説明

溶存オゾンおよび飽和濃度の3倍以上過飽和溶存酸素の水溶液製造方法および利用方法

【課題】気体の過飽和溶解水の製造は、従来より加圧溶解方法があり常圧に戻すと過飽和を維持するのが難しい。また、気泡粒径が大きいほど未溶解ガスが大気放出されガスの消費量も多くなり装置も大型化する。
オゾンは、上記の問題がありオゾンの有用な効果を長期にわたり維持するための方策が求められている。
本発明の目的は、ナノ領域のオゾン気泡を含む水溶液の特徴を活かした利用方法を提供する。
【解決手段】先に本出願人が提案した、フッ素樹脂パイプに線状スリットを設けた気液混合溶解手段および分級リサイクル手段を組組合せた気液混合溶解装置によって、溶存オゾンおよび飽和濃度の3倍以上過飽和溶存酸素の水溶液製造を可能にした。本水溶液は優れた殺菌効果があること、またナノ領域の気泡を含んでおり大気へのオゾン放出が微小であり水中での上昇速度が緩慢であることを利用した殺菌・水処理・廃水処理・下水道管腐食防止を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶存オゾンおよび飽和濃度の3倍以上過飽和溶存酸素の水溶液製造方法および利用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
気体の過飽和水を製造する方法はこれまでに既に提案されている。多くは特開平9−117755号のように、気体を加圧溶解させて過飽和水を作る方法である。その他には、特開平7−308556号のようにベンチュリ管を利用したものもある。ただ、非特許文献1に示されるように、過飽和水は一般的にその過飽和状態が長続きしない。また減圧して大気圧にした場合に過飽和状態を維持することは極めて困難であった。また、酸素の同位体であるオゾンは、強い殺菌力、酸化力、漂白力等をもつことが知られており、そうした特性を利用して、オゾンを水に溶解したオゾン水は、工場、病院などに設置される殺菌装置、あるいは半導体ウェハの洗浄装置などに利用されている。たとえば、特開平9−19376号公報、特開平9−140368号および特開2003−29940号にはオゾンを用いてオゾンの洗浄殺菌効果により効果的に食品に付着した汚染物質の洗浄殺菌を実行する洗浄装置が示されている。また特開平7−236461号および特開平2−231066号公報には、さらに微細気泡をオゾンとともに用いることによりさらに効果的に洗浄殺菌を行う方式を開示している。ただ、オゾンは液体中で分解しやすいため、短時間で濃度が低下する問題がある。このため、殺菌、消毒のために多量のオゾンを長期にわたって供給する必要があり、経済性が低下する問題があった。本出願人は、先に特許文献1において、フッ素樹脂パイプに線状スリットを設けた気液混合溶解手段および分級リサイクル手段を組み合わせた気液混合溶解装置を提案した。当溶解装置により、ナノサイズの気泡の生成、過飽和ガス溶解水の製造が可能になった。本出願人は当該気液混合溶解装置を用いて、オゾンを使用した種々の分野の利用を鋭意検討した結果、溶存オゾンと過飽和溶存酸素を共存させることにより、食品等の殺菌方法、廃水処理方法、水の浄化方法、下水道管の腐食防止方法などで顕著な効果を確認したので以下開示するものである。
【特許文献1】特願2007−140039号
【非特許文献1】「新版オゾン利用の新技術」、サンユー書房、74〜83ページ、1988年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来、オゾンおよび酸素を水に溶解させる方法として、オゾンおよび酸素ガスをエジェクターで吸引混合する方法、液相を旋回して陰圧となる渦中に気相を吸引させて液相中に気相を圧壊、混合する方法などの技術がある。しかしながら、溶解するオゾンおよび酸素ガスの気泡粒径が大きいほど大気中に未溶解のガスが放出され、オゾンガスは除外装置が必要であり消費するガスの量も多くなり装置も大型化する。そのため、オゾンが有する有用な効果を長期にわたり維持するための方策が求められている。従って、本発明の主な目的は、先に特許文献1において、提案した気液混合溶解手段および分級リサイクル手段を組み合わせた気液混合溶解装置により実現が可能になった超微粒子系の気泡粒径(10μm以下)を含有する過飽和ガス水溶液の製造法の提供と、溶存オゾンと飽和濃度の3倍以上過飽和溶存酸素の水溶液を利用した殺菌・廃水処理・水の浄化・下水道管腐食防止への応用を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本出願人は、先に特許文献1において、提案した図2の気液混合溶解手段および図3の分級リサイクル手段を組み合わせた図1の気液混合溶解装置により溶存オゾンおよび飽和濃度の3倍以上過飽和溶存酸素の水溶液を製造できることを見出し、さらに水溶液の利用方法を確認するに至った。すなわち、本発明の気液混合溶解装置により製造した水溶液は、大気へのオゾン放出が微小であり水中での上昇速度が緩慢であることと代表的な細菌類の大きさ(0.5〜3μm程度)と同サイズおよびより大きな気泡粒径を含んでいる特徴がありその製造方法および殺菌、水処理、廃水処理、下水道管腐食防止への利用方法に係るものである。
【0005】
本発明の主要な内容は以下の通りである。
1.特許文献1のフッ素樹脂パイプに線状スリットを設けた気液混合溶解手段および分級リサイクル手段により、オゾンおよび酸素ガスと水を気液混合溶解した、溶存オゾン0.1mg/L以上、飽和濃度の3倍以上過飽和溶存酸素の水溶液製造が可能になった。
【0006】
2.上記の水溶液が優れた殺菌効果を有することを確認した。
【0007】
3.上記の水溶液中で食品と接触させることで殺菌効果を向上させることを特徴とする殺菌方法が可能になった
【0008】
4.上記の水溶液中で食品と接触処理後または処理と同時に超音波処理による気泡圧壊手段を通過させて、水溶液水中の気泡および食品に付着した気泡を圧壊させて殺菌効果を向上させることを特徴とする殺菌方法が可能になった。
【0009】
5.上記の水溶液を使用して、さらに水溶液の吐出口にポンプの吐出圧力で駆動する図4の混気エジェクターを配置して、混気エジェクターの吸入負圧で吐出口周辺の低酸素液を導入して水溶液と混合攪拌させて溶存酸素濃度を上昇させて処理水量に対して極力少ない水溶液の注入量で有酸素化を促進させるとともに水溶液中のオゾンによる汚泥の分解を行うことを特徴とする水処理および廃水処理方法が可能になった。
【0010】
6.上記の水溶液を使用して、さらに水溶液の吐出口にポンプの吐出圧力で駆動する図4の混気エジェクターを配置して、発生させた吸入負圧で空気を吸込んで水溶液と混合攪拌されて粒径が3ミリ以下の気泡を発生させて、さらに混合液の吐出圧力で発生させた吸入負圧で吐出口周辺の低酸素液を導入して処理水量に対して極力少ない水溶液の注入量で溶存酸素濃度を上昇させて吐出すとともに水溶液中のオゾンによる汚泥の分解を行うことを特徴とし、さらに発生させた気泡のエアーリフト効果で周辺の水を上昇させて攪拌することにより有酸素化を促進させることを特徴とする水処理および廃水処理方法が可能になった。
【0011】
7.上記の水溶液を使用して、下水道管内に供給することにより排水量に対して極力少ない水溶液の注入量で排水の溶存酸素濃度を上昇させて有酸素化を促進させて硫化水素の発生を防止するとともに水溶液中のオゾンによる排水汚泥の分解を行うことを特徴とする下水道管腐食防止方法が可能になった。
【発明の効果】
【0012】
本発明による水溶液は、酸素を大気圧〜0.02MPa程度の低圧で気液混合溶解ができるうえ、分級リサイクル手段によりオゾンの大気放出が微小であるとともに任意の溶存オゾン濃度と過飽和溶存酸素濃度の水溶液製造ができることと酸素の使用量を大幅に削減できる。また製造装置を陸上に設置できるので機器の操作やメンテナンスが容易であり、水溶液の供給管を多数箇所へ配置して切り替えることにより広範囲の水処理を効率良く行うことができる。
【0013】
本発明による水溶液の使用方法では、気泡圧壊手段を併用することにより、オゾン以上の酸化還元電位を持つヒドロキシルラジラルの発生が促進され顕著に殺菌力を向上させることができる。
【0014】
本発明による水溶液を使用した水処理および廃水処理方法では、混気エジェクターを併用することにより、製造装置のポンプの吐出圧力だけで吐出口周辺の低酸素液を吸込んで処理水量に対して極力少ない水溶液の注入量で溶存酸素濃度を上昇させてから吐出量を増大させて攪拌効果を高めることにより好気性微生物の増殖速度を高めるとともに水溶液中のオゾンによる汚泥の分解を行うことができる。さらに導入した空気を3ミリ以下の気泡として発生させることにより、エアーリフト効果で周辺の水を上昇させて攪拌することにより有酸素化を促進させることができる。
【0015】
本発明による水溶液を下水道管内に注入することにより、排水量に対して極力少ない水溶液の注入量で排水の溶存酸素濃度を上昇させて硫化水素の発生を防止すると同時に水溶液中のオゾンによる排水汚泥の分解を行うことを特徴とする下水道管の腐食防止を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に係る溶存オゾンおよび飽和濃度の3倍以上過飽和溶存酸素の水溶液製造方法および使用方法について詳細に説明する。
【0017】
本発明に係る溶存オゾンおよび飽和濃度の3倍以上過飽和溶存酸素の水溶液製造は、特許文献1による図2の気液混合溶解手段および図3の分級リサイクル手段を組み合わせた図1の気液混合溶解装置により行う。まず、水が液相供給手段により循環水槽に導入された後、ポンプの吸入側に設置された気液混合溶解手段に入る。一方、酸素は気相供給手段により、大気圧〜0.02MPa程度の圧力範囲内で送られオゾン発生器でオゾンに変換後、ポンプの吸込側に設置された気液混合溶解手段に水とともに入り気液混合溶解されたあとポンプで吐出され、さらに2つ目の気液混合溶解手段で再度気液混合される。その後、気液混合溶解手段の出口に設置された分級手段により溶解液中の大粒径の気泡を分離する。大粒径の気泡はガス抜弁を介してリサイクル手段によりポンプの吸込み側の気液混合手段に戻り再び気液混合溶解される。分級手段を通過した水溶液はさらに3つ目の気液混合溶解手段で気液混合溶解されて循環水槽に戻り循環されることになる。この結果、溶存オゾン濃度が0.1mg/L以上、溶存酸素濃度が42.48mg/L(水温0℃、1気圧における飽和濃度14.16mg/Lの3倍の過飽和溶存酸素濃度)以上からなる溶存オゾンおよび溶存酸素の気泡を含有するオゾンおよび過飽和溶存酸素からなる水溶液として製造され、大気へのオゾン放出が微小であり水中での気泡上昇速度が緩慢であるとともに代表的な細菌類の大きさ(0.5〜3μm程度)と同サイズおよびより大きな気泡粒径を含む水溶液が製造される。
【0018】
上記の水溶液を使用して、食品と接触させることにより食品の表面に合一されたオゾン気泡を付着させ食品の殺菌を行うことができる。また、上記水溶液と接触処理後又は処理と同時に超音波処理による気泡圧壊手段を通過させて食品に付着した気泡を圧壊させることによりオゾンン以上の酸化還元電位をもつヒドロキシルラジラルの発生が促進され、殺菌力を向上させることで食品の殺菌を行うことができる。
【0019】
上記の水溶液を使用して、さらに水溶液の供給出口にポンプの吐出圧力で駆動する図4の混気エジェクターを配置して、混気エジェクターの吸入負圧で吐出口周辺の低酸素液を導入して水溶液と混合攪拌させて溶存酸素濃度を上昇させて処理水量に対して極力少ない水溶液の注入量で有酸素化を促進させるとともに水溶液中のオゾンによる汚泥の分解を行うことを特徴とする水処理および廃水処理を行うことができる。
【0020】
上記の水溶液を、供給出口に吐出圧力で駆動する混合攪拌手段である図4の混気エジェクターに導入し、混気エジェクターの吸入負圧で気相を吸い込んで水溶液と混合攪拌して粒径が3ミリ以下の気泡を発生させ、さらに混合液の吐出圧力で発生した混気エジェクターの吸入負圧で吐出口周辺の低酸素液を導入して溶存酸素濃度を上昇させるとともに水溶液中のオゾンによる汚泥の分解を行うことができる。同時に、気泡直径が3ミリ以下の気泡のエアーリフト効果を利用して水の循環を行うことにより処理水量に対して極力少ない水溶液の注入量で有酸素化を促進させることを特徴とする水処理および廃水処理を行うことができる。
【0021】
上記の水溶液を下水道管内に注入することにより、排水量に対して極力少ない水溶液の注入量で低酸素排水中の溶存酸素濃度を上昇させて硫化水素の発生を防止するとともに溶解水中のオゾンによる汚泥の分解を行うことを特徴とする下水道管の腐食防止を行うことができる。
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
以下、実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【実施例1】
【0023】
溶存オゾンおよび飽和濃度の3倍以上過飽和溶存酸素からなる水溶液の調製方法を示す。
図1の気液混合溶解装置により、本発明の水溶液を調製した。図1の気液混合溶解装置は、特許文献1において提案したものであるが、内容は以下の通りである。図2は気液混合溶解手段であり、フッ素樹脂パイプに線状スリットを設けたスリット膜201の片方をパイプ端面盲201a加工して外面金具202および内面金具203で収納容器204に装着したものであり、水と酸素を気液入口205から導入して通過させる気液混合溶解手段104、106、110として使用される。図3は分級手段であり、円筒のウェッジワイヤスクリーン301の外側から気液混合溶解された水溶液を導入して大粒径の気泡を分級したあとガス抜弁303を通り、リサイクルされポンプ105の吸込側に設置された気液混合溶解手段104に戻る。図1の気液混合溶解装置は、3つの気液混合溶解手段と分級手段107およびリサイクル手段109とからなる。
水溶液の製造は以下の要領で実施した。まず、水を液相供給手段101から循環水槽111に供給した後、ポンプ105の吸込側に設置された気液混合溶解手段104に導入した。また、酸素は気相供給手段102から大気圧〜0.02MPa程度の範囲内でオゾン発生器103を通過して、気液混合溶解手段104に導入されて水・酸素・オゾンが気液混合溶解された後、ポンプ105を通りさらに気液混合溶解手段106で気液混合溶解される。気液混合溶解手段106のあとに設置された分級手段107で水溶液中の0.5mm程度より大粒径の気泡を分離してガス抜弁108を介してリサイクルされて、ポンプ105の吸込側の気液混合手段104に戻され、再び気液混合溶解される。分級手段107を通過した水溶液はさらに気液混合溶解手段110で気液混合溶解されて循環水槽111に戻される。この結果、溶存オゾン濃度が0.1mg/L以上、溶存酸素濃度が42.48mg/L(水温0℃、1気圧における飽和濃度の3倍の過飽和溶存酸素)以上の溶存オゾンおよび過飽和溶存酸素からなる水溶液として製造された。
その水溶液中の溶存オゾンおよび過飽和溶存酸素の気泡粒径は、10μm以下であり、代表的な細菌類の大きさ(0.5〜3μm程度)と同サイズおよびより大きな気泡粒径を含み殺菌に適していることが分る。気泡の粒子径を表1に示す。
【表1】


さらに水中での気泡上昇速度が緩慢であることを特徴としており気泡上昇速度を表2に示す。
【表2】

さらに大気へのオゾン放出が微小であることを特徴としており水溶液のオゾンガスの放出濃度を表3に示す。
【表3】


さらに本発明の気液混合溶解方式と代表的な溶解方式である加圧溶解方式とせん断方式の溶解能力を気相のボイド率(気相量を気相と液相の合計量で除した値)で比較して表4に示す。

【表4】

【0024】
比較例1(混気エジェクター方式によるオゾンおよび酸素水溶液の調製)
図5に示すエジェクター方式による溶解装置で水溶液を製造した。
上記の装置に使用する混気エジェクター506の詳細構造は図4に示す通りである。水は供給口404から導入され、本体401に配置された縮流部402出口で発生した吸入負圧により気相吸込口から空気を吸込んで水溶液と混合され整流部403から粒径が3ミリ以下の気泡となって吐出される。さらに整流部403出口で発生した吸入負圧により液相吸込口から周辺の水を吸込んで混合攪拌されて吐出口407から吐出される構造になっている。
図5において、水が液相供給手段501により循環水槽509に供給され、ポンプ504から混気エジェクター506に導入される。気相供給手段502によりオゾン発生器503から出てくるオゾンおよび酸素ガスは、吐出圧力で発生した吸入負圧により気相吸込口507に入り、水と混合する。さらに吐出圧力で発生した吸入負圧により液相吸込口508から周辺の水を吸込んで混合攪拌されて吐出されることにより溶存オゾンおよび溶存酸素からなる水溶液を製造した。
【0025】
比較例2(多孔質材を用いたバブリングによるオゾン及び酸素水溶液の調製)
図6の多孔質材を用いた溶解装置で水溶液を製造した。水は液相供給手段601により循環水槽607に供給され、ポンプ604から供給管605を通って循環される。気相供給手段602により酸素をオゾン発生器603に供給した後、市販の水槽バブリング用の多孔質材606に導入し、バブリングにより溶存オゾンおよび溶存酸素からなる水溶液を製造した。
【実施例2】
【0026】
実施例1で得た水溶液と実施例2の混気エジェクターによる吸入負圧で気液混合溶解させた水溶液と実施例3の多孔質材を使用したバブリングによる水溶液について、循環水量と供給ガス量を同一条件にして酸素の溶解度を比較した結果を表5に示す。約30秒後には、3倍以上過飽和となった。
また、本発明の気液混合溶解方式により水道水に酸素を溶解した後、常温・大気圧で放置した時の溶存酸素濃度の時間による低下率を表6に示す。
約190時間(8日)経過後も3倍以上過飽和を維持していることが分かる。

【表5】

【表6】


【実施例3】
【0027】
図7の通り、実施例1と同じ手順で水溶液を製造した。気液混合溶解装置701が製造装置である。製造した水溶液を殺菌槽703に導入し、食品705と接触させたあと又は同時に食品705とともに超音波処理装置704を通過させることにより食品705の殺菌効果を確認した。
その殺菌効果の評価結果を表7に示す。
【表7】

【実施例4】
【0028】
図8に示すように、実施例1と同じ要領で、気液混合溶解装置801で水溶液を製造した。製造した水溶液を食品加工装置803に食品製造水として導入し、食品804と混合、接触させることにより殺菌を行ない、殺菌効果を確認した。
その殺菌効果の評価結果を表8に示す。

【表8】

【実施例5】
【0029】
図9に示すように、実施例1と同じ要領で気液混合溶解装置901により水溶液を製造した。製造した水溶液を超音波噴霧機又は噴霧発生装置903に供給し、噴霧状態で食品殺菌装置904に導入して食品905および空気等と接触させることにより殺菌を行なった。
その殺菌方法による殺菌評価結果を表9に示す。
【表9】


【実施例6】
【0030】
図10に示すように、実施例1と同じ手順を用いて気液混合溶解装置121で水溶液を製造した。製造した水溶液を製氷装置123に導入してシャーベット又は氷にしてから食品124と接触させることにより殺菌を行なった。
その殺菌方法による殺菌評価結果を表10に示す。

【表10】


【実施例7】
【0031】
図11に示すように、実施例1と同じ手順により気液混合溶解装置131で水溶液を製造した。
上記の装置に装着する混気エジェクター133の構造は比較例1で説明した図4と同じである。
気液混合溶解装置131で製造された水溶液は、閉鎖水域等底層水域137に設置された供給管132の先端に装着された混気エジェクター133に導入されて吐出圧力で発生させた吸入負圧で、閉鎖水域等底層137の無酸素水域の水を液相吸込口134から導入して水溶液と混合攪拌させて溶存酸素濃度を上昇させて吐出す。これにより処理水量に対して極力少ない水溶液の注入量で閉鎖水域等底層137の無酸素水域の有酸素化を促進させるとともに水溶液中のオゾンによる汚泥の分解と水の浄化を行うことができる。
ほとんど無酸素状態の溶存酸素濃度0.1mg/Lの水に水溶液を混合攪拌した後の溶存酸素濃度上昇結果を表11に示す。
【表11】




さらに水溶液中のオゾンによる汚泥の分解結果を表12に示す。

【表12】


【実施例8】
【0032】
図12に示すように、実施例1と同じフローの気液混合溶解装置141を用いて水溶液を製造した。上記の装置に装着する混気エジェクター143は、比較例1で使用した混気エジェクター図4と同じものを使用した。気液混合溶解装置141を出た水溶液は、閉鎖水域等中間層水域148中の供給管142の先端に装着された混気エジェクター143に導入される。同時に吐出圧力で発生させた吸入負圧により、空気が水上の空気導入口144から吸込まれ、気相吸込口145に導入される。粒径が3ミリ以下の気泡を発生させて水溶液と混合攪拌させた後さらに吐出圧力で発生させた吸入負圧で閉鎖水域等中間層148周辺の低酸素の水を液相吸込口146から導入して溶存酸素濃度を上昇させて吐出するとともにさらに粒径が3ミリ以下の気泡のエアーリフト効果を利用して閉鎖水域等中間層148周辺の低酸素の水を水面に上昇させて循環させることにより、処理水量に対して極力少ない水溶液の注入量で有酸素化を促進させるとともに水溶液中のオゾンによる汚泥の分解と水浄化を行なった。
この結果、低酸素状態(溶存酸素濃度3.0mg/L)の水は、水溶液混合により、表13に示すように溶存酸素濃度が上昇した。

【表13】


【実施例9】
【0033】
図13に示すように、実施例1と同じ要領で気液混合溶解装置151を使用し水溶液を製造した。
上記の装置に装着する混気エジェクター154は比較例1で使用した混気エジェクター図4と同じである。気液混合溶解装置151を出た水溶液は、好気性曝気装置153の底部の供給管152の先端に装着された混気エジェクター154に導入され吐出圧力で発生させた吸入負圧で、底部周辺の低酸素の水を液相吸込口155から吸込んで水溶液と混合攪拌させて溶存酸素濃度を上昇させて吐出す。廃水処理量に対して極力少ない水溶液の注入量で溶存酸素濃度を上昇させて好気性菌を活性化させるとともに水溶液中のオゾンによる汚泥の分解を行うことにより廃水処理を行うことができる。
溶存酸素濃度上昇による好気性菌の相対的増殖速度を表14に示す。

【表14】


【実施例10】
【0034】
図14に示すように、実施例1と同じ手順で気液混合溶解装置161により水溶液を製造した。気液混合溶解装置161を出た水溶液を、供給管162を通し下水道管163内の排水中に注入することにより、排水量に対して極力少ない水溶液の注入量で低酸素排水中の溶存酸素濃度を上昇させて硫化水素の発生をなくすとともに水溶液中のオゾンによる汚泥の分解を行うことにより下水道管の腐食を防止することができた。
その下水の無酸素状態に近い水(溶存酸素濃度0.1mg/L)に水溶液を混合攪拌した場合の溶存酸素濃度上昇結果を表15に示す。

【表15】


【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の水溶液による処理方法は、用途が限定されるものではない。例えば溜まり池等閉鎖水域の底層および中間層の溶存酸素濃度を上昇させる手段への使用ができ、また魚養殖や魚輸送中の溶存酸素濃度管理や殺菌にも使用できるうえ夏場の水温上昇や赤潮発生による溶存酸素低下の応急対策にも使用できる。また水溶液で処理することによりオゾンによる脱臭効果も期待できる。
ナノ領域の気泡を含んだ水溶液は、活性化作用があり農業・漁業に導入することで無農薬栽培の可能性や病気に強い商品の安定製造が期待できるうえ今後、医療やバイオ向けに応用が期待できる。
ナノ領域の気泡を含んだ溶解液として製造することにより、従来の気泡粒径が大きな溶解方法に比べて、ガス量が大幅に削減ができるうえ高濃度の過飽和溶存ガス溶解液を製造することができるので、設備がコンパクトになるとともにガス削減によるコストダウンができる。

【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の水溶液を製造する気液混合溶解装置の実施例1を模式的に示す構成図である。
【図2】本発明の水溶液を製造する気液混合溶解装置の実施例1を構成する気液混合溶解手段の構造図である。
【図3】本発明の水溶液を製造する気液混合溶解装置の実施例1を構成する気泡分級リサイクル手段の構造図である。
【図4】本発明の水溶液を水処理に利用する際の混気エジェクターの構造図である。
【図5】エジェクター方式による溶解装置の比較例1を模式的に示す構成図である。
【図6】多孔質材を用いた溶解装置の比較例2を模式的に示す構成図である。
【図7】本発明の水溶液を殺菌に利用する実施例3を模式的に示す構成図である。
【図8】本発明の水溶液を殺菌に利用する実施例4を模式的に示す構成図である。
【図9】本発明の水溶液を噴霧し、殺菌に利用する実施例5を模式的に示す構成図である。
【図10】本発明の水溶液を氷状にし、殺菌に利用する実施例6を模式的に示す構成図である。
【図11】本発明の水溶液を水処理に利用する実施例7を模式的に示す構成図である。
【図12】本発明の水溶液を水処理に利用する実施例8を模式的に示す構成図である。
【図13】本発明の水溶液を廃水処理に利用する実施例9を模式的に示す構成図である。
【図14】本発明の水溶液を下水道管の腐食防止に利用する実施例10を模式的に示す構成図である。
【符号の説明】
【0037】
図1
101 液相供給手段
102 気相供給手段
103 オゾン発生器
104 気液混合溶解手段
105 ポンプ
106 気液混合溶解手段
107 分級手段
108 ガス抜弁
109 リサイクル手段
110 気液混合溶解手段
111 循環水槽
112 冷却装置
113 水処理装置
【0038】
図2
201 フッ素樹脂パイプスリット膜
201aパイプ端面盲
202 外面金具
203 内面金具
204 収納容器
205 気液入口
【0039】
図3
301 ウェッジワイヤスクリーン
302 収納容器
303 ガス抜弁
304 リサイクル配管
【0040】
図4
401 本体
402 縮流部
403 整流部
404 供給口
405 気相吸込口
406 液相吸込口
407 吐出口
【0041】
図5
501 液相供給手段
502 気相供給手段
503 オゾン発生器
504 ポンプ
505 供給管
506 混気エジェクター
507 気相吸込口
508 液相吸込口
509 循環水槽
【0042】
図6
601 液相供給手段
602 気相供給手段
603 オゾン発生器
604 ポンプ
605 供給管
606 多孔質材
607 循環水槽
【0043】
図7
701 気液混合溶解装置
702 供給管
703 殺菌槽
704 超音波処理装置
705 食品
【0044】
図8
801 気液混合溶解装置
802 供給管
803 食品加工装置
804 食品
【0045】
図9
901 気液混合溶解装置
902 供給管
903 超音波噴霧機または噴霧発生装置
904 食品殺菌装置
905 食品
【0046】
図10
121 気液混合溶解装置
122 供給管
123 製氷装置
124 食品
【0047】
図11
131 気液混合溶解装置
132 供給管
133 混気エジェクター
134 液相吸込口
135 閉鎖水域等上層水域
136 閉鎖水域等中間層水域
137 閉鎖水域等底層水域
【0048】
図12
141 気液混合溶解装置
142 供給管
143 混気エジェクター
144 空気導入口
145 気相吸込口
146 液相吸込口
147 閉鎖水域等上層水域
148 閉鎖水域等中間層水域
149 閉鎖水域等底層水域
【0049】
図13
151 気液混合溶解装置
152 供給管
153 好気性曝気装置
154 混気エジェクター
155 液相吸込口
【0050】
図14
161 気液混合溶解装置
162 供給管
163 下水道管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素樹脂パイプに線状スリットを設けた気液混合溶解手段および分級リサイクル手段を組み合わせた気液混合溶解装置による溶存オゾンと飽和濃度の3倍以上過飽和溶存酸素の水溶液製造法
【請求項2】
溶存オゾンが0.1mg/L以上、飽和濃度の3倍以上過飽和溶存酸素の水溶液であることを特徴とする殺菌水溶液
【請求項3】
請求項第2項記載の水溶液を含有せしめることを特徴とする食品、日用品、化粧品、医薬品およびこれら関連機器に接触させる殺菌方法
【請求項4】
請求項第2項記載の水溶液で処理後または処理と同時に超音波処理を行うことを特徴とする食品、日用品、化粧品、医薬品およびこれら関連機器の殺菌方法
【請求項5】
請求項第2項記載の水溶液で超音波噴霧機またはその他の噴霧発生手段を用いて、噴霧状態にして食品、日用品、化粧品、医薬品およびこれら関連機器と接触させることを特徴とする殺菌方法
【請求項6】
請求項第2項記載の水溶液を製氷装置にて、氷またはシャーベット状態にして食品と接触させることを特徴とする殺菌方法
【請求項7】
請求項第2項記載の水溶液を閉鎖水域等の無酸素および低酸素水域に供給することを特徴とする水の浄化方法
【請求項8】
請求項第2項記載の水溶液を廃水処理装置等の低酸素の廃水液中に供給することを特徴とする廃水汚泥の分解処理方法
【請求項9】
請求項第2項記載の水溶液を下水道管内に供給することを特徴とする下水道管の腐食防止方法

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−66467(P2009−66467A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−234353(P2007−234353)
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【出願人】(305016829)有限会社九州SOHOプロジェクト (4)
【Fターム(参考)】