説明

無線ネットワークシステム

【課題】パケットの衝突や各無線装置での消費電力の増大を回避すると共に、基幹装置から各無線装置のセンサに対する観測条件の変更の要求と、該要求に対する応答とを確実に送受信する。
【解決手段】無線ネットワークシステム10において、各無線装置16は、要求情報を下り方向に送信するためのタイムスロット58と、要求情報に対する応答情報を上り方向に送信するためのタイムスロット60とでは、常時、通信可能状態にあり、一方で、自己に割り当てられたタイムスロット62で自己のセンサ42が検出したセンサ情報を送信するとき、又は、他の無線装置16に割り当てられたタイムスロット62で当該他の無線装置16のセンサ42が検出したセンサ情報を中継するときにも通信可能状態となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基幹装置を根元として複数の無線装置によりツリー状に形成されたマルチホップ無線ネットワーク方式の無線ネットワークシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の無線端末(基幹装置及び複数の無線装置)によりツリー状の無線ネットワークを構築し、該無線ネットワーク内の隣接する無線端末間でパケットを中継することにより、電波が直接届かない無線端末間での通信を実現するマルチホップ無線ネットワーク方式の無線ネットワークシステムが提案されている。
【0003】
このような無線ネットワークシステムでは、無線ネットワークに参加する無線装置の数が多くなることに起因してパケットの衝突が発生するおそれがある。また、各無線装置は電池で駆動するタイプが多いので、消費電力の増大を回避できることが望ましい。
【0004】
そこで、特許文献1には、送信元の無線端末からの中継回数に応じて、パケットを送信すべきタイミングを決定することにより、パケットの衝突の発生を抑制することが提案されている。また、特許文献2には、周囲の無線端末間で次回のパケットの送信開始タイミングと該パケットの送信量とを事前に通知し合う間欠受信処理を行うことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−157637号公報
【特許文献2】特開2007−174145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した技術では、事前に通知し合う送信信号中に次回の送信開始タイミング等を含める必要があるので、送信可能なデータ量が抑制されるという問題がある。これに対しては、予め特定された受信タイミングで無線装置が通信可能状態(起床状態)になってパケットを受信し、一方で、それ以外のタイミングで該無線装置が通信待機状態(スリープ状態)になれば、上記の問題を解決できるものと考えられる。この場合には、前記受信タイミングに対して高精度の時刻同期を行う必要がある。
【0007】
ところで、上述した無線ネットワークシステムを各無線装置の設定場所の状況を観測するセンサネットワークシステムに適用する場合に、各無線装置は、センサを備えると共に、該センサが検出したセンサ情報を基幹装置に向けて送信するセンサノードとしてそれぞれ機能し、一方で、基幹装置は、各センサノードからのセンサ情報を収集するゲートノードとして機能する。
【0008】
この場合、前記ゲートノードと前記各センサノードとの間で、あるいは、前記各センサノード間でパケットを送受信するフレームは、前記各センサノード(無線装置)から前記ゲートノード(基幹装置)への上り方向に各センサ情報を確実に送信するため、該フレームにおける前記上り方向の時間帯が冗長な構成とされている。そのため、前記フレームによりパケットの送受信を行うセンサネットワークシステムでは、上述した高精度な時刻同期は必要とされず、多少の時刻同期のずれは許容されている。特に、電波の到達性を向上するために、低い周波数(低い通信速度)で無線通信を行うセンサネットワークシステムでは、そのような傾向が顕著である。また、前記基幹装置は、特定の無線装置に対してセンサの観測条件を変更するための要求を前記基幹装置から各無線装置への下り方向に送信し、一方で、前記要求に対して前記観測条件を変更した旨の応答を前記特定の無線装置から得たい場合もある。
【0009】
具体的に、前記センサネットワークシステム内で、センサノードが動的に変化(移動)して、1つのセンサノードとゲートノードとの間の中継経路が変化することにより、これまで通信待機状態であったセンサノードを前記中継経路を構成するセンサノードとして機能させる場合には、当該センサノードの起床タイミングをゲートノードから前記センサノードに予め報知しておく必要がある。
【0010】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、高精度の時刻同期を必要とせず、多少の時刻同期のずれが発生し、また、無線装置間の中継経路が動的に変化するようなシステムであっても、パケットの衝突や各無線装置での消費電力の増大を回避できると共に、基幹装置から前記各無線装置のセンサに対する観測条件の変更の要求と、該要求に対する応答とを確実に送受信することが可能となる無線ネットワークシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る無線ネットワークシステムは、基幹装置を根元として複数の無線装置によりツリー状に形成されたマルチホップ無線ネットワーク方式の無線ネットワークシステムにおいて、
前記各無線装置は、センサをそれぞれ備え、
前記基幹装置と前記無線装置との間で、あるいは、前記各無線装置間でパケットを送受信するフレームは、
前記各無線装置のうち少なくとも1つの無線装置のセンサに対する要求を、前記基幹装置から前記各無線装置への下り方向に送信可能な下り方向通信スロットと、
前記要求を受信した前記少なくとも1つの無線装置が、前記要求に対する応答を前記各無線装置から前記基幹装置への上り方向に送信可能な第1の上り方向通信スロットと、
前記各無線装置に割り当てられ、自己のセンサが検出したセンサ情報を前記各無線装置が前記上り方向にそれぞれ送信するための複数の第2の上り方向通信スロットと、
から構成され、
前記各無線装置は、それぞれ、
前記下り方向通信スロット及び前記第1の上り方向通信スロットでは、常時、通信可能状態にあり、
一方で、前記複数の第2の上り方向通信スロットのうち、自己に割り当てられた第2の上り方向通信スロットで自己のセンサが検出したセンサ情報を送信するとき、又は、他の無線装置に割り当てられた第2の上り方向通信スロットで該他の無線装置のセンサが検出したセンサ情報を中継するときにのみ通信可能状態となる
ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、下り方向通信スロット及び第1の上り方向通信スロットでは、常時、各無線装置が通信可能状態になるため、基幹装置からの要求に対して確実に応答することが可能となる。また、前記各無線装置は、自己に割り当てられた第2の上り方向通信スロットで自己のセンサが検出したセンサ情報を送信するとき、又は、他の無線装置に割り当てられた第2の上り方向通信スロットで当該他の無線装置のセンサが検出したセンサ情報を中継するときにのみ通信可能状態になり、一方で、それら以外の時間帯では通信待機状態になる。
【0013】
これにより、高精度の時刻同期を必要とせず、多少の時刻同期のずれが発生するようなシステムや、無線装置間の中継経路が動的に変化するシステムであっても、最小限の通信可能状態を維持しつつ、前記基幹装置から下り方向へのパケット(前記要求)の送信や、上り方向へのパケット(前記応答、前記センサ情報)の送信又は中継を行うことが可能となる。この結果、パケットの衝突や前記各無線装置での消費電力の増大を回避できると共に、前記基幹装置から前記各無線装置のセンサに対する観測条件の変更の要求と、該要求に対する応答とを確実に送受信することが可能となる。
【0014】
特に、センサネットワークシステム内で、センサノードが動的に変化して、1つのセンサノードとゲートノードとの間の中継経路が変化することにより、これまで通信待機状態であったセンサノードを前記中継経路を構成するセンサノードとして機能させる場合には、下り方向通信スロットにて当該センサノードに起床タイミングを報知し、それに対する前記センサノードからの応答を第1の上り方向通信スロットでゲートノードに送信すればよい。これにより、起床タイミングの報知を別途に送信する必要がないので、中継経路が動的に変化しても下り方向及び上り方向の送信や中継を効率よく行うことが可能となる。
【0015】
また、前記下り方向通信スロット及び前記第1の上り方向通信スロットは、前記第2の上り方向通信スロットのように前記各無線装置に割り当てられた固有のスロットではなく、どの無線装置でもパケットの送受信が可能なスロットであるため、前記下り方向通信スロット及び前記第1の上り方向通信スロットの存在によって前記第2の上り方向通信スロットの個数が必要以上に減少することを抑制することができる。
【0016】
さらに、フレームが前記下り方向通信スロット、前記第1の上り方向通信スロット及び前記第2の上り方向通信スロットから構成されているので、前記基幹装置は、特定の無線装置に対して前記要求を送信しつつ、その一方で、前記各無線装置から定時観測によるセンサ情報を収集することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態に係る無線ネットワークシステムの概略構成図である。
【図2】本実施形態に係る無線ネットワークシステムを構成するクラスタの概略構成図である。
【図3】図1及び図2の無線装置のブロック図である。
【図4】スーパーフレームの基本構成を示す説明図である。
【図5】データフレームの構成を示す説明図である。
【図6】基幹装置と各無線装置との間のパケットの送受信を説明するためのシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る無線ネットワークシステムの好適な実施形態について、図1〜図6を参照しながら説明する。
【0019】
本実施形態に係る無線ネットワークシステム10は、図1に示すように、基本的には、基幹装置12を根元として、複数の無線装置(図1では、第1〜第3無線装置16a〜16cのみ図示)によりツリー状に形成されたマルチホップ無線ネットワーク方式の無線ネットワークシステムである。この場合、基幹装置12は、無線14を介して第1無線装置16a及び第3無線装置16cと接続され、第1無線装置16aは、無線18を介して第2無線装置16bと接続されている。なお、参照符号の13は、基幹装置12のアンテナであり、参照符号の15a〜15cは、第1〜第3無線装置16a〜16cのアンテナである。さらに、第1〜第3無線装置16a〜16cは、センサ42a〜42cをそれぞれ有する。
【0020】
また、図2に示すように、無線ネットワークシステム10は、実際には、1つの基幹装置12及び複数の無線装置16を備え、これらが所定の間隔dで配置されたクラスタ24を複数備えており、1つのクラスタ24では、基幹装置12を根元に、無線14、18を介して、各無線装置16がツリー状に形成されている。これにより、基幹装置12から無線14、18を介して各無線装置16の方向(下り方向)にパケットを送信し、一方で、各無線装置16から無線18、14を介して基幹装置12の方向(上り方向)にパケットを送信することで、電波が直接届かない無線端末間での通信が可能となる。
【0021】
なお、図2において、1つのクラスタ24は、16個の無線端末(1つの基幹装置12及び15個の無線装置16)から構成されているが、1つのクラスタ24に収容される無線端末の個数は、図2に示す個数に限定されないことは勿論である。また、各無線装置16(第1〜第3無線装置16a〜16c)は、図3に示すように、受信部28、解析部30、タイミング割当部32、記憶部34、タイミング設定部36、送信制御部38、送信部40、及び、センサ42(42a〜42c)をそれぞれ有する。この場合、各無線装置16は、センサ42が検出したセンサ情報を、該センサ情報を検出した時刻(絶対時刻)と共に基幹装置12に向けて送信するセンサノードとして機能し、基幹装置12は、各センサノードからのセンサ情報及び絶対時刻を収集するゲートノードとして機能する。従って、無線ネットワークシステム10は、各センサノードから収集したセンサ情報及び絶対時刻に基づき、各センサノードの設置場所の状況(例えば、地滑り、地震)を観測するセンサネットワークシステムに適用される。
【0022】
上述した無線ネットワークシステム10の基本構成及び機能や、基幹装置12と各無線装置16との間、及び、各無線装置16間での無線によるパケットの送受信に関わる基本的な動作については、例えば、特開2008−228176号公報に開示されているので、これらの詳細については、説明を省略する。
【0023】
本実施形態に係る無線ネットワークシステム10において、基幹装置12及び各無線装置16間でのパケットの送受信、及び、各無線装置16間でのパケットの送受信は、該パケットをフレーム中の所定のスロットで送信(中継)することにより行われる。
【0024】
図4は、パケットを送受信するスーパーフレーム50の基本構成を示す説明図であり、図5は、スーパーフレーム50中のデータフレーム56の構成を示す説明図である。
【0025】
スーパーフレーム50は、図4に示すように、所定時間間隔で繰り返されるフレームであり、1つのスーパーフレーム50は、L個のフレーム52から構成される。この場合、1つのスーパーフレーム50中の最初のフレーム52は、基幹装置12と無線装置16との間、及び、各無線装置16間で、各無線装置16を制御するパケットを送受信するための制御フレーム54として割り当てられる。一方、制御フレーム54以降の2番目からL番目までの(L−1)個のフレーム52は、基幹装置12と各無線装置16との間、及び、各無線装置16間でデータ(例えば、センサ42が検出したセンサ情報及び絶対時刻)を送受信するためのデータフレーム56として割り当てられる。
【0026】
データフレーム56は、図5に示すように、基幹装置12から各無線装置16の方向(下り方向)へのパケットの通信に用いられるタイムスロット(下り方向通信スロット)58と、各無線装置16から基幹装置12の方向(上り方向)へのパケットの通信に用いられるタイムスロット(第1の上り方向通信スロット)60及びタイムスロット(第2の上り方向通信スロット)62とから構成されている。
【0027】
タイムスロット58、60、62により時分割されたデータフレーム56中、最初のn個のタイムスロット(1番目〜n番目のスロット)は、タイムスロット58、60に交互に割り当てられ、n個のタイムスロット以降の複数のタイムスロット((n+1)番目〜m番目のスロット)は、タイムスロット62として割り当てられている。
【0028】
この場合、各タイムスロット58は、基幹装置12から各無線装置16のうち少なくとも1つの無線装置16に対して、該無線装置16が備えるセンサ42の観測条件を変更するための要求情報(例えば、手動観測要求や観測動作条件の設定変更)を下り方向に常時送信可能なスロットである。また、各タイムスロット60は、前記要求情報を受信した少なくとも1つの無線装置16から基幹装置12に対して、前記要求情報に基づいてセンサ42の観測条件を変更した旨の応答情報を上り方向に常時送信可能なスロットである。従って、各タイムスロット58、60は、常時、各無線装置16が通信可能であると共に、共通に使用することができるスロットである。
【0029】
一方、複数のタイムスロット62は、各無線装置16にそれぞれ割り当てられ、各無線装置16は、自己のセンサ42が検出したセンサ情報を自己に割り当てられたタイムスロット62で上り方向にそれぞれ送信する。また、各無線装置16は、他の無線装置16に割り当てられたタイムスロット62で該他の無線装置16のセンサ42が検出したセンサ情報を中継することも可能である。従って、各無線装置16は、自己に割り当てられたタイムスロット62で自己のセンサ42が検出したセンサ情報を送信するとき、又は、他の無線装置16に割り当てられたタイムスロット62で当該他の無線装置16のセンサ42が検出したセンサ情報を中継するときにのみ通信可能状態(起床状態)となり、一方で、それ以外のタイムスロット62では通信待機状態(スリープ状態)となる。
【0030】
次に、本実施形態に係る無線ネットワークシステム10の動作及び効果について、図6を参照しながら説明する。
【0031】
図6は、基幹装置12(図1及び図2参照)と各無線装置16(SN1〜SN6)との間のパケットの送受信を説明するためのシーケンス図である。
【0032】
ここでは、基幹装置12をGB、第1無線装置16aをSN1、第2無線装置16bをSN2、第2無線装置16bから無線18を介して下り方向に順次接続される無線装置16をSN3〜SN6として説明する。また、データフレーム56における(m−5)番目〜m番目の6個のスロット(タイムスロット62)は、SN1〜SN6から上り方向にセンサ情報及び絶対時刻を送信するためのスロットとしてそれぞれ割り当てられているものとして説明する。従って、これらのタイムスロット62は、ホップ数(基幹装置12からの中継回数)に応じてSN1〜SN6に割り当てられたスロットである。
【0033】
GB(基幹装置12)、SN1(第1無線装置16a)、SN2(第2無線装置16b)及びSN3〜SN6間で通信が確立された状態で、先ず、基幹装置12は、データフレーム56中の最初のタイムスロット58(データフレーム56中の1番目のスロット)でセンサ42aの観測条件を変更するための要求情報を第1無線装置16aに送信する。
【0034】
第1無線装置16aでは、受信部28(図3参照)がアンテナ15aを介して前記要求情報を受信すると、解析部30は、タイミング割当部32を介して記憶部34に前記要求情報を記憶すると共に、前記要求情報に基づいてセンサ42aの観測条件を変更させる。解析部30は、センサ42aが観測条件を変更したことを確認したときに、前記要求情報に対する応答情報を生成して、タイミング割当部32に通知する。タイミング割当部32は、前記要求情報を受信したタイムスロット58の次のタイムスロット60(2番目のスロット)を前記応答情報の送信タイミングとして設定し、送信制御部38及びタイミング設定部36に通知する。送信部40は、送信制御部38からの制御に従って、タイミング設定部36が指定したタイムスロット60にてアンテナ15aから無線14を介して前記応答情報を基幹装置12に送信する。基幹装置12は、前記応答情報の受信により、第1無線装置16aのセンサ42aが前記要求情報に基づいて観測条件を変更したことを把握することができる。
【0035】
次に、基幹装置12は、(n−3)番目のタイムスロット58((n−3)番目のスロット)で第2無線装置16bのセンサ42bの観測条件を変更するための要求情報を第1無線装置16aに送信する。
【0036】
第1無線装置16aでは、受信部28がアンテナ15aを介して前記要求情報を受信すると、解析部30は、タイミング割当部32を介して記憶部34に前記要求情報を記憶し、一方で、タイミング割当部32は、今回のタイムスロット58を第2無線装置16bに前記要求情報を中継するスロットとして設定し、送信制御部38及びタイミング設定部36に通知する。送信部40は、送信制御部38からの制御に従って、タイミング設定部36が指定したタイムスロット58にてアンテナ15aから無線18を介して前記要求情報を第2無線装置16bに中継する。
【0037】
第2無線装置16bでは、受信部28がアンテナ15bを介して前記要求情報を受信すると、解析部30は、タイミング割当部32を介して記憶部34に前記要求情報を記憶すると共に、前記要求情報に基づいてセンサ42bの観測条件を変更させる。解析部30は、センサ42bが観測条件を変更したことを確認したときに、前記要求情報に対する応答情報を生成して、タイミング割当部32に通知する。タイミング割当部32は、前記要求情報を受信したタイムスロット58の次のタイムスロット60((n−2)番目のスロット)を前記応答情報の送信タイミングとして設定し、送信制御部38及びタイミング設定部36に通知する。送信部40は、送信制御部38からの制御に従って、タイミング設定部36が指定したタイムスロット60にてアンテナ15bから無線18を介して前記応答情報を第1無線装置16aに送信する。
【0038】
第1無線装置16aは、受信部28がアンテナ15aを介して前記応答情報を受信すると、解析部30は、タイミング割当部32を介して記憶部34に前記応答情報を記憶し、一方で、タイミング割当部32は、今回のタイムスロット60を基幹装置12に前記応答情報を中継するスロットとして設定し、送信制御部38及びタイミング設定部36に通知する。送信部40は、送信制御部38からの制御に従って、タイミング設定部36が指定したタイムスロット60にてアンテナ15aから無線14を介して前記応答情報を基幹装置12に中継する。基幹装置12は、前記応答情報の受信により、第2無線装置16bのセンサ42bが前記要求情報に基づいて観測条件を変更したことを把握することができる。
【0039】
次に、基幹装置12は、(n−1)番目のタイムスロット58((n−1)番目のスロット)で第2無線装置16bの下り方向に接続された無線装置16(SN3)のセンサ42の観測条件を変更するための要求情報を第1無線装置16aに送信する。
【0040】
この場合、第1無線装置16aでは、前述した第2無線装置16bへの要求情報の中継処理と同様に、基幹装置12からの要求情報を第2無線装置16bに中継し、第2無線装置16bでは、第1無線装置16a内での前記中継処理と同様の中継処理を行って、基幹装置12から第1無線装置16aを介して中継された前記要求情報を無線装置16(SN3)に中継する。
【0041】
該無線装置16では、前述した第1無線装置16a及び第2無線装置16bにおける応答情報の生成処理及び送信処理と同様に、受信した前記要求情報に基づいてセンサ42の観測条件を変更し、変更した観測条件に基づく応答情報を生成して、生成した前記応答情報をn番目のタイムスロット60(n番目のスロット)で第2無線装置16bに送信する。第2無線装置16bは、前述した第1無線装置16aでの応答情報の中継処理と同様に、該無線装置16からの応答情報を第1無線装置16aに中継し、第1無線装置16aでは、無線装置16から第2無線装置16bを介して中継された前記応答情報を基幹装置12に中継する。基幹装置12は、前記応答情報の受信により、無線装置16(SN3)のセンサ42が前記要求情報に基づいて観測条件を変更したことを把握することができる。
【0042】
以上のようにして各センサ42a、42b、42の観測条件がそれぞれ変更された後に、基幹装置12は、(n+1)番目のタイムスロット62((n+1)番目のスロット)以降、各無線装置16からのセンサ情報を収集することが可能となる。
【0043】
すなわち、(m−5)番目のタイムスロット62(データフレーム56中の(m−5)番目のスロット)にて、第1無線装置16aのセンサ42aは、検出したセンサ情報及び絶対時刻を送信制御部38を介して送信部40に出力し、タイミング割当部32は、該タイムスロット62にてセンサ情報及び絶対時刻を送信することを決定し、送信制御部38及びタイミング設定部36に通知する。送信部40は、送信制御部38からの制御に従って、タイミング設定部36が指定したタイムスロット62にてアンテナ15aから無線14を介して前記センサ情報及び前記絶対時刻を基幹装置12に送信する。これにより、基幹装置12は、第1無線装置16aからセンサ情報及び絶対時刻を収集することができる。
【0044】
また、(m−4)番目のタイムスロット62((m−4)番目のスロット)にて、第2無線装置16bのセンサ42bは、検出したセンサ情報及び絶対時刻を送信制御部38を介して送信部40に出力し、一方で、タイミング割当部32は、該タイムスロット62にてセンサ情報及び絶対時刻を送信することを決定し、送信制御部38及びタイミング設定部36に通知する。送信部40は、送信制御部38からの制御に従って、タイミング設定部36が指定したタイムスロット62にてアンテナ15bから無線18を介して前記センサ情報及び前記絶対時刻を第1無線装置16aに送信する。
【0045】
第1無線装置16aでは、受信部28がアンテナ15aを介して前記センサ情報及び前記絶対時刻を受信すると、解析部30は、タイミング割当部32及び送信制御部38を介して送信部40に前記センサ情報及び前記絶対時刻を出力し、一方で、タイミング割当部32は、今回のタイムスロット62にて基幹装置12に前記センサ情報及び前記絶対時刻を中継することを決定し、送信制御部38及びタイミング設定部36に通知する。送信部40は、送信制御部38からの制御に従って、タイミング設定部36が指定したタイムスロット62にてアンテナ15aから無線14を介して前記センサ情報及び前記絶対時刻を基幹装置12に中継する。これにより、基幹装置12は、第2無線装置16bから第1無線装置16aを介して中継されたセンサ情報及び絶対時刻を収集することができる。
【0046】
同様にして、(m−3)番目のタイムスロット62((m−3)番目のスロット)では、SN3から第2無線装置16b(SN2)及び第1無線装置16a(SN1)を介してSN3のセンサ42のセンサ情報及び絶対時刻が基幹装置12に収集され、(m−2)番目のタイムスロット62((m−2)番目のスロット)では、SN4からSN3、SN2及びSN1を介してSN4のセンサ42のセンサ情報及び絶対時刻が基幹装置12に収集され、(m−1)番目のタイムスロット62((m−1)番目のスロット)では、SN5からSN4、SN3、SN2及びSN1を介してSN5のセンサ42のセンサ情報及び絶対時刻が基幹装置12に収集され、m番目のタイムスロット62(m番目のスロット)では、SN6からSN5、SN4、SN3、SN2及びSN1を介してSN6のセンサ42のセンサ情報及び絶対時刻が基幹装置12に収集される。これにより、基幹装置12は、各タイムスロット62にてSN3〜SN6からのセンサ情報及び絶対時刻を収集することができる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態に係る無線ネットワークシステム10において、基幹装置12と無線装置16との間で、あるいは、各無線装置16間でパケットを送受信するためのデータフレーム56は、各無線装置16のうち少なくとも1つの無線装置16のセンサ42に対する要求情報を下り方向に送信可能なタイムスロット58と、要求情報を受信した少なくとも1つの無線装置16が、要求情報に対する応答情報を上り方向に送信可能なタイムスロット60と、各無線装置16に割り当てられ、各無線装置16がセンサ情報及び絶対時刻を上り方向にそれぞれ送信するための複数のタイムスロット62とから構成されている。この場合、各無線装置16は、それぞれ、タイムスロット58、60では、常時、通信可能状態にあり、一方で、複数のタイムスロット62のうち、自己に割り当てられたタイムスロット62で自己のセンサ42が検出したセンサ情報及び絶対時刻を送信するとき、又は、他の無線装置16に割り当てられたタイムスロット62で当該他の無線装置16のセンサ42が検出したセンサ情報及び絶対時刻を中継するときにのみ通信可能状態となる。
【0048】
このように、タイムスロット58、60では、常時、各無線装置16が通信可能状態になるため、基幹装置12からの要求情報に対して確実に応答情報を基幹装置12に送信することが可能となる。また、各無線装置16は、自己に割り当てられたタイムスロット62で自己のセンサ42が検出したセンサ情報及び絶対時刻を送信するとき、又は、他の無線装置16に割り当てられたタイムスロット62で当該他の無線装置16のセンサ42が検出したセンサ情報及び絶対時刻を中継するときにのみ通信可能状態になり、一方で、それら以外の時間帯(タイムスロット62)では通信待機状態になる。
【0049】
そのため、高精度の時刻同期を必要とせず、多少の時刻同期のずれが発生するようなシステムや、無線装置16間の中継経路が動的に変化するシステムであっても、最小限の通信可能状態を維持しつつ、基幹装置12から下り方向への要求情報の受信や、上り方向への応答情報やセンサ情報及び絶対時刻の送信又は中継を行うことが可能となる。この結果、パケットの衝突や各無線装置16での消費電力の増大を回避できると共に、基幹装置12から各無線装置16のセンサ42に対する観測条件の変更を示す要求情報と、該要求情報に対する応答情報とを確実に送受信することが可能となる。
【0050】
特に、センサネットワークシステム内で、センサノードが動的に変化して、1つのセンサノードとゲートノードとの間の中継経路が変化することにより、これまで通信待機状態であったセンサノードを前記中継経路を構成するセンサノードとして機能させる場合には、タイムスロット58にて当該センサノードに起床タイミングを報知し、それに対する前記センサノードからの応答をタイムスロット60でゲートノードに送信すればよい。これにより、起床タイミングの報知を別途に送信する必要がないので、中継経路が動的に変化しても下り方向及び上り方向の送信や中継を効率よく行うことが可能となる。
【0051】
また、タイムスロット58、60は、タイムスロット62のように各無線装置16に割り当てられた固有のスロットではなく、どの無線装置16でもパケットの送受信が可能なスロットであるため、タイムスロット58、60の存在によってデータフレーム56中のタイムスロット62の個数が必要以上に減少することを抑制することができる。
【0052】
さらに、データフレーム56がタイムスロット58、60、62から構成されているので、基幹装置12は、特定の無線装置16に対して要求情報を送信しつつ、各無線装置16から定時観測によるセンサ情報を収集することができる。
【0053】
上記の説明では、基幹装置12、第1無線装置16a及び第2無線装置16b間での処理について説明したが、基幹装置12及び第3無線装置16c間、基幹装置12及び他の無線装置16間、第1無線装置16a及び他の無線装置16間、第3無線装置16c及び他の無線装置16間でも同様の処理を行うことが可能である。
【0054】
なお、この発明は、上述の実施形態に限らず、種々の構成を採り得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0055】
10…無線ネットワークシステム 12…基幹装置
14、18…無線 16、16a〜16c…無線装置
24…クラスタ 42、42a〜42c…センサ
50…スーパーフレーム 56…データフレーム
58、60、62…タイムスロット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基幹装置を根元として複数の無線装置によりツリー状に形成されたマルチホップ無線ネットワーク方式の無線ネットワークシステムにおいて、
前記各無線装置は、センサをそれぞれ備え、
前記基幹装置と前記無線装置との間で、あるいは、前記各無線装置間でパケットを送受信するフレームは、
前記各無線装置のうち少なくとも1つの無線装置のセンサに対する要求を、前記基幹装置から前記各無線装置への下り方向に送信可能な下り方向通信スロットと、
前記要求を受信した前記少なくとも1つの無線装置が、前記要求に対する応答を前記各無線装置から前記基幹装置への上り方向に送信可能な第1の上り方向通信スロットと、
前記各無線装置に割り当てられ、自己のセンサが検出したセンサ情報を前記各無線装置が前記上り方向にそれぞれ送信するための複数の第2の上り方向通信スロットと、
から構成され、
前記各無線装置は、それぞれ、
前記下り方向通信スロット及び前記第1の上り方向通信スロットでは、常時、通信可能状態にあり、
一方で、前記複数の第2の上り方向通信スロットのうち、自己に割り当てられた第2の上り方向通信スロットで自己のセンサが検出したセンサ情報を送信するとき、又は、他の無線装置に割り当てられた第2の上り方向通信スロットで該他の無線装置のセンサが検出したセンサ情報を中継するときにのみ通信可能状態となる
ことを特徴とする無線ネットワークシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−233073(P2010−233073A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79971(P2009−79971)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】