説明

湿式クラッチ伝達要素および液圧システムを備える自動車の機能ユニットならびにそのような機能ユニットを具備する自動車

このユニットは、液圧システム(401、501)、ならびに、入力軸と、出力軸と、1つのロータを含む電気機械と、双方とも湿式のクラッチである、入力軸とロータを結合する第1クラッチと、ロータと出力軸を結合する第2クラッチとを備える伝達要素であって、潤滑回路(301)と、前記クラッチの駆動手段とをさらに含み、駆動回路が各クラッチ用の圧力室(201、202)を含む制御回路(302)を備えるような伝達要素を含む自動車の機能ユニットに関する。前記回路(301、302)のうちの一方は前記液圧システム(401、501)に接続される。本発明はまたそのような機能ユニットを備える自動車にも関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、
− 流体タンクと、受容装置と、前記タンクおよび前記受容装置に接続されたポンプとを具備し、タンクから流体を受容装置に供給するよう適合化された少なくとも1つの液圧システム、および
− 熱機関に接続されるようになっている運動入力軸と、変速機に接続されるようになっている運動出力軸と、ステータとロータを備える電気機械と、双方とも湿式のクラッチである、入力軸とロータを結合する第1クラッチと、ロータと出力軸を結合する第2クラッチとを備える伝達要素であって、潤滑および/または冷却流体回路と、駆動流体回路を含む前記クラッチの駆動手段とをさらに含み、駆動回路が各クラッチ用の圧力室を含み、その結果、圧力室内にある駆動流体の圧力が各クラッチの状態を決定するような伝達要素
を含む自動車の機能ユニットに関する。
【0002】
上で記述したような種類の伝達要素は、いくつかのハイブリッド車の駆動装置内で使用される。より詳細にはそのような要素はパラレルハイブリッド方式駆動装置内で使用することができる。
【0003】
パラレルハイブリッド方式駆動装置とは、少なくとも1つの「不可逆機関」(通常は熱機関)および少なくとも1つの「可逆機関」(通常は「電気機械」であり、また「電気モータ」という用語でも表し、この「モータ」は発動機モードおよび発電機モードで作動することができる)から機械エネルギーを車輪軸に供給する駆動装置であって、2つのモータからのエネルギー節点が機械的なものである装置をいう。
【0004】
フランス特許出願FR2814121号はこの種の伝達要素について記述しているが、その駆動回路ならびに潤滑および/または冷却回路は車両の他のあらゆる液圧システムから独立している。
【0005】
その結果、タンクまたはポンプなどの装置が多数あるため、液圧回路のアーキテクチャが複雑になる。そのため、特にパワートレインの近傍における車両の液圧回路の全体の空間占有体積が不都合なものになる。
【0006】
本発明はこれらの欠点を解消するとともに、液圧回路が単純化され使用する装置の数が少ない、上で説明した種類の機能ユニットを提供することを目的とする。
【0007】
この目的のため、本発明による機能ユニットにおいては、前記回路のうちの1つが前記液圧システムに接続され、その結果、前記回路の流体は液圧システムの流体と同一になり、前記回路には前記タンクから前記ポンプにより流体が供給される。
【0008】
本発明の単一的または技術的に可能なあらゆる組合せによるその他の特徴によれば、
− 前記液圧システムが、受容装置を構成する第2伝達要素の潤滑および/または冷却システム、あるいは受容装置がパワーステアリングのアクチュエータである液圧パワーステアリングシステム、あるいは受容装置がブレーキである液圧制動システム、あるいは受容装置が液圧シリンダーである液圧サスペンションシステムであり、前記液圧システムに接続された回路が潤滑および/または冷却流体回路であり、
− 前記液圧システムが変速機システム、特に制御式マニュアル変速機であり、受容装置が選択アクチュエータと変速機チェンジアクチュエータを備え、前記液圧システムに接続された回路が駆動流体回路であり、
− 伝達要素が、潤滑および/または冷却流体回路、ならびに駆動流体回路に接続された2つのそのような液圧システムを備え、
− 前記駆動手段が2つのクラッチの閉位置復帰手段を備え、
− 駆動回路が本質的に潤滑および/または冷却回路とは異なり、
− 駆動流体が潤滑および/または冷却流体とは異なる性状のものである。
【0009】
本発明は上で記述したような機能ユニットを含む自動車も対象とする。
【0010】
以下、添付の図面を参照して、本発明のある個別の実施形態について、より詳細に説明する。
【0011】
図1および図2には、熱機関を変速機に接続するようになっている、本発明による伝達要素25を示した。本発明の要素25は、以下「電気モータ」と呼ぶ電気機械31と、第1クラッチ33と、第2クラッチ35を含む。
【0012】
伝達要素25はさらに、X軸と同軸な運動入力軸37および運動出力軸39を含む。以下に続く説明を容易にするために、X軸は入力側から出力側に向かって向いているものとする。
【0013】
「上流側」および「下流側」という用語はこの方向を基準として表すものとする。
【0014】
入力軸37は熱機関のクランクシャフトに回動固設され、その一部分すなわち「ノーズ」が符号41で図1に示してある。
【0015】
図示例においては、クランクシャフト41は慣性フライホイール43を具備し、緩衝装置45を介して入力軸37に接続される。
【0016】
出力軸39は、図1に符号47でその一部を示す変速機の一次入力軸に回転結合される。
【0017】
伝達要素25は、ケーシングの周囲に設けられ、図1に一点鎖線54で示した固定手段により組み付けられた第1ハーフシェル51および第2ハーフシェル52を主要構成要素とするケーシングを備える。ケーシングのハーフシェル51、52は内部に格納部53を画定し、その内部には、モータ31、クラッチ33、35、入力軸37および出力軸39が同軸に配設される。
【0018】
入力軸37および出力軸39はケーシング51、52に対し回動可能に取り付けられる。
【0019】
入力軸37は、緩衝装置45の中空軸55に対し相補形となるスプライン軸であり、入力軸37の端部の一部は第1ハーフシェル51から軸方向に突出している。入力軸37は転がり軸受57を介して第1ハーフシェル51に回動取り付けされる。
【0020】
出力軸39は、ボックス47の入力軸端に対し相補形となる内部スプライン中空軸である。ボックス47の入力軸端は、出力軸39に噛合するために、格納部53の内側に突出している。
【0021】
モータ31は、コレクターを備えケーシングの第1ハーフシェル51に固設されたステータ61と、軸受65を介して第1ハーフシェル51上に回動取り付けされたロータ63とを備える。ロータ63はステータ61の内部に半径方向に配設される。
【0022】
第1クラッチ33および第2クラッチ35は湿式であり、伝達要素25は潤滑および冷却ならびに駆動用流体の分配用軸方向管71を備える。この管71はケーシングの第2ハーフシェル52の格納部53の内部に突出する。
【0023】
伝達要素25は、2つの軸受75、76を介して、半径方向において外側に管71に回動可能に取り付けられた中間伝達装置73を含む。
【0024】
中間装置73は主に、ハブ80と、相互に軸方向に変位され、壁81、82、84については溶接により、壁83についてはブレーシングによりハブ80に固設された4つの半径方向の壁81、82、83、84とで形成される。
【0025】
中間装置73は、相互に噛合し、ロータ63の外周部分上および第1半径方向壁81の外周部分上にそれぞれ形成された相補形軸方向歯87を介してロータ63に回転結合される。
【0026】
第2半径方向壁82は、下流側の軸方向に延びる第1ハーフクラウン91と、上流側の軸方向に延びる第2ハーフクラウン92とでから構成される一体の周方向クラウンを伴って形成される。
【0027】
対応して、入力軸37は、格納部53の内部に延び軸方向クラウン97を外周部に有する半径方向壁95を有する部品で形成されるのが好ましい。軸方向クラウン97は同軸的、かつ下流側ハーフクラウン91に対し半径方向で外側に延びる。第1クラッチ33は前記ハーフクラウン91と前記クラウン97の間に配設される。
【0028】
同様に、出力軸39は、格納部53の内部に延び軸方向クラウン107を外周部に有する半径方向壁105を有する唯一の部品で形成されるのが好ましい。軸方向クラウン107は同軸的、かつ中間装置73の上流側ハーフクラウン92に対し半径方向で内側に延びる。第2クラッチ35は前記ハーフクラウン92と前記軸方向クラウン107の間に配設される。
【0029】
さらに伝達要素25は、第1クラッチ33および第2クラッチ35をそれぞれ作動させる第1ピストン111および第2ピストン112、ならびに、それぞれのクラッチ33、35に押圧するよう第1ピストン111および第2ピストン112に応力を与える第1ばね装置115および第2ばね装置116を備える。
【0030】
ピストン112とばね装置116の間には、主に軸方向にクラウンの周囲に分布するフィンガ117を有するスペーサが軸方向に押圧されて間置される。これらのフィンガ117は壁82を横断する。
【0031】
第1クラッチ33は主に、スプラインにより第1ハーフクラウン91に回転結合されピストン111の作用によりこれらのスプラインに沿ってこの第1ハーフクラウン上を軸方向に移動可能な第1連のディスク121と、スプラインにより軸方向クラウン97に回転結合されピストン111の作用によりこれらのスプラインに沿ってこの軸方向クラウン上を軸方向に移動可能な第2連のディスク122とで構成される。第1ディスク121および第2ディスク122は交互に瓦状に重なり合う。
【0032】
ディスク121、122は、ピストン111に対向するストッパ123により軸方向に制止される。
【0033】
ディスク121、122は、第1ディスク121が第2ディスク122に接触しないクラッチ解除位置から、第1ディスク121および第2ディスク122が相互に押圧される第1ディスク121および第2ディスク122のクラッチ入位置に移動することができることがわかる。
【0034】
クラッチ解除位置では、入力軸37および中間装置73は相互に回転自在である。
【0035】
図示例では、たとえばばねワッシャタイプのスプリングワッシャで構成される第1ばね装置115は第1半径方向壁81に固定され、ピストン111をクラッチ入位置に保持しようとする。
【0036】
第2クラッチ35は第1クラッチと同様の構成および動作である。すなわち第2ハーフクラウン92に結合された第1連のディスク131と、軸方向クラウン107に結合された第2連の挿入ディスク132を備える。ディスク131、132の軸方向移動はストッパ133により制限される。
【0037】
図示例では、ばね装置116は、第2壁82に固定されたばね型のダブルスプリングワッシャである。ばね装置116はフィンガ117を介して第2クラッチ35のクラッチ入位置側にピストン112を押圧する。
【0038】
図1でわかるように、2つのクラッチ33、35は、段配置すなわち「階段」配置に従い、軸方向および半径方向に変位しており、たとえば、第1クラッチ33は第2クラッチ35を基準として半径方向において外側に配設される。第2クラッチはロータ63の内部に配設される。
【0039】
さらに伝達要素25は、ニードルストッパを備え、そのうちの第1ストッパ141は軸方向において軸受65と入力軸37の半径方向壁95の間に間置され、第2ストッパ142は軸方向において半径方向壁95と出力軸39の半径方向壁105の間に間置され、第3ストッパ143は半径方向壁105と中間装置73の半径方向壁84の間に間置され、第4ストッパ144はハブ80と管71のショルダーの間に間置される。
【0040】
流体分配管71は、伝達要素25の内部、すなわち格納部53の内部に潤滑および冷却流体を分配するのに適合化されている。格納部は、外周継手150により、特にケーシングの2つのハーフシェル51、52の接合部においてこの流体に対する防水性を確保して閉じられている。
【0041】
X軸の近傍においては、潤滑および冷却流体に対する伝達要素25の防水性は、第1ハーフシェル51および中空軸55の外表面に支承される第1リップシール181と、管71の内表面および変速機の一次入力軸47の外表面に支承される第2リップシール182とにより実現されるとともに、入力軸37と中空軸55の間に設置されたOリング183によっても実現される。
【0042】
この管71は、その壁内に設けた流体供給用半径方向第1管路151と、前記供給管路151に接続された分配用軸方向第1管路153と、分配管路153と管71の外部との間に設けた孔155と、分配管路153と管の内部との間に設けた孔157を有する。
【0043】
中間装置73のハブ80は、孔155に開口し、その結果分配管路153および格納部53に通じる管路161を備える。
【0044】
作動時、供給管路151は、後で説明する冷却および潤滑流体供給回路に接続される。この流体は、分配管路153、孔155、および管路161を経由して格納部53の内部に分配され、その結果、第1クラッチ33、第2クラッチ35、およびモータ31が潤滑かつ冷却される。
【0045】
留意すべきは、特に、歯87のところに設けられた通路163があるおかげで、潤滑および冷却流体は半径方向においてステータ61側に分配されることである。この通路163の寸法により、ロータ63より下の格納部53の部分と、ステータ61が内部に配設される外側部分との間における流体の流量を制御することができる。
【0046】
同じく留意すべきは、クラッチ33、35およびモータ31の相対的配置により、潤滑および冷却流体に遠心力がかけられるため、伝達要素25の動作中、第1クラッチ33を潤滑および冷却流体の浴の中に保持することが可能であり、その一方で、第2クラッチ35の領域はこの流体のミストの発生源となっていることである。この配置の利点は、各クラッチの領域内にある流体の量を、特に、これらのクラッチによって発生する発熱エネルギーに適合させることである。
【0047】
クラッチ33がその中に維持される流体すなわち通常はオイルの浴は、半径方向壁81のレベルにおいて通路164があるため水平である。
【0048】
第1クラッチ33は第2クラッチ35よりも強い加熱を受けるので、第1クラッチの近傍において、より多い流量の冷却流体を実現することが必要である。
【0049】
クラッチ35と比較してクラッチ33の方がより熱くなるのは、第2クラッチよりも第1クラッチに対しより強く影響する滑動段階によるからである。また、クラッチ35を浴ではなく流体のミスト内に維持することにより、変速機の一次軸へのこの流体の引き摺りの影響を軽減することが可能である。
【0050】
他方、冷却および潤滑流体は、軸受57および軸受65を冷却し潤滑するために、分配管路153、孔157、変速機の一次入力軸47内に形成された半径方向通路171、この軸内に設けた軸方向管路172、流体の流量を調節することができる調節装置175、入力軸37内に形成された軸方向管路177、および軸受57の近傍に開口する半径方向通路179を順番に経由して、これらに分配される。
【0051】
この経路を辿って分配される流体は格納部53内で軸受57を通って、軸受65およびロータ63に向かって流れ、次にステータ61に向かって流れる。したがってステータ61およびロータ63は、孔155および通路163、164を通過してきた流体だけでなく、孔157および上で詳細に記述した経路を通過してきた流体によっても冷却および潤滑される。またこの流体によりストッパ141、142、143を潤滑することができる。
【0052】
次に、ピストンすなわち圧力板111、112を移動することができ、したがってクラッチ33、35をクラッチ入位置およびクラッチ解除位置のうちの一方から他方の位置に移動させることができる構成について記述する。
【0053】
第1ピストン111は、第3半径方向壁83およびハブ80の外表面とともに第1圧力室201を画定し、第2ピストン112は、第4半径方向壁84およびハブ80の外表面とともに第2圧力室202を画定する。
【0054】
第1圧力室201は、半径方向壁83の外周に固定されピストン111の表面に載架するリップシール205、ならびにピストン111の半径方向の内縁に固定されハブ80の外表面に載架するリップシール206により、駆動流体に対しほぼ防水性を有する状態にされる。
【0055】
同様に、圧力室202は、半径方向壁84とピストン112に載架する第1継手215、ならびにピストン112とハブ80に付加された部品217の外表面に載架する第2リップシール216により、ほぼ防水性を有する状態にされる。
【0056】
各圧力室201、202は、ハブ80内に形成された2つの駆動流体供給通路221、222を経由して、ハブ80の中央穴に開口する。
【0057】
一方、流体分配管71は、管路151と同様の半径方向供給管路(図示せず)を経由して駆動流体供給回路に接続された2つの管路231、232と、管路153と同様の軸方向分配管路(図示せず)とを備える。管路231、232はそれぞれ通路221、222に通じている。
【0058】
図示例では、駆動回路および潤滑/冷却回路は部分的に共通であるため、駆動流体は潤滑/冷却流体と同じである。
【0059】
クラッチ33、35の最初の閉位置からクラッチ解除位置への移行は、加圧された駆動流体を各圧力室201、202に供給することにより実現されることがわかる。すると、対応するピストン111、112は、X軸の方向に従い、ばね装置115、116を圧縮し、ディスク121、122、131、132の積層を緩めながら、軸上を下流側(図2において左側)に移動する。
【0060】
各圧力室201、202内の駆動流体の圧力を当初の低い値に戻すと、ピストン111、112はばね115、116の作用により、当初の位置に戻る。するとクラッチ33、35は「自然に閉じる」位置、すなわち、圧力室201、202に駆動流体が供給されないクラッチ入位置に復帰する。
【0061】
2つのクラッチ33、35は別々に作動させることができ、またクラッチ33、35の作動に関する上の説明はそれぞれ別々に適用されることは周知のことである。
【0062】
さらに、圧力室201、202に供給することができる駆動流体の圧力は値の範囲で変化することでき、対応するクラッチ33、35は、伝達がない状態(クラッチ解除)、完全な伝達状態(クラッチ入り)、部分的な伝達状態(滑り)のうちのいずれか1つの状態になることができる。
【0063】
第2半径方向壁82およびピストン112は、両者の間の、ピストン112を基準として第2圧力室202とは反対側に位置するところに、補償室235を画定することに留意しなければならない。この補償室235には、管路161、ならびに半径方向壁82内に設けた孔237を経由して潤滑および冷却流体が供給される。したがって高速回転では、第2圧力室202内に含まれている駆動流体の遠心力によりピストン112に対して生じる追加的な応力は補償され、ピストン112は、ディスク131、132間のトルクの移行を可能にしながら作動する。また、クラッチ33、ピストン111、およびばね115の寸法決定により、このクラッチ33を駆動するための補償室をなくすことが可能になる。
【0064】
次に図3を参照して本発明による機能ユニットについて記述する。
【0065】
機能ユニットは、上で記述したような伝達要素、ならびにクラッチ33、35を駆動する液圧回路302、および伝達要素25の冷却および潤滑液圧回路301を備える。
【0066】
機能ユニットはさらに、潤滑回路301に接続された車の第1液圧システム401と、駆動回路302に接続された車両の第2液圧システム501を備える。
【0067】
図3からまず、冷却および潤滑回路301は駆動回路302とは異なっているということがわかる。
【0068】
冷却および潤滑回路301は、
− オイルのような冷却および潤滑流体のタンク303と、
− 前記タンクの出口に設置されたろ過要素(ストレーナ)305と、
− モータ308および前記モータの駆動ユニット309を具備する低圧ポンプ307と、
− 供給管路151および流体分配管71とを介してポンプ307を伝達要素25の格納部53に接続する潤滑管路310と
を備える。
【0069】
駆動回路302は、クラッチ33、35の圧力室201、202へ駆動流体を送出する管路を構成する出力管路321を具備する圧力源320を備える。
【0070】
圧力源320は、圧力発生装置325と、蓄圧装置327と、蓄圧装置327を送出管路321に接続する電磁弁328と、送出管路321内にある駆動流体圧力を測定する送出圧力センサ329とを備える。
【0071】
圧力発生装置325は、
− 駆動流体タンク333と、
− タンクの出口に設置されたろ過要素(ストレーナ)335と、
− モータ338およびこのモータの駆動ユニット339を具備する高圧ポンプ337と
を備える。
【0072】
図示例では、高圧ポンプのモータの駆動ユニット339および低圧ポンプのモータの駆動ユニット309は、物理的に、同一の中央駆動装置にまとめられる。
【0073】
圧力発生装置325はさらに逆止弁341も備え、高圧ポンプ337はこの弁を介して送出管路321に接続され、その結果、駆動流体はポンプ337内を送出管路321側にしか循環しない。
【0074】
電磁弁328は、2つの位置、すなわち
− 蓄圧器327が送出管路321から隔離される、蓄圧器327の中立運転モードに相当する第1位置すなわち休止位置(図3に示す位置)
− 駆動流体がいずれかの方向に流れることができる、蓄圧器327が送出管路321に通じている第2位置すなわち作動位置であって、したがって蓄圧器が流体を受けとるモードまたは送出するモードで作動する位置
を占めることができる。
【0075】
制御ユニット339は、電磁弁328が第2位置にあるとき、蓄圧器327に再充填するために、送出管路321内に駆動流体を供給するようモータ338を制御する。
【0076】
圧力センサ329は、駆動ユニット339ならびに駆動ユニット309に接続されるので、前記ユニットは、送出管路321内にある駆動流体圧力に応じてそれぞれのモータ338、308を制御することができる。
【0077】
送出管路321は、2両端位置形比例電磁弁351、352を介してそれぞれの圧力室201、202に開口する駆動流体通過管路221、222のそれぞれに接続される。
【0078】
駆動回路302のこれらの電磁弁351、352のそれぞれは、一方の端の休止位置(図3に示す)、一方の端の作動位置、および2つの中間作動位置のうちのいずれかの位置を選択的に占めることができる。
【0079】
休止位置では、圧力室201、202は開放回路355、356に通じており、開放回路はたとえばタンク333内に開口し、送出管路321から隔離することができる。
【0080】
作動位置では、圧力室201、202は、駆動流体の供給を受けることができるよう送出管路321に通じているが、開放回路355、356は電磁弁351、352のレベルで塞がれる。
【0081】
さらに駆動回路302は、送出管路内の圧力があらかじめ決められたしきい値より大きいとき、自身を開放し送出管路321を開放回路357に通じさせるようになっている安全弁359を経由して、送出管路321に接続される他の開放回路357をさらに備える。開放回路357は駆動流体タンク333に接続することができ、その結果、余剰分の流体は送出管路321内に再循環される。
【0082】
次に駆動回路302の動作について記述する。
【0083】
初期状態において、クラッチ33、35がクラッチ入位置(閉位置)にあり、圧力室201、202内にある圧力は低い値Pにあると仮定する。
【0084】
蓄圧器327には常に、クラッチ33、35をクラッチ解除位置(すなわち開放位置)にもってくるまでピストン111、112を移動するのに足る「高圧」と呼ばれる流体圧力Pをきわめて短い応答時間内に圧力室201、202内に供給することができるようになっていなければならない。それができない場合、駆動ユニット339はポンプモータ338を駆動し、電磁弁328は作動位置に移動され、その結果、蓄圧器327は再充填される。
【0085】
クラッチ33、35のうちの一方を、滑り位置または完全にクラッチが解除された位置にもってこなければならないとき、対応する電磁弁351、352はそれに適した作動位置に移動される。同時に電磁弁328も作動位置に移動される。逆止弁341は、送出回路321内に含まれている流体が圧力発生装置325側に戻るのを防止するので、蓄圧器327から出た流体は圧力室201、202内に導入され、圧力室内では圧力はほぼ瞬間的に設定値に達する。この設定値に、それぞれの比例弁351または352の位置が関連付けられる。
【0086】
特に、2つの圧力室のいずれか一方の中における圧力は、クラッチ解除駆動値となる高い値Pに瞬間的に到達することができる。
【0087】
2つのクラッチ33、35は個別に作動させることができることは言うまでもない。
【0088】
また、2つのクラッチ33、35を同時にクラッチ解除位置にセットしなければならない場合、2つの電磁弁351、352は上で説明したように操作されることもわかる。
【0089】
図示例においては、第1液圧システム401は、流体受容装置を構成するアクチュエータ403、アクチュエータ403への供給およびアクチュエータの開放バルブ405、ならびに流体タンク、およびタンクから加圧流体をアクチュエータに供給するポンプを具備する液圧パワーステアリングシステムである。
【0090】
図3に示すように、潤滑回路301のタンク303およびポンプ307は、車両上に設けられた第1液圧システム401のそれぞれタンクおよびポンプで構成される。
【0091】
液圧パワーステアリングバルブ405は開放管路407によりタンク403に接続されると同時に、充填管路409により、ポンプ307の下流側の潤滑管路310に接続される。
【0092】
このように、潤滑回路301内で使用される流体は第1液圧システム401内で使用される流体と同じであり、同様に、タンク303、ストレーナ305、およびポンプ307で構成される液圧回路の構成要素は、潤滑回路301および第1液圧システム401と共通である。
【0093】
本発明の実施の変形形態によれば、第1液圧システムは、流体の受容装置を構成する別の伝達要素の冷却および潤滑システム、または、受容装置がブレーキで構成される液圧ブレーキシステム、あるいはさらには、受容装置が液圧シリンダーで構成される液圧サスペンションシステムで構成することができる。
【0094】
駆動回路302に接続された第2液圧システム501は、図示例においては、制御式マニュアル変速機システムで構成される。
【0095】
このシステム501は、制御式マニュアル変速機503、変速機アクチュエータ505、および変速機チェンジアクチュエータ507を備える。アクチュエータ505、507は双方で第2液圧システム501からの流体の受容装置を構成する。
【0096】
第2液圧システム501はさらに、流体タンクと、および加圧流体を受容装置505、507に供給することができるポンプとを備える。
【0097】
各アクチュエータ505、507は駆動回路302の送出管路321に接続され、その結果、駆動回路302のタンク333および高圧ポンプ337は、車両上に設けられた第2液圧システム501のそれぞれタンクおよびポンプで構成されることになる。
【0098】
潤滑回路301および第1液圧システム401について記述したものと同様に、駆動回路302および第2液圧システム501は同じ駆動流体を使用し、主にタンク333、ストレーナ335、およびポンプ337である共通の装置を有する。
【0099】
車両に通常設けられている液圧回路のいくつかの装置を、ハイブリッド駆動系の伝達要素と共通化させることにより、これらの液圧回路のアーキテクチャならびにその体積およびコストを大幅に簡素低減化することが可能になる。また本発明により、従来の駆動系へのハイブリッド型の伝達要素の組み込みも容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明による機能ユニットの伝達要素の軸方向半分割部分図である。
【図2】本来、クラッチ、入力および出力軸、中間装置、およびピストンを備える伝達要素のモジュールを示す、図1の拡大詳細図である。
【図3】本発明による機能ユニットの略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体タンク(303、333)と、受容装置(403、503)と、前記タンク(303、333)および前記受容装置(403、503)に接続されたポンプ(307、337)とを具備し、タンク(303、333)から流体を受容装置(403、503)に供給するよう適合化された少なくとも1つの液圧システム(401、501)、および
熱機関に接続されるようになっている運動入力軸(37)と、変速機に接続されるようになっている運動出力軸(39)と、ステータ(61)およびロータ(63)を含む電気機械(31)と、双方(33、35)とも湿式のクラッチである、入力軸(37)とロータ(63)を結合する第1クラッチ(33)と、ロータ(63)と出力軸(39)を結合する第2クラッチ(35)とを備える伝達要素であって、潤滑および/または冷却流体回路(301)と、駆動流体回路(302)を含む前記クラッチ(33、35)の駆動手段とをさらに含み、駆動回路(302)が各クラッチ(33、35)用の圧力室(201、202)を含み、その結果、圧力室(201、202)内にある駆動流体の圧力が各クラッチ(33、35)の状態を決定するような伝達要素(25)を備える自動車の機能ユニットにおいて、
前記回路(301、302)のうち一方は、液圧システム(401、501)に接続され、その結果、前記回路(301、302)の流体が液圧システムの第1の流体と同じであり、前記回路(301、302)が前記ポンプ(307、337)によって、前記タンク(303、333)から流体を供給されることを特徴とする機能ユニット。
【請求項2】
前記液圧システムが、受容装置を構成する第2伝達要素の潤滑および/または冷却システム、あるいは受容装置がパワーステアリングのアクチュエータ(403)である液圧パワーステアリングシステム(401)、あるいは受容装置がブレーキである液圧制動システム、あるいは受容装置が液圧シリンダーである液圧サスペンションシステムであること、および前記液圧システムに接続された回路が潤滑および/または冷却流体回路(301)であることを特徴とする請求項1に記載の自動車の機能ユニット。
【請求項3】
前記液圧システム(501)が変速機システム、特に制御式マニュアル変速機で(503)であり、受容装置(505、507)が選択アクチュエータ(505)と変速機チェンジアクチュエータ(507)を備えること、および前記液圧システム(501)に接続された回路が駆動流体回路(302)であることを特徴とする請求項1または2に記載の自動車の機能ユニット。
【請求項4】
潤滑および/または冷却流体回路(301)、ならびに駆動流体回路(302)に接続された2つのそのような液圧システムを備えることを特徴とする一体としてとらえた請求項2および3に記載の伝達要素。
【請求項5】
前記駆動手段が2つのクラッチ(33、35)の閉位置復帰手段(115、116)を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の伝達要素。
【請求項6】
駆動回路(302)が本質的に潤滑および/または冷却流体回路(301)とは異なることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の伝達要素。
【請求項7】
駆動流体が潤滑および/または冷却流体とは異なる性状のものであることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の伝達要素。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の機能ユニットを含むことを特徴とする自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−501898(P2008−501898A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−514046(P2007−514046)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【国際出願番号】PCT/FR2005/050378
【国際公開番号】WO2005/123432
【国際公開日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【出願人】(505371025)
【Fターム(参考)】