容量の変化として検出することにより、シートaの厚みを計測するものである。
【0062】
図11は本発明の第3実施形態の温度測定装置を示す。第3実施形態では、物理量測定手段2として図11(a)に示すようなレーザ式のシート厚み計測センサを用いている。このシート厚み計測センサは、ロール32と、第1の変位計33と、第2の変位計34とを備えている。第1の変位計33としては、渦電流センサ又は磁気センサを使用することができる。
【0063】
ロール32は、シートaの走行方向に直交して配置され、本体フレーム(図示省略)に回転可能に支持され、一端にはモータ(図示省略)が連結され、また、他端には固定原点を有する回転角度検出手段(図示省略)が設置されている。回転角度検出手段は、ロール32の回転方向の位置を0°〜360°の範囲で等角度、例えば、15°毎に検出するアブソリュート方式のロータリーエンコーダや、回転角度検出器と回転角度原点センサとの組合せたもの等で構成されている。校正時、モータは、シートaの搬送ラインの速度と一致した表面速度(周速度)でロール32を回転駆動させるのが好ましい。このようにしておくと、第1の変位計33と第2の変位計34との応答時間の違いによる誤差やシートaの搬送ラインの速度の違いによる誤差が介入することをも防止することができる。
【0064】
第1の変位計33は、ロール32の軸線上方で第2の変位計34の一部に設置され、ロール32の上面との距離Aの変化を検出すると共に、発光部34aから発射される平行光線35の上端を確定するものである。第1の変位計33としては、金属感応型又は磁気感応型変位計が使用され、何れを使用するかは計測対象となるシートaの物性により選択するもので、例えば、非導電性シートの場合は渦電流センサなどの金属感応型とし、導電性シートの場合は磁気感応型変位計とする。
【0065】
第2の変位計34は、ロール32を跨いで両側に対向設置された発光部34aと受光部34bとを有し、これらにより、ロール32上を接触走行するシートaの厚さを平行光線35の遮光量の変化で計測するものであって、例えば、レーザービーム型計測器やCCDイメージセンサその他の光学式計測手段が使用できる。
【0066】
このレーザ式のシート厚み計測センサは、第1の変位計33によってロール32との間隔寸法を測定してAとし、発光部34aから照射された平行光線35が第1の変位計33、ロール32およびシートaによって遮断されて、受光部34bに入射することを利用している。まず、シートaが無い状態で、第1の変位計33とロール32間の間隔寸法Aを測定し、次に、ロール32上にシートaを配置した状態で、第1の変位計33とシートa間の間隔寸法Bを測定して、シート4の厚み寸法tを、t=A−Bで算出するものである。
【0067】
この場合、第1の変位計33の周囲に、外部気流流入防止手段10を設けている。この場合も、外部気流流入防止手段10は、図示省略のエア供給源と、エアをシートaに供給するノズル36と、エア供給源からノズル36にエアを導入するエア供給路38とを備えている。そして、ノズル36の内周面かつ、第1の変位計33の外周面に、温度センサ37aを設けている。この場合も、温度センサ37aは熱容量の小さい高応答な温度センサ(例えば、放射温度計ではない熱電対、測温抵抗体等)を用いるのが好ましい。これにより、温度センサ37aは、外側の気流等の外乱の影響を受けることなく、シートaの温度を高応答に正確に測定することができる。このようにして、レーザ式のシート厚み計測センサにおいても、X線式のシート厚み計測センサと同様の作用効果を奏する。
【0068】
なお、温度センサ37の位置としては、図11(b)や図11(c)に示すように、レーザ光35を遮らない位置であれば、第1の変位計33の下面であっても温度センサ37bを設けることができる。また、用いる光としては、レーザ光に限らず、LED等他の光を用いることもできる。
【0069】
第4実施形態として、物理量測定手段2に超音波式のシート厚み計測センサを用いる(図示省略)。これは、図2、図3、図8のような装置構成において、X線に替えて超音波を送出するものである。すなわち、シートaの厚さ方向に短い超音波パルスを入射して、反射波が戻ってくるまでの時間を測定し、この反射時間に音速を乗じて被測定物の厚さを求めるものである。また、シートaの厚さの2倍が超音波の波長の整数倍となる周波数で被測定物が共鳴するという現象を利用し、そのシートaの厚さ方向における超音波共鳴周波数に基づいてシートaの厚さを求めることもできる。また、超音波の減衰量から厚さを求めることもできる。
【0070】
第5実施形態として、物理量測定手段2にエア式のシート厚み計測センサを用いる(図示省略)。厚み計測センサは、一定圧のエアをエアノズルよりシートaに向けて噴出する。エアノズルは、シリンダ内に挿入されたピストンのロッドに連結されており、エアノズルの背圧をシリンダ内のピストン下部室に作用させ、ピストン上部室には常時一定圧のエア圧を前記背圧に対向作用させる。そして、ピストンの上下部室に作用する両圧力がバランスすることによりエアノズルとシートaとの隙間が一定に保持され、シートの厚みの変化により前記隙間が変化して前記背圧が変化する。これにより、前記ピストンの両側の圧力がバランスする方向にピストンロッドが変位し、このロッドの変位をリニアゲージで計測することにより厚みを測定するものである。
【0071】
第6実施形態として、物理量測定手段2に接触式のシート厚みセンサを用いる。図12に示すように、シートaを挟むようにその上下に変位センサ9a、9bを設け、両変位センサ9a、9bを互いに接近する方向に付勢して、その先端をシートaに接触させることにより、その時の両者の位置を検出して、挟まれたシートaの厚さを計測するものである。また、接触式の他の方式として、図13に示すように、ロール17に巻き掛けた状態で搬送されるシートaの表面の位置を検出するものもある。すなわち、ロール17に巻き掛けたシートaを変位センサ9にて付勢して、その先端をシートaに接触させることにより、位置を検出して、挟まれたシートaの厚さを計測するものである。
【0072】
前記本発明の温度測定装置及び補正装置は、図14及び図15に示すような延伸装置に用いることができる。この延伸装置は、本発明に係る温度制御装置を用いたものである。図14及び図15の延伸装置は、押出機50と、この押出機50に装着したダイ51と、シートaを矢印の方向に搬送して延伸させるための一対のガイドレール52と、シートaの延伸部54に設けられ、複数のヒータH・・・、Hから構成される加熱手段53と、延伸部54の下流側に設けられる物理量測定手段2(この場合、シート厚み計測センサ)と、延伸したシートaを巻き取る巻取機55とを備えている。物理量測定手段2には本発明の温度測定装置1が設けられている。そして、この延伸装置には、加熱手段53の温度を制御する制御機構56が設けられている。この制御機構56は、加工(延伸)後のシートaの厚み及び温度を検出するための入力部57と、シートaの加工時の温度条件や理想的な厚みを設定する設定部58と、検出された温度と温度設定値とを表示するモニタ59と、検出された温度と実測したシートaの厚みとの相関関係を検出する演算手段60と、演算手段60の検出結果に基づいて加熱手段53の温度を調整する調整手段61とを備えている。入力部57は、温度測定装置1によって測定されたシートaの温度を検出する温度入力手段62と、シート厚み計測センサ2にて測定されたシートaの厚みを検出する物理量入力手段63とを備えている。また、設定部58は、シート幅方向の温度設定を行う温度設定手段64と、厚みの理想値の設定を行う物理量設定手段65とを備えている。
【0073】
この延伸装置を用いた温度制御方法について説明する。押出機50より押出されたシートaは、ガイドレール52により矢印の方向に搬送される。そして、延伸部54において加熱手段53にてシートaが温度設定手段64にて設定された温度、及び物理量設定手段65にて設定された厚みとなるように加熱されながら、シート幅方向に拡がるガイドレール52により幅方向に延伸される。そして、物理量測定手段2によってシートaの厚みが測定され、物理量入力手段63にて厚みプロファイルを得ることができるとともに、本発明の温度測定装置1によってシートaの幅方向の温度が測定され、温度入力手段62にて温度プロファイルを得ることができる。この温度プロファイルと、測定した厚みプロファイルとの相関関係を演算手段60にて検出する。そして、演算手段60の結果に基づいて、温度設定手段64や物理量設定手段65の設定値を変更して、調整手段61が加熱手段53の温度を調整する。これにより、延伸工程中のシートaの温度を正確に測定することにより、容易にかつ高精度の延伸加工が実現できる。
【0074】
なお、制御機構56において、モニタにてシートaの幅方向の温度プロファイルを見ながら、手動で調整手段61を調整したりできる。このように、シート厚み計測センサ2に温度測定装置を具備したものであれば、シートaの幅方向の温度プロファイルと厚みプロファイルとの相関を得ることができ、シートaの幅方向の厚みプロファイルを高精度に調節することができる。
【0075】
前記各実施形態では、被測定物の厚み寸法を測定するものであったが、それ以外の物理量、すなわち長さ寸法、質量、密度、坪量、電流、電荷、電圧、電位差、力、エネルギー、速度、磁性、光学的特性を測定するものであってもよい。
【0076】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、X線発生部2aとX線検出部2bとは上下逆位置であってもよい。外部気流流入防止手段10から発生する流体としてはエアに限らず、その他の気体でもよい。参照場所Cは装置の端部であれば良く、C点以外に図1に示すD点であってもよく、また、C点及びD点の両方としてもよい。温度センサ11は、被測定物aの上方又は下方のいずれか一方に配設してもよい。参照場所の整流板14は省略することもできる。被測定物aとしては種々のものを採用することができ、紙、シート、フィルム等のウェブ又は板状又は大きな曲率半径を有する円筒状の被測定物であれば材質、寸法は種々のものを測定することができる。噴射ノズル15(図8)から噴射する気体は、温度調整用気体又は湿度調整用気体のいずれか一方であってもよい。
【0077】
実施形態では物理量は被測定物の厚みであったが、質量、体積等種々のものであってもよい。物理量を質量とした場合、坪量計に用いることができる。また、フィルム、シートの製造工程中において、それらの温度分布を測定することにより、フィルム、シートの加熱又は冷却効果を数量的に計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の第1実施形態の物理量測定装置を使用した物理量測定装置の簡略正面図である。
【図2】前記物理量測定装置の参照場所を示す要部拡大断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態の温度測定装置の要部拡大断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態の温度測定装置の要部拡大断面図である。
【図5】被測定物の走行に伴う気流の流速と被測定物からの距離との関係を示すグラフ図である。
【図6】本発明の補正装置のブロック図である。
【図7】本発明の補正方法を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第1実施形態の温度測定装置の変形例を示す要部拡大断面図である。
【図9】本発明の第2実施形態を示す温度測定装置の要部拡大断面図である。
【図10】本発明の第2実施形態の変形例を示す温度測定装置であり、(a)は要部拡大断面図、(b)は底面図である。
【図11】本発明の第3実施形態を示す温度測定装置であり、(a)は断面図、(b)は要部拡大断面図、(c)は底面図である。
【図12】本発明の第6実施形態を示す温度測定装置の要部拡大断面図である。
【図13】本発明の第6実施形態の変形例の温度測定装置の要部拡大断面図である。
【図14】本発明の温度測定装置を使用した延伸装置の簡略平面図である。
【図15】本発明の温度測定装置を使用した延伸装置の簡略側面図である。
【図16】従来のシート厚み計測装置を示す簡略正面図である。
【符号の説明】
【0079】
2 物理量測定手段
3 エアーカーテン
10 外部気流流入防止手段
20 演算手段
21 温度差算出手段
22 減衰量算出手段
23 換算手段
24 補正手段
a 被測定物
T エアーカーテン部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物の物理量を測定する際に、この被測定物の温度を測定する温度測定方法であって、
外部気流流入防止手段にて、被測定物の物理量の測定エリアを外部からの気流を遮断する気流流入防止雰囲気に形成し、
その雰囲気中で被測定物の温度又は被測定物の近傍の温度を測定することを特徴とする温度測定方法。
【請求項2】
被測定物を加熱又は冷却して加工を行う際に、この被測定物の温度を制御する温度制御方法であって、
物理量測定手段にて加工後の被測定物の物理量を測定するとともに、前記請求項1に記載の温度測定方法にて被測定物の気流流入防止雰囲気での温度を測定した後、
加工後の被測定物の物理量と被測定物の気流流入防止雰囲気での温度との相関関係を検出し、
この相関関係に基づいて、予め設定した物理量の理想値が得られるように被測定物の温度を制御することを特徴とする温度制御方法。
【請求項3】
被測定物の物理量を補正する補正方法であって、
被測定物の無い参照場所の温度を測定し、その後、物理量測定手段にて被測定物の物理量を測定するとともに、前記請求項1に記載の温度測定方法にて被測定物の物理量を測定する計測領域内において気流流入防止雰囲気での被測定物の温度を測定した後、
参照場所の温度と計測領域内で測定した温度との温度差を算出し、
前記温度差に基づいて物理量測定手段の変化量を計算し、
この変化量から物理量測定手段にて実測した被測定物の物理量のずれ量を換算し、
実測した被測定物の物理量に対して前記ずれ量を加算又は減算して、被測定物の物理量を補正することを特徴とする補正方法。
【請求項4】
物理量測定手段にて被測定物の物理量を測定する際に、この被測定物の温度を測定する温度測定装置であって、
被測定物の物理量の測定エリアに、外部からの気流を遮断して気流流入防止雰囲気を形成する外部気流流入防止手段と、
その雰囲気中で被測定物の温度又は被測定物の近傍の温度を測定する温度センサとを設けたことを特徴とする温度測定装置。
【請求項5】
前記外部気流流入防止手段は、被測定物へのエアの流出にてエアーカーテンを形成して気流流入防止雰囲気となるエアーカーテン部を形成することを特徴とする請求項4の温度測定装置。
【請求項6】
前記物理量測定手段は電磁波又は放射線又は粒子線を被測定物に出射し、被測定物を透過した電磁波又は放射線又は粒子線を検出するものであって、その物理量測定手段から出射される電磁波又は放射線又は粒子線の出射範囲内にて温度を測定することを特徴とする請求項4又は請求項5の温度測定装置。
【請求項7】
前記物理量測定手段は電磁波又は放射線又は粒子線を被測定物に出射し、被測定物を透過した電磁波又は放射線又は粒子線を検出するものであって、その物理量測定手段から出射される電磁波又は放射線又は粒子線の出射範囲外にて温度を測定することを特徴とする請求項4又は請求項5の温度測定装置。
【請求項8】
前記物理量測定手段から出射される電磁波又は放射線又は粒子線は、α線、β線、γ線、X線、中性子線、可視光線、紫外線、赤外線、レーザから選択されることを特徴とする請求項6又は請求項7の温度測定装置。
【請求項9】
前記物理量測定手段は静電容量式、エア式、超音波式、接触式から選択されることを特徴とする請求項4又は請求項5の温度測定装置。
【請求項10】
前記被測定物は長手方向に走行するものであって、被測定物の走行速度よりも、流体の被測定物の到達部位における速度を大としたことを特徴とする請求項4〜請求項9のいずれか1項の温度測定装置。
【請求項11】
気流流入防止雰囲気に、外気の温度、湿度に影響を受けない環境を作る温度調整用気体及び/又は湿度調整用気体を噴射する噴射ノズルを設けたことを特徴とする請求項4〜請求項10のいずれか1項の温度測定装置。
【請求項12】
前記物理量は、被測定物の厚み寸法、長さ寸法、質量、密度、坪量、電流、電荷、電圧、電位差、力、エネルギー、速度、磁性、光学的特性から選択されることを特徴とする請求項4〜請求項11のいずれか1項の温度測定装置。
【請求項13】
被測定物を加熱又は冷却して加工を行う際に、この被測定物の温度を制御する温度制御装置であって、
加工後の被測定物の物理量を測定する物理量測定手段と、
被測定物の気流流入防止雰囲気での温度を測定する前記請求項4〜請求項12に記載の温度測定装置と、
加工後の被測定物の物理量と被測定物の気流流入防止雰囲気での温度との相関関係を検出する演算手段と、
この相関関係に基づいて、予め設定した物理量の理想値が得られるように被測定物の温度を制御する調整手段を設けたことを特徴とする温度制御方法。
【請求項14】
物理量測定手段にて測定される被測定物の物理量を補正する補正装置であって、
被測定物の無い参照場所の温度、及び被測定物の物理量を測定する計測領域内での気流流入防止雰囲気の温度を測定する前記請求項4〜請求項12に記載の温度測定装置と、
参照場所にて測定した温度と計測領域内にて測定した温度との温度差を算出し、前記温度差に基づいて物理量測定手段から出射される出射物の変化量を算出し、この変化量から被測定物の物理量と、実測した被測定物の物理量とのずれ量を換算し、実測した被測定物の物理量から前記ずれ量を加算又は減算して、被測定物の物理量を補正して被測定物の物理量を計測する演算手段とを設けたことを特徴とする補正装置。
【請求項15】
物理量測定手段は、被測定物の幅方向及びそれに直交する方向にトラバースしつつ、被測定物の物理量を測定することを特徴とする請求項14の補正装置。
【請求項16】
前記被測定物は長手方向に走行するものであって、物理量測定手段のトラバース速度と被測定物の走行速度とのベクトルの和の速度よりも、流体の被測定物の到達部位における速度を大としたことを特徴とする請求項15の補正装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−32387(P2010−32387A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−195251(P2008−195251)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(592067719)株式会社山文電気 (2)
【Fターム(参考)】