説明

金属スクラップ中の有機物をバッチ脱被覆し、かつ/またはある種の廃棄物(バイオマス、都市ごみ、産業廃棄物、およびスラッジを含む)から有機物をガス化するための方法および装置。この装置は、アルミニウム業界の金属スクラップを溶解するのに使用されるタイプのバッチ傾動単一入り口回転炉での使用に適している。この装置は、上記傾動回転炉にバーナを使用するが、必ずしも金属スクラップを溶解するとは限らない。これは、金属スクラップの融解温度より低く(1400F未満)、かつ化学量論的レベルより低い(より詳細には、12%酸素未満)ところで動作させて、上記傾動回転炉で有機物を部分的に燃焼することが好ましい。ガス化された有機物は、炉を離れて、煙道ガスの中に空気を全く混入することができない完全な閉回路の中にある。これらの有機物入りのガス(合成ガス)は、化学量論的バーナが天然ガスまたは液体燃料を使用して合成ガスを点火する別個の熱酸化装置内で完全に焼却される。このシステムは、有機物が完全にガス化され、かつ金属スクラップが完全にクリーンであるときを同定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス、産業廃棄物、都市ごみ、およびスラッジを含む有機被覆廃棄物および有機材料を処理するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一開放端部傾動回転炉が、不純物を含むスクラップから、有機材料を含むアルミニウムなどの汚れた金属を溶解するために金属業界で使用されている(例えば、特許文献1および特許文献2を参照されたい)。より詳細には、これらの炉は、アルミニウムドロス処理に使用される。通常、これらの炉は、例えば1400°Fから2000°Fの範囲の高温で動作する。一般に、処理の後、金属スクラップは溶融状態(流体状態)になる。これらの炉は、空気燃料バーナまたは酸素−燃料バーナを使用して炉内の金属スクラップを加熱し、溶解する。通常、これらの炉は、特許文献1に述べられているように、1.8から1.21の範囲の酸素対燃料比で作動するバーナを使用する。この範囲は、炉の内部雰囲気中に噴射される燃料のほとんど完全な酸化が行われることを確実にする。この高い酸素/燃料比は、これらの傾動回転炉での高燃料効率化(溶融したアルミニウムの1ポンドあたりに使用される燃料のBTU)を確保する。
【0003】
さらに、これらタイプの炉のすべての場合に、排気ガスは、特許文献1および特許文献2に示されるように、オープンフードシステム内に収集される。このオープンフードシステムは、回転炉から排出される排気ガスを巻き込み、収集するように設計される。このオープンフードシステムは、高温排気ガスに加えて広範囲の不純物(未燃有機物、微粒子、および他の不純物)を収集する。これらの不純物は、高温ガスに混入され、これと共に運ばれる。また、このオープンフードシステムは、高温排気ガスに加えてかなりの量の周囲空気を(炉の外側から)フードの中に混入し、その結果、空気および汚染された排気ガスの完全な混合気をもたらす。
【0004】
特許文献3は、混入空気に加えて、汚染ガスを受け入れ、ヒューム処理システムを通してこれを通過させるオープンフードシステムを論じており、そこでは、サイクロンによって微粒子が主として除去され、炭化水素が別個のスタンドアロン焼却炉で焼却される。この焼却炉から出て行くガスは、バグハウスに向かって排出される。この装置は、ガスを排出する前にこのガスを処理するように設計される。
【0005】
煙道からいくらかの熱を回収するように排出ガスを使用する例が、特許文献4に開示されている。この特許では、高温ガスが、燃焼空気を予熱するためにこれらのガスを使用する回収熱交換器の内部に移動し、この燃焼空気は、次に送風機を通してバーナの中に吹き付けられる。したがって、これは、開回路システムであり、排気ガスは、燃焼空気を予熱するためにだけ使用される。
【0006】
通常、これら炉では、溶解サイクルの終わりに、炉が前方に傾動し、最初に溶融金属を金属スカル容器の中に移す。次いで、鉄化合物である場合もある残留物、およびプロセスで使用される塩を含む他の残留不純物、および酸化アルミニウムが、突出したスキミング装置を通して炉内部からすくい取られる。
【0007】
従来の固定回転炉(2つの対向する動作入り口点)に対する、特許文献4、特許文献1、および特許文献2に述べられている傾動回転炉(単一の動作入り口点炉)の利点は、
・溶融金属の急速な注入(重力を介して制御される)、
・金属スクラップの処理後に生ずる溶融金属残留物(塩、酸化アルミニウム、等)の急速な注入、
・炉内部の耐火壁と金属スクラップとの間でより高い熱伝達を可能にし、したがって溶融プロセスを加速し、その結果燃料使用量が低減される、炉壁を有するより大きな熱伝達表面積、および
・より長いガス滞留時間−回転炉の長手方向径路に沿った高温燃焼ガスの2回のパス(2回のフライト(two flights))が、より高い熱伝達を確実にし、またこれにより、溶融能力がより高くなること、
である。
【0008】
回転炉から廃棄物をガス化するために準化学量論的高温ガスを使用する例が、特許文献5に示されており、これは、廃棄物をガス化するために2つの対向する入り口点を有する連続運転炉(単一入り口点傾動回転炉ではない)を使用することを説明している。前述の特許では、有機廃棄物がホッパを介して送り込まれ、ラムを連続的な方式で回転炉の中に送り込む。さらに、このシステムでは、バーナが、誘導空気を用いた回転する炉内に設置され、炉中に直接的な火炎加熱をもたらす。このシステムプロセス制御は、有機物がいつ完全にガス化されたか予測する機構を有さない。それ故、このシステムは、廃棄物内の有機物の量に関係なく、廃棄物について一定の処理時間で動作する。これは、当然のこととして、焼きすぎた廃棄物材料(エネルギーの浪費)、または加熱が不十分な材料(有機物が完全には燃焼されない)、および灰材料と共に炉の出口で依然として燻っている廃棄物(これは、未燃炭化水素の形態で環境問題およびポテンシャルエネルギーの損失の両方を生じる)をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,572,675号明細書
【特許文献2】米国特許第6,676,888号明細書
【特許文献3】米国特許出願第2005/0077658号明細書
【特許文献4】米国特許第4,697,792号明細書
【特許文献5】米国特許第5,553,554号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、有機材料および有機被覆金属を処理するための方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明は、バイオマス、産業廃棄物、都市ごみ、およびスラッジを含む有機被覆廃棄物ならびに有機材料などの材料を処理するための装置であって、本体部分、単一の材料入り口点、および炉の前記入り口点と前記本体部分との間のテーパ部分を有する回転可能かつ傾動可能な炉と、その長手方向軸の周りに炉を回転させるための手段と、炉を傾動させるための手段と、前記材料を処理することによって放出されるガスの中の揮発性有機化合物を少なくとも部分的に酸化させるための酸化手段と、前記炉から前記酸化手段に前記ガスを導くための通路手段とを含み、前記通路手段が、前記炉および前記バーナに対して密封されて、それによって外部空気の侵入を阻止する装置を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、バイオマス、産業廃棄物、都市ごみ、およびスラッジを含む有機被覆廃棄物ならびに有機材料などの材料を処理するための方法であって、本体部分、単一の材料入り口点、および炉の前記入り口点と前記本体部分との間のテーパ部分を有する回転可能かつ傾動可能な炉を設けるステップと、その長手方向軸の周りに炉を回転させるステップと、材料を炉に導くステップと、有機材料を焼き切って、揮発性有機化合物を含むガスを発生する温度に材料を加熱するステップと、プロセス中に化学量論的当量レベルより低く炉の酸素レベルを維持するステップと、熱酸化装置に至るまで炉から排出される前記ガスから外部空気を除外するための密閉回路である通路手段を通して、揮発性有機化合物を焼却するために酸化手段にガスを通すステップと、効率のよい動作のために、選択されたレベルに炉および酸化手段内部のそれぞれの温度を維持するステップとを含む方法も提供する。
【0013】
金属スクラップ材から、バイオマス、都市ごみ、およびスラッジ等のような有機材料または廃棄物材料を脱被覆する方法は、一般に、ガス化法と呼ばれるプロセスを利用する。
【0014】
好ましい方法は、単一の動作入り口点を有する回転傾動炉を利用し、この炉は、ボトル形状を有し、高荷重および高温に耐えることができる耐火材料が内張りされており、その炉はその中央長手方向軸の周りに回転することができる。この炉は、単一の動作入り口を有し、処理されている材料を加熱するためのバーナ、および排気ガスを運び去るように煙道ダクトのための設備を有する気密扉を含む。
【0015】
また、回転炉の内部のスクラップまたは廃棄物から放出される揮発性有機化合物(VOC)ガスを焼却する熱酸化装置も提供される。
【0016】
熱酸化装置は、(天然ガスや油のような)ヴァージン燃料および/またはVOCガスの両方を使用することができる混焼用バーナを備えることができる。炉の内部の温度を制御するために、雰囲気調整システムが設けられ、かつバグハウスに行く温度を制御する第2の雰囲気調整システムも設けられる。ガス化プロセス中に化学量論より低い炉システム燃焼酸素レベル(2%〜12%未満)を維持するために、プロセス制御システムが設けられる。さらに、この制御システムは、回転傾動炉の内部(1000°F〜1380°F)、および熱酸化装置の内部(約2400°F)で適正なガス化温度を維持する。さらに、この制御システムは、システム圧力がサイクルを通じて安定に維持されることを確実にする。この制御システムは、システムの内部から信号を受信するために、酸素および一酸化炭素センサの組合せ、熱センサ、ガス分析計、および圧力センサを利用する。
【0017】
回転炉は、金属スクラップの融解温度よりも低い温度で動作するように設計されることが好ましい。炉の加熱は、高温ガスを噴射するバーナまたは高速ランスによって実現され、この高温ガスは、いわゆる準化学量論的燃焼の際に酸素が不足している。この燃焼は、酸素を枯渇させるので(準化学量論的)、この回転炉雰囲気の内部では、スクラップ有機物の部分的な酸化しか実現されない。また、この部分的な酸化は、金属スクラップから有機物をガス化するために必要とされる熱の一部を生成する。排出ガスは、ダクトを経由して回転炉雰囲気から出るものであり、揮発性有機化合物(VOC)を含む。次いで、これらのガスは、大気に放出される前に熱酸化装置内で実質的に完全に酸化するように焼却される。
【0018】
垂直な熱酸化装置は、タールを完全に焼却し、回転炉の内部の金属スクラップから遊離される揮発性有機化合物の完全な酸化のために必要とされる2秒の滞留時間を与える。このことを実現するために、熱酸化装置は、2%〜12%の範囲の酸素レベルの状態で2400°Fに到達する高温で、かつ揮発性有機化合物と酸素との間の混合を通して動作する。この熱酸化装置は、熱酸化装置雰囲気を加熱するように混焼用バーナを使用する。この混焼用バーナは、ヴァージン燃料(天然ガス、石油ディーゼル)および回転炉から受け取る揮発性有機化合物ガスの両方を燃焼するように設計される。
【0019】
その後、ガスは、微粒子や有害なガスを除去するための下流側の処理の後に可能な限り大気に逃がされる。
【0020】
1つの実施形態では、高温ガスは、雰囲気調整システムを通して酸化装置から移行し、ガス温度と酸素レベルは共に、装入されたスクラップのタイプ、および回転炉運転に対する要求に従って調整される。通常、脱被覆の目的のために、材料および脱被覆の段階に応じて、ガス温度は1000°Fより低く維持され、酸素レベルは2%〜12%の範囲に維持される。廃棄物(バイオマス、都市ごみ、産業廃棄物、およびスラッジを含む)ガス化のためには、ガス温度は、1380°Fほどの高さであってもよく、酸素レベルは、4%よりも低く維持される。
【0021】
次いで、これらのガスは、調整された温度(金属融解温度よりも低い)、および酸素レベル(準化学量論的な)で回転炉に戻り、高速ノズルを介して回転炉内部雰囲気の中に導かれる。これらのガスは、金属スクラップに衝突する高速度で回転炉の内部に移動する。回転炉運転の一部は連続回転であり、一方、ノズルまたはランスは、酸化装置から準化学量論的ガスを噴射する。炉の回転は、スクラップの混合、および衝突ガスの熱流への金属スクラップの露出をも助け、それによって、スクラップを再び新しくする。炉の回転速度、およびバーナの燃焼度、またはランスガス噴射の速度は、処理されるべき材料に依存する。これらのパラメータは、制御システムのロジックによって規定され、生産要求および処理されるべき材料のタイプに依拠する。金属スクラップの脱被覆プロセス中の回転炉雰囲気は、次の条件に維持されることが優位である(温度1000°F未満、および酸素レベル2%〜12%未満)。これら2つの条件は、アルミニウム金属スクラップが酸化されないことを保証する。
【0022】
いくつかのセンサが、回転炉の内部に設置され、炉の運転中にデータの連続した流れを送る。これらのセンサは、雰囲気温度を測定する熱電対、ならびに圧力センサ、酸素センサ、およびCOセンサを含む。このデータは連続的にログされ、この信号はプロセス制御システムに送られる。このプロセス制御システムは、このデータを使用して、ランス(還流ガス)温度、酸素レベル、ランス速度、および回転炉の回転速度を含むさまざまなパラメータを調整する。脱被覆の終了時間を制御するために、回転炉に入るガスと回転炉から出て行くガスが共に、詳細なガス分析計によって閉回路内において監視される。このガス分析計は、酸素レベルおよびCOレベルの両方を記録する。
【0023】
脱被覆動作の間、回転炉から出て行く酸素レベルは、回転炉に入るレベルよりも低く、COレベルの挙動と逆である。脱被覆プロセスの完了のために、炉の内部の有機物はガス化されることが優位であり、COレベルと酸素レベルとは共に、より近づくように動き、最終的には等しくなる。ダクト内のガス分析計からの2つの信号の均一化は、ガス内の有機物のすべての排出、および脱被覆/ガス化プロセスの完了を示している。
【0024】
酸化装置から再循環されるガスを有する傾動回転脱被覆炉を使用すると、非常に効率のよい熱伝達動作が可能である。さらに、炉の脱被覆動作に対する要求事項のうちの1つは、ガスが炉を離れて酸化装置に向かう場所での緊密なシール、および回転傾動脱被覆炉の中へのいかなる空気の混入をも阻止することである。この要求事項により、動作中に炉の余分な冷却が全くないことが確実になり、また、回転炉やこの炉からのダクトの内部でのVOCガスの偶然の迅速な着火、および爆発の可能性さえも防止される。
【0025】
本発明は、添付の図面を参照して例示によって以下にさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】傾動回転炉、熱酸化装置、およびバグハウスを示す、一部を断面にした本発明による装置の好ましい形態の側面図である。
【図2】炉内部を示す傾動回転炉の断面図である。
【図3】扉の詳細を示す、炉の扉の正面図である。
【図4】煙道ダクトと燃料ランスの接続を示す炉扉の概略図である。
【図5】回転炉の金属スクラップまたは廃棄物の供給機構を示す図である。
【図6】回転炉の金属スクラップの排出機構を示す図である。
【図7】フル稼働サイクルについて、ランスの中および煙道出口ダクトにおけるガスの酸素比を示すグラフである。
【図8】本発明による装置の第2の実施形態を示す、図1の実施形態と同様な図である。
【図9】図8の実施形態について図4の実施形態と同様な図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1〜図6は、合成ガス(合成ガス(syngas))を発生するために、金属スクラップの有機物を脱被覆し、かつ/または有機材料をガス化するための装置100の好ましい形態を示している。この装置は、単一入り口傾動回転炉1を有し、この傾動回転炉1は、排気ダクト2の形をとる通路手段を通して熱酸化装置31の形をとる酸化手段に、次いでセパレータ9、ファンまたは送風機26、および排気手段(煙突)10にガスを供給する。
【0028】
セパレータ9は、通常、バグハウスと呼ばれており、ガスの流れから塵および微粒子を分離するために使用される。熱酸化装置31からの高温ガスは、戻りダクト3の形をとる通路手段によって炉筒15にフィードバックされる。
【0029】
炉は、耐火物が内張りされた筒15、扉11、および駆動機構25を備え、この駆動機構25は、その長手方向軸104の周りに炉を回転させるために使用される。この炉筒は、炉扉11の近くにテーパ部分13を有して、炉内の金属スクラップおよび/または有機物スクラップ14の周りのより良好なガス流の循環、および排出中の装入スクラップ14に対するより良好な制御を可能にする。
【0030】
炉1は、略水平な旋回軸102の周りに前方および後方に傾動できるように取り付けられる。油圧システム32が、排出中には軸102の周りに前方に、および材料14の投入および処理中には僅かに後方に回転炉1を傾動するように(図1に示すように)使用されて、炉の動作特性を向上させる。
【0031】
炉扉11は、耐火物が内張りされた、精巧なドアシール機構12を備えており、このドアシール機構12は、扉11に対して炉筒15の回転を可能にし、回転炉の内部雰囲気16と外部雰囲気30との間の緊密な閉鎖および完全な分離を確実にする。炉扉11は、2つの開口または孔28、および開口または孔29を有する。1つの開口28は、排気ダクト2に密封連結され、第2の開口29は、戻り導管3に密封連結される。これらの開口は共に、動作中に大気が回転炉雰囲気16の中に漏れることを防止する密なシールを維持するように設計される。
【0032】
動作中に、回転炉筒15は、図1で示されるように後方に僅かに傾動され、炉扉11は、緊密に閉鎖される。炉は、駆動機構25によって回転される。高温の準化学量論的ガスが、高速ノズル18を介して導管3から炉の中に導入され、この高速ノズル18は、開口29を通り抜けて炉の内部に突出する。このノズルは、開口29に密封される。同様に、排気ダクト2は、入り口17によって開口28を通り抜けて炉の内部に連結される。排気ダクト2と戻りダクト3とは共に、それぞれ回転気密フランジ22および回転気密フランジ23を有し(図4)、この回転気密フランジにより、扉11に対するダクト2およびダクト3のシールに応力を加えることなくこの扉11を開くことができる。
【0033】
ダクト2は、炉から熱酸化装置31に排気ガスを接続し、熱酸化装置31内でこの排気ガスをバーナ6からの熱流の中で燃焼させてから、これらの燃焼ガスをバグハウス9に渡す。
【0034】
熱酸化装置31は、鋼から作られる垂直な円筒状構造物であり、通常は約2400°Fの高温に耐え得る耐火材料5が内張りされている。炉1からの高温ガスは、揮発性有機化合物(VOC)を含んでおり、熱酸化装置の容積は、VOC入りのガスが最小で2秒の滞留時間の間酸化装置内に保持されることを確実にするように設計される。熱酸化装置は、(天然ガスやディーゼルなどの)ヴァージン燃料および炉1からのVOCの両方を燃焼することが可能である混焼用バーナ6によって加熱される。VOCガスのダクト2は、バーナ6に直接連結され、このバーナに代替または追加の燃料としてVOCを直接供給する。
【0035】
熱酸化装置31内のガスは、2つの出口径路を有する。一方の出口径路は、戻りダクト3を通り、回転炉1に加熱または追加の加熱を提供する。第2の出口径路は、バグハウス9に向かう出口ダクト7の形態のさらなる通路手段を通る。
【0036】
ガス調整装置4が、戻りダクト3に連結され、ガスが炉に到達する前にこのガスを調整するために使用される。ガス調整装置4は、間接冷却によってガス温度を調整し、ガスからの微粒子および酸の両方を清浄化する。また、第2のガス調整装置が出口ダクト7に設けられ、間接冷却によってガス温度を調整し、第1段階のガス内のガスからの微粒子および酸の両方を清浄化する。出口ガスは、ガス調整装置8からバグハウス9を通って、次にIDファン26を通って移動し、このIDファン26は、ダクト7に沿った、およびバグハウス9を通るガスの移動を助ける。次いで、ガスは、煙突10を介して大気に排出される。
【0037】
回転炉1に向かってダクト3に沿って通る還流ガスは、サンプリング手段20によって回転炉に入る前にサンプリングされ、一方、炉からの出口ガスは、出口ダクト2において第2のサンプリング手段21によってサンプリングされる。この2つのサンプリング手段は、温度、酸素含有量、および一酸化炭素含有量などのガスについてのさまざまなパラメータを示す信号を発生するサンプリングシステムである。これらの信号は、ガス分析計19に使用される。ガス分析計19は、信号を解析し、プロセス制御システム106にこの結果を送る。
【0038】
いくつかのセンサ108が、回転炉15の内部に設置され、炉の運転中、プロセス制御システム106にデータの連続した流れを送る。これらのセンサは、好都合なことに、炉内の雰囲気温度、圧力、酸素含有量、およびCO含有量などのパラメータを測定し、このパラメータを示す信号を生成する熱電対である。このデータは連続的にログされ、この信号はプロセス制御システム106に送られ、このプロセス制御システム106は同時に、炉の回転速度、およびノズル18から噴射されるガスの速度を表すデータを受信する。また、プロセス制御システムは、処理すべき材料のタイプでプログラミングすることができ、プログラムした値および/または受信した信号に応じて、還流ガスの温度、酸素レベル、還流ガス速度、および回転炉の回転速度を含むさまざまな動作パラメータを調整する。脱被覆の終了時間を制御するために、回転炉に入る還流ガスと回転炉から出て行くガスは共に、ガス分析計19によって閉回路内で監視され、このガス分析計は、酸素レベルおよびCOレベルの両方を記録する。さらに、制御システム106は同時に、酸化装置31の温度を制御するようにバーナ6を制御することもできる。
【0039】
プロセス制御システムは、処理サイクル、および受信信号に基づく脱被覆サイクルの終端を制御する。
【0040】
回転傾動脱被覆炉は、炉の中に金属スクラップおよび/または有機物を投入することができるように標準の装入機24を使用する。この動作中、炉1の回転は停止され、扉11が開かれ、炉は後方に傾動されて、スクラップを、装入しかつ炉の遠端部に向かっておよび炉後壁27に向かって押すことができる。炉が前方に傾動されて装入ビンまたは別個の捕集システムの中に脱被覆スクラップを空にすること以外は、同じ手順が排出動作中に行われる。
【0041】
次に、図8および図9を参照して、これらは、図1から図7の装置の改変を示すものであり、同じ部品には同じ参照番号が与えられている。
【0042】
図8および図9から理解できるように、この実施形態と図1から図7の実施形態との間の主な相違点は、戻りダクト3が省略されていることである。
【0043】
他のすべての点では、図8および図9の装置は、図1から図7の装置と同様な方法で動作する。
【0044】
上で説明した装置は、傾動回転炉にバーナを使用せず、金属スクラップを溶解せず、金属スクラップの融解温度よりも低い、通常、1400°F未満で動作するだけである。図1の実施形態は、化学量論的レベル(より詳細には、酸素について12重量%未満)よりも低い酸素含有量を有する再循環ガスを使用して傾動回転炉の有機物を部分的に燃焼する。ガス化された有機物は、煙道によって炉を離れて、煙道ガスの中に空気を全く混入することができない完全な閉回路の中にある。これらの有機物入りのガス(合成ガス)は、化学量論的バーナが天然ガスまたは液体燃料を使用して合成ガスを点火する別個の熱酸化装置内で完全に焼却され、あるいは、合成ガスはバーナによって部分的に酸化され、この合成ガスの他の部分は、収集され、さらなる使用のために貯蔵される。このシステムは、いつ有機物が完全にガス化され、金属スクラップが完全にクリーンになるか識別する。
【0045】
いかなる実施形態のいかなる特徴も、他のいかなる実施形態にも使用できることが理解されよう。
【符号の説明】
【0046】
1 炉
2 排気ダクト、通路手段
3 戻りダクト、通路手段
4 ガス調整装置
5 耐火材料
6 バーナ
7 出口ダクト
8 ガス調整装置
9 バグハウス、セパレータ
10 排気手段(煙突)
11 炉扉
12 ドアシール機構
13 テーパ部分
14 材料
15 炉筒
16 内部雰囲気
17 入り口
18 高速ノズル
19 ガス分析計
20 サンプリング手段
21 サンプリング手段
22 回転気密フランジ
23 回転気密フランジ
24 装入機
25 駆動機構
26 IDファン、送風機
27 炉後壁
28 開口または孔
29 開口または孔
30 外部雰囲気
31 熱酸化装置
32 油圧システム
100 装置
102 旋回軸
104 長手方向軸
106 プロセス制御システム、制御手段
108 センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマス、産業廃棄物、都市ごみ、およびスラッジを含む有機被覆廃棄物ならびに有機材料などの材料を処理するための装置であって、
本体部分(15)、単一の材料入り口点(11)、および炉の前記入り口点と前記本体部分との間のテーパ部分(13)を有する回転可能かつ傾動可能な炉(1)と、
その長手方向軸の周りに前記炉(1)を回転させるための手段(25)と、
前記炉を傾動させるための手段(32、102)と、
前記材料を処理することによって放出されるガスの中の揮発性有機化合物(VOC)を少なくとも部分的に酸化させるための酸化手段(6、31)と、
前記炉(1)から前記酸化手段(6、31)に前記ガスを導くための通路手段(2)と、
を含み、
前記通路手段(2)が、前記炉および前記バーナに対して密封されて、それによって外部空気の侵入を阻止することを特徴とする装置。
【請求項2】
前記酸化手段(6、31)がマルチバーナを備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記通路手段(2)にガス分析計手段(19、21)をさらに備え、前記ガス中の酸素および一酸化炭素のレベルを監視し、各レベルを示す信号を提供することを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記炉の温度ならびに前記酸化手段(6、31)を制御するための制御手段(106)をさらに備えることを特徴とする請求項1、2、または3に記載の装置。
【請求項5】
前記炉(1)が、前記炉の選択されたパラメータを監視し、それを示す信号を生成するための複数のセンサを有し、
前記制御手段(106)が、前記信号に応じて前記炉ならびに前記酸化手段(6、31)のうちの少なくとも1つの動作を制御するように作動可能であることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記センサが、熱センサ、ガス分析計、および圧力センサを含むことを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記制御手段が、金属スクラップの融解温度よりも低いレベルに、かつ前記廃棄物または前記金属スクラップ中の有機物をガス化するのに十分な温度において前記回転炉の温度を制御するように作動可能であることを特徴とする請求項3から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記制御手段が、1400°Fよりも低いレベルに前記回転炉の温度を制御するように作動可能であることを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記制御手段(106)が、前記炉の酸素レベルを2重量%と12重量%との間に制御するように作動可能であることを特徴とする請求項4から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記制御手段(106)が、前記酸化手段の酸素レベルを2重量%と12重量%との間に制御するように作動可能であることを特徴とする請求項4から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記制御手段(106)が、2400°Fよりも低いレベルにおいて前記酸化手段の温度を制御するように作動可能であることを特徴とする請求項4から10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
ガスから微粒子を分離するためのセパレータ(9)に前記酸化手段(6、31)から前記ガスを導くための通路手段(7)をさらに備えることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記酸化手段(6、31)から前記セパレータ(9)に排出するガスの温度を制御するための調整手段(8)をさらに含むことを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記酸化手段(6、31)から前記炉(1)に高温ガスを導き、それによって前記炉の材料の加熱を助けるための通路手段(3)をさらに含むことを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記還流ガス中の酸素および一酸化炭素のレベルを監視し、各レベルを示す信号を提供するために前記通路手段(3)にガス分析計手段(19、20)をさらに備えることを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記酸化手段(6、31)から前記炉(1)に排出する還流ガスの温度を制御するための調整手段(4)をさらに備えることを特徴とする請求項14または15に記載の装置。
【請求項17】
バイオマス、産業廃棄物、都市ごみ、およびスラッジを含む有機被覆廃棄物ならびに有機材料などの材料を処理するための方法であって、
本体部分(15)、単一の材料入り口点(11)、および炉の前記入り口点と前記本体部分との間のテーパ部分(13)を有する回転可能かつ傾動可能な炉(1)を設けるステップと、
その長手方向軸の周りに前記炉(1)を回転させるステップと、
前記材料を前記炉に導くステップと、
前記有機材料を焼き切って、揮発性有機化合物(VOC)を含むガスを発生する温度に前記材料を加熱するステップと、
前記プロセス中に化学量論的当量レベルより低く前記炉の酸素レベルを維持するステップと、
熱酸化装置に至るまで炉から排出される前記ガスから外部空気を除外するための密閉回路である通路手段(2)を通して、前記揮発性有機化合物(VOC)を焼却するために酸化手段(31)に前記ガスを通すステップと、
効率のよい動作のために、選択されたレベルに前記炉および前記酸化手段(31)内部のそれぞれの温度を維持するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
前記酸化手段が、熱酸化装置であることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記熱酸化装置が、マルチバーナを備えることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記通路手段(2)の前記ガス中の酸素および一酸化炭素のレベルを監視し、該酸素および一酸化炭素のレベルに応じて前記炉(1)の動作を制御するステップをさらに含むことを特徴とする請求項17または18に記載の方法。
【請求項21】
前記通路手段(2)の前記ガス中の酸素および一酸化炭素のレベルを監視し、該酸素および一酸化炭素のレベルに応じて前記酸化手段(31)の動作を制御するステップをさらに含むことを特徴とする請求項17、18、または19に記載の方法。
【請求項22】
前記炉の選択されたパラメータを監視し、それに応じて前記炉(1)ならびに前記酸化手段(6、31)のうちの少なくとも1つの動作を制御するステップをさらに含むことを特徴とする請求項17から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
センサを含めた前記パラメータが、温度、ガス酸素含有量および一酸化炭素含有量、ならびに圧力を含むことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記回転炉の温度が、金属スクラップの融解温度よりも低いレベルに、かつ前記廃棄物または前記金属スクラップ中の有機物をガス化するのに十分な温度において制御されることを特徴とする請求項17から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記回転炉の温度が、1400°Fよりも低いレベルに制御されることを特徴とする請求項17から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記炉の酸素レベルが、2重量%と12重量%との間に制御されることを特徴とする請求項17から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記酸化手段の酸素レベルが、2重量%と12重量%との間に制御されることを特徴とする請求項17から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記酸化手段の温度が、2400°Fまたはそれ以下であることを特徴とする請求項17から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
ガスから微粒子を分離するためのセパレータ(9)に前記酸化手段(6、31)から前記ガスを導くステップをさらに含むことを特徴とする請求項17から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記酸化手段(6、31)から前記セパレータ(9)に排出するガスの温度を制御するステップをさらに含むことを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記酸化手段(6、31)から前記炉(1)に高温ガスを導き、それによって前記炉内の材料の加熱を助けるステップをさらに含むことを特徴とする請求項17から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記炉(1)に帰還される前記ガス中の酸素および一酸化炭素のレベルを監視し、該酸素および一酸化炭素のレベルに応じて前記炉ならびに前記酸化手段(6、31)のうちの少なくとも1つの動作を制御するステップをさらに含むことを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記酸化手段(6、31)から前記炉(1)に排出する還流ガスの温度を制御するステップをさらに含むことを特徴とする請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
前記炉に生成されるガスが、前記炉から密封閉回路に排出され、前記酸化手段より以前に酸素を前記流れの中に全く混入することができないことを特徴とする請求項17から33のいずれか一項に記載の方法。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−523934(P2010−523934A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−502607(P2010−502607)
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際出願番号】PCT/IB2008/001751
【国際公開番号】WO2008/122896
【国際公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(509283683)
【Fターム(参考)】