説明

無人搬送車の走行制御装置、および無人搬送車

【課題】屈曲部を過ぎた後の姿勢修正を早期に終了させることができる無人搬送車の走行制御装置、および無人搬送車を提供する。
【解決手段】本発明に係る走行制御装置2Aは、走行経路に沿って敷設された走行ガイドの位置を検知しながら走行する無人搬送車1Aの走行制御装置であって、走行ガイドとの相対位置に応じたセンサ出力信号をそれぞれ出力する前部ガイドセンサ3aおよび後部ガイドセンサ3bと、現在位置を特定する位置特定手段4a、4b、10と、位置に対応した前部ガイドセンサ用の目標センサ出力値と後部ガイドセンサ用の目標センサ出力値とが予め格納された記憶部11と、記憶部11を参照して現在位置に対応する目標センサ出力値を取得し、各ガイドセンサ3a、3bから出力されたセンサ出力信号の値と目標センサ出力値との差が極小となるように操舵方向を変化させる操舵制御部12とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行経路に沿って敷設された走行ガイドの位置を検知しながら走行する無人搬送車の走行制御装置、および無人搬送車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、工場や倉庫等においては、ステーションから別のステーションへと荷物を搬送する荷役手段として無人搬送車が使用されている。図10(A)に示すように、従来の無人搬送車100は、走行経路に沿って敷設された走行ガイド20を検知するガイドセンサ3と、操舵輪5と、複数の駆動輪6とを備え、走行ガイド20がガイドセンサ3の幅方向中心にくるように操舵輪5の操舵角が制御される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
走行ガイド20としては、例えば、路面の表面近傍に埋設された磁性材料からなる磁気棒が使用される。この場合、ガイドセンサ3としては、磁気棒によって生じた磁界の強度を検出する磁気センサが使用される。
【0004】
この他、走行ガイド20としては、路面上に貼り付けられた磁気テープや色付テープを使用することもできる。しかしながら、これらの走行ガイド20は、剥がれや色褪せが生じた場合に面倒な補修作業が必要となる。したがって、補修作業を行いたくない場合は、路面に埋設する磁気棒を走行ガイド20として使用することが多い。
【0005】
従来の無人搬送車としては、図10(A)に示したものの他、車両前部(バンパ側)に前部ガイドセンサ3aおよび操舵輪5を備えるとともに、車両後部(フォーク側)に後部ガイドセンサ3bおよび一対の駆動輪6を備えた無人搬送車100’が知られている(図10(B)参照)。この無人搬送車100’は、(1)車両中心線と走行ガイド20とが平行になるように操舵輪5の操舵角を制御する姿勢角制御と、(2)走行ガイド20が各ガイドセンサ3a、3bの幅方向中心にくるように操舵輪5の操舵角を制御する横変位制御とにより走行制御される。なお、フォーク側に向かって後進するときは姿勢角制御が、バンパ側に向かって走行するときは横変位制御が優先されるのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−69011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、無人搬送車100、100’によって荷役を行う工場や倉庫を設計する際には、該無人搬送車100、100’の走行性能を考慮して走行経路が決定され、走行ガイド20の敷設位置やステーションの設置位置が計画される。しかしながら、実際には施工誤差が少なからず発生するので、計画通りに走行ガイド20が敷設されなかったりステーションの位置がずれたりして、無人搬送車100、100’が走行ガイド20に沿って走行できず、予定していた荷役が行えない場合がある。
【0008】
例えば、図11は荷物22のピックアップ等を行うステーションと走行ガイド20の屈曲部との間の距離が計画よりも短くなった場合の図である。この場合、荷物22をピックアップするために無人搬送車100’をフォーク側に向かって後進させると、屈曲部を過ぎた後の無人搬送車100’の姿勢修正が間に合わず、荷物22に対して斜め向けにフォークが差し入れられるおそれがある(図11(E)参照)。
【0009】
より詳しくは、図11(B)において無人搬送車100’が走行ガイド20の屈曲部に差し掛かると、後部ガイドセンサ3bの幅方向中心と走行ガイド20の位置にずれ(横変位)が生じる。しかしながら、操舵輪5を急旋回させて直ちにこのずれを修正すると、前部ガイドセンサ3aにおいて横変位が生じてしまうので、結局このような操舵輪5の制御は行われず、図11(C)〜(D)において姿勢角制御が優先的に行われた結果、各ガイドセンサ3a、3bにおいて同程度の横変位が残った状態となる。その後、図11(D)〜(E)において姿勢角が極端に崩れないように緩やかに横変位制御が行われるが、屈曲部からステーションまでの距離が短過ぎるために、結局、横変位および姿勢角のずれが残ったまま無人搬送車100’は荷物22をピックアップすることとなる。
【0010】
フォーク上の荷物22をステーションに荷置きする場合も、同様に、無人搬送車100’は荷物22を斜め向けに荷置きすることとなる。
【0011】
このようなピックアップまたは荷置きが行われると、フォーク上またはステーション上で荷崩れが起きるおそれがある。このため、従来の無人搬送車100、100’によって荷役を行う工場や倉庫において施工誤差が発生した場合は、走行ガイド20またはステーションの位置を計画にしたがって修正する必要があり、手間とコストがかかっていた。
【0012】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、屈曲部を過ぎた後の姿勢修正を早期に終了させることができる無人搬送車の走行制御装置、および無人搬送車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明に係る走行制御装置は、走行経路に沿って敷設された走行ガイドの位置を検知しながら走行する無人搬送車の走行制御装置であって、無人搬送車の車両中心線上に離間して設けられ、走行ガイドとの相対位置に応じたセンサ出力信号をそれぞれ出力する第1ガイドセンサおよび第2ガイドセンサと、現在走行中の位置である現在位置を特定する位置特定手段と、上記位置に対応した第1ガイドセンサ用の目標センサ出力値と第2ガイドセンサ用の目標センサ出力値とが予め格納された記憶部と、記憶部を参照して現在位置に対応する目標センサ出力値を取得し、第1および第2ガイドセンサから出力されたセンサ出力信号の値と目標センサ出力値との差が極小となるように操舵方向を変化させる操舵制御部と、を備えたことを特徴としている。
【0014】
この構成では、第1ガイドセンサおよび第2ガイドセンサから出力されるセンサ出力信号が位置毎に予め定められた目標センサ出力値に一致するように制御されるので、走行中に横変位量を任意に変化させることができる。また、この横変位量は、第1ガイドセンサと第2ガイドセンサとで別々に設定することができる。したがって、この構成によれば、走行中に無人搬送車の姿勢を強制的に変化させることにより、屈曲部を通過する際の無人搬送車の姿勢を屈曲部を過ぎた後の理想的な姿勢に近づけて、その後の姿勢修正を早期に終了させることができる。
【0015】
上記走行制御装置は、走行方向が前進なのか後進なのかを検知する走行方向検知部をさらに備え、記憶部には、走行方向が前進の場合に参照される前進用目標センサ出力値と、走行方向が後進の場合に参照される後進用目標センサ出力値とが格納されており、操舵制御部は、走行方向が前進の場合は、センサ出力信号の値と前進用目標センサ出力値とに基づいて操舵方向を変化させ、走行方向が後進の場合は、センサ出力信号の値と後進用目標センサ出力値とに基づいて操舵方向を変化させることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、進行方向後寄りに操舵輪があり、走行ガイドに対する追従性が低い場合にのみ姿勢を強制的に変化させる制御が行われるようにすることができる。
【0017】
走行経路が複数の区間に区分けされている場合、上記走行制御装置の位置特定手段は、区間毎に少なくとも1つ設けられたマーカの存在を検知する区間センサと、検知されたマーカの数を積算することにより現在位置を含む区間を特定する区間特定部とから構成してもよいし、区間毎に少なくとも1つ設けられたマーカに記憶されている区間情報を読み取る区間センサと、読み取られた区間情報に基づいて現在位置を含む区間を特定する区間特定部とから構成してもよい。
【0018】
上記走行制御装置の位置特定手段は、区間の開始位置から現在位置までの距離を検知する距離検知部をさらに備え、区間特定部は、特定した区間と距離検知部によって検知された距離とに基づいて現在位置を詳細に特定することが好ましい。
【0019】
この構成によれば、屈曲部を過ぎた後の姿勢修正をよりスムーズに行うことができる。
【0020】
上記走行制御装置において、目標センサ出力値は、標準センサ出力値に対するオフセット値として格納されていてもよい。
【0021】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る無人搬送車は、上記いずれかの走行制御装置と、少なくとも1つの操舵輪と、走行制御装置の制御下で操舵輪の操舵角を変化させる操舵モータとを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、屈曲部を過ぎた後の姿勢修正を早期に終了させることができる無人搬送車の走行制御装置、および無人搬送車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態に係る無人搬送車の概略図である。
【図2】第1実施形態に係る走行制御装置、およびその周辺部材のブロック図である。
【図3】走行ガイド位置とセンサ出力信号の関係を示すグラフである。
【図4】第1実施形態の記憶部に格納されている目標センサ出力値の一例であって、(A)は前部ガイドセンサ用の目標センサ出力値、(B)は後部ガイドセンサ用の目標センサ出力値を示す図である。
【図5】第1実施形態に係る無人搬送車の後進時の動きを説明するための図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る走行制御装置、およびその周辺部材のブロック図である。
【図7】第2実施形態の記憶部に格納されている目標センサ出力値の一例であって、(A)は前部ガイドセンサ用の目標センサ出力値、(B)は後部ガイドセンサ用の目標センサ出力値を示す図である。
【図8】第2実施形態に係る無人搬送車の前進時の動きを説明するための図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る走行制御装置、およびその周辺部材のブロック図である。
【図10】従来の無人搬送車であって、(A)は全方向に走行可能な無人搬送車、(B)はフォーク付きの無人搬送車の概略図である。
【図11】従来の無人搬送車の後進時の動きを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る無人搬送車の走行制御装置および無人搬送車の好ましい実施形態について説明する。
【0025】
[第1実施形態]
図1に、本発明の第1実施形態に係る無人搬送車の概略図を示す。同図に示すように、無人搬送車1Aは、車両前部(バンパ側)に設けられた前部ガイドセンサ3aおよび操舵輪5と、車両後部(フォーク側)に設けられた後部ガイドセンサ3bおよび一対の駆動輪6と、車両右後部および左後部に各1つ設けられた区間センサ4a、4bとを備えている。同図に示すように、各ガイドセンサ3a、3bは、車両中心線上に離間して配置されている。また、各ガイドセンサ3a、3bおよび各区間センサ4a、4bは、路面に向けて配置されている。
【0026】
路面には、走行ガイド20およびマーカ21が敷設されている。本実施形態に係る走行ガイド20は、断面形状が数mm角、長さが1mの磁性材料からなる磁気棒で構成され、路面の表面近傍に切れ目なく埋め込まれている。本実施形態に係るマーカ21も磁性材料からなり、路面の表面近傍に埋め込まれている。
【0027】
走行ガイド20は、無人搬送車1Aの走行経路に沿って敷設されている。また、走行経路は複数の区間に区分けされており、各区間の境界に少なくとも1つのマーカ21が設けられている。
【0028】
無人搬送車1Aの前部ガイドセンサ3a、後部ガイドセンサ3bおよび区間センサ4a、4bは、磁気センサからなる。各ガイドセンサ3a、3bは、走行ガイド20周辺の磁界の強度を検出する。また、各区間センサ4a、4bは、マーカ21周辺の磁界の強度を検出する。図1に示すように、マーカ21は走行ガイド20から左右に一定距離だけ離れた位置に敷設されているので、走行ガイド20による磁界とマーカ21による磁界が、互いに影響を及ぼし合うことはない。
【0029】
図2は、無人搬送車1Aの内部構造を示すブロック図である。同図に示すように、無人搬送車1Aは、基地局からの指令を受け取るとともに、無人搬送車1Aに関する情報を基地局に送る送受信部7と、基地局から指令された荷役を行うために、各センサから得た情報に基づいて操舵輪5の操舵角を制御する走行制御装置2Aと、走行制御装置2Aの制御下で操舵輪5の操舵角を変化させる操舵モータ8とを備えている。なお、走行制御装置2Aは、駆動輪6を回転させるための走行モータ9も制御する。
【0030】
走行制御装置2Aは、前記前部ガイドセンサ3aおよび後部ガイドセンサ3bと、前記区間センサ4a、4bと、区間特定部10と、記憶部11と、操舵制御部12とからなる。このうち、区間特定部10、記憶部11および操舵制御部12は、マイコンおよび該マイコンの制御下で操舵モータ8および走行モータ9を駆動するインバータ回路等から構成されている。
【0031】
図3に示すように、各ガイドセンサ3a、3bは、例えば、S0〜S15で表された計16個の単位磁気センサを横一列に並べたものであり、走行ガイド20の位置に応じたセンサ出力信号を操舵制御部12に向けて出力する。より具体的には、各ガイドセンサ3a、3bは、走行ガイド20が各ガイドセンサ3a、3bの幅方向中心(走行ガイド位置=0[mm])にあるときはV7およびV8の中間電圧値Vc(以下、「標準センサ出力値」という)、走行ガイド20が単位磁気センサS2の真下にあるときは電圧値V2、走行ガイド20が単位磁気センサS13の真下にあるときは電圧値V13を有するセンサ出力信号を出力する。
【0032】
再び図2を参照して、区間センサ4a、4bは、マーカ21の中心にくると信号を出力する。
【0033】
区間特定部10は、区間センサ4a、4bからの信号を検出した回数、すなわち通過したマーカ21の積算数に基づいて現在走行中の区間である現区間を特定する。区間特定部10は、特定した現区間に関する信号を操舵制御部12に向けて出力する。なお、区間センサ4a、4bおよび区間特定部10は、本発明の“位置特定手段”を構成する。また、本実施形態の位置特定手段では、現在位置がどの区間に含まれているのかを特定することはできるが、該区間内の詳細な位置までは特定することができない。
【0034】
記憶部11には、区間毎の目標センサ出力値が予め格納されている。また目標センサ出力値は、前部ガイドセンサ3a用の目標センサ出力値と後部ガイドセンサ3b用の目標センサ出力値とを含んでいる。
【0035】
図4(A)に示すように、前部ガイドセンサ3a用の目標センサ出力値は、走行ガイド20が前部ガイドセンサ3aの幅方向中心にくるように走行させたいほとんどの区間については標準センサ出力値Vcであるが、走行ガイド20から左右いずれかの方向に横変位させて走行させたい区間(区間6および区間7)については標準センサ出力値Vc以外の値となっている。一方、図4(B)に示すように、後部ガイドセンサ3b用の目標センサ出力値は、全区間において標準センサ出力値Vcとなっている。
【0036】
操舵制御部12は、区間特定部10から出力された現区間に関する信号を受け取った後、記憶部11を参照して、現区間に対応した前部ガイドセンサ3a用の目標センサ出力値および後部ガイドセンサ3b用の目標センサ出力値を取得する。そして、取得した目標センサ出力値と、各ガイドセンサ3a、3bから出力されたセンサ出力信号の電圧値とをそれぞれ比較して、両者の間に差があれば、その差が極小となるように操舵モータ8を駆動して操舵輪5の操舵角を変更する。一方、両者に差がなければ、操舵制御部12は、操舵輪5の操舵角を現状のまま維持する。このような制御は、PI制御、PID制御等により実現することができる。
【0037】
結局、本実施形態に係る走行制御装置2Aによれば、一方のガイドセンサの目標センサ出力値を標準センサ出力値Vcとし、他方のガイドセンサの特定区間における目標センサ出力値を標準センサ出力値Vc以外の値とすることで、該特定区間を走行している無人搬送車1Aの姿勢を任意に変化させることができる。
【0038】
次に、図5を参照して、無人搬送車1Aが屈曲部を有する走行ガイド20に沿って後進する際に行われる、走行制御装置2Aによる走行制御の具体例について説明する。なお、以下の具体例では、記憶部11には図4に示す目標センサ出力値が予め格納されているものとする。
【0039】
図4に示すように、区間5に対応した前部ガイドセンサ3a用の目標センサ出力値および後部ガイドセンサ3b用の目標センサ出力値はいずれも標準センサ出力値Vcとなっている。このため、操舵制御部12は、前部ガイドセンサ3aの幅方向中心および後部ガイドセンサ3bの幅方向中心に走行ガイド20がくるように、操舵輪5の操舵角を制御する。その結果、図5(A)に示すように、区間5では、無人搬送車1Aの車両中心線と走行ガイド20とが完全に一致している。
【0040】
無人搬送車1Aが区間5と区間6との境界に差し掛かると(図5(B)参照)、区間センサ4bがマーカ21の存在を検知し、区間特定部10は区間6に関する信号を操舵制御部12に出力する。そして、この信号を受け取った操舵制御部12は、前部ガイドセンサ3aから出力されるセンサ出力信号の電圧値がV12となり、かつ後部ガイドセンサ3bから出力されるセンサ出力信号の電圧値が標準センサ出力値Vcとなるように、操舵輪5の操舵角を制御し始める。この制御により、無人搬送車1Aは、後部ガイドセンサ3bにおける横変位量が0[mm]で、かつ前部ガイドセンサ3aにおける横変位量がD12[mm]である図5(C)に示す状態となる。
【0041】
無人搬送車1Aが区間7に入ると、操舵制御部12は、前部ガイドセンサ3aから出力されるセンサ出力信号の電圧値がV8となるように操舵輪5の操舵角を制御し、前部ガイドセンサ3aにおける横変位量はD8[mm]となる(図5(D)参照)。一方、後部ガイドセンサ3b用の目標センサ出力値は標準センサ出力値Vcであり、前区間と同じなので、後部ガイドセンサ3bにおける横変位量は0[mm]のままである。
【0042】
その後、無人搬送車1Aが区間8に入ると、操舵制御部12は、前部ガイドセンサ3aおよび後部ガイドセンサ3bから出力されるセンサ出力信号の電圧値が標準センサ出力値Vcとなるように、操舵輪5の操舵角を制御する。この制御により、無人搬送車1Aの車両中心線と走行ガイド20は完全に一致し、図5(E)に示すように、無人搬送車1Aは荷物22に対して真っ直ぐにフォークを差し入れることができる。
【0043】
以上のように、本実施形態に係る走行制御装置2Aによれば、無人搬送車1Aの姿勢を強制的に変化させることにより、屈曲部を通過する際の無人搬送車1Aの姿勢を屈曲部を過ぎた後の理想的な姿勢に近づけて、その後の姿勢修正を早期に終了させることができる。
【0044】
[第2実施形態]
図6は、本発明の第2実施形態に係る走行制御装置2Bのブロック図である。同図に示すように、走行制御装置2Bは、走行方向検知部13をさらに備えている点と、図7に示す目標センサ出力値が記憶部11に予め格納されている点において、第1実施形態に係る走行制御装置2Aと異なっているが、その他の点においては両者は共通している。また、本実施形態に係る無人搬送車1Bは、走行制御装置2B以外の部分については第1実施形態に係る無人搬送車1Aと同じ構成となっている。
【0045】
走行方向検知部13は、例えば、走行モータ9を制御するために走行制御装置2B内で生成された内部信号に基づいて無人搬送車1Bの走行方向を検知し、検知した走行方向に関する信号を操舵制御部12に向けて出力する。走行方向は、走行モータ9の回転軸の回転方向に基づいて検知してもよい。
【0046】
記憶部11には、図7に示す目標センサ出力値が予め格納されている。同図に示すように、目標センサ出力値には、図7(A)に示す前部ガイドセンサ3a用の目標センサ出力値と、図7(B)に示す後部ガイドセンサ3b用の目標センサ出力値とがある。また、前部ガイドセンサ3a用の目標センサ出力値および後部ガイドセンサ3b用の目標センサ出力値は、それぞれ無人搬送車1Bの走行方向が前進の場合に参照される前進用目標センサ出力値(テーブルA−1、B−1)と、走行方向が後進の場合に参照される後進用目標センサ出力値(テーブルA−2、B−2)とを含んでいる。
【0047】
操舵制御部12は、走行方向検知部13によって検知された走行方向が前進の場合は、現区間に対応する前部ガイドセンサ3a用の目標センサ出力値をテーブルA−1から取得するとともに、後部ガイドセンサ3b用の目標センサ出力値をテーブルB−1から取得する。一方、走行方向が後進の場合、操舵制御部12は、前部ガイドセンサ3a用の目標センサ出力値をテーブルA−2から取得するとともに、後部ガイドセンサ3b用の目標センサ出力値をテーブルB−2から取得する。
【0048】
本実施形態に係る走行制御装置2Bによれば、走行方向が後進の場合は、第1実施形態に係る走行制御装置2Aと同様、区間6および区間7において無人搬送車1Bの姿勢を強制的に変化させることができ(特に、図5(C)(D)参照)、走行方向が前進の場合は、区間6および区間7を含む全区間において姿勢を強制的に変化させることなく無人搬送車1Bを走行させることができる(特に、図8(B)(C)参照)。言い換えると、本実施形態に係る走行制御装置2Bによれば、無人搬送車1Bの姿勢を強制的に変化させるのか否かを走行方向に応じて任意に決定することができる。
【0049】
なお、本実施形態において、前進時に無人搬送車1Bの姿勢を強制的に変化させないこととしたのは、操舵輪5が進行方向前寄りにあるために走行ガイドに20に対する追従性が高く、従来の走行制御でも屈曲部を過ぎた後の姿勢修正を早期に終了させることができるからである。
【0050】
[第3実施形態]
図9は、本発明の第3実施形態に係る走行制御装置2Cのブロック図である。同図に示すように、走行制御装置2Cは、区間特定部10と同等の機能を有する区間特定部10Cを備えている点と、距離検知部14をさらに備えている点において、第2実施形態に係る走行制御装置2Bと異なっているが、その他の点においては両者は共通している。また、本実施形態に係る無人搬送車1Bは、走行制御装置2C以外の部分については第2実施形態に係る無人搬送車1Bと同じ構成となっている。
【0051】
距離検知部14は、区間特定部10Cから出力された現区間に関する信号と、走行モータ9の回転軸に取付けられたエンコーダからの信号とに基づいて、直前の区間と現区間との境界位置(現区間の開始位置)から現在位置までの距離を検知する。検知された距離に関する信号は、区間特定部10Cに向けて出力される。
【0052】
区間特定部10Cは、特定した現区間と距離検知部14によって検知された距離とに基づいて、無人搬送車1Cの現在位置を第1実施形態および第2実施形態よりも詳細に特定する。区間特定部10Cは、特定した現在位置に関する信号を操舵制御部12に向けて出力する。なお、本実施形態では、区間センサ4a、4b、距離検知部14および区間特定部10Cが本発明の“位置特定手段”を構成する。
【0053】
本実施形態に係る走行制御装置2Cによれば、屈曲部を過ぎた後の姿勢修正をよりスムーズに行うことができる。より具体的には、第1実施形態では、区間6と区間7との境界を通過する際に横変位量がD12[mm]→D8[mm]に変化したが、本実施形態では、区間6を走行中に横変位量をD12[mm]→D11[mm]→D10[mm]・・・のように段階的に変化させることで、姿勢修正をスムーズかつ迅速に行うことができる。
【0054】
以上、本発明に係る走行制御装置および無人搬送車の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記の構成に限定されるものではない。
【0055】
例えば、上記実施形態では、1つの操舵輪5および2つの駆動輪6を備えたフォーク付きの無人搬送車1A、1B、1Cを一例に挙げて説明したが、本発明はその他の無人搬送車にも適用可能である。本発明を適用可能なその他の無人搬送車としては、例えば、操舵輪5の代わりに駆動輪兼操舵輪を備え、駆動輪6の代わりに従動輪を備えた無人搬送車がある。
【0056】
また、上記実施形態では、センサ出力信号の電圧値と直接対比可能な目標センサ出力値が記憶部11に格納されていることとしたが、目標センサ出力値は、標準センサ出力値(Vc)に対するオフセット値として格納されていてもよい。この場合は、操舵制御部12においてオフセット値と標準センサ出力値とを足し合わせた値が求められ、この値とセンサ出力信号の電圧値との差に基づいて走行制御が行われる。
【0057】
また、上記実施形態では、マーカ21の数を積算することによって現区間を特定したが、マーカ21に該マーカ21が設けられている区間の区間情報を記憶させ、区間センサ4a、4bで該区間情報を読み取ることにより、現区間を特定してもよい。なお、このようなマーカ21としては例えばRFIDタグがある。
【0058】
また、上記実施形態では、走行ガイド20として磁気棒を使用したが、これに代えて、磁気テープや色付テープを使用することもできる。
【符号の説明】
【0059】
1A、1B、1C 無人搬送車
2A、2B、2C 走行制御装置
3a 前部ガイドセンサ(第1ガイドセンサ)
3b 後部ガイドセンサ(第2ガイドセンサ)
4a、4b 区間センサ
5 操舵輪
6 駆動輪
7 送受信部
8 操舵モータ
9 走行モータ
10、10C 区間特定部
11 記憶部
12 操舵制御部
13 走行方向検知部
14 距離検知部
20 走行ガイド
21 マーカ
22 荷物
S0〜S15 単位磁気センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行経路に沿って敷設された走行ガイドの位置を検知しながら走行する無人搬送車の走行制御装置であって、
前記無人搬送車の車両中心線上に離間して設けられ、前記走行ガイドとの相対位置に応じたセンサ出力信号をそれぞれ出力する第1ガイドセンサおよび第2ガイドセンサと、
現在走行中の位置である現在位置を特定する位置特定手段と、
前記位置に対応した前記第1ガイドセンサ用の目標センサ出力値と前記第2ガイドセンサ用の目標センサ出力値とが予め格納された記憶部と、
前記記憶部を参照して前記現在位置に対応する前記目標センサ出力値を取得し、前記第1および第2ガイドセンサから出力された前記センサ出力信号の値と前記目標センサ出力値との差が極小となるように操舵方向を変化させる操舵制御部と、
を備えたことを特徴とする走行制御装置。
【請求項2】
走行方向が前進なのか後進なのかを検知する走行方向検知部をさらに備え、
前記記憶部には、前記走行方向が前進の場合に参照される前進用目標センサ出力値と、前記走行方向が後進の場合に参照される後進用目標センサ出力値とが格納されており、
前記操舵制御部は、前記走行方向が前進の場合は、前記センサ出力信号の値と前記前進用目標センサ出力値とに基づいて操舵方向を変化させ、前記走行方向が後進の場合は、前記センサ出力信号の値と前記後進用目標センサ出力値とに基づいて操舵方向を変化させることを特徴とする請求項1に記載の走行制御装置。
【請求項3】
前記走行経路は複数の区間に区分けされており、
前記位置特定手段は、
前記区間毎に少なくとも1つ設けられたマーカの存在を検知する区間センサと、
検知された前記マーカの数を積算することにより前記現在位置を含む前記区間を特定する区間特定部と、
を有することを特徴とする請求項1または2に記載の走行制御装置。
【請求項4】
前記走行経路は複数の区間に区分けされており、
前記位置特定手段は、
前記区間毎に少なくとも1つ設けられたマーカに記憶されている区間情報を読み取る区間センサと、
読み取られた前記区間情報に基づいて前記現在位置を含む前記区間を特定する区間特定部と、
を有することを特徴とする請求項1または2に記載の走行制御装置。
【請求項5】
前記位置特定手段は、前記区間の開始位置から前記現在位置までの距離を検知する距離検知部をさらに備え、
前記区間特定部は、特定した前記区間と前記距離検知部によって検知された距離とに基づいて前記現在位置を詳細に特定することを特徴とする請求項3または4に記載の走行制御装置。
【請求項6】
前記目標センサ出力値は、標準センサ出力値に対するオフセット値として格納されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の走行制御装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の走行制御装置と、
少なくとも1つの操舵輪と、
前記走行制御装置の制御下で前記操舵輪の操舵角を変化させる操舵モータと、
を備えたことを特徴とする無人搬送車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−113377(P2012−113377A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259638(P2010−259638)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(000232807)日本輸送機株式会社 (320)
【Fターム(参考)】