説明

炭化珪素ハニカム構造体の製造方法、炭化珪素ハニカム構造体、ハニカムフィルタ、及び触媒担持ハニカムフィルタ

【課題】元来の出発原料を用いた場合と同程度の熱伝導率、強度、気孔率等の特性を有するとともに、歩留まりの向上とコスト削減が可能である炭化珪素ハニカム構造体の製造方法及び炭化珪素ハニカム構造体を提供する。
【解決手段】炭化珪素質ハニカム構造体の製造過程で発生した当該ハニカム構造体の出発原料に由来する回収物から再生された再生原料を、出発原料の一部として用いたハニカム構造体の製造方法であって、再生原料が、出発原料を焼成した後の工程における前記炭素珪素ハニカム構造体を構成する材料から回収されるものである。そして、その再生原料の平均粒子径を5〜100μmとした後に、出発原料の一部として出発原料全体に占める割合が50質量%以下となるように添加し、これを用いて炭化珪素ハニカム構造体を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化珪素ハニカム構造体の製造方法、炭化珪素ハニカム構造体、ハニカムフィルタ、及び触媒担持ハニカムフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンの排気ガスのような含塵流体中に含まれる粒子状物質を捕集除去するためのフィルタ(ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF))、又は排気ガス中の有害物質を浄化する触媒成分を担持するための(排ガス浄化用)触媒担体として、複数のそれぞれ隣接したセルの複合体を形成するセル隔壁(リブ)と、このセル複合体の最外周に位置する最外周セルを囲繞して保持するハニカム外壁とから構成された多孔質のハニカム構造体が広く用いられ、また、その構成材料として、耐火性の炭化珪素(SiC)や、コージェライト等、又はこれらの複合材料等が用いられている。
【0003】
ところで、上記ハニカム構造体を経済的に製造する方法として、ハニカム構造体の製造過程で発生したハニカム構造体の出発原料に由来する回収物(例えば、乾燥工程から焼成工程に移行する際に何らかの理由により、除外された未焼成の成形体、その破片等の未焼成の乾燥物、焼成物等。)から、出発原料組成物を調製(再生)し、再生原料として成形体の成形に再び使用することが考え得る。
【0004】
特許文献1には、コージェライト製ハニカム製造工程において、成形用配合物と同一組成を有する生素地を最大径50mm以下に破砕してなる生素地粉砕物を添加し、ミキサーにて混合して成形用配合物を得るハニカム構造体の製造方法が開示されている。
【0005】
特許文献2には、炭化珪素質ハニカム構造体において、焼成前の乾燥体を粉砕し、出発原料の一部として戻す製造方法、及びそれを用いたハニカム構造が開示されている。再生原料は、平均粒径が10〜300μmであり、再生原料使用により、ボイドや粗大粒子などの構造欠陥を抑制し、優れた強度や均一な熱伝導率を有するハニカム構造体を得ることができ、一度混練されたものであるから、混練時間の短縮の効果があることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−188819号公報
【特許文献2】国際公開第2005/030675号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、焼成後の廃材を利用すると、製品の品質に悪影響を及ぼすと考えられ、焼成後の廃材は利用されてこなかった。例えば、コージェライトでは、出発原料中にカオリン鉱物や、タルク等の層状鉱物が含まれ、押し出し成形中に原料が配向し、焼結後にコージェライト結晶相が配向成長することで、低熱膨張特性を発現する。出発原料に焼成後の廃材を添加すると、原料の配向性が損なわれ、その結果熱膨張が高くなるという問題があり、焼成後の原料を再利用することはできなかった。
【0008】
そこで、炭化珪素ハニカム構造体において、焼成後の廃材を利用することを検討した。本発明の課題は、炭化珪素ハニカム構造体の製造過程において回収される焼成後の再生原料を用いて、元来の出発原料を用いた場合と同程度の熱伝導率、強度、気孔率等の特性を有するとともに、歩留まりの向上とコスト削減が可能である炭化珪素ハニカム構造体の製造方法、炭化珪素ハニカム構造体、ハニカムフィルタ、及び触媒担持ハニカムフィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、炭化珪素ハニカム構造体では、コージェライトのように結晶配向性が特性に与える影響は小さく、焼成後原料を戻すことが可能となることを見出した。そして、再生原料の粒子径と出発原料中に再生原料の占める割合を規定することにより、上記課題を解決しうることを見出した。すなわち、本発明によれば、以下のハニカム構造体の製造方法、炭化珪素ハニカム構造体、ハニカムフィルタ、及び触媒担持ハニカムフィルタが提供される。
【0010】
[1] 炭化珪素ハニカム構造体の製造過程で発生した炭化珪素ハニカム構造体の出発原料に由来する回収物から再生された再生原料を、出発原料の一部として用いた炭化珪素ハニカム構造体の製造方法であって、前記再生原料が、前記出発原料を焼成した後の工程における前記炭素珪素ハニカム構造体を構成する材料から回収されるものであり、前記再生原料を、平均粒子径を5〜100μmとした後に、前記出発原料の一部として前記出発原料全体に占める割合が50質量%以下となるように添加し、または、前記再生原料を前記出発原料の一部として前記出発原料全体に占める割合が50質量%以下となるように添加した後、平均粒子径を5〜100μmとし、これを用いて炭化珪素ハニカム構造体を製造する炭化珪素ハニカム構造体の製造方法。
【0011】
[2] 前記再生原料中に含まれる酸素含有量が20質量%以下である前記[1]に記載の炭化珪素ハニカム構造体の製造方法。
【0012】
[3] 前記[1]または[2]に記載の炭化珪素ハニカム構造体の製造方法により製造された炭化珪素ハニカム構造体。
【0013】
[4] 前記[3]に記載の炭化珪素ハニカム構造体を用いて製造されたハニカムフィルタ。
【0014】
[5] 前記[4]に記載のハニカムフィルタに触媒が担持された触媒担持ハニカムフィルタ。
【発明の効果】
【0015】
本発明のハニカム構造の製造方法によれば、従来と同程度の熱伝導率、強度、気孔率等の特性を有するハニカム構造体を製造することができ、原料収率向上によるコスト削減が可能である。また、坏土の保形性が向上する為、成形工程での曲がり不良を低減することができ歩留まりが向上する。また、乾燥時の収縮率低減効果もあり、寸法精度が向上すると共に、乾燥時の収縮応力によるクラック不良発生を低減することができ、歩留まりが向上する。出発原料として、一度焼成したものを含んでいるため、焼成時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のハニカム構造体の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0018】
本発明のハニカム構造体の製造方法は、炭化珪素質ハニカム構造体の製造過程で発生した当該ハニカム構造体の出発原料(再生原料を含むもの、含まないもののどちらも含む)に由来する回収物から再生された再生原料を、出発原料の一部として用いたハニカム構造体の製造方法である。再生原料が、出発原料を焼成した後の工程における炭素珪素ハニカム構造体を構成する材料から回収されるものである。再生原料は、焼成後のハニカムセグメント等の他に、接合材やコート材も含む。そして、その再生原料の平均粒子径を5〜100μmとした後に、出発原料の一部として出発原料全体に占める割合が50質量%以下となるように添加し、これを用いて炭化珪素ハニカム構造体を製造する。または、再生原料を出発原料の一部として出発原料全体に占める割合が50質量%以下となるように添加した後、平均粒子径を5〜100μmとし、これを用いて炭化珪素ハニカム構造体を製造する。
【0019】
本発明のハニカム構造体の製造方法においては、再生原料の平均粒径は5〜100μmとする。本発明のような再生原料を使用した場合、凝集は起こりにくいが、再生原料の粒径が、平均粒径100μmを超えるような大きなものは、再生原料中に含まれる空隙に、その他原料が入り込み、結果として製品の気孔率や平均細孔径が小さくなる為、適していない。また、再生原料を平均粒径5μm未満にまで粉砕するとなると、粉砕効率が悪く、コストが掛かるだけでなく、粉砕設備の摩耗が大きくなり、不純物の混入が多くなる恐れがある。
【0020】
炭化珪素質ハニカム構造体の製造過程で発生した当該ハニカム構造体の出発原料に由来する回収物とは、具体的には、焼成後のセグメント不良品、接合不良品、接合体研削切れ端、接合体研削屑、完成体不良品などである。これらは、既に一度焼成が行われているものであり、これらを出発原料の一部に使用しているため、焼成時間を短縮することも可能となる。さらに、本発明の製造方法では、出発原料を焼成した後の工程における炭素珪素ハニカム構造体を構成する材料から回収されるものも再生原料とすることができ、再生原料は、セグメントを接合して接合体とするための接合材や、接合体を研削した後に外周部分をコートするコート材も含む。
【0021】
図1を用いて、具体的に回収物となる廃材の発生する工程を説明する。ハニカムセグメント10の原料粉末(例えば、炭化珪素粉末)、バインダー(例えばメチルセルロース及びヒドロキシプロポキシルメチルセルロース)、界面活性剤、及び水を秤量し、混練、土練を行って、可塑性の坏土を作製する。この坏土を押出成形することにより、多孔質の隔壁によって区画された軸方向に延びる流体の流路となる複数のセルを有するハニカムセグメントとして成形する(本明細書において、ハニカムセグメントもハニカム構造体に含まれる。)。
【0022】
所定のセルの一方の端部のセル内に目封止材料を充填し、残余のセルについては所定のセルとは反対側の他方の端部のセル内に目封止材料を充填することにより、多数のセルの一方の開口端部と他方の開口端部とを互い違いに目封止する目封止部11を備えた目封止ハニカムセグメント10とする。
【0023】
この目封止ハニカムセグメント10を焼成する。焼成により発生した不良品、中間検査で発見された不良品を回収物とすることができる。
【0024】
次に目封止ハニカムセグメント10を接合材12(セラミックスセメント)で接合し一体化し、外周を円筒状に研削加工し、その外周面にコート材13を塗布して、完成体1を得る。接合材12による接合にて、接合不良品が発生する。また、外周の研削加工により研削切れ端、研削粉が発生する。コート材13による塗布、また完成検査により、完成体不良品が発生する。これらを、回収物とすることができる。つまり、回収物には、接合材12やコート材13が含まれる。
【0025】
但し、接合不良品、接合体研削切れ端、接合体研削屑、完成体不良品等の接合材12やコート材13を含む回収物を再生原料に使用する場合において、接合材12やコート材13はハニカムセグメントと比べ、アルミナ、シリカ等の酸化物が多く存在する為、再生原料中の接合材12やコート材13の割合が高くなると、酸化物が析出し変色が生じることがある。製品特性には問題がないためコスト削減が可能であるが、製品としての外観を重視すると良品扱いにできず、歩留まりが低下する可能性がある。変色の発生を防ぐためには、再生原料中の酸素含有量が20質量%以下になるように接合材12やコート材13の割合を調整するのが望ましい。
【0026】
回収物の粉砕の方法としては、乾式の粉砕方法が適切である。乾式の粉砕方法としては、ハンマーミル、ローラーミル、デシンター、レーモンドミル、歯付きロールクラッシャー、波型ロールクラッシャー、インパクトクラッシャー等を使用した方法が挙げられる。
【0027】
なお、再生原料としては、デシンター、レーモンドミル等で粉砕した粉砕物をそのまま用いてもよいが、篩分けし、粒度をそろえることで混練性が上がり、不良を低減することができる。出発原料全体に占める再生原料の割合としては、50質量%以下が好ましい。再生原料の割合が50質量%より多いと、焼成工程で焼結性が低下し、製品の三点曲げ強度や熱伝導率が低下する。
【0028】
本発明のハニカム構造体は、上記の再生原料を用いて製造する。すなわち、出発原料を焼成した後に回収される再生原料を、出発原料の一部として添加し、メチルセルロース及びヒドロキシプロポキシルメチルセルロース等のバインダー、有機造孔材、界面活性剤及び水等を添加して、可塑性の坏土を作製し、坏土を、例えば押出成形し、隔壁により仕切られた軸方向に貫通する多数のセルを有する四角柱形状のハニカム成形体を成形する。これを、目封止を施し、例えばマイクロ波及び熱風などで乾燥した後、仮焼してバインダーや有機造孔材を除去し、その後焼成することにより、ハニカムセグメント10を製造する。なお、目封止部11の材料としては、例えば、セラミック粉末、結合剤、解膠剤を混合したものに、分散媒として水を加えて混合したものを利用することができる。
【0029】
次に目封止ハニカム構造体(ハニカムセグメント10)を接合材12(セラミックスセメント)で接合し一体化する。接合材層の接合材12は、無機粒子、無機接着剤を主成分とし、副成分として、有機バインダー、界面活性剤、発泡樹脂、水等を含んで構成される。無機粒子としては、板状粒子、球状粒子、塊状粒子、繊維状粒子、針状粒子等を利用でき、無機接着剤としては、コロイダルシリカ(シリカゾル)、コロイダルアルミナ(アルミナゾル)、各種酸化物ゾル、エチルシリケート、水ガラス、シリカポリマー、リン酸アルミニウム等を利用できる。主成分としてはハニカムセグメント10の構成成分と共通のセラミックス粉を含むものが好ましく、また健康問題等からは、セラミックスファイバー等の繊維状粒子を含まないものが好ましく、板状粒子を含有する方が好ましい。板状粒子としては、例えば、マイカ、タルク、窒化ホウ素及びガラスフレーク等を利用することができる。この接合材12をハニカムセグメント10の接合面に付着させることにより接合材層を形成することができる。
【0030】
接合材12で一体化されたハニカム構造体の外周を円筒状に研削加工し、その外周面にコート材13を塗布して、完成体を得る。コート材13は、セラミックス粉末、水、結合材等を含んで構成される。
【0031】
本発明の炭化珪素ハニカム構造体は、優れた強度や均一な熱伝導を有しているので、ハニカムフィルタ(例えば、ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF))や排ガス浄化用触媒担体(触媒担持ハニカムフィルタ)等として好適に使用することができる。触媒担体として利用する場合には、ハニカムフィルタの表層に、触媒として、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の貴金属等を担持することができる。貴金属の他に、他の触媒や浄化材が更に担持されていてもよい。例えば、アルカリ金属(Li、Na、K、Cs等)やアルカリ土類金属(Ca、Ba、Sr等)からなるNO吸蔵触媒、三元触媒、セリウム(Ce)及び/又はジルコニウム(Zr)の酸化物に代表される助触媒、HC(Hydro Carbon)吸着材等が担持されていてもよい。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0033】
(実施例1〜16、比較例1〜3)
平均粒径48μmの炭化珪素粉末と金属珪素粉末とを80:20の比率(質量比)で混合し、更にメチルセルロース(バインダー)、界面活性剤、助剤及び水を添加し、ニーダーを用いて混練した。得られた混練土から押出成形機にてハニカムセグメント(ハニカム成形体)を押出成形し、目封止を施した後、これをマイクロ波乾燥した後、更に120℃で30分間熱風乾燥した。この乾燥後、得られたハニカムセグメント(乾燥体)を1450℃で2時間焼成し、端面35mm×35mm、長さ254mm、隔壁厚さ300μm、セル密度47個/cmの炭化珪素質ハニカムセグメント(ハニカム構造体)を得た。焼成後のセグメント不良品、接合不良品、接合体研削切れ端、接合体研削屑、完成体不良品をローラーミルによって粉砕し、平均粒子径を20μmとしこれを再生原料とした。
【0034】
次に、平均粒径48μmの炭化珪素粉末と金属珪素粉末とを80:20の比率(質量比)で混合した新規原料と、再生原料とを、表1に示す割合で混合し、これに造孔材として澱粉を加え、更にメチルセルロース(バインダー)、界面活性剤、助剤及び水を添加し、ニーダーを用いて混練した。得られた混練土について保形性を測定した後、この混練土から押出成形機にてハニカムセグメント(ハニカム成形体)を押出成形し、目封止を施した後、これをマイクロ波乾燥した後、更に120℃で30分間熱風乾燥した。この乾燥後、得られたハニカムセグメント(乾燥体)を1450℃で2時間焼成し、端面35mm×35mm、長さ254mm、隔壁厚さ300μm、セル密度47個/cmの炭化珪素質ハニカムセグメント(ハニカム構造体)を得た。
【0035】
こうして得られた炭化珪素質ハニカム構造体について、保形性評価、セグメント特性評価、DPF性能評価を行った。保形性評価は、側圧を受けない状態で自立する供試体の一軸圧縮強さを求める試験方法であるJIS規格(JIS A 1216)に従った。セグメント評価としては、気孔率、平均細孔径、3点曲げ強度及び熱伝導率を測定した。なお、気孔率及び平均細孔は水銀ポロシメーター(島津製作所製AUTORORE)で測定し、3点曲げ強度はハニカム構造体の膜面を切り出し、JIS R1601に準拠した3点曲試験により測定した。熱伝導率は定常法(測定装置:ULVAC−RIKO製GH−1S)で測定した。
【0036】
表1に再生原料の添加率を変化させた場合の結果を示す。なお、割掛とは、乾燥前後の寸法変化を示すもので、以下の式で計算される。
(割掛)=(乾燥前寸法)/(乾燥後寸法)
【0037】
【表1】

【0038】
再生原料を添加しない場合(比較例1)の1.04に比べ、再生原料を添加した場合(実施例1〜3,比較例2)は、乾燥時の割掛が1.03に抑えられていた。また、再生原料の添加量が多いほど保形性が向上していた。これは、再生原料が焼成により骨材であるSiCの周りに一部焼結したネック部分が残っており、表面形状がいびつになっている為、坏土状態での粒子の動きが鈍感になり、乾燥での収縮低減や保形性の向上する効果が発揮されたと考えられる。
【0039】
次に、再生原料の添加量を変化させ製品特性への影響を確認した。気孔率や平均細孔径への影響はほとんどなかった。また、再生原料の添加量が50質量%未満(実施例1〜3)であれば、再生原料を使用しない場合(比較例1)と同等の三点曲げ強度と熱伝導率が得られた。しかし、再生原料を100質量%用いた場合(比較例2)、三点曲げ強度と熱伝導率の低下が確認された。再生原料の割合が過剰になると、焼結性が低下し、SiC同士を繋ぐネックが不足すると思われる。
【0040】
上記と同様の手順により、再生原料の粒径を変化させて試験を行った。表2に再生原料の粒径を変化させた場合の結果を示す。
【0041】
【表2】

【0042】
再生原料の平均粒径が5〜100μmの場合(実施例4〜9)、再生原料を添加しない場合(比較例1)の気孔率、平均細孔径、三点曲げ強度、熱伝導率と同等レベルであった。一方、再生原料の平均粒径が150μmの場合(比較例3)、気孔率と平均細孔径の低下が確認された。これは、再生原料の粒子径が大きくなると、再生原料中に未粉砕の多孔質な構造体をもつ原料の割合が増え、混練中に再生原料の空隙にその他原料が入り込み、気孔率や細孔径が低下するからと考えられる。
【0043】
上記と同様の手順により、焼成されたハニカムセグメントから回収された回収物の割合と、接合材とコート材の混合割合を調整し、再生原料中の酸素含有率を変化させて試験を行った。尚、実施例10はセグメントのみからの回収物を再生原料とした評価結果である。酸素量分析は、HORIBA社製 酸素窒素同時分析装置(型式:EMGA−650W)を使用した。結果を表3に示す。
【0044】
【表3】

【0045】
再生原料中の酸素含有率を25質量%まで増やしても気孔率、平均細孔径、三点曲げ強度、熱伝導率に低下は認められなかった(実施例10〜13)。但し、酸素含有率25質量%において、焼成後のセグメントの一部に、わずかな変色が確認された。接合材やコート材はハニカムセグメントと比べ、アルミナ、シリカ等の酸化物が多く存在する為、再生原料中の接合材やコート材の割合が高くなると、酸化物が析出し変色が発生すると考えられるが、製品特性には影響を及ぼさない程度であった。
【0046】
表4に1450℃における焼成時間低減効果を示す。
【0047】
【表4】

【0048】
表4に示すように、焼成時間を2.0時間(実施例14)から1.8時間(実施例15)、更に1.6時間(実施例16)まで焼成時間を短縮し製品特性に与える影響を確認した。その結果、気孔率、平均細孔径、三点曲げ強度、熱伝導率において、特性の低下は確認されなかった。これは、再生原料中に一度焼成しネックができた部分が存在している為、出発原料を焼成する際に時間を短縮しても特性低下が起こらないと思われる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、ディーゼルエンジン排気ガスのような含塵流体中に含まれる粒子状物質を捕集除去するためのフィルター(DPF)や、排気ガス中の有害物質を浄化する触媒成分を担持するための触媒担体の製造に好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1:完成体(ハニカム構造体)、10:ハニカムセグメント(ハニカム構造体)、11:目封止部、12:接合材、13:コート材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素ハニカム構造体の製造過程で発生した炭化珪素ハニカム構造体の出発原料に由来する回収物から再生された再生原料を、出発原料の一部として用いた炭化珪素ハニカム構造体の製造方法であって、
前記再生原料が、前記出発原料を焼成した後の工程における前記炭素珪素ハニカム構造体を構成する材料から回収されるものであり、
前記再生原料を、平均粒子径を5〜100μmとした後に、前記出発原料の一部として前記出発原料全体に占める割合が50質量%以下となるように添加し、または、前記再生原料を前記出発原料の一部として前記出発原料全体に占める割合が50質量%以下となるように添加した後、平均粒子径を5〜100μmとし、
これを用いて炭化珪素ハニカム構造体を製造する炭化珪素ハニカム構造体の製造方法。
【請求項2】
前記再生原料中に含まれる酸素含有量が20質量%以下である請求項1に記載の炭化珪素ハニカム構造体の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の炭化珪素ハニカム構造体の製造方法により製造された炭化珪素ハニカム構造体。
【請求項4】
請求項3に記載の炭化珪素ハニカム構造体を用いて製造されたハニカムフィルタ。
【請求項5】
請求項4に記載のハニカムフィルタに触媒が担持された触媒担持ハニカムフィルタ。

【図1】
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【公開番号】特開2011−168438(P2011−168438A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33346(P2010−33346)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】