説明

無線タグ通信システム、無線タグの電池残量推定方法及び監視装置

【課題】無線タグに新たな構成を追加することなく、センター装置側で無線タグの電池残量を的確に検知できる無線タグ通信システムを提供すること。
【解決手段】無線タグ110とタグリーダ120との距離を算出するタグ位置算出部123と、無線タグ110からの信号の受信レベルを検出する受信レベル検出部122と、前記距離と前記受信品質とに基づいて、前記無線タグの電池残量を判定する電池残量判定部131とを設けたことにより、無線タグ110に新たな構成を追加することなく、センター装置(タグリーダ120及び管理装置130)側で無線タグ110の電池残量を的確に検知できる無線タグ通信システム100を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線タグ通信システム、無線タグの電池残量推定方法及び監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線タグを用いた通信システムが広く用いられている。無線タグを用いた通信システムの例としては、侵入を検知して電波を送信するワイヤレスセンサ(無線タグに相当)を用いた警備システムがある(例えば、特許文献1参照)。また、商品に付帯された無線タグを用いて商品の追跡管理を行うシステムがある(例えば、特許文献2参照)。これらの例の他にも、例えば電子棚札システムや人物認証システム等でも、無線タグを用いた通信システムが広く用いられている。
【0003】
ところで、無線タグの電池残量を把握することは、セキュリティ上及び管理上、非常に重要である。例えば人物が無線タグを付帯することで実現されるセキュリティシステムにおいては、(i)部屋のドア開錠が無線タグのIDと連動している場合、無線タグを携帯しドア開錠して部屋に入室できた人物が、退室前にその人物の無線タグの電池切れが生じると開錠されず部屋に閉じ込められてしまう、(ii)無線タグ以外のセンサ(カメラ等)による人物検出と組み合わせたセキュリティシステムの場合、所定エリアへの進入権限のある人物は無線タグと他のセンサの両方で検知されるべきなので、無線タグ付帯者の電池が進入後に途中で切れると、無線タグ以外のセンサでは検知されるのに無線タグで検知されず、無線タグを付帯していない不審者とみなして誤検知してしまう、等の問題が生じる。
【0004】
なお、無線タグの電池切れ又は電池残量を無線タグ側で検知すると、(i)各無線タグに新たな機能(電池残量検知用回路や検知した残量をセンター装置側に通知する機能等)が必要となるのでコストが高くなる、(ii)検知結果が無線タグに表示されたとしても無線タグ付帯者が電池残量が少ない表示に気づかない場合には電池切れになってしまう、等の問題が生じる。特に、無線タグを用いた通信システムでは、膨大な数の無線タグが設けられることが多く、さらに無線タグは必ずしも人物に付帯されて使用されるわけではないので、各無線タグの電池残量をセンター装置側で一元管理することが望ましい。
【0005】
センター装置側で、無線タグの電池切れ又は電池残量を検知する技術が、例えば特許文献3及び特許文献4に開示されている。
【0006】
特許文献3には、ドア開閉時に、セキュリティ用無線タグと受信機(センター装置に相当)との間で通信を行い、ドア開閉時に、受信機で受信できなければ、セキュリティ用無線タグが電池切れ又は故障であると判断する技術が開示されている。
【0007】
特許文献4には、受信機において、送信機から送信された電波の受信レベルを検知し、受信レベルに基づいて送信機の電池残量を算出する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2000−90381号公報
【特許文献2】特開2002−169879号公報
【特許文献3】特開2004−252790号公報
【特許文献4】特開2006−50398号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献3で開示された技術によれば、電池が切れたことはセンター装置側で検知可能だが、電池残量が少なくなったことを検知できず、不十分である。
【0009】
また、特許文献4で開示された技術によれば、送信機の電池残量を送信機の受信レベルに基づいて受信機側で検知可能だが、(i)電池残量が少ないために受信レベルが弱いのか、或いは(ii)送信機と受信機との距離が長いために受信レベルが弱いのかを、送信機を持ったユーザが自ら判断しなければならないので、不十分である。
【0010】
本発明は、かかる点を考慮してなされたものであり、無線タグに新たな構成を追加することなく、センター装置側で無線タグの電池残量を的確に検知できる無線タグ通信システム、無線タグの電池残量推定方法及び監視装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の無線タグ通信システムの一つの態様は、無線タグとタグリーダとの間の距離を算出する距離算出手段と、前記タグリーダにおける、前記無線タグからの信号の受信品質を検出する受信品質検出手段と、前記距離と前記受信品質とに基づいて、前記無線タグの電池残量を判定する判定手段と、を具備する構成を採る。
【0012】
本発明の無線タグの電池残量推定方法の一つの態様は、無線タグとタグリーダとの間の距離を算出する距離算出ステップと、前記タグリーダにおける、前記無線タグからの信号の受信品質を検出する受信品質検出ステップと、前記距離と前記受信品質に基づいて、前記無線タグの電池残量を判定する判定ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、無線タグに新たな構成を追加することなく、センター装置側で無線タグの電池残量を的確に検知できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
(実施の形態1)
[1]全体構成
図1に、本発明の実施の形態1に係る無線タグ通信システムの構成を示す。図1には、本実施の形態の電池残量推定方法を実現するための要部のみが示されているが、無線タグ通信システム100は、実際には、図1の構成に加えて、種々のアプリケーションを実現するための構成を有する。
【0016】
無線タグ通信システム100は、無線タグ110と、タグリーダ120と、監視装置130とを有する。
【0017】
本実施の形態の場合、無線タグ110は人物に付帯されているが、無線タグ110の用いられ方はこれに限らず、例えば車、貨物、什器、物品など物体に取り付けられてもよい。タグリーダ120と監視装置130は、センター装置を構成する。また、実際上、無線タグ通信システム100には、複数の無線タグ110が設けられる。また、タグリーダ120も1つに限らず、複数設けてもよい。
【0018】
無線タグ110は、送受信部111と、メモリ112と、電池113と有する。メモリ112には、例えば各無線タグ110に個別に割り当てられたID(識別情報)等が格納されている。電池113は、無線タグ110内の各回路に電源を供給する。
【0019】
タグリーダ120は、送受信部121と、受信レベル検出部122と、タグ位置算出部123とを有する。送受信部121は、無線タグ110の送受信部111に電波を送信すると共に、無線タグ110の送受信部111から電波を受信する。
【0020】
受信レベル検出部122は、送受信部121で受信された電波の受信レベルを検出する。加えて、本実施の形態の場合、受信レベル検出部122は、受信ランク判定テーブルを有し、検出した受信レベルをこの受信ランク判定テーブルを用いてランク分けし、受信ランク情報S1を出力する。受信レベルのランク分けについては、後で詳しく説明する。
【0021】
タグ位置算出部123は、送受信部121で受信された電波に基づいて、無線タグ110の位置を算出する。実際上、タグ位置算出部123は、送受信部121で受信された電波に基づいて、タグリーダ120と無線タグ110との距離を算出し、算出した距離と電波受信方向とから無線タグ110の位置を算出する。タグ位置算出部123は、算出した無線タグ110の位置情報S2を出力する。
【0022】
なお、本発明の電池残量推定方法は、本質的にはタグリーダ120と無線タグ110との距離を用いて残量推定を行うので、位置情報S2として、タグリーダ120と無線タグ110との距離を出力してもよい。ただし、タグリーダ120と無線タグ110との距離は、タグリーダ120の位置が固定のため、無線タグ110の位置からも一義的に決まるものなので、本実施の形態の例では、タグ位置算出部123から無線タグ110の位置情報を出力するものとして説明する。よって、以下の説明における「位置」は「距離」と読み替えてもよい。
【0023】
監視装置130は、電池残量判定部131と、標準受信ランク判定テーブル132と、電池残量表示部133とを有する。
【0024】
電池残量判定部131は、受信レベル検出部122からの受信ランク情報S1と、タグ位置算出部123からの位置情報S2とを入力する。電池残量判定部131は、標準受信ランク判定テーブル132から、入力した位置情報S2に応じた標準受信ランク情報S3を読み出す。そして、電池残量判定部131は、受信ランク情報S1と標準受信ランク情報S3とを比較することで、電池113の電池残量を判定する。電池残量判定部131により得られた判定結果S4は、電池残量表示部133に送出され、電池残量表示部133に電池113の電池残量が表示される。ユーザは、電池残量表示部133に表示された電池残量に基づいて無線タグ110の電池残量を認識することができる。
【0025】
なお、本実施の形態では、受信レベル検出部122及びタグ位置算出部123をタグリーダ120に設けた場合について説明したが、受信レベル検出部122及びタグ位置算出部123は監視装置130に設けてもよい。また、電池残量判定部131及び標準受信ランク判定テーブル132を監視装置に設けた場合について説明したが、電池残量判定部131及び標準受信ランク判定テーブル132はタグリーダ120に設けてもよい。
【0026】
また、無線タグ110の送受信部111が自発的に電波を送信し、タグリーダ120の送受信部121が無線タグ110の電波を受信するだけの機能を有する場合にも、本実施の形態を適用できる。すなわち無線タグ110は、セミパッシブタグタイプ、アクティブタグタイプのどちらでもよい。
【0027】
[2]動作及び詳細構成
[2−1]全体の動作
先ず、図2を用いて、無線タグ通信システム100の全体動作の概要について説明する。
【0028】
無線タグ通信システム100は、ステップST10で電池残量推定処理を開始すると、ステップST11で、タグリーダ120の送受信部121から無線タグ110へ電波を送信する。次に、ステップST12で、タグリーダ120の送受信部121によって、無線タグ110からの応答電波を受信する。次に、ステップST13で、タグ位置算出部123によって、送信電波と応答電波の関係から無線タグ110の位置を算出する。次に、ステップST14で、受信レベル検出部122によって、応答電波の受信ランクを算出する。なお、ステップST13とステップST14の処理は、勿論、並列に行ってもよく、逆の順序で行ってもよい。次に、ステップST15で、電池残量判定部131によって、タグ位置の標準受信ランクと応答電波の受信ランクとから電池残量を算出する。次に、ステップST16で、電池残量表示部133によって、算出された電池残量を表示する。次に、無線タグ通信システム100は、ステップST17で電池残量推定処理を終了する。
【0029】
なお図2では、無線タグ110がセミパッシブタグの場合(タグリーダ120からの電波に応答して電波送信を行う)場合を示しているが、無線タグ110がアクティブタグの場合には、タグリーダ120の送受信部121から無線タグ110へ電波を送信するステップST11が不要となり、ステップST12ではタグリーダ120の送受信部121によって、無線タグ110から自発的に送信された電波を受信することとなる。またステップST13ではタグ位置算出部123が、無線タグ110から受信した電波(例えば電波強度)に基づいてタグ位置を算出することとなる。無線タグ110としてアクティブタグを用いる場合の上記処理については、以下の本実施の形態、別の実施の形態においても同様に置き換えて実現することが可能であるが、以下の説明では省略する。
【0030】
[2−2]タグ位置算出部123の処理
図3に、タグ位置算出部123の処理フローを示す。タグ位置算出部123は、ステップST20でタグ位置算出処理を開始すると、ステップST21で、送信電波送出時間と応答電波受信時間と応答電波の受信方向とを、送受信部121から取得する。受信方向は、例えば送受信部121が複数アンテナを有する場合は、複数アンテナ間での受信時間差を基に求めることができる。次に、ステップST22で、送信電波送出時間と応答電波受信時間の時間差を算出する。次に、ステップST23で、時間差から無線タグ110とタグリーダ120との間の距離を算出する。次に、ステップST24で、受信方向と距離とから無線タグ110の位置を算出する。次に、タグ位置算出部123は、ステップST25でタグ位置算出処理を終了する。
【0031】
[2−3]受信レベル検出部122の処理
図4に、受信レベル検出部122の処理フローを示す。受信レベル検出部122は、ステップST30で受信レベル検出処理を開始すると、ステップST31で、受信電波を送受信部121から取得する。次に、ステップST32で、受信電波の受信レベルを検出する。本実施の形態では、受信レベルとして、RSSI(Received Signal Strength Indicator)を取得する。次に、ステップST33で、受信レベルと受信ランク判定テーブルとから受信ランクを判断する。次に、受信レベル検出部122は、ステップST34で受信レベル算出処理を終了する。
【0032】
図5に、受信レベル検出部122に設けられた受信ランク判定テーブルの例を示す。図5の受信ランク判定テーブルを用いると、検出されたRSSI値が大きいほど、値の大きな受信ランクが出力される。
【0033】
[2−4]電池残量判定部131の処理
図6に、電池残量判定部131の処理フローを示す。電池残量判定部131は、ステップST40で電池残量判定処理を開始すると、ステップST41で、タグ位置算出部123から無線タグ110の位置を取得する。次に、ステップST42で、標準受信ランク判定テーブル132を用いて、無線タグ110の位置に応じた標準受信ランクを取得する。
【0034】
図7に、標準受信ランク判定テーブル132の例を示す。標準受信ランク判定テーブル132には、無線タグ110とタグリーダ120との距離(上述したように無線タグ110の位置と言い換えてもよい)に応じた標準受信ランクが格納されている。標準受信ランク判定テーブル132は、算出された距離が小さいほど、値の大きな標準受信ランクを出力する。標準受信ランクとは、電池残量が十分である場合に、距離に対応する受信レベル(受信品質)の標準的な大きさを示すものである。つまり、標準受信ランクとは、距離が加味された標準的な受信ランクを示すものである。
【0035】
電池残量判定部131は、ステップST43で、受信レベル検出部122から受信電波の受信ランクを取得する。次に、ステップST44で、受信ランクと標準受信ランクとを比較する。本実施の形態の場合には、ステップST44で、受信ランクが“標準受信ランク/2”以下であるか否かを判断する。そして、受信ランクが“標準受信ランク/2”以下の場合には(ステップST44;Yes)、ステップST45に移って電池残量が少ないと判定する。一方、受信ランクが“標準受信ランク/2”より大きい場合には(ステップST44;No)、ステップST46に移って電池残量が多いと判定する。電池残量判定部131は、ステップST47で電池残量判定処理を終了する。
【0036】
なお、本実施の形態では、受信ランクが“標準受信ランク/2”以下であるか否かを判断したが、勿論これに限らない。例えば、受信ランクが“標準受信ランク/3”以下であるか否か、あるいは“標準受信ランク−1”以下であるか否かを判断することで、電池残量が少ないか多いかを判定してもよい。要は、受信ランクと標準受信ランクとを用いて、電池残量を判定すればよいが、この判定基準を設定値として変更可能とすることで電池残量の判定・通知に関する感度を調整することも可能となる。たとえば“標準受信ランク/2”の基準を“標準受信ランク/3”の基準に変更することで、電池残量がより少なくなってから電池残量通知を行う設定とすることが可能となる。初期値として設定した基準が厳しすぎる場合には(実際には電池残量が十分残っているのに、電池残量=少と判定されてしまう場合)、この基準を後から変更してもよいこのことは、後述する他の実施の形態においても同様である。
【0037】
[2−5]電池残量表示部133への表示
図8及び図9に、電池残量表示部133における電池残量の表示例を示す。電池残量表示部133による表示は、監視装置130として使用されるパソコン等のディスプレイを用いて行えばよいが、専用のディスプレイを用いることも可能である(このことは後述する他の実施の形態においても同様である)。
【0038】
図8に示すように、タグIDと、タグ保持者名と、電池残量が少なくなった検知された検知時間とを表示すれば、管理者は、迅速かつ的確に電池交換を行うことができる。すなわち、管理者は、表示されたタグID及びタグ保持者名に基づいて、電池を交換すべき無線タグを特定でき、またタグ保持者に電池を交換すべきであることを知らせることもできる。また、検知時間が過去のものであるほど電池残量が少なくなっていることが予想できるので、検知時間から優先的に電池を交換すべき無線タグを判断できる。
【0039】
また、無線タグを保持するユーザを指定すると、図9に示すように、同心円の中心にタグリーダを示す点を表示すると共に、指定されたユーザの保持する無線タグの電池残量が多い場合にはその残量に応じて中心から離れた円まで色を付け(図9A)、電池残量が少ない場合にはそれに応じた中心に近い円のみ色を付ける(図9B)ようにすれば、無線タグがタグリーダからどの程度離れた位置まで送受信が可能であるかを、一目で判断できるようになる。
【0040】
また、図9Cに示すように、無線タグを保持しているユーザを平面マップ上に表示し、ユーザの位置を示す点を表示すると共に、電池残量が多い場合にはその残量に応じて中心から離れた円まで色を付け、電池残量が小さい場合にはその残量に応じて中心から近い円のみ色をつけるようにすれば、電池残量の小さいタグを保持するユーザがどこにいるか一目で判断できるようになる。
【0041】
[2−6]効果
本実施の形態によれば、無線タグ110とタグリーダ120との距離を算出するタグ位置算出部123と、無線タグ110からの信号の受信レベルを検出する受信レベル検出部122と、前記距離と前記受信レベルとに基づいて、前記無線タグの電池残量を判定する電池残量判定部131とを設けたことにより、無線タグ110に新たな構成を追加することなく、センター装置(タグリーダ120及び管理装置130)側で無線タグ110の電池残量を的確に検知できる無線タグ通信システム100を実現できる。
【0042】
また、タグリーダ120から無線タグ110までの距離に対応する予め設定された標準的な受信レベルを格納しておき、この距離が加味された標準的な受信レベルと、受信レベル検出部122により検出された実際の受信レベルとを比較することで、電池残量を判定したことにより、タグリーダ120から無線タグ110までの距離に左右されない、電池残量を的確に検知できる。
【0043】
なお、本実施の形態では、受信レベル検出部122を設け、電池残量の指標として、RSSI値等の受信レベルを用いているが、これに限らず、電池残量の指標としては、受信レベルを含む受信品質を広く用いることができる。例えば、受信レベル検出部122に換えて、RSSI、WEI(Word Error Indicator)、BEI(Bit Error Indicator)、BER(Bit Error Rate)又はSNR(Signal to Noise Ratio)等の受信品質指標を検出する受信品質検出手段を設けてもよい。受信品質検出手段は複数の受信品質指標に基づいて総合的に受信品質を決定するようにしてもよい。このことは、後述する他の実施の形態においても同様である。
【0044】
また、本実施の形態では、受信レベル検出部122及び標準受信ランク判定テーブル132によって、受信レベル及び標準受信レベルをランキングし、電池残量判定部131によってランキングされた受信レベル及び標準受信レベルを比較した場合について述べたが、ランキングを行わずに実値を用いて電池残量を判定してもよい。但し、本実施の形態のようなランキングを行うと、判定が容易になると共に、ランキング結果を表示すれば、実値を表示する場合よりも、管理者が、受信レベルと標準受信レベルとの関係を容易に把握できるようになる。例えば、電池残量判定部131による判定を行わなくても、管理者が、受信レベル及び標準受信レベルのランキング結果のみから、ある程度、電池残量を推測することもできる。
【0045】
(実施の形態2)
図1との対応部分に同一符号を付して示す図10に、本実施の形態の無線タグ通信システムの構成を示す。無線タグ通信システム200は、カメラ210を有することと、監視装置130が位置検出部134を有することを除いて、図1の無線タグ通信システム100と同様の構成を有する。
【0046】
カメラ210は、撮影部211によって無線タグ110を付帯している人物を撮影し、これにより得た映像を人物位置算出部212に送出する。人物位置算出部212は、入力された映像から無線タグ110を付帯している人物の位置を算出する。ここで、人物位置算出部212は、無線タグ110のIDに対応する人物を、例えば顔認識等の手法を用いて特定してから、その位置を算出すればよい。無線タグが例えば車、貨物、什器、物品などの物体に付帯されている場合も同様に、物体の特徴情報や表面に記載された文字情報などを認識・識別することで無線タグ110のIDに対応する物体を特定すればよい。また人物位置算出部212では、人物特定まで行わずに画像認識で検出した人物の位置を算出し、人物位置算出部212で算出された人物の位置と、タグ位置検出部123で算出された無線タグ110の位置との相互関係(距離やそれぞれで位置を検出した時刻)に基づいて、無線タグ110と人物との対応付けを後述する位置検出部134で行うようにしてもよい。無線タグが物体に付帯されている場合も同様の対応付けを行えばよい。
【0047】
監視装置130は、位置検出部134に、タグ位置算出部123により得られた無線タグ110の位置情報S2と、人物位置算出部212により得られた無線タグ110を付帯した人物の位置情報S5とを入力する。位置検出部134は、位置情報S2と位置情報S5とを統合した位置情報S6を求め、これを電池残量判定部131に送出する。位置検出部134は、例えば位置情報S2と位置情報S5とを平均化することで、統合した位置情報S6を求める。
【0048】
図11に、無線タグ通信システム200の全体動作の概要を示す。図11では、図2と対応する処理には同一符号が付されており、同一符号が付された処理については説明を省略する。無線タグ通信システム200は、ステップST50で電池残量推定処理を開始すると、上述したステップST11−ST14の処理の後に、ステップST51に進む。ステップST51では、人物位置算出部212によって、撮影部211で撮影された人物の位置を算出する。次に、ステップST52で、位置検出部134によって、人物の位置と無線タグ110の位置とを統合する。次に、ステップST53で、電池残量判定部131によって、統合した位置の標準受信ランクと応答電波の受信ランクとから電池残量を算出する。次に、ステップST54で、電池残量表示部133によって、算出された電池残量を表示する。次に、無線タグ通信システム200は、ステップST55で電池残量推定処理を終了する。
【0049】
図12に、人物位置算出部212の処理フローを示す。人物位置算出部212は、ステップST60で人物位置算出処理を開始すると、ステップST61で、撮影部211から撮影された映像を取得する。次に、ステップST62で、取得した映像に対象の人物(無線タグ110を付帯している人物)が映っているか否か判断し、移っていると判断した場合には(ステップST62;Yes)、ステップST63に移って、検出した人物の映像上の位置から人物の位置を算出する。人物位置算出部212は、ステップST63の処理の後、又はステップST62で人物が映っていないと判断した場合(ステップST62;No)には、ステップST64に移って、人物位置算出処理を終了する。
【0050】
図13に、位置検出部134の処理フローを示す。位置検出部134は、ステップST70で位置検出処理を開始すると、ステップST71で、タグ位置算出部123から無線タグ110の位置を取得し、続くステップST72で、人物位置算出部212から無線タグ110を付帯している人物の位置を取得する。次に、ステップST73で、無線タグ110の位置と人物の位置の平均値を統合した位置として算出し、ステップST74で、位置検出処理を終了する。
【0051】
図14に、本実施の形態の電池残量判定部131の処理フローを示す。電池残量判定部131は、ステップST80で電池残量判定処理を開始すると、ステップST81で、位置検出部134から統合された位置を取得する。次に、ステップST82で、標準受信ランク判定テーブル132を用いて、統合された位置に応じた標準受信ランクを取得する。次に、ステップST83で、受信レベル検出部122から受信電波の受信ランクを取得する。次に、ステップST84で、受信ランクと標準受信ランクとを比較する。本実施の形態の場合には、ステップST84で、受信ランクが“標準受信ランク/2”以下であるか否かを判断する。そして、受信ランクが“標準受信ランク/2”以下の場合には(ステップST84;Yes)、ステップST85に移って電池残量が少ないと判定する。一方、受信ランクが“標準受信ランク/2”より大きい場合には(ステップST84;No)、ステップST86に移って電池残量が多いと判定する。電池残量判定部131は、ステップST87で電池残量判定処理を終了する。
【0052】
本実施の形態によれば、タグ位置算出部123により取得した無線タグ110の位置情報S2と、人物位置算出部212により取得した無線タグ110を付帯した人物の位置情報S5とを統合した位置情報S6を用いて、電池残量を判定したことにより、タグ位置算出部123により取得した無線タグ110の位置情報S2のみを用いて電池残量を判定する場合と比較して、より信頼性のある位置情報S5を用いて電池残量を判定できるので、電池残量の検知精度を向上させることができる。また、無線タグ110の電池残量が急激に減少して電波送受信が不可能となった場合には、タグ位置算出部123による位置情報S2は取得できないが、人物位置算出部212による位置情報S5だけを用いて、人物の位置を取得し、その人物に対応付けられている無線タグ110の電池が減少していることを検出することが可能となる。
【0053】
また、本実施の形態では、撮影部211により得られた、無線タグ110を付帯した人物を含む映像を電池残量表示部133に送出する。そして、電池残量表示部133は、電池残量判定部131のよる判定結果S4と人物を含む映像とから、例えば図15に示すように、電池残量が少ない無線タグを付帯している人物を枠で囲んだ画像と無線タグに対応する名前を表示する。このようにすることで、管理者は、電池残量表示部133の表示画像から、電池残量が少ない無線タグを付帯している人物を簡単に認識することができるとともに、その人物がどこにいるかを周辺の画像から簡単に認識することができる。
【0054】
(実施の形態3)
図10との対応部分に同一符号を付して示す図16に、本実施の形態の無線タグ通信システムの構成を示す。無線タグ通信システム300は、カメラ210に周辺状況検出部213が設けられている。また、監視装置130に不検知エリア情報格納部135が設けられている。
【0055】
周辺状況検出部213は、撮影部211による映像と、人物位置算出部212による位置とを入力し、無線タグ110を付帯した人物の周辺状況を検出する。具体的には、周辺状況検出部213は、映像からの画像認識処理により無線タグ110の周辺に存在する、電波反射物及び電波遮蔽物を検出し、これを周辺状況情報S10として電池残量判定部131に送出する。
【0056】
また電波反射物や電波遮蔽物に無線タグ(図示せず)を貼付し、これらの無線タグから受信した電波に基づいてタグリーダ120のタグ位置算出部123が算出した電波反射物・遮蔽物の無線タグの位置から、周辺状況検出部213が人物の付帯する無線タグ110の周辺に存在する電波反射物及び電波遮蔽物を検出するように構成することも可能である。
【0057】
不検知エリア情報格納部135には、無線タグ110とタグリーダ120との間の無線通信が不可能である、無線タグ110の位置の情報が不検知エリア情報S11として格納されている。電池残量判定部131は、位置検出部134から入力された位置情報S6と不検知エリア情報S11とに基づいて、検出された位置が不検知エリアであるか否かを判断する。そして、不検知エリアであると判断した場合には、電池残量判定処理を中止する。これにより、電池残量判定部131は、電池残量が多いにも拘わらず、誤って電池残量が少ないと判定することを回避できる。つまり、無線タグ110が不検知エリアに位置する場合には、たとえ電池残量が多くても、受信レベル検出部122から小さい値の受信ランクが出力されてしまうので、電池残量判定部131が誤って電池残量が少ないと判定するおそれがある。本実施の形態の構成では、このような誤判定を有効に回避できる。
【0058】
図17に、周辺状況検出部213の処理フローを示す。周辺状況検出部213は、ステップST90で周辺状況検出処理を開始すると、ステップST91で、撮影部211によって撮像された映像を取得し、ステップST92で、人物位置算出部212によって算出された人物の位置を取得する。次に、ステップST93で、人物の周辺に電波反射物があるか否か判断する。人物の周辺に電波反射物があると判断した場合には(ステップST93;Yes)、ステップST94−1に移って、周辺状況情報S10に反射物情報を追加した後、ステップST95に進む。一方、人物の周辺に電波反射物がないと判断した場合には(ステップST93;No)、ステップST94−2に移って、周辺状況情報S10に“反射物なし”を追加した後、ステップST95に進む。ステップST95では、人物とタグリーダ120との間に遮蔽物があるか否か判断する。人物とタグリーダ120との間に遮蔽物があると判断した場合には(ステップST95;Yes)、ステップST96−1に移って、周辺状況情報S10に遮蔽物情報を追加する。一方、遮蔽物がないと判断した場合には(ステップST95;No)、ステップST96−2に移って、周辺状況情報S10に“遮蔽なし”を追加する。周辺状況検出部213は、ステップST96−1又はステップST96−2の処理の後、ステップST97で、無線タグ110の付帯位置を検知し、検知できればその状況(付帯位置が胸部である、付帯位置が頭上である、など)を周辺状況情報S10に追加する。周辺状況検出部213は、ステップST97の処理の後ステップST98に移って、周辺状況検出処理を終了する。
【0059】
図18に、周辺状況情報S10の例を示す。図にも示したように、周辺状況情報S10は、反射物及び遮蔽物の有無や、種別、大きさ、またタグの付帯状況等の情報により構成すればよい。
【0060】
図19に、本実施の形態の電池残量判定部131の処理フローを示す。電池残量判定部131は、ステップST100で電池残量判定処理を開始すると、ステップST101で、位置検出部134から統合された位置を取得する。次に、ステップST102で、取得した位置と不検知エリア情報とに基づいて、取得した位置(該当位置)が不検知エリアに相当するか否か判断する。ステップST102で、該当位置が不検知エリアであると判断した場合には(ステップST102;Yes)、電池残量の判定を行わずに、ステップST110に移って電池残量判定処理を終了する。
【0061】
図20に、不検知エリア情報S11の例を示す。図の例は、不検知エリアを、タグリーダ120を原点とした四角形の座標で示したものである。不検知エリアの設定の仕方は、図20のような座標による設定以外にも、例えばGUI(Graphical User Interface)を用いて、監視装置130の画面上にカメラ210やタグリーダ120により監視される領域全体の地図を表示し、不検知エリアの領域をマウス等で指定するようにしてもよい。
【0062】
一方、ステップST102で、該当位置が不検知エリアでないと判断した場合には(ステップST102;No)、ステップST103に移る。ステップST103では、標準受信ランク判定テーブル132を用いて、統合された位置に応じた標準受信ランクを取得する。次に、ステップST104で、受信レベル検出部122から受信電波の受信ランクを取得する。次に、ステップST105で、周辺状況検出部213から周辺状況情報S10を取得する。次に、ステップST106で、周辺状況情報S10と受信ランク重み付けテーブルとを用いて、周辺状況に応じた重み係数を取得し、この重み係数を用いて受信ランク情報S1を重み付けする。
【0063】
図21に、電池残量判定部131に設けられる受信ランク重み付けテーブルの例を示す。図からも分かるように、受信ランク重み付けテーブルには、無線タグ110の周辺に存在する物体が、無線タグ110とタグリーダ120との通信を妨げる度合いの大きいものほど、大きな値の重み係数が設定されている。これにより、受信ランクに図21の重み係数を乗ずれば、伝搬路上で変動した受信レベル(受信品質)の変動分を補正した受信ランク(重み付けされた受信ランク)を得ることができる。
【0064】
複数の状況が検知された場合は、それぞれの状況に応じた重み係数を乗じる。例えば、「反射物(その他)」と「遮蔽物(中)」と「タグ位置(頭)」という3つの状況が検出された場合は、各状況に対応する重み付け係数を乗じるため、受信ランク×1.1×1.2×0.9となり、受信ランクに1.188を乗ずることになる。
【0065】
次に、ステップST107で、重み付けされた受信ランクと標準受信ランクとを比較する。本実施の形態の場合には、ステップST107で、重み付けされた受信ランクが“標準受信ランク/2”以下であるか否かを判断する。そして、重み付けされた受信ランクが“標準受信ランク/2”以下の場合には(ステップST107;Yes)、ステップST108に移って電池残量が少ないと判定する。一方、重み付けされた受信ランクが“標準受信ランク/2”より大きい場合には(ステップST107;No)、ステップST109に移って電池残量が多いと判定する。電池残量判定部131は、ステップST110で電池残量判定処理を終了する。
【0066】
以上説明したように、本実施の形態によれば、カメラ210によって無線タグ110の周辺状況を検知し、周辺状況に応じて重み付けされた受信ランクと標準受信ランクとを比較することで、電池残量を算出したことにより、周辺状況に応じて変動する受信レベル(受信品質)の変動分を補正した受信ランク(重み付けされた受信ランク)を基に、電池残量を算出することができるので、周辺状況による影響を受けない電池残量を検知できるようになる。
【0067】
また、不検知エリア情報格納部135を設け、無線タグ110がタグリーダ120との通信を行うことができない不検知エリアに位置する場合には、電池残量判定を行わないようにしたので、電池残量が多いにも拘わらず、誤って電池残量が少ないと判定することを回避できる。
【0068】
なお、不検知エリア情報格納部135に格納する不検知エリアは、必ずしも無線タグ110とタグリーダ120との通信が不可能な領域に限らず、無線タグ110とタグリーダ120との通信が所定の閾値よりも悪い領域であればよい。
【0069】
(実施の形態4)
図1との対応部分に同一符号を付して示す図22に、本実施の形態の無線タグ通信システムの構成を示す。無線タグ通信システム400は、図1の無線タグ通信システム100と比較して、標準受信ランク判定テーブル132に換えて、履歴情報格納部136が設けられている。
【0070】
履歴情報格納部136には、位置情報S2及び受信ランク情報S1が電池残量判定部131を介して履歴情報として書き込まれる。
【0071】
図25に、履歴情報格納部136に書き込まれた履歴情報の例を示す。図25からも分かるように、位置情報S2及び受信ランク情報S1は、無線タグ110のIDに対応付けられて書き込まれる。電池残量判定部131は、履歴情報格納部136に書き込まれた受信ランク情報S1の履歴を、必要に応じて読み出して、電池残量判定に用いる。
【0072】
図23に、本実施の形態の電池残量判定部131の処理フローを示す。電池残量判定部131は、ステップST120で電池残量判定処理を開始すると、ステップST121で、タグ位置算出部123から無線タグ110の位置を取得する。次に、ステップST122で、受信レベル検出部122から受信電波の受信ランクを取得する。
【0073】
次に、ステップST123で、履歴情報格納部136に記憶された情報の中に、同じエリアの自分の履歴があるか否か判断する。例えば、タグリーダ120からの距離が2[m]間隔のエリア(距離範囲)を設定した場合について説明する。図25の例では、“位置”が4.0[m]〜6.0[m]のエリアと、6.0[m]〜8.0[m]のエリアとが区分される。今回検出された無線タグのIDが「001」であり、距離(位置)が5.2[m]であったとすると、図25から、同じエリアの自分の履歴として、位置4.8[m]で受信ランク4の履歴、位置5.5[m]で受信ランク5の履歴、位置5.9[m]で受信ランク4の履歴、の3つの履歴が存在することが分かる。このような場合、ステップST123で肯定結果が得られ、ステップST126に移って、履歴の中で一番大きい受信ランクを選択してこれを履歴受信ランクに設定する。上述した例では、同じエリアの自分の履歴の中で一番大きい受信ランクは、受信ランク5なので、これを履歴受信ランクに設定する。
【0074】
次に、ステップST127で、今回(現時点)の受信ランクと履歴受信ランクとを比較する。本実施の形態の場合には、ステップST127で、今回の受信ランクが“履歴受信ランク/2”以下であるか否かを判断する。そして、今回の受信ランクが“履歴受信ランク/2”以下の場合には(ステップST127;Yes)、ステップST128に移って電池残量が少ないと判定する。一方、今回の受信ランクが“履歴受信ランク/2”より大きい場合には(ステップST127;No)、ステップST129に移って、履歴情報格納部136に、自ID、距離(位置)及び今回の受信ランクを保存し、続くステップST130で電池残量が多いと判定する。電池残量判定部131は、ステップST131で電池残量判定処理を終了する。
【0075】
なお、ステップST123において、履歴情報格納部136に記憶された情報の中に、同じエリアの自分の履歴がないと判断した場合には(ステップST123;No)、ステップST124に移って、履歴情報格納部136に、自ID、距離(位置)及び今回の受信ランクを保存し、続くステップST125で、電池残量が多いと判定する。
【0076】
以上説明したように、本実施の形態によれば、無線タグ110とタグリーダ120との距離及び受信レベルの履歴を記憶する履歴情報格納部136を設け、電池残量判定部131によって、現時点の受信レベルと、履歴情報格納部136に記憶された受信レベルのうち現時点で算出された距離と同一のエリア(距離範囲)での受信レベルとを比較することで、電池残量を判定したことにより、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0077】
加えて、履歴情報格納部136に記憶される受信レベルは、無線タグ110及びタグリーダ120の周辺状況や通信特性等も含まれたものであり、本実施の形態では、この受信レベルを基準に電池残量を判定することになるので、実施の形態1のように標準受信ランク判定テーブル132(図1)から出力される規定値を基準に電池残量を判定する場合と比較して、電池残量判定対象が保持する無線タグの特性と位置の特性が考慮されたより精度の高い電池残量判定の実現が期待できる。
【0078】
なお、図23の処理例では、電池残量判定の基準として、同じエリアの自分の履歴を用いた場合、つまり自ID以外の無線タグの履歴情報は電池残量判定の基準として用いない場合について述べたが、自ID以外の無線タグの履歴情報も電池残量判定の基準として用いてもよい。
【0079】
図23との対応部分に同一符号を付して示す図24に、自ID以外の無線タグの履歴情報も電池残量判定の基準として用いる場合の、電池残量判定部131の処理フローを示す。図24の処理フローが図23の処理フローと異なるのは、ステップST141の処理のみである。ステップST141において、電池残量判定部131は、履歴情報格納部136に記憶された情報の中に、同じエリアの履歴があるか否か判断する。そして、同じエリアの履歴があれば、その履歴がたとえ自無線タグ以外の無線タグの履歴であっても、ステップST141で肯定結果を得て、ステップST126に移る。
【0080】
これにより、自無線タグ以外のデータも利用されるので、多数のデータを基に求められた位置特性が考慮された、精度の高い電池残量判定の実現が期待できる。
【0081】
(実施の形態5)
図1及び図22との対応部分に同一符号を付して示す図26に、本実施の形態の無線タグ通信システムの構成を示す。無線タグ通信システム500は、標準受信ランク判定テーブル132及び履歴情報格納部136を有する。
【0082】
図27を用いて、本実施の形態の処理の概要を説明する。本実施の形態では、図27Aの点線で示すように、タグリーダ120からの距離を所定間隔で分割することにより、複数のエリア(距離範囲)を設定する。例えば2[m]間隔のエリアを設定する。図27Aの例では、無線タグ110が測位点1,2,3に位置するとき、無線タグ110は同一のエリアに位置すると言うことができる。そして、本実施の形態では、図27Bに示すように、無線タグ110が順次、測位点1〜4に移動したとき、連続して同一のエリアに位置する場合には、受信ランクを平均化する。図27Bの例では、無線タグ110が測位点1,2,3に位置する場合は、無線タグ110が連続して同一のエリアに位置していると言うことができるので、測位点1,2,3で得られた受信ランク4,5,4を順次平均化していく。一方、無線タグ110が測位点4のように、異なるエリアに移動した場合には、平均受信ランクはリセットされる。
【0083】
図28に、電池残量判定部131がこのような平均受信ランクを用いて電池残量を判定する場合の処理フローを示す。電池残量判定部131は、ステップST150で電池残量判定処理を開始すると、ステップST151で、タグ位置算出部123から無線タグ110の位置を取得する。次に、ステップST152で、標準受信ランク判定テーブル132を用いて、無線タグ110の位置に応じた標準受信ランクを取得する。次に、ステップST153で、受信レベル検出部122から受信電波の受信ランクを取得する。
【0084】
次に、ステップST154で、履歴情報格納部136を参照して、今回の検出結果との関係において、時間が連続した同一エリアの測位点履歴があるか否か判断する。ステップST154で肯定結果が得られると、ステップST155に移って、総合受信ランク(時間が連続した同一エリアの測位点履歴における受信ランクを加算したもの)に今回の受信ランクを加算した後、ステップST156に進む。一方、ステップST154で否定結果が得られると、総合受信ランクは今回の受信ランクのみなのでステップST156に移る。ステップST156では、総合受信ランクから平均受信ランクを算出する。
【0085】
次に、ステップST157で、平均受信ランクと標準受信ランクとを比較する。本実施の形態の場合には、ステップST157で、平均受信ランクが“標準受信ランク/2”以下であるか否かを判断する。そして、平均受信ランクが“標準受信ランク/2”以下の場合には(ステップST157;Yes)、ステップST158に移って電池残量が少ないと判定する。一方、平均受信ランクが“標準受信ランク/2”より大きい場合には(ステップST157;No)、ステップST159に移って電池残量が多いと判定する。電池残量判定部131は、ステップST160で電池残量判定処理を終了する。
【0086】
以上説明したように、本実施の形態によれば、無線タグ110とタグリーダ120との距離及び受信レベルの履歴を記憶する履歴情報格納部136を設け、電池残量判定部131によって、標準受信ランクと、同一エリア内の平均受信ランクとを比較することで、電池残量を判定したことにより、実施の形態1の効果に加えて、受信レベル検出部122で偶然低い受信ランクが検出された場合の誤報を回避できる。すなわち、電池残量が十分であるにも拘わらず、何等かの原因で受信レベル検出部122において低い受信ランクが検出された場合でも、電池残量判定部131は、同一エリア内の平均受信ランクを用いて電池残量を判定するので、誤って電池残量が少ないと判定しないで済む。
【0087】
なお、図27及び図28では、同一エリア内の平均受信ランクを用いて電池残量を判定する場合について述べたが、一定期間内の平均受信ランクを用いて電池残量を判定しても同様の効果を得ることができる。
【0088】
図29及び図30を用いて、一定期間内の平均受信ランクを用いて電池残量を判定する処理について説明する。
【0089】
図29は、例として5秒間の受信ランクを平均して平均受信ランクを求めたものである。
【0090】
図30は、電池残量判定部131がこのような平均受信ランクを用いて電池残量を判定する場合の処理フローを示す。なお、図30では、図28と対応する処理には同一符号が付されており、同一符号が付された処理については説明を省略する。電池残量判定部131は、ステップST171で、履歴情報格納部136を参照して、今回の検出結果との関係において、一定期間内の測定点履歴があるか否か判断する。ステップST171で肯定結果が得られると、ステップST172に移って、一定期間内の履歴の受信ランクを全て加算することで総合受信ランクを算出した後、ステップST173に進む。一方、ステップST171で否定結果が得られると、今回の受信ランクのみを総合受信ランクとしてステップST173に移る。ステップST173では、総合受信ランクから平均受信ランクを算出する。
【0091】
なお、上述の実施の形態1〜5における、タグリーダ120における送受信部121以外の各処理部、カメラ210における撮影部211以外の各処理部は、メモリ上に記憶されたコンピュータプログラムをCPUが読み出して実行処理することで実現できる。もしくはICチップ/LSIチップを動作・処理させることで実現してもよい。タグリーダ120の送受信部121は送受信アンテナと通信制御を行うLSI等から構成され、カメラ210の撮影部211は、レンズと撮像素子(CCD、CMOS等)から構成され、人物位置算出部212がステレオ測位を行う場合には、ステレオ撮影可能な構成(複数レンズに1つの撮像素子、レンズ・撮像素子の組が複数等)となる。また、『小嶋ほか「接近物体検出のための階層化複眼全方位画像を用いた距離計測」、画像の認識・理解シンポジウム(MIRU2006)、2006年7月』に示されたような複眼凸面鏡を用いた全方位ステレオカメラ等により実現してもよい。
【0092】
また監視装置130は、メモリ・CPUを含むパソコン等のコンピュータ本体及び入出力装置(マウス・キーボード・ディスプレイなど)から構成される。電池残量判定部131、位置検出部134の機能は、メモリ上に記憶されたコンピュータプログラムをCPUが読み出して実行処理することで実現できる。標準受信ランク判定テーブル132は、メモリやHDDなどに格納されるファイルもしくはデータベースにより実現される。不検知エリア情報格納部135、履歴情報格納部136は、メモリ・HDDなど記憶媒体により実現される。電池残量表示部133は、表示データを表示するディスプレイにより実現される。なお、監視装置130はパソコン等の汎用コンピュータ以外の専用装置によっても実現可能であることは言うまでもない。
【0093】
上述した実施の形態1〜5においては、監視システムを例に説明したが、本発明は、無線タグを用いて人物等の位置を検出するようなアプリケーションであれば、例えば工場作業員の作業分析システムや、物流における物品管理システム等においても、無線タグの電池残量を検知するために適用可能であることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、無線タグに新たな構成を追加することなく、センター装置側で無線タグの電池残量を的確に検知できる効果を有し、無線タグを用いた無線タグ通信システムに広く有効である。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の実施の形態1に係る無線タグ通信システムの構成を示すブロック図
【図2】実施の形態1の無線タグ通信システムの全体動作の概要を示すフローチャート
【図3】タグ位置算出部における処理を示すフローチャート
【図4】受信レベル検出部における処理を示すフローチャート
【図5】受信ランク判定テーブルの例を示す図
【図6】電池残量判定部における処理を示すフローチャート
【図7】標準受信ランク判定テーブルの例を示す図
【図8】電池残量の表示例を示す図
【図9】電池残量の表示例を示す図
【図10】実施の形態2の無線タグ通信システムの構成を示すブロック図
【図11】実施の形態2の無線タグ通信システムの全体動作の概要を示すフローチャート
【図12】人物位置算出部における処理を示すフローチャート
【図13】位置検出部における処理を示すフローチャート
【図14】電池残量判定部における処理を示すフローチャート
【図15】電池残量表示部における表示例を示す図
【図16】実施の形態3の無線タグ通信システムの構成を示すブロック図
【図17】周辺状況検出部における処理を示すフローチャート
【図18】周辺状況情報の例を示す図
【図19】電池残量判定部における処理を示すフローチャート
【図20】不検知エリア情報の例を示す図
【図21】受信ランク重み付けテーブルの例を示す図
【図22】実施の形態4の無線タグ通信システムの構成を示すブロック図
【図23】電池残量判定部における処理を示すフローチャート
【図24】電池残量判定部における処理を示すフローチャート
【図25】履歴情報の例を示す図
【図26】実施の形態5の無線タグ通信システムの構成を示すブロック図
【図27】エリア平均の説明に供する図であり、図27Aは無線タグの位置(測位点)を示す図、図27Bはエリア平均の例を示す図
【図28】電池残量判定部における処理を示すフローチャート
【図29】エリア平均の例を示す図
【図30】電池残量判定部における処理を示すフローチャート
【符号の説明】
【0096】
100、200、300、400、500 無線タグ通信システム
110 無線タグ
113 電池
120 タグリーダ
122 受信レベル検出部
123 タグ位置算出部
130 監視装置
131 電池残量判定部
132 標準受信ランク判定テーブル
133 電池残量表示部
134 位置検出部
135 不検知エリア情報格納部
136 履歴情報格納部
210 カメラ
211 撮影部
212 人物位置算出部
213 周辺状況検出部
S1 受信ランク情報
S2、S5、S6 位置情報
S3 標準受信ランク情報
S4 判定結果
S10 周辺状況情報
S11 不検知エリア情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線タグとタグリーダとの間の距離を算出する距離算出手段と、
前記タグリーダにおける、前記無線タグからの信号の受信品質を検出する受信品質検出手段と、
前記距離と前記受信品質とに基づいて、前記無線タグの電池残量を判定する判定手段と、
を具備する無線タグ通信システム。
【請求項2】
前記判定手段は、
前記タグリーダと前記無線タグとの距離に対応する予め設定された標準的な受信品質と、前記受信品質検出手段により検出された実際の受信品質とを比較することで、前記電池残量を判定する、
請求項1に記載の無線タグ通信システム。
【請求項3】
前記距離算出手段は、前記無線タグの応答時間を用いて、前記距離を算出する、
請求項1に記載の無線タグ通信システム。
【請求項4】
前記距離算出手段は、カメラによって撮像された映像を用いて、前記距離を算出する、
請求項1に記載の無線タグ通信システム。
【請求項5】
前記無線タグの周辺状況を検出するカメラを、さらに具備し、
前記判定手段は、前記周辺状況に応じて重み付けされた前記受信品質と、前記距離とに基づいて、前記無線タグの電池残量を判定する、
請求項1に記載の無線タグ通信システム。
【請求項6】
前記無線タグと前記タグリーダとの通信品質が所定の閾値よりも悪い領域である不検知エリアの情報を格納する不検知エリア情報格納手段を、さらに具備し、
前記判定手段は、前記無線タグが前記不検知エリアに位置する場合には、前記電池残量の判定を行わない、
請求項1に記載の無線タグ通信システム。
【請求項7】
前記距離及び前記受信品質の履歴を記憶する履歴情報格納手段を、さらに具備し、
前記判定手段は、現時点の受信品質と、前記履歴情報格納手段に記憶された受信品質のうち現時点で算出された距離と同一の距離範囲での受信品質とを比較することで、前記電池残量を判定する、
請求項1に記載の無線タグ通信システム。
【請求項8】
前記履歴情報格納手段は、前記距離及び前記受信品質の履歴を、各無線タグのIDに対応付けて記憶し、
前記判定手段は、現時点の受信品質と、前記履歴情報格納手段に記憶された受信品質のうち現時点で算出された距離と同一の距離範囲でかつ同一IDの受信品質とを比較することで、前記電池残量を判定する、
請求項7に記載の無線タグ通信システム。
【請求項9】
前記距離及び前記受信品質の履歴を記憶する履歴情報格納手段を、さらに具備し、
前記判定手段は、前記タグリーダと前記無線タグとの距離に対応する予め設定された標準的な受信品質と、前記履歴情報格納手段に記憶された同一距離範囲内の受信品質の平均値とを比較することで、前記電池残量を判定する、
請求項1に記載の無線タグ通信システム。
【請求項10】
前記距離及び前記受信品質の履歴を記憶する履歴情報格納手段を、さらに具備し、
前記判定手段は、前記タグリーダと前記無線タグとの距離に対応する予め設定された標準的な受信品質と、前記履歴情報格納手段に記憶された一定期間内の受信品質の平均値とを比較することで、前記電池残量を判定する、
請求項1に記載の無線タグ通信システム。
【請求項11】
無線タグとタグリーダとの間の距離を算出する距離算出ステップと、
前記タグリーダにおける、前記無線タグからの信号の受信品質を検出する受信品質検出ステップと、
前記距離と前記受信品質に基づいて、前記無線タグの電池残量を判定する判定ステップと、
を含む無線タグの電池残量推定方法。
【請求項12】
無線タグとタグリーダとの間の距離に関する情報と、前記タグリーダにおける前記無線タグからの信号の受信品質に関する情報と、を入力し、前記距離に関する情報と前記受信品質に関する情報とに基づいて、前記無線タグの電池残量を判定する判定手段を、具備する、
監視装置。
【請求項13】
コンピュータに、
無線タグとタグリーダとの間の距離に関する情報を算出又は入力させるステップと、
前記タグリーダにおける、前記無線タグからの信号の受信品質に関する情報を検出又は入力させるステップと、
前記距離に関する情報と前記受信品質に関する情報とに基づいて、前記無線タグの電池残量を判定させるステップと、
を実行させるプログラム。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate


【公開番号】特開2010−165237(P2010−165237A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−7848(P2009−7848)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】