説明

溝付き管の製造方法、その装置および溝付き管

【課題】 溝付き管の新規な製造方法、製造装置を提供する。
【解決手段】 溝付き管の製造方法において、管11の一端部から第1所定距離離れた位置において、管11の壁11aの外側から径方向内側へ向けて溝付け工具140を押し付ける押し付け工程と、溝付け工具140を押し付けたまま、管11の軸方向に沿って管11と溝付け工具140とを相対的に移動させ、管11の壁11aに凹状の溝11b、11cを成形する軸送り工程とを備える工程とする。溝付き管の製造装置において、管11を保持する保持装置120と、管11の壁11aを径方向内側へ凹ませる溝付け工具140と、溝付け工具140を押し付ける押し付け装置130と、溝付け工具140を押し付けたまま、管11の軸方向に沿って管11と溝付け工具140とを相対的に移動させる軸送り装置150とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溝付き管の製造方法、その装置および溝付き管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、溝付き管が知られており、例えば二重管を構成する際の内管に用いられる。
【0003】
従来の溝付き管の成形方法として、例えば特許文献1に示されるものが知られている。即ち、径寸法の異なる内管と外管とから成る二重管において、外管に内管を挿通した後に、内管を捻り加工することで、ねじ山を形成するようにしている。ねじ山は、内管壁に対して拡径されて形成され、ねじ山の頂部が外管の内周面に圧接される。また、ねじ山同士の間となる部位は螺旋溝となって内管壁よりも凹んで形成される。
【特許文献1】特開2003−329376号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1における技術では、内管を捻ることによって、ねじ山を隆起させ、溝を陥没させて溝付きの内管を形成しているので、管の長手方向における溝の形成範囲が安定しない。また、溝形状の安定度が低く製品品質を一定にできない。更に、管の径方向外側へ向けてねじ山が隆起するため、管の外径が一定しない。このように従来技術の溝付き管は、上記問題点の少なくともひとつに起因して、市場の要求に応えることができなかった。
【0005】
また、二重管を構成する際には、内管の隆起が強く外管に押し付けられるという問題点があった。また、捻り加工の途中で内管の隆起が部分的に外管に当接することがあり、長い管への適用が困難であった。さらに、長手方向の端部において内管と外管との径寸法差による隙間が生じ、別体の部品(特許文献1中ではヘッダ)で閉塞する必要があった。これでは部品点数、加工工数が増加する。
【0006】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、溝付き管の新規な製造方法を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、溝を所定位置から確実に成形する溝付き管の製造方法を提供することにある。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、管に安定した形状の溝を成形する溝付き管の製造方法を提供することにある。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、溝付き管の新規な製造装置を提供することにある。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、溝を所定位置から確実に成形する溝付き管の製造装置を提供することにある。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、管に安定した形状の溝を成形する溝付き管の製造装置を提供することにある。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、安定した溝を有する溝付き管を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。
【0014】
請求項1に記載の発明では、溝付き管の製造方法において、管(11)の一端部から第1所定距離離れた位置において、管(11)の壁(11a)の外側から径方向内側へ向けて溝付け工具(140)を押し付ける押し付け工程と、溝付け工具(140)を押し付けたまま、管(11)の軸方向に沿って管(11)と溝付け工具(140)とを相対的に移動させ、管(11)の壁(11a)に凹状の溝(11b、11c)を成形する軸送り工程とを備えることを特徴としている。
【0015】
これにより、管(11)の全長の大小に関係なく、溝(11b、11c)の起点を明確に規定して、安定した形状(深さ、板厚等)を有する溝(11b、11c)の成形を可能とする新規な溝付き管の製造方法とすることができる。尚、溝(11b、11c)が成形されない管(11)の一般部位の外径は、本来の寸法をほぼそのまま残して一定とすることができる。
【0016】
請求項2に記載の発明では、軸送り工程は、管(11)の他端部から第2所定距離離れた位置まで行い、その後に、管(11)の径方向外側へ向けて溝付け工具(140)を引き離す引き離し工程を備えることを特徴としており、これにより、溝(11b、11c)の終点を明確に規定できる。
【0017】
請求項3に記載の発明では、溝付け工具(140)を押し付けたまま、管(11)の周方向に沿って管(11)と溝付け工具(140)とを相対的に移動させ、管(11)の壁(11a)に凹状の溝(11b、11c)を成形する回転送り工程をさらに備えることを特徴としており、これにより、管(11)の周方向に沿う溝(11b)を成形できる。
【0018】
請求項4に記載の発明では、軸送り工程と回転送り工程とによって、周方向に沿って延びる溝(11b)と、この周方向に沿って延びる溝(11b)から軸方向に延びだす溝(11c)とを成形することを特徴としており、これにより、管(11)の周方向から軸方向に延びだす溝(11c)を連続的に成形できる。
【0019】
円周方向に沿って延びる溝(11b)の成形にあたっては、請求項5に記載の発明のように、回転送り工程のみを所定の回転角度にわたって行うことで、円弧状にしたり、請求項6に記載の発明のように、回転送り工程のみを管(11)の1周以上にわたって行うことで、環状にすることができる。
【0020】
請求項7に記載の発明では、回転送り工程のみを行った前および/または後に、軸送り工程を同時に行うことで、周方向に沿って延びる溝(11b)から軸方向に延びだす溝(11c)を成形することを特徴としており、これにより、周方向に沿って延びる溝(11b)と軸方向に沿って延びる溝(11c)とを連続的に接続できる。
【0021】
請求項8に記載の発明のように、軸送り工程と回転送り工程とを同時に行うことで、螺旋状の溝(11c)を成形することができる。
【0022】
請求項9に記載の発明では、軸送り工程と回転送り工程とを同時に行い、螺旋状の溝(11c)を成形する工程の前および/または後に、回転送り工程のみを行い、周方向に沿って延びる溝(11b)を成形することを特徴としており、これにより、螺旋状の溝(11c)と連続的に接続される周方向に沿って延びる溝(11b)を成形できる。
【0023】
請求項10に記載の発明では、押し付け工程では、複数の溝付け工具(140)を管(11)の周囲に等間隔に押し付けることを特徴としており、これにより、複数条の溝(11c)を同時に成形できる。
【0024】
請求項11に記載の発明では、管(11)と溝付け工具(140)とが相対的に移動することで、溝付け工具(140)は管(11)の壁(11a)上を転がりながら管(11)の壁(11a)を凹ませることを特徴としており、これにより、溝付け工具(140)による溝(11b、11c)形成時の抵抗を低減でき、溝加工が容易となる。
【0025】
請求項12に記載の発明では、第1位置において、回転送り工程のみを所定の回転角度にわたって行い、周方向に沿って延びる第1周溝(11b1)を円弧状に成形する第1周溝成形工程と、第1周溝成形工程の後に、第1位置と第2位置との間において、回転送り工程と軸送り工程とを併用することで、螺旋状に延びる螺旋溝(11c)を成形する螺旋溝成形工程と、第2位置において、螺旋溝成形工程の後に、回転送り工程のみを所定の回転角度にわたって行い、周方向に沿って延びる第2周溝(11b2)を円弧状に成形する第2周溝成形工程と備えることを特徴とする。
【0026】
これにより、一連の工程で、第1周溝(11b1)、螺旋溝(11c)、第2周溝(11b2)を順に成形することができる。
【0027】
請求項13に記載の発明では、第1位置において、回転送り工程のみを所定の回転角度にわたって行い、周方向に沿って延びる第1周溝(11b1)を円弧状に成形する第1周溝成形工程と、第2位置において、回転送り工程のみを所定の回転角度にわたって行い、周方向に沿って延びる第2周溝(11b2)を円弧状に成形する第2周溝成形工程と、第2周溝(11b2)成形工程の後に、第2位置から第1位置の間において、回転送り工程と軸送り工程とを併用することで、螺旋状に延びる螺旋溝(11c)を成形する螺旋溝成形工程と備えることを特徴とする。
【0028】
この製造方法では、第1周溝(11b1)を成形した後に、第2位置から第1位置に向かって螺旋溝(11c)を成形し、螺旋溝(11c)を第1周溝(11b1)に合流させる。第1周溝(11b1)に螺旋溝(11c)が合流して、両溝(11b1、11c)が連絡するため、管(11)の壁(11a)の望ましくない変形を抑えることができるという利点がある。
【0029】
請求項14に記載の発明では、溝付き管の製造方法において、管(11)の壁(11a)の外側から径方向内側へ向けて転動体(141)を押し付ける押し付け工程と、転動体(141)を押し付けたまま、管(11)と転動体(141)とを相対的に移動させ、転動体(141)が管(11)の壁(11a)の上を転がりながら凹状の溝(11b、11c)を成形する送り工程とを備えることを特徴とする溝付き管の製造方法を採用する。
【0030】
この発明によると、転動体(141)が管(11)の壁(11a)の上を転動して溝(11b、11c)を成形するため、管(11)の表面のバリの発生、割れの発生、ひっかききずの発生といった荒れを抑制して、溝(11b、11c)を成形することができる。転動体(141)は、管(11)の壁(11a)との接触面に滑らかな曲面を備えることができる。滑らかな曲面は、管(11)の壁(11a)への応力を分散させる。例えば、転動体(141)は、全方向への転がりが可能な球体(141)を採用することができる。
【0031】
請求項15に記載の発明では、送り工程は、管(11)の軸方向および/または周方向に沿って管(11)と転動体(141)とを相対的に移動させることを特徴とする。
【0032】
軸方向への送りは、軸方向に沿って延びる溝(11c)を成形する。周方向への送りは、周方向に沿って延びる溝(11b)を成形する。さらに、軸方向および周方向への送りは、管(11)の壁(11a)に螺旋状の溝(11c)を成形する。これらの送り工程の送り方向に合わせて、転動体(141)は転がる。
【0033】
請求項16に記載の発明では、二重管の製造方法に関するものであって、請求項1〜請求項13のいずれか1つに記載の管(11)を内管(11)として、内管(11)の外側に外管(12)を配置すると共に、少なくとも内管(11)の両端で内管(11)と外管(12)とを気密に接合して二重管(10)を形成し、溝(11b、11c)を内管(11)と外管(12)との間の流体用流路(10a)として形成することで好適な二重管の製造方法とすることができる。
【0034】
請求項17に記載の発明では、溝付き管の製造装置において、管(11)を保持する保持装置(120)と、管(11)の壁(11a)に押し付けられ、管(11)の壁(11a)を径方向内側へ凹ませる溝付け工具(140)と、管(11)の一端部から第1所定距離離れた位置において、管(11)の壁(11a)の外側から径方向内側へ向けて溝付け工具(140)を押し付ける押し付け装置(130)と、溝付け工具(140)を押し付けたまま、管(11)の軸方向に沿って管(11)と溝付け工具(140)とを相対的に移動させる軸送り装置(150)とを備えることを特徴としており、これにより、請求項1に記載の溝付き管を製造するための装置とすることができる。
【0035】
請求項18に記載の発明では、溝付け工具(140)を押し付けたまま、管(11)の周方向に沿って管(11)と溝付け工具(140)とを相対的に移動させる回転送り装置(160)を備えることを特徴としており、これにより、請求項3に記載の溝付き管を製造するための装置とすることができる。
【0036】
請求項19に記載の発明では、溝付け工具(140)は、管(11)の周囲に等間隔に複数配置されたことを特徴としており、これにより、請求項10に記載の溝付き管を製造するための装置とすることができる。
【0037】
請求項20に記載の発明では、溝付け工具(140)は、管(11)の壁(11a)上を転がるボール(141)またはローラを有することを特徴としており、これにより、請求項11に記載の溝付き管を製造するための装置とすることができる。
【0038】
請求項21に記載の発明では、溝付き管の製造装置において、管(11)の壁(11a)の外側から径方向内側へ向けて押し付けられる転動体(141)と、転動体(141)が管(11)の壁(11a)の上を転がりながら凹状の溝(11b、11c)を成形するように、転動体(141)を押し付けたまま、管(11)と転動体(141)とを相対的に移動させる送り装置(150、160)とを備えることを特徴とする溝付き管の製造装置が採用される。
【0039】
この発明によると、転動体(141)が管(11)の壁(11a)の上を転動して溝(11b、11c)を成形するため、管(11)の表面のバリの発生、割れの発生、ひっかき傷の発生といった荒れを抑制して、溝(11b、11c)を成形することができる。転動体(141)は、管(11)の壁(11a)との接触面に滑らかな曲面を備えることができる。滑らかな曲面は、管(11)の壁(11a)の荒れをさらに抑制する。例えば、転動体(141)は、全方向への転がりが可能な球体(141)を採用することができる。
【0040】
請求項22に記載の発明では、送り装置(150、160)は、管(11)の軸方向および/または周方向に沿って管(11)と転動体(141)とを相対的に移動させることを特徴とする。軸方向への送りは、軸方向に沿って延びる溝(11c)を成形する。周方向への送りは、周方向に沿って延びる溝(11b)を成形する。さらに、軸方向および周方向への送りは、管(11)の壁(11a)に螺旋状の溝(11c)を成形する。
【0041】
請求項23〜25に記載の発明は、管(11)の一端部から第1所定距離離れた位置と、管(11)の他端部から第2所定距離離れた位置との間で、管(11)の壁(11a)の外側から径方向内側へ向けて凹まされて形成される溝(11b、11c)を有し、溝(11b、11c)は、周方向に沿って延びる溝(11b)と、軸方向に沿って延びる溝(11c)とを有し、2つの溝(11b、11c)は、連続的に形成されていることを特徴とする溝付き管に係るものである。
【0042】
これらの発明によると、周方向に沿って延びる周溝(11b)と、軸方向に沿って延びる軸溝(螺旋溝)(11c)とが連続しているので、両溝(11b、11c)を通して連続した流路を得ることができる。このような溝付き管は、例えば、二重管の内管に用いて好適である。これらの発明において、周溝(11b)は、円弧状あるいは環状に形成されることができ、軸溝(11c)は、螺旋状の溝(11c)として形成されることができる。
【0043】
尚、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
(第1実施形態)
本発明を適用した二重管10は、例えば車両用空調装置の冷凍サイクルに用いられる。二重管10は、冷媒の配管としての機能とともに、冷凍サイクル中の凝縮器から流出される高温の高圧冷媒と、蒸発器から流出される低温の低圧冷媒との間で熱交換を許容する内部熱交換器としての機能を提供する。内管11の内部には、低圧冷媒が流され、内管11と外管12との間には、高圧冷媒が流される。また、二重管10を形成する内管11は、壁(表面)11aを凹ませて溝11b、11cが成形されている。これらの溝11b、11cは、溝付き管製造装置100によって成形されている。
【0045】
以下、二重管10および溝付き管製造装置100の基本構成について図1〜図4を用いて順に説明する。尚、図1は二重管10を示す部分断面図、図2は内管11の一端部分を示す平面図、図3は溝付き管製造装置100を示す正面図、図4は図3のA方向から見た加工具130、溝付け工具140を示す矢視拡大平面図である。
【0046】
二重管10は、図1、図2に示すように、700〜900mm程度の全長を有している。二重管10は、内管11と外管12とを備え、外管12の内部を内管11が貫通するように配設されている。外管12の内径(例えば19.6mm)は軸方向に一定で、内管11の外径(例えば19.05mm)に対してわずかに大きく設定されている。外管12の両端部には、端部開口から所定距離離れた位置に、筒状の接合部12bが形成され、これらの接合部12bは、内管11の両端部側表面に接合されている。外管12の両端部の端部開口から上記接合部12bより離れた位置には、バーリング孔12aが設けられている。バーリング孔12aは、外管12の壁を径方向に貫通した貫通孔を提供している。バーリング孔12aは、外管12から径方向へ延び出す短い筒状突出管を提供する。2つのバーリング孔12aのそれぞれには、フランジ部を有する入口パイプ13a、および出口パイプ13bが接合されて、両パイプ13a、13bは、外管12の内部と連通している。
【0047】
内管11の壁11aには、入口パイプ13aに対応する位置と、出口パイプ13bに対応する位置との間に、外側から径方向内側に向けて凹まされた溝が形成されている。入口パイプ13aに対応する位置が、第1位置であり、内管11の一端部から第1所定距離離れた位置に対応する。出口パイプ13bに対応する位置が、第2位置であり、内管11の他端部から第2所定距離離れた位置に対応する。
【0048】
溝は、周回溝11bと螺旋溝11cとを有している。周回溝11bは、両パイプ13a、13bの位置にそれぞれ対応して、内管11の周方向に沿って延びる環状の第1周回溝11b1と、第2周回溝11b2として形成されている。入口パイプ13a側の第1周回溝11b1と、出口パイプ13b側の第2周回溝11b2とは、ほぼ対称に形成されている。また、螺旋溝11cは、一方の周回溝11bから内管11の軸方向に延びだし、他方の周回溝11bに接続されるように形成されている。螺旋溝11cは、ここでは多条(例えば3条)の溝としている。周回溝11bと、螺旋溝11cとは、連続した溝として形成されている。例えば、第1周回溝11b1からは3本の螺旋溝11cが延び出しており、第2周回溝11b2には3本の螺旋溝11cが合流している。周回溝11bと螺旋溝11cとは、後述する溝付き管製造装置100によって連続的に形成されている。尚、螺旋溝11c同士の間となる頂点部が形成する仮想円の径は、内管11の加工前の径とほぼ同じである。これらの頂点部、いいかえれば稜線は、外管12の内周面とわずかな隙間を介して位置することができる。また、これらの稜線部は、二重管10が所要の配管として成形されること、例えば曲げられることにより外管12の内面に当接することがある。
【0049】
両パイプ13a、13bは直接的に各周回溝11b1、11b2に連通している。そして、周回溝11bおよび螺旋溝11cによって、内管11と外管12との間の流路となる内外間流路10aが形成される。
【0050】
二重管10は、車両エンジンおよびその他の機器、ボディ等との干渉を避けるために、複数の曲げ部(図示省略)が形成されて、エンジンルーム内に搭載される。内外間流路10aには両パイプ13a、13bを介して凝縮器からの高圧冷媒が流通され、また、内管11内には蒸発器からの低圧冷媒が流通され、高圧冷媒と低圧冷媒との間で熱交換が行なわれるようになっている。
【0051】
このように、この実施形態の二重管10においては、外管12の両端部を内管11に接合し、また、両パイプ13a、13bの位置に対応するように各周回溝11b1、11b2を設けることで、内外間流路10a(螺旋溝11c)への高圧冷媒の出入りを簡単な構成で実現させると共に、外管12に部分的な拡大部を設けることなく、両パイプ13a、13bと内外間流路10aとの連通を実現させている。
【0052】
次に、上記内管11を製造するための溝付き管製造装置(以下、製造装置)100について説明する。製造装置100は、図3、図4に示す構成を備える。この製造装置100の前工程には、素材としてのパイプ材を供給する供給装置101が配置され、後工程には、溝付き管を二重管10に加工する二重管製造装置102が配置されている。供給装置101は、例えば、コイル状のパイプ材を伸長させるアンコイラと成形装置とカッタ装置とを備えることができる。二重管製造装置102は、例えば、外管加工装置と、プレス装置と溶接装置とを含む内外管接合装置と、二重管を曲げるなどして成形する成形装置とを備えることができる。
【0053】
製造装置100は、内管11の両端を保持し固定するパイプ保持部120と、軸送り部150と回転送り部160とにより可動される加工具130とを備える。加工具130には、溝付け工具140が設けられている。パイプ保持部120は、内管11をその長手方向に沿って、かつその周方向に沿って保持し固定する。軸送り部150は、内管11に対して溝付け工具140を軸方向へ移動させる。回転送り部160は、内管11に対して溝付け工具140を回転方向へ移動させる。軸送り部150と回転送り部160とは、それぞれ単独で、あるいは両方同時に溝付け工具140を移動させることができる。製造装置100は、内管11をパイプ保持部120で保持した後に、軸送り部150、回転送り部160により可動される加工具130に設けられた溝付け工具140によって、内管11の壁11aに上記周回溝11bおよび螺旋溝11cを成形する装置である。
【0054】
上記パイプ保持部120、加工具130、溝付け工具140、軸送り部150、回転送り部160は、図3中左右方向に延びるベース110の上側に配設されている。
【0055】
保持装置としてのパイプ保持部120は、第1チャック121と第2チャック122とを有し、それぞれがベース110の長手方向の両端側に配設されている。第1チャック121と第2チャック122とは、内管11の軸方向両端部側をチャックして保持できる。
【0056】
押し付け装置としての加工具130は、上記第1チャック121と第2チャック122との間において、ベースの長手方向に摺動可能に、かつ、加工対象管としての内管11の周方向に回転可能に配置されている。加工具130は、後述する軸送り部150によってベースの長手方向に摺動して移動することができる。加工具130は、回転送り部160によって内管11の周方向に回転して移動可能となっている。加工具130は、内管11の周方向に沿って等角度の複数に分割されたブロック131を有する。この実施形態では螺旋溝11cの数に合わせた3つの扇状のブロック131を有する。各ブロック131は径方向に摺動して移動可能に、すなわち径方向に進退可能に支持されている。それらはチャックのように構成されることができる。これらのブロック131を径方向に関して所定位置に配置した状態で、それらの中心部に内管11を挿通可能な挿通孔132が形成される。これらのブロック131の位置を調節することで、内管11の径に応じて挿通孔132の径を調節することができる。さらに、各加工具130には、扇状の加工具130を径方向に貫通する収容孔内に螺合するボルト142が設けられている。このボルト142は、径方向に進退可能である。このボルト142は、後述するボール141の径方向位置を規定する。このように、この実施形態の構成では、ブロック131とボルト142との両方が径方向に進退可能に構成され、これらのいずれか、または両方を駆動することで、後述するボール141の径方向の位置が調節される。加工具130は、これらブロック131とボルト142との両方またはいずれか一方によって提供することができる。ブロック131は、内管11を挿通孔132内に配置した状態で、径方向に進退可能に構成されており、その進退は、この実施形態では手動操作によって与えられる。手動操作のために複数のブロック131を支持する加工具130には、操作装置が設けられている。これらブロック131は、電動モータあるいは油圧装置などの駆動装置によって径方向に駆動されることができる。また、ボルト142も、電動モータあるいは油圧装置などの駆動装置によって径方向に駆動されてもよい。
【0057】
各ブロック131には、溝付け工具140としてのボール141がそれぞれ設けられている。このボール141が転動体を構成する。この実施形態では、合計3つのボール141が設けられる。各ボルト142は、各ブロック131において中心側を向くように配設されて各ブロック131に螺合して固定されている。また、各ボール141は、各ボルト142の先端部に配設されて、その一部が挿通孔132から所定量突出するように、ブロック131とボルト142とによって位置決めされている。ボール141は、全方向に向けて回転可能にブロック131に保持されている。尚、ボール141の挿通孔132への突出量は、内管11への食い込み量に対応する。この突出量は、ブロック131に対するボルト142の固定位置によって種々調整が可能である。
【0058】
軸送り装置としての軸送り部150は、動力源としての第1モータ151、および軸方向送り機構としてのラック152とピニオンギヤ153とを有している。ラック152は、自身の歯が上側を向くようにベース110の長手方向に沿って設けられている。ピニオンギヤ153は、ラック152の歯に噛み合わされると共に、上記加工具130に支持されている。そして、ピニオンギヤ153には第1モータ151が接続されており、第1モータ151の回転によってピニオンギヤ153が回転され、ラック152に沿って転がることによって加工具130が内管11の軸方向に沿って移動するようになっている。
【0059】
回転送り装置としての回転送り部160は、ギヤ162を回転駆動する第2モータ161を有している。ギヤ162は上記加工部130に噛み合うようになっており、第2モータ161の回転によって、ギヤ162が回転され、更に加工具130が内管11の周方向に回転されるようになっている。加工具130には、3つのブロック131が保持されており、これら3つのブロック131ならびにそれらに支持されたボール141が、内管11の軸中心を回転中心として回転駆動される。
【0060】
次に、上記製造装置100を用いた溝付き管の製造方法を説明する。以下の説明では、内管11に、周回溝11bと螺旋溝11cとを成形する方法を図5および図6に示すブロック図に基づいて説明する。
【0061】
この実施形態では、図5および図6に図示される製造方法が採用される。
【0062】
まず、供給工程501で加工対象としてのパイプ材が供給される。次に、第1周溝加工工程502で、第1周回溝11b1が加工される。第1周溝加工工程502に引き続いて連続して螺旋溝加工工程503が実行され、螺旋溝11cが加工される。この結果、第1周回溝11b1から軸方向溝としての螺旋溝11cが直接的に連続して延び出す。さらに、螺旋溝加工工程503に引き続いて連続して第2周溝加工工程504が実行され、第2周回溝11b2が加工される。この結果、螺旋溝11cから直接的に連続して延びる周方向溝としての第2周回溝11b2が形成される。
【0063】
図6は、この実施形態の製造方法をより詳細に示している。図6において、まず、加工部130の各ブロック131を径方向の外側に移動させ、これらを開いた状態にする。この結果、開いた状態となる挿通孔132に、供給装置101から供給された内管11を挿通する。内管11は、その両端が両側のチャック121、122に達するように配置される。この工程が、パイプ挿入工程601である。次に、パイプチャック工程602では、内管11の両端部側を両チャック121、122で保持固定する。こうして準備段階が完了する。
【0064】
次に、移動工程603では、第1モータ151を作動させて、軸送り部150によって内管11の軸方向一端側における第1周回溝11b1を形成すべき第1位置に加工具130を移動する。加工具130の移動により、溝付け工具140が所定の第1位置に位置づけられる。
【0065】
次に、押付け工程604では、加工具130の各ブロック131を径方向の中心側に向けて移動させる。この工程により、溝付け工具140の先端部のボール141を、内管11の表面から径方向内側に向けて食い込ませる。各ブロック131は、ボール141が規定量だけ内管11内に向けて食い込むまで径方向内側へ向けて移動させられる。この工程は、加工具ボール締め付け工程とも呼ばれる。
【0066】
次に、回転および送り工程605では、回転送り部160および軸送り部150によって溝付け工具140を内管11の周方向および軸方向に移動させながら溝11b、11cを形成する。まず、回転送り工程のみが実行される。ここでは、回転送り部160のみを作動させて第1位置で溝付け工具140を回転させる。このとき、溝付け工具140は、軸方向には移動させない。このときの回転量は、120度以上とされる。回転量は、複数のボール141によって内管11の全周に伸びる溝が形成されるまで、あるいはそれ以上とされる。この実施形態では、3つのボール141は、加工対象としての内管11の中心軸の周囲に整列しているから、環状の第1周回溝11b1が形成される。次に、回転送り工程と軸送り工程とが同時に並行して実行される。この実施形態では、回転送り部160を駆動し続けながら、さらに軸送り部150も併せて作動させる。この結果、溝付け工具140を回転させながら内管11の軸方向に沿って移動させてゆく。この結果、溝付け工具140は内管11の表面で螺旋状の軌跡を描いて移動する。よって、第1周回溝11b1から連続して延び出す螺旋溝11cが形成される。この実施形態では、3つの溝付け工具140による3条螺旋溝が形成される。この螺旋溝加工工程を、内管11の第1位置から第2位置にまでわたって実行する。やがて溝付け工具140が第2位置に到達すると、再び回転送り工程のみが実行される。内管11の軸方向他端側における第2周回溝11b2を形成すべき位置に到達すると、回転送り部160を作動させつづけながら、軸送り部150の作動を停止させる。ここで第2周回溝11b2を形成する。環状の第2周回溝11b2が形成されると、回転送り部160を停止させる。尚、上記溝11b1、11c、11b2の形成時においては、溝付け工具140のボール141自身は内管11の壁11aの上を転がりながら移動する。
【0067】
次に、引き離し工程としての緩め工程606では、加工部130の各ブロック131を径方向の外側に開き、溝付け工具140を内管11から引き離す。次に、取り出し工程607では、各チャック121、122による保持が解除され、溝付き菅に加工された内管11を製造装置100から取り出す。
【0068】
以上のように、この実施形態の溝付き管の製造方法においては、溝加工開始位置で溝付け工具140を内管11に押付け、溝加工終了位置で溝付け工具140を内管11から離す工程を採用している。この結果、溝の起点、終点を明確に規定することができる。この実施形態の他の特徴によると、転動体としてのボール141が内管11の壁11aの上を転がりながら壁11aを凹ませ、溝11b、11cを成形するため、安定した形状(深さ、板厚等)が得られる。この実施形態の他の特徴によると、溝加工時に軸送り部150および回転送り部160によって溝付け工具140を押し付けたまま移動するようにしているので、内管11の全長の大小に関係なく所要の形状の溝を形成できる。この実施形態の他の特徴によると、内管11の両端を固定した状態の下で内管11の壁11aを凹ませて溝11b、11cを形成するので、内管11の長さの変動を抑制することができる。また、この実施形態の他の特徴によると、内管11の一般部位の外径は、本来の寸法をほぼそのまま残して一定とすることができる。
【0069】
この実施形態の他の特徴によると、溝付け工具140を内管11の周方向にのみ移動させることで、周回溝11bの形成を可能とし、また、溝付け工具140を内管11の周方向に移動させた後に、その周方向への移動を継続した状態で軸方向への移動を追加的に開始させることで、第1周回溝11b1から延びだす螺旋溝11cを容易に形成可能としている。この実施形態の他の特徴によると、溝付け工具140を内管11の周方向かつ軸方向に移動させた後に、その周方向への移動を継続した状態で軸方向への移動を停止させることで、螺旋溝11cから連続的につながる第2周回溝11b2を容易に形成可能としている。この実施形態の他の特徴によると、溝加工の起点部および終点部の少なくとも一方を周回溝11bとすることで、二重管10の形成時に流路を確実に溝に連通させることができる。
【0070】
また、加工具130に複数の溝付け工具140を設けているので、複数条の溝11cを同時に形成できる。
【0071】
更に、溝付け工具140のボール141は、加工具130に対してボール自身が回転可能となるように保持されており、内管11の壁11aを転がりながら溝11b、11cを形成するようにしているので、溝11b、11c形成時の抵抗を低減でき、内管11の壁11aに与える応力を抑えることができ、溝加工が容易となるとともに、バリの発生や、ひっかき傷の発生を抑えることができる。さらに、ボール141が転がりながら溝11b、11cを成形するため、高速な加工が可能となる。
【0072】
(第2実施形態)
図7は、本発明を適用した第2の実施形態による溝付き管の製造方法を示すブロック図である。この実施形態では、図3および図4に図示される製造装置100が用いられる。この実施形態では、ブロック131の径方向への移動がモータなどの駆動装置によって実行される。
【0073】
まず、供給工程710では、内管11の素材としてのパイプ材が供給される。切断成形工程711では、パイプコイルから所定長さのパイプ材が切り出され、直管状に成形されて供給される。送り、挿入工程712では、パイプ材が製造装置100に挿入され、所定位置に配置される。チャック工程713では、パイプ材の両端がチャック121、122によって保持、固定される。
【0074】
次に、溝加工工程720が実行される。溝加工工程720では、まず第1周回溝工程723で第1周回溝11b1が加工され、次に第2周回溝工程727で第2周回溝11b2が加工され、その後、引き続いて、螺旋溝工程729で螺旋溝11cが加工される。このため、この実施形態では、第2周回溝11b2においては、第2周回溝11b2から螺旋溝11cが延び出すように形成されることで、第2周回溝11b2と螺旋溝11cとが連続的につながった構成が得られる。一方で、第1周回溝11b1においては、予め形成された第1周回溝11b1に螺旋溝11cが合流するようにして形成されることで、第1周回溝11b1と螺旋溝11cとが連続的につながった構成が得られる。
【0075】
まず、移動工程721では、加工具130が第1位置に移動させられる。第1位置においては、溝付け工具140が第1周回溝11b1が形成されるべき位置に位置づけられる。次に、回転開始工程722では、回転送り工程が開始される。この回転送り工程は、一連の溝加工の最後まで継続する。次に、ボール締付工程724では、ボール141が内管11の壁11aに向けて押し付けられる。この実施形態では、内管11の壁11aに回転しているボール141が徐々に食い込んでゆく。この結果、第1周回溝11b1が形成される。この後、ボール後退工程725ではボール141が径方向外側に引き離される。次に、移動工程726では、加工具130が第2位置に移動させられる。第2位置においては、第2周回溝11b2が形成されるべき位置に溝付け工具140が位置づけられる。この移動工程726では、第1位置から第2位置に向けて溝付け工具140が移動するが、ボール141が後退位置にあるため、溝が成形されることはない。
【0076】
次に、ボール締付工程728では、ボール141が内管11の壁11aに向けて押し付けられる。この実施形態では、内管11の壁11aに回転しているボール141が徐々に食い込んでゆく。この結果、第2周回溝11b2が形成される。この後、軸送り開始工程730では、軸送り工程が開始される。この軸送り工程は、溝付け工具140が第2位置から第1位置に戻るまで継続される。この結果、回転送り工程と軸送り工程とが同時に実行され、内管11の壁11aに螺旋溝11cが成形される。螺旋溝11cの加工が進行し、やがて螺旋溝11cが予め成形されている第1周回溝11b1に達すると、螺旋溝11cは、第1周回溝11b1に合流する。ここで、軸送り停止工程731が実行され、軸送り工程が停止される。この結果、ボール141は再び第1周回溝11b1内に位置される。次に、ボール後退工程732ではボール141が径方向外側に引き離される。次に、回転送り停止工程733では、回転送り工程が停止される。次に、移動工程734では、加工具130が初期位置に戻され、一連の溝加工が終了する。
【0077】
次に、取り外し工程740では、チャック121、122が緩められ、溝付き管としての内管11が取り外され、後工程へ送られる。次に、二重管組立て工程750では、別のパイプ材から成形された外管12内に内管11が挿入され、固定される。さらに、成形工程760では、二重管10が所定形状に成形される。ここでは、曲げ加工が施される。
【0078】
この製造方法では、第1周回溝11b1を成形した後に、第2位置から第1位置に向かって螺旋溝11cを成形し、螺旋溝11cを第1周回溝11b1に合流させる。第1周回溝11b1に螺旋溝11cが合流して、両溝11b1、11cが連絡するため、内管11の壁11aの望ましくない変形を抑えることができるという利点がある。
【0079】
(その他の実施形態)
上記の実施形態において説明された構成、方法に代えて、あるいは追加して、以下に述べる構成および方法を採用することができる。
【0080】
内管11に設けられる溝には、さらに他の溝を備えることができる。例えば、捩れ角および/またはピッチの異なる溝を備えることができる。例えば、軸方向に沿って延びる直線溝、ピッチの異なる螺旋溝、捩れ角が反対であって交差するための螺旋溝などを採用可能である。
【0081】
上記実施形態では、外管12を一定の径をもつ直管としたが、この外管12を溝付き管としてもよい。
【0082】
上記実施形態では、第1位置から第2位置まで溝を連続的に成形したが、内管11の全長における一部分にのみ溝を形成してもよい。また、互いに直接に連通しない複数の溝を並行して設けてもよい。さらに、周回溝11bは、内管11の中央部など、両端の流路接続部に加えて設けてもよい。さらに、溝付き管の一方の端部においては、溝を管の端部の縁まで成形してもよい。さらに、上記実施形態では、溝の深さを一定としたが、溝の深さを溝の長さ方向に関して変化させた構成を採用することができる。例えば、ブロック131の径方向位置、言い換えれば内管11の壁11aへのボール141の食い込み量を溝加工工程の途中で変化させることができる。
【0083】
上記実施形態では、内管11と外管12とを直接にろう付けあるいは溶接などの構成により接合したが、これら内管11と外管12との間にゴム製のOリングを配置して両者間の流路を閉じる構成を採用してもよい。さらに、内管11の端部に接続される部位と外管12の端部に接続される部位とを有する終端キャップ部材を用いて内外間流路の端部を閉じる構成を採用してもよい。
【0084】
上記第1実施形態では、溝付け工具140を内管11の周方向のみに移動し、その後に周方向と軸方向とに移動し、更には周方向のみに移動することで、溝形成の起点部、終点部に周回溝11bを形成し、その間に螺旋溝11cを形成するようにしたが、溝付け工具140の周方向への移動、あるいは軸方向への移動の組合せにより、種々の形状を有する溝の形成が可能である。
【0085】
例えば、溝付け工具140の周方向の移動を360度以下の所定回転角度にわたって行うことで、周方向に沿って延びる円弧状の溝とすることができる。溝付け工具140の周方向への移動を行わずに、軸方向のみに移動させれば、軸方向に沿うストレート溝が形成できる。また、溝付け工具140を周方向へ移動させ、軸方向への移動速度を極めて小さくすることで、幅広の周回溝に相当する溝の形成が可能である。あるいは、溝付け工具140の周方向への移動を正逆反転させながら軸方向に移動させれば蛇行した溝が形成できる。
【0086】
また、溝付け工具140の先端部の構造部材として、ボール141に代えて、溝幅に相当する幅を有し内管11に当接する側の面が円弧状である扁平なローラを用いることができる。転動体としてのローラは、送り工程によって与えられる相対的な移動方向の変化に適合して転動方向を変化させる構成を備えることができる。例えば、ローラは、その転がり方向の転向を許容するために、ステアリング機構によって支持されることができる。さらに、ボルト142から一体で突出する曲面状の凸部を用いてもよい。
【0087】
また、加工具130を複数のブロック131から形成して、各ブロック131が径方向に開閉するようにしたが、一体のブロックとして、溝付け工具140、即ちボルト142を径方向に摺動可能として内管11に対するボール141の食い込み、引き離しを行うようにしても良い。
【0088】
また、内管11に対して、加工具130と共に溝付け工具140を移動させて溝を形成するようにしたが、溝付け工具140を固定として、内管11側を移動させるようにしても良い。また内管11と溝付け工具140との両者を移動させるようにしても良い。
【0089】
また、内管11を二重管10に使用する例を説明したが、溝を有する管として使用するものに広く適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】二重管を示す部分断面図である。
【図2】内管の一端部分を示す平面図である。
【図3】溝付き管の製造装置を示す正面図である。
【図4】図3のA方向から見た加工具、溝付け工具を示す矢視拡大平面図である。
【図5】第1実施形態に係る溝付き管の製造方法を示すブロック図である。
【図6】第1実施形態に係る溝付き管の製造方法を示すブロック図である。
【図7】第2実施形態に係る溝付き管の製造方法を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0091】
10 二重管
10a 内外間流路
11 内管(管)
11a 壁
11b 周回溝(周方向に沿って延びる溝)
11b1 第1周回溝(第1周溝)
11b2 第2周回溝(第2周溝)
11c 螺旋溝(軸方向に沿って延びる溝、螺旋状の溝)
12 外管
100 溝付き管の製造装置
120 パイプ保持部(保持装置)
130 加工具(押し付け装置)
140 溝付け工具
141 ボール
150 軸送り部(軸送り装置)
160 回転送り部(回転送り装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溝付き管の製造方法において、
管(11)の一端部から第1所定距離離れた位置において、前記管(11)の壁(11a)の外側から径方向内側へ向けて溝付け工具(140)を押し付ける押し付け工程と、
前記溝付け工具(140)を押し付けたまま、前記管(11)の軸方向に沿って前記管(11)と前記溝付け工具(140)とを相対的に移動させ、前記管(11)の壁(11a)に凹状の溝(11b、11c)を成形する軸送り工程とを備えることを特徴とする溝付き管の製造方法。
【請求項2】
前記軸送り工程は、前記管(11)の他端部から第2所定距離離れた位置まで行い、その後に、前記管(11)の径方向外側へ向けて前記溝付け工具(140)を引き離す引き離し工程を備えることを特徴とする請求項1に記載の溝付き管の製造方法。
【請求項3】
前記溝付け工具(140)を押し付けたまま、前記管(11)の周方向に沿って前記管(11)と前記溝付け工具(140)とを相対的に移動させ、前記管(11)の壁(11a)に凹状の溝(11b、11c)を成形する回転送り工程をさらに備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の溝付き管の製造方法。
【請求項4】
前記軸送り工程と前記回転送り工程とによって、周方向に沿って延びる溝(11b)と、この周方向に沿って延びる溝(11b)から軸方向に延びだす溝(11c)とを成形することを特徴とする請求項3に記載の溝付き管の製造方法。
【請求項5】
前記回転送り工程のみを所定の回転角度にわたって行うことで、前記周方向に沿って延びる溝(11b)を円弧状に成形することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の溝付き管の製造方法。
【請求項6】
前記回転送り工程のみを前記管(11)の1周以上にわたって行うことで、前記周方向に沿って延びる溝(11b)を環状に成形することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の溝付き管の製造方法。
【請求項7】
前記回転送り工程のみを行った前および/または後に、前記軸送り工程を同時に行うことで、前記周方向に沿って延びる溝(11b)から前記軸方向に延びだす溝(11c)を成形することを特徴とする請求項3〜請求項6のいずれか1つに記載の溝付き管の製造方法。
【請求項8】
前記軸送り工程と前記回転送り工程とを同時に行い、螺旋状の溝(11c)を成形することを特徴とする請求項3〜請求項7のいずれか1つに記載の溝付き管の製造方法。
【請求項9】
前記軸送り工程と前記回転送り工程とを同時に行い、螺旋状の溝(11c)を成形する工程の前および/または後に、前記回転送り工程のみを行い、周方向に沿って延びる溝(11b)を成形することを特徴とする請求項3〜請求項8のいずれか1つに記載の溝付き管の製造方法。
【請求項10】
前記押し付け工程では、複数の前記溝付け工具(140)を前記管(11)の周囲に等間隔に押し付けることを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか1つに記載の溝付き管の製造方法。
【請求項11】
前記管(11)と前記溝付け工具(140)とが相対的に移動することで、前記溝付け工具(140)は前記管(11)の壁(11a)上を転がりながら前記管(11)の壁(11a)を凹ませることを特徴とする請求項1〜から請求項10のいずれか1つに記載の溝付き管の製造方法。
【請求項12】
第1位置において、前記回転送り工程のみを所定の回転角度にわたって行い、周方向に沿って延びる第1周溝(11b1)を円弧状に成形する第1周溝成形工程と、
前記第1周溝成形工程の後に、前記第1位置と第2位置との間において、前記回転送り工程と前記軸送り工程とを併用することで、螺旋状に延びる螺旋溝(11c)を成形する螺旋溝成形工程と、
前記第2位置において、前記螺旋溝成形工程の後に、前記回転送り工程のみを所定の回転角度にわたって行い、周方向に沿って延びる第2周溝(11b2)を円弧状に成形する第2周溝成形工程とを備えることを特徴とする請求項3に記載の溝付き管の製造方法。
【請求項13】
第1位置において、前記回転送り工程のみを所定の回転角度にわたって行い、周方向に沿って延びる第1周溝(11b1)を円弧状に成形する第1周溝成形工程と、
第2位置において、前記回転送り工程のみを所定の回転角度にわたって行い、周方向に沿って延びる第2周溝(11b2)を円弧状に成形する第2周溝成形工程と、
前記第2周溝(11b2)成形工程の後に、前記第2位置から前記第1位置の間において、前記回転送り工程と前記軸送り工程とを併用することで、螺旋状に延びる螺旋溝(11c)を成形する螺旋溝成形工程とを備えることを特徴とする請求項3に記載の溝付き管の製造方法。
【請求項14】
溝付き管の製造方法において、
管(11)の壁(11a)の外側から径方向内側へ向けて転動体(141)を押し付ける押し付け工程と、
前記転動体(141)を押し付けたまま、前記管(11)と前記転動体(141)とを相対的に移動させ、前記転動体(141)が前記管(11)の壁(11a)の上を転がりながら凹状の溝(11b、11c)を成形する送り工程とを備えることを特徴とする溝付き管の製造方法。
【請求項15】
前記送り工程は、前記管(11)の軸方向および/または周方向に沿って前記管(11)と前記転動体(141)とを相対的に移動させることを特徴とする請求項14に記載の溝付き管の製造方法。
【請求項16】
請求項1〜請求項13のいずれか1に記載の前記管(11)を内管(11)として、前記内管(11)の外側に外管(12)を配置すると共に、少なくとも前記内管(11)の両端で前記内管(11)と前記外管(12)とを気密に接合して二重管(10)を形成し、
前記溝(11b、11c)を前記内管(11)と前記外管(12)との間の流体用流路(10a)として形成することを特徴とする二重管の製造方法。
【請求項17】
溝付き管の製造装置において、
管(11)を保持する保持装置(120)と、
前記管(11)の壁(11a)に押し付けられ、前記管(11)の壁(11a)を径方向内側へ凹ませる溝付け工具(140)と、
前記管(11)の一端部から第1所定距離離れた位置において、前記管(11)の壁(11a)の外側から径方向内側へ向けて前記溝付け工具(140)を押し付ける押し付け装置(130)と、
前記溝付け工具(140)を押し付けたまま、前記管(11)の軸方向に沿って前記管(11)と前記溝付け工具(140)とを相対的に移動させる軸送り装置(150)とを備えることを特徴とする溝付き管の製造装置。
【請求項18】
前記溝付け工具(140)を押し付けたまま、前記管(11)の周方向に沿って前記管(11)と前記溝付け工具(140)とを相対的に移動させる回転送り装置(160)を備えることを特徴とする請求項17に記載の溝付き管の製造装置。
【請求項19】
前記溝付け工具(140)は、前記管(11)の周囲に等間隔に複数配置されたことを特徴とする請求項15または請求項18に記載の溝付き管の製造装置。
【請求項20】
前記溝付け工具(140)は、前記管(11)の壁(11a)上を転がるボール(141)またはローラを有することを特徴とする請求項17〜請求項19のいずれか1つに記載の溝付き管の製造装置。
【請求項21】
溝付き管の製造装置において、
管(11)の壁(11a)の外側から径方向内側へ向けて押し付けられる転動体(141)と、
前記転動体(141)が前記管(11)の壁(11a)の上を転がりながら凹状の溝(11b、11c)を成形するように、前記転動体(141)を押し付けたまま、前記管(11)と前記転動体(141)とを相対的に移動させる送り装置(150、160)とを備えることを特徴とする溝付き管の製造装置。
【請求項22】
前記送り装置(150、160)は、前記管(11)の軸方向および/または周方向に沿って前記管(11)と前記転動体(141)とを相対的に移動させることを特徴とする請求項21に記載の溝付き管の製造装置。
【請求項23】
管(11)の一端部から第1所定距離離れた位置と、前記管(11)の他端部から第2所定距離離れた位置との間で、前記管(11)の壁(11a)の外側から径方向内側へ向けて凹まされて形成される溝(11b、11c)を有し、
前記溝(11b、11c)は、周方向に沿って延びる溝(11b)と、軸方向に沿って延びる溝(11c)とを有し、
2つの前記溝(11b、11c)は、連続的に形成されていることを特徴とする溝付き管。
【請求項24】
前記周方向に沿って延びる溝(11b)は、円弧状あるいは環状に形成されたことを特徴とする請求項23に記載の溝付き管。
【請求項25】
前記軸方向に沿って延びる溝(11c)は、螺旋状の溝(11c)であることを特徴とする請求項23に記載の溝付き管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−312196(P2006−312196A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−136390(P2005−136390)
【出願日】平成17年5月9日(2005.5.9)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(501022158)デンソーエアーズ株式会社 (19)
【Fターム(参考)】