説明

濃度が均一な半導体リソグラフィー用共重合体溶液の及びその製造方法

【課題】半導体リソグラフィーに用いられるレジスト膜や、レジスト膜の上層又は下層に形成される反射防止膜、ギャップフィル膜、トップコート膜等において、その膜厚やリソグラフィー特性のばらつきが極めて少ない半導体リソグラフィー用共重合体溶液の製造方法の提供。
【解決手段】本発明による半導体リソグラフィー用共重合体溶液の製造方法は、水酸基を有する繰り返し単位(A)、アルカリ現像液への溶解を抑制すると共に酸の作用で解離する基で水酸基を保護した構造を有する繰り返し単位(B)、ラクトン構造を有する繰り返し単位(C)、および環状エーテル構造を有する繰り返し単位(D)からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の繰り返し単位を含む共重合体と、塗膜形成用溶媒とを含む共重合体溶液の製造方法において、同一製造ロットを充填した複数容器における容器毎の共重合体濃度の幅を特定の範囲以下とすること、あるいは、特定の製造工程を含むものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体の製造のリソグラフィー工程に用いられる共重合体溶液の製造方法に関する。さらに詳しくは、半導体の製造のリソグラフィー工程に用いられる、レジスト膜や、レジスト膜の上層若しくは下層に形成される反射防止膜、ギャップフィル膜、トップコート膜等の、薄膜形成に用いられる共重合体溶液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の製造においては、集積度を増大させるために、リソグラフィーによる、より微細なパターン形成が求められている。微細化の手法の一つとして、波長の短い放射線(光)源(本明細書では光も放射線の一種と見なして説明する)の使用が不可欠であり、従来から用いられているg線、i線に加え、フッ化クリプトン(KrF)エキシマレーザー(波長248nm)やフッ化アルゴン(ArF)エキシマレーザー(波長193nm)といった遠紫外線が量産で導入されている。また、フッ素ダイマー(F)エキシマレーザー(157nm)や極紫外線(EUV)、電子線(EB)等を放射線源として用いるリソグラフィー技術についても研究が行われている。
【0003】
これらリソグラフィーにおいては、基板にパターンを転写するためのレジスト膜を形成するためのリソグラフィー用組成物が使用される。また、必要に応じてレジスト膜の上層又は下層に種々の薄膜を形成するためのリソグラフィー用組成物が使用される。これらの組成物は、それぞれの目的の機能を有する重合体と添加剤を有機溶剤に溶解した溶液であり、該組成物溶液をスピンコーティング等の方法で基板に塗布した後、加熱して溶媒を除去してリソグラフィー用薄膜を形成する。
【0004】
レジスト膜を形成するためのリソグラフィー用組成物(以下、「レジスト膜形成剤」と言うことがある。)は、放射線照射部が現像液に溶解するポジ型、放射線未照射部が現像液に溶解するネガ型に別れる。また、放射線の作用で現像液に対する溶解性が変化する化合物と、アルカリ現像液に可溶な重合体を含んでなるタイプや、放射線の作用で酸を発生する化合物(以下、「感放射線性酸発生剤」と言うことがある。)と、酸の作用でアルカリ現像液に対する溶解性が変化する共重合体を含んでなるタイプ等が知られている。特に後者を化学増幅型レジストといい、中でも化学増幅ポジ型レジストは微細加工用として特に好ましく用いられている。
【0005】
レジスト膜の上層又は下層に薄膜を形成するためのリソグラフィー用組成物としては、高反射基板表面(レジスト膜の下層)やレジスト膜表面(レジスト膜の上層)に塗布し、レジスト膜界面での反射を抑え、定在波を抑制して微細なレジストパターンを正確に形成するための反射防止膜形成剤や、パターンが形成された基板にさらにレジストパターンを形成する際に、該基板表面(レジスト膜や反射防止膜の下層)に塗布し、該基板表面のギャップを埋めて平坦化するギャップフィル膜形成剤、液浸フォトリソグラフィーにおけるレジスト膜への液浸液の進入やレジスト膜からの感放射線性酸発生剤等の溶出を抑制するためにレジスト膜の上層に塗布するトップコート膜形成剤等が知られている。
【0006】
上記薄膜を形成するための組成物溶液の中で、リソグラフィー用共重合体は、それぞれの薄膜の機能を発現するために必要な、光学的、化学的、物理的性質が求められる重要な構成要素であり、盛んに研究されている。例えば、KrFエキシマレーザーを用いる化学増幅ポジ型レジスト膜形成剤では、ヒドロキシスチレン由来の繰り返し単位と、ヒドロキシスチレン由来のフェノール水酸基をアセタール構造や3級炭化水素基等の、アルカリ現像液への溶解を抑制すると共に酸の作用で解離する基(以下、「酸解離性溶解抑制基」と言うことがある)で保護した繰り返し単位、又は、(α−アルキル)アクリル酸由来のカルボキシル基をアセタール構造や3級炭化水素基等の酸解離性溶解抑制基で保護した繰り返し単位等を有する共重合体(特許文献1〜4等参照)等が知られている。また、ドライエッチング耐性や、露光前後のアルカリ現像液に対する溶解速度の差を向上させるため、脂環式炭化水素基を酸解離性溶解抑制基とした繰り返し単位を有する共重合体(特許文献5〜6等参照)が知られている。
【0007】
ArFエキシマレーザーを用いる化学増幅ポジ型レジスト膜形成剤では、193nmの波長に対する吸光係数が高いヒドロキシスチレン由来の繰り返し単位を有さない共重合体が検討され、半導体基板等に対する密着性を高めたり、リソグラフィー溶剤やアルカリ現像液への溶解性を調整したりするための極性基として、ラクトン構造を繰り返し単位に有する共重合体(特許文献7〜10等参照)や水酸基を繰り返し単位に有する共重合体(特許文献11〜14等参照)が知られている。
【0008】
反射防止膜形成剤では、248nmや193nmの波長に対する吸光係数や屈折率を高めるための官能基として、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等の芳香環を有する繰り返し単位を含み、必要に応じてレジスト膜との混合を避けるため、硬化剤などと反応して硬化可能なアミノ基、アミド基、ヒドロキシル基、エポキシ基等の反応性官能基を有する繰り返し単位とを含む共重合体(特許文献15〜18等参照)が知られている。
【0009】
ギャップフィル膜形成剤では、狭いギャップに流れ込むための適度な粘度を有し、レジスト膜や反射防止膜との混合を避けるため、硬化剤などと反応して硬化可能な反応性官能基を有する繰り返し単位を含む共重合体が知られており、具体的にはヒドロキシスチレン由来の繰り返し単位を含み、必要に応じてスチレン、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の重合性単量体由来の繰り返し単位を含む共重合体(特許文献19等参照)が知られている。
【0010】
液浸リソグラフィーにおけるトップコート膜形成剤では、カルボキシル基を有する繰り返し単位を含む共重合体(特許文献20等参照)や、水酸基が置換したフッ素含有基を有する繰り返し単位を含む共重合体(特許文献21等参照)等が知られている。
【0011】
これらの共重合体は、その製造において、乾燥固体に仕上げると、共重合体に必要以上の熱負荷がかかり、酸解離性溶解抑制基が部分的に脱離するなどの影響が出るため好ましくない。そこで、共重合体をウエットケーキ等の状態から乾燥せずに、塗膜形成用溶媒より低沸点の良溶媒に再溶解し、塗膜形成用溶媒を加えながら減圧で加熱して塗膜形成用溶媒と低沸点成分を留去することで低沸点成分を低減した共重合体溶液に仕上げる方法(特許文献22参照)、共重合体をウエットケーキの状態から塗膜形成用溶媒に再溶解し、減圧下で加熱して濃縮することで低沸点成分を低減した共重合体溶液に仕上げる方法(特許文献23〜25参照)が知られている。
【0012】
しかし、このような方法によって製造した共重合体溶液は、複数の製品容器に充填すると、同一製造ロットにもかかわらず、容器毎に共重合体濃度が異なることが知られていなかった。このため、リソグラフィー組成物としたときに、リソグラフィー薄膜の膜厚や、リソグラフィー特性がばらつく結果となり、更なるリソグラフィーパターン微細化の要求に対して、大きな障害になっていた。
【0013】
【特許文献1】特開昭59−045439号公報
【特許文献2】特開平05−113667号公報
【特許文献3】特開平10−026828号公報
【特許文献4】特開昭62−115440号公報
【特許文献5】特開平09−073173号公報
【特許文献6】特開平10−161313号公報
【特許文献7】特開平09−090637号公報
【特許文献8】特開平10−207069号公報
【特許文献9】特開2000−026446号公報
【特許文献10】特開2001−242627号公報
【特許文献11】特開平07−252324号公報
【特許文献12】特開2000−137327号公報
【特許文献13】特開2000−330287号公報
【特許文献14】特開2001−109154号公報
【特許文献15】特開2000−313779号公報
【特許文献16】特開2001−27810号公報
【特許文献17】特開2001−192411号公報
【特許文献18】特開2001−226324号公報
【特許文献19】特開2003−57828号公報
【特許文献20】特開2006−193687号公報
【特許文献21】特開2006−243308号公報
【特許文献22】特開2005−173252号公報
【特許文献23】特開2006−161052号公報
【特許文献24】特開2007−148328号公報
【特許文献25】特開2007−146020号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は前記の背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、半導体リソグラフィーに用いられるレジスト膜や、レジスト膜の上層又は下層に形成される反射防止膜、ギャップフィル膜、トップコート膜等において、その膜厚やリソグラフィー特性のばらつきが極めて少ない半導体リソグラフィー用共重合体溶液の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、同一製造ロットを充填した複数容器における容器毎の共重合体濃度の幅を特定の範囲以下とすることにより解決できること、また、特定の製造工程を含む製造方法により上記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明の第一は、水酸基を有する繰り返し単位(A)、アルカリ現像液への溶解を抑制すると共に酸の作用で解離する基で水酸基を保護した構造を有する繰り返し単位(B)、ラクトン構造を有する繰り返し単位(C)、および環状エーテル構造を有する繰り返し単位(D)からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の繰り返し単位を含む共重合体と、塗膜形成用溶媒とを含む共重合体溶液を、減圧下で加熱して塗膜形成用溶媒よりも低沸点の不純物を留去させる工程(S)を含む製造方法であって、同一製造ロットの共重合体溶液を複数容器に充填した場合に、容器間の共重合体濃度の最高値と最低値の幅が最高濃度の1.5%以下であることを特徴とする半導体リソグラフィー用共重合体溶液の製造方法を提供するものである。
【0017】
また、本発明の第二は、水酸基を有する繰り返し単位(A)、アルカリ現像液への溶解を抑制すると共に酸の作用で解離する基で水酸基を保護した構造を有する繰り返し単位(B)、ラクトン構造を有する繰り返し単位(C)、環状エーテル構造を有する繰り返し単位(D)からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の繰り返し単位を含む共重合体と、塗膜形成用溶媒とを含む共重合体溶液を、減圧下で加熱して塗膜形成用溶媒よりも低沸点の不純物を留去させる工程(S)を含む製造方法であって、工程(S)とは異なる槽を用いて、工程(S)を経た共重合体溶液を撹拌する工程(U)を含むことを特徴とする半導体リソグラフィー用共重合体の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の製造方法により得られる共重合体溶液を用いることにより、リソグラフィー薄膜やリソグラフィー特性のばらつきが極めて小さくできるため、微細なリソグラフィーパターンの形成が必要な高集積半導体素子を高い歩留まりで製造することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を更に詳しく説明する。
1.共重合体の構造
本発明の方法で製造される共重合体溶液に含まれる共重合体は、水酸基を有する繰り返し単位(A)、水酸基を酸解離性溶解抑制基で保護した構造を有する繰り返し単位(B)、ラクトン構造を有する繰り返し単位(C)、及び環状エーテル構造を有する繰り返し単位(D)からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の繰り返し単位を含む。また、必要に応じて、アルカリ現像液への溶解を抑制すると共に酸の作用に安定な構造(以下、「酸安定性溶解抑制構造」と言うことがある)を有する繰り返し単位(E)等をさらに含むことができる。これらの繰り返し単位は、半導体リソグラフィーに使用する薄膜の目的に応じて選択することができる。
【0020】
例えば、化学増幅ポジ型レジスト膜に用いる場合、繰り返し単位(A)及び繰り返し単位(C)から選ばれる少なくとも1種以上と、繰り返し単位(B)を必ず含み、必要に応じて、繰り返し単位(E)を含むことができる。ネガ型レジスト膜に用いる場合、繰り返し単位(A)および繰り返し単位(D)から選ばれる少なくとも1種以上を必ず含み、必要に応じて、繰り返し単位(C)及び繰り返し単位(E)から選ばれる少なくとも1種以上を含むことができる。反射防止膜や液浸用トップコート膜に用いる場合、繰り返し単位(A)および繰り返し単位(D)から選ばれる少なくとも1種以上を必ず含み、必要に応じて、繰り返し単位(B)、繰り返し単位(C)、繰り返し単位(E)から選ばれる少なくとも1種以上を含むことができる。
【0021】
(1)繰り返し単位(A)
繰り返し単位(A)は、水酸基を有する繰り返し単位であり、基板や下地膜への密着性を高めたり、リソグラフィー溶媒やアルカリ現像液への溶解性を制御したり、硬化剤と反応して架橋構造を形成したりする働きをする。水酸基としては、ハロゲンが置換しても良い、直鎖状、分岐状、環状の炭化水素基、カルボニル基、スルホニル基等に置換した水酸基を挙げることができる。具体的には、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基、フルオロアルコール性水酸基、カルボキシル基、スルホ基等を挙げることができ、好ましくは、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基、フルオロアルコール性水酸基、カルボキシル基である。
【0022】
繰り返し単位(A)の構造としては、式(A1)乃至(A3)で表される構造が特に好ましい。
【0023】
【化1】

式(A1)中、R10は水素原子、又は、フッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4の炭化水素基を表し、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、トリフルオロメチル基等の炭素数1〜4のフッ素原子が置換しても良いアルキル基を挙げることができ、好ましくは、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基である。R11は単結合、又は、フッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4の2価の炭化水素基を表し、具体的には、単結合、メチレン基、1,1−エチレン基、2,2−プロピレン基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−プロピレン基、1,1,1−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−2,3−プロピレン基等のフッ素原子が置換してもよい炭素数1〜4のアルキレン基を挙げることができ、好ましくは、単結合、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−プロピレン基、1,1,1−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−2,3−プロピレン基であり、特に好ましくは単結合である。iは1又は2の整数を表す。
【0024】
【化2】

式(A2)中、R12は水素原子、又は、フッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4の炭化水素基を表し、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、トリフルオロメチル基等の炭素数1〜4のフッ素原子が置換しても良いアルキル基を挙げることができ、好ましくは、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基である。R13はフッ素原子、酸素原子又は硫黄原子を含んでも良い炭素数2〜12の2〜4価の炭化水素基を表し、具体的には、エチレン基、イソプロピレン基等の直鎖状若しくは分岐状の飽和炭化水素基と、シクロヘキサン環、ノルボルナン環、7−oxa−ノルボルナン環、7−thia−ノルボルナン環、アダマンタン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環等を有する飽和脂環炭化水素基を挙げることができ、好ましくは、シクロヘキサン環、ノルボルナン環、アダマンタン環である。R14は単結合、又は、フッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4の2価の炭化水素基を表し、具体的には、単結合、メチレン基、1,1−エチレン基、2,2−プロピレン基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−プロピレン基、1,1,1−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−2,3−プロピレン基等のフッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4のアルキレン基を挙げることができ、好ましくは、単結合、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−プロピレン基、1,1,1−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−2,3−プロピレン基である。R13がアダマンチル基、R14が単結合である組合せが特に好ましい。jは1〜3の整数を表す。
【0025】
【化3】

式(A3)中、R15は水素原子、又は、フッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4の炭化水素基を表し、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、トリフルオロメチル基等のフッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4のアルキル基を挙げることができ、好ましくは、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基である。R16は、酸素原子若しくは硫黄原子を含んでも良い炭素数6〜12の2価の脂環炭化水素基を表し、具体的には、ノルボルナン環、7−oxa−ノルボルナン環、7−thia−ノルボルナン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環等を有する飽和脂環炭化水素基を挙げることができ、好ましくはノルボルナン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環である。kは0又は1の整数を表す。
【0026】
以下に、繰り返し単位(A)の具体的な例を挙げるが、本発明を限定するものではない。繰り返し単位(A)の中から、1種類、又は異なる構造の複数種類を選択して用いることができる。
【0027】
【化4】

【0028】
【化5】

【0029】
【化6】

【0030】
【化7】

【0031】
【化8】

【0032】
【化9】

【0033】
(2)繰り返し単位(B)
繰り返し単位(B)は、水酸基を酸解離性溶解抑制基で保護して形成した構造を有する繰り返し単位であり、アルカリ現像液に対する共重合体の溶解性を変化させる働きをする。好ましい例として、式(A1)乃至(A3)で表される構造の水酸基を、式(b1)又は(b2)で表される酸解離性溶解抑制基で保護した構造を挙げることができる。
【0034】
【化10】

式(b1)中、oは式(b1)の結合部位を表す。R23及びR24はそれぞれ独立して炭素数1〜4の炭化水素基を表し、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基を挙げることができる。R25は炭素数1〜12の炭化水素基を表し、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、アダマンチル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル基等の炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基を挙げることができる。尚、R25はR23又はR24と結合して環、具体的にはシクロペンタン環、シクロヘキサン環、ノルボルナン環、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環、アダマンタン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環等の炭素数5〜12の飽和脂環を形成しても良い。
【0035】
特に、R25に、若しくは、R25がR23又はR24と結合して、環、具体的にはシクロペンタン環、シクロヘキサン環、ノルボルナン環、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環、アダマンタン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環等が含まれると、リソグラフィー前後でのアルカリ現像液に対する溶解性の差が大きく、微細パターンを描くのに好ましい。
【0036】
【化11】

式(b2)中、oは式(b2)の結合部位を表す。R26及びR27はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基を表し、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基を挙げることができる。R28は炭素数1〜12の炭化水素基を表し、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、アダマンチル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル基等の炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基を挙げることができる。尚、R26は、R27又はR28と結合して環を形成しても良く、R26がR27と結合した環の具体例として、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、ノルボルナン環、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環、アダマンタン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環等を、又、R26がR28と結合した環の具体例として、ヒドロフラン環、ヒドロピラン環等をそれぞれ挙げることができる。
【0037】
以下に、繰り返し単位(B)の具体的な例を挙げるが、本発明を限定するものではない。繰り返し単位(B)の中から、1種類、若しくは異なる構造の複数種類を選択して用いることができる。
【0038】
【化12】

【0039】
【化13】

【0040】
【化14】

【0041】
【化15】

【0042】
【化16】

【0043】
【化17】


【0044】
【化18】

【0045】
【化19】

【0046】
【化20】

【0047】
【化21】

【0048】
【化22】

【0049】
【化23】

【0050】
【化24】

【0051】
【化25】

【0052】
【化26】

【0053】
(3)繰り返し単位(C)
繰り返し単位(C)は、ラクトン構造を有する繰り返し単位であり、基板や下地膜への密着性を高めたり、リソグラフィー溶媒やアルカリ現像液への溶解性を制御したりする働きをする。好ましい例として、式(C)で表される構造を挙げることができる。
【0054】
【化27】

式(C)中、R30は水素原子、又は、フッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4の炭化水素基を表し、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、トリフルオロメチル基等の炭素数1〜4のアルキル基を挙げることができ、好ましくは、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基である。R31は式(c)で表されるラクトン構造含有基を表す。
【0055】
【化28】

式(c)中、R32〜R39は、いずれか1つが、R31としての結合部位を有する単結合を表し、残りのR32〜R39は、水素原子、又は、炭素数1〜4の炭化水素基若しくはアルコキシ基を表すか、又は、いずれか1つが、R31としての結合部位を有し、他のR32〜R39のいずれか1つ又は2つと結合して炭素数5〜15の脂環を形成する、酸素原子若しくは硫黄原子を含んでも良い炭素数3〜14の炭化水素基を表し、残りのR32〜R39は、いずれか1つ又は2つが前記炭素数5〜15の脂環を形成するための単結合を表し、その残りは、水素原子、又は、炭素数1〜4の炭化水素基若しくはアルコキシ基を表す。脂環の具体例としては、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、ノルボルナン環、7−oxa−ノルボルナン環、7−thia−ノルボルナン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環等、好ましくは、ノルボルナン環、7−oxa−ノルボルナン環を挙げることができる。炭素数1〜4の炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基等を挙げることができ、炭素数1〜4のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基等を挙げることができる。また、mは0又は1の整数を表す。
【0056】
32〜R39のいずれか1つがR31としての結合部位を有する単結合を表し、残りのR32〜R39は、水素原子、又は、炭素数1〜4の炭化水素基若しくはアルコキシ基を表するラクトン構造の特に好ましい例として、γ−ブチロラクトン構造、δ−バレロラクトン構造を挙げることができる。R32〜R39のいずれか1つがR31としての結合部位を有し、他のR32〜R39のいずれか1つ又は2つと結合して炭素数5〜15の脂環を形成する、酸素原子若しくは硫黄原子を含んでも良い炭素数3〜14の炭化水素基を表し、残りのR32〜R39は、水素原子、又は、炭素数1〜4の炭化水素基若しくはアルコキシ基を表するラクトン構造の特に好ましい例として、1,3−シクロヘキサンカルボラクトン構造、2,6−ノルボルナンカルボラクトン構造、7−oxa−2,6−ノルボルナンカルボラクトン構造、4−oxa−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−3−オン構造を挙げることができる。
【0057】
以下に、繰り返し単位(C)の具体的な例を挙げるが、本発明を限定するものではない。繰り返し単位(C)の中から、1種類、若しくは異なる構造の複数種類を選択して用いることができる。
【0058】
【化29】

【0059】
【化30】

【0060】
【化31】

【0061】
【化32】

【0062】
【化33】

【0063】
【化34】

【0064】
【化35】

【0065】
(4)繰り返し単位(D)
繰り返し単位(D)は、環状エーテル構造を有する繰り返し単位であり、基板や下地膜への密着性を高めたり、リソグラフィー溶媒やアルカリ現像液への溶解性を制御したり、硬化剤と反応して架橋構造を形成したりする働きをする。好ましい例として、式(D)で表される構造を挙げることができる。
【0066】
【化36】

式(D)中、R40は水素原子、又は、フッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4の炭化水素基を表し、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、トリフルオロメチル基等の炭素数1〜4のアルキル基を挙げることができ、好ましくは、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基である。R41は3乃至6員環の環状エーテル構造を含む炭素数3〜7の炭化水素基を表し、具体的には、エポキシ環、オキセタン環、テトラヒドロフラン環、テトラヒドロピラン環を有する炭化水素基であり、より具体的にはグリシジル基、オキセタニルメチル基、テトラヒドロフラニルメチル基、テトラヒドロピラニルメチル基等を挙げることができ、特に好ましくはグリシジル基である。
【0067】
以下に、繰り返し単位(D)の具体的な例を挙げるが、本発明を限定するものではない。繰り返し単位(D)の中から、1種類、若しくは異なる構造の複数種類を選択して用いることができる。
【0068】
【化37】

【0069】
(5)繰り返し単位(E)
繰り返し単位(E)は、酸安定性溶解抑制構造を有する繰り返し単位であり、リソグラフィー溶媒やアルカリ現像液への溶解性、薄膜の屈折率や光線透過率等の光学特性等を制御する働きをする。好ましい例として、式(A1)、式(A2)及び式(A3)で表される構造の水酸基の水素原子と酸安定性溶解抑制基が置換した、それぞれ構造(E1)、構造(E2)及び構造(E3)を挙げることができる。
【0070】
構造(E1)乃至(E3)の酸安定性溶解抑制基としては、水酸基の水素原子と置換して酸素原子と結合する炭素が1〜3級炭素である炭素数1〜12の炭化水素基、又は、1−アダマンチル基が結合した構造を挙げることができ、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−ノルボルニル基、2−イソボルニル基、8−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、4−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル基等の炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基を挙げることができる。
【0071】
また、もう一つの好ましい例として、式(E4)で表される構造(E4)を挙げることができる。
【0072】
【化38】

式(E4)中、R60は水素原子、又は、フッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4の炭化水素基を表し、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、トリフルオロメチル基等のフッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4のアルキル基を挙げることができ、好ましくは、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基である。R61は水素原子、又は、R62と結合する単結合又は炭素数1〜4の炭化水素基であり、具体的には、水素原子、単結合、メチレン基、エチレン基、イソプロピレン基等を挙げることができる。R62は炭素数6〜14の芳香族炭化水素基であり、具体的にはベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等を挙げることができる。
【0073】
以下に、繰り返し単位(E)の具体的な例を挙げるが、本発明を限定するものではない。繰り返し単位(E)の中から、1種類、又は異なる構造の複数種類を選択して用いることができる。
【0074】
【化39】


【0075】
(6)繰り返し単位組成
各繰り返し単位の組成は、半導体リソグラフィーに使用する薄膜の目的によって異なる。以下に、使用する薄膜の目的毎の繰り返し単位の組成範囲を例示する。
【0076】
化学増幅ポジ型レジスト膜に用いる場合、繰り返し単位(A)と繰り返し単位(C)を合わせて20〜95モル%、好ましくは30〜90モル%、より好ましくは40〜85モル%、繰り返し単位(B)が5〜80モル%、好ましくは10〜70モル%、より好ましくは15〜60モル%、繰り返し単位(E)が0〜50モル%、好ましくは0〜40モル%、より好ましくは0〜30モル%の範囲から選択する。
【0077】
ネガ型レジスト膜に用いる場合、繰り返し単位(A)と繰り返し単位(D)を合わせて50〜100モル%、好ましくは60〜100モル%、より好ましくは70〜100モル%、繰り返し単位(C)が0〜50モル%、好ましくは0〜40モル%、より好ましくは0〜30モル%、繰り返し単位(E)が0〜50モル%、好ましくは0〜40モル%、より好ましくは0〜30モル%の範囲から選択する。
【0078】
反射防止膜や液浸用トップコート膜に用いる場合、繰り返し単位(A)と繰り返し単位(D)を合わせて5〜80モル%、好ましくは10〜70モル%、より好ましくは15〜60モル%、繰り返し単位(B)が0〜50モル%、好ましくは0〜40モル%、より好ましくは0〜30モル%、繰り返し単位(C)が0〜50モル%、好ましくは0〜40モル%、より好ましくは0〜30モル%、繰り返し単位(E)が0〜95モル%、好ましくは10〜90モル%、より好ましくは20〜85モル%の範囲から選択する。
【0079】
(7)末端構造
本発明の共重合体は、既に公知の末端構造を含む。通常、ラジカル重合開始剤から発生するラジカル構造を重合開始末端として含む。連鎖移動剤を用いる場合は、連鎖移動剤から発生するラジカル構造を重合開始末端として含む。溶媒や単量体等に連鎖移動する場合は、溶媒や単量体から発生するラジカル構造を重合開始末端として含む。停止反応が再結合停止の場合は両末端に重合開始末端を含むことができ、不均化停止の場合は片方に重合開始末端を、もう片方に単量体由来の末端構造を含むことができる。重合停止剤を用いる場合は、一方の末端に重合開始末端を、もう片方の末端に重合停止剤由来の末端構造を含むことができる。これらの開始反応及び停止反応は、一つの重合反応の中で複数発生する場合があり、その場合、複数の末端構造を有する共重合体の混合物となる。本発明で用いることができる重合開始剤、連鎖移動剤、溶媒については後述する。
【0080】
(8)分子量、分散度
本発明の共重合体は、質量平均分子量(以下、「Mw」と言うことがある。)が高すぎるとレジスト溶剤やアルカリ現像液への溶解性が低くなり、一方、低すぎるとレジストの塗膜性能が悪くなることから、Mwは1,000〜50,000の範囲内であることが好ましく、1,500〜30,000の範囲内であることがより好ましく、2,000〜20,000の範囲内であることがさらにより好ましく、3,000〜15,000の範囲内であることが特に好ましい。又、分子量分布が広すぎたり狭すぎたりするとリソグラフィー工程において所望のパターン形状が得られないことがあるため、分散度(以下、「Mw/Mn」と言うことがある)は1.0〜5.0の範囲内であることが好ましく、1.0〜3.0の範囲内であることがより好ましく、1.2〜2.5の範囲内であることがさらにより好ましく、1.4〜2.0の範囲内であることが特に好ましい。
【0081】
2.塗膜形成用溶媒
塗膜形成用溶媒は、リソグラフィー組成物を構成する各成分を溶解し、均一な溶液とすることができるものであればよく、塗膜形成用溶媒として公知のものの中から任意のものを1種の単独溶媒又は2種以上の混合溶媒として用いることができる。溶解性に優れるため、ケトン結合、エステル結合、エーテル結合、水酸基から選ばれる少なくとも1種以上の極性基を有する溶媒が好ましい。中でも常圧での沸点が110〜220℃の溶媒は、スピンコーティングの後のベークにおいて蒸発速度が適度であり、製膜性に優れるため、特に好ましい。このような溶媒の具体例として、メチルイソブチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等のケトン結合を有する溶媒、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル結合と水酸基を有する溶媒、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−エトキシプロピオン酸エチル等のエーテル結合とエステル結合を有する溶媒、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)等のエステル結合と水酸基を有する溶媒、γ−ブチロラクトン等のエステル結合を有する溶媒等を挙げることができる。特に好ましくは、PGMEAを含む溶媒である。
【0082】
3.共重合体溶液
リソグラフィー用共重合体溶液は、上記の共重合体及び塗膜形成用溶媒を含んでなる。また、リソグラフィー組成物として使用するために必要な添加剤を含んでも良い。
【0083】
溶液中に含まれる共重合体の濃度は、基板に塗布した場合に適度な膜厚が得られるような粘度となるように適宜設定することができるが、後で当該溶液に含まれる溶媒、当該溶液に含まれない他の溶媒、他のリソグラフィー用共重合体溶液等と混合できるように、共重合体が溶解可能な範囲で比較的高めに設定することもできる。通常、溶液中の共重合体濃度は2〜60質量%、好ましくは3〜50質量%、特に好ましくは5〜35質量%の範囲内となるように調整する。
【0084】
リソグラフィー組成物として使用するために必要な添加剤を含む場合の例として、リソグラフィー組成物が化学増幅型レジスト組成物の場合は、感放射線性酸発生剤(X){以下、成分(X)という}、放射線に暴露されない部分への酸の拡散を防止するための含窒素有機化合物等の酸拡散抑制剤(Y){以下、成分(Y)という}、必要に応じてその他添加剤(Z){以下、成分(Z)という}を含むことができる。
【0085】
成分(X)は、これまで化学増幅型レジスト用の感放射線性酸発生剤として提案されているものから適宜選択して用いることができる。このような例として、ヨードニウム塩やスルホニウム塩等のオニウム塩、オキシムスルホネート類、ビスアルキル又はビスアリールスルホニルジアゾメタン類等のジアゾメタン類、ニトロベンジルスルホネート類、イミノスルホネート類、ジスルホン類等を挙げることができ、中でも、フッ素化アルキルスルホン酸イオンをアニオンとするオニウム塩が特に好ましい。これらは単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。成分(X)は、共重合体100質量部に対して通常0.5〜30質量部、好ましくは1〜10質量部の範囲で用いられる。
【0086】
成分(Y)は、これまで化学増幅型レジスト用の酸拡散抑制剤として提案されているものから適宜選択することができる。このような例として、含窒素有機化合物を挙げることができ、第一級〜第三級のアルキルアミン若しくはヒドロキシアルキルアミンが好ましい。特に第三級アルキルアミン、第三級ヒドロキシアルキルアミンが好ましく、中でもトリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンが特に好ましい。これらは単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。成分(Y)は、共重合体100重量部に対して通常0.01〜5.0質量部の範囲で用いられる。
【0087】
その他の添加剤{成分(Z)}としては、酸発生剤の感度劣化防止やレジストパターンの形状、引き置き安定性等の向上を目的とした有機カルボン酸類やリンのオキソ酸類、レジスト膜の性能を改良するための付加的樹脂、塗布性を向上させるための界面活性剤、溶解抑止剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤、染料等、レジスト用添加剤として慣用されている化合物を必要に応じて適宜添加することができる。有機カルボン酸の例としては、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸等を挙げることができ、これらは単独若しくは2種以上を混合して用いることができる。有機カルボン酸は、共重合体100質量部に対して0.01〜5.0質量部の範囲で用いられる。
【0088】
5.製造方法
本発明の製造方法は、上記繰り返し単位を有する共重合体と、塗膜形成用溶媒とを含む共重合体溶液の製造方法であって、共重合体溶液を減圧下で加熱して塗膜形成用溶媒及び塗膜形成用溶媒より低沸点の化合物を留出させる工程(S)を含み、同一製造ロットの共重合体溶液を複数容器に充填した場合に、容器間の共重合体濃度の最高と最低の幅が最高濃度の1.5%以下であり、好ましくは1.2%以下であり、より好ましくは1.0%以下であり、特に好ましくは0.8%以下である、半導体リソグラフィー用共重合体溶液の製造方法である。また、共重合体溶液を減圧下で加熱して塗膜形成用溶媒よりも低沸点の不純物を留去させる工程(S)と、工程(S)とは異なる槽を用いて、工程(S)を経た共重合体溶液を撹拌する工程(U)を含むことを特徴とする半導体リソグラフィー用共重合体の製造方法である。
【0089】
上記繰り返し単位を与える共重合体は、その繰り返し単位を与える単量体と重合開始剤を有機溶媒中で共重合させる工程(P)と、必要に応じて、共重合体の極性基を保護したり、共重合体の保護基を脱離させたりする工程(Q)を経て合成することができる。さらに、合成した共重合体は、単量体、重合開始剤等の未反応物やオリゴマー等の低分子量成分等の不要物を除去する工程(R)で精製することができる。必要に応じて、共重合体溶液をフィルターでろ過して夾雑物や金属分、ハイポリマー等のマイクロゲルを低減する工程(T)等を組み合わせることができる。以下、その製造方法について説明する。
【0090】
(1)工程(P)
工程(P)は、単量体を、重合開始剤の存在下、有機溶媒中で重合させる工程である。本発明では、工業的に量産可能な装置として、少なくとも熱媒体供給用の外套缶と、攪拌翼、凝縮器を備えた重合槽を用いる。材質は、金属分のコンタミを避ける必要があること、熱伝導性や安全性が高いことから、金属をグラスライニングした容器が好ましい。攪拌翼は、三枚後退翼、神鋼環境ソリューション(株)製ツインスター翼等の部分翼、神鋼環境ソリューション(株)製フルゾーン翼、八光産業株製ベンドリーフ翼等の全面翼が好ましい。撹拌効率が高いことから、フルゾーン翼、ベンドリーフ翼等の全面翼が特に好ましい。
【0091】
本発明の重合は、加熱した溶媒に単量体と重合開始剤を滴下する、いわゆる滴下法によって行うことが好ましい。加熱した溶媒に、予め単量体の一部を含ませても良い。また、単量体組成や重合開始剤濃度、連鎖移動剤濃度の異なる複数の液を滴下して、例えば、滴下時間と共に滴下する単量体の組成や、単量体、重合開始剤、及び連鎖移動剤の組成比等を変化させても良い。
【0092】
滴下法の中でも、(P1):単量体を重合開始剤と共に、必要に応じて溶媒に溶解し、加熱した溶媒中に滴下して重合させる混合滴下法、(P2):単量体と重合開始剤をそれぞれ必要に応じて溶媒に溶解し、加熱した溶媒中に別々に滴下して重合させるいわゆる独立滴下法が採用可能である。しかし、(P1)混合滴下法は重合系内に滴下する前の滴下液貯槽内において、未反応単量体の濃度が高い状態で低濃度のラジカルと接触する機会があるため、マイクロゲルの発生原因となるハイポリマーが生成し易い。一方、(P2)独立滴下法は、滴下液貯槽で重合開始剤と共存しないことから、ハイポリマーが生成しない。従って、(P2)独立滴下法が特に好ましい。
【0093】
(P2)独立滴下法において、単量体溶液及び開始剤溶液は、重合槽の直前で予備混合することも可能であるが、滴下されるまでの間にハイポリマーが生成する可能性があるため、別々の貯槽から各々独立して滴下することが特に好ましい。単量体溶液と開始剤溶液の供給速度は、所望の分子量分布を有する共重合体が得られるように、それぞれ独立して設定することができる。二液の供給速度をどちらか一方あるいは両方とも変化させることで、狭分散から多分散まで広範な分子量分布を持つ共重合体を再現性良く得ることも可能である。例えば、反応前期の開始剤溶液の供給量を減らし、反応後期に開始剤溶液の供給量を増加させた場合、ラジカル濃度が低い反応前期に比較的分子量の高い共重合体が生成するので、多分散の共重合体を得ることができる。各供給速度は無段階もしくは段階的に変化させることができる。
【0094】
滴下法における、反応槽内に初期に張り込む重合溶媒(以下、初期張り溶媒と言うことがある)の量は、攪拌が可能な最低量以上であればよいが、必要以上に多いと、供給できる単量体溶液量が少なくなり、生産効率が低下するため好ましくない。通常は、最終仕込み量(即ち、初期張り溶媒と、滴下する単量体溶液及び開始剤溶液の総量)に対して、例えば容量比で1/30以上、好ましくは1/20〜1/2、特に好ましくは1/10〜1/3の範囲から選択する。なお、初期張り溶媒に単量体の一部を予め混合しても良い。
【0095】
滴下液中の単量体、及び重合開始剤の濃度は、生産性の面で言えば高い方が好ましい。特に重合性単量体若しくは重合開始剤が液体の場合は、溶媒に溶解することなく、そのまま供給することも可能であるが、重合性単量体若しくは重合開始剤が粘調な液体や、固体である場合は、溶媒に溶解して用いる必要がある。重合性単量体若しくは重合開始剤を溶媒に溶解して用いる場合、濃度が高すぎると溶液粘度が高くなって操作性が悪い。また、重合性単量体又は重合開始剤が固体である場合は析出したり、重合系内での拡散に時間がかかったりしてハイポリマーが生成しやすい場合がある。従って、供給操作に問題のない粘度範囲で、各単量体及び重合開始剤が十分に溶解し、且つ、供給中に析出せず、重合系内で拡散し易い濃度を選択することが好ましい。具体的な濃度は、各溶液の溶質と溶媒の組合せ等により異なるが、通常、全単量体の合計濃度及び重合開始剤濃度が、例えば各々5〜60質量%、好ましくは10〜50質量%の範囲となるように調製する。
【0096】
重合温度は、溶媒、単量体、連鎖移動剤等の沸点、重合開始剤の半減期温度等によって適宜選択することができる。低温では重合が進みにくいため生産性に問題があり、又、必要以上に高温にすると、単量体及び共重合体の安定性の点で問題がある。従って、好ましくは40〜160℃、特に好ましくは60〜120℃の範囲を選択する。
【0097】
共重合体の分子量や、共重合する場合の共重合組成を目標通りとするために、重合温度を精密に制御する必要がある。重合反応は一般的に発熱反応であり、重合反応によって、重合温度が上昇する傾向があるため、一定温度に制御することが難しい。重合温度が上昇しすぎると、重合反応が制御できなくなって暴走しまうことがある。このため、本発明では、重合溶媒として、目標とする重合温度に近い沸点を有する少なくとも一種以上の化合物を含有させ、重合温度を、重合溶媒として含まれる成分の、重合圧力における初留点以上に設定することが好ましい。この方法によれば、重合溶媒の気化潜熱によって重合温度の上昇を抑制することができる。このような化合物の具体例としては、水、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のエーテルアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエーテルエステル類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル等を挙げることができる。単量体、重合開始剤、連鎖移動剤、共重合体の溶解性と沸点から、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、トルエン、アセトニトリルが好ましい。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。また、エチレングリコールモノブチルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート、3−エトキシプロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン、ジエチレングリコージメチルエーテル、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の、単量体、重合開始剤、連鎖移動剤、共重合体の溶解性が高く、高沸点の化合物を混合して用いても良い。
【0098】
重合圧力は、適宜設定することができるが、開始剤からラジカルが発生する際に、アゾ系の場合は窒素ガスが、過酸化物径の場合は酸素ガスが発生すること、圧力が変動しにくいことから、重合系を開放系とし、大気圧近傍で行うことが好ましい。
【0099】
重合系は、供給する滴下液や還流する重合溶媒、外部への放熱等により冷却されるため、外部から熱を供給する必要がある。本発明では、外套缶に加熱した熱媒体を供給することによって熱を供給する。
【0100】
量産スケールの装置になると、滴下距離が長くなるため、滴下液が加熱した溶媒の液面に落下する速度が速くなる。このため、滴下液の液滴が液面から跳ね返って、伝熱面である釜壁面に付着する。付着した壁面では、溶媒が揮発して単量体が高濃度状態となり、(P1)では予め液滴内に存在する開始剤によって、(P2)では跳ね返る際に液滴内に混入した少量の重合開始剤によって重合が開始し、ハイポリマーが生成しやすい。加熱した溶媒に予め単量体の一部を含ませて残りの単量体を滴下する場合や、単量体組成の異なる複数の液を滴下する場合は、液滴内で繰り返し単位組成が設計から外れた共重合体や、特定の繰り返し単位が連続した共重合体が生成しやすい。このような物質も、ハイポリマー同様、マイクロゲルの原因物質となりやすい。滴下液の釜壁面への付着を避けるため、導入管を液面近傍まで伸ばすと、導入管内の滞留時間で単量体に必要以上の熱負荷がかかり、逆にハイポリマーが発生しやすい結果となる。
【0101】
このため、外套缶に供給する熱媒体と重合系内の温度差をできるだけ小さく制御することが好ましい。外套缶に供給する熱媒体と重合系内の温度差は、10℃以内とすることが好ましく、特に好ましくは5℃以内とする。
【0102】
尚、重合系内に低温の単量体溶液を滴下すると、局所的に低温で、単量体濃度が高く、ラジカル濃度が低い環境が発生し、ハイポリマーが生成する可能性があるため好ましくない。このため、単量体溶液は予備加熱して供給することが好ましい。
【0103】
単量体溶液を予備加熱する方法としては、単量体溶液を貯槽内若しくは重合系内に供給する直前で熱交換器等により加温する方法が挙げられる。予備加熱の温度は25℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましい。但し、単量体溶液を貯槽内で予備加熱する場合は、加熱状態で長時間保持することになるため、温度が高いとハイポリマーが生成する可能性がある。このため、貯槽内での予備加熱する場合は、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下とする。なお、開始剤溶液も予備加熱することが可能であるが、温度が高すぎると重合開始剤が供給前に分解してしまうので、通常、40℃以下、好ましくは30℃以下、より好ましくは25℃以下とする。
【0104】
単量体溶液の滴下時間は、短時間であると分子量分布が広くなりやすいことや、一度に大量の溶液が滴下されるため重合液の温度低下が起こることから好ましくない。逆に、長時間であると共重合体に必要以上の熱履歴がかかること、生産性が低下することから好ましくない。従って、通常0.5〜24時間、好ましくは1〜12時間、特に好ましくは2時間から8時間の範囲から選択する。又、二液の供給開始順序に特に制限はないが、ハイポリマーの生成を避けるためには、二液同時又は開始剤溶液を先に供給することが好ましく、重合開始剤が重合系内で分解してラジカルが発生するのに一定の時間が必要であるため、開始剤溶液を単量体溶液よりも先に供給しても良い。
【0105】
滴下終了後は、一定時間温度を維持するか、若しくはさらに昇温する等して熟成を行い、残存する未反応単量体を反応させることが好ましい。熟成時間は長すぎると時間当たりの生産効率が低下すること、共重合体に必要以上の熱履歴がかかることから好ましくない。従って、通常12時間以内、好ましくは6時間以内、特に好ましくは1〜4時間の範囲から選択する。
【0106】
重合開始剤は、ラジカル重合開始剤として公知のものを用いることができる。好ましくは、アゾ化合物、過酸化物等のラジカル重合開始剤である。アゾ化合物の具体例として、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等を挙げることができる。過酸化物の具体例として、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ビス(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、コハク酸パーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルへキサノエート、tert−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等を挙げることができる。取り扱いの安全性から、アゾ化合物が特に好ましい。これらは単独若しくは混合して用いることができる。重合開始剤の使用量は、目的とするMw、原料である単量体、重合開始剤、連鎖移動剤、及び溶媒の種類や組成比、並びに重合温度や滴下方法等の製造条件に応じて選択することができる。
【0107】
連鎖移動剤は、連鎖移動剤として公知のものを、必要に応じて用いることができる。中でもチオール化合物が好ましく、公知のチオール化合物の中から幅広く選択することができる。具体的には、t−ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸等を挙げることができる。連鎖移動剤の使用量は、目的とするMw、原料である単量体、重合開始剤、連鎖移動剤、及び溶媒の種類や組成比、重合温度や滴下方法等の製造条件に応じて選択することができる。なお、連鎖移動剤は、単量体と混合して滴下しても良く、重合開始剤と混合して滴下しても良く、予め加熱する溶媒中に溶解して使用しても良い。
【0108】
(2)工程(Q)
工程(Q)は、工程(P)と同時に、若しくは工程(P)の後、共重合体の極性基を保護したり、共重合体の保護基を脱離させたりする工程である。例えば、共重合体の極性基(A)若しくは極性基(B)の一部若しくは全部を酸解離性溶解抑制基で保護して極性基(C)を導入する工程(Q1)や、共重合体の極性基(C)の一部若しくは全部を脱保護して極性基(A)若しくは極性基(B)を導入する工程(Q2)等を挙げることができる。
【0109】
工程(Q1)においては、アルカリ可溶性基を有する共重合体を、溶媒に溶解した状態で、触媒存在下、エノールエーテルやハロゲン化アルキルエーテル等を反応させて、酸解離性溶解抑制基を導入する。工程(Q2)においては、酸解離性溶解抑制基を有する共重合体を、溶媒に溶解した状態で、触媒存在下、加熱して酸解離性溶解抑制基を解離させ、アルカリ可溶性基を導入する。
【0110】
工程(Q1)および工程(Q2)に用いる触媒は、上記反応を達成できる公知の触媒であれば特に制限されないが、好ましくは、塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、強酸性イオン交換樹脂等の水中25℃でのpKaが1以下の強酸である。溶媒は、工程(P)で例示した溶媒が好ましい。但し、工程(Q1)においては、水やアルコールなどの水酸基を有する溶媒は、エノールエーテルやハロゲン化アルキルエーテルと反応してしまうため、極力避ける必要がある。
【0111】
(3)工程(R)
工程(R)は、工程(P)を経て得られた共重合体に含まれる、単量体や重合開始剤等の未反応物やオリゴマー等の低分子量成分を、溶媒に抽出して除去する工程である。その方法として、例えば、(R1):貧溶媒を加えて共重合体を沈殿させた後、溶媒相を分離する方法、(R1a):(R1)に続いて貧溶媒を加え、共重合体を洗浄した後、溶媒相を分離する方法、(R1b):(R1)に続いて良溶媒を加え、共重合体を再溶解させ、更に貧溶媒を加えて共重合体を再沈殿させた後、溶媒相を分離する方法、(R2):貧溶媒を加えて貧溶媒相と良溶媒相の二相を形成し、貧溶媒相を分離する方法、(R2a):(R2)に続いて貧溶媒を加え、良溶媒相を洗浄した後、貧溶媒相を分離する方法等が挙げられる。尚、(R1a)、(R1b)、(R2a)は繰り返しても良いし、それぞれ組み合わせても良い。(R1)、(R1a)、(R1b)で得られた溶媒を含む共重合体のウエットケーキは、そのまま取り出しても良いし、良溶媒に再溶解して取り出しても良い。作業性が良く、環境からの汚染も受けにくいことから、良溶媒に再溶解して取り出す方法が好ましい。
【0112】
貧溶媒は、共重合体が溶解しにくい溶媒であれば特に制限されないが、例えば、水やメタノール、イソプロパノール等のアルコール類、ヘキサン、ヘプタン等の飽和炭化水素類等を用いることができる。又、良溶媒は、共重合体が溶解しやすい溶媒であれば特に制限されないが、重合溶媒として例示した化合物を挙げることができる。これらの溶媒は、単独若しくは2種以上の混合溶媒として用いることができる。製造工程の管理上、重合溶媒と同じものが好ましい。
【0113】
(4)工程(S)
工程(S)は、他の工程で使用した、塗膜形成用溶媒よりも低沸点の不純物を低減し、共重合体と塗膜形成用溶媒とを含む共重合体溶液に仕上げる工程である。例えば、塗膜形成用溶媒を含む共重合体溶液を、減圧下で加熱しながら濃縮し、必要に応じて溶媒を追加して更に濃縮する工程(S1)、共重合体溶液を、減圧下で加熱しながら、必要に応じて濃縮した後、塗膜形成用溶媒を供給しながら初期の溶媒と供給した溶媒を留去させ、必要に応じて更に濃縮して、溶媒を塗膜形成用溶媒に置換する工程(S2)、共重合体溶液又は共重合体のウエットケーキを減圧下で加熱して一旦乾燥固体とした後、該乾燥固体を塗膜形成用溶媒に再溶解する工程(S3)等によって行うことができる。共重合体から低沸点の不純物を効率よく除去できること、共重合体に対して熱負荷がかかりにくいことから工程(S1)及び工程(S2)が好ましい。
【0114】
工程(S)に用いる槽は、少なくとも熱媒体供給用の外套缶と、攪拌翼、凝縮器、留出液の受器を備えた槽を用いる。温度を制御する場合もあることから外套缶を備えた方が好ましい。材質は、金属分のコンタミを避ける必要があること、熱伝導性や安全性が高いことから、金属をグラスライニングした容器が好ましい。攪拌翼は、三枚後退翼、神鋼環境ソリューション(株)製ツインスター翼等の部分翼、神鋼環境ソリューション(株)製フルゾーン翼、及び八光産業株製ベンドリーフ翼等の全面翼が好ましい。
【0115】
工程(S)の温度は、共重合体が変質しない温度であれば特に制限されないが、通常100℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましく、更に好ましくは70℃以下、特に好ましくは60℃以下である。溶媒を置換する際に、後から供給する溶媒の量は、少なすぎると低沸点化合物が十分に除去できず、多すぎると置換に時間がかかり、共重合体に必要以上に熱履歴を与えるため好ましくない。工程(S2)で供給する塗膜形成用溶媒は、通常、仕上がり溶液の溶媒として必要な量の1.05倍〜10倍、好ましくは1.1倍〜5倍、特に好ましくは1.2倍〜3倍の範囲から選択できる。
【0116】
工程(S)では、共重合体溶液の共重合体濃度を、目標濃度より高い場合には塗膜形成用溶媒を追加して攪拌し、目標濃度より低い場合は再濃縮して、目標濃度に微調整することができる。後者は共重合体溶液に必要以上の熱負荷をかけるため好ましくない。従って、予め目標濃度以上の濃度とした後、目標濃度を超える場合は塗膜形成用溶媒を追加して微調整することが好ましい。
【0117】
但し、必要以上に高濃度にすると、共重合体が析出したり、後で添加する溶媒量が多くなって経済的に好ましくなかったり、溶媒に含まれる水分などの低沸点成分が持ち込まれるため好ましくない。通常、目標濃度より0〜20質量%高めに、好ましくは0〜10質量%高めに、特に好ましくは0〜5質量%高めにした後、必要量の塗膜形成用溶媒を追加して調整する。
【0118】
(5)工程(T)
工程(T)は、共重合体を含有する溶液をフィルターでろ過して、夾雑物や金属分、ハイポリマー等のマイクロゲルを低減する工程であり、工程(P)、工程(Q)、工程(R)、工程(S)のいずれか1以上の工程の後に実施するのが良い。特に、工程(S)の後に実施すると、夾雑物やマイクロゲルの除去効果が高いため好ましい。工程(U)の後に実施すると、共重合体溶液中の共重合体濃度の均一性が損なわれるため好ましくない。
【0119】
工程(T)で用いるフィルターの例としては、珪藻土等のろ過助剤、セルロース等からなるデプスフィルター、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリロニトリルなどの極性基含有樹脂、フッ化ポリエチレンなどのフッソ含有樹脂から選ばれる材質からなるメンブレインフィルター等を挙げることができる。デプスフィルターの例としてはキュノ社製ゼータプラス40QSH、ゼータプラス020GN等を挙げることができる。メンブレインフィルターの例としては、日本インテグリス製のマイクロガード、オプチマイザーD等のポリエチレン製フィルター、日本ポール製のウルチプリーツP−ナイロン66、ウルチポアN66、キュノ製のフォトシールド、エレクトロポアIIEF等のナイロン製フィルター、日本ポール製ペンフロン等のフッ化ポリエチレン製フィルター等を挙げることができる。フィルターの濾過精度は、通常1μm以下のものを使用するが、好ましくは0.5μm以下、特に好ましくは0.05μm以下のものを使用する。これらのフィルターはそれぞれ単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0120】
(6)工程(U)
工程(U)は、工程(S)とは異なる槽を用いて共重合体溶液を均一化する工程であり、共重合体溶液中の低沸点溶媒を留出させて共重合体溶液に仕上げる工程(S)と、共重合体溶液を保管容器に充填する工程(W)との間に実施するのが良い。必要に応じて、塗膜形成用溶媒を追加して、共重合体溶液の共重合体濃度を微調整しても良い。また、必要に応じて、先述した添加剤を加えて攪拌し、半導体リソグラフィー用組成物に仕上げることもできる。
【0121】
工程(U)に用いる装置は、少なくとも撹拌翼を備えた槽である。熱媒供給用の外套缶を備えていると、共重合体溶液の温度が制御でき、撹拌による均一化がロット間差なく達成できるため好ましい。材質は、金属分のコンタミを避ける必要があることから、金属をフッ化ポリエチレン又はグラスでライニングしたものであることが好ましく、熱伝導性が比較的高く、静電気が比較的発生しにくいことから、金属をグラスライニングした容器が特に好ましい。攪拌翼は、三枚後退翼、神鋼環境ソリューション(株)製ツインスター翼等の部分翼、神鋼環境ソリューション(株)製フルゾーン翼、八光産業株製ベンドリーフ翼等の全面翼が好ましい。
【0122】
工程(U)の攪拌時間は、十分に均一化する時間であれば特に制限されないが、長時間だと生産性が低下するため好ましくない。通常1〜360分間、好ましくは2〜240分間、より好ましくは3〜120分間、特に好ましくは5〜60分間の範囲を選択する。
【0123】
工程(U)の攪拌温度は、十分に均一化する温度であれば特に制限されないが、低温すぎると高粘度となって十分に均一化されず、高温すぎると共重合体溶液に必要以上の熱負荷が加わるため好ましくない。通常0〜60℃、好ましくは5〜50℃、より好ましくは10〜45℃、特に好ましくは15〜40℃の範囲を選択する。
【0124】
撹拌翼の撹拌速度は、十分に均一化する速度であれば特に制限されないが、速すぎると撹拌翼に負荷がかかりすぎるため好ましくない。槽及び撹拌翼の大きさなどによっても異なるが、通常5〜500rpm、好ましくは10〜300rpm、より好ましくは20〜200rpm、特に好ましくは30〜150rpmの範囲を選択する。
【0125】
この工程を実施することにより、共重合体溶液を複数の容器に充填したときに、共重合体濃度の差を極めて小さくすることができる。
【0126】
(8)工程(W)
工程(W)は、共重合体と塗膜形成用溶媒を含む共重合体溶液を容器に充填する工程である。充填環境としては、0.5μm以上の気中パーティクルが100,000個/ft以下であることが好ましく、より好ましくは50,000個/ft以下である。特に好ましくは10,000個/ft以下である。
【0127】
充填温度は、充填できる温度であれば特に制限されないが、低温すぎると高粘度で充填が困難になったり、空気中の水分が結露したりして好ましくない。また、高温すぎると共重合体溶液や充填容器に必要以上の熱負荷が加わったり、可燃性蒸気が発散して危険になったりするため好ましくない。通常0〜60℃、好ましくは5〜50℃、特に好ましくは10〜40℃の範囲を選択する。
【0128】
4.共重合体濃度の測定方法
本発明の製造方法を効果的に実施するためには、共重合体濃度を精度良く測定する方法が必要である。そのような方法として、共重合体溶液の屈折率を測定することにより求める方法を挙げることができる。詳細について、以下に説明する。
【0129】
屈折率を測定する装置は、液体の屈折率を測定できる装置であれば特に限定されない。アッベ屈折計、デジタル屈折計、示差屈折計、手持ち屈折計、プロセス屈折計等の市販の屈折計から適宜選択することができる。デジタル屈折計は精度が高く、測定も簡便であるため特に好ましい。測定試料を、上記した屈折計の屈折率測定部位に接触させて測定する。
【0130】
屈折率は温度の影響を受けるため、毎回一定の温度で測定することが好ましい。測定温度は、通常0〜40℃、好ましくは10〜30℃の範囲から選択し、特に好ましくは15〜25℃の範囲から選択する。測定温度の精度は、通常一桁目まで合わせるが、好ましくは小数点以下一桁目、特に好ましくは小数点以下二桁目まで合わせる。例えば毎回20℃で測定するとした場合、毎回20.0℃で測定することが好ましく、特に好ましくは毎回20.00℃で測定する。
【0131】
上記により測定した共重合体溶液の屈折率は、共重合体濃度との検量線に基づいて共重合体濃度に変換する。共重合体溶液の屈折率は、共重合体濃度に対して一次の関係にあるため、共重合体の屈折率と塗膜形成用溶媒の屈折率が分かれば、屈折率と共重合体濃度の検量線を作成することができる。しかし、通常、共重合体は、共重合体の構造、繰り返し単位組成比や分子量によって屈折率が異なること、塗膜形成用溶媒についてもその構造や溶媒組成によって屈折率が異なることから、測定精度を高めるために、共重合体及び溶液の種類毎に検量線を作成することが好ましい。
【0132】
検量線を作成するための共重合体濃度の測定方法として、ホットプレートや減圧乾燥機等を用いて共重合体溶液に含まれる溶媒成分を蒸発させて乾燥固体を析出させ、共重合体溶液の質量に対する乾燥固体の質量比を求める方法、共重合体溶液もしくは乾燥固体を元の共重合体溶液に含まれない溶媒で再溶解した共重合体溶液を内部標準法や標準添加法等の手法を用いてガスクロマトグラフィーで分析し、共重合体溶液もしくは乾燥固体中に含まれる溶媒成分を定量して溶媒成分以外の質量比を求める方法等が挙げられる。前者の方法は乾燥固体に溶剤が残留すること、後者の方法はガスクロマトグラフィーの測定誤差が大きいことから、まず前者の方法で乾燥固体の質量比を求め、次いでこの乾燥固体を元の共重合体溶液に含まれていない溶媒で再溶解して乾燥固体中に残留していた溶媒成分を定量して溶媒成分以外の質量比を求める方法が好ましい。測定は複数回繰り返して測定し、その平均値を求めることが好ましい。
【0133】
検量線を作成するための屈折率を測定する検体は、共重合体濃度を求めた検体と同一の液から採取した検体とすることが好ましい。必要に応じて、共重合体溶液に含まれる溶媒だけの屈折率を共重合体濃度ゼロの検体として測定する。共重合体濃度は2水準あれば精度の良い検量線を作成できるが、3水準以上あってもよい。測定は各濃度水準について複数回繰り返して測定し、その平均値を求めることが好ましい。
【実施例】
【0134】
次に、実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、下記の例においては使用される略号は以下の意味を有する。
【0135】
単量体
単量体O: 3−ヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリレート
単量体M: 2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート
単量体N: 5−メタクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトン
単量体G: グリシジルメタクリレート
単量体A: 9−アントリルメチルメタクリレート
単量体m: メチルメタクリレート
【0136】
【化40】

【0137】
繰り返し単位
O: 単量体Oから誘導される繰り返し単位(前記A203)
M: 単量体Mから誘導される繰り返し単位(前記B3107)
N: 単量体Nから誘導される繰り返し単位(前記C105)
G: 単量体Gから誘導される繰り返し単位(前記D101)
A: 単量体Aから誘導される繰り返し単位(前記E123)
m: 単量体mから誘導される繰り返し単位(前記E101)
【0138】
重合開始剤
MAIB:ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート
【0139】
溶媒
MEK:メチルエチルケトン
MAK:メチルアミルケトン
THF:テトラヒドロフラン
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0140】
測定例1 共重合体のMw、Mw/Mnの測定(GPC)
共重合体溶液0.5gをバイアル瓶に秤取り、THFを5.0g加えて震盪し、均一な溶液とした。この溶液をゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)装置に注入して溶出ピークを得た。標準ポリスチレンを用いて作成した検量線を用いて計算し、共重合体のMwとMw/Mnを求めた。その他の測定条件は以下の通りとした。
装 置: 東ソー製GPC8220
検出器: 示差屈折率(RI)検出器
カラム: 昭和電工製KF−804L(×3本)
溶離液: THF
注入量: 60μl
【0141】
測定例2 共重合体の繰り返し単位組成の測定(13C−NMR)
共重合体の乾燥粉体1gに、Cr(acac) 0.1g、MEK0.5g、及び重アセトン1.5gを加えて震盪し、均一な溶液とした。この溶液を内径10mmガラス製チューブに入れて13C−NMR装置にセットし、NMR分析を行った。得られたピークの面積比を計算し、各繰り返し単位の組成比を求めた。その他の分析条件は以下の通りとした。
装 置: Bruker製AV400
温 度: 40℃
スキャン回数: 10,000回
【0142】
測定例3 共重合体濃度の測定(加熱残分GC法)
予め秤量したアルミ皿に共重合体溶液0.5g(w1)を秤取り、真空乾燥機に入れて0.01MPa以下、100℃で70分間加熱した。アルミ皿毎秤量し、アルミ皿の風袋を差し引いて加熱残分(w2)を求めた。アルミ皿にTHFを2gずつ4回に分けて、全8g加え、加熱残分を溶解した後、内部標準物質としてエチルベンゼンを0.1g加えて攪拌し、均一な溶液を調製した。この溶液を以下の条件でガスクロマトグラフ(GC)装置に注入して分析した。
GC装置:島津製作所製 GC−1700
検出器: 水素炎イオン化型検出器(FID)カラム: GLサイエンス製 イナートキャップ1
キャリアーガス:N2 100ml/min
スプリット比:54
注入量: 5μl
温度条件: インジェクション 350℃
検出器 250℃
カラム 60℃×10min→(20℃/min)→200℃×20min
内部標準法により加熱残分中の残存溶媒量(w3)を求め、下式(1)により共重合体濃度(質量%)を求めた。
共重合体濃度(質量%)={(w2)−(w3)}/(w1)×100 (1)
1サンプルに付き、上記測定を5回繰り返し、その平均値を共重合体濃度とした。
【0143】
測定例4 共重合体濃度の測定(屈折率法)
共重合体溶液に含まれるものと同じ塗膜形成用溶媒をアタゴ社製デジタル屈折計RX−5000αのプリズムに滴下し、20.00℃で屈折率を測定した。同様にして、測定例3で共重合体濃度を測定したものと同じ共重合体溶液試料を、アタゴ社製デジタル屈折計RX−5000αのプリズムに滴下し、20.00℃で屈折率を測定した。各測定試料について測定を3回繰り返し、それぞれの平均値を各測定試料の屈折率とした。塗膜形成用溶媒の屈折率を共重合体濃度=0(質量%)、共重合体溶液の屈折率を測定例4で求めた共重合体濃度(質量%)として、屈折率と共重合体濃度の検量線を作成した。その後、共重合体溶液の屈折率は、上記と同様、アタゴ社製デジタル屈折計RX−5000αのプリズムに滴下して20.00℃で屈折率を3回測定し、その平均値を前記検量線によって共重合体濃度に変換した。
【0144】
測定例5 共重合体溶液のコーティング試験
共重合体溶液100質量部に、乳酸エチル70質量部と、添加剤(Z)としてセイミケミカル製界面活性剤(サーフロンS−381)0.03質量部とを加えて攪拌し、均一な溶液を調整した。この溶液をシリコンウエハーに回転数4,000rpmでスピンコートし、ホットプレートに乗せて150℃で90秒間ベークした。その後冷却して、Footfil社製膜厚測定機KT−22で面内18点の膜厚を測定し、その平均値を膜厚とした。
【0145】
実施例1
外套缶と攪拌機を備えた内容量200Lのグラスライニング製単量体溶解槽にMEK70.0kg、単量体N15.5kg、及び単量体M20.0kgを仕込んで槽内を窒素雰囲気とし、外套缶に30±2℃の温水を流しながら撹拌して溶解させ、均一な「単量体溶液」を調製した。攪拌機を備えた内容量20Lの開始剤溶解槽に、MEK4.0kg及びMAIB2.0kgを仕込み、外套缶に30±2℃に保った温水槽を流しながら撹拌して溶解させ、均一な「開始剤溶液」を調製した。外套缶と神鋼環境ソリューション(株)製フルゾーン翼付き攪拌機、凝縮器を備え、凝縮器の先に窒素ガスを微量流しながら大気に開放した状態の内容量200Lのグラスライニング製重合槽にMEK30.0kgを仕込んで槽内を窒素雰囲気とした。
【0146】
重合槽の外套缶に、83.0±0.5℃に制御した温水を流しながら撹拌して、反応槽内のMEKを79.5℃に昇温し、その状態を維持した。単量体溶解槽と開始剤溶解槽の外套缶には30±1℃の温水を流し続けた。この状態を維持しながら、単量体溶液と開始剤溶液を、それぞれ別々に、定量ポンプを用い、一定速度で4時間かけて重合槽に滴下した。滴下中は、重合槽内を撹拌しながら、外套缶には83.0±0.5℃に制御した温水を流し続け、重合槽内の温度を、79〜81℃に保った。滴下終了後、さらに、重合槽内を撹拌しながら、外套缶には83.0±0.5℃に制御した温水を流し続け、重合槽内の温度を80℃に保ち、2時間熟成した。その後、外套缶に約20℃の冷却水を流して冷却した。
【0147】
外套缶、攪拌機、ポリエステル製のろ布を張ったろ過床、及びろ過床下部にバルブ付き抜き出し管を備え付けた電解研磨仕上げのSUS316製精製ろ過槽に、15℃のメタノール740kgを投入し、外套缶に15±1℃のブラインを流しながら撹拌を続けた。ここに、重合液を滴下して共重合体を析出させ、さらに30分間撹拌した後、撹拌を継続しながら、ろ過床の下部の液抜き出しバルブを開放し、ろ液を排出してウエットケーキを得た。ろ過床下部の液抜き出しバルブを閉じ、精製ろ過槽に15℃のメタノール650kgとMEK90kgを投入し、15℃に保ちながら30分間撹拌した後、撹拌を継続しながら、ろ過床下部の液抜き出しバルブを開放し、ろ液を排出してウエットケーキを得る操作を2回実施した。得られたウエットケーキから数g抜き取り、60℃以下で1時間減圧乾燥して乾燥粉体とし、測定例2の方法で共重合体の繰り返し単位組成比を求めた。
【0148】
ろ過床下部の液抜き出しバルブを閉じ、残りのウエットケーキにMEK200kgを投入して溶解した。この溶液を、液抜き出しバルブを開放し、窒素加圧して、外套缶と神鋼環境ソリューション製ツインスター翼付き攪拌機、凝縮器を備え付けた内容量1000Lのグラスライニング製溶媒置換槽に導入した。その後、撹拌しながら減圧し、外套缶に55±1℃の温水を流して加熱した。塗膜形成用溶媒としてPGMEAを投入しながら軽質分とPGMEAの一部を留去させ、PGMEAを溶媒とする共重合体溶液を得た。得られた溶液を一部採取し、測定例4の方法で共重合体濃度を測定した。必要量のPGMEAを追加して15分間攪拌したのち、再度、一部採取して測定例4の方法で共重合体濃度を測定し、25.0±0.1%であることを確認した。更に、測定例1の方法で共重合体のMwとMw/Mnを求めた。
【0149】
得られた共重合体溶液を、窒素加圧によって、外套缶と神鋼環境ソリューション製ツインスター翼付き撹拌機を備えた内容量500Lのグラスライニング製均一化槽に導いた。均一化槽の外套缶に温水を通し、共重合体溶液を30℃に保ちながら、80rpmで15分間撹拌した。その後、共重合体溶液をクリーンブース(クラス10,000)内に導き、1kgを端切りした後、20Lポリエチレン容器(コダマ樹脂製KK−116−8)7缶に充填した。
【0150】
各充填容器から一部採取し、測定例4の方法で共重合体濃度を測定した。この共重合体溶液を、測定例5の方法でコーティング試験した。結果を表1に示す。
【0151】
実施例2
共重合体溶液を溶剤置換槽から均一化槽に導く間に、日本マイクロリス製マイクロガード(濾過精度1.0μm、濾過面積1m2の超高分子量ポリエチレン製メンブレインフィルター)及び、スリーエム製フォトシールド(濾過精度0.04μm、ろ過面積1m2のナイロン66製メンブレインフィルター)を通過させた以外は実施例1と同様に実施した。
【0152】
実施例3
単量体溶解槽に仕込む単量体として単量体O8.0kgを追加し、塗膜形成用溶媒として、PGMEAの代わりにMAKを用いた以外は実施例2と同様に実施した。
【0153】
実施例4
外套缶と攪拌機を備えた内容量200Lのグラスライニング製単量体溶解槽にMEK65.0kg、単量体G12.0kg、単量体A10.0kg、及び単量体m20.0kgを仕込んで槽内を窒素雰囲気とし、外套缶に30±2℃の温水を流しながら撹拌して溶解させ、均一な「単量体溶液」を調製した。攪拌機を備えた内容量20Lのポリエチレン製開始剤溶解槽に、MEK8.0kg、及びMAIB4.0kgを仕込み、容器ごと30±2℃に保った温水槽に漬けながら撹拌して溶解させ、均一な「開始剤溶液」を調製した。外套缶と神鋼環境ソリューション(株)製三枚後退翼付き攪拌機、凝縮器を備え、凝縮器の先に窒素ガスを微量流しながら大気に開放した状態の内容量200Lのグラスライニング製重合槽にMEK30.0kgを仕込んで槽内を窒素雰囲気とした。
【0154】
重合槽の外套缶に、83.0±0.5℃に制御した温水を流しながら撹拌して、重合槽内のMEKを79.5℃に昇温し、その状態を維持した。単量体溶解槽の外套缶には30±1℃の温水を流し続け、単量体溶液の温度を滴下終了まで30±1℃に保った。開始剤溶解槽は温水槽から取り出して、計量器に備え付け、滴下終了まで約23℃の外気にさらした。この状態を維持しながら、単量体溶液と開始剤溶液を、それぞれ別々に、定量ポンプを用い、一定速度で4時間かけて重合槽に滴下した。滴下中は、重合槽内を撹拌しながら、外套缶には83.0±0.5℃に制御した温水を流し続け、重合槽内の温度を、79〜81℃に保った。滴下終了後、さらに、重合槽内を撹拌しながら、外套缶には83.0±0.5℃に制御した温水を流し続け、重合槽内の温度を80℃に保ち、2時間熟成した。
【0155】
攪拌機を備え付けたテフロンライニング製精製槽に、23℃のヘキサン380kgを投入して撹拌し、その状態を維持した。ここに、重合液を滴下して共重合体を析出させ、さらに30分間撹拌した後、30分静置した。上澄み液を排出した後、得られた沈殿物から数gを抜き取り、60℃以下で1時間減圧乾燥して乾燥粉体とし、測定例2の方法で共重合体の繰り返し単位組成比を求めた。
【0156】
残りの沈殿物にアセトン130kgを投入して溶解した。この溶液は、外套缶と神鋼環境ソリューション製ツインスター翼付き攪拌機、凝縮器を備え付けた内容量1000Lのグラスライニング製溶媒置換槽に投入し、撹拌しながら減圧し、外套缶に55±1℃の温水を流して加熱した。アセトン等の軽質分を一部留去させた後、塗膜形成用溶媒としてPGMEを投入しながら軽質分とPGMEの一部を留去させ、PGMEを溶媒とする共重合体溶液を得た。得られた溶液を一部採取し、測定例4の方法で共重合体濃度を測定した。必要量のPGMEAを追加して15分間攪拌したのち、再度、一部採取して測定例4の方法で共重合体濃度を測定し、25.0±0.1%であることを確認した。更に、測定例1の方法で共重合体のMwとMw/Mnを求めた。
【0157】
得られた共重合体溶液を、窒素加圧によって、外套缶と神鋼環境ソリューション製ツインスター翼付き撹拌機を備えた内容量500Lのグラスライニング製均一化槽に導いた。均一化槽の外套缶に温水を通し、共重合体溶液を30℃に保ちながら、80rpmで15分間撹拌した。その後、共重合体溶液をクリーンブース(クラス10,000)内に導き、1kgを端切りした後、20Lポリエチレン容器(コダマ樹脂製K−116−8)7缶に充填した。
【0158】
各充填容器から一部採取し、測定例4の方法で共重合体濃度を測定した。この共重合体溶液を、測定例5の方法でコーティング試験した。結果を表1にまとめた。
【0159】
比較例1
均一化槽を用いず、溶剤置換槽から直接20Lポリエチレン容器に充填した以外は実施例1と同様に実施した。
【0160】
比較例2
均一化槽を用いず、溶剤置換槽から直接20Lポリエチレン容器に充填した以外は実施例2と同様に実施した。
【0161】
比較例3
均一化槽を用いず、溶剤置換槽から直接20Lポリエチレン容器に充填した以外は実施例3と同様に実施した。
【0162】
比較例4
均一化槽を用いず、溶剤置換槽から直接20Lポリエチレン容器に充填した以外は実施例4と同様に実施した。
【0163】
【表1】

【表2】

【表3】

【0164】
上記の通り、本発明である容器間の共重合体濃度の最高と最低の幅が最高濃度の1.5%以下である製造方法により、同一製造ロットのどの容器に充填した共重合体溶液を用いても、一定の膜厚でスピンコートすることができることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基を有する繰り返し単位(A)、アルカリ現像液への溶解を抑制すると共に酸の作用で解離する基で水酸基を保護した構造を有する繰り返し単位(B)、ラクトン構造を有する繰り返し単位(C)、および環状エーテル構造を有する繰り返し単位(D)からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の繰り返し単位を含む共重合体と、塗膜形成用溶媒とを含む共重合体溶液の製造方法であって、
共重合体溶液を減圧下で加熱して、前記塗膜形成用溶媒よりも低沸点の不純物を留去させる工程(S)を含み、同一製造ロットの共重合体溶液を複数容器に充填した場合に、容器間の共重合体濃度の最高値と最低値の幅が最高濃度の1.5%以下であることを特徴とする、半導体リソグラフィー用共重合体溶液の製造方法。
【請求項2】
水酸基を有する繰り返し単位(A)、アルカリ現像液への溶解を抑制すると共に酸の作用で解離する基で水酸基を保護した構造を有する繰り返し単位(B)、ラクトン構造を有する繰り返し単位(C)、および環状エーテル構造を有する繰り返し単位(D)からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の繰り返し単位を含む共重合体と、塗膜形成用溶媒とを含む共重合体溶液の製造方法であって、
共重合体溶液を減圧下で加熱して、前記塗膜形成用溶媒よりも低沸点の不純物を留去させる工程(S)と、工程(S)とは異なる槽を用いて、工程(S)を経た共重合体溶液を撹拌する工程(U)とを含むことを特徴とする、半導体リソグラフィー用共重合体の製造方法。
【請求項3】
前記工程(S)と前記工程(U)の間に、共重合体溶液をフィルターでろ過する工程(T)をさらに含む、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記塗膜形成用溶媒が、ケトン結合、エステル結合、エーテル結合、および水酸基からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の極性基を有し、常圧での沸点が110〜220℃の溶媒を含む溶媒である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記共重合体が、アルカリ現像液への溶解を抑制すると共に酸の作用に安定な構造を有する繰り返し単位(E)をさらに含む、請求1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記繰り返し単位(A)が、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基、フルオロアルコール性水酸基、カルボキシル基、およびスルホ基からなる群から選ばれる少なくとも1種を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記繰り返し単位(A)が、
式(A1)
【化1】

(式中、R10は水素原子、又は、フッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4の炭化水素基を表し、R11は単結合、又は、フッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4の2価の炭化水素基を表し、iは1又は2の整数を表す。)、
式(A2)
【化2】

(式中、R12は水素原子、又は、フッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4の炭化水素基を表し、R13はフッ素原子、酸素原子又は硫黄原子を含んでも良い炭素数2〜12の2〜4価の炭化水素基を表し、R14は単結合、又は、フッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4の2価の炭化水素基を表し、jは1〜3の整数を表す。)、および
式(A3)
【化3】

(式中、R15は水素原子、又は、フッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4の炭化水素基を表し、R16は、酸素原子若しくは硫黄原子を含んでも良い炭素数6〜12の2価の脂環炭化水素基を表し、kは0又は1の整数を表す。)
からなる群から選ばれる少なくとも一種で表される構造を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記繰り返し単位(B)が、前記式(A1)〜(A3)で表される構造の水酸基を、
式(b1)
【化4】

(式中、oは式(b1)の結合部位を表し、R23及びR24はそれぞれ独立して炭素数1〜4の炭化水素基を表し、R25は炭素数1〜12の炭化水素基を表す。あるいは、R25はR23又はR24と結合して環を形成しても良い。)および/または
式(b2)
【化5】

(式中、oは式(b2)の結合部位を表し、R26及びR27はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基を表し、R28は炭素数1〜12の炭化水素基を表す。あるいは、R26は、R27又はR28と結合して環を形成しても良い。)
で表される酸解離性溶解抑制基で保護して形成した構造を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記繰り返し単位(C)が、
式(C)
【化6】

{式中、R30は水素原子、又は、フッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4の炭化水素基を表し、R31
式(c)
【化7】

(式中、R32〜R39は、いずれか1つが、R31としての結合部位を有する単結合を表し、残りのR32〜R39は、水素原子、又は、炭素数1〜4の炭化水素基若しくはアルコキシ基を表すか、又は、いずれか1つが、R31としての結合部位を有し、他のR32〜R39のいずれか1つ又は2つと結合して炭素数5〜15の脂環を形成する、酸素原子若しくは硫黄原子を含んでも良い炭素数3〜14の炭化水素基を表し、残りのR32〜R39は、いずれか1つ又は2つが前記炭素数5〜15の脂環を形成するための単結合を表し、その残りは、水素原子、又は、炭素数1〜4の炭化水素基若しくはアルコキシ基を表す。)で表されるラクトン構造含有基を表す。}
で表される構造を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記繰り返し単位(D)が、
式(D)
【化8】

(式中、R40は水素原子、又は、フッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4の炭化水素基を表し、R41は3〜6員環の環状エーテル構造を含む炭素数3〜7の炭化水素基を表す。)
で表される構造を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記繰り返し単位(E)が、前記式(A1)、前記式(A2)、および前記式(A3)で表される構造において、水酸基の水素原子と酸安定性溶解抑制基がそれぞれ置換した構造(E1)、構造(E2)、および構造(E3)、ならびに
式(E4)
【化9】

(式中、R60は水素原子、又は、フッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4の炭化水素基を表し、R61は水素原子、R62と結合する単結合、又は炭素数1〜4の炭化水素基を表し、R62は炭素数6〜14の芳香族炭化水素基を表す。)
で表される構造(E4)からなる群から選ばれる少なくとも一種で表される構造を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。

【公開番号】特開2010−106166(P2010−106166A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−280241(P2008−280241)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000157603)丸善石油化学株式会社 (84)
【Fターム(参考)】