説明

無停電電源装置

【課題】交流電源や負荷に流れる漏洩電流を抑制できる無停電電源装置を得る。
【解決手段】変換器3のコンバータ4は入力側のフィルタ2を介して交流電源1に接続され交流を直流に変換し、インバータ7は直流母線6を介してコンバータ4に接続され直流を交流に変換して出力側のフィルタ8を介して負荷15に供給する。蓄電池12は、直流−直流コンバータ11を介して直流母線6に接続され変換器3との間で電力を授受する。入力側及び出力側のコンデンサ2b,8bの中性点同士を接続しバイパスコンデンサ21を介して接地し、浮遊容量による漏洩電流の低減を図っている。蓄電池12を循環コンデンサ22を介して接地し、制御回路28にてバイパスコンデンサ21に発生するコモンモード電圧Vcom及び直流母線に発生するコモンモード電圧Vcを打ち消す電圧を発生させ、変換器3から交流電源1や負荷15へ還流する漏洩電流を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無停電電源装置に係り、特に交流電源の交流電圧を直流電圧に変換するコンバータと、その直流電圧を交流電圧に変換するインバータの動作により、交流電源や負荷に流れる漏洩電流を抑制することができる無停電電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に無停電電源装置は、交流電源から受電した交流電圧を直流電圧に変換するコンバータと、その直流電圧を平滑する平滑コンデンサと、直流母線を介して平滑コンデンサに接続され平滑コンデンサの直流電圧を所望の交流電圧に変換し負荷に出力するインバータとからなる変換器と、エネルギーを蓄積する蓄電池が蓄電池の直流電圧を所望の直流電圧に変換する直流―直流コンバータを介して平滑コンデンサに並列に接続された構成を有している。このような無停電電源装置においては、コンバータを構成する半導体開閉素子のスイッチングに伴って発生するキャリア周波数成分の影響が、交流電源に伝播しないように、コンバータの入力側にフィルタを設置する。またインバータを構成する半導体開閉素子のスイッチングに伴って発生するキャリア周波数成分が負荷側に伝播しないように、インバータの出力側にもフィルタを設置する。上記の各フィルタによってキャリア周波数成分に起因した高周波電圧の変動成分の影響は軽減される。
【0003】
しかし、このように、コンバータの入力側とインバータの出力側にそれぞれフィルタを設置した場合には、キャリア周波数成分を軽減することが可能であるものの、接地点から見た直流電圧にはキャリア周波数成分に起因した電圧変動が発生する。このような状況に鑑みて、従来の電力変換装置において、コンバータの入力側のフィルタを構成するY結線されたコンデンサの中性点とインバータの出力側のフィルタを構成するY結線されたコンデンサの中性点とを互いに電気的に接続する電力変換装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−294381号公報(段落番号0007及び図1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の電力変換装置は以上のように構成され、入力側及び出力側のフィルタのコンデンサの中性点が互いに接続されているが、変換器を構成するコンバータやインバータとアースとの間には浮遊容量が必然的に存在するので、コンバータのスイッチングに伴って生じる高周波電流が浮遊容量を介してアースに漏洩し、当該高周波電流が交流電源側の接地点から入力側のフィルタを経由して再びコンバータに流入して循環したり、あるいは、浮遊容量を介してアースに漏洩した高周波電流が負荷側の接地点から出力側のフィルタを経由して再びインバータに流入して循環したりする。このように変換器から浮遊容量を介して漏洩する高周波電流は、コンバータやインバータのキャリア周波数成分の電流よりも周波数が高いために、変換器の入力側および出力側にそれぞれ設けられたフィルタのコンデンサによっては循環するのを十分に阻止することができない。
【0006】
そして、このように循環する高周波電流が放射ノイズ源となり、交流系統である交流電源側に接続される他の機器へ誘導障害を与えたり、ラジオ周波数帯に影響を及ぼすなどの問題点がある。また、コンバータとインバータとを接続する直流母線に蓄電池が接続される無停電電源装置においても、蓄電池とアースとの間に生じる浮遊容量を介して高周波電流が流れるため、同様な問題を生じる。特に、変調波の3倍の周波数が重畳されるような低周波のコモンモード電圧が発生すると、漏電遮断器の誤動作を誘発する可能性がある。
【0007】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、無停電電源装置と接続される交流電源や負荷に流れる漏洩電流を抑制することができる無停電電源装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る無停電電源装置においては、
入力側のフィルタと、変換器と、出力側のフィルタと、直流−直流コンバータと、蓄電池と、バイパスコンデンサと、循環コンデンサと、補償制御装置とを有する無停電電源装置であって、
入力側及び出力側のフィルタは、それぞれリアクトルとコンデンサとを有し、コンデンサは一方の端子がリアクトルに接続され他方の端子が共通に接続されたものであり、
変換器は、コンバータとインバータと直流母線とを有し、
コンバータは、入力側のフィルタを介して交流電源に接続され交流を直流に変換するものであり、
インバータは、直流母線を介してコンバータに接続され直流を交流に変換して出力側のフィルタを介して負荷に供給するものであり、
蓄電池は、直流−直流コンバータを介して直流母線に接続され変換器との間で電力のやりとりを行うものであり、
入力側及び出力側のコンデンサの共通に接続された他方の端子同士が接続線により接続されるとともにバイパスコンデンサを介して接地され、蓄電池は循環コンデンサを介して接地されたものであり、
補償制御装置は、バイパスコンデンサに流れる電流を減少させる方向の電圧を補償コモンモード電圧として循環コンデンサに発生させるものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係る無停電電源装置においては、
入力側のフィルタと、変換器と、出力側のフィルタと、直流−直流コンバータと、蓄電池と、バイパスコンデンサと、循環コンデンサと、補償制御装置とを有する無停電電源装置であって、
入力側及び出力側のフィルタは、それぞれリアクトルとコンデンサとを有し、コンデンサは一方の端子がリアクトルに接続され他方の端子が共通に接続されたものであり、
変換器は、コンバータとインバータと直流母線とを有し、
コンバータは、入力側のフィルタを介して交流電源に接続され交流を直流に変換するものであり、
インバータは、直流母線を介してコンバータに接続され直流を交流に変換して出力側のフィルタを介して負荷に供給するものであり、
蓄電池は、直流−直流コンバータを介して直流母線に接続され変換器との間で電力のやりとりを行うものであり、
入力側及び出力側のコンデンサの共通に接続された他方の端子同士が接続線により接続されるとともにバイパスコンデンサを介して接地され、蓄電池は循環コンデンサを介して接地されたものであり、
補償制御装置は、バイパスコンデンサに流れる電流を減少させる方向の電圧を補償コモンモード電圧として循環コンデンサに発生させるものであるので、
変換器から交流電源や負荷に流れる漏洩電流を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1である無停電電源装置の回路図である。
【図2】図1の無停電電源装置の動作原理を説明するための説明図である。
【図3】図1の直流−直流コンバータ及び循環コンデンサの変形例を示す回路図である。
【図4】図1の直流−直流コンバータ及び循環コンデンサの別の変形例を示す回路図である。
【図5】この発明の実施の形態2である無停電電源装置の回路図である。
【図6】この発明の実施の形態3である無停電電源装置の回路図である。
【図7】この発明の実施の形態4である無停電電源装置の回路図である。
【図8】この発明の実施の形態5である制御回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1〜図4は、この発明を実施するための実施の形態1を示すものであり、図1は無停電電源装置の回路図、図2は図1の無停電電源装置の動作原理を説明するための説明図、図3は図1の直流−直流コンバータ及び循環コンデンサの変形例を示す回路図、図4は図1の直流−直流コンバータ及び循環コンデンサの別の変形例を示す回路図である。図1において、商用周波数の三相交流の交流電源1にフィルタ2を介して変換器3が接続され、交流電源1から受電した交流電圧を直流電圧に変換する。変換器3はコンバータ4と平滑コンデンサ5と直流母線6とインバータ7とを有する。コンバータ4は、図示しないが周知の半導体開閉素子とこの半導体開閉素子に並列に接続されたダイオードとを有する6組の開閉手段が3相フルブリッジ接続された3相フルブリッジ回路を有し、上記開閉手段が図示しない制御手段によって開閉制御される。
【0012】
インバータ7は、直流母線6を介してコンバータ4の直流出力側に接続されている。インバータ7は、平滑コンデンサ5から供給される直流電圧を安定した交流電圧に変換して、フィルタ8を介して負荷15へ供給する。また、インバータ7は、同様の6組の開閉手段が3相フルブリッジ接続された3相フルブリッジ回路を有し、上記開閉手段が図示しない制御手段によって開閉制御される。
【0013】
フィルタ2は、入力側の三相交流の主回路に直列に挿入されるリアクトル2aと一方の端子がそれぞれ上記リアクトル2aの交流電源1側の端子に接続され、他方の端子が共通接続点において共通に接続されたY結線のコンデンサ2bとを有する。同様に、フィルタ8は、インバータ7の出力側の三相交流の主回路に直列に挿入されるリアクトル8aと一方の端子がそれぞれ上記リアクトル8aの負荷15側の端子に接続され、他方の端子が共通接続点において共通に接続されたY結線のコンデンサ8bとを有する。
【0014】
入力側のフィルタ2は、コンバータ4を構成する開閉手段のスイッチングに伴って発生するキャリア周波数成分の影響が交流電源1側に伝わらないように、また、出力側のフィルタ8は、インバータ7を構成する開閉手段のスイッチングに伴って発生するキャリア周波数成分の影響が負荷15側に伝わらないように、それぞれのキャリア周波数の影響を低減するものである。また、直流母線6に平滑コンデンサ5が接続され、コンバータ4の直流出力を平滑する。
【0015】
直流母線6に、直流−直流コンバータ11を介して蓄電池12が接続されている。直流−直流コンバータ11は、単相フルブリッジ接続された半導体開閉素子11a〜11d及び直流−直流コンバータ11の蓄電池12側に挿入されるリアクトル11f,11gを有する。直流−直流コンバータ11は、直流母線6の直流電圧を蓄電池12に供給するのに適した直流電圧に変換して蓄電池12を充電するとともに、交流電源1の停電時には、蓄電池12の直流出力を適切な直流電圧に変換して直流母線6に供給し、インバータ7が交流電力に変換して負荷15へ供給する。これにより、無停電電源装置が実現する。
【0016】
また、Y結線されたコンデンサ2bの中性点である共通接続点とY結線されたコンデンサ8bの中性点である共通接続点とが互いに接続線10にて接続されるとともに接続線10がバイパスコンデンサ21により接地されている。蓄電池12のマイナス(N)側が、循環コンデンサ22により接地されている。バイパスコンデンサ21のコモンモード電圧Vcomが電圧検出器25により検出され、制御回路28(詳細後述)へ供給される。直流母線6のマイナス(N)側とアースとの間に電圧検出器26が設けられ、直流母線6のマイナス(N)側の対地電圧が検出され、制御回路28に供給される。補償制御装置としての制御回路28は、極性反転器28a、極性反転器28b、加算器28c、キャリア信号発生器28d、比較器28eを有する。
【0017】
以上のように構成された無停電電源装置は、次のような特徴を有する。
(1)コンデンサ2bの共通接続点とコンデンサ8bの共通接続点とを互いに接続するとともにバイパスコンデンサ21を設けて接地していること。
(2)直流−直流コンバータ11に接続された蓄電池12の負極側を循環コンデンサ22を設けて接地していること。
(3)制御回路28を設けていること。
【0018】
全体の動作の説明に先立ち、バイパスコンデンサ21を設けた場合の作用と問題点について説明する。バイパスコンデンサ21を設けることにより、変換器3の開閉手段のスイッチングに伴って生じた高周波電流が、変換器3とアースとの間に存在する図示しない浮遊容量を介して流れたとしても、その高周波電流は直ちにバイパスコンデンサ21を経由して入力側のフィルタ2あるいは出力側のフィルタ8から変換器3に向けて流れる。このため、従来のように、浮遊容量を介して変換器3からアースに漏洩した高周波電流が交流電源側の接地点から入力側のフィルタ2を経由して再び変換器3に流入して循環したり、あるいは、浮遊容量を介して変換器3からアースに漏洩した高周波電流が負荷15側の接地点から出力側のフィルタ8を経由して再び変換器3に流入して循環するといった現象が生じるのが抑制される。
【0019】
しかし、循環コンデンサ22を設けず、バイパスコンデンサ21を単独で設けた場合は、次のような問題点がある。すなわち、コンデンサ2bとコンデンサ8bの中性点が互いに接続され、さらにバイパスコンデンサ21により接地されている。このとき、変換器3の動作としてはコンバータ4の出力電圧指令とインバータ7の出力電圧指令が互いに異なるとき、例えば互いの出力周波数は同じでも互いの位相が異なるときは、互いの発生するコモンモード電圧の位相も同様に異なるため、コンデンサ21を介して交流電源側に漏洩電流として流れ込むという問題がある。特に、コモンモード電圧が変換器3の出力電圧の周波数の3倍成分であるような低周波である場合には、交流電源側に設置する図示しない漏電ブレーカの誤動作を誘発する可能性がある。この発明においては、バイパスコンデンサ21を設けて浮遊容量を介してアースに漏洩する漏洩電流を抑制するとともに、バイパスコンデンサ21を単独で設けた場合の上記のような問題点を解決することができる。
【0020】
次に動作を説明する。まず、動作原理を図2により説明する。
図2は、循環コンデンサ22に印加する電圧指令を示す概念図である。なお、以後の説明ではバイパスコンデンサ21のコモンモード電圧をVcom、循環コンデンサ22のコモンモード電圧をVcan、コンバータ4とインバータ7の間の直流母線6のコモンモード電圧をVcで示す。これらの電圧は、アースとの間の電圧である。
図2(a)に循環コンデンサのコモンモード電圧指令が無い場合の、電圧Vcanと電圧Vcomを比較して示している。図2(a)の状態では電圧Vcanはアースに対して正弦波状に変動している。これは直流−直流コンバータ11及び蓄電池12は平滑コンデンサ5に並列に接続されているため、コンバータ4が発生する直流母線側のコモンモード電圧の影響で、平滑コンデンサ5に電圧Vcの変動が生じれば、それに同調して直流−直流コンバータ11及び蓄電池12も電圧Vcで変動する。
【0021】
図2(b)に電圧Vcを循環コンデンサ22の電圧指令値として入力した場合の電圧Vcanと電圧Vcomの関係を示す。この電圧指令値により電圧Vcanの変動分を相殺することが可能となり、電圧Vcan=0の状態を実現できる。
図2(c)に、電圧Vcomの逆位相電圧を電圧指令値とした場合の、電圧Vcanと電圧Vcomの関係を示す。電圧Vcanと電圧Vcomとが逆位相の関係となり、バイパスコンデンサ21から交流電源1側へ伝播していた漏洩電流が、循環コンデンサ22に循環し、結果として交流電源1側へ伝播していた漏洩電流の低減が実現できる。従って、循環コンデンサ22の電圧指令値として電圧Vcomと逆位相の電圧を与えれば、バイパスコンデンサ21から交流電源1側へ伝播していた漏洩電流を低減できることになる。
【0022】
従って、循環コンデンサ22の電圧指令値として、バイパスコンデンサ21のコモンモード電圧Vcomと、コンバータ11の直流出力側である直流母線6のコモンモード電圧Vcとの和を与えれば、変換器3における漏洩電流を確実に低減できる。この実施の形態はこのような原理に基づき動作するものであり、以下詳細に説明する。
【0023】
循環コンデンサ22に制御回路28により所望の電圧Vcanを印加する。ここで、バイパスコンデンサ21の静電容量と循環コンデンサ22の静電容量とが等しいとすると、バイパスコンデンサ21に発生する電圧Vcomと上記電圧Vcanとの間に、Vcan=−Vcomの関係が成立すれば、バイパスコンデンサ21を経由する例えば変調波の周波数fの3倍のような低周波のコモンモード電流が、循環コンデンサ22に循環するため、交流電源1に伝播する漏洩電流を低減できる。さらに、直流−直流コンバータ11において、例えば半導体開閉素子11cと11dの制御指令に、循環コンデンサ22に印加したい所望のコモンモード電圧の指令(ここでは電圧Vc)を重畳させばよい。
【0024】
図1において、制御回路28において、電圧検出器25で検出される電圧Vcomが極性反転器28aに入力され、逆位相に変換され、加算器28cに入力される。電圧検出器26で検出される電圧Vcが極性反転器28bに入力され、逆位相に変換され、加算器28cに入力される。両者は加算器28cにて加算され、加算器28cの出力信号電圧Vcanがコモンモード電圧指令として、キャリア信号発生器28dのキャリア信号と比較器28eで比較され、PWM信号電圧Vpwmが得られ、周知の方法により直流−直流コンバータ11の構成する半導体開閉素子11c,11dを制御して、変換器3から交流電源側及び負荷側へ流れる漏洩電流を低減するように循環コンデンサ22に補償コモンモード電圧としての電圧−(Vcom+Vc)を発生させ、変換器からの漏洩電流を減少させる。
【0025】
なお、循環コンデンサの設置態様は図1に示したものに限られるわけではなく、図3の変形例に示したように構成することもできる。図3において、直流−直流コンバータ111は、半導体開閉素子111a、111bが2個直列に接続されたアームと半導体開閉素子111c、111dが2個直列に接続されたアームとが直列に接続され、半導体開閉素子111aと111bとの接続点及び半導体開閉素子111cと111dとの接続点が蓄電池12に接続されている。この場合は、図1に示した制御回路28と同様の図示しない制御回路が、半導体開閉素子111c、111dを制御して、循環コンデンサ22に電圧−(Vcom+Vc)を発生させる。
【0026】
また、別の変形例を図4に示す。図4において、直流−直流コンバータ11と接続された蓄電池12の正負両極が第1及び第2の循環コンデンサ122,123にて接地されている。
【0027】
なお、図1の無停電電源装置においては、コンデンサ2bの中性点とコンデンサ8bの中性点とが互いに接続され、さらにバイパスコンデンサ21により接地されている。この無停電電源装置において、上述したように、コンバータ4の電圧指令とインバータ7の電圧指令とが異なる場合、例えば互いの出力周波数は同じでも、位相が異なる場合は、コンバータ4が発生するコモンモード電圧とインバータ7が発生するコモンモード電圧の位相も、同期して異なるため、バイパスコンデンサ21を経由してコモンモードノイズ電流が発生するという問題が生じる。特に、第3高調波の電圧V3fがコンバータ4の制御信号に重畳された場合などのように低周波のコモンモード電圧が発生すると、漏電遮断器の誤動作を誘発する可能性がある。この実施の形態では、この現象の発生を、循環コンデンサ22を設け、電圧Vcの逆位相に相当する電圧が蓄電池12の負極側に発生するようにして交流電源1側に還流する漏洩電流や負荷15側を還流する漏洩電流を低減することにより防止している。
【0028】
また、バイパスコンデンサ21の電圧Vcomは、コンバータ4が発生するコモンモード電圧と、インバータ7が発生するコモンモード電圧の両方の影響を受ける。従って、コンバータ4とインバータ7の各コモンモード電圧を正確に把握する必要があるが、コンバータ4とインバータ7のコモンモード電圧が異なる場合や、交流電源1からの入力電圧が定格を超過した場合には、コンバータ4及びインバータ7のコモンモード電圧指令からの電圧Vcomの算出は極めて困難である。この実施の形態においては、バイパスコンデンサ21に電圧検出器25を設置することで、電圧Vcomを確実に測定できる。
【0029】
以上のように、この実施の形態によれば蓄電池12の負極を接地する循環コンデンサ22,あるいは蓄電池12の正極及び負極を接地する循環コンデンサ122,123を設けるとともに、バイパスコンデンサ21のコモンモード電圧Vcomと直流母線6に発生するコモンモード電圧Vcとを検出して、直流母線6に発生するコモンモード電圧Vcにより変換器1の浮遊容量を介してアースに流出する漏洩電流や、インバータ7のコモンモード電圧Vcomにより変換器3から交流電源1側を還流する漏洩電流や負荷15側を還流する漏洩電流を低減するための電圧を蓄電池12とアースとの間に発生させる。従って、変換器3からの漏洩電流を減少させることができ、また、交流電源側に設置される漏電遮断器の誤動作を防止できる。
なお、補償電圧として、直流母線6に発生するコモンモード電圧Vcを省いて、インバータ7のコモンモード電圧Vcomの逆位相の電圧だけを循環コンデンサ22の端子間にすなわち蓄電池12とアースとの間に発生させるものであってもよい。以下の実施の形態においても同様である。
【0030】
実施の形態2.
図5は、実施の形態2である無停電電源装置の回路図である。図5において、Y結線された入力側のフィルタ2のコンデンサ2bの共通接続点(中性点)とバイパスコンデンサ21との間に変流器127が設けられている。また、補償制御装置としての制御回路128は、演算器128bを有する。この実施の形態においては、コンバータ4とインバータ7との間の直流母線6の電圧Vcを、入力側のフィルタ2のコンデンサ2bに設置した変流器127で検出した電流から求めた電圧V1に基づいて次に述べるような方法により求める。その他の構成については、図1に示した実施の形態1と同様のものであるので、相当するものに同じ符号を付して説明を省略する。
【0031】
図5において、電圧Vc=電圧Vcom+電圧V1+電圧Vcnvで算出できる。ここで、電圧Vcomは電圧検出器25にて検出するバイパスコンデンサ21のコモンモード電圧である。電圧V1は、入力側のフィルタ2を構成するコンデンサ2bに発生するコモンモード電圧であり、変流器127により検出された電流J1から演算器128bにて一義的に求めることができる。電圧Vcnvは、コンバータ4のコモンモード電圧指令である。なお、リアクトル2aの両端にもコモンモード電圧が発生するが、対象とするコモンモード電圧が低周波の場合は、この電圧は小さく、無視できる。制御回路128は、上記のようにして求めたVcと電圧検出器25にて検出したVcomに基づき、同様に循環コンデンサ22に補償コモンモード電圧としての電圧−(Vcom+Vc)を発生させ、変換器からの漏洩電流を減少させる。
【0032】
一般に変流器は電圧センサと比較して安価であり、周辺の配線が簡素であり、かつ耐ノイズ性が高い特徴がある。本実施の形態によれば、安価、簡素かつ信頼性の高い無停電電源装置を得ることができる。
また、交流電源が定格を超過した電圧を出力した場合、コンバータ4が過変調モードに突入し、電圧Vcとコンバータ4の制御指令値との間に相関関係が無くなった場合でも、変流器127にて検出した電流に基づいて電圧Vcを求めるものであれば、このような制御指令では対応できない場合にも、正確に検出できる。
【0033】
実施の形態3.
図6は、実施の形態3である無停電電源装置の回路図である。図6において、Y結線された出力側のフィルタ8のコンデンサ8bの共通接続点とバイパスコンデンサ21との間に変流器227が設けられている。また、補償制御装置としての制御回路228は、演算器228bを有する。この実施の形態においては、コンバータ4とインバータ7との間の直流母線6の電圧Vcを、出力側のフィルタ8のコンデンサ8bに設置した変流器227で検出した電流から求めた出圧V2に基づいて求める。その他の構成については、図1に示した実施の形態1と同様のものであるので、相当するものに同じ符号を付して説明を省略する。
【0034】
図6において、電圧Vc=電圧Vcom+電圧V2−電圧Vinvで算出できる。ここで、電圧Vcomは電圧検出器25にて検出されるバイパスコンデンサ21のコモンモード電圧、電圧V2は変流器227より検出される電流J2に基づいて、制御回路228により算出される出力側のコンデンサ8bに発生するコモンモード電圧、電圧Vinvはインバータ7のコモンモード電圧指令である。なおリアクトル8aの両端にもコモンモード電圧が発生するが、対象とするコモンモード電圧が低周波の場合は、この電圧は小さく無視できる。制御回路228は、上記のようにして求めたVcと電圧検出器25にて検出したVcomに基づき、同様に循環コンデンサ22に補償コモンモード電圧としての電圧−(Vcom+Vc)を発生させ、変換器からの漏洩電流を減少させる。
【0035】
実施の形態4.
図7は、実施の形態4である無停電電源装置の回路図である。図7において、バイパスコンデンサ21とアースとの間に変流器325が設けられている。また、補償制御装置としての制御回路328は、演算器328aを有する。この実施の形態においては、制御回路328の演算器328aが、変流器325にて検出した電流J3に基づいてコンデンサ21の電圧Vcomを求める。その他の構成については、図5に示した実施の形態2と同様のものであるので、相当するものに同じ符号を付して説明を省略する。制御回路128は、変流器127で検出した電流に基づいて求めたVcと上記のようにして変流器325にて検出した電流J3に基づいて求めたVcomに基づき、同様に循環コンデンサ22に補償コモンモード電圧としての電圧−(Vcom+Vc)を発生させ、変換器からの漏洩電流を減少させる。
【0036】
実施の形態5.
図8は、実施の形態5である無停電電源装置の制御回路を示す回路図である。図8において、補償制御装置としての制御回路428は、極性反転器28a、加算器28c、キャリア信号発生器28d、比較器28eを有する。極性反転器28aには図1に示した電圧検出器25と同様の電圧検出器にて検出されたバイパスコンデンサ21の電圧Vcomが入力される。加算器28cには、極性反転器28aにて位相が反転された電圧Vcomとが入力される。コンバータ4の図示しない制御手段からコンバータ4の電圧指令の第3高調波の電圧V3fを得て、加算器28cに入力する。加算器28cにて、両信号が加算され、加算器28cの出力信号電圧Vcan*がコモンモード電圧指令として出力され、キャリア信号発生器28dのキャリア信号と比較器28eにて比較され、PWM信号電圧Vpwmが得られ、周知の方法により直流−直流コンバータ11を構成する半導体開閉素子11a〜11dの制御を行う。
【0037】
ここで、コンバータ4の電圧指令に電圧V3fを重畳させた場合、コンバータ4の入力側が接地された交流電源であると、電圧V3fは直流母線6に現れ、アースに対し直流母線6の電圧が変動することになる。すなわち、コンバータ4の電圧指令の周波数の3倍成分である電圧V3f成分が電圧Vcとなるため、電圧V3f成分が既知であれば、その値を電圧Vcとして適用できることになることに着目し、電圧Vcとして電圧V3fを用いたものである。制御回路428は、上記のようにして求めたVcと電圧検出器25にて検出したVcomに基づき、同様に循環コンデンサ22に補償コモンモード電圧としての電圧−(Vcom+Vc)を発生させ、変換器からの漏洩電流を減少させる。
【0038】
本実施の形態では、電圧Vc検出のための電圧検出器等のセンサが不要であるため、構成が簡素となり、低コスト化を実現できる。
【0039】
なお、上記各実施の形態においては、コンバータ4やインバータ7の詳細構成を示していないが、本発明はコンバータ、インバータの回路構成に関わらず適用可能である。例えば、コンバータ4及びインバータ7の回路構成は周知の2レベル、マルチレベル等の、いずれの方式であっても適用可能である。また、直流―直流コンバータの回路構成も図1、や図3に示したものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0040】
1 交流電源、2 フィルタ、2b コンデンサ、3 変換器、4 コンバータ、
6 直流母線、7 インバータ、8 フィルタ、8b コンデンサ、10 接続線、
11 直流−直流コンバータ、12 蓄電池、15 負荷、21 バイパスコンデンサ、
22 循環コンデンサ、25 電圧検出器、26 電圧検出器、28 制御回路、
111 直流−直流コンバータ、122,123 循環コンデンサ、
127,227,325 変流器、128,228,328,428 制御回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力側のフィルタと、変換器と、出力側のフィルタと、直流−直流コンバータと、蓄電池と、バイパスコンデンサと、循環コンデンサと、補償制御装置とを有する無停電電源装置であって、
上記入力側及び出力側のフィルタは、それぞれリアクトルとコンデンサとを有し、上記コンデンサは一方の端子が上記リアクトルに接続され他方の端子が共通に接続されたものであり、
上記変換器は、コンバータとインバータと直流母線とを有し、
上記コンバータは、上記入力側のフィルタを介して交流電源に接続され上記交流を直流に変換するものであり、
上記インバータは、上記直流母線を介して上記コンバータに接続され上記直流を交流に変換して上記出力側のフィルタを介して負荷に供給するものであり、
上記蓄電池は、上記直流−直流コンバータを介して上記直流母線に接続され上記変換器との間で電力のやりとりを行うものであり、
上記入力側及び出力側の上記コンデンサの上記共通に接続された他方の端子同士が接続線により接続されるとともに上記バイパスコンデンサを介して接地され、上記蓄電池は上記循環コンデンサを介して接地されたものであり、
上記補償制御装置は、上記バイパスコンデンサに流れる電流を減少させる方向の電圧を補償コモンモード電圧として上記循環コンデンサに発生させるものである
無停電電源装置。
【請求項2】
上記補償制御装置は、上記補償コモンモード電圧を、上記バイパスコンデンサに発生するコモンモード電圧と上記直流母線に発生するコモンモード電圧とに基づいて求めるものであることを特徴とする請求項1に記載の無停電電源装置。
【請求項3】
上記補償制御装置は、上記バイパスコンデンサに発生するコモンモード電圧を、上記バイパスコンデンサの電圧を検出することにより求めるものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の無停電電源装置。
【請求項4】
上記補償制御装置は、上記バイパスコンデンサに発生するコモンモード電圧を、上記バイパスコンデンサに流れる電流を検出することにより得るものであることを特徴とする請求項2に記載の無停電電源装置。
【請求項5】
上記補償制御装置は、上記直流母線に発生するコモンモード電圧を、上記直流母線とアースとの間の電圧を検出することにより得るものであることを特徴とする請求項2に記載の無停電電源装置。
【請求項6】
上記補償制御装置は、上記直流母線に発生するコモンモード電圧を、上記入力側のフィルタの上記コンデンサの電圧と上記バイパスコンデンサに発生するコモンモード電圧と上記コンバータが発生するコモンモード電圧とに基づいて求めるものであることを特徴とする請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項7】
上記補償制御装置は、上記直流母線に発生するコモンモード電圧を、上記出力側のフィルタの上記コンデンサの電圧と上記バイパスコンデンサに発生するコモンモード電圧と上記インバータが発生するコモンモード電圧とに基づいて求めるものであることを特徴とする請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項8】
上記補償制御装置は、上記直流母線に発生するコモンモード電圧として上記コンバータの制御指令から取得したコモンモード電圧を用いるものであることを特徴とする請求項2に記載の無停電電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−147252(P2011−147252A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5399(P2010−5399)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(501137636)東芝三菱電機産業システム株式会社 (904)
【Fターム(参考)】