説明

炊飯器

【課題】ご飯の乾燥を伴わずに糊化を促進でき、しかもユーザが余分な作業をする必要がない炊飯器を提供することを目的とする。
【解決手段】蒸気の吸着モードと脱着モードを有する蒸気吸脱着ユニット6とを備え、この蒸気吸脱着ユニット6は、空気中の水分を凝縮して保持する吸湿性材料層7と、この吸湿性材料層7を加熱する吸湿性材料層加熱手段8と、鍋2と連通した蒸気排気口11と、送風機13とを有し、吸着モード時は吸湿性材料層加熱手段8を非加熱状態とし送風機13により吸湿性材料層7に送風し、脱着モード時には吸湿性材料層加熱手段8を加熱状態とし蒸気を鍋2内に投入するようにした。これにより、高温の蒸気を炊きあげ終了後すぐに供給してご飯の糊化を促進させることができ、鍋2内全体にわたってご飯の食味を向上することができる。またユーザが余分な手入れや作業を行う必要をなくすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温の蒸気を供給して糊化を促進させ、ご飯の食味を向上させる炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的な家庭用の炊飯器においては、鍋底部に配置した、鍋内の米と水を加熱するための鍋加熱手段が主な加熱手段である。ご飯をおいしく炊くためには、米の澱粉を十分に糊化させることが重要である。特に、追い炊き時に高温で米を加熱することで澱粉の糊化が進み、ご飯の甘みおよび香りが増す。しかし、追い炊き時には水がほぼ無くなった状態であるため、鍋加熱手段による加熱を継続すると、鍋底付近のご飯が焦げてしまうため、加熱を弱めざるを得なかった。
【0003】
したがって、鍋加熱手段による加熱に加えて、鍋上方から蒸気を鍋内に投入し米飯および水の加熱を行うことにより、糊化を促進させ、ご飯の食味を向上させる炊飯器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
これは、図4に示すように、炊飯器本体91内の鍋加熱手段94上に鍋92が着脱自在に内装され、鍋92の上面を開閉自在に蓋93で覆っている。また、炊飯器本体91には、蒸気発生手段95が設けられ、これは水タンク96と水タンク加熱手段97とを有する。そして、水タンク96内の水は水タンク加熱手段97により加熱されて沸騰し、発生した水蒸気は、蒸気管98を通って蒸気孔99から鍋92に投入される。この炊飯器は、上層のご飯を乾燥させることなく、鍋92内に温度の高い蒸気を炊きあげ終了後すぐに供給して糊化を促進させるので、ご飯の食味を向上することができる。
【特許文献1】特開2003−144308号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の構成では、ユーザは洗米した米と計量した水とを鍋92に入れ、その鍋92を炊飯器本体91の所定の位置にセットするという一般的な炊飯準備作業に加えて、水タンク96に所定量の水を入れ、水タンク96を炊飯器本体91の所定の位置にセットする、という新たな作業を行う必要があった。更に、水タンク96というこれまでの炊飯器には存在しなかった部品を有するため、ユーザが掃除を行うべき部品点数が多かった。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、ご飯の乾燥を伴わずに糊化を促進でき、しかもユーザが余分な作業をする必要がない炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明の炊飯器は、蒸気の吸着モードと脱着モードを有する蒸気吸脱着ユニットとを備え、この蒸気吸脱着ユニットは、空気中の水分を凝縮して保持する吸湿性材料層と、この吸湿性材料層を加熱する吸湿性材料層加熱手段と、鍋への蒸気投入口と連通した蒸気排気口と、送風機とを有し、吸着モード時は吸湿性材料層加熱手段を非加熱状態とし送風機により吸湿性材料層に送風し、脱着モード時には吸湿性材料層加熱手段を加熱状態とし蒸気排気口から蒸気投入口を通して蒸気を鍋内に投入するようにしたものである。
【0008】
これにより、高温の蒸気を炊きあげ終了後すぐに供給してご飯の糊化を促進させることができ、鍋内全体にわたってご飯の食味を向上することができるとともに、ユーザが余分な手入れや作業を行う必要をなくすことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の炊飯器は、鍋内に高温蒸気を投入しご飯の乾燥を伴わずに糊化を促進でき、しかもユーザが余分な作業をする必要がないという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
第1の発明は、上面が開口した本体と、前記本体内に着脱自在に収納される鍋と、前記本体を開閉自在に覆う蓋と、前記鍋を加熱する鍋加熱手段と、蒸気の吸着モードと脱着モードを有する蒸気吸脱着ユニットとを備え、前記蒸気吸脱着ユニットは、空気中の水分を凝縮して保持する吸湿性材料層と、この吸湿性材料層を加熱する吸湿性材料層加熱手段と、前記鍋への蒸気投入口と連通した蒸気排気口と、送風機とを有し、吸着モード時は吸湿性材料層加熱手段を非加熱状態とし送風機により吸湿性材料層に送風し、脱着モード時には吸湿性材料層加熱手段を加熱状態とし蒸気排気口から蒸気投入口を通して蒸気を鍋内に投入するようにした炊飯器とすることにより、高温の蒸気を炊きあげ終了後すぐに供給してご飯の糊化を促進させることができ、鍋内全体にわたってご飯の食味を向上することができるとともに、ユーザが余分な手入れや作業を行う必要をなくすことができる。
【0011】
第2の発明は、特に、第1の発明において、蒸気吸脱着ユニットは、吸湿性材料層の下流に設けられ本体外に連通した排気口の開閉を行う排気風路切り替え手段を有し、この排気風路切り替え手段により吸着モードと脱着モードを切り替えるようにしたことにより、排気風路切り替え手段の切り替えにより、前炊き〜炊き上げ工程(前炊き−炊き上げ−沸騰維持−蒸らしの各炊飯工程)および保温中に空気中の水分をより効率的に吸湿性材料層に凝縮して保持し、炊きあげ終了後すぐに吸湿性材料層を加熱し鍋内に温度の高い蒸気を投入することができ、ご飯の糊化を促進させ、鍋内全体にわたってご飯の食味を向上することができる。またユーザが手入れを行う部品の点数が、一般的な炊飯器と同じであり、ユーザは新たな手入れ作業を行う必要がないものである。
【0012】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明において、蒸気吸脱着ユニットを2組以上有し、吸着モードと脱着モードの動作を交互に行い蒸気を生成するようにしたことにより、一方の吸湿性材料層に送風機で送風し空気中の水分を吸着させている時には、他方の吸湿性材料層を吸湿性材料層加熱手段で加熱し蒸気を生成させ、常時一定量の蒸気を鍋内に投入することができ、例えば、硬く炊ける性質の米の炊飯時にも蒸気量が不足するなどの問題を解消することができるものである。
【0013】
第4の発明は、特に、第1〜第3のいずれか1つの発明において、吸湿性材料層を通過した空気の相対湿度を検知する蒸気温度/湿度検知手段を有し、脱着モード時には吸湿性材料層加熱手段を加熱状態とし排気風路切り替え手段を閉じ、蒸気温度/湿度検知手段の測定相対湿度が設定値より低くなったことを検知すると、排気風路切り替え手段を開き吸湿性材料層に送風するようにしたことにより、鍋内に投入される蒸気の量が増減することなく一定量を供給することができ、安定してご飯の糊化を促進させることができ、鍋内全体にわたってご飯の食味を向上することができるものである。
【0014】
第5の発明は、特に、第1〜第4のいずれか1つの発明において、鍋内の空気の相対湿度を検知する鍋内温度/湿度検知手段を有し、保温中に鍋内温度/湿度検知手段の測定相対湿度が設定値より高くなったことを検知すると、鍋内の空気を吸湿性材料層に送って蒸気を凝縮して保持し、鍋内温度/湿度検知手段の測定相対湿度が下限設定値より低くなったことを検知すると、吸湿性材料層加熱手段を加熱状態とし蒸気投入口から蒸気を投入するようにしたことにより、保温中に発生した蒸気が鍋側面などに結露しご飯の表面を白化させたり、白化防止のために鍋側面などを加熱したりすることなく、長時間保温のご飯も炊き上げ直後と遜色のない食味を保持することができるものである。
【0015】
第6の発明は、特に、第1〜第5のいずれか1つの発明において、蒸らし工程において鍋内に蒸気が投入されるようにしたことにより、ご飯を焦がすことなく高温で米を加熱でき、澱粉の糊化が進み、おいしいご飯を炊くことができるものである。
【0016】
第7の発明は、特に、第1〜第6のいずれか1つの発明において、炊飯を行う米の性質に応じて鍋内に投入する蒸気の量を変化させるようにしたことにより、炊飯を行う米が柔らかく炊ける性質の米か、硬く炊ける性質の米かによって、鍋内に投入する蒸気の量を変化させるので、米の性質に合わせて最適な炊飯を行うことができる。蒸気の量は、吸湿性材料層の容積、蒸気の投入時間によって制御できるものである。
【0017】
第8の発明は、特に、第1〜第7のいずれか1つの発明において、吸湿性材料層は吸湿性繊維、吸湿性樹脂、ゼオライト、シリカゲル、活性アルミナのうち少なくとも1つを有することにより、水分の吸脱着性能を高くすることができるものである。
【0018】
第9の発明は、特に、第1〜第8のいずれか1つの発明において、吸湿性材料層に脱臭機能を有する物質が添加されてなることにより、保温時に発生するご飯の嫌な臭いを抑えることができるものである。
【0019】
第10の発明は、特に、第1〜第9のいずれか1つの発明において、吸湿性材料層は、吸湿性繊維、吸湿性樹脂、ゼオライト、シリカゲル、活性アルミナおよび脱臭機能を有する物質のうち少なくとも1つをハニカム構造体から成る基材の表面に形成してなることにより、水分の吸脱着量および吸脱着効率を高くすることができる。
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0021】
(実施の形態1)
図1、図2は、本発明の実施の形態1における炊飯器を示したものである。
【0022】
図1に示すように、上面が開口した炊飯器の本体1は、その内部に着脱自在に鍋2を収納する。本体1には、その上面を覆う蓋3が開閉自在に配設されている。本実施の形態の炊飯器は、後述する方法で鍋2を誘導加熱し、鍋2内の米と水を加熱調理する。本体1は、鍋2の底部を誘導加熱する鍋加熱手段4(誘導加熱コイルである)、鍋2の温度を検知する鍋温度検知手段5、蒸気の吸着モードと脱着モードを有する蒸気吸脱着ユニット6、蒸気温度/湿度検知手段14、および制御手段70を有する。
【0023】
蓋3は、更に、鍋2の開口部を覆う加熱板15、加熱板15を誘導加熱する加熱板加熱手段16(誘導加熱コイルである)、加熱板15の温度を検知する加熱板温度検知手段17、鍋内温度/湿度検知手段18、蒸気吸脱着ユニット6で発生した蒸気を鍋2内に導くための蒸気導入通路19を有する。
【0024】
蒸気吸脱着ユニット6は、空気中の水分を凝縮して保持する吸湿性材料層7、吸湿性材料層7を加熱する吸湿性材料層加熱手段8、空気を取り入れる吸気口9、吸湿性材料層7の下流に設けられ吸湿性材料層7を通過した空気を本体1外に排出する排気口10、鍋2への蒸気投入口(後記)と連通した蒸気排気口11、排気口10を開閉して吸着モードと脱着モードを切り替える排気風路切り替え手段12、吸湿性材料層7へ送風する送風機13を有する。そして、吸着モード時は吸湿性材料層加熱手段8を非加熱状態とし送風機13により吸湿性材料層7に送風し、脱着モード時には吸湿性材料層加熱手段8を加熱状態とし蒸気排気口11から蒸気投入口を通して蒸気を鍋2内に投入するようにしている。
【0025】
吸湿性材料層7はゼオライトとバインダを混練してスラリー状としたものをセラミックハニカムに担持し焼成したものを用いた。
【0026】
蒸気温度/湿度検知手段14は、吸湿性材料層7を通過した空気の相対湿度を検知するものである。そして、測定相対湿度が設定値より高い脱着モード時には吸湿性材料層加熱手段8を加熱状態とし排気風路切り替え手段12で排気口10を閉じ(図2(a))、測定相対湿度が設定値より低くなったことを検知すると、排気風路切り替え手段12は排気口10を開き(図2(b))、吸湿性材料層7に送風するようにする。
【0027】
また、前記蓋3の下面には、加熱板シールパッキン20が付いた着脱式の加熱板15が取り付けられている。加熱板15は、その中心部に鍋2内の蒸気を排出する蒸気孔21を設けているとともに、中心部より外れた位置に蒸気投入口22を有する。この蒸気投入口22は、蒸気吸脱着ユニット6の蒸気排気口11と蒸気導入通路19を介して連通しており、蒸気吸脱着ユニット6で生成した蒸気をこの蒸気投入口22から鍋2へ投入するものである。
【0028】
加熱板15には加熱板温度検知手段17が圧接されており、加熱板15の温度検知をしている。さらに、加熱板15にはこれを貫通し鍋2内に露出した状態で鍋内温度/湿度検知手段18が設置されている。この鍋内温度/湿度検知手段18は、鍋2内の空気の相対湿度を検知するものであり、炊飯保温中にこの鍋内温度/湿度検知手段18の測定相対湿度が設定値より高くなったことを検知すると、鍋2内の空気を吸湿性材料層7に送って蒸気を凝縮して保持し、鍋内温度/湿度検知手段18の測定相対湿度が下限設定値より低くなったことを検知すると、吸湿性材料層加熱手段8を加熱状態とし蒸気投入口22から鍋2内に蒸気を投入する。
【0029】
蓋3下面の中心部の蒸気孔21と対向する部分には、蒸気孔23および蓋シールパッキン24が設けられ、鍋2内の蒸気を外部に排出するようになっている。
【0030】
制御手段70は、回路基板(図示しない)に搭載されたマイクロコンピュータを有する。制御手段70(マイクロコンピュータ)はソフトウエアにより、ユーザが操作パネル(図示しない)を介して入力する操作指令と、鍋温度検知手段5、蒸気温度/湿度検知手段14、加熱板温度検知手段17および鍋内温度/湿度検知手段18から入力される信号に基づき、あらかじめ記憶された炊飯プログラムにより、鍋2、加熱板15、吸湿性材料層加熱手段8の加熱制御を行う。制御手段70は、鍋加熱手段4、加熱板加熱手段16、吸湿性材料層加熱手段8の加熱量を、各加熱手段の通電率および/または通電量によって制御する。
【0031】
次に、以上のように構成された炊飯器の炊飯工程における動作を説明する。
【0032】
ユーザが、炊飯を行う米とその米量に対応する水とを鍋2に入れ、本体1に内装する。更にユーザが炊飯開始スイッチ(図示しない)を操作すると、炊飯工程が実施される。炊飯工程は、時間順に前炊き、炊き上げ、沸騰維持、蒸らしに大分される。前炊き工程において、鍋2の温度が米の吸水に適した温度(50℃)になるように鍋加熱手段4を制御し、鍋2内の米と水とを加熱する。次に、炊き上げ工程において、鍋2の温度が所定値(100℃)になるまで鍋加熱手段4によって鍋2を所定の熱量で加熱する。この時の温度上昇速度によって、炊飯量を判定する。沸騰維持工程において、鍋2の水が無くなり、鍋2の温度が100℃を超えた所定値になるまで、鍋加熱手段4および加熱板加熱手段16に通電し、米と水を加熱する。
【0033】
前炊き、炊き上げ、沸騰維持の各工程において、蒸気吸脱着ユニット6は吸着モードとなり、図2(a)に示すように、制御手段70は排気風路切り替え手段12を動作し蒸気排気口11を閉じ、送風機13により吸気口9から取り入れられた空気中の水分は吸湿性材料層7に吸着され、除湿された空気は排気口10から排出される。
【0034】
最後に蒸らし工程において、一定時間の間に複数回、炊飯量に応じた鍋加熱手段4および加熱板加熱手段16による加熱(追い炊き)と加熱の停止(休止)を繰り返す。蒸らし工程では、蒸気吸脱着ユニット6は脱着モードとなり、図2(b)に示すように、制御手段70は排気風路切り替え手段12を動作し排気口10を閉じ、吸湿性材料層加熱手段8に通電し吸湿性材料層7に保持されていた水が脱離する温度まで加熱される。その結果、発生した蒸気は、蒸気排気口11から蒸気導入通路19に流入し蒸気投入口22から鍋2内に供給される。水蒸気は細かい粒子となって鍋2内の米の隙間を通り鍋2の下部まで行き渡り、米の一粒一粒を包み込む。従って、ご飯の温度が高温に保たれ糊化が進み、ご飯の甘みおよび香りが増し、鍋2内全体にわたってご飯の食味を向上することができる。蒸気を供給しながら、鍋加熱手段4および加熱板加熱手段16による追い炊き加熱を行うので、ご飯の乾燥と焦げを抑えることができる。
【0035】
また、ユーザは炊飯開始前に、炊飯器の操作パネル(図示しない)を操作し、炊飯する米の銘柄を制御手段70に指定できる。制御手段70は指定された銘柄が、柔らかく炊ける性質の米(魚沼産コシヒカリ、宮城産ササニシキなど)か、標準的な性質の米(一般のコシヒカリ、ササニシキ、夏場の魚沼産コシヒカリ、新米のきらら397など)か、硬く炊ける性質の米(きらら397、夏場のコシヒカリ、ササニシキなど)か、を判断し、蒸らし工程における高温蒸気の投入時間(すなわち、高温蒸気の投入量)を制御する。制御手段70は蒸らし工程において、柔らかく炊ける性質の米の場合は、高温蒸気を3分間鍋2に供給し、標準的な性質の米の場合は、高温蒸気を5分間鍋2に供給し、硬く炊ける性質の米の場合は、高温蒸気を8分間鍋2に供給することにより、米の性質に合わせて最適な炊飯が行える。制御手段70は、高温蒸気を所定時間、鍋2に供給した後、排気風路切り替え手段12を動作し蒸気排気口11を閉じ、吸湿性材料層7に保持されていた水を全て蒸発させ排気口10から排出する。吸湿性材料層9に保持されていた水が全て蒸発すると、吸湿性材料層7の下流側の相対湿度が所定値(例えば、95%RH)を下回り、蒸気温度/湿度検知手段14は、吸湿性材料層7の下流側の相対湿度が所定値より低くなったことを検知し、吸湿性材料層加熱手段8への通電を止める。
【0036】
なお、蒸気の投入時間に代えて、吸湿性材料層7の容積を米の性質に応じて変化させることによって、蒸気の投入量を変化させる構成としても良い。
【0037】
本実施の形態の炊飯器は、ユーザに、洗米した米と計量した水とを鍋2に入れ、その鍋2を炊飯器の本体1の所定位置にセットするという一般的な炊飯準備作業以外の炊飯準備作業を強いずに、鍋2内に蒸気を投入しご飯の乾燥を伴わずに糊化を促進できる。ユーザが手入れを行う部品の点数が、一般的な炊飯器と同じであり、ユーザは新たな手入れ作業を行う必要がない。
【0038】
なお、蒸気を鍋2内に投入する時に、加熱板15の温度を100℃以上に加熱しておけば、蒸気温度をより高温にし、よりおいしいご飯を炊くことができる。
【0039】
また、保温中に鍋内温度/湿度検知手段18の測定相対湿度が上限設定値(例えば、95%RH)より高くなったことを検知すると、制御手段70は排気風路切り替え手段12を動作し排気口10を閉じると同時に送風機13を動作させ鍋2内の空気を吸湿性材料層7に送風し蒸気を凝縮して保持し、逆に鍋内温度/湿度検知手段18の測定相対湿度が下限設定値より低く(例えば、95%RH)なったことを検知すると、吸湿性材料層加熱手段8を加熱状態とし蒸気投入口22から蒸気を投入するようにすることで、保温中に発生した蒸気が鍋2側面や加熱板15に結露しご飯の表面を白化させたり、白化防止のために鍋2側面や加熱板15を加熱することによりご飯表面が乾燥し黄ばんだり硬くなるなどといった保温中のご飯の食味を低下させる要因を解決し、長時間保温のご飯も炊き上げ直後と遜色のない食味を保持することができる。
【0040】
また、炊飯時の蒸気の回収手段として吸湿性材料層7を用いることで、水分の吸着熱として一部蓄熱される。この保持された水分と熱は炊飯終了後の保温時におけるご飯表面からの水分蒸発をなくし、保温時におけるご飯のぱさつきを軽減させる効果がある。本実施の形態では、ゼオライトをセラミックハニカムに担持して吸湿性材料層7としたが、吸湿性繊維、吸湿性樹脂、シリカゲル、活性アルミナを用いても吸湿量を確保できるものである。例えば、吸湿量をより重視する場合には吸湿性樹脂を用い、蓄熱も重視したい場合にはセラミックハニカムにゼオライトやシリカゲルなどのセラミックスを担持して用いればよい。また、両者を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
また、吸湿性材料層7に吸湿材料と脱臭作用を有する材料、例えば、活性炭を添加するか、あるいは保水性材料自体に脱臭作用を有するもの、例えば、活性炭含有化学繊維などにより構成することにより、保温時の嫌な臭いを除去することができる。
【0042】
なお、吸湿性材料層7は、吸湿性繊維、吸湿性樹脂、ゼオライト、シリカゲル、活性アルミナおよび脱臭機能を有する物質のうち少なくとも1つをハニカム構造体から成る基材の表面に形成してなるものである。
【0043】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2における炊飯器の蒸気吸脱着ユニットを示したものである。本実施の形態においては、蒸気吸脱着ユニットを2組有する以外は実施の形態1と同様であり、同じ部分には共通の符号を使用し、説明を省略する。
【0044】
本実施の形態の炊飯器は、2組の蒸気吸脱着ユニット36a、36bを有している。蒸気吸脱着ユニット36aは、吸湿性材料層37a、吸湿性材料層加熱手段38a、吸気口39a、排気口40a、蒸気排気口41a、排気風路切り替え手段42a、送風機43aから構成され、蒸気吸脱着ユニット36bは、吸湿性材料層37b、吸湿性材料層加熱手段38b、吸気口39b、排気口40b、蒸気排気口41b、排気風路切り替え手段42b、送風機43bから構成されている。また、蒸気吸脱着ユニット36a、36bは、蒸気温度/湿度検知手段44a、蒸気温度/湿度検知手段44bを有する。
【0045】
以上のように構成された炊飯器の炊飯工程における動作を説明する。
【0046】
ユーザが、炊飯を行う米とその米量に対応する水とを鍋2に入れ、本体1に内装する。更にユーザが炊飯開始スイッチ(図示しない)を操作すると、炊飯工程が実施される。前炊き、炊き上げ、沸騰維持の各工程において、本実施の形態の炊飯器は実施の形態1の炊飯器と同様に、鍋2内の米と水とを加熱調理する。また、前炊き、炊き上げ、沸騰維持の各工程において、蒸気吸脱着ユニット36a、36bは吸着モードとなり、図3に示すように、制御手段70(図示しない)は排気風路切り替え手段42a、42bを動作し蒸気排気口41a、41bを閉じ、送風機43a、43bにより吸気口39a、39bから取り入れられた空気中の水分は吸湿性材料層37a、37bに吸着され、除湿された空気は排気口40a、40bから排出される。
【0047】
最後に蒸らし工程において、一定時間の間に複数回、炊飯量に応じた鍋加熱手段4による加熱(追い炊き)と加熱の停止(休止)を繰り返す。制御手段70は排気風路切り替え手段42aを動作し排気口40aを閉じ、吸湿性材料層加熱手段38aに通電し吸湿性材料層37aに保持されていた水が脱離する温度まで加熱される。その結果、発生した蒸気は、蒸気排気口41aから蒸気導入通路19に流入し蒸気投入口22から鍋2内に供給される。その後、蒸気温度/湿度検知手段44aが吸湿性材料層37a下流側の温度/湿度から求められる設定値より低い相対湿度(例えば、95%RH)を検知すると、制御手段70(図示しない)は排気風路切り替え手段42aを動作し蒸気排気口41aを閉じ、送風機43aにより吸気口39aから取り入れられた空気中の水分は吸湿性材料層37aに吸着され、除湿された空気は排気口40aから排出される。同時に、制御手段70は排気風路切り替え手段42bを動作し排気口40bを閉じ、吸湿性材料層加熱手段38bに通電し吸湿性材料層37bに保持されていた水が脱離する温度まで加熱される。その結果、発生した蒸気は、蒸気排気口41bから蒸気導入通路19に流入し蒸気投入口22から鍋2内に供給される。その後、蒸気温度/湿度検知手段44bが吸湿性材料層37b下流側空気の温度/湿度から求められる設定値より低い相対湿度(例えば、95%RH)を検知すると、制御手段70(図示しない)は排気風路切り替え手段42bを動作し蒸気排気口41bを閉じ、送風機43bにより吸気口39bから取り入れられた空気中の水分は吸湿性材料層37bに吸着され、除湿された空気は排気口40bから排出される。
【0048】
以上の動作を交互に行うことで、常時一定量の蒸気を鍋2内に投入することができる。従って、安定してご飯の温度が高温に保たれ糊化が進み、よりご飯の甘みおよび香りが増す。高温蒸気を供給しながら、鍋加熱手段4および加熱板加熱手段16による追い炊き加熱を行うので、ご飯の乾燥と焦げを抑えることができる。
【0049】
ユーザは炊飯開始前に、炊飯器の操作パネル(図示しない)を操作し、炊飯する米の銘柄を制御手段70に指定できる。制御手段70は指定された銘柄が、柔らかく炊ける性質の米(魚沼産コシヒカリ、宮城産ササニシキなど)か、標準的な性質の米(一般のコシヒカリ、ササニシキ、夏場の魚沼産コシヒカリ、新米のきらら397など)か、硬く炊ける性質の米(きらら397、夏場のコシヒカリ、ササニシキなど)か、を判断し、蒸らし工程における高温蒸気の投入時間(すなわち、高温蒸気の投入量)を制御する。制御手段70は蒸らし工程において、米が、柔らかく炊ける性質の米の場合、高温蒸気を3分間鍋2に供給し、標準的な性質の米の場合、高温蒸気を5分間鍋2に供給し、硬く炊ける性質の米の場合、高温蒸気を8分間鍋2に供給することにより、米の性質に合わせて最適な炊飯を行える。
【0050】
このように、本実施の形態の炊飯器は、吸湿性材料層および吸湿性材料層加熱手段を2組有し、吸着モード時と脱着モード時の動作を交互に行い蒸気を生成することで、一方の吸湿性材料層に送風機で送風し空気中の水分を吸着させている時には、他方の吸湿性材料層を吸湿性材料層加熱手段で加熱し蒸気を生成させることにより、常時一定量の蒸気を鍋内に投入することができ、例えば、硬く炊ける性質の米の炊飯時にも蒸気量が不足するなどの問題を解消することができるものである。
【0051】
また、吸湿性材料層を通過後の空気の温度/湿度を検知する温度/湿度検知手段を有し、設定値より低い相対湿度を検知すると、脱着モードから吸着モードに切り替わるようにすることで、鍋内に投入される蒸気の量が増減することなく一定量を供給することができ、安定してご飯の糊化を促進させることができ、鍋内全体にわたってご飯の食味を向上することができるものである。
【0052】
さらに、洗米した米と計量した水とを鍋2に入れ、その鍋2を炊飯器本体1の所定の位置にセットするという一般的な炊飯準備作業以外の炊飯準備作業をユーザに強いずに、鍋内に蒸気を投入しご飯の乾燥を伴わずに糊化を促進できる。ユーザが手入れを行う部品の点数が、一般的な炊飯器と同じであり、ユーザは新たな手入れ作業を行う必要がない。
【0053】
なお、本実施の形態では、蒸気吸脱着ユニットを2組有する場合について示したが、それ以上有する場合であっても何ら構わないものである。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上のように、本発明にかかる炊飯器は、鍋内に高温蒸気を投入しご飯の乾燥を伴わずに糊化を促進でき、しかもユーザが余分な作業をする必要がないので、家庭用または業務用の炊飯器として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施の形態1における炊飯器の断面図
【図2】(a)同炊飯器における蒸気吸脱着ユニットの吸着モード時の動作断面図(b)同蒸気吸脱着ユニットの脱着モード時の動作断面図
【図3】本発明の実施の形態2における炊飯器の蒸気吸脱着ユニットを示す断面図
【図4】従来の炊飯器の断面図
【符号の説明】
【0056】
1 本体
2 鍋
3 蓋
4 鍋加熱手段
6、36a、36b 蒸気吸脱着ユニット
7、37a、37b 吸湿性材料層
8、38a、38b 吸湿性材料層加熱手段
10、40a、40b 排気口
11、41a、41b 蒸気排気口
12、42a、42b 排気風路切り替え手段
13、43a、43b 送風機
14、44a、44b 蒸気温度/湿度検知手段
18 鍋内温度/湿度検知手段
22 蒸気投入口
70 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が開口した本体と、前記本体内に着脱自在に収納される鍋と、前記本体を開閉自在に覆う蓋と、前記鍋を加熱する鍋加熱手段と、蒸気の吸着モードと脱着モードを有する蒸気吸脱着ユニットとを備え、前記蒸気吸脱着ユニットは、空気中の水分を凝縮して保持する吸湿性材料層と、この吸湿性材料層を加熱する吸湿性材料層加熱手段と、前記鍋への蒸気投入口と連通した蒸気排気口と、送風機とを有し、吸着モード時は吸湿性材料層加熱手段を非加熱状態とし送風機により吸湿性材料層に送風し、脱着モード時には吸湿性材料層加熱手段を加熱状態とし蒸気排気口から蒸気投入口を通して蒸気を鍋内に投入するようにした炊飯器。
【請求項2】
蒸気吸脱着ユニットは、吸湿性材料層の下流に設けられ本体外に連通した排気口の開閉を行う排気風路切り替え手段を有し、この排気風路切り替え手段により吸着モードと脱着モードを切り替えるようにした請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
蒸気吸脱着ユニットを2組以上有し、吸着モードと脱着モードの動作を交互に行い蒸気を生成するようにした請求項1または2に記載の炊飯器。
【請求項4】
吸湿性材料層を通過した空気の相対湿度を検知する蒸気温度/湿度検知手段を有し、脱着モード時には吸湿性材料層加熱手段を加熱状態とし排気風路切り替え手段を閉じ、蒸気温度/湿度検知手段の測定相対湿度が設定値より低くなったことを検知すると、排気風路切り替え手段を開き吸湿性材料層に送風するようにした請求項1〜3のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項5】
鍋内の空気の相対湿度を検知する鍋内温度/湿度検知手段を有し、保温中に鍋内温度/湿度検知手段の測定相対湿度が設定値より高くなったことを検知すると、鍋内の空気を吸湿性材料層に送って蒸気を凝縮して保持し、鍋内温度/湿度検知手段の測定相対湿度が下限設定値より低くなったことを検知すると、吸湿性材料層加熱手段を加熱状態とし蒸気投入口から蒸気を投入するようにした請求項1〜4のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項6】
蒸らし工程において鍋内に蒸気が投入されるようにした請求項1〜5のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項7】
炊飯を行う米の性質に応じて鍋内に投入する蒸気の量を変化させるようにした請求項1〜6のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項8】
吸湿性材料層は吸湿性繊維、吸湿性樹脂、ゼオライト、シリカゲル、活性アルミナのうち少なくとも1つを有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項9】
吸湿性材料層に脱臭機能を有する物質が添加されてなる請求項1〜8のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項10】
吸湿性材料層は、吸湿性繊維、吸湿性樹脂、ゼオライト、シリカゲル、活性アルミナおよび脱臭機能を有する物質のうち少なくとも1つをハニカム構造体から成る基材の表面に形成してなる請求項1〜9のいずれか1項に記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−141593(P2006−141593A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−334114(P2004−334114)
【出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】