説明

潤滑オイルの劣化診断装置

【課題】エンジン等の潤滑オイルの劣化度合いを的確に、しかも装置構造を複雑化させることなく判定する。
【解決手段】劣化診断装置Sは、エンジン10に使用されている潤滑オイル11の劣化度合いを監視するためのものであって、オイル循環系統20、オイルクーラ30及び検査手段Tを備える。オイル循環系統20は、潤滑オイル11の一部を被検査オイルとして抜き出し、オイルクーラ30及び検査手段Tを経由する循環経路を経てエンジン10に戻す。被検査オイルは、オイルクーラ30で冷却された上で検査手段Tに供給される。検査手段Tは、被検査オイルを所定の流量で通過させるオイル通路と、該オイル通路を通過する被検査オイルに直接検査光を照射する発光素子と、前記被検査オイルを透過した前記検査光を直接受光する受光素子とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コージェネレーションシステム(CGS)用のガスエンジンを始め、各種の機関で使用される潤滑オイルの劣化度合い乃至は余寿命を判定する劣化診断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばCGS用のガスエンジン、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の機関においては、摩擦低減や冷却等のために潤滑オイルが使用される。この潤滑オイルは使用により劣化し、ピストンリングやカムの腐食及び摩耗、潤滑性能の低下、燃料消費率の増加、さらにはエンジントラブル等を招来することから、適時に交換する必要がある。潤滑オイルの劣化は、一般的に運転時間が長くなるほど進行するのであるが、エンジンの使用条件によって劣化進行度合いが異なる。例えば高負荷運転の頻度が高い場合や、粗悪燃料が使用された場合には、潤滑オイルは比較的早く劣化する。
【0003】
ところで、CGS用のガスエンジンのように、一定箇所に据え付けられる定置用エンジンにおいては、メンテナンス事業者が据え付け箇所に出向いてオイルサンプリングを行い、これを分析した上で必要に応じてオイル交換を行っている。或いは、劣化度合いに拘わらず、所定の運転時間や経日数に基づいてオイル交換が行われる場合もある。しかし、前者では、潤滑オイルの劣化度合いを判断するために現地でのオイルサンプリング作業が負担となり、また後者では、潤滑オイルが寿命期を迎えていないのにオイル交換を行う場合があると言った不具合が存在する。
【0004】
そこで、潤滑オイルの劣化度合いを判定するセンサをガスエンジンに取り付け、オイル交換時期を遠隔的に、的確に見極めることができる劣化診断装置が求められるところである。従来、オイル劣化センサとしては、例えば特許文献1に開示されているような、異なる2波長の検査光をオイルに照射すると共にその透過光を検出し、吸光度又は透過光量に基づいて劣化判定を行うものが知られている。また、特許文献2には、耐熱性に優れる光ファイバを用いて検査光をエンジン内のオイルに照射し、光ファイバを介してその透過光を受光する劣化診断装置が開示されている。
【特許文献1】特許第2963346号公報
【特許文献2】特開2001−27635号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、上記のような検査光を発生する発光素子、及び前記検査光を受光する受光素子は、環境温度によって光出力が変化する。すなわち、発光素子は温度変化により出力光量が変化し、受光素子は光電変換出力電流が変化する。内燃機関の潤滑オイルは高温になるので、オイル劣化のために定置用エンジンに発光素子及び受光素子を組み付けた場合、真の劣化度合いにマッチした吸光度又は透過光量が得られず、誤判定を行ってしまうことが考えられる。特許文献2のように光ファイバを用いれば、温度変化の影響が及ばないようにすることができるが、複雑な伝送光学系の構築が必要になると共に、当該伝送光学系における伝送損失が要因となって誤判定を行ってしまうことも考えられる。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みて為されたものであって、潤滑オイルの劣化度合いを的確に、しかも装置構造を複雑化させることなく判定することができる潤滑オイルの劣化診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る潤滑オイルの劣化診断装置は、潤滑オイルを使用する機関から前記潤滑オイルの一部を被検査オイルとして抜き出し、所定の循環経路を経て前記被検査オイルを前記機関に戻すオイル循環系統と、前記循環経路の途中に設けられ、抜き出された被検査オイルを冷却するオイル冷却手段と、前記オイル冷却手段よりも循環経路の下流側に設けられ、冷却された被検査オイルに所定の検査光を透過させることで前記被検査オイルの劣化度合いを判定する検査手段とを具備してなり、前記検査手段は、前記被検査オイルを所定の流量で通過させるオイル通路と、該オイル通路を通過する被検査オイルに直接検査光を照射する発光素子と、前記被検査オイルを透過した前記検査光を直接受光する受光素子とを有することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、オイル循環系統により機関から抜き出された被検査オイルは、オイル冷却手段により冷却された上で検査手段に導かれる。このため、潤滑オイルが機関内で高温になっていたとしても、検査手段に備えられている発光素子及び受光素子が影響を受けない温度まで冷却された状態で、検査手段へ被検査オイルを導くことが可能となる。そして、オイル通路を所定の流量で通過する被検査オイルに、発光素子により検査光が直接照射され、被検査オイルを透過した検査光が直接受光素子により受光される。このときの受光素子の出力値に基づき、粘度、塩基価、酸価、不溶分などを公知の手法で算出することにより、被検査オイルの劣化度合を判定することができる。
【0009】
上記構成において、前記オイル通路は、所定のブロックを貫通するように形成されたものであり、前記発光素子は当該オイル通路に臨んで配置され、前記受光素子は前記発光素子に対向するように前記オイル通路に臨んで配置されている構成とすることができる(請求項2)。この構成によれば、所定のブロックを用いてオイル通路の形成、発光素子及び受光素子の組み付けを行うことができ、検査手段の構成を簡素化することができる。
【0010】
この場合、前記検査手段は、冷却された被検査オイルを一時的に貯留する液体貯留部と、前記液体貯留部に貯留された被検査オイルを前記オイル通路へ導く導液手段をさらに備えることが望ましい(請求項3)。この構成によれば、被検査オイルが一時的に液体貯留部へ貯留された上でオイル通路へ導かれるので、オイル通路へ被検査オイルを途切れることなく安定的に供給することができる。従って、長期的に安定した潤滑オイルの劣化診断を行えるようになる。
【0011】
上記の場合において、前記検査手段は、前記液体貯留部を構成する第1の液槽と、前記ブロックが収容される第2の液槽とを備え、前記第1の液槽には前記オイル循環系統の上流側に接続され前記被検査オイルを受け入れるオイル供給孔が、前記第2の液槽には前記オイル循環系統の下流側に接続され前記オイル通路を通過した前記被検査オイルを戻すオイル排出孔がそれぞれ設けられている構成とすることが望ましい(請求項4)。この構成によれば、オイル循環系統に検査手段を簡単且つ確実に接続することができる。
【0012】
また、上記の場合において、前記第1の液槽には貯留された被検査オイルの溢出部が設けられ、前記ブロックは、前記オイル通路が上下方向に延在し、且つ前記オイル通路の入口が前記溢出部よりも下方に位置するように前記第2の液槽に配置され、前記導液手段は、前記溢出部と前記オイル通路の入口との間を橋絡し前記被検査オイルをその表面に沿って適量誘導する棒状部材からなり、前記第2の液槽のオイル排出孔は、当該第2の液槽の底面に設けられていることが望ましい(請求項5)。この構成によれば、重力を利用した簡素な構成でオイル通路へ被検査オイルを確実に導くことができる。また、光学測定に悪影響を与えることがある不純物を第1の液槽に沈殿させた上で被検査オイルをオイル通路へ導けるので、一層正確なオイル劣化判定を行うことができる。
【0013】
上記のいずれかの構成において、前記ブロックが、温度調節が可能な基板に取り付けられていることが望ましい(請求項6)。この構成によれば、前記ブロックの温度調節を行うことが可能となるので、発光素子及び受光素子に対して一層熱の影響が及ばないようにすることができる。
【0014】
また、上記のいずれかの構成において、所定の第1波長の検査光を発生する第1発光素子と、その検査光を受光する第1受光素子とからなる第1のセンサ対と、前記第1波長とは異なる第2波長の検査光を発生する第2発光素子と、その検査光を受光する第2受光素子とからなる第2のセンサ対とを含み、前記第1のセンサ対が前記オイル通路の上流側に、前記第2のセンサ対が前記オイル通路の下流側に各々配置されていることが望ましい(請求項7)。この構成によれば、2波長方式のオイル劣化診断を行うためのセンサ構成を、簡単に構築することができる。
【0015】
この場合、前記第1波長の参照光を発生する第3発光素子及び前記第2波長の参照光を発生する第4発光素子と、これら参照光を前記オイル通路に相当する空気層を介してそれぞれ受光する第3受光素子及び第4受光素子とからなる温度補正用センサ対をさらに備えることが望ましい(請求項8)。この構成によれば、温度補正を行いつつ、より正確なオイル劣化診断を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る潤滑オイルの劣化診断装置によれば、稼働中の機関の運転を停止することなく、潤滑オイルの劣化度合いを長期間安定的に、非破壊で監視することができる。すなわち、潤滑オイルの温度や環境温度の影響を受けて劣化度合いを誤判定するといった不具合を抑制することができる。従って、CGS用のガスエンジンのような定置用エンジン等であっても、たとえば検査手段に通信機能を具備させることで、オイル交換時期を遠隔的に且つ的確に判定することができ、結果としてメンテナンス負担の軽減、オイル交換頻度の最適化及びそれに伴う廃油量の低減を図ることができる。また、発光素子及び受光素子と潤滑オイルとを直接接触させるに等しい構成であるので、光ファイバ等を用いて光学系を構築する必要もなく、センサ構成を簡素化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態につき説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る潤滑オイルの劣化診断装置Sの全体構成を概略的に示す構成図である。この劣化診断装置Sは、エンジン10(「潤滑オイルを使用する機関」の一例)に使用されている潤滑オイル11の劣化度合いを監視するためのものであって、オイル循環系統20、オイルクーラ30(オイル冷却手段)及び検査手段Tを備えて構成されている。
【0018】
エンジン10は、クランクシャフト等に動力を与える内燃機関であり、例えばCGS用のガスエンジン、ガソリンエンジン或いはディーゼルエンジン等から成る。エンジン10の内部には潤滑オイル11が充填されており、内燃機関の円滑な動作を可能としている。このエンジン10には、潤滑オイル11の一部を被検査オイルとして抜き出すためのオイル取り出し孔12と、検査後の前記被検査オイルをエンジン10に戻すためのオイル戻し孔13とが備えられている。
【0019】
オイル循環系統20は、エンジン10のオイル取り出し孔12から潤滑オイル11の一部を被検査オイルとして抜き出し、オイルクーラ30及び検査手段Tを経由する循環経路を経て前記被検査オイルをエンジン10のオイル戻し孔13に戻すものである。オイルクーラ30は、前記循環経路の上流側に配置され、検査手段Tはオイルクーラ30よりも循環経路の下流側に配置されている。
【0020】
オイル循環系統20は、被検査オイルを強制循環させるための上流側ポンプ21と下流側ポンプ25とを含む。また、オイル循環系統20は、オイル取り出し孔12と上流側ポンプ21との間を接続する第1管路201、上流側ポンプ21とオイルクーラ30との間を接続する第2管路202、オイルクーラ30と検査手段Tとの間を接続する第3管路203、検査手段Tと下流側ポンプ25との間を接続する第4管路204及び下流側ポンプ25とオイル戻し孔13との間を接続する第5管路205を含む。これら第1〜第5管路201〜205は、樹脂パイプから構成される。さらに、被検査オイルの循環若しくは停止を各所で行わせるために、第1管路201には第1開閉弁22が、第3管路203の検査手段T寄りには第2開閉弁23が、第4管路204の検査手段T寄りには第3開閉弁24がそれぞれ配置されている。
【0021】
このようなオイル循環系統20がエンジン10に付設されている結果、エンジン10の運転中において、上流側ポンプ21の動作により潤滑オイル11の一部がオイル取り出し孔12から被検査オイルとして抜き出される。抜き出された被検査オイルは、オイルクーラ30と検査手段Tとを順次経由して冷却工程及び検査工程を経た後、下流側ポンプ25の動作によりオイル戻し孔13に戻される。
【0022】
オイルクーラ30は、エンジン10からの抜き出し時には例えば90〜110℃程度の高温である被検査オイルを、50℃程度以下に冷却するものである。このオイルクーラ30は、伝熱性に優れた金属パイプ(銅パイプ等)を螺旋状に巻回してなるパイプコイル31と、このパイプコイル31を横倒し状態で収納する水槽32とを備えている。パイプコイル31の入口端311は、第2管路202の終端と接続され、パイプコイル31の出口端312は、第3管路203の始端と接続されている。また、水槽32には水入口321と水出口322とが設けられ、冷却水を水槽32に循環させることで高温のパイプコイル31(被検査オイル)を水冷できるようになっている。
【0023】
検査手段Tは、オイルクーラ30にて冷却された被検査オイルに所定の検査光を透過させることで前記被検査オイルの劣化度合いを判定するものである。この検査手段Tは、サンプリング油槽40と、サンプリング油槽40内に設置される検査ユニット50と、検査ユニット50による測定結果に基づき劣化度合い判定のための演算を行う処理演算部60とを具備している。
【0024】
サンプリング油槽40は、漏油受け台45の底面上に据え付けられ、被検査オイルが受け入れられるオイル供給接続部40inと、検査後の被検査オイルが排出されるオイル排出接続部40outとが備えられている。オイル供給接続部40inには、第2開閉弁23を介して第3管路203の終端が接続されている。また、オイル排出接続部40outには、第3開閉弁24を介して第4管路204の始端が接続されている。なお、漏油受け台45は、平板状のスペーサ46を介してフレーム架台47にて支持されている。
【0025】
図2は検査ユニット50が設置されたサンプリング油槽40を示す一部破断斜視図、図3は図2の側断面図である。サンプリング油槽40は、長方形の長側板401A、401Bと略正方形の短側板402A、402Bと、底板403とから形成された長方形の立体容器である。そして、サンプリング油槽40の長手方向略中央部には仕切り板41が立設されており、これによりサンプリング油槽40の内部は、第1の液槽42と第2の液槽43との2つに区画されている。
【0026】
第1の液槽42は、オイルクーラ30により冷却された被検査オイルを一時的に貯留する液体貯留部の役割を果たす。短側板402Aには、オイル供給接続部40inを通して被検査オイルを受け入れるオイル供給孔421が穿孔されており、該オイル供給孔421から第1の液槽42へ被検査オイルが連続的に供給される。供給された被検査オイルは、第1の液槽42に貯留される。なお、図3の符号OLで示す一点鎖線は、被検査オイルの液面を表している。
【0027】
第2の液槽43には、検査ユニット50が収納されると共に、第1の液槽42から誘油針44(導液手段)を介して被検査オイルが適量ずつ供給される。底板403の第2の液槽43側には、オイル排出接続部40outを通して被検査オイルを排出するオイル排出孔431が穿孔されており、検査ユニット50で検査された後の被検査オイルをエンジン10に戻すために順次排出される。
【0028】
仕切り板41は、その上側辺の中央部に、V字型に切り込まれた溢出部411が形成されている。このV字型溢出部411の最深部412を含む平面が、被検査オイルの貯留高さ限界(図3に示す液面OL)となる。
【0029】
誘油針44は、針金のような棒状部材からなり、V字型溢出部411と、後述する検査ユニット50のブロック51に設けられているオイル通路52の入口部52inとの間を橋絡し、被検査オイルの流通路の一部を構成する。誘油針44の一端側441は、V字型溢出部411の最深部412で支持され、他端側442はU字型に湾曲された状態で入口部52inに対向配置されている。オイル通路52の入口部52inは、V字型溢出部411の最深部412よりも低い高さ位置に設定されており、誘油針44は、入口部52inに向けて下側に傾斜して配置されている。この結果、被検査オイルの液面OLがV字型溢出部411の最深部412まで達したときに、被検査オイルは誘油針44の表面に沿って滴下する態様で、最深部412から入口部52inへ適量ずつ誘導されるようになる。
【0030】
検査ユニット50は、被検査オイルに所定の検査光を照射して劣化診断のための光量データを取得するためのユニットである。この検査ユニット50は、角柱状のブロック51と、このブロック51の内部に形成されているオイル通路52と、温度補正用ブロック55と、これらブロックを搭載する例えば銅板からなる金属基板500と、該金属基板500を温度調節するペルチェ素子56とを含んでいる。
【0031】
図5〜図7に基づき後述するが、ブロック51には、オイル通路52を通過する被検査オイルに直接検査光を照射する発光素子53と、前記被検査オイルを透過した前記検査光を直接受光する受光素子54とが組み付けられる。なお、本実施形態では、異なる2波長の検査光を照射する方式を例示している関係上、ブロック51は、第1波長の検査光の投受光を行わせるための第1ブロック51Aと、第1波長とは異なる第2波長の検査光の投受光を行わせるための第2ブロック51Bとが積層されて成る。
【0032】
図4(a)は、ブロック51(第1ブロック51A)の外観斜視図であり、図4(b)は図4(a)の矢印A方向の側面図である。ブロック51は、角柱状に成形された真ちゅうのような金属からなり、その長手方向に沿ってトンネル状に穿孔された発光素子受容孔511と、長手方向中央付近に上下方向に設けられた受光素子受容孔512と、受光素子受容孔512に隣接して設けられたオイル通路52とを具備している。
【0033】
発光素子受容孔511は、円柱型の空洞からなり、一端側がブロック51の端縁に開口し、他端側が受光素子受容孔512にまで達している。受光素子受容孔512は、矩形の溝孔からなり、ブロック51の上面に開口を有する。オイル通路52(第1ブロック51Aのオイル通路52A)は、ブロック51を上下方向に貫通する筒状の貫通孔からなり、発光素子受容孔511の他端側と受光素子受容孔512の片面との間に挟まれる位置に配置されている。
【0034】
オイル通路52Aは、被検査オイルを所定の流量で通過させるものであって、図4(b)に示すように、入口部52inにオイルの流入を容易とするために形成されたフィレット加工部521と、フィレット加工部521から発光素子受容孔511の上縁に至る上側通路522と、発光素子受容孔511の下縁から下側出口524へ至る下側通路523とからなる。また、オイル通路52Aの中間部(上側通路522と下側通路523との間)として、発光素子受容孔511が利用されている。なお、第2ブロック51Bにも、フィレット加工部を除いて同様なオイル通路が形成されている。
【0035】
図5、図6は、ブロック51(第1ブロック51A)に対する発光素子53(第1発光素子53A)及び受光素子54(第1受光素子54A)の組み付け状態を説明するための図であって、図5は分解斜視図、図6(a)は組み付け状態を示す透視斜視図、図6(b)は上面透視図をそれぞれ示している。発光素子53は、LED等の半導体発光素子チップが透光性を有する樹脂材料で砲弾型にレンズモールドされてなる本体部530と、本体部530から延出されたリード531とから成る。受光素子54は、発光素子53が発する光の波長に感度を有するシリコンフォトダイオード等が透光性を有する樹脂材料で薄肉の箱形にモールドされてなる本体部540と、本体部540から延出されたリード541とから成る。
【0036】
図6に示すように、発光素子53(本体部530)は、ブロック51の発光素子受容孔511へ密に挿入される。また、受光素子54(本体部540)は、その受光面が発光素子53と対向するように、受光素子受容孔512へ密に挿入される。図6(b)に示したように、発光素子53の先端面と受光素子54の受光面との間は、オイル通路52の直径に相当する長さだけ離間して対向されている。従って、オイル通路52を通過しつつある被検査オイルに対して、レンズや光ファイバ等の他の光学系を介することなく、発光素子53から直接検査光を照射し、そして被検査オイルを透過した検査光を受光素子54にて直接受光することが可能とされている。
【0037】
図7(a)は、上述の第1ブロック51Aと、これと同様の構成を有する第2ブロック51Bとの組み付け状態を示す透視斜視図であり、図7(b)は透視側面図である。第2ブロック51Bには、第1発光素子53Aとは異なる波長の検査光を発する第2発光素子53Bと、この検査光を受光する第2受光素子54Bとが収納されている。図7(b)に示したように、第2ブロック51Bにもオイル通路52Bが形成されており、第1ブロック51Aのオイル通路52Aと連通されるように2つのブロックが積層されることで、第1ブロック51Aの上端面を入口部52inとし、第2ブロック51Bの下端面を出口部52outとする1本のオイル通路52が形成されている。
【0038】
第2ブロック51Bのオイル通路52Bは、第1ブロック51Aの下側出口524(図4(b)参照)と対向する入口525から発光素子受容孔511の上縁に至る上側通路526と、発光素子受容孔511の下縁からオイル通路52の出口部52outへ至る下側通路527とからなる。また、オイル通路52Bの中間部(上側通路526と下側通路527との間)として、発光素子受容孔511が利用されている。
【0039】
オイル通路52の出口部52outには、オイル通路52を通過する被検査オイルの流量を適量に調節するための流量調節ネジ528が螺合されている。すなわち、下側通路527の内周壁にはネジ溝が刻設されており、該ネジ溝への螺合度合いを調整することで、オイル通路52を流れる被検査オイルの流量調整が可能とされている。
【0040】
図8も参照して、被検査オイルの流れについて説明する。誘油針44の表面に沿って一端側441から他端側442へ滴下しブロック51まで導かれた被検査オイルは、他端側442のU字型湾曲部下端からオイル通路52の入口部52in(フィレット加工部521)へ滴下される。入口部52inから導入された被検査オイルは、第1ブロック51Aの上側通路522を経由して第1発光素子53Aと第1受光素子54Aとの間の空隙部511Aを満たし、下側通路523を経て下側出口524へ至る。その後被検査オイルは、第2ブロック51Bの入口525へ導入され、上側通路526を経由して第2発光素子53Bと第2受光素子54Bとの間の空隙部511Bを満たし、下側通路527を経て、流量調節ネジ528で流量を規制されながらオイル通路52の出口部52outから排出される。しかる後、被検査オイルは、オイル排出孔431からオイル循環系統20(第4管路204)に戻されるものである(図3、図1参照)。
【0041】
図8に示すように、ブロック51(第1ブロック51A及び第2ブロック51B)は、密接して積層された状態で金属基板500の表面側下端付近に取り付けられている。一方、金属基板500の裏面側下端付近には、温度補正用ブロック55が取り付けられている。この温度補正用ブロック55は、第2ブロック51Bと同様の構成を備える、第3ブロック55A及び第4ブロック55Bからなる。そして、第1発光素子53Aの発光波長を第1波長とするとき、第1波長の参照光を発生する第3発光素子と、この第1波長の参照光を前記オイル通路52のサイズに相当する空気層を介して受光する第3受光素子(いずれも図略)とからなる温度補正用センサ対が第3ブロック55Aに内蔵されている。また、第2発光素子53Bの発光波長を第2波長とするとき、第2波長の参照光を発生する第4発光素子と、この第2波長の参照光を前記オイル通路52のサイズに相当する空気層を介して受光する第4受光素子(いずれも図略)とからなる温度補正用センサ対が第4ブロック55Bに内蔵されている。
【0042】
温度補正用ブロック55とブロック51とがこのような配置関係とされていることから、両者は熱的に結合されている。従って、温度補正用ブロック55の第3発光素子及び第3受光素子による投受光結果、並びに第4発光素子及び第4受光素子による投受光結果を参照することで、ブロック51において検出された透過光量等のデータを外気温の影響を受けないように温度補正して利用できるようになる。
【0043】
金属基板500の裏面側上端付近には、ペルチェ素子56が取り付けられている。このペルチェ素子56は、金属基板500を常温(40℃〜20℃程度)に温度調節することで、ブロック51及び温度補正用ブロック55を可及的に常温に維持させるものである。なお外気温の変動が小さい場合やオイルクーラ30で被検査オイルの冷却効果が十分に担保されている場合は、このペルチェ素子56の使用を省略することができる。また、金属基板500に対する外気温の影響を抑制するために、金属基板500の表面にシリコン樹脂膜等を形成しても良い。
【0044】
以上のように、本実施形態に係る潤滑オイルの劣化診断装置Sでは、オイルクーラ30で被検査オイルを冷却した後に、ブロック51へ導くようにしている。さらに、ペルチェ素子56により、ブロック51を常温に維持させる機能も付加されている。従って、潤滑オイル11がエンジン10内で高温になっていたとしても、発光素子53及び受光素子54が影響を受けない温度まで冷却された状態で、被検査オイルを検知部まで導くことが可能となる。
【0045】
図9(a)は、一般的な受光素子の温度特性を示すグラフ、図9(b)は、一般的な発光素子の温度特性を示すグラフである。これらグラフに示す通り、受光素子は環境温度が上昇すると出力電流が上昇する傾向があり、発光素子は環境温度が上昇すると発光出力が低下する傾向がある。従って、被検査オイルが高温のままで発光素子53及び受光素子54による検知部まで導入された場合、その温度の影響を受けて真の透過光量特性が測定できず、ひいては粘度、塩基価、酸価、不溶分などオイル劣化診断に必要なパラメータを算出できない懸念がある。しかし、本実施形態に係る潤滑オイルの劣化診断装置Sによれば、温度の影響は可及的に抑制されることから、的確なオイル劣化診断を行うことができる。
【0046】
続いて、処理演算部60について説明する。図10は、処理演算部60の構成を示すブロック図である。この処理演算部60は、ドライバ61A〜61D、I/V(電流/電圧)変換部62A〜62D、A/D(アナログ/デジタル)変換部63、CPU(Central Processing Unit)64、通信部65、表示部66、ROM(Read Only Memory)67及びRAM(Random Access Memory)68を備えて構成されている。
【0047】
ドライバ61A〜61Dは、第1ブロック51A、第2ブロック51B、第3ブロック55A及び第4ブロック55Bにそれぞれ備えられている第1発光素子53A、第2発光素子53B、第3発光素子53C及び第4発光素子53Dを、後述するCPU64の測定制御部643から所定のサンプリング周期で与えられる発光制御信号に基づき駆動(発光)させる。発光波長の一例を挙げると、例えば第1発光素子53Aは870nm(第1波長)、第2発光素子53Bは950nm(第2波長)、第3発光素子53Cは870nm(第1波長)、第4発光素子53Dは950nm(第2波長)を選択することができる。
【0048】
I/V変換部62A〜62Dは、第1受光素子54A、第2受光素子54B、第3受光素子54C及び第4受光素子54Dがそれぞれ検査光を光電変換して出力した電流信号を電圧信号に変換する。ここで、I/V変換部62A、62Bから出力される電圧信号は、第1発光素子53A及び第2発光素子53Bから発せられた検査光が被検査オイルを透過した透過光量に応じた電圧信号である。すなわち、被検査オイルの劣化の程度に応じた電圧信号が出力される。一方、I/V変換部62C、62Dから出力される電圧信号は、第3発光素子53C及び第4発光素子53Dから発せられた参照光が空気層を通過しただけの空気透過光量に応じた電圧信号となる。
【0049】
A/D変換部63は、I/V変換部62A〜62Dからそれぞれ出力される電圧信号を取得し、これをデジタル信号に変換してCPU64へ向けて出力する。
【0050】
CPU64は、処理演算部60各部の動作制御を行うもので、機能的に温度補正部641、劣化演算部642及び測定制御部643を備えて構成されている。温度補正部641は、温度補正用ブロック55に対応するI/V変換部62C、62Dからの出力信号を補正用電圧として利用し、検査光の透過光量に応じたI/V変換部62A、62Bからの出力信号をそれぞれの検査光波長(第1波長及び第2波長)において温度補正する演算を行う。すなわち、第1波長が用いられたI/V変換部62Aの出力信号は、同じ第1波長が用いられたI/V変換部62Cの出力信号で補正され、第2波長が用いられたI/V変換部62Bの出力信号は、同じ第2波長が用いられたI/V変換部62Dの出力信号で補正されるものである。
【0051】
劣化演算部642は、I/V変換部62A、62Bからの出力信号に基づいて、被検査オイルの劣化度合いに関するパラメータを求める演算を行う。このパラメータとしては、透過光量若しくは吸光度の低下度合い、あるいは透過光量に基づき求められる粘度、塩基価、酸価、不溶分などを例示することができる。
【0052】
測定制御部643は、所定の測定プログラムに則りドライバ61A〜61D及びI/V変換部62A〜62Dによる測定動作を制御する。具体的には、ドライバ61A〜61D及びI/V変換部62A〜62Dにタイミングパルス等を与え、サンプリング周期毎に第1〜第4発光素子53A〜53Dを発光させると共に、その発光タイミングに同期させて第1〜第4受光素子54A〜54Dから光電変換信号(測定データ)を取得させる。
【0053】
図11は、発光波長として870nm及び950nmの2波長を使用した場合における、エンジン10の運転時間と潤滑オイル11(被検査オイル)の透過光量(受光光量)との関係の測定例を示すグラフである。グラフに示す通り、エンジン10の運転時間が長くなる程、受光光量が低下するようになる。また、870nmと950nmとでは、受光光量の大きさ、傾きが異なることが分かる。劣化演算部642は、このような特性を利用して、劣化度合いに関するパラメータを求める演算を行う。
【0054】
図12は、温度補正部641における温度補正処理を説明するためのグラフである。I/V変換部62A、62Bからの出力電圧は、符号C1で示す特性のように、温度が高くなる程低くなる。一方、温度補正用ブロック55に対応するI/V変換部62C、62Dからの出力電圧も、ブロック同士が熱結合されていることから、符号C2で示す特性のように同じような勾配を示す。従って、符号C1の特性を符号C2の特性で補償することで、符号C3で示すように殆ど温度依存性のない特性を得ることができる。
【0055】
本実施形態では、オイルクーラ30による被検査オイルの冷却、ペルチェ素子56によるブロック51の温度維持に加え、温度補正部641による上記のような温度補正処理も実行している。従って、被検査オイルの保有熱や外気温の影響を高度に除外して、発光素子及び受光素子を用いた被検査オイルの劣化診断測定を行うことができる。
【0056】
図10に戻って、通信部65は、外部の端末機等とデータ通信を行うものであり、例えば劣化演算部642による劣化診断結果を、インターネットを介して遠隔地に存在する管理センター等へ伝送する。表示部66は、液晶ディスプレイ等からなり、例えば劣化演算部642による劣化診断結果を所定の形式で表示する。
【0057】
ROM67は、当該劣化診断装置Sの動作プログラム等を記憶する。RAM68は、A/D変換部63から与えられるデータ信号、劣化演算部642による劣化診断結果等を一時的に格納する。
【0058】
以上の通り構成された本実施形態に係る潤滑オイルの劣化診断装置Sの動作について説明する。エンジン10の運転が開始されると、上流側ポンプ21の駆動も開始され、潤滑オイル11の一部がオイル取り出し孔12から被検査オイルとして抜き出される。抜き出された被検査オイルは、第1管路201、第2管路202を経て、オイルクーラ30へ導かれる。このオイルクーラ30で、被検査オイルは50℃程度以下に冷却される。しかる後、被検査オイルは第3管路203を経て検査手段Tへ送られ、オイル供給接続部40inを通してサンプリング油槽40へ供給される(図1参照)。
【0059】
続いて、図3に示すように、被検査オイルは第1の液槽42に一時的に貯留される。この際、光学測定に悪影響を与えることがある不純物が第1の液槽に沈殿される。そして、被検査オイルの液面OLがV字型溢出部411の最深部412まで達すると、被検査オイルは誘油針44の表面に沿って滴下する態様で、仕切り板41の最深部412からオイル通路52の入口部52inへ適量ずつ誘導される(図8も参照)。
【0060】
その後、被検査オイルは、流量調節ネジ528で流量を規制されながらオイル通路52を通過する。この際、図7(b)に示すように、先ず第1ブロック51Aの第1発光素子53A、続いて第2ブロック51Bの第2発光素子53Bから、それぞれ異なる波長の検査光の照射を受ける。これら検査光は、被検査オイルを透過した後に各々第1受光素子54A及び第2受光素子54Bにて受光される。この受光データに基づき、処理演算部60により被検査オイルの劣化度合いに関するパラメータが算出される。
【0061】
オイル通路52の出口部52outから排出された被検査オイルは、サンプリング油槽40のオイル排出接続部40outからオイル循環系統20の第4管路204へ送られる。そして、下流側ポンプ25の動作により第5管路205を経て、オイル戻し孔13を介してエンジン10に戻される。以下、かかる動作が、エンジン10の運転期間中継続されるものである。
【0062】
以上説明した潤滑オイルの劣化診断装置Sによれば、稼働中のエンジン10の運転を停止することなく、潤滑オイル11の劣化度合いを長期間安定的に、非破壊で監視することができる。すなわち、潤滑オイル11の温度や環境温度の影響を受けて劣化度合いを誤判定するといった不具合を抑制することができる。従って、CGS用のガスエンジンのような定置用エンジン等であっても、通信部65から劣化診断結果を送信させることで、オイル交換時期を遠隔的に且つ的確に判定することができ、結果としてメンテナンス負担の軽減、オイル交換頻度の最適化及びそれに伴う廃油量の低減を図ることができる。また、発光素子53及び受光素子54と潤滑オイル(被検査オイル)とを直接接触させるに等しい構成であるので、光ファイバ等を用いて光学系を構築する必要もなく、センサ構成を簡素化することができる。
【0063】
以上、本発明の各種実施形態につき説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、下記[1]〜[3]のような変形実施形態を取ることができる。
【0064】
[1]上記実施形態では、2組の発光素子及び受光素子を用いる2波長方式を例示したが、1組の発光素子及び受光素子のみを用いるようにしても良い。あるいは、3組以上の発光素子及び受光素子を用いるようにしても良い。
【0065】
[2]上記実施形態では、ブロック51にオイル通路52を形成する例を示したが、オイル通路は必ずしもブロック内に形成しなくとも良い。例えば、オイル循環系統20を構成する管路に、被検査オイルを所定の流量で通過させ得る部分を形成してこれをオイル通路とし、そこに発光素子及び受光素子を対向配置するようにしても良い。
【0066】
[3]上記実施形態では、機関の例としてエンジン10を挙げたが、本発明はエンジン以外の潤滑オイルを用いる他の機関にも適用可能である。例えば、コンプレッサーやギア装置等に使用されている潤滑オイルの劣化診断にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施形態に係る潤滑オイルの劣化診断装置Sの全体構成を概略的に示す構成図である。
【図2】検査ユニット50が設置されたサンプリング油槽40を示す一部破断斜視図である。
【図3】図2の側断面図である。
【図4】(a)は、ブロック51(第1ブロック51A)の外観斜視図であり、(b)は(a)の矢印A方向の側面図である。
【図5】ブロックに対する発光素子及び受光素子の組み付け状態を説明するための分解斜視図である。
【図6】(a)はブロックに対する発光素子及び受光素子の組み付け状態を示す透視斜視図、(b)は上面透視図をそれぞれ示している。
【図7】(a)は、第1ブロック51Aと、これと同様の構成を有する第2ブロック51Bとの組み付け状態を示す透視斜視図であり、(b)は透視側面図である。
【図8】検査ユニット50の側面図である。
【図9】(a)は、一般的な受光素子の温度特性を示すグラフ、(b)は、一般的な発光素子の温度特性を示すグラフである。
【図10】処理演算部60の構成を示すブロック図である。
【図11】2波長を使用した場合における、エンジンの運転時間と潤滑オイル(被検査オイル)の透過光量(受光光量)との関係の測定例を示すグラフである。
【図12】温度補正部における温度補正処理を説明するためのグラフである。
【符号の説明】
【0068】
S 潤滑オイルの劣化診断装置
10 エンジン(潤滑オイルを使用する機関)
11 潤滑オイル
12 オイル取り出し孔
13 オイル戻し孔
20 オイル循環系統
30 オイルクーラ30(オイル冷却手段)
40 サンプリング油槽
40in オイル供給接続部
40out オイル排出接続部
41 仕切り板
411 溢出部
412 最深部
421 オイル供給孔
431 オイル排出孔
42 第1の液槽
43 第2の液槽
44 誘油針(導液手段)
50 検査ユニット
500 金属基板(温度調節が可能な基板)
51 ブロック
51A 第1ブロック
51B 第2ブロック
52 オイル通路
53 発光素子
53A〜53D 第1〜第4発光素子
54 受光素子
54A〜54D 第1〜第4受光素子
55 温度補正用ブロック
55A 第3ブロック
55B 第4ブロック
56 ペルチェ素子
60 処理演算部
T 検査手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑オイルを使用する機関から前記潤滑オイルの一部を被検査オイルとして抜き出し、所定の循環経路を経て前記被検査オイルを前記機関に戻すオイル循環系統と、
前記循環経路の途中に設けられ、抜き出された被検査オイルを冷却するオイル冷却手段と、
前記オイル冷却手段よりも循環経路の下流側に設けられ、冷却された被検査オイルに所定の検査光を透過させることで前記被検査オイルの劣化度合いを判定する検査手段とを具備してなり、
前記検査手段は、前記被検査オイルを所定の流量で通過させるオイル通路と、該オイル通路を通過する被検査オイルに直接検査光を照射する発光素子と、前記被検査オイルを透過した前記検査光を直接受光する受光素子とを有することを特徴とする潤滑オイルの劣化診断装置。
【請求項2】
前記オイル通路は、所定のブロックを貫通するように形成されたものであり、
前記発光素子は当該オイル通路に臨んで配置され、前記受光素子は前記発光素子に対向するように前記オイル通路に臨んで配置されていることを特徴とする請求項1に記載の潤滑オイルの劣化診断装置。
【請求項3】
前記検査手段は、冷却された被検査オイルを一時的に貯留する液体貯留部と、
前記液体貯留部に貯留された被検査オイルを前記オイル通路へ導く導液手段をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の潤滑オイルの劣化診断装置。
【請求項4】
前記検査手段は、前記液体貯留部を構成する第1の液槽と、前記ブロックが収容される第2の液槽とを備え、
前記第1の液槽には前記オイル循環系統の上流側に接続され前記被検査オイルを受け入れるオイル供給孔が、
前記第2の液槽には前記オイル循環系統の下流側に接続され前記オイル通路を通過した前記被検査オイルを戻すオイル排出孔がそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項3に記載の潤滑オイルの劣化診断装置。
【請求項5】
前記第1の液槽には貯留された被検査オイルの溢出部が設けられ、
前記ブロックは、前記オイル通路が上下方向に延在し、且つ前記オイル通路の入口が前記溢出部よりも下方に位置するように前記第2の液槽に配置され、
前記導液手段は、前記溢出部と前記オイル通路の入口との間を橋絡し前記被検査オイルをその表面に沿って適量誘導する棒状部材からなり、
前記第2の液槽のオイル排出孔は、当該第2の液槽の底面に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の潤滑オイルの劣化診断装置。
【請求項6】
前記ブロックが、温度調節が可能な基板に取り付けられていることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の潤滑オイルの劣化診断装置。
【請求項7】
所定の第1波長の検査光を発生する第1発光素子と、その検査光を受光する第1受光素子とからなる第1のセンサ対と、
前記第1波長とは異なる第2波長の検査光を発生する第2発光素子と、その検査光を受光する第2受光素子とからなる第2のセンサ対とを含み、
前記第1のセンサ対が前記オイル通路の上流側に、前記第2のセンサ対が前記オイル通路の下流側に各々配置されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の潤滑オイルの劣化診断装置。
【請求項8】
前記第1波長の参照光を発生する第3発光素子及び前記第2波長の参照光を発生する第4発光素子と、
これら参照光を前記オイル通路に相当する空気層を介してそれぞれ受光する第3受光素子及び第4受光素子とからなる温度補正用センサ対をさらに備えることを特徴とする請求項7に記載の潤滑オイルの劣化診断装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2008−51677(P2008−51677A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−228701(P2006−228701)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(506289756)伸和エンジニヤリング株式会社 (3)
【Fターム(参考)】