無線タグ移動検出システム
【課題】 同軸ケーブル、LANケーブルを用いなくとも、広範囲エリア内の無線タグ(対象物)の僅かな動きを検知でき、しかも設置するアンテナ数を増やすことなく、極めて安価にこれを実現できる無線タグ移動検出システムを得る。
【解決手段】 無線タグリーダライター11と送受信装置12(例えばパソコン)とを備えた無線タグ位置送信装置10と同軸ケーブル13(13a、13b、13c)と漏洩同軸ケーブル14(14a、14b、14c)と900MHz帯の電波を放射する無線タグ15(15a、・・)、無線タグ16(16a・・)、無線タグ17(17a・・・)と、情報伝送ネットワーク18と、監視制御システム19等によって、無線タグの移動を検知する。
【解決手段】 無線タグリーダライター11と送受信装置12(例えばパソコン)とを備えた無線タグ位置送信装置10と同軸ケーブル13(13a、13b、13c)と漏洩同軸ケーブル14(14a、14b、14c)と900MHz帯の電波を放射する無線タグ15(15a、・・)、無線タグ16(16a・・)、無線タグ17(17a・・・)と、情報伝送ネットワーク18と、監視制御システム19等によって、無線タグの移動を検知する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線タグを検知するための、無線タグリーダライタのアンテナとして漏洩同軸ケーブルを使用することによって、無線タグの移動を安価に検出できる無線タグ移動検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年は無線タグは広く利用されている。この無線タグのデータを読み取ったり、あるいは書き込みには無線タグリーダライタが使用される。
【0003】
無線タグリーダライタのアンテナにはLF帯(124,135KHz)及びHF(13.45KHz波長20m)用としては、銅線をコイル状に平面に巻き込んだ磁界ループアンテナが使用される。
【0004】
一方、無線タグ(Radio Frequency ID:RFID)は、固有のIDを割り振ることができ、ある程度離れた場所からこのIDを読み込むことができるので広く最近は使用されている。このIDの書き込み、読み取りには無線タグリーダライタを使用する。
【0005】
無線周波数は、13.56MHzと2.45GHzが国内では一般的であり、13.56MHzは電磁誘導方式を用いる。電磁誘導方式は、無線タグリーダライタのコイルに電流を流して発生させた磁界で無線タグが持つコイル状のアンテナ(磁界成分に反応するアンテナ)に電流を発生させてICチップを動かす。
【0006】
これに対して、2.45GHzはマイクロ波方式を用いるものであり、マイクロ波方式は、無線タグリーダライタのアンテナ(電磁波のうち、主に電界に反応するアンテナ)から発生させた電波を無線タグが受け取り、この電波がダイポールアンテナを通ることで電流を流してICから電波を発射させるものであり、いずれも電磁波のうち、主に電界に反応する。
【0007】
また、現在日本で使用できる無線タグは概略して下記の4種類がある。
【0008】
(1)124KHz、135KHz帯
(2)13.56MHz帯
(3)900MHz帯(950MHz帯)
(4)2.45GHz帯(波長約13m)
(5)300MHz帯(微弱電波)
このような周波数帯の無線タグを用いて現在は様々な目的に使用されている。例えば、無線タグを使用して無線タグの動きで崖崩れを検出するシステムも提案されている。
【0009】
以下にこのような従来のシステムについて説明する。
【0010】
図15は従来の無線タグ検出システムの概略構成図である。タグ検知アンテナ1kの送信出力は電波法の規制で制限されているため、これらアンテナと無線タグ間の通信距離はおのずと制限がある。このため、図15に示すように無線タグ2とタグ検知アンテナ1kとは近接して配置される。
【0011】
図15に示すように、山の斜面にタグ検知アンテナ1kを配置して、このタグ検知アンテナ1kを固定し、この近傍に無線タグ2を浅く埋める。
【0012】
前述の無線タグ2は、周波数は上記の(1)又は(2)帯を用いる。
【0013】
山の斜面が崩れてくるときには、兆候として土が動く、土が動くと、無線タグ2も追従して動くことになる。すなわち、無線タグ2が動くということは、タグ検知アンテナ1kから離れることになるので、無線タグ2とタグ検知アンテナ1kとの通信距離を出ることになり(到達する電波の強度は弱くなるから)、タグ検知アンテナ1kから無線タグ2のIDコードが山頂の受信器等(図示せず)には送信されないことになる。つまり、無線タグ2のIDコードが検知されないことになるので結果として山崩れの兆候が出てきたことが分かる。
【0014】
図16の方式は、無線タグリーダライタに同軸ケーブルを接続して、この同軸ケーブルを分岐させてそれぞれの分岐した同軸ケーブルにタグ検知アンテナを接続する方式である。
【0015】
この方式は、無線タグリーダライタ3を山の上に設置して、同軸ケーブル5を接続し、この同軸ケーブル5を分配器6で分岐して、同軸ケーブル4a、4b、4cを接続する。
【0016】
そして、これらの同軸ケーブル4a、4b、4cの先端にタグ検知アンテナ1k1、1k2、1k3を接続し、それぞれのアンテナの近傍に、無線タグ2a、2b、2cを設置する。
【0017】
この方式は、タグ検知アンテナ1k1、1k2、1k3を同軸ケーブルで引っ張ることになるからタグ検知アンテナ1k1、1k2、1k3は固定されていることになる。
【0018】
このため、例えば崖崩れの兆候があって地面が移動すると無線タグ2a、2b、2cが移動するので、無線タグ2a、2b、2cの移動を検出することができる。
【0019】
図17は無線タグリーダライタ3を例えば山頂に一台おき、この無線タグリーダライタ3から数mの長さの同軸ケーブル9a、9b、9cを張り、この同軸ケーブル9a、9b、9cの先端にタグ検知アンテナ1k1、1k2、1k3を接続し、このタグ検知アンテナ1k1、1k2、1k3の近傍に無線タグ2a、2b、2cを配置する。、
そして、無線タグ2a、2b、2cにピアノ線7a、7b、7cの一方を接続し、他方に重り(地滑り検知用重り8a、8b、8c)を接続する。
【0020】
このようにすると、例えば、地滑りが発生した場合は、重りが斜面の移動に伴って下に移動し、結果として無線タグ2a、2b、2cを引っ張ることになる。これによって、無線タグ2a、2b、2cがタグ検知アンテナ1k1、1k2、1k3を離れることになり、無線タグ2a、2b、2cが移動したことが検知される。
【0021】
図18の方式はインサーネットのLANのケーブルを用いるものである。LANのケーブルは100m、200mの長さであっても減衰はほとんどない。
【0022】
このLANケーブル10a、10b、10cの先端に、タグ検知アンテナ1k1、1k2、1k3と無線タグリーダライタ3a、3b、3cとを収納したケース11a、11b、11cとを接続することで、無線タグ2a、2b、2cの移動を、ケース内のタグ検知アンテナと無線タグリーダライタで検知してLANケーブルで監視センター等に通知するものである。
【0023】
しかしながら、タグ検知アンテナ1と無線タグリーダライタ3とを収納したケースを多数配置することになるからコストがかかる。
【0024】
また、無線タグを利用したシステムとして特開2005−283337号公報(特許文献1)がある。
【0025】
この特許文献は、競技者・・・が携帯する無線タグ・・は、スタートラインを通過するときに時刻データを無線受信して記憶し、中間ラインを通過するときに時刻データを無線受信して記憶し、・・ゴールラインを通過するときに無線受信するものである。
【特許文献1】特開2005−283337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
しかしながら、図15に示す方式は、(1)の124KHz、135KHz帯又は(2)の13.56MHz帯を用いるものであるが無線タグ2というのは探知距離で数十センチメートルであり非常に短い。
【0027】
すなわち、図15の方式は、非常に広範囲な斜面を検知するのに、(1)又は(2)のような探知距離が短い無線タグ2とタグ検知アンテナとを一体で用いるものであるからタグ検知アンテナも無線タグの数だけ必要となる。
【0028】
また、タグ検知アンテナは、常に固定しておかなければ、無線タグの移動を検知できない。このため、タグ検知アンテナの埋設工事等を行う必要があった。さらに、図15の方式は、タグ検知アンテナに送信手段が必要である。
【0029】
従って、図15の方式のシステムは機材コスト、工事コストなどが莫大となるという課題があった。
【0030】
図16の方式は、タグ検知アンテナを同軸ケーブルで繋げるものであるので、タグ検知アンテナに無線で検知データを送信する機能及びタグ検知アンテナの大がかりな固定工事等は必要がなくなる。また、斜面は広いので、同軸ケーブルを数百メートに渡って這わさなければならい。
【0031】
すなわち、同軸ケーブルは、線長が100m、200m程度になると、信号がマイナス数十dB減衰してしまい。結果として無線タグ2の移動を検知できなくなるという課題があった。
【0032】
図17の方式は、同軸ケーブルを長くしなくともどこかの重りが動くと、地滑り等が分かるが重りの設置場所についても地滑りがあるときにスムーズに転がるように現場で十分に検討しなければならない。
【0033】
図18の方式は、同軸ケーブルの代わりにインサーネットのLANケーブルを用いるものであるが、高価なタグ検知アンテナと無線タグリーダライタとを収納したケースを多数配置することになるからコストがかかるという課題があった。
【0034】
一方、数十cm〜数mの距離で探索を行う場合には(3)の900MHz帯、(4)の2.45GHz帯、(5)の300MHz帯が適している。
【0035】
これらの無線タグの場合は、検知距離が長いので広範囲エリアはカバーできるが、そのエリア内での無線タグに位置が動いた場合でも、検知距離が長いために、無線タグが検知されつづけるので、わずかな動きを検知することは出来ない。
【0036】
更に、(4)の2.45GHz帯はマイクロ波帯の性質上、アンテナから比較的鋭いビーム状の検知エリアとなる。(3)の915MHz帯、(5)の300MHz帯はUHF帯であるため、最も検知距離、エリアともに広範囲となるが、特に金属の影響を大きく受け、それらの周囲環境条件によって検知距離が変化してしまう。
【0037】
別の方法として、無線タグからの電波を少なくとも1台以上の無線タグリーダーで受信して、その電波の強さ、到達時間(電波の位相)などを測定し、無線タグリーダーからの距離を等価的に測定することによって、無線タグの位置や動きを検知する方法もありうる。しかし、この機能を実現するためには、複雑な無線回路を無線タグに搭載内蔵し、かつ、無線タグリーダーにも電波の強さ、位相差などを計測できる複雑な電子回路とソフトウェアを搭載する必要がある。これらの電子デバイスやソフトウェアは高価であるため、システム全体が非常に高価になってしまうという問題点がある。
【0038】
以上のように、従来の図15、図16、図17及び図18の方式では費用の点等に問題がある。
【0039】
また、検知距離が長い無線タグによる方式は、広範囲エリアの対象物の僅かな動きを検知する目的には不向きである。
【0040】
逆に、検知距離、エリアが小さな無線タグを使用すると、無線タグの検知の有無を判断することにより僅かな動きは検知できるが、全エリアをカバーするためには膨大な数のアンテナを設置する必要が生ずる。
【0041】
さらに、無線タグリーダライタから電波を発射して、電界強度、到達時間から無線タグの位置を測定する方式は、費用もかかる。
【0042】
そこで、本発明は、同軸ケーブル、LANケーブルを用いなくとも、広範囲エリア内の無線タグ(対象物)の僅かな動きを検知でき、しかも設置するアンテナ数を増やすことなく、極めて安価にこれを実現できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0043】
本願発明の無線タグ移動検出システムは、検出エリアに敷設された漏洩同軸ケーブルと、
前記漏洩同軸ケーブルに接続された終端抵抗器と、前記漏洩同軸ケーブルの近傍の配置されて、電磁波の受信でIDコードを発射する複数の無線タグと、前記漏洩同軸ケーブルに信号を供給し、該漏洩同軸ケーブルから伝送された信号から前記無線タグのIDコードを解読する無線タグリーダライタと、前記無線タグリーダライタの解読結果を読み込み前記無線タグの検出有無を出力する装置とを備えたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0044】
以上のように、本発明によれば、数百メートルに渡って漏洩同軸ケーブルを這わしたとしても、漏洩同軸ケーブルの減数量はわずかであり、かつ漏洩同軸ケーブルがアンテナとなって無線タグを検知できるので、広範囲に渡って無線タグを配置したとしても、コストを非常に低減できる。
【0045】
例えば、山の斜面に漏洩同軸ケーブルと無線タグとを配置した場合は、崖崩れ、土砂崩れ等があると、漏洩同軸ケーブルに無線タグのIDコードが検知されなくなるから、崖崩れ、土砂崩れの兆候を直ちに検知できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
本発明に係る実施の形態を図面を参照して説明する。
【0047】
本実施の形態では、無線タグリーダーライターのアンテナに漏洩同軸ケーブルを使用することにより、無線タグの移動を検知するものである。
【0048】
前述の無線タグをどのような周波数帯のものを用いるかを初めに説明しておく。
【0049】
無線タグアンテナは13.56MHz帯、2.45GHz帯、900MHz帯等の周波数帯のものを用いるとする。
【0050】
13.56MHz帯の無線タグを用いる場合は、13.56MHz帯の無線タグは電磁波の主に磁界成分に反応する。
【0051】
また、2.45GHz帯や900MHz帯の無線タグは、電磁波の主に電界成分に反応するアンテナを有している。但し、2.45MHz帯は水による減衰の影響がある。
【0052】
一方、漏洩同軸ケーブルは電磁波として磁界と電界の両方のベクトル成分を輻射する。 また、同軸ケーブルの極めて近傍は、電界成分から漏洩が始まる。
【0053】
900MHz帯の無線タグは水の影響を受け難いし、波長の関係から効率の高いダイポールアンテナ等をタグに適用できる。一方、13.45MHzは波長が長いため、それに対して極めて小さいサイズの低効率のアンテナしかタグに実装できない。従って検知距離が900MHzに比べ大きく制限される。従って、本実施の形態では900MHz帯を用いるとして説明する。
【0054】
<実施の形態1>
図1は本実施の形態1の無線タグ移動検知システムの概略構成図である。図1に示すように、本実施の形態1の無線タグ移動検知システムは、無線タグリーダライタ11と送受信装置12(例えばパソコン)とを備えた無線タグ位置送信装置10と同軸ケーブル13(13a、13b、13c)と漏洩同軸ケーブル14(14a、14b、14c)と900MHz帯の電波を放射する無線タグ15と(15a、・・)、無線タグ16と(16a・・)、無線タグ17と(17a・・・)、情報伝送ネットワーク18と、監視制御システム19等からなる。前述の同軸ケーブル13の長さは総長で数十メートル以内(例えば10m〜30m)とする。また、漏洩同軸ケーブル14は、1kmで約10dBの減衰程度であるので、それぞれの漏洩同軸ケーブルの長さは数メートル〜数百メートルとする。
【0055】
すなわち、無線タグ位置送信装置10を例えば山の頂上に配置し、この無線タグ位置送信装置10の給電点に同軸ケーブル13a(数メートル)を接続して分配器20で分配して同軸ケーブル13b、13cを接続する。
【0056】
そして、同軸ケーブル13b、13cに分配器21、22を接続して、これらの分配器20、21、22(分配用の同軸コネクタ)に所定の長さの(例えば30メータ〜200メータ)、漏洩同軸ケーブル14a、14b、14cを崖崩れの懸念される傾斜などへ敷設し、当該斜面の漏洩同軸ケーブル近傍の通信エリア内へ広範囲に渡り、無線タグ15、16、17を設置する。前述の漏洩同軸ケーブル14は、斜面に斜めに敷設したり、横に敷設したり、あるいは所々曲げたりまっすぐにして敷設する。
【0057】
これによって、一旦、豪雨などがあると、斜面の土砂流出などの、崖崩れの前兆現象が発生すれば、一部のタグが土砂とともに、その位置がずれ始めると、無線タグからの電波を漏洩同軸ケーブル14が検知できなくなる。従って、土砂崩れ等の兆候事前に検知できることになる。
【0058】
次に、各部の構成を説明する。
【0059】
前述の無線タグ15、16、17の反応周波数は、900MHz帯であり、この無線タグ15、16、17は固有のユニークなIDコードが記憶され、漏洩同軸ケーブル14からの電波を受けてこのIDコードを発射する。また、同軸ケーブル13c、13bには終端抵抗23a、23bが接続されている。
【0060】
さらに、漏洩同軸ケーブル14(14a、14b、14c)の端には終端抵抗24、25、26(50Ω)が接続されている。すなわち、漏洩同軸ケーブル14(14a、14b、14c)は、定在波比が「1」となり、進行波が発生するようにされている。
【0061】
また、漏洩同軸ケーブル14は図2に示すように、内部導体を絶縁体で覆い、絶縁体を外部導体で覆い、この外部導体を外被で覆うことで構成されている。さらに、支持線が外被で覆われている。つまり、信号を伝送する同軸ケーブル機能と、ケーブルに沿った空間に電波を放射するアンテナ機能とを有する。
【0062】
また、この漏洩同軸ケーブル14は50Ωの終端抵抗を接続し(導体に一方を、他方を支持線に接続)、分配器20、21、22を50Ωとしているので、定在波比ρは「1」であるから長さにかかわらず図3に示すように、放射は一様になる(進行波)。また、この漏洩同軸ケーブル14は、1km程度の減衰量が大略15dB程度のものを用いるのが好ましい。
【0063】
また、無線タグリーダライタ11は、漏洩同軸ケーブル14、同軸ケーブル13を介してIDコードを入力し、これを解読する。
【0064】
送受信装置12は、監視制御システム19からの指示を受けて、無線タグリーダライタ11を起動させて、定期的に同軸ケーブル13を介して漏洩同軸ケーブル14に信号を送って電波を放射させる。
【0065】
監視制御システム19は、各無線タグ15、16、17に割り振られたIDコードに緯度経度(XYZ)と住所とを対応させている。また、この監視制御システム19は、地理情報システムを有する。すなわち、どこに崖崩れなどが発生したかを地図上に示す機能を有している。
【0066】
上記のように構成された実施の形態1の無線タグ移動検知システムについて以下に動作を説明する。本実施の形態では、900MHzの無線タグ15(15a・・、16b・・、17a・・)が複数、漏洩同軸ケーブル14の近傍にプラスチックケース等に入れられて崖崩れの兆候を検出する範囲に土に浅く埋められて、かつ漏洩同軸ケーブル14(14a、14b、14cの近傍に配置されている。また、漏洩同軸ケーブル14は、崖崩れの兆候を検出する範囲に伸ばされて配置されている
例えば、遠隔制御システム19は、年月日時刻を入力して監視期間を情報伝送ネットワーク18を介して無線タグ位置送信装置10に送信する。
【0067】
無線タグ位置送信装置10の送受信装置12は、監視期間の入力を受けて、この機関は無線タグリーダライタ11を動作させる。
【0068】
無線タグリーダライタ11は起動に伴って900MHZ帯の周波数の信号を定期的に同軸ケーブル13aに出力する。
【0069】
この信号は、分配器20によって分配され、分配器20から同軸ケーブル13b、13cに伝送される。
【0070】
また、同軸ケーブル13b、13cには分配器21、22が設けられ、この分配器から漏洩同軸ケーブル14a、14b、14cに信号が伝送される。この信号によって漏洩同軸ケーブル14は電波を外部に一様に放射する。
【0071】
各無線タグ15、16、17はこの電波によってコイルに電流を発生させてIC等に記憶されたIDコードを発射する。このIDコードは漏洩同軸ケーブル14(14a、14b、14c)によって捉えられて、分配器、同軸ケーブルを介して無線タグリーダライタに送られて解読され、無線タグリーダライタ13がこのIDコードと漏洩同軸ケーブル14の番号と一緒に送受信装置12に送出し、送受信装置12が所定の通信形式にして監視制御システム19に送信する。
【0072】
監視制御システム19は、このIDコードと漏洩同軸ケーブル14の番号を受信して画面に表示する。これによって、監視制御システム19側(監視センターともいう)では、全ての無線タグが動いていないことを把握できる。
【0073】
(地滑り発生時)
例えば、雨が降って傾斜が少し移動したとすると、無線タグ15、16、17は土砂の移動に伴って移動する。
【0074】
この土砂の移動に伴って例えば、無線タグ15aが漏洩同軸ケーブル14aの検知距離を離れると、漏洩同軸ケーブル14aには、無線タグ15aからのIDコード(例えばID12345)が検知されなくなる。
【0075】
つまり、無線タグリーダライタは、無線タグ15acのIDコードを読みとれないことになる。このような漏洩同軸ケーブル14aの検知データが送受信装置12によって情報伝送ネットワーク18を介して監視制御システム19に送信される。
【0076】
監視制御システム19は、漏洩同軸ケーブル14aの近傍の無線タグ15aのIDコードが存在しなくなったかどうかを判定しており、ID12345が存在しなくなったときは、このID12345に対応している無線タグ位置の地理座標XYZ(予めメモリにIDコードと対応させて記憶している)を読み、このXYZに対応する場所名(予めIDコードに対応させて記憶している)を画面に表示すると共に、地図を画面に表示し、その場所付近を色別表示しかつアラームを発生する(図4を参照)。
【0077】
従って、従来のように、沢山の数量の高価なタグ検知のアンテナを配置しなくとも、安価な漏洩同軸ケーブルと無線タグを配置するだけで、本格的な土砂崩れの前兆現象を捉えることができる大きな利点がある。
【0078】
ここで、アンテナから発信される電磁波の発信源からの距離と電磁波の強度の関係について説明を補充する。
【0079】
ある空間の原典にある長さ1の電気ダイポールから距離rだけ離れた場所Pにおける電荷量をq(t)(tは時刻)とすると、電荷量の変化の割合が電流であるので、
【数1】
と微分の形で書き表すことができる。
【0080】
原点にz軸方向を向いた微小ダイポールがあったとき、図5に示す点Pにおける微小ダイポールの電界E(t)および磁界H(t)を電荷量の変化q(t)で表現すると、
【数2】
【数3】
となる。これらの式は極座標に基づいて表記されており、er、eθ、eΦは各々e方向、θ方向、Φ方向単位ベクトルである。またcは空間中の電磁波の伝搬速度である。
【0081】
これらの式でr−3に比例する項は静電磁場を作り出す項で、電気ダイポールの場合電界のみに存在する。
【0082】
r−2の項は誘導電磁場を発生させる項である。r−1項は放射界を作り出す項である。充分遠方であれば静電項、誘導項は放射項と比べてはるかに小さくなる。ゆえにダイポールから充分離れた場所における電界・磁界(遠方界という)は
【数4】
【数5】
となる。方向単位ベクトルは直交しているので、遠方界では電界と磁界は直交し、波の進行方向に電界・磁界の成分がない。
【数6】
【数7】
となる。
【0083】
ここで、遠方電界と磁界の比ξを波動インピーダンスといい、以下の式で表される。
【数8】
【0084】
〔数6〕、〔数7〕より、近傍界領域では波原との距離rが短くなるほど波動インピーダンスξが大きくなることから、近傍界領域(フレネル領域)では電磁界のうち電界成分が強く、遠方界領域(フラウンフォーファー領域)で磁界成分が強くなって行くと言える。
【0085】
<その他の実施の形態>
上記実施の形態1では、複数の漏洩同軸ケーブルを用いて大きな土砂崩れ、崖崩れなどの兆候を検出したが図6に示すように、無線タグリーダライタ11(送受信装置は図示せず)に1本の同軸ケーブル13aの一端を接続して、この同軸ケーブル13aの他端にコネクタ(給電点)を接続し、このコネクタに漏洩同軸ケーブル14aを接続して斜面を横に這わせ、そして近傍に無線タグを配置してもよい。
【0086】
このようにすると、崖崩れ、土砂崩れがあると、無線タグ15(15a、15b、15c)は下に移動するので、直ちに無線タグのIDを検知できなくなるので、土砂崩れの前兆を広いエリアで検知できる。
【0087】
また、図7に示すように、送受信機から離れるほど漏洩同軸ケーブルの漏洩減衰量を小さくする方法がある。A区間の漏洩減数量を40dB、B区間の漏洩減衰量を30dB、C区間の漏洩減衰量を20dBとして制作した一本の漏洩同軸ケーブル30を同軸ケーブル11を介して無線タグリーダライタ11に接続したものである。漏洩同軸ケーブル30は斜面に横に配置する。
【0088】
このように漏洩同軸ケーブル30を区分けして、それぞれを漏洩減衰量を異ならせているので、送信機からの距離(漏洩同軸ケーブルの長さ)によらず、無線タグの検知距離を一定にできる。一方、斜面というのは木があったり、岩があったりして均一の近さで全ての無線タグを漏洩同軸ケーブルに配置できない場合もある。このような場合は、斜面の環境に応じて漏洩同軸ケーブル30の区間の減衰量を変えれば漏洩ケーブルと無線タグとの検知距離をその区間毎に変えて設定できる。
【0089】
図8は一本の漏洩同軸ケーブルを分配器で分配したものである。分配器で多数の漏洩同軸ケーブルを広いエリアに配置することが可能であるので、広いエリアを詳細に検知する場合に適している。
【0090】
さらに、図9は900MHzの無線タグ15及び13.56MHzの無線タグ29をケース28内等に固定して漏洩同軸ケーブルの近傍に埋設した図である。
【0091】
また、この漏洩同軸ケーブル14aに同軸ケーブル11を接続し、この同軸ケーブル11に900MHz帯の無線タグリーダライタ11と、13.56MHz帯の無線リーダライタ31とを接続している。
【0092】
900MHz帯の無線タグは、検知距離が1m〜2m程度であり、13.56MHzは数センチの検知距離である。
【0093】
このような2種類の無線タグを入れたケースを漏洩同軸ケーブルの近傍に配置すると、斜面が数センチ動くとケースも数センチ動き、13.56GHzの無線タグ29のIDコードの電波は漏洩同軸ケーブルでは捉えられなくなる。つまり、13.56GHzの無線タグリーダライタ31には無線タグのIDコードが検知されないことになるから、わずかに斜面が移動したことが分かる。
【0094】
さらに、大きく移動すると、900MHzの無線タグ15からのIDコードが漏洩同軸ケーブルで捉えられないことになる。つまり、900MHzの無線タグリーダライタ11には無線タグのIDコードが検知されないことになるから、大きく斜面が移動したことが分かる。
【0095】
また、図9のように無線タグリーダを2種類用意した場合には異なる減衰量の漏洩同軸ケーブルを区間別に接続する。例えば区間Aは15.56MHzの無線タグ、区間Bは900MHzの無線タグを配置してもよい。このようにすると、微細に動く箇所を検出したい場所と大きく動く場所を検出した場所とを区分けして検知できる。
【0096】
<実施例>
図10は荷箱に無線タグを収納して、どんな荷物が運ばれてきたか、保管されているかを漏洩同軸ケーブルで検知するためのシステム構成図である。
【0097】
図10のシステムは、宅配会社等の中継点の倉庫内やベルトコンベアの近傍に漏洩同軸ケーブルを14a、14bを配置し、この漏洩同軸ケーブルを分配器20、21、22で同軸ケーブル13a、13b、13cに接続し無線リーダライタ11で無線タグのIDコードを読み、このIDコードを情報伝送ネットワーク18を介して監視制御システム40に送り、監視制御システム40が、受信したIDコードからどんな荷物が来たか何を持ち出して来たかを検知するものである。
【0098】
つまり、監視制御システム40が予めIDコードと荷物の内容データとを受信し、IDコードを漏洩同軸ケーブルで受信されたとき、このIDコードをキーとして内容データを検索する。
【0099】
図11は、基板43に無線タグを貼り付け、どんな基板がユニットに入ったか取り出されたかを検出するものである。
【0100】
基板43には一般には回路名や番号が付されており、保守点検等においてはこの番号や回路名を確認してユニットから出し入れする。しかしながら、回路基板が多いと、間違いが発生しやすい。
【0101】
そこで、図11に示す3段のユニットからなる箱において、各ユニットの下縁に漏洩同軸ケーブルを這わせる。但し、終端を接続する。
【0102】
図11においては、無線タグリーダライタ11に給電点(コネクタ)から同軸ケーブル13aを接続し、この同軸ケーブル13aに分配器20を接続し、分配器20に漏洩同軸ケーブル14aと同軸ケーブル13bを接続する。
【0103】
また、同軸ケーブル13bに分配器21を接続し、この分配器21に漏洩同軸ケーブル14bと同軸ケーブル13cを接続する。また、同軸ケーブル13cに分配器22を接続し、分配器22に漏洩同軸ケーブル14cを接続する。
【0104】
すなわち、送受信装置12を操作して無線タグリーダライタ11から電波を同軸ケーブルを介して漏洩同軸ケーブルに伝送させて、各基板43(43a、43b・・・)に貼り付けられている無線タグからIDコードを漏洩同軸ケーブルに捉えさせる。
【0105】
これらのIDコードを無線タグリーダライタが解読して送受信装置12に送り、送受信装置12が、受信したIDコードをキーとして予め記憶しているIDコードに対応させている基板の種類とを比較して、何か収納されているかを表示する。
【0106】
もし、基板43が引き抜かれた場合は、IDコードをキーとして何が引き抜かれたかを表示する。
【0107】
また、送受信装置には、箱の各ユニットの基板が入る場所の番号と基板の種類とを記憶したテーブルを備え、基板が交換された場合は漏洩同軸ケーブルによって検知されたIDコードをキーとして、このIDコードに対応する基板の種類を読み、テーブルの種類と相違していた場合は直ちにエラーを通知する。
【0108】
また、漏洩同軸ケーブルが検知したIDコードをネットワークを介して監視センタにおくって、保守管理に用いることも可能である。
【0109】
さらに、図12に示すように、トンネル内の壁面に漏洩同軸ケーブル14aを這わせて、この漏洩同軸ケーブル14aの近傍の壁面に無線タグ2を貼り付けて、トンネル内の壁のはがれを検出してもよい。つまり、壁がはがれると無線タグが落ちるので漏洩同軸ケーブルはこの無線タグのIDを捉えることができなくなる。
【0110】
これを、無線タグ位置検出装置がネットワークを介して監視センターに送信する。
【0111】
図13は、橋の欄干に漏洩同軸ケーブルを這わし、この近傍に無線タグを貼り付けたものである。
【0112】
図14は、ビルの壁、ビル内等に無線タグを貼り付け、この近傍を漏洩同軸ケーブルを這わせたものである。
【0113】
無線タグ(15、16、17)が落ちたり、ずれると、漏洩同軸ケーブルによって無線タグのIDコードが捉えられなくなる。これを無線タグ位置送信装置10(無線タグリーダーライタ、送受信装置含む)がネットワークを介して監視センター48に送信する。
【0114】
監視センター48では、壁のはがれ落ち、内部の崩壊の兆候が直ぐに分かるので、住人に対して避難勧告を直ぐに出したり、あるはビル全体の保守の指導ができる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本実施の形態1の無線タグ移動検知システムの概略構成図である。
【図2】漏洩同軸ケーブルの説明図である。
【図3】漏洩同軸ケーブルに終端抵抗を取り付けたときの説明図である。
【図4】監視制御システムの画面を説明する説明図である。
【図5】アンテナから発信される電磁波の発信源から距離と電磁波の強度の関係を説明する説明図である。
【図6】その他の実施の形態の無線タグ移動検知システムの構成図である(単一型)。
【図7】その他の実施の形態の無線タグ移動検知システムの構成図である(グレーディング型)。
【図8】その他の実施の形態の無線タグ移動検知システムの構成図である(分岐型)。
【図9】900MHzの無線タグ15及び13.56MHzの無線タグ29をケース28内等に固定して漏洩同軸ケーブルの近傍に埋設した無線タグ移動検知システムの構成図である
【図10】ベルトコンベアに無線タグ移動検知システムを用いたときの構成図である。
【図11】基板を収納した箱に無線タグ移動検知システムを用いたときの構成図である。
【図12】トンネル内に無線タグ移動検知システムを用いたときの構成図である。
【図13】橋に無線タグ移動検知システムを用いたときの構成図である。
【図14】ビル内に無線タグ移動検知システムを用いたときの構成図である。
【図15】従来の無線タグ検知システムの概略構成図である。
【図16】無線タグリーダライタに同軸ケーブルを接続して、この同軸ケーブルを分岐させてそれぞれの分岐した同軸ケーブルにタグ検知アンテナを接続した従来の無線タグ移動検知システムの概略構成図である。
【図17】無線タグに重りを接続した従来の無線タグ移動検知システムの概略構成図である。
【図18】インサーネットのLANのケーブルを用いた無線タグ移動検知システムの概略構成図である。
【符号の説明】
【0116】
11 無線タグリーダライタ
12 送受信装置
13 同軸ケーブル
14 漏洩同軸ケーブル
15 無線タグ
16 無線タグ
17 無線タグ
19 監視制御システム1
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線タグを検知するための、無線タグリーダライタのアンテナとして漏洩同軸ケーブルを使用することによって、無線タグの移動を安価に検出できる無線タグ移動検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年は無線タグは広く利用されている。この無線タグのデータを読み取ったり、あるいは書き込みには無線タグリーダライタが使用される。
【0003】
無線タグリーダライタのアンテナにはLF帯(124,135KHz)及びHF(13.45KHz波長20m)用としては、銅線をコイル状に平面に巻き込んだ磁界ループアンテナが使用される。
【0004】
一方、無線タグ(Radio Frequency ID:RFID)は、固有のIDを割り振ることができ、ある程度離れた場所からこのIDを読み込むことができるので広く最近は使用されている。このIDの書き込み、読み取りには無線タグリーダライタを使用する。
【0005】
無線周波数は、13.56MHzと2.45GHzが国内では一般的であり、13.56MHzは電磁誘導方式を用いる。電磁誘導方式は、無線タグリーダライタのコイルに電流を流して発生させた磁界で無線タグが持つコイル状のアンテナ(磁界成分に反応するアンテナ)に電流を発生させてICチップを動かす。
【0006】
これに対して、2.45GHzはマイクロ波方式を用いるものであり、マイクロ波方式は、無線タグリーダライタのアンテナ(電磁波のうち、主に電界に反応するアンテナ)から発生させた電波を無線タグが受け取り、この電波がダイポールアンテナを通ることで電流を流してICから電波を発射させるものであり、いずれも電磁波のうち、主に電界に反応する。
【0007】
また、現在日本で使用できる無線タグは概略して下記の4種類がある。
【0008】
(1)124KHz、135KHz帯
(2)13.56MHz帯
(3)900MHz帯(950MHz帯)
(4)2.45GHz帯(波長約13m)
(5)300MHz帯(微弱電波)
このような周波数帯の無線タグを用いて現在は様々な目的に使用されている。例えば、無線タグを使用して無線タグの動きで崖崩れを検出するシステムも提案されている。
【0009】
以下にこのような従来のシステムについて説明する。
【0010】
図15は従来の無線タグ検出システムの概略構成図である。タグ検知アンテナ1kの送信出力は電波法の規制で制限されているため、これらアンテナと無線タグ間の通信距離はおのずと制限がある。このため、図15に示すように無線タグ2とタグ検知アンテナ1kとは近接して配置される。
【0011】
図15に示すように、山の斜面にタグ検知アンテナ1kを配置して、このタグ検知アンテナ1kを固定し、この近傍に無線タグ2を浅く埋める。
【0012】
前述の無線タグ2は、周波数は上記の(1)又は(2)帯を用いる。
【0013】
山の斜面が崩れてくるときには、兆候として土が動く、土が動くと、無線タグ2も追従して動くことになる。すなわち、無線タグ2が動くということは、タグ検知アンテナ1kから離れることになるので、無線タグ2とタグ検知アンテナ1kとの通信距離を出ることになり(到達する電波の強度は弱くなるから)、タグ検知アンテナ1kから無線タグ2のIDコードが山頂の受信器等(図示せず)には送信されないことになる。つまり、無線タグ2のIDコードが検知されないことになるので結果として山崩れの兆候が出てきたことが分かる。
【0014】
図16の方式は、無線タグリーダライタに同軸ケーブルを接続して、この同軸ケーブルを分岐させてそれぞれの分岐した同軸ケーブルにタグ検知アンテナを接続する方式である。
【0015】
この方式は、無線タグリーダライタ3を山の上に設置して、同軸ケーブル5を接続し、この同軸ケーブル5を分配器6で分岐して、同軸ケーブル4a、4b、4cを接続する。
【0016】
そして、これらの同軸ケーブル4a、4b、4cの先端にタグ検知アンテナ1k1、1k2、1k3を接続し、それぞれのアンテナの近傍に、無線タグ2a、2b、2cを設置する。
【0017】
この方式は、タグ検知アンテナ1k1、1k2、1k3を同軸ケーブルで引っ張ることになるからタグ検知アンテナ1k1、1k2、1k3は固定されていることになる。
【0018】
このため、例えば崖崩れの兆候があって地面が移動すると無線タグ2a、2b、2cが移動するので、無線タグ2a、2b、2cの移動を検出することができる。
【0019】
図17は無線タグリーダライタ3を例えば山頂に一台おき、この無線タグリーダライタ3から数mの長さの同軸ケーブル9a、9b、9cを張り、この同軸ケーブル9a、9b、9cの先端にタグ検知アンテナ1k1、1k2、1k3を接続し、このタグ検知アンテナ1k1、1k2、1k3の近傍に無線タグ2a、2b、2cを配置する。、
そして、無線タグ2a、2b、2cにピアノ線7a、7b、7cの一方を接続し、他方に重り(地滑り検知用重り8a、8b、8c)を接続する。
【0020】
このようにすると、例えば、地滑りが発生した場合は、重りが斜面の移動に伴って下に移動し、結果として無線タグ2a、2b、2cを引っ張ることになる。これによって、無線タグ2a、2b、2cがタグ検知アンテナ1k1、1k2、1k3を離れることになり、無線タグ2a、2b、2cが移動したことが検知される。
【0021】
図18の方式はインサーネットのLANのケーブルを用いるものである。LANのケーブルは100m、200mの長さであっても減衰はほとんどない。
【0022】
このLANケーブル10a、10b、10cの先端に、タグ検知アンテナ1k1、1k2、1k3と無線タグリーダライタ3a、3b、3cとを収納したケース11a、11b、11cとを接続することで、無線タグ2a、2b、2cの移動を、ケース内のタグ検知アンテナと無線タグリーダライタで検知してLANケーブルで監視センター等に通知するものである。
【0023】
しかしながら、タグ検知アンテナ1と無線タグリーダライタ3とを収納したケースを多数配置することになるからコストがかかる。
【0024】
また、無線タグを利用したシステムとして特開2005−283337号公報(特許文献1)がある。
【0025】
この特許文献は、競技者・・・が携帯する無線タグ・・は、スタートラインを通過するときに時刻データを無線受信して記憶し、中間ラインを通過するときに時刻データを無線受信して記憶し、・・ゴールラインを通過するときに無線受信するものである。
【特許文献1】特開2005−283337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
しかしながら、図15に示す方式は、(1)の124KHz、135KHz帯又は(2)の13.56MHz帯を用いるものであるが無線タグ2というのは探知距離で数十センチメートルであり非常に短い。
【0027】
すなわち、図15の方式は、非常に広範囲な斜面を検知するのに、(1)又は(2)のような探知距離が短い無線タグ2とタグ検知アンテナとを一体で用いるものであるからタグ検知アンテナも無線タグの数だけ必要となる。
【0028】
また、タグ検知アンテナは、常に固定しておかなければ、無線タグの移動を検知できない。このため、タグ検知アンテナの埋設工事等を行う必要があった。さらに、図15の方式は、タグ検知アンテナに送信手段が必要である。
【0029】
従って、図15の方式のシステムは機材コスト、工事コストなどが莫大となるという課題があった。
【0030】
図16の方式は、タグ検知アンテナを同軸ケーブルで繋げるものであるので、タグ検知アンテナに無線で検知データを送信する機能及びタグ検知アンテナの大がかりな固定工事等は必要がなくなる。また、斜面は広いので、同軸ケーブルを数百メートに渡って這わさなければならい。
【0031】
すなわち、同軸ケーブルは、線長が100m、200m程度になると、信号がマイナス数十dB減衰してしまい。結果として無線タグ2の移動を検知できなくなるという課題があった。
【0032】
図17の方式は、同軸ケーブルを長くしなくともどこかの重りが動くと、地滑り等が分かるが重りの設置場所についても地滑りがあるときにスムーズに転がるように現場で十分に検討しなければならない。
【0033】
図18の方式は、同軸ケーブルの代わりにインサーネットのLANケーブルを用いるものであるが、高価なタグ検知アンテナと無線タグリーダライタとを収納したケースを多数配置することになるからコストがかかるという課題があった。
【0034】
一方、数十cm〜数mの距離で探索を行う場合には(3)の900MHz帯、(4)の2.45GHz帯、(5)の300MHz帯が適している。
【0035】
これらの無線タグの場合は、検知距離が長いので広範囲エリアはカバーできるが、そのエリア内での無線タグに位置が動いた場合でも、検知距離が長いために、無線タグが検知されつづけるので、わずかな動きを検知することは出来ない。
【0036】
更に、(4)の2.45GHz帯はマイクロ波帯の性質上、アンテナから比較的鋭いビーム状の検知エリアとなる。(3)の915MHz帯、(5)の300MHz帯はUHF帯であるため、最も検知距離、エリアともに広範囲となるが、特に金属の影響を大きく受け、それらの周囲環境条件によって検知距離が変化してしまう。
【0037】
別の方法として、無線タグからの電波を少なくとも1台以上の無線タグリーダーで受信して、その電波の強さ、到達時間(電波の位相)などを測定し、無線タグリーダーからの距離を等価的に測定することによって、無線タグの位置や動きを検知する方法もありうる。しかし、この機能を実現するためには、複雑な無線回路を無線タグに搭載内蔵し、かつ、無線タグリーダーにも電波の強さ、位相差などを計測できる複雑な電子回路とソフトウェアを搭載する必要がある。これらの電子デバイスやソフトウェアは高価であるため、システム全体が非常に高価になってしまうという問題点がある。
【0038】
以上のように、従来の図15、図16、図17及び図18の方式では費用の点等に問題がある。
【0039】
また、検知距離が長い無線タグによる方式は、広範囲エリアの対象物の僅かな動きを検知する目的には不向きである。
【0040】
逆に、検知距離、エリアが小さな無線タグを使用すると、無線タグの検知の有無を判断することにより僅かな動きは検知できるが、全エリアをカバーするためには膨大な数のアンテナを設置する必要が生ずる。
【0041】
さらに、無線タグリーダライタから電波を発射して、電界強度、到達時間から無線タグの位置を測定する方式は、費用もかかる。
【0042】
そこで、本発明は、同軸ケーブル、LANケーブルを用いなくとも、広範囲エリア内の無線タグ(対象物)の僅かな動きを検知でき、しかも設置するアンテナ数を増やすことなく、極めて安価にこれを実現できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0043】
本願発明の無線タグ移動検出システムは、検出エリアに敷設された漏洩同軸ケーブルと、
前記漏洩同軸ケーブルに接続された終端抵抗器と、前記漏洩同軸ケーブルの近傍の配置されて、電磁波の受信でIDコードを発射する複数の無線タグと、前記漏洩同軸ケーブルに信号を供給し、該漏洩同軸ケーブルから伝送された信号から前記無線タグのIDコードを解読する無線タグリーダライタと、前記無線タグリーダライタの解読結果を読み込み前記無線タグの検出有無を出力する装置とを備えたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0044】
以上のように、本発明によれば、数百メートルに渡って漏洩同軸ケーブルを這わしたとしても、漏洩同軸ケーブルの減数量はわずかであり、かつ漏洩同軸ケーブルがアンテナとなって無線タグを検知できるので、広範囲に渡って無線タグを配置したとしても、コストを非常に低減できる。
【0045】
例えば、山の斜面に漏洩同軸ケーブルと無線タグとを配置した場合は、崖崩れ、土砂崩れ等があると、漏洩同軸ケーブルに無線タグのIDコードが検知されなくなるから、崖崩れ、土砂崩れの兆候を直ちに検知できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
本発明に係る実施の形態を図面を参照して説明する。
【0047】
本実施の形態では、無線タグリーダーライターのアンテナに漏洩同軸ケーブルを使用することにより、無線タグの移動を検知するものである。
【0048】
前述の無線タグをどのような周波数帯のものを用いるかを初めに説明しておく。
【0049】
無線タグアンテナは13.56MHz帯、2.45GHz帯、900MHz帯等の周波数帯のものを用いるとする。
【0050】
13.56MHz帯の無線タグを用いる場合は、13.56MHz帯の無線タグは電磁波の主に磁界成分に反応する。
【0051】
また、2.45GHz帯や900MHz帯の無線タグは、電磁波の主に電界成分に反応するアンテナを有している。但し、2.45MHz帯は水による減衰の影響がある。
【0052】
一方、漏洩同軸ケーブルは電磁波として磁界と電界の両方のベクトル成分を輻射する。 また、同軸ケーブルの極めて近傍は、電界成分から漏洩が始まる。
【0053】
900MHz帯の無線タグは水の影響を受け難いし、波長の関係から効率の高いダイポールアンテナ等をタグに適用できる。一方、13.45MHzは波長が長いため、それに対して極めて小さいサイズの低効率のアンテナしかタグに実装できない。従って検知距離が900MHzに比べ大きく制限される。従って、本実施の形態では900MHz帯を用いるとして説明する。
【0054】
<実施の形態1>
図1は本実施の形態1の無線タグ移動検知システムの概略構成図である。図1に示すように、本実施の形態1の無線タグ移動検知システムは、無線タグリーダライタ11と送受信装置12(例えばパソコン)とを備えた無線タグ位置送信装置10と同軸ケーブル13(13a、13b、13c)と漏洩同軸ケーブル14(14a、14b、14c)と900MHz帯の電波を放射する無線タグ15と(15a、・・)、無線タグ16と(16a・・)、無線タグ17と(17a・・・)、情報伝送ネットワーク18と、監視制御システム19等からなる。前述の同軸ケーブル13の長さは総長で数十メートル以内(例えば10m〜30m)とする。また、漏洩同軸ケーブル14は、1kmで約10dBの減衰程度であるので、それぞれの漏洩同軸ケーブルの長さは数メートル〜数百メートルとする。
【0055】
すなわち、無線タグ位置送信装置10を例えば山の頂上に配置し、この無線タグ位置送信装置10の給電点に同軸ケーブル13a(数メートル)を接続して分配器20で分配して同軸ケーブル13b、13cを接続する。
【0056】
そして、同軸ケーブル13b、13cに分配器21、22を接続して、これらの分配器20、21、22(分配用の同軸コネクタ)に所定の長さの(例えば30メータ〜200メータ)、漏洩同軸ケーブル14a、14b、14cを崖崩れの懸念される傾斜などへ敷設し、当該斜面の漏洩同軸ケーブル近傍の通信エリア内へ広範囲に渡り、無線タグ15、16、17を設置する。前述の漏洩同軸ケーブル14は、斜面に斜めに敷設したり、横に敷設したり、あるいは所々曲げたりまっすぐにして敷設する。
【0057】
これによって、一旦、豪雨などがあると、斜面の土砂流出などの、崖崩れの前兆現象が発生すれば、一部のタグが土砂とともに、その位置がずれ始めると、無線タグからの電波を漏洩同軸ケーブル14が検知できなくなる。従って、土砂崩れ等の兆候事前に検知できることになる。
【0058】
次に、各部の構成を説明する。
【0059】
前述の無線タグ15、16、17の反応周波数は、900MHz帯であり、この無線タグ15、16、17は固有のユニークなIDコードが記憶され、漏洩同軸ケーブル14からの電波を受けてこのIDコードを発射する。また、同軸ケーブル13c、13bには終端抵抗23a、23bが接続されている。
【0060】
さらに、漏洩同軸ケーブル14(14a、14b、14c)の端には終端抵抗24、25、26(50Ω)が接続されている。すなわち、漏洩同軸ケーブル14(14a、14b、14c)は、定在波比が「1」となり、進行波が発生するようにされている。
【0061】
また、漏洩同軸ケーブル14は図2に示すように、内部導体を絶縁体で覆い、絶縁体を外部導体で覆い、この外部導体を外被で覆うことで構成されている。さらに、支持線が外被で覆われている。つまり、信号を伝送する同軸ケーブル機能と、ケーブルに沿った空間に電波を放射するアンテナ機能とを有する。
【0062】
また、この漏洩同軸ケーブル14は50Ωの終端抵抗を接続し(導体に一方を、他方を支持線に接続)、分配器20、21、22を50Ωとしているので、定在波比ρは「1」であるから長さにかかわらず図3に示すように、放射は一様になる(進行波)。また、この漏洩同軸ケーブル14は、1km程度の減衰量が大略15dB程度のものを用いるのが好ましい。
【0063】
また、無線タグリーダライタ11は、漏洩同軸ケーブル14、同軸ケーブル13を介してIDコードを入力し、これを解読する。
【0064】
送受信装置12は、監視制御システム19からの指示を受けて、無線タグリーダライタ11を起動させて、定期的に同軸ケーブル13を介して漏洩同軸ケーブル14に信号を送って電波を放射させる。
【0065】
監視制御システム19は、各無線タグ15、16、17に割り振られたIDコードに緯度経度(XYZ)と住所とを対応させている。また、この監視制御システム19は、地理情報システムを有する。すなわち、どこに崖崩れなどが発生したかを地図上に示す機能を有している。
【0066】
上記のように構成された実施の形態1の無線タグ移動検知システムについて以下に動作を説明する。本実施の形態では、900MHzの無線タグ15(15a・・、16b・・、17a・・)が複数、漏洩同軸ケーブル14の近傍にプラスチックケース等に入れられて崖崩れの兆候を検出する範囲に土に浅く埋められて、かつ漏洩同軸ケーブル14(14a、14b、14cの近傍に配置されている。また、漏洩同軸ケーブル14は、崖崩れの兆候を検出する範囲に伸ばされて配置されている
例えば、遠隔制御システム19は、年月日時刻を入力して監視期間を情報伝送ネットワーク18を介して無線タグ位置送信装置10に送信する。
【0067】
無線タグ位置送信装置10の送受信装置12は、監視期間の入力を受けて、この機関は無線タグリーダライタ11を動作させる。
【0068】
無線タグリーダライタ11は起動に伴って900MHZ帯の周波数の信号を定期的に同軸ケーブル13aに出力する。
【0069】
この信号は、分配器20によって分配され、分配器20から同軸ケーブル13b、13cに伝送される。
【0070】
また、同軸ケーブル13b、13cには分配器21、22が設けられ、この分配器から漏洩同軸ケーブル14a、14b、14cに信号が伝送される。この信号によって漏洩同軸ケーブル14は電波を外部に一様に放射する。
【0071】
各無線タグ15、16、17はこの電波によってコイルに電流を発生させてIC等に記憶されたIDコードを発射する。このIDコードは漏洩同軸ケーブル14(14a、14b、14c)によって捉えられて、分配器、同軸ケーブルを介して無線タグリーダライタに送られて解読され、無線タグリーダライタ13がこのIDコードと漏洩同軸ケーブル14の番号と一緒に送受信装置12に送出し、送受信装置12が所定の通信形式にして監視制御システム19に送信する。
【0072】
監視制御システム19は、このIDコードと漏洩同軸ケーブル14の番号を受信して画面に表示する。これによって、監視制御システム19側(監視センターともいう)では、全ての無線タグが動いていないことを把握できる。
【0073】
(地滑り発生時)
例えば、雨が降って傾斜が少し移動したとすると、無線タグ15、16、17は土砂の移動に伴って移動する。
【0074】
この土砂の移動に伴って例えば、無線タグ15aが漏洩同軸ケーブル14aの検知距離を離れると、漏洩同軸ケーブル14aには、無線タグ15aからのIDコード(例えばID12345)が検知されなくなる。
【0075】
つまり、無線タグリーダライタは、無線タグ15acのIDコードを読みとれないことになる。このような漏洩同軸ケーブル14aの検知データが送受信装置12によって情報伝送ネットワーク18を介して監視制御システム19に送信される。
【0076】
監視制御システム19は、漏洩同軸ケーブル14aの近傍の無線タグ15aのIDコードが存在しなくなったかどうかを判定しており、ID12345が存在しなくなったときは、このID12345に対応している無線タグ位置の地理座標XYZ(予めメモリにIDコードと対応させて記憶している)を読み、このXYZに対応する場所名(予めIDコードに対応させて記憶している)を画面に表示すると共に、地図を画面に表示し、その場所付近を色別表示しかつアラームを発生する(図4を参照)。
【0077】
従って、従来のように、沢山の数量の高価なタグ検知のアンテナを配置しなくとも、安価な漏洩同軸ケーブルと無線タグを配置するだけで、本格的な土砂崩れの前兆現象を捉えることができる大きな利点がある。
【0078】
ここで、アンテナから発信される電磁波の発信源からの距離と電磁波の強度の関係について説明を補充する。
【0079】
ある空間の原典にある長さ1の電気ダイポールから距離rだけ離れた場所Pにおける電荷量をq(t)(tは時刻)とすると、電荷量の変化の割合が電流であるので、
【数1】
と微分の形で書き表すことができる。
【0080】
原点にz軸方向を向いた微小ダイポールがあったとき、図5に示す点Pにおける微小ダイポールの電界E(t)および磁界H(t)を電荷量の変化q(t)で表現すると、
【数2】
【数3】
となる。これらの式は極座標に基づいて表記されており、er、eθ、eΦは各々e方向、θ方向、Φ方向単位ベクトルである。またcは空間中の電磁波の伝搬速度である。
【0081】
これらの式でr−3に比例する項は静電磁場を作り出す項で、電気ダイポールの場合電界のみに存在する。
【0082】
r−2の項は誘導電磁場を発生させる項である。r−1項は放射界を作り出す項である。充分遠方であれば静電項、誘導項は放射項と比べてはるかに小さくなる。ゆえにダイポールから充分離れた場所における電界・磁界(遠方界という)は
【数4】
【数5】
となる。方向単位ベクトルは直交しているので、遠方界では電界と磁界は直交し、波の進行方向に電界・磁界の成分がない。
【数6】
【数7】
となる。
【0083】
ここで、遠方電界と磁界の比ξを波動インピーダンスといい、以下の式で表される。
【数8】
【0084】
〔数6〕、〔数7〕より、近傍界領域では波原との距離rが短くなるほど波動インピーダンスξが大きくなることから、近傍界領域(フレネル領域)では電磁界のうち電界成分が強く、遠方界領域(フラウンフォーファー領域)で磁界成分が強くなって行くと言える。
【0085】
<その他の実施の形態>
上記実施の形態1では、複数の漏洩同軸ケーブルを用いて大きな土砂崩れ、崖崩れなどの兆候を検出したが図6に示すように、無線タグリーダライタ11(送受信装置は図示せず)に1本の同軸ケーブル13aの一端を接続して、この同軸ケーブル13aの他端にコネクタ(給電点)を接続し、このコネクタに漏洩同軸ケーブル14aを接続して斜面を横に這わせ、そして近傍に無線タグを配置してもよい。
【0086】
このようにすると、崖崩れ、土砂崩れがあると、無線タグ15(15a、15b、15c)は下に移動するので、直ちに無線タグのIDを検知できなくなるので、土砂崩れの前兆を広いエリアで検知できる。
【0087】
また、図7に示すように、送受信機から離れるほど漏洩同軸ケーブルの漏洩減衰量を小さくする方法がある。A区間の漏洩減数量を40dB、B区間の漏洩減衰量を30dB、C区間の漏洩減衰量を20dBとして制作した一本の漏洩同軸ケーブル30を同軸ケーブル11を介して無線タグリーダライタ11に接続したものである。漏洩同軸ケーブル30は斜面に横に配置する。
【0088】
このように漏洩同軸ケーブル30を区分けして、それぞれを漏洩減衰量を異ならせているので、送信機からの距離(漏洩同軸ケーブルの長さ)によらず、無線タグの検知距離を一定にできる。一方、斜面というのは木があったり、岩があったりして均一の近さで全ての無線タグを漏洩同軸ケーブルに配置できない場合もある。このような場合は、斜面の環境に応じて漏洩同軸ケーブル30の区間の減衰量を変えれば漏洩ケーブルと無線タグとの検知距離をその区間毎に変えて設定できる。
【0089】
図8は一本の漏洩同軸ケーブルを分配器で分配したものである。分配器で多数の漏洩同軸ケーブルを広いエリアに配置することが可能であるので、広いエリアを詳細に検知する場合に適している。
【0090】
さらに、図9は900MHzの無線タグ15及び13.56MHzの無線タグ29をケース28内等に固定して漏洩同軸ケーブルの近傍に埋設した図である。
【0091】
また、この漏洩同軸ケーブル14aに同軸ケーブル11を接続し、この同軸ケーブル11に900MHz帯の無線タグリーダライタ11と、13.56MHz帯の無線リーダライタ31とを接続している。
【0092】
900MHz帯の無線タグは、検知距離が1m〜2m程度であり、13.56MHzは数センチの検知距離である。
【0093】
このような2種類の無線タグを入れたケースを漏洩同軸ケーブルの近傍に配置すると、斜面が数センチ動くとケースも数センチ動き、13.56GHzの無線タグ29のIDコードの電波は漏洩同軸ケーブルでは捉えられなくなる。つまり、13.56GHzの無線タグリーダライタ31には無線タグのIDコードが検知されないことになるから、わずかに斜面が移動したことが分かる。
【0094】
さらに、大きく移動すると、900MHzの無線タグ15からのIDコードが漏洩同軸ケーブルで捉えられないことになる。つまり、900MHzの無線タグリーダライタ11には無線タグのIDコードが検知されないことになるから、大きく斜面が移動したことが分かる。
【0095】
また、図9のように無線タグリーダを2種類用意した場合には異なる減衰量の漏洩同軸ケーブルを区間別に接続する。例えば区間Aは15.56MHzの無線タグ、区間Bは900MHzの無線タグを配置してもよい。このようにすると、微細に動く箇所を検出したい場所と大きく動く場所を検出した場所とを区分けして検知できる。
【0096】
<実施例>
図10は荷箱に無線タグを収納して、どんな荷物が運ばれてきたか、保管されているかを漏洩同軸ケーブルで検知するためのシステム構成図である。
【0097】
図10のシステムは、宅配会社等の中継点の倉庫内やベルトコンベアの近傍に漏洩同軸ケーブルを14a、14bを配置し、この漏洩同軸ケーブルを分配器20、21、22で同軸ケーブル13a、13b、13cに接続し無線リーダライタ11で無線タグのIDコードを読み、このIDコードを情報伝送ネットワーク18を介して監視制御システム40に送り、監視制御システム40が、受信したIDコードからどんな荷物が来たか何を持ち出して来たかを検知するものである。
【0098】
つまり、監視制御システム40が予めIDコードと荷物の内容データとを受信し、IDコードを漏洩同軸ケーブルで受信されたとき、このIDコードをキーとして内容データを検索する。
【0099】
図11は、基板43に無線タグを貼り付け、どんな基板がユニットに入ったか取り出されたかを検出するものである。
【0100】
基板43には一般には回路名や番号が付されており、保守点検等においてはこの番号や回路名を確認してユニットから出し入れする。しかしながら、回路基板が多いと、間違いが発生しやすい。
【0101】
そこで、図11に示す3段のユニットからなる箱において、各ユニットの下縁に漏洩同軸ケーブルを這わせる。但し、終端を接続する。
【0102】
図11においては、無線タグリーダライタ11に給電点(コネクタ)から同軸ケーブル13aを接続し、この同軸ケーブル13aに分配器20を接続し、分配器20に漏洩同軸ケーブル14aと同軸ケーブル13bを接続する。
【0103】
また、同軸ケーブル13bに分配器21を接続し、この分配器21に漏洩同軸ケーブル14bと同軸ケーブル13cを接続する。また、同軸ケーブル13cに分配器22を接続し、分配器22に漏洩同軸ケーブル14cを接続する。
【0104】
すなわち、送受信装置12を操作して無線タグリーダライタ11から電波を同軸ケーブルを介して漏洩同軸ケーブルに伝送させて、各基板43(43a、43b・・・)に貼り付けられている無線タグからIDコードを漏洩同軸ケーブルに捉えさせる。
【0105】
これらのIDコードを無線タグリーダライタが解読して送受信装置12に送り、送受信装置12が、受信したIDコードをキーとして予め記憶しているIDコードに対応させている基板の種類とを比較して、何か収納されているかを表示する。
【0106】
もし、基板43が引き抜かれた場合は、IDコードをキーとして何が引き抜かれたかを表示する。
【0107】
また、送受信装置には、箱の各ユニットの基板が入る場所の番号と基板の種類とを記憶したテーブルを備え、基板が交換された場合は漏洩同軸ケーブルによって検知されたIDコードをキーとして、このIDコードに対応する基板の種類を読み、テーブルの種類と相違していた場合は直ちにエラーを通知する。
【0108】
また、漏洩同軸ケーブルが検知したIDコードをネットワークを介して監視センタにおくって、保守管理に用いることも可能である。
【0109】
さらに、図12に示すように、トンネル内の壁面に漏洩同軸ケーブル14aを這わせて、この漏洩同軸ケーブル14aの近傍の壁面に無線タグ2を貼り付けて、トンネル内の壁のはがれを検出してもよい。つまり、壁がはがれると無線タグが落ちるので漏洩同軸ケーブルはこの無線タグのIDを捉えることができなくなる。
【0110】
これを、無線タグ位置検出装置がネットワークを介して監視センターに送信する。
【0111】
図13は、橋の欄干に漏洩同軸ケーブルを這わし、この近傍に無線タグを貼り付けたものである。
【0112】
図14は、ビルの壁、ビル内等に無線タグを貼り付け、この近傍を漏洩同軸ケーブルを這わせたものである。
【0113】
無線タグ(15、16、17)が落ちたり、ずれると、漏洩同軸ケーブルによって無線タグのIDコードが捉えられなくなる。これを無線タグ位置送信装置10(無線タグリーダーライタ、送受信装置含む)がネットワークを介して監視センター48に送信する。
【0114】
監視センター48では、壁のはがれ落ち、内部の崩壊の兆候が直ぐに分かるので、住人に対して避難勧告を直ぐに出したり、あるはビル全体の保守の指導ができる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本実施の形態1の無線タグ移動検知システムの概略構成図である。
【図2】漏洩同軸ケーブルの説明図である。
【図3】漏洩同軸ケーブルに終端抵抗を取り付けたときの説明図である。
【図4】監視制御システムの画面を説明する説明図である。
【図5】アンテナから発信される電磁波の発信源から距離と電磁波の強度の関係を説明する説明図である。
【図6】その他の実施の形態の無線タグ移動検知システムの構成図である(単一型)。
【図7】その他の実施の形態の無線タグ移動検知システムの構成図である(グレーディング型)。
【図8】その他の実施の形態の無線タグ移動検知システムの構成図である(分岐型)。
【図9】900MHzの無線タグ15及び13.56MHzの無線タグ29をケース28内等に固定して漏洩同軸ケーブルの近傍に埋設した無線タグ移動検知システムの構成図である
【図10】ベルトコンベアに無線タグ移動検知システムを用いたときの構成図である。
【図11】基板を収納した箱に無線タグ移動検知システムを用いたときの構成図である。
【図12】トンネル内に無線タグ移動検知システムを用いたときの構成図である。
【図13】橋に無線タグ移動検知システムを用いたときの構成図である。
【図14】ビル内に無線タグ移動検知システムを用いたときの構成図である。
【図15】従来の無線タグ検知システムの概略構成図である。
【図16】無線タグリーダライタに同軸ケーブルを接続して、この同軸ケーブルを分岐させてそれぞれの分岐した同軸ケーブルにタグ検知アンテナを接続した従来の無線タグ移動検知システムの概略構成図である。
【図17】無線タグに重りを接続した従来の無線タグ移動検知システムの概略構成図である。
【図18】インサーネットのLANのケーブルを用いた無線タグ移動検知システムの概略構成図である。
【符号の説明】
【0116】
11 無線タグリーダライタ
12 送受信装置
13 同軸ケーブル
14 漏洩同軸ケーブル
15 無線タグ
16 無線タグ
17 無線タグ
19 監視制御システム1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出エリアに敷設された漏洩同軸ケーブルと、
前記漏洩同軸ケーブルに接続された終端抵抗器と、
前記漏洩同軸ケーブルの近傍の配置されて、電磁波の受信でIDコードを発射する複数の無線タグと、
前記漏洩同軸ケーブルに信号を供給し、該漏洩同軸ケーブルから伝送された信号から前記無線タグのIDコードを解読する無線タグリーダライタと、
前記無線タグリーダライタの解読結果を読み込み前記無線タグの検出有無を出力する装置と
を有することを特徴とする無線タグ移動検出システム。
【請求項2】
前記無線タグは、
前記電磁波の少なくとも電界、磁界のいずれかに反応するアンテナを有することを特徴とする請求項1記載の無線タグ移動検出システム。
【請求項3】
前記無線タグリーダライタと前記漏洩同軸ケーブルとの接続は、同軸ケーブルによって互いを接続することを特徴とする請求項1又は2記載の無線タグ移動検出システム。
【請求項4】
前記同軸ケーブルは複数の分配器によって互いに接続され、該分配器に前記漏洩同軸ケーブルをそれぞれ接続して前記検出エリアにこれを敷設することを特徴とする請求項1、2又は3記載の無線タグ移動検出システム。
【請求項5】
前記漏洩同軸ケーブルは複数の区間に渡って設けられ、該区間毎に信号の減衰率を異ならせた漏洩同軸ケーブルを接続していることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の無線タグ移動検出システム。
【請求項6】
前記無線タグのアンテナが反応する周波数帯は、
900MHz帯であることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の無線タグ移動検出システム。
【請求項7】
前記検出エリアは、山の斜面又は構造物の内部或いは基板であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の無線タグ移動検出システム。
【請求項1】
検出エリアに敷設された漏洩同軸ケーブルと、
前記漏洩同軸ケーブルに接続された終端抵抗器と、
前記漏洩同軸ケーブルの近傍の配置されて、電磁波の受信でIDコードを発射する複数の無線タグと、
前記漏洩同軸ケーブルに信号を供給し、該漏洩同軸ケーブルから伝送された信号から前記無線タグのIDコードを解読する無線タグリーダライタと、
前記無線タグリーダライタの解読結果を読み込み前記無線タグの検出有無を出力する装置と
を有することを特徴とする無線タグ移動検出システム。
【請求項2】
前記無線タグは、
前記電磁波の少なくとも電界、磁界のいずれかに反応するアンテナを有することを特徴とする請求項1記載の無線タグ移動検出システム。
【請求項3】
前記無線タグリーダライタと前記漏洩同軸ケーブルとの接続は、同軸ケーブルによって互いを接続することを特徴とする請求項1又は2記載の無線タグ移動検出システム。
【請求項4】
前記同軸ケーブルは複数の分配器によって互いに接続され、該分配器に前記漏洩同軸ケーブルをそれぞれ接続して前記検出エリアにこれを敷設することを特徴とする請求項1、2又は3記載の無線タグ移動検出システム。
【請求項5】
前記漏洩同軸ケーブルは複数の区間に渡って設けられ、該区間毎に信号の減衰率を異ならせた漏洩同軸ケーブルを接続していることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の無線タグ移動検出システム。
【請求項6】
前記無線タグのアンテナが反応する周波数帯は、
900MHz帯であることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の無線タグ移動検出システム。
【請求項7】
前記検出エリアは、山の斜面又は構造物の内部或いは基板であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の無線タグ移動検出システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2007−243821(P2007−243821A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−66379(P2006−66379)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(391017540)東芝ITコントロールシステム株式会社 (107)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(391017540)東芝ITコントロールシステム株式会社 (107)
【Fターム(参考)】
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