説明

炭素に基づいたエネルギー担持物質を転化する改良された方法

固形のまたは高度に粘性の、炭素に基づいたエネルギー担持物質を液状およびガス状反応生成物に転化する方法であって、当該方法が、a)該炭素に基づいたエネルギー担持物質を粒子状触媒物質と接触させる段階、b)該炭素に基づいたエネルギー担持物質を200℃〜450℃、好ましくは250℃〜350℃の反応温度において転化し、それによって気相にある反応生成物を生成する段階を含む方法が開示される。好まれる実施態様では、本方法はc)該気相反応生成物を、当該反応生成物が生成された後10秒間以内に該粒子状触媒物質から分離する追加の段階を含む。さらに好まれる実施態様では、段階c)の後に、d)該反応生成物を200℃未満の温度まで急冷する段階が続く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素に基づいたエネルギー担持物質を液体燃料またはガス燃料に転化する触媒的方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軽質原油の供給が減少するに伴い、液体燃料およびガス燃料の源として代替物質が開発されつつある。検討されている代替物質は、鉱物エネルギー担体、たとえば重質原油、シェールオイル、タール(たとえば、タールサンドからのもの)およびビチューメンを包含する。
【0003】
代替物質は、さらに合成樹脂の廃棄供給物を包含する。これらの合成樹脂は、未使用の物質、たとえば成形および延伸操作からの不合格品、ならびに使用された物質、たとえばリサイクルされた包装材料であることができる。
【0004】
さらにもう一つの、および潜在的に最も重要な代替物質である、炭素に基づいたエネルギー担持物質の源は、バイオマス、特にセルロ−ス、リグニン、およびヘミセルロ−スを含有するバイオマスを包含する。
【0005】
これらの物質を液体燃料およびガス燃料に転化する方法が開発されている。このような方法に使用するための触媒が提案されている。しかし、触媒が使用されるときでさえも、該転化反応は、比較的高い反応温度、しばしば450℃を超える反応温度を要求する。反応生成物をこれらの反応条件に曝露すると、該反応生成物の有意の劣化がもたらされる。その結果、価値のある物質が望ましくない物質、たとえばガス、炭化物およびコークスに転化され、これらの物質は触媒粒子を汚し不活性化させ、また反応方法の収率を下げる。さらにその上、主な反応生成物であるバイオオイルは不満足な品質を有し、それが輸送燃料または高い価値の化学製品の源として適するようにされるために大規模な高コストの処理が要求される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、炭素に基づいたエネルギー担持物質を液体燃料またはガス燃料に転化する改良された方法を提供する。本発明は、転化温度が450℃未満、好ましくは400℃未満であること、ならびに反応生成物が高められた温度に曝露される時間および触媒物質と接触される時間が短く保たれることを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、固形のまたは高度に粘性の、炭素に基づいたエネルギー担持物質を液状およびガス状反応生成物に転化する方法に関し、当該方法は、
a) 該炭素に基づいたエネルギー担持物質を粒子状触媒物質と接触させる段階、および
b) 該炭素に基づいたエネルギー担持物質を200℃〜450℃、好ましくは250℃〜350℃の反応温度において転化し、それによって気相にある反応生成物を生成する段階
を含んでいる。
【0008】
段階a)は、炭素に基づいたエネルギー担持物質の粒子を用意し、そしてこれらの粒子を触媒物質のより小さい粒子で被覆する段階を含むことができる。
【0009】
他の方法では、段階a)は、(i)炭素に基づいたエネルギー担持物質を触媒物質の前駆体と接触させる段階、および(ii)その場で(in situ)触媒物質を生成する段階を含むことができる。
【0010】
さらに他の実施態様では、段階a)は、炭素に基づいたエネルギー担持物質を粒子状触媒物質の流動床と接触させる段階を含む。任意的に、この方法段階は高められた温度で実施される。熱伝達媒体が存在してもよい。
【0011】
より多くの触媒物質を段階b)に添加することが可能である。この触媒物質は、段階a)で添加されたものと同じであってもよく、または異なった触媒物質であってもよい。
【0012】
好まれる実施態様では、本発明の方法は、
c) 気相反応生成物を、当該反応生成物が生成された後10秒間以内に粒子状触媒物質から分離する追加の段階
を含む。
【0013】
さらに好まれる実施態様では、段階c)に続いて、
d) 反応生成物を200℃未満の温度まで急冷する段階
が行われる。
【0014】
以下は、本発明の特定の実施態様の記載であり、実施例のみの目的で示される。
【0015】
1の態様では、本発明は、粒子状の、炭素に基づいたエネルギー担持物質を比較的穏やかな条件下での液体燃料への転化を受けやすくするための、これらの物質の前処理に関する。
【0016】
本発明の方法に使用するための、炭素に基づいたエネルギー担持物質は、固形物質、および液体と分類されうるが非常に高い粘度を有する物質である。本明細書において、該物質は「固体」と呼ばれる。本明細書で使用される固体の語は高度に粘性の液体を包含することが理解されよう。タールサンドの場合、「粒子」はタールで被覆されたサンドコーンを包含する。本発明の目的のためには、これらの被覆されたサンドコーンは、炭素に基づいたエネルギー担体の粒子とみなされる。
【0017】
これらの物質は粒子に形成され、該粒子は環境条件の温度および圧力においてまたはその近傍でその一体性を保持する傾向がある。このような物質の例は石炭、タールサンド、シェールオイル、およびバイオマスを含む。
【0018】
好ましくは、段階a)は、触媒粒子と、炭素に基づいたエネルギー担体との緊密な接触をもたらす。1の方法は、炭素に基づいたエネルギー担持物質の粒子を用意し、そしてこれらの粒子を触媒物質のより小さい粒子で被覆することを含む。被覆された粒子は熱処理に付され、その間に該エネルギー担持物質は増感される。
【0019】
炭素に基づいたエネルギー担持物質を増感する他の方法は、光合成由来のポリマーを含有するエネルギー担持物質に適している。この方法では、無機物質の小粒子が、光合成由来のポリマー物質の内部に埋め込まれる。この方法は、「粒子状無機物質を含んでいる、光合成由来のポリマー物質を造る方法」と表題された本発明者らの同時係属特許出願明細書に詳細に開示されており、この出願公開明細書は引用によって本明細書に取り込まれる。
【0020】
炭素に基づいたエネルギー担持物質を増感するさらに他の方法は、炭素に基づいたエネルギー担持物質を本発明の方法の段階b)で得られた反応生成物と接触させる段階を含む。本発明の方法が開始される時には、反応生成物はまだ利用可能ではないことは理解されよう。したがって、この段階では、炭素に基づいたエネルギー担持物質は何らかの他の方法によって増感されることができる。増感されていない物質を用いて反応を開始し、そして慣用の温度および圧力の条件下に熱分解段階を実施することも可能である。たとえば、600℃までの温度および1〜5バールの圧力で反応は開始されることができる。これらの条件下に、比較的大量の有機酸およびフェノール性物質が製造される。有用な液体燃料を造る必要性の観点からすればこれは望ましくないけれども、この反応生成物は、増感の目的のために炭素に基づいたエネルギー担持物質と混合するのに実用上適している。増感された物質の連続供給によって反応を継続するために十分な反応生成物がいったん生成されれば、熱分解条件はそれから500℃未満の温度および任意的に1バール未満の圧力に変えられることができる。
【0021】
炭素に基づいたエネルギー担体がバイオマス、特に固形粒子状バイオマスであるならば、他の実施態様が特に適している。この実施態様では、バイオマスは粒子状触媒物質および熱伝達媒体と接触される。
【0022】
熱伝達媒体、たとえば不活性の粒子状無機物質および触媒活性物質の双方の存在において本方法が実施されるならば、バイオマス物質の熱転化がより穏やかな温度条件で実施されることができることが発見された。
【0023】
特定の実施態様では、熱伝達媒体および触媒の双方であるところの粒子状無機物質が使用される。
【0024】
特定の実施態様では、触媒活性物質は、粒子形状をした無機酸化物である。好ましくは、粒子状無機酸化物は耐火性酸化物、粘土、ハイドロタルサイト、結晶性アルミノシリケート、層状ヒドロキシル塩、およびこれらの混合物から成る群から選択される。
【0025】
耐火性酸化物の例は、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、チタニア、ジルコニア等を含む。高い比表面積を有する耐火性酸化物が好まれる。具体的には、少なくとも50m/gのBrunauer Emmett Teller(「BET」)法によって測定された比表面積を有する物質が好まれる。
【0026】
好適な粘土物質は、カチオン粘土およびアニオン粘土の双方を包含する。好適な例は、スメクタイト、ベントナイト、セピオライト、アタプルガイト、およびハイドロタルサイトを含む。
【0027】
他の好適な金属水酸化物および金属酸化物は、ボーキサイト、ギブサイトおよびこれらの遷移型を包含する。安価な触媒物質は、石灰、かん水および/もしくは塩基(NaOH)中に溶解されたボーキサイト、または酸もしくは塩基中に溶解された天然粘土、またはキルンからの微細粉状セメントであることができる。
【0028】
本明細書で使用される「ハイドロタルサイト」の語は、ハイドロタルサイト自体、ならびにハイドロタルサイト様構造を有する他の混合金属酸化物および水酸化物、ならびに金属ヒドロキシル塩を包含する。
【0029】
触媒活性物質は、触媒金属を含むことができる。触媒活性無機酸化物に追加してまたはその代わりに、触媒金属は使用されることができる。該金属は、その金属の形で、酸化物、水酸化物、ヒドロキシル酸化物、塩の形で、または金属有機化合物として、ならびに希土類金属を含んでいる鉱物(たとえば、バストネサイト)として使用されることができる。
【0030】
好ましくは、触媒金属は、遷移金属、より好ましくは非貴金属の遷移金属である。特に好まれる遷移金属は、鉄、亜鉛、銅、ニッケル、およびマンガンを包含し、鉄が最も好まれる。
【0031】
触媒金属化合物が反応混合物中へと導入されることができるいくつかの様式がある。たとえば、該触媒はその金属の形で、小さい粒子の形状で添加されることができる。あるいは、触媒は酸化物、水酸化物、または塩の形で添加されることができる。1の好まれる実施態様では、金属の水可溶性塩が、炭素に基づいたエネルギー源および不活性粒子状無機物質と水性スラリーの形態で混合される。この特定の実施態様では、該金属がバイオマス物質中に含浸されることを確実にするように、不活性粒子状無機物質を添加する前に、バイオマス粒子を金属塩の水性溶液と混合することが望ましいだろう。金属塩の水性溶液を添加する前に、まずバイオマスを不活性粒子状無機物質と混合することも可能である。さらに他の実施態様では、金属塩の水性溶液が最初に粒子状不活性無機物質と混合され、その後、これらの物質を粒子状バイオマスと混合する前に、該物質は乾燥される。この実施態様では、不活性無機粒子は不均一系触媒粒子に転換される。
【0032】
不活性粒子状無機物質の特定の性質は、その主な機能は熱伝達媒体の役割をすることであるから、本発明の方法にとって決定的に重要ではない。その選択はほとんどの場合、入手容易性およびコストを考慮することに基づくだろう。好適な例は、石英、砂、火山灰、未使用の(すなわち、使用されていない)無機サンドブラスト用砂等を含む。これらの物質の混合物も適している。未使用のサンドブラスト用砂は、一般の砂のような物質よりも高価でありそうだが、特定の範囲の粒子サイズおよび硬さで入手可能である利点を有する。
【0033】
流動床法で使用されると、不活性粒子状無機物質は、典型的には鋼から造られている反応器の壁面のあるレベルの磨耗を引き起こすだろう。磨耗は、反応器の耐用寿命の許容できない低減を引き起こすので、一般的には望ましくない。本発明の文脈においては、適度の量の磨耗は実際には望ましいかも知れない。磨耗がある場合には、このような磨耗は、該反応器の鋼の金属成分(主にFe、それとともに僅少量のたとえば、Cr、Ni、Mn等)を含んでいる金属の小粒子を反応混合物中へと導入することがありうる。これは、ある量の触媒活性を不活性粒子状無機物質に与えることができる。本明細書で使用される「不活性粒子状無機物質」の語は、本来不活性であるが、たとえば金属化合物と接触された結果として、ある程度の触媒活性を獲得した物質を包含することが理解されよう。
【0034】
サンドブラスト法に既に使用されたサンドブラスト用砂は、本発明の方法に使用するのに特に適している。使用済みサンドブラスト用砂は廃棄物質とみなされ、低コストで豊富に入手可能である。好まれるのは、金属表面のサンドブラストに既に使用されたサンドブラスト用砂物質である。サンドブラスト法の間に、該砂はサンドブラストされている金属の微細な粒子と緊密に混合される。多くの場合、サンドブラストされる金属は鋼である。鋼のサンドブラストに既に使用された砂は、鉄の小粒子とそれより少量の他の好適な金属、たとえばニッケル、亜鉛、クロム、マンガン等とを含んでいる緊密な混合物を提供する。本質的には廃棄物であるので、サンドブラスト法からの砂は低コストで豊富に入手可能である。それにもかかわらず、本発明の方法の文脈においては、これは非常に価値の高い物質である。
【0035】
炭素に基づいたエネルギー源、不活性無機物質、および触媒物質の有効な接触は必須であり、様々な経路を経て進められることができる。2の好まれる経路は、
1)乾燥経路(これによって、粒子状バイオマス物質と不活性無機物質との混合物が加熱され流動化され、そして触媒物質がこの混合物に微細な固形粒子として添加される。)、および
2)湿潤経路(これによって、触媒物質が溶媒中に分散され、この溶媒が粒子状バイオマス物質と不活性無機物質との混合物に添加される。好まれる溶媒は水である。)
である。
【0036】
本明細書で使用される「微粒子状バイオマス」の語は、0.1mm〜3mm、好ましくは0.1mm〜1mmの範囲内の平均粒子サイズを有するバイオマス物質をいう。
【0037】
わらおよび木材のような源からのバイオマスは、粉砕または磨砕のような手法を使用して5mm〜5cmの範囲内の粒子サイズまで比較的容易に転換されることができる。効果的な熱転化のためには、さらにバイオマスの平均粒子サイズを3mm未満まで、好ましくは1mm未満まで下げることが望ましい。この粒子サイズ範囲までバイオマスを細かく砕くことは、悪名高いほど困難である。5mm〜50mmの範囲内の平均粒子サイズを有するバイオマス粒子を、該バイオマス粒子を無機粒子状物質およびガスと機械的に混合することを含む方法で磨耗することによって、固形バイオマスが0.1mm〜3mmの平均粒子サイズ範囲まで粒子サイズを下げられることができることが、ここに発見された。
【発明の効果】
【0038】
流動床法における粒子の磨耗は知られており、ほとんどの文脈においては望ましくない現象である。本発明の文脈においては、固形バイオマス物質の粒子サイズを下げる目的に役立てるために、この現象は使用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
かくして、本発明の1の実施態様では、5mm〜50mmの範囲内の粒子サイズを有するバイオマス粒子が、0.05mm〜5mmの範囲内の粒子サイズを有する無機粒子と混合される。この粒子状混合物はガスで撹拌される。無機粒子はバイオマス粒子の硬さよりも大きい硬さを有するので、撹拌はバイオマス粒子のサイズの減少をもたらす。好適には、この方法は、バイオマスのサイズを0.1〜3mmまで下げるために使用される。
【0040】
粒子状混合物の撹拌の量は、バイオマス粒子のサイズの減少速度を大方決める。磨耗活性度が増加する順に、撹拌は流動床、バブリング床もしくは沸騰床、噴流床、または空気輸送を形成するようなものであることができる。本発明の目的のためには、噴流床および空気輸送が、撹拌の好まれるレベルである。
【0041】
ガスは空気であることができ、または(空気と比較して)下げられた酸素レベルを有するガスであることができ、または実質的に酸素を含んでいないことができる。この例は、スチーム、窒素、および微細バイオマス粒子の後続の熱転化で得られることができるガス混合物を含む。このようなガス混合物は、一酸化炭素、スチーム、および/または二酸化炭素を含んでいることができる。
【0042】
磨耗方法は、環境温度でまたは高められた温度で実施されることができる。有意の量の湿分を含有するバイオマス粒子の場合には、高められた温度の使用が好まれる。というのは、これは該バイオマス粒子のある程度の乾燥をもたらすからである。乾燥はバイオマス粒子の硬さを増し、該粒子を磨耗によるサイズ低下をより受けやすくする。好まれる乾燥温度は約50〜150℃の範囲にある。これより高い温度は、特に、撹拌ガスが、酸素が少ないかまたは実質的に酸素を含んでいないならば可能である。
【0043】
磨耗方法に使用されるのに好まれるのは、本発明に従う後続の熱転化方法に使用されるような無機粒子である。なおさらに好まれる実施態様では、触媒物質も磨耗工程の際にも存在する。触媒物質の一部は、磨耗工程の際に存在するならば、バイオマス粒子中に埋め込まれ、これは後続の熱転化方法をより効率的にすると考えられる。
【0044】
本発明の特に好まれる実施態様では、5mm〜50mmの範囲内の粒子サイズを有するバイオマス粒子は、不活性無機粒子および触媒物質と混合される。この混合物はガスによって撹拌され、好ましくは噴流床又は空気輸送の形成をもたらす。バイオマス粒子が0.1mm〜3mmの範囲内の平均粒子サイズに到達した後で、温度が150〜600℃まで上げられる。
【0045】
磨耗方法で得られた小さいバイオマス粒子は、適当な転化方法でバイオ液体に転化されるのに特に適している。適当な転化方法の例は、水熱転化、酵素転化、熱分解、接触転化、および穏やかな熱転化を含む。
【0046】
段階a)の他の実施態様では、炭素に基づいたエネルギー担持物質の粒子は、触媒物質の非常に微細な粒子で覆われる。概念的には、炭素に基づいたエネルギー担持物質の粒子は触媒粒子のコーティングをダスティングされる(まぶされる)。エネルギー担持物質および触媒物質の双方とも固体であるけれども、該エネルギー担持物質の粒子よりもはるかに小さい触媒粒子を用意することによって、エネルギー担体粒子と触媒粒子との間の非常に緊密な接触をもたらすことが可能である。その結果、エネルギー担体粒子を後続の工程において液体燃料成分への転化をより受けやすくするように、これらの粒子の少なくとも外殻を触媒によって転化することが可能である。
【0047】
第一の段階として、炭素に基づいたエネルギー担持物質は、小粒子の形態で用意される。これは、磨砕、粉砕等によることができる。これらの小粒子を造るのに最も適した方法は、炭素に基づいたエネルギー担持物質の性質に依存する。たとえば、石炭はボールミルまたはハンマーミル中で粉砕されることができ、他方、他の物質はグラインダーでより好都合に処理されることができる。実施可能性、コスト、および磨砕されるべき物質の硬さの一般的基準に基づいて、適切な方法が当業者によって選択されることができる。
【0048】
エネルギー担体がタールサンドであれば、その粒子は重質炭化水素混合物で全体的にまたは部分的に被覆された砂粒を含んでいる。一般に、これらの粒子は既に本発明の方法に適切なサイズを有している。いずれにしても、一般にこれらのタールサンド粒子のサイズを小さくすることは実際的でない。
【0049】
粒子状の、炭素に基づいたエネルギー担持物質の粒子サイズdは、好ましくは5mm〜100マイクロメートルの範囲内である。
【0050】
触媒物質は、1000nm〜10nmの範囲内の平均粒子サイズdを有する粒子の形態で用意される。このサイズの粒子は、溶液またはスラリーから無機物質を生成し、かつこのサイズ範囲内の粒子の形成が有利になるように条件を制御することによって、得られることができる。この種類の方法は周知であり、したがって本発明の一部ではない。他の方法では、無機物質は、より大きい粒子を剥離または解膠することによって所望のサイズの粒子へと形成されることができる。
【0051】
好まれる実施態様では、d/d比は50,000〜500の範囲内である。この範囲内の粒子サイズ比は、炭素に基づいたエネルギー担持物質の粒子が触媒物質の粒子のダスティングによって被覆されることができることを確実にする。
【0052】
炭素に基づいたエネルギー担持物質の粒子および触媒の粒子は一緒に混合される。当業者に知られた任意の適当な方法によって、この混合は行われることができる。適切な方法は炭素に基づいたエネルギー担持物質の性質に依存するだろう。一般に、炭素に基づいたエネルギー担持物質の粒子サイズを小さくするために使用される方法は、この混合段階にも適している傾向がある。
【0053】
好ましくは、エネルギー担体粒子および触媒粒子は、1000:1〜10:1、好ましくは100:1〜30:1の範囲内の重量比で混合される。これらの重量比は、十分な数の触媒粒子が、エネルギー担体粒子の少なくとも部分的な被覆をもたらすために利用可能であることを確実にする。
【0054】
本発明の重要な態様は、段階b)における450℃未満、好ましくは400℃未満の反応温度である。より好ましくは、該反応温度は350℃未満、さらにより好ましくは300℃未満、最も好ましくは250℃未満である。カチオン粘土、アニオン粘土、天然粘土、ハイドロタルサイト様物質、層状物質、鉱石、鉱物、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物および炭酸塩、ならびにこれらの混合物の群から選択された触媒物質を使用することによって、この反応温度は可能にされる。
【0055】
触媒粒子は、不均一系触媒反応に適したサイズを有する。一般則として、不均一系触媒反応において小さい触媒粒子サイズが好まれるのは、粒子が小さければ小さいほど、該粒子の表面に存在する利用可能な原子の割合がそれだけ大きくなるからである。したがって、100ミクロン未満の粒子サイズが適しており、1,000ナノメートル未満の粒子が好まれる。一般に、約100nmより小さい粒子を使用することは望ましくない。このようなより小さい粒子の触媒活性はより大きいけれども、このような小粒子を造り出すことは不釣合いにより大量のエネルギーを要求し、かつ小粒子は接触熱分解後の生成物流からその粒子を分離することをより困難にする。
【0056】
炭素に基づいたエネルギー担持物質は、鉱物由来、合成由来または生物由来であることができる。鉱物由来の物質は、重質原油、シェールオイル、タール(たとえば、タールサンドからのもの)およびビチューメンを包含する。合成由来の物質は、合成樹脂の廃棄供給物を包含する。これらの合成樹脂は未使用物質、たとえば成形および延伸操作からの不合格品、ならびに使用済み物質、たとえばリサイクルされた包装物質であることができる。生物由来の物質は、バイオマス、特にセルロース、リグニン、およびリグノセルロースを含有する固形バイオマスを包含する。好まれるバイオマスは水生由来のバイオマス、たとえば藻類である。
【0057】
炭素に基づいたエネルギー担持物質は粘性液体あるいは固体であり、このことは炭素に基づいたエネルギー担持物質と粒子状触媒物質との間の緊密な接触を達成することを困難にする。炭素に基づいたエネルギー担持物質を粒子状触媒物質と一緒に粉砕することが必要かも知れない。本方法の好まれる実施態様では、粒子状触媒物質は、炭素に基づいたエネルギー担持物質上へと「サンドブラスト」されることができる。この目的のためには、粒子状触媒物質は不活性ガス流の中に吸い取られ、そして該不活性ガスが、たとえば圧縮機によって流される。このようにして、触媒粒子は少なくとも1m/秒、好ましくは少なくとも10m/の速度を与えられる。
【0058】
ガス流は次に炭素に基づいたエネルギー担持物質に衝突させられる。触媒粒子は、その動力学的エネルギーの故に炭素に基づいたエネルギー担持物質中に浸透し、それによって必要な緊密な接触をもたらす。
【0059】
炭素に基づいたエネルギー担持物質上への粒子のサンドブラストは、前者の機械的崩壊を引き起こし、これはこの物質が固体であれば特に好都合である。触媒粒子を粒子状不活性物質と混合することによって、この効果は強化されることができる。好ましくは、該不活性物質は触媒物質の粒子サイズと類似した粒子サイズを有する。
【0060】
本方法の特に好まれる実施態様では、化学反応器、たとえば流動床反応器、ライザー反応器、またはダウナー反応器中で段階a)は実施される。好都合には、段階b)は段階a)と同じ反応器中で実施されることができる。
【0061】
段階b)では、反応生成物が室温にあるときにガス状または液状であるような分子量を有する反応生成物が生成される。反応温度において、これらの反応生成物はすべてガス状であり、これは本明細書において「気相にある反応生成物」と呼ばれる。気相にある反応生成物が粒子状触媒物質から迅速に分離されることが本発明の重要な態様である。具体的には、気相にある反応生成物は、それが生成された後10秒間以内に、好ましくは5秒間以内に、より好ましくは3秒間以内に触媒粒子から分離される。反応生成物は一般に炭化水素およびスチームを含む。
【0062】
この分離が行われる反応器の帯域にかけられる圧力を下げることによって、この分離は達成されることができる。好ましくは、下げられた圧力は500ミリバール未満の「真空」である。
【0063】
触媒物質から反応生成物を急速に分離するこのことは、反応生成物の劣化を制限する上で重要な因子である。反応生成物が触媒物質から分離された後、これを急速に冷却することによって、劣化はさらに減少されることができる。分離段階が、かけられる圧力を下げることを含むならば、反応生成物の断熱膨張の結果として、それのいくらかの冷却が生じるだろう。従来技術で知られた任意の手段によって、たとえば冷水のような冷却媒体が向流する熱交換器を通して反応生成物をポンプ送りすることによって、さらなる冷却が達成されることができる。
【0064】
好ましくは、反応生成物は、触媒物質から分離された後10秒間以内に、好ましくは3秒間以内に、200℃未満、好ましくは150℃未満の温度まで冷却される。
【0065】
一部の反応生成物は、分離する段階c)の後も触媒粒子に吸着されたままである。これらの物質は、従来技術で周知の方法を使用してストリッピングによって分離されることができる。たとえば、FCC装置で使用されるストリッピング条件が適している。ストリッピングによって分離された反応生成物は、所望の10秒間よりも長く触媒物質と接触していたかも知れないけれども、これらの物質は必ずしも完全に劣化されてはいない。
【0066】
反応の間にコークスが触媒表面上に生成されることがある。該触媒を高められた温度において酸化雰囲気、たとえば空気に曝露することによって、このコークスは燃焼除去されることができる。FCC法から知られたタイプの再生器中で、この任意的な段階は実施されることができる。
【0067】
この燃焼除去段階はCOの生産をもたらす。好まれる実施態様では、このCOはバイオマスの生産に、たとえば、それを光合成に都合のよい条件下に穀物または木にスプレーすることによって使用される。
【0068】
任意的な再生段階の間に生成された熱は、段階b)の吸熱反応のための熱を供給するのに使用されることができる。この目的のために、再生器からの熱い触媒粒子は本方法の段階a)またはb)にリサイクルされる。コークス堆積物の量は、再生段階の間に生成された熱の量が転化反応を進めるために必要とされる熱の量よりも大きいことがあるというような量であるかも知れない。このような場合には、触媒粒子を反応器中にリサイクルする前にそれを所望の温度まで冷却することによって、過剰の熱は工程から除かれることができる。所望の温度は、工程の熱バランスおよび段階b)に望まれる反応温度によって決まる。したがって、リサイクル直前の触媒粒子の所望の温度は、FCC法で使用される様式に類似した様式で決定されることができる。
【0069】
再生された触媒粒子から熱が除かれるならば、この熱はスチーム、熱水、または電気を生成するために使用されることができる。
【0070】
好まれる実施態様では、本方法はFCC装置中で実施される。炭素に基づいたエネルギー担持物質をFCC装置のライザー中に導入する前に、前処理反応器中で段階a)を実施することが望ましいかも知れない。
【0071】
本発明の好まれる実施態様では、段階b)の少なくとも一部分の間、反応性ガスが存在する。この反応性ガスは酸化もしくは還元特性を有することができ、または該反応性ガスは異性化もしくはアルキル化特性において反応性であることができる。酸化特性を有する反応性ガスの例は、空気および酸素、ならびに酸素と不活性ガス、たとえば窒素との混合物を含む。
【0072】
還元特性を有するガスの例は、一酸化炭素、硫化水素、および水素を含む。水素は高圧力を要求することがあるので、水素はより低度に好まれることができる。
【0073】
アルキル化または異性化特性を有するガスの例は、イソブタン、ナフテン、揮発性有機酸等を含む。
【0074】
特に好まれる実施態様が図1に示される。該図は、炭素に基づいたエネルギー担体を穏やかに熱分解するための3段階方法を表す。該方法は、炭素に基づいたエネルギー担体としてバイオマス、具体的には木材チップを参照して説明される。この方法はバイオマスの他の形態、ならびに炭素に基づいたエネルギー担体の鉱物形態に適していることが理解されよう。
【0075】
図1は、流動床乾燥/磨砕装置10を示す。粒子状バイオマス、たとえば木材チップまたはおがくずがこの装置10中に導入され、触媒粒子の流動床とブレンドされる。この混合は環境温度において行われることができるが、装置10を高められた温度で操作することが好まれる。好ましくは、該温度は約200℃未満に保たれる。バイオマス粒子に衝突する触媒粒子の機械的衝撃は磨耗作用を与え、これによってバイオマスの粒子サイズをさらに下げる。加えて、流動床中の流体流れはバイオマス粒子のある程度の乾燥をもたらす。
【0076】
装置10からバイオマス/触媒混合物はダウナー反応器20に搬送される。反応器20の頂部に触媒粒子流が、高められた温度、たとえば400℃で導入される。バイオマス流は反応器20中で接触熱分解を受け、それによって揮発性反応生成物および炭化物およびコークスが生成される。炭化物およびコークスは触媒粒子上に堆積する。揮発性反応生成物は反応器から底部で除かれ、そして非凝縮性燃焼排ガス(CO、CO)および液状反応生成物へと分離される。
【0077】
コークスおよび炭化物含有触媒粒子は流動床再生装置30に搬送される。装置30中で、炭化物およびコークスは酸素含有雰囲気、たとえば酸素または空気中で燃焼除去される。再生装置30中で、温度は優に400℃超まで、たとえば約650℃まで上がる。再生器30からの熱い触媒流は第一の熱交換器40に搬送され、そこで温度が約400℃まで下げられる。触媒流から回収された熱はスチームを生成するために利用され、該スチームはプラントの他の部分でそのまま使用されることができ、電気エネルギーに転換されそしてそういうものとして使用されまたは売却等されることができる。
【0078】
熱交換器40からの触媒流の一部はダウナー反応器20の頂部に搬送される。他の一部は第二の熱交換器50に搬送され、そこで乾燥/磨砕装置10のために望まれる温度、たとえば200℃未満まで冷却される。熱交換器50から回収された熱は、プラントの他の部分で使用されまたは売却されるためのスチームまたは電気エネルギーを生成するために使用されることができる。
【0079】
熱交換器40の出口における温度(およびしたがって、反応器20の頂部における温度)、熱交換器50の出口における温度(したがって、乾燥/磨砕装置10内の温度)、触媒流41と51との比等を変えることによって、本方法は最適化されることができることが理解されよう。一般に反応器20をできる限り低い温度で、好ましくは350℃未満、より好ましくは300℃未満で操作することが望ましい。
【0080】
ダウナー反応器20の代わりにライザー反応器が使用されてもよい。このような配置では、触媒および供給原料は該反応器の底部に導入され、そして生成物および使用された触媒はその頂部で収集されることが理解されよう。
【0081】
フラッシュ熱分解試験
【0082】
フラッシュ熱分解試験(FPT)が図2に示された装置で実施された。
【0083】
該装置は、ベンチ規模のサイクロン反応器(2)中にバイオマスまたはバイオマス/触媒サンプル(1)をNパルスで搬送するための自動弁(5)を備えた供給区画(4)から成っていた。電気炉(3)によって反応器の加熱が与えられ、熱電対(9)によってその温度が制御された。キャリアガス(N、30リットル/分)が反応器の底部に連続的に送り込まれた。液化生成物が、液体窒素(7)中に浸漬された冷却器(6)中に集められた。冷却器壁面に付着しなかった凍結された液体生成物は、ミクロフィルター(8)によって集められた。
【0084】
バイオマスまたはバイオマス/触媒混合物(1)のフラッシュ熱分解が、ベンチ規模のサイクロン反応器(2)中で実施された。該反応器は電気炉(3)によって実験温度まで予熱された。すべての実験中、反応器はN(30リットル/分)で洗い流された。バイオマス(約1g)が反応器の上の原料供給区画(4)中に入れられ、そして自動弁(5)を使用してNの短いパルスで反応器に送られた。後で行われる特性解析試験のために十分な量で液化生成物を集めるために、各実験は、各パルスの間に少なくとも1分間(サンプルの新しい小分けを供給区画中に充填するために要求される時間)を置いて少なくとも4パルスを含んでいた。液化生成物は、マイナス196℃(7)に保たれた冷却器(6)中に集められた。高いキャリアガス流量の故に、一部の「凍結された」液体は冷却器を通り抜け、そして出口のミクロフィルター(8)によって粒子として集められた。ミクロフィルターの後、キャリアガスおよび非凝縮生成物は排気された。
【0085】
熱分解実験の後、該冷却器およびミクロフィルターは室温まで加熱され、そして凝縮された生成物はアセトン(1実験につき約750〜800mlのアセトン)で洗われた。その後、アセトンは室温で真空ロータリーエバポレーターを使用して除かれた。
【0086】
化学薬品
【0087】
すべての化学薬品はSigma−Aldrich社から供された。
キシラン:
Sigma−Aldrich社触媒番号X4252。名称:ブナ材からのキシラン(同義語:ポリ(β−D−キシロピラノース[1→4]))。品質:キシロース残留物>90%。
リグニン:Sigma−Aldrich社触媒番号371017。名称:オルガノソルブリグニン(下式)。

セルロースA:Sigma−Aldrich社触媒番号43,523−6。微結晶セルロース、粉体。分配クロマトグラフィー用高純度セルロース。充填剤、乳白剤、固化防止剤、押出助剤ならびに泡およびエマルション用の安定剤。
特徴および利点:非晶質領域が加水分解されて結晶性ミクロフィブリルを残す。良好な熱安定性を有するチキソトロピー性ゲルを形成する。
形態:微結晶性粉体。
pH:5〜7(11重量%)。
嵩密度:0.6g/mL(25℃)。
【実施例1】
【0088】
示差熱重量分析法
【0089】
Mettler−Toledo TGA/SDTA851e熱天秤を使用して、サンプルの熱分解が実施された。その装置の簡略図が図3に示される。
【0090】
熱天秤(19)が以下のように使用される。アルミニウムカップ(70ml)(11)中に入れられたサンプル(10〜15mg)がカップ支持台(12)上に置かれ、該カップ支持台(12)はサンプル温度を測定するための熱電対を含んでいた。熱処理下のサンプルの重量変化の高品質測定を提供するための恒温区画(15)内に置かれた天秤(14)に、カップはサンプル支持台(13)を介してつながれた。電気炉(16)によって所要の加熱速度(本発明者らの実験では5℃/分)で所望の温度(最大1100℃)まで、サンプルは加熱された。不活性ガス(本発明者らの場合、Ar)が、ガスキャピラリー(17)を経由して該炉中に供給された。管(18)を経由して連続的に供給される保護ガスによって、実験中に起こりうる危険なガスの生成から天秤は保護された。
【0091】
カナダパイン(ピヌスカナディエンシス(pinus canadiensis))の木材粒子を用いて、実験が実施された。粒子は、木材工場から削りくずの形状で得られ、1〜10mmの範囲内の粒子サイズを有していた。これらの削りくずは、0.5〜1mmの粒子サイズ(「パインおがくず」)までコーヒーグラインダー中で5分間、あるいは約0.2mmの粒子サイズ(「パイン粉体」)まで遊星高エネルギーミル(Pulverisette 5)中で粉砕された。
【0092】
上記の熱天秤中で、温度をプログラム制御された加熱に、サンプルは付された。サンプルの重さが温度の関数として記録された。この曲線の微分係数(図4〜8で「DTGシグナル」と言及されている。)も記録された。この曲線の極小値はTG曲線の変曲点に対応し、サンプルの分解温度(「T」)を表示する。純粋なセルロ−ス、キシラン(これはヘミセルロ−スのモデル化合物の役割をした。)、純粋なリグニン、パインおがくず、およびパイン粉体を用いて実験が実施された。
【0093】
粒子状無機物質の添加の効果を測定するために、サンプルは該無機粒子状物質と一緒に遊星高エネルギーミル(Pulverisette 5タイプ)中で120分間磨砕された。このサンプルは温度をプログラム制御された分解に付された。分解温度Tおよび600℃における残留物量が記録された。代表的な曲線が図4〜8に提示される。
【0094】
図4は、パイン粉体のDTG曲線を示す。Tは345℃であり、残留物量は22重量%であった。
【0095】
図5は、NaCO20%と共粉砕されたパイン粉体のDTG曲線を示す。Tは232℃であり、残留物量は24%であった。
【0096】
図6は、MgOの20%と共粉砕されたパイン粉体のDTG曲線を示す。Tは340℃であり、残留物量は17%であった。
【0097】
図7は、カ焼されたハイドロタルサイト20%と共粉砕されたパイン粉体のDTG曲線を示す。Tは342℃であり、残留物量は19%であった。
【0098】
図8は、カ焼されていないハイドロタルサイトと共粉砕されたパイン粉体のDTG曲線を示す。Tは350℃であり、残留物量は13%であった。
【0099】
実験の結果が表1にまとめられる。
【表1】

【0100】
別の比較実験において、パインおがくず、パイン粉体およびNaCO20%と共粉砕されたパイン粉体が、上記のフラッシュ熱分解に付された。パインおがくずおよびパイン粉体のフラッシュ熱分解は、不満足な品質および臭い、ならびに低いpHの黒油を生成した。NaCO20%とともに共粉砕されたパイン粉体サンプルは、色がより薄くかつはるかに良好な品質を有すると判定された油を生成した。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明に従う方法を実施するためのプロセス装置の1の実施態様を示す概略図である。
【図2】熱分解実験を実施するための実験装置を示す概略図である。
【図3】熱天秤の概略図である。
【図4】パイン粉体のDTG曲線を示すグラフである。
【図5】NaCO20%と共粉砕されたパイン粉体のDTG曲線を示すグラフである。
【図6】MgOの20%と共粉砕されたパイン粉体のDTG曲線を示すグラフである。
【図7】カ焼されたハイドロタルサイト20%と共粉砕されたパイン粉体のDTG曲線を示すグラフである。
【図8】カ焼されていないハイドロタルサイトと共粉砕されたパイン粉体のDTG曲線を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形のまたは高度に粘性の、炭素に基づいたエネルギー担持物質を液状およびガス状反応生成物に転化する方法であって、当該方法が、
a) 該炭素に基づいたエネルギー担持物質を粒子状触媒物質と接触させる段階、
b) 該炭素に基づいたエネルギー担持物質を200℃〜450℃の反応温度において転化し、それによって気相にある反応生成物を生成する段階、
c) 該気相反応生成物を、当該反応生成物が生成された後10秒間以内に該粒子状触媒物質から分離する段階、および
d) 任意的に、該反応生成物を200℃未満の温度まで急冷する段階
を含む方法。
【請求項2】
粒子状触媒物質から反応生成物をストリッピングする追加の段階を含む、請求項1に従う方法。
【請求項3】
粒子状触媒物質上に生成された何らかのコークスを燃焼除去する追加の段階を含む、請求項1または2に従う方法。
【請求項4】
粒子状触媒物質を段階a)またはb)にリサイクルするさらなる段階を含む、請求項2または3に従う方法。
【請求項5】
反応性ガスが、段階b)の間に存在する、請求項1〜4のいずれか1項に従う方法。
【請求項6】
反応性ガスが、酸化または還元特性を有する、請求項5に従う方法。
【請求項7】
反応性ガスが、異性化またはアルキル化反応において反応性である、請求項5に従う方法。
【請求項8】
反応性ガスが、酸素、水素、硫化水素、または一酸化炭素を含む、請求項6に従う方法。
【請求項9】
反応性ガスが、イソブタン、ナフテン、または揮発性有機酸を含む、請求項7に従う方法。
【請求項10】
触媒物質が、カチオン粘土、アニオン粘土、天然粘土、ハイドロタルサイト様物質、層状物質、鉱石、鉱物、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物および炭酸塩、またはこれらの混合物を含む、請求項1〜9のいずれか1項に従う方法。
【請求項11】
炭素に基づいたエネルギー担持物質が鉱物由来である、請求項1〜10のいずれか1項に従う方法。
【請求項12】
炭素に基づいたエネルギー担持物質が、タール、重質原油、またはビチューメンである、請求項11に従う方法。
【請求項13】
炭素に基づいたエネルギー担持物質が合成ポリマーである、請求項1〜10のいずれか1項に従う方法。
【請求項14】
炭素に基づいたエネルギー担持物質が固形バイオマスである、請求項1〜10のいずれか1項に従う方法。
【請求項15】
固形バイオマスが、セルロース、リグニン、またはリグノセルロースを含んでいる、請求項14に従う方法。
【請求項16】
固形バイオマスが水生由来である、請求項14に従う方法。
【請求項17】
COが、バイオマスの生産に利用される、請求項3〜16のいずれか1項に従う方法。
【請求項18】
COが、水生バイオマスの生産に利用される、請求項17に従う方法。
【請求項19】
段階a)が、粒子状触媒物質の存在下に、炭素に基づいたエネルギー担持物質を粉砕することを含む、請求項1〜18のいずれか1項に従う方法。
【請求項20】
段階a)が、
(i) 粒子状触媒物質をキャリアガス流の中に吸い取る段階、
(ii) 該粒子状触媒物質が少なくとも1m/秒、好ましくは少なくとも10m/秒の速度に到達するように、該ガス流を流れさせる段階、および
(iii) 該触媒粒子を炭素に基づいたエネルギー担持物質へと衝突させる段階
を含む、請求項1〜19のいずれか1項に従う方法。
【請求項21】
キャリアガスが、さらに粒子状不活性物質を含んでいる、請求項17に従う方法。
【請求項22】
段階a)が、流動床、ライザー反応器、またはダウナー反応器中で実施される、請求項17または18に従う方法。
【請求項23】
段階b)における温度が、350℃未満、好ましくは300℃未満、より好ましくは250℃未満である、請求項1〜22のいずれか1項に従う方法。
【請求項24】
気相反応生成物が、スチーム、炭化水素、またはこれらの混合物を含んでいる、請求項1〜23のいずれか1項に従う方法。
【請求項25】
コークスが、空気を用いて燃焼除去される、請求項3に従う方法。
【請求項26】
コークスが燃焼除去された後、粒子状触媒物質を冷却するさらなる段階を含む、請求項3または22のいずれか1項に従う方法。
【請求項27】
粒子状触媒物質から回収された熱が、スチーム、熱水、または電気を生成するために使用される、請求項23に従う方法。
【請求項28】
少なくとも段階b)が、FCC装置中で実施される、請求項1〜27のいずれか1項に従う方法。
【請求項29】
少なくとも段階b)が、ダウナー中で実施される、請求項1〜27のいずれか1項に従う方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−536235(P2009−536235A)
【公表日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−508362(P2009−508362)
【出願日】平成19年5月4日(2007.5.4)
【国際出願番号】PCT/EP2007/054375
【国際公開番号】WO2007/128798
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(508328877)バイオイーコン インターナショナル ホールディング エヌ.ブイ. (11)
【Fターム(参考)】