説明

炭素担持体、炭素担持体製造方法、炭素担持体製造装置、ガス生成方法、ガス生成装置、発電方法及び発電装置

【課題】アルミナ粒子、金属酸化物粒子に比べて、入手しやすく、安価であり、しかも多用途である炭素担持体、炭素担持体製造方法及び炭素担持体製造装置を提供する。
【解決手段】有機物を加熱することにより、該有機物をタール含有ガスに熱分解し、熱分解によって生成したタール含有ガスを、火山砕屑物粒子、珪藻土、粘土鉱物又は炭酸塩に接触させることによって、該火山砕屑物粒子、珪藻土、粘土鉱物又は炭酸塩に炭素質固体を析出させ、炭素質固体が付着してなる炭素担持体を回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーキング温度、例えば、400℃〜1000℃で細孔を保持、ないし形成している無機物に、炭素を主成分とする炭素質固体が付着してなる炭素担持体、炭素担持体製造方法、炭素担持体製造装置、前記炭素担持体を用いたガス生成方法、ガス生成装置、前記炭素担持体を用いた発電方法及び発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大気中の二酸化炭素を増加させないエネルギー源として、近年バイオマスに注目が集まっている。例えば木材、紙、屎尿、農産物等がバイオマスの例であるが、これらのバイオマスは、生物による二酸化炭素の吸収量と、バイオマスを燃焼させた際に発生する二酸化炭素排出量が相殺することから再生可能なエネルギーと呼ばれる。
【0003】
バイオマスのエネルギーを利用する方法としてはガス化発電装置がある。ガス化発電装置においては、バイオマスを400℃以上の高温で熱分解させることで生じる可燃性ガスを、発電機の燃料として利用している。
バイオマスのガス化工程においては、チャー(木炭)と可燃性ガスが生じると共にタールも発生する。発生したタールは、ガス化工程等の高温状態では可燃性ガス中に気化して含有されている。以下、ガス化工程で発生した、可燃性ガス、気相のタールなどを含むガスをタール含有ガスという。しかし、発生したタール含有ガスを発電機に投入するためには冷却する必要があり、この冷却工程及び管路中の低温部等でタール分は凝縮され、各部に付着し管路の閉塞等の不具合を引き起こす。また発電機の中に流入したタールは、燃焼室内等にカーボンとして付着し、摩耗や焼き付きの原因となる。
【0004】
特許文献1には、タール含有ガスを多孔質アルミナに接触させることにより、タール含有ガスに含まれるタールを除去する手法が開示されている。
また、特許文献2には、タール含有ガスを金属酸化物粒子に接触させることにより、タール含有ガスに含まれるタールを除去すると共に、金属酸化物の還元物を併産する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−132746号公報
【特許文献2】特開2009−298967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されている手法においては、高価なアルミナ粒子を用意する必要があるという問題があった。
また、炭素質固体がアルミナ粒子に付着してなる炭素担持体の用途は、その再利用に限定されているという問題があった。
更に、特許文献2に開示されている手法においては、金属酸化物粒子の安定的な供給元と、生産された金属酸化物の還元物の需要先の確保、及びこれらの輸送コストが課題となり、装置の立地が限定されるという問題があった。
【0007】
従来、多孔質アルミナ及び金属酸化物を用いたタールの分解は、金属の触媒作用によるものと推測されていたため、多孔質アルミナ及び金属酸化物の代替物質を検討する際、専ら金属が検討されてきたところ、本願発明者は、鋭意検討の結果、コーキング温度、例えば、400℃〜1000℃で細孔を保持、ないし形成している無機物を用いれば、タールを分解することができるという知見を得た。
【0008】
本発明は斯かる知見に基づくものであり、アルミナ粒子、金属酸化物粒子に比べて、入手しやすく、安価であり、しかも多用途である炭素担持体、炭素担持体製造方法、炭素担持体製造装置、前記炭素担持体を用いたガス生成方法、ガス生成装置、前記炭素担持体を用いた発電方法及び発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る炭素担持体は、多孔質鉱物粒子に、炭素を主成分とする炭素質固体が付着してなる炭素担持体において、前記多孔質鉱物粒子は、多孔質の火山砕屑物粒子、珪藻土、粘土鉱物又は炭酸塩を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る炭素担持体は、前記火山砕屑物粒子に、鹿沼土を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る炭素担持体製造方法は、前記炭素担持体を製造する方法であって、有機物を加熱することにより、該有機物をタール含有ガスに熱分解し、熱分解によって生成したタール含有ガスを、前記火山砕屑物粒子、珪藻土、粘土鉱物又は炭酸塩に接触させることによって、該火山砕屑物粒子、珪藻土、粘土鉱物又は炭酸塩に炭素質固体を析出させ、炭素質固体が付着してなる炭素担持体を回収することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る炭素担持体製造方法は、タール含有ガスを前記火山砕屑物粒子、珪藻土、粘土鉱物又は炭酸塩に接触させた後のガスを回収することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る炭素担持体製造方法は、前記有機物の熱分解によって生成された炭状固体を回収することを特徴とする。
【0014】
本発明に係る炭素担持体製造装置は、前記炭素担持体を製造する炭素担持体製造装置において、有機物を加熱することにより、該有機物をタール含有ガスに熱分解する熱分解手段と、複数の前記火山砕屑物粒子、珪藻土、粘土鉱物又は炭酸塩が集積した集積物を収容する容器を有し、熱分解によって生成したタール含有ガスを該集積物に通流させる手段と、前記容器を加熱する加熱手段と、炭素質固体が付着してなる炭素担持体を回収する手段とを備えることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る炭素担持体製造装置は、タール含有ガスを前記火山砕屑物粒子、珪藻土、粘土鉱物又は炭酸塩に接触させた後のガスを回収する手段と、回収したガスを燃焼させる手段とを備え、前記熱分解手段及び/又は前記加熱手段は、前記ガスの燃焼によって発生した熱を用いて、有機物の熱分解及び/又は前記容器の加熱を行うように構成してあることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る炭素担持体製造装置は、熱分解によって生成した炭状固体を回収する炭状固体回収手段を備えることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る炭素担持体製造装置は、タール含有ガスを前記火山砕屑物粒子、珪藻土、粘土鉱物又は炭酸塩に接触させた後のガスを回収する手段と、回収したガスをガスエンジンに供給する手段とを備えることを特徴とする。
【0018】
本発明に係るガス生成方法は、前記炭素担持体に、水蒸気を含むガスを接触させ、前記炭素担持体に、水蒸気を含むガスを接触させることによって発生した水素ガス及び/又は一酸化炭素ガスを回収することを特徴とする。
【0019】
本発明に係るガス生成装置は、前記炭素担持体を集積した集積物を収容する炭素担持体収容容器を有し、水蒸気を含むガスを該集積物に通流させる手段と、前記炭素担持体に、水蒸気を含むガスを接触させることによって発生した水素ガス及び/又は一酸化炭素ガスを回収する手段とを備えることを特徴とする。
【0020】
本発明に係る発電方法は、前記炭素担持体に、水蒸気を含むガスを接触させ、前記炭素担持体に、水蒸気を含むガスを接触させることによって発生した水素ガス及び/又は一酸化炭素ガスを燃料電池へ供給することを特徴とする。
【0021】
本発明に係る発電装置は、前記炭素担持体を集積した集積物を収容する炭素担持体収容容器を有し、水蒸気を含むガスを該集積物に通流させる手段と、前記炭素担持体に、水蒸気を含むガスを接触させることによって発生した水素ガス及び/又は一酸化炭素ガスによって発電を行う燃料電池とを備えることを特徴とする。
【0022】
本発明に係る炭素担持体にあっては、炭素を主成分とする炭素質固体が多孔質の火山砕屑物粒子、珪藻土、粘土鉱物又は炭酸塩に付着する事により、エネルギー源として利用可能な炭素坦持体が実現される。また、多孔質の火山砕屑物粒子、珪藻土、粘土鉱物又は炭酸塩は、アルミナ粒子、ゲーサイト等の金属酸化物粒子に比べて、入手しやすく、安価であり、しかも多用途である。
また、炭素坦持体が軽質であること、黒色であり熱線の吸収率が高いこと、リン酸吸着係数が小さい事等の各種特性を生かせば、人工軽質土壌、土壌改良材、融雪材、土壌被覆材として優れた効果を発揮する。火山砕屑物粒子、珪藻土、粘土鉱物は、多孔質であり、コーキング温度で細孔を保持することが可能な無機物である。また、炭酸塩は、コーキング温度で熱分解し、細孔を形成することができる無機物である。例えば、炭酸塩は、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等であり、コーキング温度で熱分解して二酸化炭素CO2 を放出し、細孔を形成する。なお、コーキング温度とは、タール含有ガスに含まれるタールを多孔質無機物に接触させることにより、分解することが可能な温度であり、例えば400℃〜1000℃である。
【0023】
本発明に係る炭素担持体にあっては、火山砕屑物粒子として鹿沼土を含む。鹿沼土は、他の火山砕屑物粒子、珪藻土、粘土鉱物又は炭酸塩に比べて、炭素担持率が高い。
【0024】
本発明に係る炭素担持体製造方法及び装置にあっては、有機物を熱分解して発生したタール含有ガスを火山砕屑物粒子、珪藻土、粘土鉱物又は炭酸塩に接触させることにより、タール含有ガスに含まれるタールが火山砕屑物粒子、珪藻土、粘土鉱物又は炭酸塩によって分解され、炭素質固体となって該火山砕屑物粒子、珪藻土、粘土鉱物又は炭酸塩に付着し、炭素担持体が生成される。
【0025】
本発明に係る炭素担持体製造方法及び装置にあっては、有機物の熱分解によって生成されるタール含有ガスに比べて、タールの濃度が低減したガスが回収される。
また、タールの濃度が低減したガスを燃焼させることで、炭素担持体の製造に必要な熱を得ることができる。
【0026】
本発明に係る炭素担持体製造方法及び装置にあっては、有機物の熱分解によって生成された炭状固体が回収される。該炭状固体もエネルギー源として利用することが可能である。
【0027】
本発明に係る炭素担持体製造装置にあっては、回収したガスをガスエンジンに投入し、発電等に利用することが可能である。
【0028】
本発明に係るガス化方法及び装置にあっては、炭素担持体に水蒸気を含むガスを接触させることにより、炭素担持体の炭素質固体によって水蒸気が還元されて水素ガスが発生する。炭素質固体は、酸化されて一酸化炭素が発生する。
【0029】
本発明に係る発電方法及び装置にあっては、炭素担持体を用いて発生させた水素ガス及び/又は一酸化炭素を利用して、燃料電池により発電を行うことができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る炭素担持体にあっては、アルミナ粒子、金属酸化物粒子に比べて、入手しやすく、安価であり、しかもエネルギー源、軽質土壌、土壌改良材、融雪剤、土壌被覆材等として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態に係る炭素担持体製造方法の一例を示す概念図である。
【図2】炭素担持体を生成する実験に用いた実験装置の一部を示す概略図である。
【図3】多孔質鉱物粒子と、炭素担持率との関係を示した図表である。
【図4】多孔質鉱物粒子の平均粒径と、炭素担持率との関係を示したグラフである。
【図5】本実施の形態に係る炭素担持体製造装置の一構成例を示す模式図である。
【図6】本実施の形態に係るガス化装置及び発電装置の構成例を示すブロック図である。
【図7】本実施の形態に係るガス化装置及び発電装置の他の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、タール含有ガスからタールを除去する手法として、タール含有ガスを、安価に入手可能な多孔質鉱物、例えば火山砕屑物粒子に接触させることにより、タールを炭素質固体として多孔質鉱物粒子に担持させてタール非含有ガスとチャー及び炭素坦持体を併産する方法である。バイオマスから発生するタール含有ガスからタールを除去する事により、発電機に不具合を生じさせることなく発電が可能になる。またタール除去工程において炭素坦持体となった多孔質鉱物粒子は付着以前とは異なった性質に変化する。この特性を利用すれば、融雪材、土壌改良材、軽質人工土壌等に利用することが可能である。
【0033】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
<炭素担持体製造方法>
図1は、本発明の実施の形態に係る炭素担持体製造方法の一例を示す概念図である。まず始めに、バイオマスを用意する。バイオマスは、生物由来の高分子量の有機物であり、木材の場合はセルロース及びリグニン等からなる。
【0034】
次いで、バイオマスを400℃〜1000℃で乾溜することにより、バイオマスは、低分子量のガス、高分子量のチャー(炭状固体)、及びそれらの中間の分子量を有するタールに熱分解する。発生するガスは、メタン、一酸化炭素、二酸化炭素、及び水素等からなり、常温で気体となる成分である。またタールは常温で液体又は固体となる成分であるが、400℃〜1000℃の温度範囲では気体のタール蒸気となっている。ガス及びタールがバイオマスの熱分解によって発生する気相成分となり、チャーが熱分解による残渣となる。前記気相成分は、タール含有ガスに相当する。また別途バイオマス中の有機物の重縮合によって水蒸気が生成する。水蒸気は常温では液体であり、後段のガス冷却装置により液体となって回収される。
【0035】
次いで、バイオマスの熱分解により発生したタール含有ガスを、多孔質鉱物粒子に400℃〜1000℃で接触させる。タール含有ガスが多孔質鉱物粒子の表面に接触している間に、多孔質鉱物粒子の表面でタールが分解し、炭素を主成分とする炭素質固体が多孔質鉱物粒子の表面に付着する。タールが分解されることにより、タール含有ガス中のタール濃度が低減し、タールを殆ど含まないガスが生成される。以下、タール含有ガス中のタール濃度が低減した前記ガスを、タール非含有ガスという。また、多孔質鉱物粒子の表面に炭素質固体が付着してなる炭素担持体が生成される。
そして、生成された炭素担持体と、バイオマスの熱分解によって生成されたチャーと、タール非含有ガスとを回収する。
【0036】
本実施の形態における多孔質鉱物粒子は、多数の細孔を有する火山砕屑物粒子、例えば鹿沼土のような発泡性火山礫である。多孔質鉱物粒子の比表面積は、大きいほど炭素坦持体に含まれる炭素量は多くなり、燃料として利用する場合には好ましいが、燃料以外の用途で利用する場合においては、炭素坦持体に含まれる炭素量を多くする必要はないことから、比表面積の大小にとらわれずに製造装置の立地条件にあわせて選択する事ができる。
【0037】
また、熱分解温度を400℃〜1000℃に設定する理由は、以下の通りである。熱分解温度が1000℃以上の高温ではバイオマスの熱分解時に生じるタール含有ガス中のタール分が熱により分解され微量となること、また一度炭素坦持体に付着した炭素分がC+CO2 =2CO で表される反応を起こして放散され結果的に炭素坦持体の炭素分が抑制される事から、1000℃以下であることが望ましい。また400℃未満の温度では多孔質鉱物粒子の表面に接触したタールが分解する率が低下するため、バイオマスの熱分解により発生したタール含有ガスを多孔質鉱物粒子に接触させる際の温度は400℃以上である必要がある。なお、炭素質固体の収率を高めるためには、タール含有ガスを多孔質鉱物粒子に接触させる際の温度は500℃〜800℃であることが望ましい。
【0038】
多孔質鉱物粒子の表面に析出された炭素質固体の一部は、バイオマスの熱分解により生じる二酸化炭素と、下記式(1)で表される反応を起こし、一酸化炭素COガスとして放散される。
C+CO2 =2CO・・・(1)
上記式(1)で表される反応は高温度になるほど促進されるため、多孔質鉱物粒子と、バイオマスの熱分解により生じるタール含有ガスと、を接触させる温度を変更する事により、炭素坦持体に含有される炭素分と、タール非含有ガス発熱量を変更する事が出来る。
【0039】
本実施の形態に係る炭素担持体製造方法によって製造される炭素担持体に付着している炭素質固体は、炭素を主成分とし、炭素の含有率は重量百分率で70%以上である。炭素質固体は炭素を主成分としているため、炭素担持体は燃料としての利用が可能である。従って、本実施の形態により、従来の技術ではガス中から除去するのみであったタールに含まれる炭素をエネルギー源として利用することが可能となる。また炭素坦持体は揮発分であるタールを含有しない。即ち、本実施の形態の炭素担持体は、固体であるために運搬が容易であり、揮発性を有しないために安全性が高く、容易かつ危険を伴わずにバイオマス起源のエネルギー源として流通させることが可能である。なお、本実施の形態の炭素担持体を燃料として利用した後は、多孔質鉱物粒子が残留し、この多孔質鉱物粒子は再び炭素坦持体の原料としてリサイクルすることができる。
【0040】
また、本実施の形態に係る炭素担持体製造装置によれば、バイオマスからタールを含まないガス及びチャーを製造することができる。製造したガス及びチャーは、タールを含まないため、良質の燃料として利用することが可能である。即ち、本実施の形態では、ガス、炭素担持体及びチャーの形態で、バイオマスが元々含んでいた炭素を利用することができるため、バイオマスの炭素利用効率が向上する。
【0041】
<炭素担持体製造方法に関する実験>
図2は、炭素担持体を生成する実験に用いた実験装置の一部を示す概略図である。バイオマス供給ホッパ11はバイオマスを一定量ずつ炭化炉12へ投入する機能を持ち、炭化炉12は外熱式であり、内部はスクリューコンベアとなっておりバイオマスを熱分解しながら移動させる機能を持つ。バイオマス供給ホッパ11から、炭化炉12に投入されたバイオマスは熱分解されながら炭化炉12内を移動し、タール含有ガスと共に反応炉13へ流れ込む。反応炉13は外部より加熱されており、あらかじめ多孔質鉱物粒子の層13aが設けられている。反応炉13へ流入したバイオマスは多孔質鉱物粒子の層13aの上に蓄積し、タール含有ガスは多孔質鉱物粒子の層13aを通過し冷却器14にて冷却され、誘引ブロア15から外部へ排出される。誘引ブロア15はタール含有ガスを外部に排出するとともに、タール含有ガス内に残留したタール分を遠心力により凝縮させ抽出する機能も持つ。抽出されたタール分は誘引ブロア15下部に設けられたコック16より取り出す事が可能であり、タール含有ガス中に残留したタール分を推定する事が出来る。またバイオマス供給ホッパ11から誘引ブロア15に至る経路はすべて外気から遮断されており、大気が流れ込まないように作られている。
【0042】
図2に示す実験装置で、バイオマスの試料としてカラマツチップ、多孔質鉱物粒子として、真砂土、鹿沼土、蝦夷砂、蝦夷礫、ゲーサイト、廃触媒、ゼオライト、珪藻土、アルミナ等の多孔質粒子を用い、反応炉13の温度を600から650℃に設定してバイオマスの熱分解ガスと多孔質鉱物粒子を接触させ、炭素坦持体を製造した。真砂土、鹿沼土、蝦夷砂、蝦夷礫は、多孔質の火山砕屑物粒子である。製造された炭素坦持体を化学分析すると、その種類によるが、多孔質鉱物粒子として、火山砕屑物粒子を用いた場合、最大20wt%程度の炭素分を含んでいた。また炭化炉12の温度は500〜550℃程度に設定している。500〜550℃程度で木を炭化させた際のタールの発生量は木の乾燥重量に対し、20%程度であると言われている。これに対し、火山灰の種類やバイオマスの種類や投入量にもよるが、誘引ブロア15から回収されたタール量はバイオマス乾燥重量に対し0.7〜5%程度でありタール分の分解が進んでいた。
【0043】
図3は、多孔質鉱物粒子と、炭素担持率との関係を示した図表である。図4は、多孔質鉱物粒子の平均粒径と、炭素担持率との関係を示したグラフである。図3には、各種多孔質鉱物粒子と、その平均粒径と、炭素担持率及び総炭素担持率との関係が示されている。総炭素担持率は、タール含有ガスに接触させた後の多孔質鉱物粒子に付着している炭素質固体の重量パーセントを示している。炭素担持率は、タール含有ガスに接触させる前段階で初めから付着していた炭素質固体の分量を差し引いた炭素担持率、つまり、タール含有ガスに由来する炭素質固体の重量パーセントを示している。図4に示したグラフの横軸は、多孔質鉱物粒子の平均粒径、縦軸は炭素担持率を示している。図3及び図4から分かるように、鹿沼土の炭素担持率が極めて高く、炭素担持材として好適である。
【0044】
<炭素担持体製造装置・方法>
図5は、本実施の形態に係る炭素担持体製造装置の一構成例を示す模式図である。炭素担持体製造装置は、バイオマスを、可燃性のタール含有ガス及びチャーに熱分解する炭化炉33と、タール含有ガスをタール非含有ガスに改質すると共に、炭素担持体を併産する反応炉40とを備える。
【0045】
炭化炉33は、中空円筒状をなし、該炭化炉33を400〜1000℃に加熱する外部熱風加熱槽方式の加熱炉53の内部に略水平の姿勢で設置されている。炭化炉33の一端部に設けられたバイオマス供給口には、管内にバイオマスを供給するバイオマス供給ホッパ31が、バイオマス供給弁32を介して結合されており、炭化炉33の内部には、バイオマス供給ホッパ31及びバイオマス供給口から供給されたバイオマスを他端部側へ搬送する搬送スクリュー33aが設けられている。搬送スクリュー33aは、モータ33bによって駆動する。炭化炉33は、他端部にチャー排出口を有する。チャー排出口には、チャー滞留ホッパ34、及びチャー回収補助弁35を介して、チャー回収ホッパ36が設けられている。チャー回収ホッパ36の排出口には、チャー回収弁37が設けられている。
【0046】
チャー滞留ホッパ34の適宜箇所には、排気口が形成されており、排気口には、バイオマスの熱分解によって発生したタール含有ガスを反応炉40へ導く配管が接続されている。
【0047】
反応炉40は、縦長円筒状をなし、該反応炉40を500℃〜800℃に加熱する加熱炉52の内部に配置されている。反応炉40は,多孔質鉱物粒子が集積した集積物を収容する。反応炉40の上部に形成された多孔質鉱物粒子投入口には、例えば、多孔質鉱物粒子を反応炉40に供給する多孔質鉱物粒子供給ホッパ38が多孔質鉱物粒子供給弁39を介して設けられている。反応炉40は、上端側部にガス流入口を有し、ガス流入口には、炭化炉33に連通する配管が接続されており、バイオマスの熱分解によって発生したタール含有ガスが反応炉40へ流入し、多孔質鉱物粒子の集積物中を通流するように構成されている。500℃〜800℃の温度でタール含有ガスと、多孔質鉱物粒子とが接触した場合、タールが除去されたタール非含有ガス及び多用途の炭素担持体が併産される。
【0048】
反応炉40は、下端部に、炭素担持体を排出する炭素担持体排出口を有する。炭素担持体排出口には、スクリューコンベア41の一端側が接続されており、スクリューコンベア41の他端側には、炭素坦持体回収補助弁42を介して炭素坦持体回収ホッパ43が設けられている。スクリューコンベア41は、反応炉40から排出された炭素担持体を、前記他端側へ搬送する搬送スクリュー41aが設けられている。搬送スクリュー41aは、モータ41bによって駆動する。炭素坦持体回収ホッパ43の排出口には、炭素坦持体回収弁44が設けられている。
【0049】
また、反応炉40は、下部の適宜箇所に、タール非含有ガスを排出する排出口を有する。該排出口には、配管を介して冷却器45が接続されている。冷却器45は、タール含有ガスを冷却することによって、該タール含有ガスに含まれる水分を凝縮させる。凝縮した水分は、冷却器45のドレン弁46から排出される。また、タール含有ガスに残留するタールは、冷却器45により凝縮され、ミスト化される。冷却器45には、誘引ブロア47が接続されており、ミスト化されたタールを含むタール含有ガスは、誘引ブロア47によって、誘引され、誘引ブロア47は、ミスト化されたタールを遠心力によって分離する。分離されたタールは、誘引ブロア47のドレンバルブ48から回収される。
【0050】
誘引ブロア47には、ガスエンジン49及び燃焼炉50が接続されていて、水分及び残留タールが除去されたタール非含有ガスは、ガスエンジン49及び燃焼炉50に供給される。燃焼炉50は、誘引ブロア47から供給されたタール非含有ガス、又は、LPGボンベ51から供給されたプロパンガスを燃焼させる。燃焼炉50には、配管を通じて、加熱炉52,53及び排気ブロア54に順接続されており、タール非含有ガス又はプロパンガスの燃料によって発生した高温の燃焼ガスが加熱炉52,53へ送出され、排気ブロア54によって、例えば、バイオマスの乾燥等に使用する構成になっている。
【0051】
ガスエンジン49は、タール非含有ガスの全部又は一部を利用して動力を出力する装置である。ガスエンジン49の動力は、例えば発電に利用される。
【0052】
以下、このように構成された炭素担持体製造装置の動作を説明する。
炭化炉33の内部はスクリューコンベア41となっており、バイオマスを熱分解させながら移動させる機能を有している。炭化炉33にバイオマスを供給するバイオマス供給ホッパ31はバイオマスを定量供給する機能を有しており、炭化炉33でのバイオマス処理を超えない範囲で炭化炉33にバイオマスを供給する。熱分解されて炭化したチャー及びタール含有ガスはチャー滞留ホッパ34に流れ込む。チャー滞留ホッパ34内でバイオマスの熱分解によって生じたチャーは自重により落下し、チャー回収補助弁35を経てチャー回収ホッパ36へ流れ込む。チャーはチャー回収補助弁35を閉鎖し、その後チャー回収弁37を解放する手順により、連続的に取り出す事が出来る。バイオマス供給ホッパ31が空になった時は、バイオマス供給弁32を閉鎖し、バイオマス供給ホッパ31のハッチを開いてバイオマスを投入し、ハッチを閉鎖後にバイオマス供給弁32を開く手順で行い、大気の流入を防止しながらバイオマスを補給する。ハッチ閉鎖からバイオマス供給弁32を解放の間に、バイオマス供給ホッパ31の内部を窒素ガス等の不活性ガスまたは、バイオマスの熱分解により生じたタール含有ガスまたはタール非含有ガスで掃気する事により、大気の流入量をさらに低減させてもよい。
【0053】
炭化炉33でバイオマスの熱分解により生成されたタール含有ガスはチャー滞留ホッパ34に流入し、上部から誘引ブロア47により吸い出され、反応炉40へ至る。反応炉40は外部より加熱されており、多孔質鉱物粒子が蓄積されている。タール分を含んだタール含有ガスは多孔質鉱物粒子との接触によりタール分が分解され取り除かれる。多孔質鉱物粒子はタールとの接触により、炭素が付着した炭素坦持体に変化する。炭素坦持体は反応炉40の下部に接続しているスクリューコンベア41により反応炉40から取り出され、炭素坦持体回収ホッパ43に蓄積される。炭素坦持体を炭素坦持体回収ホッパ43から取り出すには、スクリューコンベア41をいったん停止し、炭素坦持体回収補助弁42を閉鎖して炭素坦持体回収弁44を解放する。多孔質鉱物粒子は、スクリューコンベア41によって反応炉40から取出された炭素坦持体の量に応じて、多孔質鉱物粒子供給ホッパ38から自重で落下して反応炉40に供給される。多孔質鉱物粒子供給ホッパ38が空になった時は、多孔質鉱物粒子供給弁39を閉鎖し、多孔質鉱物粒子供給ホッパ38のハッチを開いて多孔質鉱物粒子を投入し、ハッチを閉鎖後に多孔質鉱物粒子供給弁39を開くことで大気の流入を防止しながら多孔質鉱物粒子を補給する。ハッチ閉鎖から多孔質鉱物粒子供給弁39を解放の間に、多孔質鉱物粒子供給ホッパ38の内部を窒素ガス等の不活性ガスまたは、バイオマスの熱分解により生じたタール含有ガス又はタール非含有ガスで掃気する事により、大気の流入量をさらに低減させてもよい。
【0054】
反応炉40でタール分を取り除かれたタール非含有ガスは誘引ブロア47により、冷却器45を経て燃焼炉50に至り燃焼する。燃焼によって生じた高温の燃焼ガスは、反応炉40、炭化炉33の加熱に使用され、排気ブロア54により大気に放出される。気相中に残留するタール分は冷却器45により凝縮されミスト化して誘引ブロア47で遠心力を受けて分離し、ドレンバルブ48から回収される。また気相中の水分は冷却器45により凝縮し、ドレン弁46から排出される。装置立ち上げ時の予熱はLPGボンベ51から燃焼炉50に送り込まれるプロパンガスによって行われ、バイオマスの熱分解が安定的に行われるようになった後はバイオマスの熱分解により生じた可燃性のタール非含有ガスのみで装置を運転する。
【0055】
ガスエンジン49はバイオマス分解によって得られるタール非含有ガスの全部または一部を導入して駆動し、高温の排ガスは燃焼炉50に導入して反応炉40及び炭化炉33の加熱に利用する。
【0056】
以上のごとき本実施の形態の炭素坦持体製造装置によりタール非含有ガス、炭素坦持体、及びチャーを製造する事ができる。炭素坦持体及びチャーは固体でかつ安全性が高く運搬も容易であるため、エネルギー源として他所へ運搬して利用する事が可能である。
また、融雪や土壌改良等の用途にも利用できる。
更に、反応炉40及び炭化炉33の温度と炭素坦持体を反応炉40に滞留させる時間を変化させることにより、炭素坦持体、チャー、可燃性ガスがそれぞれ持つエネルギー量は変化することから、たとえば炭素坦持体製造装置から離れた場所でのエネルギー需要が高まった際には、炭化炉33と反応炉40の温度を低め、滞留時間を短めにして炭素坦持体とチャーの発生量を増やしたり、炭素坦持体製造装置の近隣でのエネルギー需要が高まった場合には逆の操作を行う等の調整が可能である。
【0057】
また、本実施の形態の炭素担持体は、燃料としての利用が可能である。更に、本実施の形態の炭素担持体は、水性ガス化反応による水素発生源としての利用が可能である。
【0058】
更にまた、本実施の形態の炭素坦持体は融雪材、土壌改良材、軽質人工土壌、土壌被覆材として利用が可能である。
本実施の形態で製造された炭素坦持体は、黒色であり熱線の吸収性が高いため、融雪材としての利用が可能である。融雪性能は粉炭と同等である。
また、火山砕屑物粒子は一般に酸性であり、リン酸吸着係数が大きく植物の生育の妨げとなる。しかし、炭素坦持体として炭素を付着させた火山砕屑物粒子は、中性化しており、リン酸吸着係数は大幅低減され、土壌への散布も問題を生じない。炭素担持体は、火山砕屑物粒子に含まれるH+イオンが炭素にて還元されることにより、中性化されていると考えられている。従来、火山砕屑物粒子は透水性の向上を目指して、酸性土壌を好む植物の場合に限定して土壌改良剤として使用されているが、本実施の形態によって製造される火山砕屑物粒子を原料とした炭素坦持体は、酸性土壌を好まない植物に対しても透水性を向上させる土壌改良材として利用する事が出来る。
【0059】
火山砕屑物粒子は一般に軽石と呼ばれるように軽質なものであり、屋上緑化用の人工軽質土壌の原料として有用なものである。しかし先記のとおり通常の火山砕屑物粒子は酸性であるがために植物の生育に適さないものであり、あらかじめ酸性を中和するための資材を混入したり、定期的に中和の処置を行う必要がある。本実施の形態で製造される火山砕屑物粒子を原料とした炭素坦持体は、中性であるため、人工軽質土壌の原料として利用すれば製造と維持のコストや手間を削減する事が出来る。
【0060】
土壌被覆材はマルチ材とも呼ばれ、雑草の繁殖防止、地温の上昇等を狙って植物の根基に散布されるものである。本実施の形態で製造される炭素坦持体は、雑草の繁殖となる養分を含んでおらず、黒色化しているために熱線の吸収性が高く地温を高める事ができることから、土壌被覆材としての利用も可能である。また土壌被覆材として利用した後は土壌にそのまま鋤込めば良く、簡便に利用できる。
【0061】
更にまた、火山砕屑物粒子は1000℃以上の高温度で生成されるものであり、加熱しても変性をおこさない。この特性を利用すれば、付着した炭素分を利用して水性ガス化反応によって水素ガスを発生させるないしは炭素分を燃焼させる等してエネルギー源として利用した後、火山砕屑物粒子に再び炭素分を付着させ炭素坦持体として何度も再利用することも可能である
【0062】
なお図に示した炭素坦持体の製造装置は本発明の一例であり本実施の形態の炭素坦持体製造装置は他の構成とすることも可能である。たとえばチャー、炭素坦持体、可燃性ガスのそれぞれが反応直後にもつ熱エネルギーを回収して、バイオマスや多孔質鉱物粒子を乾燥ないしは予熱させたのちに、炭素坦持体製造装置へ投入する構成にしてもよい。加熱炉を省略しガスエンジン49のみで可燃性ガスを燃焼させる構成や、ガスエンジン49を省略する構成であってもよい。燃焼炉50で生じる高温の燃焼ガスを炭化炉33及び反応炉40の内部に流通させる構成であってもよい。反応炉40を複数設けて各々に多孔質鉱物粒子を充填しておき、多孔質鉱物粒子が炭素坦持体に変化したタイミングで切り替えて連続的に製造する構成や、反応炉40内を流動層とする構成であってもよい。製造された炭素坦持体やチャーを利用して製造装置立ち上げの際の予熱に利用する構成であってもよい。
【0063】
<ガス化装置・方法、及び発電装置・方法>
図6は、本実施の形態に係るガス化装置及び発電装置の構成例を示すブロック図である。本実施の形態に係る炭素担持体から発生した水素を用いて発電を行う本実施の形態に係る発電装置の構成例を示すブロック図である。本実施の形態の発電装置は、固体酸化物型燃料電池等の高温作動型の燃料電池67と、燃料電池67で利用するための水素ガスを発生させるガス化反応器61とを備えている。
【0064】
ガス化反応器61には、炭素担持体を貯蔵する貯蔵器62からガス化反応器61へ炭素担持体を供給する供給機63及び炭素担持体をガス化するために水又は水蒸気をガス化反応器61へ供給する水蒸気供給機60が設けられ、ガス化反応後の火山砕屑物粒子である多孔質鉱物粒子をガス化反応器61から回収する回収器64が設けられている。ガス化反応器61には、ドロマイト等の脱硫能を有する粒子が充填された脱硫器65がガス管で接続されており、ガス化反応器61が生成したガスは脱硫器65へ流入する構成となっている。脱硫器65には、ニッケル触媒等の炭化水素改質のための触媒が充填された改質器66がガス管で接続されており、脱硫器65からのガスが改質器66へ流入する構成となっている。また改質器66はガス管で燃料電池67の燃料極に接続されており、改質器66からのガスが燃料電池67の燃料極へ導入される構成となっている。また燃料電池67には、空気極へ空気を供給する空気供給機68が設けられており、更に燃料電池67が発電した電力を外部へ出力する電力出力部69が接続されている。更に、燃料電池67はガス管でガス化反応器61に接続されており、燃料電池67が排出する700℃以上の水蒸気を含んだ排気ガスの少なくとも一部をガス化反応器61へ供給する構成となっている。
【0065】
空気供給機68は、貯蔵器62から所定のレートで炭素担持体をガス化反応器61へ供給し、供給された炭素担持体はガス化反応器61内で集積物となる。燃料電池67からガス化反応器61へ供給される排気ガスに含まれる700℃以上の水蒸気は、炭素担持体の集積物へ通流する。炭素を主成分とする炭素質固体に覆われた炭素担持体に高温の水蒸気が接触することにより、水蒸気と炭素との間で水性ガス化反応が起こり、水素ガス及び一酸化炭素が発生する。水蒸気が炭素担持体に接触する際の温度が700℃未満である場合は、水性ガス化反応の効率が低下するため、ガス化反応器61へ供給される水蒸気の温度は700℃以上である必要がある。回収器64は、水蒸気が十分に通流して元に戻った多孔質鉱物粒子を回収する。回収器64が回収した多孔質鉱物粒子はリサイクルされる。
【0066】
ガス化反応器61が発生するガスは、水素ガス及び一酸化炭素以外に、水蒸気、二酸化炭素、及び微量の炭化水素を含む。ガス化反応器61が発生したガスは、脱硫器65で脱硫され、改質器66で炭化水素が水素及び一酸化炭素に改質される。改質器66から燃料電池67の燃料極へ水素ガス及び一酸化炭素が供給され、空気供給機68から燃料電池67の空気極へ空気が供給されて、燃料電池67は発電を行う。燃料電池67が発電した電力は、電力出力部69から外部へ出力される。
【0067】
以上に説明した如く、本実施の形態の発電装置により、本実施の形態の炭素担持体は水性ガス化反応による水素ガス発生源として利用され、発生した水素を燃料とした燃料電池67が発電を行う。高温型の燃料電池は発電の効率が高いため、本実施の形態により、バイオマス起源のエネルギーを高効率で利用することが可能となる。
【0068】
なお、図6に示した発電装置は、本実施の形態の一例であり、本実施の形態の発電装置はその他の構成とすることも可能である。
【0069】
図7は、本実施の形態に係るガス化装置及び発電装置の他の構成例を示すブロック図である。発電装置は、燃料電池67が排出する高温の排気ガスから熱を回収する熱回収機70を備える。熱回収機70は、燃料電池67から回収した熱で700℃以上の水蒸気を発生させ、発生させた水蒸気をガス化反応器61へ供給する構成となっている。更に発電装置は、回収器64がガス化反応器61から回収した多孔質鉱物粒子が保持する熱を回収する熱回収機71を備える。熱回収機71は、水蒸気等の熱媒体を利用して、回収した熱により、貯蔵器62が貯蔵する炭素担持体を予め加熱しておく構成となっている。発電装置のその他の構成は、図6に示した発電装置の構成と同様であり、対応する部分に同符号を付してその説明を省略する。
【0070】
空気供給機68は予めある程度の温度まで加熱された炭素担持体を貯蔵器62からガス化反応器61へ供給し、熱回収機70は700℃以上の水蒸気をガス化反応器61へ供給し、また水蒸気供給機60によって水又は水蒸気をガス化反応器61へ供給し、ガス化反応器61内で高温の水蒸気が炭素担持体に接触することにより、水素ガス及び一酸化炭素が発生する。発生した水素ガス及び一酸化炭素が脱硫器65及び改質器66を経て燃料電池67の燃料極に供給されることにより、燃料電池67は発電を行う。熱回収機70で燃料電池67からの排気ガスの熱を回収して高温の水蒸気を発生させることにより、水蒸気の含有率が高いガスをガス化反応器61へ供給して、効率良く水素ガス及び一酸化炭素を発生させることができる。また回収器64がガス化反応器61から回収した多孔質鉱物粒子は、熱を保持しており、熱回収機71で多孔質鉱物粒子の熱を回収して炭素担持体の予熱を行うことにより、発電装置の熱効率を向上させることができる。
【0071】
また、本実施の形態の発電装置は、外部からのエネルギー供給により700℃以上の水蒸気を発生させる構成であってもよい。また図6及び図7には外部改質型の発電装置の例を示したが、本実施の形態の発電装置は、燃料電池の燃料極へ炭素担持体及び水蒸気を供給し、燃料極上で水素ガス及び一酸化炭素を発生させて発電を行う内部改質型の発電装置であってもよい。また本実施の形態の炭素担持体を利用して発生させた水素ガスは、燃料電池で利用することに限るものではなく、水性ガス化反応によって発生した水素ガスを回収してその他の用途に利用することも可能である。
【0072】
なお、炭素質固体を付着させることによって炭素担持体を生成する多孔質鉱物粒子として、火山砕屑物粒子を説明したが、多孔質の珪藻土、ゼオライトのような粘土鉱物、炭酸塩を、多孔質鉱物粒子として利用することもできる。炭酸塩は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等である。炭酸カルシウムを含む材料としては、貝殻等が挙げられる。珪藻土、粘土鉱物及び炭酸塩を用いた炭素担持体製造方法、炭素担持体製造装置、ガス生成方法、ガス生成装置、発電方法及び発電装置は、火山砕屑物粒子を用いた各装置及び方法と同様であるため、その詳細な説明を省略する。
炭酸塩を含む貝殻で製造された炭素坦持体の場合は、融雪材としての効果のほかに貝殻自体がカルシウムを持っていることから土壌へのカルシウムの補給と、酸性土壌の中和に利用する事が出来る有用な農業資材となる。ゼオライト等の粘土鉱物及び珪藻土は保肥力(CEC)を高めるための土壌改良材として利用できるものであるため、これらから製造された炭素坦持体は融雪材としての効果の他に、保肥力(CEC)の向上も図ることができる有用な農業資材となる。
【0073】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0074】
31 バイオマス供給ホッパ
32 バイオマス供給弁
33 炭化炉
34 チャー滞留ホッパ
35 チャー回収補助弁
36 チャー回収ホッパ
37 チャー回収弁
38 多孔質鉱物粒子供給ホッパ
39 多孔質鉱物粒子供給弁
40 反応炉
41 スクリューコンベア
42 炭素坦持体回収補助弁
43 炭素坦持体回収ホッパ
44 炭素坦持体回収弁
45 冷却器
46 ドレン弁
47 誘引ブロア
48 ドレンバルブ
49 ガスエンジン
50 燃焼炉
51 LPGボンベ
54 排気ブロア
61 ガス化反応器
62 貯蔵器
63 供給機
64 回収器
65 脱硫器
66 改質器
67 燃料電池
68 空気供給機
69 電力出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質鉱物粒子に、炭素を主成分とする炭素質固体が付着してなる炭素担持体において、
前記多孔質鉱物粒子は、多孔質の火山砕屑物粒子、珪藻土、粘土鉱物又は炭酸塩を含む
ことを特徴とする炭素担持体。
【請求項2】
前記火山砕屑物粒子は、鹿沼土を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の炭素担持体。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の炭素担持体を製造する方法であって、
有機物を加熱することにより、該有機物をタール含有ガスに熱分解し、
熱分解によって生成したタール含有ガスを、前記火山砕屑物粒子、珪藻土、粘土鉱物又は炭酸塩に接触させることによって、該火山砕屑物粒子、珪藻土、粘土鉱物又は炭酸塩に炭素質固体を析出させ、
炭素質固体が付着してなる炭素担持体を回収する
ことを特徴とする炭素担持体製造方法。
【請求項4】
タール含有ガスを前記火山砕屑物粒子、珪藻土、粘土鉱物又は炭酸塩に接触させた後のガスを回収する
ことを特徴とする請求項3に記載の炭素担持体製造方法。
【請求項5】
前記有機物の熱分解によって生成された炭状固体を回収する
ことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の炭素担持体製造方法。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の炭素担持体を製造する炭素担持体製造装置において、
有機物を加熱することにより、該有機物をタール含有ガスに熱分解する熱分解手段と、
複数の前記火山砕屑物粒子、珪藻土、粘土鉱物又は炭酸塩が集積した集積物を収容する容器を有し、熱分解によって生成したタール含有ガスを該集積物に通流させる手段と、
前記容器を加熱する加熱手段と、
炭素質固体が付着してなる炭素担持体を回収する手段と
を備えることを特徴とする炭素担持体製造装置。
【請求項7】
タール含有ガスを前記火山砕屑物粒子、珪藻土、粘土鉱物又は炭酸塩に接触させた後のガスを回収する手段と、
回収したガスを燃焼させる手段と
を備え、
前記熱分解手段及び/又は前記加熱手段は、
前記ガスの燃焼によって発生した熱を用いて、有機物の熱分解及び/又は前記容器の加熱を行うように構成してある
ことを特徴とする請求項6に記載の炭素担持体製造装置。
【請求項8】
熱分解によって生成した炭状固体を回収する炭状固体回収手段を備える
ことを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の炭素担持体製造装置。
【請求項9】
タール含有ガスを前記火山砕屑物粒子、珪藻土、粘土鉱物又は炭酸塩に接触させた後のガスを回収する手段と、
回収したガスをガスエンジンに供給する手段と
を備えることを特徴とする請求項6に記載の炭素担持体製造装置。
【請求項10】
請求項1又は請求項2に記載の炭素担持体に、水蒸気を含むガスを接触させ、
前記炭素担持体に、水蒸気を含むガスを接触させることによって発生した水素ガス及び/又は一酸化炭素ガスを回収する
ことを特徴とするガス生成方法。
【請求項11】
請求項1又は請求項2に記載の炭素担持体を集積した集積物を収容する炭素担持体収容容器を有し、水蒸気を含むガスを該集積物に通流させる手段と、
前記炭素担持体に、水蒸気を含むガスを接触させることによって発生した水素ガス及び/又は一酸化炭素ガスを回収する手段と
を備えることを特徴とするガス生成装置。
【請求項12】
請求項1又は請求項2に記載の炭素担持体に、水蒸気を含むガスを接触させ、
前記炭素担持体に、水蒸気を含むガスを接触させることによって発生した水素ガス及び/又は一酸化炭素ガスを燃料電池へ供給する
ことを特徴とする発電方法。
【請求項13】
請求項1又は請求項2に記載の炭素担持体を集積した集積物を収容する炭素担持体収容容器を有し、水蒸気を含むガスを該集積物に通流させる手段と、
前記炭素担持体に、水蒸気を含むガスを接触させることによって発生した水素ガス及び/又は一酸化炭素ガスによって発電を行う燃料電池と
を備えることを特徴とする発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−21047(P2012−21047A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158128(P2010−158128)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(506074015)バイオコーク技研株式会社 (23)
【Fターム(参考)】