説明

測定装置

【課題】
従来技術によるモアレ法は、モアレパターンから等高線を求めるために複雑な演算を行う必要があった。さらに、高低差のある物体の等高線を一度に求めるため、物体の高低差によって誤差が生じるという問題があった。
【解決手段】
本発明に係る測定装置は、第1の方向に光を送光する送光部と、前記第1の方向と略直交する軸を中心に被測定物と前記送光部とを相対的に回転させる回転部と、前記被測定物で反射した前記光を検出する検出部と、前記検出部の検出結果に基づいて、前記被測定物の形状を測定する形状測定部とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の三次元形状を測定する測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、等高線を利用して物体の三次元形状を測定する方法として、モアレ法が知られている。モアレ法は、照明装置から縞パターンを物体に投影し、さらに別の縞パターンを介して観測されるモアレパターンから、物体形状に沿った等高線を求め、物体の三次元形状を得る方法である(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−206130号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来技術によるモアレ法は、モアレパターンから等高線を求めるために複雑な演算を行う必要があった。さらに、高低差のある物体の等高線を一度に求めるため、物体の高低差によって誤差が生じるという問題があった。
本発明の目的は、簡易な構成で複雑な演算を行うことなく、誤差の少ない高精度な測定ができる測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る測定装置は、立体状の被測定物の形状を測定する測定装置であって、第1の方向に光を送光する送光部と、前記第1の方向と略直交する軸を中心に被測定物と前記送光部とを相対的に回転させる回転部と、前記被測定物で反射した前記光を検出する検出部と、前記検出部の検出結果に基づいて、前記被測定物の形状を測定する形状測定部とを備えることを特徴とする。
【0005】
さらに、前記被測定物と前記送光部とを前記第1の方向と略直交する方向に相対移動させる移動部をさらに備え、前記形状測定部は、前記被測定物と前記送光部との相対位置を変化させた時の前記検出部の検出結果に基づいて、前記被測定物の3次元形状を測定することを特徴とする。
特に、前記回転部は、前記送光部を固定して、前記被測定物を回転することを特徴とする。
【0006】
また、前記移動部は、前記被測定物を固定して、前記送光部を移動することを特徴とする。
或いは、前記移動部は、前記送光部を固定して、前記被測定物を移動することを特徴とする。
または、前記移動部は、前記被測定物を固定して、前記送光部を移動することを特徴とする。
【0007】
或いは、前記移動部は、前記送光部を固定して、前記被測定物を移動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡易な構成で複雑な演算を行うことなく、物体の三次元形状を高精度に測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の各実施形態について詳しく説明する。
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態に係る三次元形状測定装置101のブロック図である。三次元形状測定装置101は、立体状の物体の外側形状を所定の高さ毎に測定して等高線を求め、求めた等高線を合成することによって物体の三次元形状を構築する装置で、投光部102と、投光移動部103と、投光固定部104と、回転ステージ105と、ステージ固定部106と、被測定物108を載せる測定台107と、撮像部109と、画像処理部110と、パソコン111とで構成される。
【0010】
投光部102は、被測定物108に目印となる光の像を投影する。目印になればどんな形状の像を投影してもかまわないが、撮像部109で撮影した画像の中で認識し易い丸などの基本形状が好ましい。また、被測定物108の形状が様々であるため、被測定物108上の投影位置までの距離が変化しても、投影される像は可能な限り焦点が合っていることが望ましい。つまり、投影される像側の焦点深度が深い方が好ましく、光学系のNA(Numerical Aperture:開口数)は小さい方が有利である。このような理由から、特別な光学系を準備する必要がないレーザビームの使用が好ましく、装置構成がコンパクトになる。
【0011】
投光移動部103と投光固定部104は、画像処理部110からの制御に基づいて、投光移動部103の上端に固定された投光部102を上下に移動する。
回転ステージ105とステージ固定部106は、画像処理部110からの制御に基づいて、ステージ固定部106上の回転ステージ105を回転させる。つまり、回転ステージ105の上に固定されている投光固定部104および投光移動部103を介して、投光部102は測定台107の上に載せた被測定物108の周囲を同じ高さで回転する。
【0012】
例えば、投光移動部103をある高さに移動した状態で、投光部102から照射された光151は、被測定物108に当たって点像を作る。被測定物108上に投影された点像は、撮像部109の受光面で結像される。尚、撮像部109の被測定物108側には、図面では省略されているが撮影用の光学系が配置され、被測定物108の移動範囲において、撮像部109の受光面に結像するように予め調整されている。
【0013】
撮像部109の受光面に結像された光は画像データに変換され、ケーブル112を介して画像処理部110に出力される。
画像処理部110は、撮像部109から画像データを受け取ると共に、ケーブル113を介して接続されている投光固定部104に指令を送り、投光部102を載せた投光移動部103を撮像部109方向に所定ピッチで上下させる。つまり、被測定物108と投光部102との相対位置を変化させる。そして、投光移動部103を所定ピッチで上下させ、被測定物108の所定の高さ毎に撮像部109から画像データを入力する。この時、所定の高さ毎に、画像処理部110はケーブル114を介してステージ固定部106に指令を送り、回転ステージ105を所定の回転ピッチで1回転させる。画像処理部110は回転ステージ105の所定角度毎に撮像部109から画像データを入力する。つまり、回転ステージ105が1回転する間に、撮像部109は所定の角度毎に画像を撮影し、画像データを画像処理部110に出力する。画像処理部110は、入力した1回転分の画像データを処理して、所定の高さにおける被測定物108の外側形状を求める。尚、外側形状の求め方については、後で詳しく説明する。
【0014】
ここで、被測定物108を載せている測定台107の上面と、回転ステージ105の上面と、投光部102が回転する面とは、互いに平行な面になるように設置されているので、投光部102が同じ高さで1回転して被測定物108に投光した光の軌跡は、被測定物108の等高線を示していることになる。
次に、三次元形状測定装置101の測定の流れについて、図2のフローチャートを用いて詳しく説明する。
(ステップS201)先ず、被測定物108を測定台107にセットする。
(ステップS202)次に、投光移動部103の測定レンジ(移動範囲)や測定ピッチ(移動ピッチ)などの測定仕様をパソコン111から入力する。パソコン111で入力された測定仕様は、ケーブル115を介して画像処理部110に出力され、画像処理部110はケーブル113を介して投光固定部104に投光移動部103を初期位置に移動するよう指令する。例えば、図3(a)の測定台107の上面からh1の高さに投光部102の光が投光される位置に投光移動部103を移動する。同時に、画像処理部110はステージ固定部106に回転ステージ105を初期位置に移動するよう指令する。以降、回転ステージ105は1回転する毎に初期位置に戻る。
(ステップS203)投光移動部103の現在位置で投光部102から被測定物108に光を投光する。
(ステップS204)被測定物108に投光された光の像を撮像部109で撮影し、画像処理部110に出力する。
(ステップS205)回転ステージ105を現在位置から所定角度だけ回転させる。
(ステップS206)回転ステージ105が1回転したか否か、つまり初期位置に戻ってきたか否かを判別する。回転ステージ105が1回転していない場合は、ステップS203に戻り、1回転終了した場合は、ステップS207へ進む。
(ステップS207)回転ステージ105が1回転したら、画像処理部110は1回転分の画像データからポインタの軌跡を合成して、その高さでの被測定物108の外側形状、つまり等高線を求める。例えば、図3(b)は同図(a)のh1の高さにおいて、回転ステージ105を1回転した時の画像を合成した様子を示しており、各点は所定角度毎に撮影した投光部102の投光した光の点を示し、これらの点を結んだ線がその高さでの等高線g1となる。
(ステップS208)測定仕様に従って、測定が完了したか否かを判断する。例えば、投光移動部103が移動範囲の終了位置に達していない場合はステップS209に進み、終了位置に達している場合はステップS210に進む。
(ステップS209)投光移動部103を設定された測定ピッチに従って、次の測定位置まで移動する。例えば、図3(a)の測定台107の上面からh2の高さに投光部102の光が投光される位置に投光移動部103を移動する。移動後、再び、ステップS203に戻り、その高さでの等高線を求める。例えば、図3(b)で説明したように、同図(c)では測定台107上に置かれた被測定物108の高さh2での等高線g2が求められ、同図(d)では高さh3での等高線g3が求められる。
(ステップS210)移動ステージ110が移動範囲の終了位置に達して測定を終了した場合は、画像処理部110がステップS207で求めた高さ毎の等高線を合成して、三次元形状データを作成する。例えば、図3(a)に示すように、ステップS207において、測定台107上に置かれた被測定物108の高さh1,h2およびh3の位置での各等高線g1,g2およびg3が求められているので、これらの等高線g1,g2およびg3を合成して、図3(e)に示すような等高線画像が得られる。
(ステップS211)ステップS210で求めた等高線画像を高さ情報と合わせて三次元形状データを求める。これを三次元表示すると、例えば、図3(f)に示すような被測定物108の三次元形状108aがパソコン111の画面に表示される。尚、本フローチャートの説明では、分かり易いように、等高線g1,g2およびg3の3つの等高線だけで説明したが、実際には図3(f)の点線で示したように、細かいピッチで投光移動部103を上下させて、各高さでの等高線を求めることによって、高精度な被測定物108の三次元形状108aを構築することができる。
(ステップS212)必要に応じて、パソコン111では、キーボードやマウスを操作して、画面に表示されている被測定物108の任意の位置を指定して、画像処理部110から受け取った被測定物108の三次元形状データから各部の大きさや長さを求めて表示する。
(ステップS213)全ての計測を終了する。
【0015】
このようにして、所定ピッチで投光移動部103を上下させ、同時に回転ステージ105を回転させて、被測定物108に光が当たっている部分の外側形状を抽出し、これらを所定位置毎の等高線として合成することによって、被測定物108の三次元形状データを測定することができる。測定した被測定物108の三次元形状データは、ケーブル115を介してパソコン111に送られ、パソコン111で被測定物108の三次元形状を表示することができる。
【0016】
尚、本実施形態では、画像処理を行う画像処理部110と、三次元形状測定装置101全体の操作や測定結果の表示を行うパソコン111とを別々に設けたが、パソコン111に画像処理部110のハードウェアおよびソフトウェアを内蔵するようにしても構わない。或いは、逆に画像処理部110に操作部や表示部を設けて、三次元形状測定装置101専用の制御部としても構わない。
【0017】
このように、本実施形態に係る三次元形状測定装置101は、立体状の物体の所定の高さ毎に外側形状を測定して等高線を求め、高さを可変しながら測定した所定位置毎の等高線を合成することによって物体の三次元形状を構築することができるので、簡易な構成で複雑な演算を行うことなく、誤差の少ない高精度な三次元形状測定装置およびその方法を提供することができる。特に、一度に全ての等高線を得るモアレ法は、物体の高低差によって誤差が大きくなるという問題があったが、本実施形態による三次元形状測定装置および測定方法では、等高線毎に画像を得ることができるので、物体の高低差に依らず高精度な測定が可能になる。
【0018】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る三次元形状測定装置201について図4を用いて説明する。三次元形状測定装置201は、第1の実施形態の三次元形状測定装置101と基本的な構成は同じであるが、投光固定部104と投光移動部103がなく、回転ステージ105の所定の位置に投光部102を固定する固定部204が設けられている。さらに、被測定物108を載せる測定台107の代わりに移動測定台202と移動測定台202を画像処理部205の指令によって上下に移動させる固定測定台203が設けられている。
【0019】
また、画像処理部205は、第1の実施形態の画像処理部110と基本的に同じ画像処理を行うが、図2のフローチャートにおいて、投光移動部103の処理が移動測定台202に置き換えられる。つまり、第1の実施形態では、投光移動部103の先端に取り付けられている投光部102を上下することによって、被測定物108に投光する光の高さを可変したが、本実施形態では、移動測定台202に載せられた被測定物108を上下することによって、被測定物108に投光する光の高さを可変する。
【0020】
上記の点以外は、第1の実施形態と同様に、被測定物108に光が当たっている部分の外側形状を抽出し、これらを所定位置毎の等高線として合成することによって、被測定物108の三次元形状データを測定する。測定した被測定物108の三次元形状データは、ケーブル115を介してパソコン111に送られ、パソコン111で被測定物108の三次元形状を表示する。
【0021】
このように、本実施形態に係る三次元形状測定装置201は、立体状の物体の所定の高さ毎に外側形状を測定して等高線を求め、高さを可変しながら測定した所定位置毎の等高線を合成することによって物体の三次元形状を構築することができるので、簡易な構成で複雑な演算を行うことなく、誤差の少ない高精度な三次元形状測定装置およびその方法を提供することができる。
【0022】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る三次元形状測定装置301について図5を用いて説明する。三次元形状測定装置301は、第1の実施形態の三次元形状測定装置101と基本的な構成は同じであるが、ステージ固定部106と回転ステージ105がなく、投光固定部104は固定ステージ302に取り付けられている。さらに、被測定物108を載せる測定台107は、測定回転ステージ303に固定され、測定回転ステージ303は画像処理部305の指令によって測定ステージ固定部304の上で回転するようになっている。
【0023】
また、画像処理部305は、第1の実施形態の画像処理部110と基本的に同じ画像処理を行うが、図2のフローチャートにおいて、回転ステージ105の処理が測定回転ステージ303の処理に置き換えられる。つまり、第1の実施形態では、回転ステージ105に投光固定部104および投光移動部103を介して取り付けられている投光部102が被測定物108の周囲を回転することによって、被測定物108の等高線を求めたが、本実施形態では、測定台107に載せられた被測定物108を測定回転ステージ303で回転することによって、被測定物108の等高線を求める。
【0024】
上記の点以外は、第1の実施形態と同様に、被測定物108に光が当たっている部分の外側形状を抽出し、これらを所定の高さ毎の等高線として合成することによって、被測定物108の三次元形状データを測定する。測定した被測定物108の三次元形状データは、ケーブル115を介してパソコン111に送られ、パソコン111で被測定物108の三次元形状を表示する。
【0025】
このように、本実施形態に係る三次元形状測定装置301は、立体状の物体の所定の高さ毎に外側形状を測定して等高線を求め、高さを可変しながら測定した所定位置毎の等高線を合成することによって物体の三次元形状を構築することができるので、簡易な構成で複雑な演算を行うことなく、誤差の少ない高精度な三次元形状測定装置およびその方法を提供することができる。
【0026】
尚、第1の実施形態では投光部102を上下に移動させると共に回転させる構造とし、第2の実施形態では投光部102の高さを固定にして回転させると共に被測定物108を上下に移動させる構造とした。また、第3の実施形態では投光部102を上下に移動させると共に被測定物108を回転させる構造とした。これ以外にも、第2および第3の実施形態を組み合わせて、投光部102の高さと回転位置を固定にして、被測定物108を上下に移動させると共に回転させる構造としても同様に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1の実施形態に係る三次元形状測定装置101の構成図である。
【図2】三次元形状測定装置101の測定手順を示すフローチャートである。
【図3】三次元形状の構築を説明するための補助図である。
【図4】第2の実施形態に係る三次元形状測定装置201の構成図である。
【図5】第3の実施形態に係る三次元形状測定装置301の構成図である。
【符号の説明】
【0028】
101,201,301・・・三次元形状測定装置;102・・・投光部;103・・・投光移動部;104・・・投光固定部;105・・・回転ステージ;106・・・ステージ固定部;107・・・測定台;108・・・被測定物;109・・・撮像部;110,205,305・・・画像処理部;111・・・パソコン;202・・・移動測定台;203・・・固定測定台;204・・・固定部;302・・・固定ステージ;303・・・測定回転ステージ;304・・・測定ステージ固定部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体状の被測定物の形状を測定する測定装置であって、
第1の方向に光を送光する送光部と、
前記第1の方向と略直交する軸を中心に被測定物と前記送光部とを相対的に回転させる回転部と、
前記被測定物で反射した前記光を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて、前記被測定物の形状を測定する形状測定部と
を備えることを特徴とする測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の測定装置において、
前記被測定物と前記送光部とを前記第1の方向と略直交する方向に相対移動させる移動部をさらに備え、
前記形状測定部は、前記被測定物と前記送光部との相対位置を変化させた時の前記検出部の検出結果に基づいて、前記被測定物の3次元形状を測定すること
を特徴とする測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の測定装置において、
前記回転部は、前記送光部を固定して、前記被測定物を回転すること
を特徴とする測定装置。
【請求項4】
請求項2に記載の測定装置において、
前記移動部は、前記被測定物を固定して、前記送光部を移動すること
を特徴とする測定装置。
【請求項5】
請求項2に記載の測定装置において、
前記移動部は、前記送光部を固定して、前記被測定物を移動すること
を特徴とする測定装置。
【請求項6】
請求項3に記載の測定装置において、
前記移動部は、前記被測定物を固定して、前記送光部を移動すること
を特徴とする測定装置。
【請求項7】
請求項3に記載の測定装置において、
前記移動部は、前記送光部を固定して、前記被測定物を移動すること
を特徴とする測定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−164571(P2008−164571A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−601(P2007−601)
【出願日】平成19年1月5日(2007.1.5)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】