説明

潤滑グリースおよび潤滑グリース封入転がり軸受

【課題】高温耐久性に優れ、かつフッ素と鋼との反応を抑制し長寿命である潤滑グリースおよび該潤滑グリースが封入された転がり軸受を提供する。
【解決手段】パーフルオロポリエーテル油を基油とし、フッ素樹脂粉末を増ちょう剤とするフッ素系成分を有する潤滑グリースであって、金属表面に被膜を形成できる有機化合物を添加してなり、該有機化合物は、ジウレア化合物などの分子構造中に−NH−結合を有するもの、または、セバシン酸ナトリウムなどの有機酸の金属塩である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高温用潤滑グリースおよび転がり軸受に関し、特に高温度で使用される自動車などの電装補機や電子写真装置の定着部に好適に用いられるフッ素系の高温用潤滑グリースおよび転がり軸受に関する。また、真空中などグリース封入量が比較的少なく、境界潤滑条件で使用される転がり軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
転がり軸受には、潤滑性を付与するために潤滑グリースが封入される。この潤滑グリースは主成分として基油と増ちょう剤とを混練して得られ、基油としては鉱油やエステル油、シリコーン油、エーテル油等の合成油が、また増ちょう剤としてはリチウム石けん等の金属石けんやウレア化合物等が一般的に使用されている。また、潤滑グリースに必要に応じて酸化防止剤、錆び止剤、金属不活性剤、粘度指数向上剤などの各種添加剤が配合されている。
【0003】
近年、自動車の小型化、軽量化および静粛性向上の要求に伴って自動車電装品の小型化、軽量化、静粛性向上、エンジンルーム内の密閉化が図られているが、その一方で電装品の性能には高出力・高効率化が求められている。転がり軸受に封入される潤滑グリースの寿命は、通常、軸受自体の疲労による使用寿命より短いため、軸受自体の寿命は潤滑グリース寿命に依存することになる。そのためこれら電装補機に用いられる潤滑グリースもウレア系潤滑グリース以上の高温に耐えるものでなければならない。
従来 200℃付近の高温になるファンクラッチに用いられる転がり軸受の封入グリースには、増ちょう剤としてフッ素樹脂粉末を用い、基油にパーフルオロポリエーテル(以下、PFPEと記す)油を用いた耐熱性に優れるフッ素系潤滑グリースが使用されている。
【0004】
また、一般に電子写真装置を用いた複写機や印刷機(プリンター)などの定着部には、定着ローラなどを回転自在に支持するためにロール用転がり軸受が多用されている。この定着部には、紙に帯電して付着したトナーを最高 250℃程度の高温で加圧することによって、紙に定着する部位であり、定着部のロール支持転がり軸受は高温で使用されることが多い。特に、ヒートロールは中空軸の内側にヒータをいれ、内側から熱するために、軸受も 200℃をこえる温度で使用されることがある。またヒートロール支持転がり軸受は軸受部の温度を下げるため樹脂製の断熱スリーブを介して使用されることもあるが、それでも輻射熱で軸受端面の温度は 200℃近くになることがある。従来、このような高温条件で使用されるころがり軸受の封入グリースには、高温での劣化が少なく、長い寿命が得られるフッ素系グリースが一般に使用されている。
一般に潤滑剤は真空にさらされると、基油の蒸気圧が高いため基油が蒸発する。そのため真空度が上がらなかったり、真空チャンバーや真空機器内に設けられた計測機器を汚染し不具合を生じる。その対応として真空中で使用される転がり軸受の潤滑にはフッ素系グリースが多く用いられてきた。
【0005】
これらのフッ素系グリースは十分な量が存在する場合は良好な潤滑性を発揮するが、転がり接触部や、すべり部への供給が不足し境界潤滑となる場合は、基油であるPFPE油と軸受材料である鋼(鉄)とが反応し基油の分解とともに鋼の摩耗が生じ短寿命となる。
この反応を抑制しPFPE油本来の耐熱性や潤滑性を活用することにより、より長寿命を得ることが要求されている。その対応として、シリカ配合(皮膜形成)によるフッ素グリースの耐焼付き性、耐摩耗性の改良(特許文献1参照)、有機アンチモンまたは有機モリブデン配合による転がり疲労特性の改良(特許文献2参照)、ビスマス化合物の配合による転がり疲労特性の改良(特許文献3参照)、フッ素有機リン化合物の配合によるフッ素グリースの耐摩耗性、防錆性の改良(特許文献4参照)、二硫化モリブデン、合成マイカ等の層状鉱物粉末、金属石けん、金属酸化物等の金属塩、ダイヤモンド粉末、グラファイト等の炭素化合物、およびメラミンシアヌレート、アミノ酸化合物等の配合によるフッ素グリースの塗れ性の改良(特許文献5参照)、変性ウンデカン混合物、変性ブタン、Cuフタロシアニン、Caスルフォネート等の配合によるフッ素グリースの劣化防止(特許文献6参照)等が知られている。
しかし、これらはいずれもフッ素と鋼との反応に着目してなされたものではなく、フッ素グリースの性質を根本的に改良するにはいたっていない。
【特許文献1】特開2005−97513号公報
【特許文献2】特開2000−303088号公報
【特許文献3】特開2005−42102号公報
【特許文献4】特開2003−27079号公報
【特許文献5】特開2004−188607号公報
【特許文献6】特開平8−143883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような問題に対処するためになされたもので、高温耐久性に優れ、かつ、フッ素と鋼との反応を抑制しPFPE本来の耐熱性や潤滑性を活用した長寿命の潤滑グリース、および該潤滑グリースが封入された転がり軸受を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の潤滑グリースはPFPE油を基油とし、フッ素樹脂粉末を増ちょう剤とするフッ素系潤滑グリースであって、金属表面に被膜を形成できる有機化合物を添加したことを特徴とする。
【0008】
上記有機化合物は、分子構造中に−NH−結合を有することを特徴とする。また、上記有機化合物は、有機酸の金属塩であることを特徴とする。
また、上記分子構造中に−NH−結合を有する有機化合物は、ジウレア化合物であることを特徴とする。
【0009】
本発明のグリース封入転がり軸受は同心に配置される内輪および外輪と、この内輪および外輪間に介在する複数の転動体とを備え、この転動体の周囲に上記潤滑グリースを封入してなる転がり軸受であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の潤滑グリースはPFPE油を基油とし、フッ素樹脂粉末を増ちょう剤とする潤滑グリースであって、金属表面に被膜を形成できる有機化合物を含有するので、高温耐久性に優れ、かつ、該被膜によりフッ素と鋼との反応を抑制でき、PFPE本来の耐熱性や潤滑性を活用することにより長寿命となる。
【0011】
本発明の潤滑グリース封入転がり軸受は、PFPE油を基油とし、フッ素樹脂粉末を増ちょう剤とする潤滑グリースであって、金属表面に被膜を形成できる有機化合物を含有した潤滑グリースを封入してなるので、高温耐久性に優れ、かつ、フッ素と軸受鋼との反応を抑制でき、PFPE本来の耐熱性や潤滑性を活用することにより長寿命となる。この結果、自動車電装補機、事務用機器等に用いられる転がり軸受として好適に利用できる。また、真空中など、グリース封入量が比較的少なく、境界潤滑条件で使用される転がり軸受としても好適に利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に使用できるフッ素系の潤滑グリースは、PFPE油を基油としフッ素樹脂粉末を増ちょう剤とする。
PFPE油は、脂肪族炭化水素ポリエーテルの水素原子をフッ素原子で置換した化合物であれば使用できる。そのようなPFPE油を例示すれば、以下の化1および化2で示される側鎖を有するPFPE油と、化3から化5で示される直鎖状のPFPE油とがある。これらは単独でもまた混合しても使用できる。n、mは整数である。
化1の市販品としてはフォンブリンY(モンテジソン社商品名)を、化2の市販品としてはクライトックス(デュポン社商品名)やバリエルタJオイル(クリューバー社商品名)を、化3の市販品としてはフォンブリンZ(モンテジソン社商品名)を、化4の市販品としてはフォンブリンM(モンテジソン社商品名)を、化5の市販品としてはデムナム(ダイキン社商品名)等をそれぞれ例示できる。
【0013】
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【0014】
増ちょう剤であるフッ素樹脂粉末は上記PFPE油と親和性が高く、高温安定性、耐薬品性を有する粉末が使用できる。
フッ素樹脂を例示すれば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのパーフルオロ系フッ素樹脂が好ましく、特にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が高温安定性、耐薬品性が優れているため好ましい。
【0015】
本発明のフッ素系の潤滑グリースは、潤滑グリース全体量に対して、PFPE油を 70〜90 重量%、フッ素樹脂粉末を 10〜30 重量%配合することが好ましい。この範囲の配合とすることにより、転がり軸受封入グリースとして洩れが少なく、長時間トルクを下げられる好ましいちょう度に調整できる。
【0016】
本発明の潤滑グリースは、金属表面に被膜を形成できる添加剤として有機化合物を添加する。該有機化合物としては、分子構造中に−NH−結合を有するもの、または、有機酸金属塩が好ましい。
分子構造中に−NH−結合を有する有機化合物を添加する場合、軸受部等の摩擦摩耗面または摩耗により露出した鉄系金属新生面において、窒素の不対電子の作用により金属表面に錯体被膜を形成しやすい。また、有機酸金属塩を添加する場合、軸受部等の摩擦摩耗面または摩耗により露出した金属新生面で該有機酸金属塩が分解・反応し、酸化鉄とともに被膜を形成できる。
【0017】
分子構造中に−NH−結合を有する有機化合物としては、例えばジウレア化合物、ポリウレア化合物、およびウレタンウレア化合物、メラミン、ベンゾグアナミン、メアミンシアヌレートなどトリアジン環を有する化合物、尿素樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂に代表されるアミノ系樹脂などが挙げられる。
【0018】
有機酸金属塩を構成する有機酸としては芳香族系有機酸、脂肪族系有機酸、または脂環族系有機酸などであればいずれも使用できる。
有機酸の具体例を例示すれば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ヘプタン酸、2-エチルヘキシル酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデシル酸、アラキン酸等の1価飽和脂肪酸、アクリル酸、クロトン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ガドレイン酸等の1価不飽和脂肪酸、マロン酸、メチルマロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、ジメチルマロン酸、エチルマロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ジメチルコハク酸、ピメリン酸、テトラメチルコハク酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸等の2価飽和脂肪酸、フマル酸、マレイン酸、オレイン酸等の2価不飽和脂肪酸、酒石酸、クエン酸等の脂肪酸誘導体、安息香酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族有機酸、ナフテン酸等の脂環族有機酸が挙げられる。
有機酸金属塩を構成する金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、ビスマスなどが挙げられる。
また、有機酸金属塩は、エステル油など合成油との混合物として添加することができる。
【0019】
以上の有機化合物のなかで、尿素結合を分子内に 2 個有するジウレア化合物、ないしはジウレア化合物と合成油との混合物などが特に好ましい化合物として挙げられる。
ジウレア化合物は以下の化6で示される。
【化6】

(R1、R2 およびR3 は、脂肪族基、脂環族基または芳香族基をそれぞれ表す。)
【0020】
化6で表されるジウレア化合物は、例えば、ジイソシアネートとモノアミンの反応で得られる。ジイソシアネートとしては、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、3,3−ジメチル−4,4−ビフェニレンジイソシアネート、オクタデカンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネー卜等が挙げられ、モノアミンとしては、オクチルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、アニリン、p−トルイジン、シクロヘキシルアミン等が挙げられる。
【0021】
本発明に使用するジウレア化合物は、エステル油などの合成油に混合した混合物として潤滑グリースに添加することができる。
エステル油としては、ジエステル油、ポリオールエステル油またはこれらのコンプレックスエステル油、芳香族エステル油などが使用できる。
エステル油の具体例としては、例えば、炭素数 7〜22 の1価アルコールと芳香族多価カルボン酸、またはその誘導体とのエステル、および炭素数 7〜22 の1価カルボン酸と脂肪族多価アルコールとのエステルから選ばれた少なくとも1つのエステル油が挙げられる。
1価アルコールおよび1価カルボン酸において、炭素数 7 未満および炭素数 22 をこえると潤滑性が劣る。
【0022】
炭素数 7〜22 の1価アルコールとしては、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、フェノール、メチルフェノール、オクチルフェノールなどのアルキルフェノール等が挙げられる。
また、炭素数 7〜22 の1価カルボン酸は、上記脂肪族の1価アルコールの−CH2OHを−COOHに代えた1価カルボン酸、または、上記芳香族の1価アルコールの−OHを−COOHに代えた1価カルボン酸が挙げられる。
芳香族多価カルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ジフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸などが挙げられる。
脂肪族多価アルコールとしては、1,3 ブチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、エチレングリコール、ペンタジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトールなどが挙げられる。
【0023】
エステル油の配合割合は、エステル油とウレア化合物との合計量に対して、エステル油を 70〜95 重量%、ウレア化合物を 30〜5 重量%配合することが好ましい。この範囲の配合とすることにより、軸受封入グリースとして漏れが少なく、長時間潤滑性の良好なちょう度に調整できる。
【0024】
本発明の潤滑グリースには、必要に応じて公知の添加剤を含有させることができる。この添加剤として、例えば、アミン系、フェノール系、イオウ系、ジチオりん酸亜鉛などの酸化防止剤、塩素系、イオウ系、りん系、ジチオりん酸亜鉛、有機モリブデンなどの極圧剤、ベンゾトリアゾールなどの金属不活性剤、ポリメタクリレート、ポリイソブチレン、ポリスチレンなどの粘度指数向上剤、摩耗抑制剤、清浄分散剤などが挙げられる。
また、これらの添加剤は単独または 2 種類以上組み合わせて添加できる。
【0025】
本発明に係る転がり軸受の一例を図1に示す。図1は深溝玉軸受の断面図である。
転がり軸受1は、外周面に内輪転走面2aを有する内輪2と内周面に外輪転走面3aを有する外輪3とが同心に配置され、内輪転走面2aと外輪転走面3aとの間に複数個の転動体4が配置される。この複数個の転動体4を保持する保持器5および外輪3等に固定されるシール部材6とにより構成される。少なくとも転動体4の周囲に潤滑グリース7が封入される。
【実施例】
【0026】
参考例1:グリース1の作製
グリース全体に対して、PFPE油(デュポン社製商品名、クライトックス143AC、40℃の動粘度 191 mm2) 67 重量%に、フッ素樹脂粉末(デュポン社製商品名、バイダックス) 33 重量%を加え撹拌した後、ロールミルに通し、増ちょう剤にフッ素樹脂粉末、基油にPFPE油を用いたグリースである半固形状のグリース1を得た。
【0027】
参考例2:ジウレア化合物
ジフェニルメタンジイソシアネート 1 モルとオクチルアミン 2 モルとをヘキサンに溶かして、還流しながら 40℃で 30 分間撹拌を続けて反応させ、ジウレア化合物をヘキサン中に析出させた。ヘキサンを蒸発させた後、これを乳鉢で擂りつぶし、ジウレア化合物粉末を得た。
【0028】
参考例3:ジウレア化合物とエステル油との混合物
グリース全体に対して、芳香族エステル油(40℃の動粘度91 mm2) 88 重量%の半量にジフェニルメタンジイソシアネート 1 モルを溶かし、残りの半量にモノアミン 2 モルを溶かして上記半量の基油に攪拌しながら加えた後、100〜120℃で 30 分間攪拌を続けて反応させ、ジウレア化合物 12 重量%を基油である芳香族エステル油に折出した。その後、ロールミルに通しジウレア化合物とエステル油の混合物である半固形状物を得た。
【0029】
実施例1〜実施例3および比較例1
表1に示す割合で上記グリース等をそれぞれ混合撹拌して潤滑グリースを得た。配合比率はグリース全体に対する重量%である。
得られた混合グリースの混和ちょう度、滴点を測定した。混和ちょう度および滴点は日本工業規格 JIS K2220に準拠して求めた。その結果を表1に示す。
【0030】
また石油ベンジンで洗浄した軸受 6204ZZに全空間容積の 38 %となる各実施例の潤滑グリースを封入して転がり軸受を作製した。得られた転がり軸受を高温耐久試験にて評価した。
高温耐久試験は、ラジアル荷重 67 N 、スラスト荷重 67 N 、回転数 10000 rpm 、雰囲気温度 200℃にて軸受を回転させ、過負荷によりモータが停止するまでの時間を測定した。なお 3000 時間を上限とした。結果を表1に示す。
【0031】
【表1】

表1に示すように、実施例1〜実施例3の潤滑グリースは比較例1よりも高温耐久試験に優れる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の潤滑グリースはPFPE油を基油とし、フッ素樹脂粉末を増ちょう剤とするフッ素系の潤滑グリースであって、金属表面に被膜を形成する有機化合物を含有することにより、フッ素と鋼との反応を抑制し、PFPE本来の耐熱性や潤滑性を活用して長寿命であるので、自動車電装補機、事務用機器等に用いられる転がり軸受用の潤滑グリースとして好適に利用できる。また、真空中など、グリース封入量が比較的少なく、境界潤滑条件で使用される転がり軸受にも好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】深溝玉軸受の断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 転がり軸受
2 内輪
3 外輪
4 転動体
5 保持器
6 シール部材
7 潤滑グリース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーフルオロポリエーテル油を基油とし、フッ素樹脂粉末を増ちょう剤とするフッ素系潤滑グリースであって、金属表面に被膜を形成できる有機化合物を添加したことを特徴とする潤滑グリース。
【請求項2】
前記有機化合物は、分子構造中に−NH−結合を有することを特徴とする請求項1記載の潤滑グリース。
【請求項3】
前記有機化合物は、有機酸の金属塩であることを特徴とする請求項1記載の潤滑グリース。
【請求項4】
前記分子構造中に−NH−結合を有する有機化合物は、ジウレア化合物であることを特徴とする請求項2記載の潤滑グリース。
【請求項5】
同心に配置される内輪および外輪と、この内輪および外輪間に介在する複数の転動体とを備え、この転動体の周囲に潤滑グリースが封入されてなる転がり軸受であって、
前記潤滑グリースが請求項1ないし請求項4のいずれか一項記載の潤滑グリースであることを特徴とする潤滑グリース封入転がり軸受。

【図1】
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【公開番号】特開2007−92012(P2007−92012A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−13100(P2006−13100)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】