説明

炊飯器

【課題】水の沸点以上の蒸気を利用して炊飯性能を向上させる炊飯器において、炊飯中に水タンク内の水の不足を検知すると、加熱を一旦停止して炊飯の進行を停止する。
【解決手段】高温蒸気供給手段4により水タンク3内の水から蒸気を発生させこの蒸気を加熱して鍋1内に供給し、制御手段8が加熱手段2の加熱を停止しているときに再開手段7により再び加熱を開始する。水タンク3の水量を判定する判定手段10は、制御手段8が高温蒸気供給手段4により水タンク3の加熱をしているとき、水タンク温度検知手段5が検知する温度が第1の温度に到達してから第1の温度より高い第2の温度に到達するまでの間計時した時間が所定の時間未満であるときは「水量不十分」と判定するようにし、制御手段8は、判定手段10から「水量不十分」の信号を受けたとき加熱手段2の加熱を停止し、再開手段7からの信号を受けると加熱手段2への加熱を再開するよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水の沸点以上の蒸気を利用して炊飯性能を向上させる炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の炊飯器は、鍋内のご飯と水を加熱するために鍋底部に配置した鍋加熱手段の他、鍋上方の加熱量を増加させるために鍋上方から高温の蒸気を供給するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図7は、特許文献1に記載された従来の炊飯器を示すもので、以下、その構成について説明する。
【0004】
図7に示すように、炊飯器本体11は、磁性体製の鍋1を着脱自在に収納するとともに、磁性体製の水タンク3を着脱自在に収納している。鍋1は米や水を入れるもので、鍋誘導加熱コイル13により誘導加熱される。炊飯器本体11には、その上面を覆う蓋12を開閉自在に設置している。また、炊飯器本体11には、鍋1の温度を検知する鍋温度検知手段14、水タンク3を誘導加熱する水タンク誘導加熱コイル15などを設けている。
【0005】
水タンク3内の水は沸騰することにより蒸気が発生する。水タンク3と鍋1の上面の一部は、蓋12内に設けた蒸気経路16によって接続されている。蒸気経路16の鍋1上面の開口部を蒸気孔17とする。蓋12は、磁性体製の加熱板18と、この加熱板18を誘導加熱する鍋開口部誘導加熱コイル19と、加熱板18の温度を検知する加熱板温度検知手段20とを有している。
【0006】
水タンク3内の水は、炊飯をする際に使用者が適宜供給する。このとき、使用者が水供給を忘れると、炊飯中の蒸気発生不足によりご飯の食味低下の原因となるため、蓋開閉の際や炊飯開始の際にLCDに水タンクの水量確認の注意喚起表示をするように従来の炊飯器では構成している(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−290659号公報
【特許文献2】特開2006−212198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来の構成では、使用者にLCD表示により注意喚起を行っても、使用者が水タンク3内に水供給を行わなければ、蒸気発生不足のまま炊飯が進行してしまい、結局ご飯の食味が低下してしまうという問題を有していた。
【0008】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、炊飯中に水タンク内の水が不足していることを検知すると、加熱を一旦停止して炊飯の進行を停止し、水を補給できるようにして蒸気発生不足で炊飯をするのを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するために、米や水を入れる鍋を加熱手段により加熱し、着脱自在な水タンク内に水を入れ、高温蒸気供給手段により水タンク内の水から蒸気を発生させこの蒸気を加熱して鍋内に供給し、水タンクの温度を水タンク温度検知手段により検知し、加熱手段の加熱開始を要求する開始手段からの信号を受けて加熱手段、高温蒸気供給手段を制御手段により制御し、制御手段が加熱手段の加熱を停止しているときに再開手段
により再び加熱を開始し、水タンクの水量を判定手段により判定するよう構成し、判定手段は、制御手段が高温蒸気供給手段により水タンクの加熱をしているとき、水タンク温度検知手段が検知する温度が第1の温度に到達してから第1の温度より高い第2の温度に到達するまでの間計時した時間が所定の時間以上であるときは「水量十分」と判定し、所定の時間未満であるときは「水量不十分」と判定するようにし、制御手段は、判定手段から「水量不十分」の信号を受けたとき加熱手段の加熱を停止し、再開手段からの信号を受けると加熱手段への加熱を再開するよう構成したものである。
【0010】
これにより、判定手段が「水量不十分」を判定したときは加熱手段による加熱を停止するので、使用者はその間水タンクに水を補給でき、使用者はその後再開手段を操作することで、加熱手段による加熱を再開でき、蒸気発生不足で炊飯をすることを防止することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の炊飯器は、判定手段が「水量不十分」を判定したときは、制御手段は再開手段による信号を受けるまで加熱手段による加熱を停止するので、炊飯の進行を停止することができ、蒸気発生不足で炊飯をすることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
第1の発明は、米や水を入れる鍋と、前記鍋を加熱する加熱手段と、水を入れる着脱自在な水タンクと、前記水タンクを加熱し前記水タンク内の水から蒸気を発生させこの蒸気を加熱し前記鍋内に供給する高温蒸気供給手段と、前記水タンクの温度を検知する水タンク温度検知手段と、前記加熱手段の加熱開始を要求する開始手段と、前記開始手段からの信号を受け前記加熱手段、前記高温蒸気供給手段を制御する制御手段と、前記制御手段が前記加熱手段の加熱を停止しているときに再び加熱を開始させる再開手段と、前記水タンク内の水量を判定する判定手段とを備え、前記判定手段は、前記制御手段が前記高温蒸気供給手段により前記水タンクの加熱をしているとき、前記水タンク温度検知手段が検知する温度が第1の温度に到達してから第1の温度より高い第2の温度に到達するまでの間計時した時間が所定の時間以上であるときは「水量十分」と判定し、所定の時間未満であるときは「水量不十分」と判定するようにし、前記制御手段は、前記判定手段から「水量不十分」の信号を受けたとき前記加熱手段の加熱を停止し、前記再開手段からの信号を受けると前記加熱手段への加熱を再開するよう構成したものであり、判定手段が「水量不十分」を判定したときは、制御手段は再開手段による信号を受けるまで加熱手段による加熱を停止するので、炊飯の進行を停止することができ、蒸気発生不足で炊飯をすることを防止することができる。
【0013】
第2の発明は、上記第1の発明において、再開手段は、開始手段で構成したものであり、再開手段は開始手段で構成してあるので、再開手段のための構成部品は必要なく、部品点数を削減でき、製品を小型化できる。
【0014】
第3の発明は、上記第1の発明において、水タンクの着脱を検知する着脱検知手段を備え、再開手段は、前記着脱検知手段により水タンクの取り外し状態から取り付け状態を検知することで構成したものであり、使用者は水タンクを取り外して水を補給し、水タンクを取り付ける動作をすることで再開手段を自然に構成することができるので、自然な流れで加熱手段への加熱を再開することができる。
【0015】
第4の発明は、上記第1の発明において、音声やブザーにより報知する報知手段を備え、前記報知手段は、判定手段が「水量不十分」の判定をし、制御手段が加熱手段の加熱の停止をしたとき、報知するようにしたものであり、使用者は報知手段からの報知を確認することで、水タンクの水が不足していることを認知することができて、水を補給すること
ができる。
【0016】
第5の発明は、上記第4の発明において、報知手段が報知した後、所定時間内に再開手段により加熱を再開しないときは、再度報知手段により報知するようにしたものであり、例えば使用者は報知手段からの報知を聞き逃しても、所定時間後に再度報知手段が報知するので、水タンクの水が不足していることを認知することができる。
【0017】
第6の発明は、上記第1の発明において、制御手段は、開始手段からの信号を受けたときは、高温蒸気供給手段により水タンクを第2の温度となるまで加熱し、その後炊き上げ時よりも弱い火力で加熱手段を所定時間加熱して鍋内の米を浸漬させ、この浸漬動作の時間は判定手段が水タンク加熱時に「水量不十分」の判定をし、再開手段により加熱を開始するまでの時間に応じて短縮するようにしたものであり、判定手段が「水量不十分」の判定をし、再開手段により加熱を開始するまでの時間に応じて浸漬動作の時間を短縮するので、加熱手段が停止している時間分、炊飯時間が延びるのを防止することができる。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における炊飯器のブロック図を示すものであり、図2は、同炊飯器の断面図を示すものである。
【0020】
図2に示すように、炊飯器本体11は、磁性体製の鍋1を着脱自在に収納するとともに、磁性体製の水タンク3を着脱自在に収納している。鍋1は米や水を入れるもので、鍋誘導加熱コイル13により加熱される。炊飯器本体11には、その上面を覆う蓋12を開閉自在に設置している。また、炊飯器本体11には、鍋1を誘導加熱する鍋誘導加熱コイル13、鍋1の温度を検知する鍋温度検知手段14、水タンク誘導加熱コイル15、水タンク3の着脱を検知する着脱検知スイッチ(着脱検知手段)22、水タンク3の温度を検知するサーミスタ(水タンク温度検知手段)23などを設けている。
【0021】
図1に示す加熱手段2は、鍋誘導加熱コイル13と、図示していないインバータ回路により構成しており、鍋誘導加熱コイル13にンバータ回路から高周波電流を供給することで、火力自在に鍋1を加熱するようにしている。また、水タンク3は、水タンク誘導加熱コイル15と、この水タンク誘導加熱コイル15に高周波電流を供給する図示していないインバータ回路により加熱し、水タンク3内の水は沸騰することにより蒸気が発生する。水タンク3と鍋1の上面の一部は、蓋12内に設けた蒸気経路16によって接続されている。蒸気経路16の鍋1上面の開口部を蒸気孔17とする。
【0022】
蓋12は、さらに、磁性体製の加熱板18と、この加熱版18を加熱する鍋開口部誘導加熱コイル19と、加熱板18の温度を検知する加熱板温度検知手段20とを有している。加熱板温度検知手段20は加熱板18に当設して設けている。
【0023】
水タンク3内で発生した蒸気は蒸気経路16を通って、蒸気孔17より鍋1内へと送られる。図示していないが、蒸気経路16にはヒータを設けており、この蒸気経路16を通過する蒸気は、このヒータにより、120℃を超える温度に加熱されている。このように、水タンク3を加熱する水タンク誘導加熱コイル15と、この水タンク誘導加熱コイル15に高周波電流を供給する図示していないインバータ回路と、蒸気経路16と蒸気孔17とにより、図1に示す高温蒸気供給手段4を構成している。
【0024】
つぎに、図1に示すように、着脱検知手段30は、水タンク3の着脱を検知するもので
、炊飯器本体11に設けた着脱検知スイッチ22により構成している。着脱検知スイッチ22は、マイクロスイッチであり、水タンク3と当接するよう配置しており、水タンク3が炊飯器本体11内に装着されているときはオン信号を出力し、取り外されているときは、オフ信号を出力するようにしている。以下、着脱検知スイッチ22のオン信号を「水タンクあり」、オフ信号を「水タンクなし」と呼ぶこととする。着脱検知スイッチ22の信号は、図示していない制御回路上のマイクロコンピュータ(以下、単にマイクロコンピュータと呼ぶ)に入力するようにしている。
【0025】
水タンク温度検知手段5は、水タンク3の温度を検知(以下、水タンク温度と呼ぶ)するもので、炊飯器本体11に設けたサーミスタ23により構成している。具体的には、水タンク3の温度変化によりサーミスタ23の抵抗値が変化するので、その抵抗変化分を抵抗分圧により電圧値に置き換え、図示していない制御回路上のAD変換器に入力し、このAD変換器の変換結果をマイクロコンピュータが判定することで、温度の検知を行っている。鍋温度検知手段14と加熱板温度検知手段20による温度検知も同様に行っている。
【0026】
開始手段6は、加熱手段2の加熱開始を要求するもので、図示していない制御回路上に配置したスイッチで構成している。このスイッチを使用者が押下することで、マイクロコンピュータに開始要求信号を送るようにしている。
【0027】
再開手段7は、加熱手段2の加熱が停止しているとき、加熱の再開を要求するもので、図示していない制御回路上に配置したスイッチで構成している。このスイッチを使用者が押下することで、マイクロコンピュータに加熱再開要求信号を送るようにしている。
【0028】
制御手段8は、開始手段6からの開始要求信号を受け、加熱手段2と高温蒸気供給手段4を制御している。制御手段8は、図示していない制御回路に実装したROM内蔵のマイクロコンピュータであり、開始手段6からの開始要求を受け、ROM上に記録している炊飯シーケンスの情報に従い、鍋温度検知手段14が検知する温度が所定の温度カーブを描くよう、加熱手段2と高温蒸気供給手段4の制御をしている。制御手段8の実施する炊飯シーケンスには、米に水を吸水させる浸漬工程、強い火力で炊上げる炊上げ工程、鍋温度検知手段14による鍋1のドライアップ検知後に弱い火力で蒸らす蒸らし工程の3工程のほか浸漬工程と炊上げ工程との間に水タンク3内の水温を上昇させる予熱工程により構成され、蒸らし工程終了で炊飯動作を終了し、加熱手段2の加熱を止めるようにしている。このとき、蒸らし工程では、高温蒸気供給手段4により、鍋1の上方に高温の蒸気を投入し、鍋1上部の米の火力不足を補うよう制御している。
【0029】
報知手段9は、音声で報知するもので、図示していないが、スピーカーとこのスピーカーを駆動するアンプ回路で構成している。
【0030】
判定手段10は、水タンク3内の水量を判定するもので、水タンク温度検知手段5と制御手段8の信号を受け、制御手段8が高温蒸気供給手段4により水タンク3の加熱をしているとき、水タンク温度検知手段5が検知する温度が第1の温度に到達してから第1の温度より高い第2の温度に到達するまでの間計時した時間が所定の時間以上であるときは「水量十分」と判定し、所定の時間未満であるときは「水量不十分」と判定するようにし、制御手段8に判定情報を出力するようにしている。この判定手段10は、マイクロコンピュータで実現している。
【0031】
上記構成において制御手段8と判定手段10(マイクロコンピュータ)の動作を図3および図4のフローチャートを参照しながら説明する。
【0032】
図3は制御手段8の動作フローチャートである。まず、ステップS1で、制御手段8は
開始手段6の入力を行い、開始手段6から開始要求信号があれば、ステップS2へ進み炊飯動作を開始する。ステップS2では、炊飯動作の最初として浸漬工程を実施する。浸漬工程は、鍋1内の温度を米の糊化が始まらない程度の比較的高い水温に保ち、米への吸水を促進する。ここでは、鍋温度検知手段14が検知する鍋1の温度が55℃となるように加熱手段2の火力を調整している。そして、続くステップS3で浸漬工程の経過時間を確認し、20分経過したか判定する。20分経過していれば、ステップS4へ進み、経過していなければ、ステップS2へと戻る。このように、ステップS2とステップS3で20分間鍋1の温度を55℃に保つ動作を行う。
【0033】
ステップS4では、予熱工程を実施する。予熱工程は、後の蒸らし工程が開始されたとき、速やかに高温蒸気供給手段4により高温蒸気を鍋1内に供給するため、予め水タンク3内の水温を上昇させておく工程である。ステップS4では、水タンク誘導加熱コイル15に高周波電力を供給して水タンク3を加熱する。続くステップS5で水タンク温度検知手段5による水タンク温度が70℃に到達したかどうか判定し、70℃に到達したならばステップS6に進み、到達していなければステップS4へ戻る。このように、ステップS4とステップS5で、水タンク温度を70℃まで上昇させる動作を行う。
【0034】
ステップS6では、後述する判定手段10からの判定信号を入力し水タンク3内の水量が「水量不十分」かを判定し、「水量不十分」ならばステップS7へ進み、そうでなければ、ステップS9へと進む。ステップS7では、加熱手段2による加熱を停止させる。続くステップS8では、再開手段7から加熱再開要求信号が送られてきたか判定し、加熱再開要求信号があれば、ステップS9へと進む。このように、ステップS6〜ステップS8で予熱工程終了後に判定手段10から「水量不十分」の判定信号を得たときは、再開手段7による加熱再開要求信号がない限り、加熱手段2による加熱を停止し、続く炊上げ工程には進行しないようにしている。
【0035】
ステップS9では、炊上げ工程を実施する。炊上げ工程は、加熱手段2による高火力の加熱により、鍋1内を一気に沸騰させ、そしてドライアップさせる工程である。ステップS9で、加熱手段2による浸漬工程時より高火力の加熱を行い、続くステップS10で鍋1の温度を確認し、130℃に到達したかどうかを判定する。130℃に到達していればステップS11へ進み、到達していなければステップS9へ戻る。このように、ステップS9とステップS10で、鍋1の温度が130℃、つまり鍋1内の水がなくなってドライアップ状態になるまで加熱動作を行う。
【0036】
ステップS11では、蒸らし工程を実施する。蒸らし工程は、ドライアップ後に蒸らしを所定時間行い、澱粉のα化を促進する工程である。ステップS11で、加熱手段2で鍋1内を高温に保つ程度の弱い火力で加熱し、さらに高温蒸気供給手段4により、高温蒸気を鍋1内に供給し、鍋1内を全体的に高温に保たせるように制御する。続くステップS12で蒸らし工程の経過時間を確認し、10分経過したか判定する。10分経過していなければステップS11へと戻るが、10分経過していれば炊飯動作終了となり加熱手段2と高温蒸気供給手段4による加熱を停止する。このように、ステップS11とステップS12で、10分間鍋1内の温度を高温に保つ動作を行う。
【0037】
このように制御手段8により、浸漬工程、予熱工程、炊上げ工程、蒸らし工程を経て、炊飯動作は完了する。さらに、予熱工程後、判定手段10から「水量不十分」の判定信号が入ってきたときは、加熱手段2による加熱を停止し、工程の進行を停止する。
【0038】
つぎに、図4のフローチャートを用いて、判定手段10の動作を説明する。制御手段8による炊飯動作開始後、ステップS20では、制御手段8の実施している工程を判定する。浸漬工程ならばステップS21へ進み、予熱工程ならばステップS22へ進み、予熱工
程後ならばステップS30へと分岐して進む。ステップS20で浸漬工程と判定したときはステップS21に進み、マイクロコンピュータのRAM上に準備したパラメータである測定タイマの初期化と判定完了フラグのクリアを行う。
【0039】
ステップS20で予熱工程と判定したときはステップS22に進み、水タンク温度検知手段5による水タンク温度が65℃(第2の温度)以上かを判定する。65℃(第2の温度)以上であれば、ステップS25に進み、そうでなければステップS23に進む。ステップS23では、さらに水タンク温度が50℃(第1の温度)以上かを判定する。50℃(第1の温度)以上であればステップS24に進み、そうでなければステップS20へと戻る。ステップS24では、測定用タイマを1秒ごとに計時し、ステップS20へと戻る。ステップS22で65℃(第2の温度)以上だったときは、ステップS25で判定完了フラグが立っているか判定する。判定完了フラグが立っていればステップS30へ進み、立っていなければステップS26へ進む。ステップS26では、ステップS24で計時した測定タイマが30秒(所定の時間)未満かどうかを判定する。30秒(所定の時間)未満でなければ、ステップS27に進み「水量十分」と判定結果を出し、30秒(所定の時間)未満であればステップS28に進み「水量不十分」と判定結果を出す。ステップS27またはステップS28の次はステップS29となり、判定完了フラグをセットし、ステップS20へと戻る。
【0040】
ステップS20で予熱工程後と判定したとき、あるいはステップS25で判定完了フラグが立っていると判定したときはステップS30に進み、判定結果である「水量十分」または「水量不十分」の信号を制御手段8に出力し、ステップS20へと戻る。
【0041】
このように判定手段10は、制御手段8が実施する炊飯動作の浸漬工程においては、マイクロコンピュータ上のRAMに準備した測定タイマなどのパラメータを初期化し、予熱工程においては、水タンク温度が50℃(第1の温度)から65℃(第2の温度)になるまでの時間を計時し、65℃(第2の温度)に到達すると、計時した測定タイマ値を1回だけ判定し、このタイマ値を30秒(所定の時間)を境界として、それ以上だと水タンク3内の水量は「水量十分」、境界より下だと「水量不十分」と判定し、判定後は判定結果を制御手段8へ出力する。
【0042】
以上のように、本実施の形態においては、判定手段10が予熱工程において、50℃(第1の温度)から65℃(第2の温度)になるまでの時間を計時し、65℃(第2の温度)に到達したとき、この計時結果より、水タンク3内の水量を判定し、判定結果が「水量不十分」だったとき制御手段8は炊上げ工程開始前に加熱手段2による加熱を停止し、炊飯動作の進行を止め、さらにこの状態のときに再開手段7による加熱再開要求信号により、加熱手段2による加熱の再開ができるので、使用者は、この加熱手段2の加熱停止の間に水タンク3内に水を補給し、再開手段7を操作することで、蒸気発生不足で炊飯が進行するのを防止することができる。
【0043】
なお、判定手段10による測定タイマ値の所定の時間を30秒としている理由を次に述べる。水タンク3を加熱する際、水タンク3内の水量が多いときと少ないときとでは、温度上昇の速度が変化する。水量が多いときは少ないときより緩やかに上昇する。よって、1回の炊飯中に高温蒸気供給手段4が消費する必要水量を予測し、その必要水量での50℃(第1の温度)から65℃(第2の温度)に上昇する時間が30秒近辺だとすると、この時間より短ければ蒸気量が足りず、また長ければ蒸気量が十分供給できると言える。よって、本実施の形態においては、炊飯中に高温蒸気を供給するので、その供給量が足りないと判定できる時間を所定の時間としている。
【0044】
また、判定手段10から「水量不十分」の判定信号を受け、加熱手段2による加熱を停
止するタイミングを炊上げ工程の前にしている理由を次に述べる。炊上げ工程以降では、鍋1内の温度を上昇させ、米の澱粉の糊化やα化を進行させる。これらの現象が始まった状態で加熱を停止すると、ご飯の組織の崩れ、澱粉質の沈殿による底部の団子化、炊きむらの発生などが生じ、食味性能が低下してしまう。本実施の形態においては、それらの影響を受けない炊上げ工程以前のタイミングで水タンク3内の判定をし、「水量不十分」に加熱を停止させているので、食味性能にはほとんど影響がないようにできる。
【0045】
(実施の形態2)
図1に示す再開手段7は、開始手段6であるスイッチで構成している。他の構成は上記実施の形態1と同じである。
【0046】
以上のように構成することで、本実施の形態においては、再開手段7としての部品は必要なく、「水量不十分」に加熱を停止しているとき、開始手段6を操作することで、加熱の再開をすることができる。
【0047】
(実施の形態3)
図1に示す再開手段7は、水タンク3の着脱を検知する着脱検知手段30により水タンク3の取り外し状態から取り付け状態を検知することで構成している。他の構成は上記実施の形態1と同じである。
【0048】
以上のように構成することで、本実施の形態においては、「水量不十分」で加熱を停止しているとき、使用者は水タンク3内に水を供給するために一旦水タンク3を炊飯器本体11内から外し、水補給後に炊飯器本体11にセットすることで、加熱の再開をすることができる。
【0049】
(実施の形態4)
図1に示す報知手段9は、判定手段10が「水量不十分」の判定し、制御手段8が加熱手段2による加熱を停止をしたとき、スピーカーから水タンク3内の水量不足の旨を示す「水タンク内、お水が足りません」を報知するように構成している。他の構成は上記実施の形態1と同じである。
【0050】
以上のように構成することで、本実施の形態においては、使用者は報知手段9による水量不足の報知を確認したとき、水タンク3の水が不足していることが認知でき、水を補給することができる。
【0051】
(実施の形態5)
図1に示す報知手段9は、報知手段9が水量不足の旨を報知した後、1分(所定時間)以内に再開手段7により加熱を再開しないときは、再度報知手段9により報知するように構成している。他の構成は上記実施の形態4と同じである。
【0052】
以上のように構成することで、本実施の形態においては、例えば使用者は報知手段9からの報知を水量不足の旨を聞き逃しても、1分(所定時間)後に再度報知手段9が報知するので、水タンク3の水が不足していることを認知することができる。
【0053】
(実施の形態6)
図1に示す制御手段8は、予熱工程を浸漬工程より前で実施させるように構成したもので、それに伴い判定手段10は予熱工程開始後に水タンク3内の水量の判定結果を出力し、制御手段8は「水量不十分」の判定信号を受けたとき、浸漬工程が始まる前に加熱手段2による加熱を停止し、かつこの停止している間の時間を計時し、その時間に応じて浸漬工程の時間を短縮するように構成している。他の構成は上記実施の形態1と同じである。
【0054】
以上のように構成した制御手段8の動作を図5のフローチャートを用いて説明する。なお、ステップS1、ステップS2およびステップS4〜ステップS12の動作は上記実施の形態1の動作と同じであるので説明を省略する。
【0055】
図5のフローチャートは、図3の実施の形態1の制御手段8のフローチャートに比べ、予熱工程から判定手段10から結果を受け、加熱手段2への加熱の停止および再開手段7による再開待ちであるステップS4〜ステップS8の動作を浸漬工程であるステップS2の前で行うことが相違する。また、ステップS8の後にステップS13にて、加熱手段2の加熱が停止している時間、すなわち加熱停止時間を計時するようにしている。また、ステップS2の後にステップS14にて、浸漬工程の時間判定は「20分−加熱停止時間」(最低は0分とする)を経過したかどうかを判定するようにしている。経過したならば、ステップS9へと進み炊上げ工程となり、経過していなければステップS2に戻る。
【0056】
つぎに、本実施の形態の判定手段10の動作を図6のフローチャートを用いて説明する。なお、ステップS20およびステップS22〜ステップS30の動作は上記実施の形態1の動作と同じであるので説明を省略する。
【0057】
図6のフローチャートは、図4の実施の形態1の判定手段10のフローチャートに比べ、ステップS21を削除し、浸漬工程でステップS30を実施し、判定結果を出力できるようにしたことが相違する。なお、判定完了フラグと測定タイマの初期化は予熱工程開始時に実施するように構成している。
【0058】
以上のように構成することで、本実施の形態においては、開始手段6からの信号を受けたときは、まず予熱工程を実施し、その後浸漬工程を実施することができ、予熱工程後に判定手段10が「水量不十分」の判定信号を制御手段8が受けたとき、加熱手段2による加熱と炊飯動作の進行を止めるとともに、再開手段7により加熱を開始するまでの時間に応じて浸漬工程の実施時間を短縮するようにしたもので、加熱手段2が停止している時間分、炊飯時間が延びるのを防止することができる。
【0059】
なお、本実施の形態においては、浸漬工程の実施時間を加熱停止時間分、単純に減算している。浸漬工程は鍋1内の米を吸水させることを目的としており、多少の時間が短縮されても、停止中に幾分かは自然に吸水するので、吸水の度合いに影響はなく食味性能への影響も軽微であるが、加熱停止時間が長時間に及ぶと影響が出てくる。この場合、浸漬工程の実施時間を最低5分は実施するなど最低実施時間の保証対策をしたり、単純に加熱停止時間分減算するのではなく、加熱停止時間に応じた一定比率の時間を減算するなどの対策を行えばよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上のように、本発明にかかる炊飯器は、判定手段が「水量不十分」を判定したときは、制御手段は再開手段による信号を受けるまで加熱手段による加熱を停止するので、炊飯の進行を停止することができ、蒸気発生不足で炊飯をすることを防止することができるので、水の沸点以上の蒸気を利用して炊飯性能を向上させる炊飯器として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施の形態1における炊飯器のブロック図
【図2】同炊飯器の断面図
【図3】同炊飯器の制御手段の動作フローチャート
【図4】同炊飯器の判定手段の動作フローチャート
【図5】本発明の実施の形態6における炊飯器の制御手段の動作フローチャート
【図6】同炊飯器の判定手段の動作フローチャート
【図7】従来の炊飯器の断面図
【符号の説明】
【0062】
1 鍋
2 加熱手段
3 水タンク
4 高温蒸気供給手段
5 水タンク温度検知手段
6 開始手段
7 再開手段
8 制御手段
10 判定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
米や水を入れる鍋と、前記鍋を加熱する加熱手段と、水を入れる着脱自在な水タンクと、前記水タンクを加熱し前記水タンク内の水から蒸気を発生させこの蒸気を加熱し前記鍋内に供給する高温蒸気供給手段と、前記水タンクの温度を検知する水タンク温度検知手段と、前記加熱手段の加熱開始を要求する開始手段と、前記開始手段からの信号を受け前記加熱手段、前記高温蒸気供給手段を制御する制御手段と、前記制御手段が前記加熱手段の加熱を停止しているときに再び加熱を開始させる再開手段と、前記水タンク内の水量を判定する判定手段とを備え、前記判定手段は、前記制御手段が前記高温蒸気供給手段により前記水タンクの加熱をしているとき、前記水タンク温度検知手段が検知する温度が第1の温度に到達してから第1の温度より高い第2の温度に到達するまでの間計時した時間が所定の時間以上であるときは「水量十分」と判定し、所定の時間未満であるときは「水量不十分」と判定するようにし、前記制御手段は、前記判定手段から「水量不十分」の信号を受けたとき前記加熱手段の加熱を停止し、前記再開手段からの信号を受けると前記加熱手段への加熱を再開するよう構成した炊飯器。
【請求項2】
再開手段は、開始手段で構成した請求項1記載の炊飯器。
【請求項3】
水タンクの着脱を検知する着脱検知手段を備え、再開手段は、前記着脱検知手段により水タンクの取り外し状態から取り付け状態を検知することで構成した請求項1記載の炊飯器。
【請求項4】
音声やブザーにより報知する報知手段を備え、前記報知手段は、判定手段が「水量不十分」の判定をし、制御手段が加熱手段の加熱の停止をしたとき、報知するようにした請求項1記載の炊飯器。
【請求項5】
報知手段が報知した後、所定時間内に再開手段により加熱を再開しないときは、再度報知手段により報知するようにした請求項4記載の炊飯器。
【請求項6】
制御手段は、開始手段からの信号を受けたときは、高温蒸気供給手段により水タンクを第2の温度となるまで加熱し、その後炊き上げ時よりも弱い火力で加熱手段を所定時間加熱して鍋内の米を浸漬させ、この浸漬動作の時間は判定手段が水タンク加熱時に「水量不十分」の判定をし、再開手段により加熱を開始するまでの時間に応じて短縮するようにした請求項1記載の炊飯器。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−131157(P2010−131157A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309390(P2008−309390)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】