説明

無人搬送車

【課題】 複雑な制御を要することなく、予め路面に設定された走行ラインに沿って追従性良く走行することのできる無人搬送車を提供する。
【解決手段】 車両本体の横方向偏差yeとヨー角偏差φeとに基づいて求められる走行ライン上での移動速度VLから前後方向偏差xeを求め、これらの偏差に従って車両本体に対する進行速度指令値ur、旋回速度指令値γr、および横行速度指令値νrを求める。そしてこれらの指令値と、推定横行速度および推定旋回速度とに従って追従制御に必要な横行速度と旋回速度とをそれぞれ得る操舵角δypを求めて、前輪および後輪の各操舵角δfrを決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前輪および後輪をそれぞれ操舵して、予め路面に設定された走行ラインに沿って走行駆動される無人搬送車であって、特にその追従制御性を高めた無人搬送車に関する。
【背景技術】
【0002】
工場等の敷地内において、予め路面に設定された走行ラインに沿って自動走行する無人搬送車は、特に重量物に対する搬送作業の省力化を実現する手段として注目されている。
この種の無人搬送車は、例えば走行距離センサ、操舵角センサおよび姿勢角センサ(ジャイロ)を備え、これらの各センサにより検出される自車の走行位置データと前記走行ラインのデータとから、前記走行ラインに沿って走行する為の目標姿勢角を求めて操舵制御するように構成される。この際、算出した目標姿勢角に達するまで、予め設定した走行距離毎に徐々に角度が変化する姿勢角指令を求めて操舵制御することで、積載重量に拘わることなく安定した走行を実現することが提唱されている(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
また予め路面に磁気誘導体を走行ライン(磁気ライン)として敷設しておき、無人搬送車に設けた磁気センサにて上記走行ライン(磁気誘導体)を検出して上記走行ラインからのずれ量(偏差)を求め、このずれ量とジャイロ等を用いて検出される車両本体の姿勢(車両の向き)とに基づいて操舵制御することで、該無人搬送車を走行ラインに沿って自動走行させることも提唱されている(例えば特許文献2を参照)。
【特許文献1】特開2003−22132号公報
【特許文献2】特開2002−351545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで前輪および後輪をそれぞれ操舵可能な無人搬送車は、前輪側の操舵角と後輪側の操舵角とを独立に制御することで多様な走行が可能である。しかしその反面、その操舵制御が複雑化することが否めない。例えば前輪と後輪とに逆向きの操舵角δfrを与えた場合、無人搬送車はこれらの操舵角δfrの和によって規定される旋回半径にて旋回する。また前輪と後輪とに同じ向きの操舵角δfrを与えた場合、無人搬送車はこれらの操舵角δfrの差によって規定される旋回半径にて旋回すると共に、横方向への変位も生じる。特に前輪と後輪とに同じ向きで同じ操舵角δfrを与えた場合、無人搬送車は旋回することなく、その姿勢を維持したまま斜めに走行する。
【0005】
従って無人搬送車を前述した走行ラインに沿って走行させるには、上述した車両本体の挙動を配慮して、例えば無人搬送車の上記走行ラインからのずれ量や該走行ラインに対する向き、更にはその走行速度に応じて、前輪および後輪をそれぞれ最適に操舵することが必要となる。具体的には、例えば車両本体の走行ラインに対するずれ量(横方向偏差)に応じて前輪の操舵角を決定した後、車両本体の姿勢(ヨー角偏差)に応じて上記前輪の操舵角を勘案しながら後輪の操舵角を決定すると言うような煩雑な制御が必要となる。
【0006】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、その目的は、複雑な制御を要することなく、予め路面に設定された走行ラインに沿って追従性良く走行することのできる無人搬送車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するべく本発明に係る無人搬送車は、前輪および後輪をそれぞれ操舵し、路面に設定された走行ラインに沿って走行駆動されるものであって、
(a) 前記走行ラインに対する車両本体の横方向偏差ye、ヨー角偏差φe、および走行速度Vをそれぞれ検出する検出手段と、
(b) 前記車両本体の走行速度Vを前記走行ライン上に射影して該車両本体の前記走行ライン上での移動速度VLを求める射影手段と、
(c) 前記車両本体に対する目標速度udの積分値と前記車両本体の移動速度VLの積分値との差から前記走行ライン方向の前後方向偏差xeを求める距離差検出手段と、
(d) 前記車両本体の横方向偏差ye、ヨー角偏差φe、前後方向偏差xe、および前記目標走行速度udとから、前記車両本体に対する進行速度指令値ur、旋回速度指令値γr、および横行速度指令値νrをそれぞれ求める指令値演算手段と、
(e) 前記横方向偏差yeから前記走行ラインに対する前記車両本体の横行速度を推定する横行速度推定手段と、
(f) 推定した横行速度と前記車両本体の旋回速度γとに基づいて前記前輪および後輪の各操舵角δfrを決定する操舵制御手段と
を具備したことを特徴としている。
【0008】
好ましくは前記走行ラインが路面に敷設された磁気ラインである場合には、前記車両本体の横方向偏差yeおよびヨー角偏差φeは、前記車両本体に設けられた前後一対のライン型磁気センサにてそれぞれ検出される前記車両本体の前輪側および後輪側における前記磁気ラインからの幅方向のずれ量ef,erからそれぞれ求めるように構成される(請求項2)。また前記射影手段は、例えば前記車両本体の前記走行ラインに対する横方向偏差yeおよびヨー角偏差φeに基づいて前記車両本体の走行速度Vを前記走行ライン上に射影するように構成される(請求項3)。
【0009】
更に前記操舵制御手段は、例えば前記前輪および後輪の操舵角から求められる前記車両本体の旋回半径R0と前記車両本体の走行速度Vとから該車両本体の旋回速度γを推定する旋回速度推定手段を備え、前記横行速度推定手段にて推定した横行速度と前記横行速度指令値νrとの差を[0]とする第1の操舵角δyを求めると共に、前記旋回速度推定手段にて推定した旋回速度γと前記旋回速度指令値γrとの差を[0]とする第2の操舵角δpを求め、これらの第1および第2の操舵角δypから前記前輪および後輪の各操舵角δfrを決定するように構成される(請求項4)。
【0010】
また好ましくは上記第1および第2の操舵角δypをそれぞれ求める演算手段は、前記車両本体の走行速度Vに応じて前記第1および第2の操舵角δypに対する制御ゲインを変更するものであって、特に前記車両本体の走行速度Vが予め設定された定速走行速度V0以下の場合には、一定の制御ゲインの下で前記第1および第2の操舵角δypをそれぞれ求め、また前記車両本体の走行速度Vが前記定速走行速度V0を越える場合には、前記走行速度Vが大きくなるに従って小さく設定される制御ゲインの下で前記第1および第2の操舵角δypをそれぞれ求めるように構成される(請求項5)。
【0011】
即ち、本発明に係る無人搬送車は、図1にその処理概念を示すように
車両本体の前記走行ラインに対する横方向偏差yeおよびヨー角偏差φeと、前記車両本体の走行速度Vとをそれぞれ検出し(検出手段a)、前記横方向偏差yeとヨー角偏差φeとに基づいて前記車両本体の走行速度Vを前記走行ライン上に射影して該車両本体の前記走行ライン上での移動速度を求めると共に(射影手段b)、この移動速度の積分値と目標速度udの積分値との差から前記車両本体の前記走行ライン方向における前後方向偏差xeを求める(距離差検出手段c)。
【0012】
そして上述した如く求められた前記横方向偏差ye、ヨー角偏差φe,および前後方向偏差xeと、前記車両本体に対する目標走行速度udとから、前記走行ラインに対する追従走行に必要な前記車両本体の走行制御指令値、具体的には進行速度指令値ur、旋回速度指令値γr、および横行速度指令値νrを、例えば
r=ud・cosφe+Kx・xe
νr=Ky・ud・ye
γr=Kp・ud・sinφe
但し、Kx,Ky,Kpはそれぞれ正の制御ゲイン
として一義的に求める(指令値演算手段d)。
【0013】
その上で前記横方向偏差yeから前記走行ラインに対する前記車両本体の横行速度を推定し(横行速度推定手段e)、この推定した横行速度と前記車両本体の旋回速度γとから前記前輪および後輪の各操舵角δfrを決定する(操舵制御手段f)ことを特徴としている。
尚、上記車両本体の旋回速度γについては、例えば前輪および後輪の操舵角から求められる前記車両本体の旋回半径R0と前記車両本体の走行速度Vとから推定(旋回速度推定手段g)するようにすれば良い。そして横行速度と旋回速度γとから操舵角δfrを決定するに際しては、例えば横行速度と前記横行速度指令値νrとの差を[0]とする第1の操舵角δyを求める(第1の演算手段h)と共に、旋回速度γと前記旋回速度指令値γrとの差を[0]とする第2の操舵角δpを求め(第2の演算手段i)、これらの第1および第2の操舵角δy,δφから前記前輪および後輪の各操舵角δfrを、
δf=0.5δp+δy , δr=−0.5δp+δy
としてそれぞれ求めるようにすれば良い。そしてこれらの各操舵角δfrに従って前記前輪および後輪をそれぞれ操舵すると共に、前記進行速度指令値urに従って前記車両本体の走行速度Vを制御するようにすれば良い。
【発明の効果】
【0014】
上述した構成の無人搬送車によれば、車両本体の走行ラインに対する横方向偏差ye、ヨー角偏差φe,および前後方向偏差xeを求めることで、前記車両本体に対する目標走行速度udに従って前記車両本体の走行制御に必要な進行速度指令値ur、旋回速度指令値γr、および前記走行ラインに対する横行速度指令値νrをそれぞれ一括して計算することができる。その上で車両本体の挙動から推定される横方向速度および旋回速度に従い、上記横行速度指令値νrおよび旋回速度指令値γrとの偏差をそれぞれ[0]とする横変位制御系および旋回制御系を構築し、これらの各制御系を満足させ得る前輪および後輪の各操舵角δfrを一意に決定するだけで、走行ラインに沿った車両本体の安定した追従走行制御が可能となる。
【0015】
従って従来のように車両本体の走行ラインに対する位置関係やその挙動等に応じて場合分けしながら前輪および後輪の操舵角やその操舵の向きを決定する必要がないので、その制御系の大幅な簡素化を図ることができる。特に、例えば車両本体の走行ラインに対するずれ量(横方向偏差)に応じて前輪の操舵角を決定した後、車両本体の姿勢(ヨー角偏差)に応じて上記前輪の操舵角を勘案しながら後輪の操舵角を決定すると言うような煩わしさがない等の実用上多大なる効果が奏せられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態に係る無人搬送車について、左右一対の前輪WFL,WFRおよび左右一対の後輪WRL,WRRをそれぞれ操舵可能に備えた4輪操舵型の車両を例に説明する。
尚、重量物搬送用の車両には、前輪および/または後輪をその前後方向にタンデム配列した、いわゆる多軸輪型のものもある。しかしタンデム配列された車輪については、等価的に1つの車輪(1軸)として捉えることができるので、ここでは多軸輪型の車両を含めて4輪操舵型の車両として説明する。また左右一対の前輪WFL,WFRおよび/または左右一対の後輪WRL,WRRをその車軸に複数の車輪を同軸に重ねて装着した、いわゆるダブルタイヤ等として実現する場合もある。これらの多重に装着された複数の車輪についても等価的に1つの車輪として看做すことができるので、ここでは多重に装着された車輪を含めて前輪および後輪として説明する。
【0017】
さてこの無人搬送車は、図2にその概略構成を示すように車両本体1の前後に左右一対の前輪WFL,WFRおよび左右一対の後輪WRL,WRRを備えたもので、例えばバッテリにより駆動されるモータ(電動機)を動力源として走行駆動され、工場等の敷地内において予め設定された走行ラインLに沿って自動走行するように構成される。特に上記各車輪WFL,WFR,WRL,WRRは、基本的には速度制御部2の制御の下で回転速度制御されて走行駆動されると共に、操舵制御部3の制御の下でその操舵角がそれぞれ制御されるようになっている。
【0018】
ちなみに上記走行ラインLは、予め路面に描いた白線や、路面に敷設した複数の磁性素子の並びがなす磁気ラインとして実現される。そして上記無人搬送車は、車両本体1の前輪側および後輪側にそれぞれ設けた前後一対のセンサ4f,4rを用いて後述するように前記走行ラインLに対する車両本体1の幅方向へのずれ量eをそれぞれ検出し、これらの検出結果に基づいて自車両(車両本体)が上記走行ラインL上に位置付けられるように、その走行速度と操舵角とを制御するものとなっている。
【0019】
具体的には上記各センサ4f,4rは、前記走行ラインLが磁気ラインとして形成される場合、例えば図3に示すように上記磁気ラインLからの磁力を検出する複数の磁気センシング素子を前記車両本体1の幅方向に所定のピッチpで直線状に配列したライン型の磁気センサアレイとして実現される。これらの各センサ4f,4rは前記車両本体1の前輪側および後輪側において、センサアレイ中のどの位置の磁気センシング素子にて前記走行ラインLからの磁力を検出し得るかを判定することで、車両本体1の上記走行ラインLからの横方向のずれ量eを検出する役割を担う。そしてこれらの各ラインセンサ4f,4rにてそれぞれ検出された車両本体1の前輪側および後輪側における前記走行ラインLからの横ずれ量ef,erは、マイクロコンピュータ等を主体とする走行制御部5に入力され、前述した各車輪WFL,WFR,WRL,WRRの回転速度制御および操舵角制御に用いられるようになっている。
<制御系の全体構成>
図4は走行制御部5によって構築される無人走行車の全体的な制御系の構成を示している。
【0020】
この走行制御部(制御系)5は上記各ラインセンサ4f,4rにてそれぞれ検出された車両本体1の前輪側および後輪側における前記走行ラインLからのずれ量ef,erに従って該車両本体1の前記走行ラインLに対する横方向偏差(横ずれ量)ye、およびヨー角偏差(向きのずれ角)φeをそれぞれ求めるセンサ処理部10を備える。またこの走行制御部(制御系)5は、前記車両本体1から検出される走行速度(実速度)Vと該車両本体1に対する目標速度udとから前記走行ラインL上における車両本体1の移動速度VLを求め、更にこの移動速度から車両本体1の前記走行ラインLに沿った移動距離を監視するデッドレコニング処理部20を備える。このセンサ処理部10およびデッドレコニング処理部20は、図1を参照して説明した本発明における検出手段a、射影手段b、および距離差検出手段cを実現するものである。
【0021】
またこの制御系(走行制御部5)は、上述した如く求めた横方向偏差ye、向き偏差(ヨー角偏差)φe、および目標速度udに従い、走行ラインLに追従した走行制御に必要な進行速度指令urと旋回速度指令γrとを求める軌道追従速度指令生成器30を備える。この軌道追従速度指令生成器30は、前述した指令値演算手段dに相当する。特にこの軌道追従速度指令生成器30においては、旋回速度指令γrを横行成分νと旋回成分γとに分けて捉えることで、その制御指令値を
r=ud・cosφe+Kx・xe
νr=Ky・ud・ye
γr=Kp・ud・sinφe
としてそれぞれ一括して求めるように構成される。
【0022】
更にこの制御系(走行制御部5)は、上述した軌道追従速度指令生成器30が生成した制御指令値urrrに従い、特に上記制御指令値νrrを同時に満足する操舵指令値δypをそれぞれ求め、更にこれらの操舵指令δypを同時に満足する前輪および後輪に対する操舵角δfrをそれぞれ決定する速度制御器40を備える。そしてこの速度制御器40は、前述した速度制御指令値urを車両本体1の走行速度Vを制御するモータ指令として前述した速度制御部2に出力すると共に、上述した如く求めた操舵角δfrを前述した操舵制御部3に出力するものとなっている。
【0023】
車両本体1に組み込まれてモータの回転速度を制御するインバータ装置等からなる速度制御部2は、上記速度制御指令値urに従って車両本体1の走行速度Vを制御し、また車両本体1に組み込まれて各車輪の操舵角を決定するシリンダを駆動する操舵制御部3は、上記操舵角δfrに従って前輪および後輪をそれぞれ操舵することで車両本体1の走行ラインLに沿った自動追従走行が実現されることになる。
【0024】
次に上述した制御系における上述したセンサ処理部10での車両姿勢(横方向偏差ye,ヨー角偏差φe)の推定処理、デッドレコニング処理部20での移動距離(移動速度VL)の推定処理、軌道追従速度指令生成器30での速度制御指令値urrrの生成処理、および速度制御器40での操舵角δfrの決定処理について、それぞれ具体的に説明する。
<車両姿勢の推定処理>
車両本体1に設けられた前後一対のセンサ4f,4rは、前述したように車両本体1の幅方向に複数の磁気センシング素子を所定のピッチpで直線状に配列したものからなる。そしてこれらの磁気センシング素子の内、図3に示すように走行ライン(磁気ライン)Lに対向する部位に位置付けられた磁気センシング素子だけが該走行ラインLからの磁力を受けてその出力を変化させる。従ってセンサ4f,4rを構成する複数の磁気センシング素子の各出力を所定の閾値で弁別すれば、走行ライン(磁気ライン)L上に位置付けられた磁気センシング素子だけが走行ライン検出信号を出力することになる。
【0025】
従ってピッチpで配列されたN個の磁気センシング素子のうち、図3に示すように左からiL番目の磁気センシング素子からiR番目の磁気センシング素子にて走行ラインLを検出した場合、走行ラインLの中心線の位置eを
e={(iL+iR)−(N+1)}・p/2
として算出することが可能となる。つまり磁気センシング素子の配列ピッチpの半分の分解能で前記走行ラインLの中心線の位置eを検出することができる。また前記センサ4f,4rが車両本体1の中心軸を中心として左右対称に設けられているものとすれば、上述した如く検出される走行ラインLの中心線の位置eは、取りも直さず車両本体1の前記走行ラインLからの横方向へのずれ量を示すことになる。この結果、前後一対のセンサ4f,4rにて車両本体1の前輪側および後輪側における前記走行ラインLからの横方向へのずれ量ef,erがそれぞれ求められることになる。
【0026】
ここで車両本体1の中心(重心)Oが前輪WFL,WFRおよび後輪WRL,WRRとの中心位置として定められるものとする。また前記一対の磁気センサ4f,4rは、上記車両本体1の中心Oから該車両本体1の前後方向にそれぞれ距離(LS/2)を隔てて、つまり前後一対のセンサ4f,4rが距離LSを隔てて上記中心Oに対して車両本体1の前後方向に対称に設けられているものとする。すると車両本体1の前輪側および後輪側において前記各センサ4f,4rにてそれぞれ求められた走行ラインLからの横方向へのずれ量ef,erから、図5に示すように車両本体1の走行ラインLからの横ずれ量ye
e=(ef+er)/2
として幾何学的に求めることが可能となる。
【0027】
また車両本体1の走行ラインLに対する傾き角度(ヨー角偏差)φeは、図5に示すように走行ラインLに対してセンサ4f,4r間の離間方向(車両本体1の前後方向)によって規定される辺と、上記センサ4f,4rによりそれぞれ検出される横ずれ方向(車両本体1の幅方向)に規定される辺とにより形成される直角三角形の正接と看做し得るので、
φe=tan-1{(ef−er)/LS
として求めることができる。
【0028】
従って前後一対のセンサ4f,4rにて前輪側および後輪側における幅方向のずれ量ef,erをそれぞれ検出したならば、これらのずれ量ef,erに従って前記車両本体1の走行ラインLに対する姿勢(ずれ量とその向き)を、横方向偏差yeおよびヨー角偏差φeとしてそれぞれ検出することができる。故に従来のようにジャイロ等の姿勢角センサを用いて車両本体1の地表座標系に対する絶対的な向きを求めることなく、単に走行ラインLに対する車両本体1の相対的な向きを車両座標系におけるヨー角偏差φeとして簡易に求めることができる。特に前後一対のセンサ4f,4rを用いて前輪側および後輪側における幅方向のずれ量ef,erをそれぞれ検出するだけで良いので、そのセンシング系の大幅な簡素化と低コスト化を図ることができ、無人搬送車に組み込む上での実用上利点が多大である。
<移動距離の推定>
ところで上述した如く求めた横方向偏差yeとヨー角偏差φeとに従って操舵制御しながら車両本体1を走行させた場合、その制御系の構成によっては操舵の追従遅れ等に起因して、例えば図6にその概念を示すように走行ラインLに対して車両本体1の走行軌跡が破線aとして示すように蛇行したり、或いは走行ラインLの曲がりに対してアンダーステア(二点鎖線b)やオーバーステア(一点鎖線c)を生じて、その走行軌跡が走行ラインLからずれることがある。このような走行ラインLに対する蛇行やずれを生じながら車両本体1が走行した場合、例えば車輪径とその回転数とにより求められる車両本体1の走行距離と、走行ラインLに沿った車両本体1の実質的な移動距離との間にずれが生じることが否めない。この為、車両本体1の走行距離に応じて該車両本体の停止位置を制御すると、目標停止位置に至る前に車両本体1が停止すると言う不具合が生じる。
【0029】
そこで前記デッドレコニング処理部20においては、横方向偏差yeとヨー角偏差φeとに従って車両本体1の走行速度Vを前記走行ラインL上に射影することで、該走行ラインL上での車両本体1の移動速度VLを推定している。そしてこの移動速度VLを積分することで前記走行ラインL上での移動距離を求め、これによって上述した目標停止位置までの正確な追従走行を実現している。
【0030】
例えば前述した走行ラインLに対する蛇行は、微小時間におけるヨー角偏差φeに依存する車両本体1の上記ヨー角方向への走行として捉えることができる。従ってこの場合には、図7に示すように走行ラインLに対して角度(ヨー角)φeをなす向きへの車両本体1の走行速度Vを上記走行ラインL上に射影すれば、該走行ラインL上での車両本体1の実質的な移動速度VL
L=V・cosφe
として求めることができる。
【0031】
また走行ラインLに沿って旋回する場合には、オーバー/アンダーステアによって上記走行ラインLに対して横方向偏差yeを生じながら該走行ラインLに沿って走行していると看做すことができる。特に車両本体1の旋回速度がγであるとき、微小時間Δtにおいて車両本体1が進む距離ΔSは、
ΔS=(R+ye)・γ・Δt
として表すことができる。また微小時間Δtにおける旋回運動による移動量は、直進運動による移動量に等しいと看做し得るので、微小時間Δtに車両本体1が進む距離ΔSは
ΔS=V・Δt
としても表すことができる。従って図8に示すように走行ラインLから偏差yeのずれをもって旋回する車両本体1の走行速度Vを上記走行ラインL上に射影することで走行ラインL上での移動速度VLを、
L=R・γ=V−ye・γ
であると推定することが可能となる。
【0032】
尚、このような旋回走行は、前述したヨー角偏差φeを持ちながら生じることもある。従ってこの場合には、車両本体1の走行速度Vを上記走行ラインLに平行で、且つ該走行ラインLに対して横方向偏差yeを有する平行ライン上に一旦射影した後、この平行ラインに射影した速度を前記走行ラインL上に射影して移動速度VLを求めるようにすれば良い。
【0033】
このようにして車両本体1の走行速度Vを、走行ラインLに対する横方向偏差yeおよびヨー角偏差φeに従って該走行ラインL上に射影し、これによって走行ラインL上での実質的な移動速度VLを求めれば、この移動速度VLを積分することによって走行ラインL上での車両本体1の移動距離を正確に評価することが可能となる。従ってデッドレコニングの手法を用いて車両本体1の走行距離を制御する場合であっても、その走行距離を正確に評価することが可能となるので、車両本体1をその目標停止位置に正確に停止させることが可能となる。
【0034】
特に車両本体1の走行ラインLに対する横方向偏差yeおよびヨー角偏差φeに従って当該車両本体1の走行速度Vを走行ラインL上に射影すると言う簡単な手法だけで、走行ラインL上における実質的な移動速度VLを正確に評価することができる。従って操舵制御遅れ等に起因する走行ラインLに対する蛇行等の問題に拘わることなく、車両本体1の移動距離を高精度に把握することが可能となる。
<追従制御指令>
ところで走行ラインLに沿って車両本体1を走行させるには、前述した走行ラインLに対する車両本体1の横ずれ量を示す横方向偏差yeと、車両本体1の向き(角度)のずれ量を示すヨー角偏差φeとに従って、これらの横方向偏差yeおよびヨー角偏差φeをそれぞれ[0]とするように前記速度制御部2および操舵制御部3を用いてその走行速度と操舵角とをそれぞれ制御することが必要である。
【0035】
ちなみに従来より提唱されている非ホロノミック制御の手法による軌道追従制御は、専ら、或る時刻における絶対座標系での走行ラインL上の目標軌道の位置とその向きを[xd,ydd]とし、車両本体1の重心における絶対位置とその向きを[x,y,φ]としたとき、
【0036】
【数1】

【0037】
が成り立つことから、上記軌道を追従するに必要な進行速度指令urと旋回速度指令γrとを
r=ud・cosφe+Kx・xe
γr=γd+ud(Ky・ye+Kp・sinφe
として求めている。但し、上記udは目標進行速度であり、またγdは目標旋回速度である。またKx,Ky,Kpは、それぞれその制御ゲインである。しかし車両本体1の絶対位置とその向きを[x,y,φ]を取得するには、例えばジャイロ等の方位センサや、GPS(全方位測位システム)等の位置検出センサが必要となり、その構成が複雑化することが否めない。
【0038】
この点、この実施形態に係る無人搬送車においては前述したように車両座標系における横方向偏差yeと向き偏差(ヨー角偏差)φeとをそれぞれ求めている。また前後方向偏差xeについては前述した走行ラインL上での移動速度VLの積分値と目標進行速度udの積分値の差として求めることができる。更に車両本体1の走行ラインLに対する斜行を勘案すれば、上述した旋回速度指令γrについては横行と旋回とに分けて捉えることが可能である。従ってこれらの観点に立脚すれば、走行ラインLに追従して走行するに必要な制御指令(進行速度指令値ur、横行速度指令値νr、および旋回速度指令値γr)を
r=ud・cosφe+Kx・xe
νr=Ky・ud・ye
γr=Kp・ud・sinφe
としてそれぞれ一括に求めることが可能となる。
<操舵角の決定>
ところで上述した横行指令νrおよび旋回速度指令γrに基づいて横行速度と旋回速度とを制御するには、操舵角を制御することが必要である。即ち、或る速度で走行している状態において操舵すれば、その走行速度に応じた横行速度と旋回速度とが生じることは自明であり、逆に所望とする横行速度と旋回速度とを得るには、操舵角を決定することが必要である。
【0039】
ちなみに4輪操舵型の車両(無人搬送車)は、等価的には図9に示すように前輪側および後輪側の各中央部に前輪および後輪を1輪ずつ備えた二輪モデルとして表現することができる。そして4輪モデルにおける左右一対の前輪WFL,WFRの操舵角δFLFR、および左右一対の後輪WRL,WRRの操舵角δRLRRと、二輪モデルにおける前輪および後輪の各操舵角δfrとの間には
δf=(δFL+δFR)/2
δr=(δRL+δRR)/2
なる関係が成立する。換言すれば上記操舵角の関係が成立する場合、4輪操舵型の車両(無人搬送車)を上述した二輪モデルとして捉えることができる。
【0040】
そしてこれらの前輪側および後輪側の操舵角δfrの絶対値が等しい場合、その操舵の向き逆相であれば車両本体1は旋回し、同相であれば車両本体1の向きを保ったまま斜行する。また前輪側および後輪側の操舵角δfrが異なり、その操舵の向き逆相であれば車両本体1はその操舵角差に応じて旋回し、操舵の向きが同相であれば旋回しながら斜行することになる。
【0041】
従って必要とする横行速度と旋回速度とを得るには、例えば必要な旋回速度を得るための逆相の操舵角成分δpを求めた後、次の必要な横行速度を得る為の同相の操舵角成分δyを求め、これらの各操舵角成分δpy
δp=δf−δr
δy=(δf+δr)/2
なる関係を満たすように、前輪側および後輪側の各操舵角δfrを決定すれば良い。そこで速度制御器40においては、走行ラインLを追従するに必要な横行速度と旋回速度とをそれぞれ得るための操舵角成分δpyが求められたならば、これらの各操舵各成分δpyに従って
δf=0.5δp+δy
δr=−0.5δp+δy
として前輪側および後輪側の各操舵角δfrをそれぞれ決定している。
<旋回速度の推定>
ところで走行ラインLを追従するに必要な横行速度と旋回速度とをそれぞれ得る制御系は、一般的には図10に示すようにPI(比例・積分)制御系にて構成される。具体的には指令横行速度(横行指令νr)が決定されたならば、そのときの車両本体1の実横行速度νとの偏差Δνを求め、この偏差Δνを[0]とする操舵指令値(制御値)δyを求めるようにすれば良い。同様に指令旋回速度(旋回速度指令γr)が決定されたならば、そのときの車両本体1の実旋回速度γとの偏差Δγを求め、この偏差Δγを[0]とする操舵指令値(制御値)δpを求めるようにすれば良い。
【0042】
尚、横行速度指令νrおよび旋回速度指令γrについては、前述したように走行ラインLに対する車両本体1の横方向偏差yeとヨー角偏差φeとから、その目標進行速度udに従って
νr=Ky・ud・ye
γr=Kp・ud・sinφe
として求めることができる。また車両本体1の実横行速度νについては、前述した走行ラインLに対する車両本体1の横方向偏差yeの変化から推定することが可能である。しかし車両本体1の実旋回速度γについては、例えばヨーレートセンサを用いない限り計測することは困難である。
【0043】
そこで速度制御器40においては次のようにして車両本体1の実旋回速度γを推定している。即ち、前輪および後輪の操舵角δfrの絶対値が等しく、その操舵の向き逆相であって、しかも車両本体1の重心とその中心点Oとが一致し、更に中心点Oから各車輪までの距離が等しいと仮定した場合、その内輪の操舵角をδとすると上記重心の旋回半径R0は図11に示すように
1=Wf/sinδ
0=R1cosδ=Wf・cosδ/sinδ
として示される。但し、Wfは車両の前後方向における中心点Oから前輪までの距離(ホイールベース長の半分)である。尚、上式において[sinδ]にて除する項は、操舵角δが小さい程その旋回半径が大きく、操舵角δが[0]ならば、旋回半径は無限大、つまり直進運動であることを示している。
【0044】
そして微小時間においては、旋回運動による速度と進行速度とが一致すると看做し得るので、車両本体1の走行速度をVとしたときの旋回速度γを
γ=V/R0
として推定することができる。尚、このようにして旋回速度γを推定する場合には、内輪の操舵角δが必要となる。この操舵角δについては、例えば車輪を操舵するシリンダのストローク長から求めるようにしたり、ストローク長指令に適当な制御遅れ要素を加味して求めるようにすれば良い。また或いは前述したセンサ4f,4rの出力から旋回速度γを計算しても良いことは言うまでもない。
【0045】
また上述したシリンダのストローク長に基づいて操舵角δを求める場合、実際には左右の各車輪に対してそれぞれ操舵角が求められることになる。そこで左右両輪の操舵角の平均値を求め、この操舵角の平均値に従って旋回速度γを推定している。尚、実際には重心位置と中心位置Oとにずれがあり、これに起因して推定誤差が生じることがある。しかし或る程度の推定誤差についてはフィードバック制御により適切に対処することが可能なので、操舵制御を実行する上で致命的な問題となることはない。
<制御ゲインの調整>
ところで前述した旋回速度γは車両本体1の走行速度Vに依存する。具体的には低速走行時に比較して高速走行時には、同じ操舵角であっても旋回速度γが早くなる。即ち、或る操舵角および走行速度で1秒間に車両本体1が旋回し得る角度が明らかである場合、その走行速度が2倍になれば、当然のことながら車両本体1が1秒間に旋回する角度も2倍となる。
【0046】
これに対して車両本体1が安定に旋回できる旋回速度γには自ずと制約がある。従って前述した如くして旋回指令γrを求めた場合、例えば図12に示すように車両本体1の走行速度Vに応じて操舵ゲインを変化させて、高速走行時における旋回速度γがその旋回限界を超えないように制御することが望ましい。具体的には位置合わせ時等のゆっくりとした低速走行時から通常走行速度V0までは操舵ゲインを[1]として前述した図10に示したPI制御系の制御ゲインに乗じることで操舵指令値δpを求める。そして車両本体1の走行速度Vが通常走行速度V0を超えて高速走行域に入ったならば、その走行速度の高速化に応じて操舵ゲインを徐々に低減し、これによって操舵指令値δpを抑えるようにすれば良い。
【0047】
尚、車両本体1の移動が殆ど認められない極低速走行時には、図12に示すように上記操舵ゲインを[0]とし、これによって操舵自体を禁止することも望ましい。このようにして、例えば3m/分程度の低速位置合わせ速度に達するまで旋回指令γrを出力することのないような制限を加えれば、いわゆる据え切りを防止することができるので、車輪の局部的な摩耗等による変形を未然に防ぐことが可能となる等の効果が奏せられる。
【0048】
かくして上述した如く制御系を構成した無人搬送車によれば、前後一対のセンサ4f,4rを用いて車両本体1の前輪側および後輪側における走行ラインLからのずれ量ef,erに基づいて該車両本体1の横方向偏差yeとヨー角偏差φeとを求め、これらの横方向偏差yeとヨー角偏差φeとに従って走行ラインLに対する軌道追従制御に必要な制御指令(進行速度指令ur、横行速度指令νr、および旋回速度指令γr)を一意に求めるので、その制御系の大幅な簡素化を図ることが可能となる。
【0049】
また車両本体1の向き(姿勢)や走行ラインLの曲がり具合等の状態、および前輪および後輪の各操舵の向き等の全てを把握していなくても、走行ラインLに対する車両本体1の横方向偏差yeとヨー角偏差φeとを検出するだけで上記走行ラインLに精度良く追従させるに必要な制御指令値urrrを求めることができ、これらの制御指令値urrrに従って車両本体1の走行速度や前輪および後輪の各操舵角δfrをそれぞれ精度良く制御することが可能となる。しかも簡単な演算処理だけで前輪および後輪の各操舵角δfrを一意に決定して、その操舵制御に用いることができる等の実用上多大なる効果が奏せられる。
<変形例>
尚、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えばこの実施形態においては、走行ラインLに対する車両本体1の横方向偏差yeおよびヨー角偏差φeを、前後一対の磁気センサ4f,4rにて求められる前輪側および後輪側のすれ量ef,erから算出するようにしたが、ジャイロ等を用いて求められる車両本体1の地表座標に対する絶対角と走行ラインLの向きを示すデータとからヨー角偏差を求めたり、またGPSを用いて検出される地表座標位置と走行ラインLの座標データとから、その横方向偏差を算出するようにしても良い。
【0050】
またここでは走行ラインLが磁気ラインとして実現される場合を例に説明したが、走行ラインが白線にて形成される場合には、これを光学的に検出して走行制御することも勿論可能である。更には車両本体の横行速度や旋回速度を推定する手法についても種々の手法を適宜採用可能である。
また4輪操舵型の無人搬送車において前輪WFL,WFRおよび後輪WRL,WRRを同相に操舵した場合等、車両本体1は走行ラインLに対して斜めに走行し、前輪側および後輪側のセンサ4f,4rの一方が走行ラインL上から脱線することがある。この場合には、例えば脱線したセンサ4f,4rの出力を無視し、同相操舵による斜行だけが行われるようにその走行を制御すれば良い。具体的には一方のセンサ4f(4r)の出力だけを用い、他方のセンサ4r(4f)については上記一方のセンサ4f(4r)と同じ値(ずれ量)を出力しているものと看做すことで、ヨー角偏差φeが存在せず、同相操舵による斜行だけが行われるようにすれば良い。
【0051】
この場合、車両本体1の斜行距離を監視する等して他方のセンサ4f(4r)の出力を有効とするタイミングを制御し、例えば所定の距離に亘って斜行しても上記他方のセンサ4f(4r)から走行ラインLを検出することができないような場合には、車両本体1が走行ラインLから大きく逸脱している、或いはヨー角偏差φeが大きい等と判断してその走行を停止させることが望ましい。その他、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係る無人搬送車における追従制御を実現する為の全体的な処理概念を示す図。
【図2】無人搬送車の概略構成を示す図。
【図3】磁気センサによるずれ量検出の原理を説明する為の図。
【図4】無人搬送車の走行ラインに対する追従走行制御系の全体構成を示す図。
【図5】前後一対のセンサにより検出されたずれ量ef,erに基づく車両本体の横方向偏差yeとヨー角偏差φeの算出原理を示す図。
【図6】走行ラインに対する車両本体の追従走行軌跡を示す図。
【図7】ヨー角偏差φe有して走行する車両本体の走行速度を走行ライン上に射影して求められる移動速度を示す図。
【図8】横方向偏差yeを有して旋回する車両本体の走行速度を走行ライン上に射影して求められる移動速度を示す図。
【図9】4輪モデルと2輪モデルとの関係を示す図。
【図10】走行ラインLを追従するに必要な横行速度と旋回速度とをそれぞれ得る制御系の一般的な構成を示す図。
【図11】車両本体の操舵角δとその旋回半径R0との関係を示す図。
【図12】旋回速度を決定する走行速度に応じた操舵ゲインの例を示す図。
【符号の説明】
【0053】
a 検出手段(センサ)
b 射影手段
c 距離差検出手段
d 指令値演算手段
e 横行速度推定手段
f 操舵制御手段
g 旋回速度推定手段
h 第1の演算手段(第1の操舵角δy
i 第2の演算手段(第2の操舵角δp
L 走行ライン
1 車両本体
2 速度制御部
3 操舵制御部
f,4r センサ(磁気センサ)
5 走行制御部
10 センサ処理部
20 デッドレコニング処理部
30 軌道追従速度指令生成器
40 速度制御器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪および後輪をそれぞれ操舵し、路面に設定された走行ラインに沿って走行駆動される無人搬送車であって、
前記走行ラインに対する車両本体の横方向偏差ye、ヨー角偏差φe、および走行速度Vをそれぞれ検出する検出手段と、
前記車両本体の走行速度Vを前記走行ライン上に射影して該車両本体の前記走行ライン上での移動速度VLを求める射影手段と、
前記車両本体に対する目標速度udの積分値と前記車両本体の移動速度VLの積分値との差から前記走行ライン方向の前後方向偏差xeを求める距離差検出手段と、
前記車両本体の横方向偏差ye、ヨー角偏差φe、前後方向偏差xe、および前記目標走行速度udとから、前記車両本体に対する進行速度指令値ur、旋回速度指令値γr、および横行速度指令値νrをそれぞれ求める指令値演算手段と、
前記横方向偏差yeから前記走行ラインに対する前記車両本体の横行速度を推定する横行速度推定手段と、
推定した横行速度と前記車両本体の旋回速度γとに基づいて前記前輪および後輪の各操舵角δfrを決定する操舵制御手段と
を具備したことを特徴とする無人搬送車。
【請求項2】
前記走行ラインは、路面に敷設された磁気ラインであって、
前記車両本体の横方向偏差yeおよびヨー角偏差φeは、前記車両本体に設けられた前後一対のライン型磁気センサにてそれぞれ検出される前記車両本体の前輪側および後輪側における前記磁気ラインからの幅方向のずれ量ef,erからそれぞれ求められるものである請求項1に記載の無人搬送車。
【請求項3】
前記射影手段は、前記車両本体の前記走行ラインに対する横方向偏差yeおよびヨー角偏差φeに基づいて前記車両本体の走行速度Vを前記走行ライン上に射影するものである請求項1に記載の無人搬送車。
【請求項4】
前記操舵制御手段は、前記前輪および後輪の操舵角から求められる前記車両本体の旋回半径R0と前記車両本体の走行速度Vとから該車両本体の旋回速度γを推定する旋回速度推定手段を備え、
前記横行速度推定手段にて推定した横行速度と前記横行速度指令値νrとの差を[0]とする第1の操舵角δyを求めると共に、前記旋回速度推定手段にて推定した旋回速度γと前記旋回速度指令値γrとの差を[0]とする第2の操舵角δpを求め、
これらの第1および第2の操舵角δypから前記前輪および後輪の各操舵角δfrを決定して前記前輪および後輪をそれぞれ操舵するものである請求項1に記載の無人搬送車。
【請求項5】
前記第1および第2の操舵角δypをそれぞれ求める演算手段は、前記車両本体の走行速度Vに応じて前記第1および第2の操舵角δypに対する制御ゲインを変更するものであって、
前記車両本体の走行速度Vが予め設定された定速走行速度V0以下の場合には、一定の制御ゲインの下で前記第1および第2の操舵角δypをそれぞれ求め、
前記車両本体の走行速度Vが前記定速走行速度V0を越える場合には、前記走行速度Vが大きくなるに従って小さく設定される制御ゲインの下で前記第1および第2の操舵角δypをそれぞれ求めるものである請求項4に記載の無人搬送車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−107027(P2006−107027A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−291373(P2004−291373)
【出願日】平成16年10月4日(2004.10.4)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【出願人】(000198363)石川島運搬機械株式会社 (292)
【Fターム(参考)】