説明

無線通信システム、無線基地局装置および通信制御方法

【課題】所定の推定精度を保ちつつ同時チャネル推定を可能とすると共に、参照信号用の割当無線リソース数の増加を抑えつつ、同時チャネル推定可能な無線基地局装置数を増加させることができる無線通信システム、無線基地局装置および通信制御方法を提供すること。
【解決手段】複数の送信アンテナ間で直交する参照信号を送信する複数の無線基地局装置eNBと、複数の無線基地局装置eNBから送信された参照信号に基づいてチャネル推定する移動端末装置UEとを備え、隣接する複数の無線基地局装置eNB間で優先度を設定すると共に、隣接する複数の無線基地局装置eNB間で共通に使用される無線リソースから、優先度に応じて各無線基地局装置eNBに割当可能な参照信号数に偏りをもたせるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャネル推定用の参照信号(RS: Reference Signal)を送信する無線通信システム、無線基地局装置および通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイドバンド符号分割多重接続(WCDMA)方式、高速ダウンリンクパケットアクセス(HSDPA)方式、高速アップリンクパケットアクセス(HSUPA)方式等の後継となる通信方式、すなわちロングタームエボリューション(LTE:Long Term Evolution)が、標準化団体3GPPにおいて検討されている(Release−8,9)。Release−8,9 LTE(以下、REL8、9−LTEという)では、無線アクセス方式として、下りリンクについては周波数の利用効率を向上させる直交周波数分割多重接続(OFDMA:Orthogonal Frequency Division Multiplexing Access)方式が規定されている。
【0003】
また、REL8、9−LTEでは、送信機と受信機にそれぞれ複数のアンテナを設けて、通信品質を改善する無線伝送方法(MIMO:Multiple−Input Multiple−Output)が規定されている(例えば、非特許文献1)。MIMO伝送は、各送信アンテナから異なる情報を、同一周波数で、同一タイミングで送信することで伝送速度を向上させている。また、REL8、9−LTEでは、最大4送信アンテナの無線基地局装置に対応したチャネル推定用の参照信号構成が規定されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】3GPP TR 25.913[1]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、LTEにおいては、複数の無線基地局装置に対する同時チャネル推定方法が課題として残っている。従来の参照信号構成は、複数の無線基地局装置に跨ったMIMO伝送に対応していないため、無線基地局装置間で直交化されていない。このため、複数の無線基地局装置間を同時にチャネル推定する場合に、干渉によって推定精度が劣化してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、所定の推定精度を保ちつつ同時チャネル推定を可能とすると共に、参照信号用の割当無線リソース数の増加を抑えつつ、同時チャネル推定可能な無線基地局装置数を増加させることができる無線通信システム、無線基地局装置および通信制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の無線通信システムは、複数の送信アンテナを有し、前記複数の送信アンテナ間で直交する参照信号を送信する複数の無線基地局装置と、前記複数の無線基地局装置から送信された前記参照信号に基づいてチャネル推定する移動端末装置とを備え、前記複数の無線基地局装置は、前記参照信号を生成する参照信号生成部と、隣接する他の無線基地局装置との間の優先度を設定する優先度設定部と、前記他の無線基地局装置との間で共通に使用される無線リソースから、前記優先度に応じて割り当てられる前記参照信号の割当無線リソース数を決定する割当数決定部と、前記割当無線リソース数の前記参照信号を、前記他の無線基地局装置と直交するように割り当てる割当部とを有することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、隣接する無線基地局装置間で優先度が設定され、この無線基地局装置間で共通に使用される参照信号用の無線リソースが優先度に応じて各無線基地局装置に配分される。このため、隣接する無線基地局装置間における、参照信号が割り当てられる割当無線リソース数の合計を、無線基地局装置間で共通に使用される無線リソースの制限内に収めて、隣接する無線基地局装置間の直交化を図ることができる。したがって、移動端末装置において、干渉を抑えつつ、隣接する無線基地局装置間で同時チャネル推定することができる。また、隣接する無線基地局装置間で共通に使用される無線リソースの制限内で割当無線リソース数に偏りをもたせることで、割当無線リソース数の増加を抑えつつ、同時チャネル推定可能な無線基地局装置数を増加させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、所定の推定精度を保ちつつ同時チャネル推定を可能とすると共に、参照信号用の割当無線リソース数の増加を抑えつつ、同時チャネル推定可能な無線基地局装置数を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態を示す図であり、無線通信システムの概要の説明図である。
【図2】本発明の実施の形態を示す図であり、無線基地局装置の機能ブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態を示す図であり、移動端末装置の機能ブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態を示す図であり、第一の実施態様の説明図である。
【図5】本発明の実施の形態を示す図であり、第二の実施態様の説明図である。
【図6】本発明の実施の形態を示す図であり、第三の実施態様の説明図である。
【図7】本発明の実施の形態を示す図であり、第四の実施態様の説明図である。
【図8】本発明の実施の形態を示す図であり、第五の実施態様の説明図である。
【図9】本発明の実施の形態を示す図であり、第六の実施態様の説明図である。
【図10】本発明の実施の形態を示す図であり、移動端末装置による参照信号予測処理の説明図である。
【図11】本発明の実施の形態を示す図であり、無線基地局装置による参照信号構成の通知処理の説明図である。
【図12】本発明の実施の形態を示す図であり、無線通信システムにおける通信処理のシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態における無線通信システムの概要の説明図である。なお、図1に示す無線通信システムは一例であり、この構成に限定されるものではない。無線通信システムは、隣接する無線基地局装置間で優先度を設け、無線基地局装置間で共通で使用される無線リソース内で参照信号の割当数に偏りをもたせるものであれば、どのような構成であってもよい。
【0012】
図1(a)に示す無線通信システム1は、セルC#1をカバーする無線基地局装置eNB#1、セルC#2をカバーする無線基地局装置eNB#2、セルC#3をカバーする無線基地局装置eNB#3を備えている。3つの無線基地局装置eNB#1−#3は、相互に隣接しており、それぞれ複数の送信アンテナでセルC内の移動端末装置UEと通信可能に構成されている。移動端末装置UEは、複数の受信アンテナを有しており、無線基地局装置eNBの各送信アンテナから送信される参照信号を受信し、参照信号に基づいてチャネル推定する。移動端末装置UEは、チャネル推定結果を用いて無線基地局装置eNBとデータ通信を行っている。
【0013】
ところで、図1(b)に示すREL8、9−LTEでは、最大4送信アンテナの無線基地局装置に対応したチャネル推定用の参照信号構成が規定されている。しかしながら、下りリンクの通信容量の増大により送信アンテナ数の増加が望まれており、従来の参照信号構成では、8送信アンテナの無線基地局装置に対応せず、8送信アンテナ分のチャネル推定が不可能である。この問題を解決するため、最大8送信アンテナの無線基地局装置に対応した参照信号構成が検討されているが、CoMP(Coordinated Multiple Point transmission)の実現に向けた複数の無線基地局装置間の同時チャネル推定法の確立が課題として残っている。
【0014】
例えば、無線基地局装置eNB#1−#3の送信アンテナ数が4つ、1送信アンテナあたりの参照信号数を2つとした場合、全ての無線基地局装置eNB#1−#3の全ての送信アンテナで参照信号を直交化するためには、1リソースブロックあたり24リソースエレメント(割当無線リソース)が必要となる。このとき、無線基地局装置eNB#1−#3で共通に使用される無線リソースとして、1リソースブロックあたりの参照信号数が最大16リソースエレメントに規定された場合には、全ての無線基地局装置eNB#1−#3の全ての送信アンテナで参照信号を直交化することが不可能である。
【0015】
したがって、3つの無線基地局装置eNB#1−#3間で同時チャネル推定する場合には、干渉によって推定精度が劣化してしまう。このため、無線リソースの参照信号割当用のリソースエレメント数を増加しなければ、同時チャネル推定可能な無線基地局装置eNB数を増やすことができない。
【0016】
そこで、本発明は、無線基地局装置eNB#1−#3間で優先度を設けて、優先度の高い無線基地局装置eNBに対して他の無線基地局装置eNBよりも、無線リソース内の参照信号の割当可能なリソースエレメント数を多く設定している。このように、参照信号の割当数に偏りをもたせることで、無線リソースの制限内(例えば、16リソースエレメント)に収めて、隣接する無線基地局装置eNB#1−#3間の全ての送信アンテナで参照信号を直交化している。
【0017】
以下、図2及び図3を参照して、無線基地局装置及び移動端末装置の機能構成について説明する。最初に、図2を参照して無線基地局装置の機能構成について説明する。図2は、本発明の実施の形態に係る無線基地局装置の機能ブロック図である。
【0018】
図2に示すように、無線基地局装置eNBは、上位層としてスケジューラ部101、ユーザ別の無線リンク制御部102、MAC多重部103を有し、物理層として符号化部104、変調部105、リソースマッピング部106、OFDM送信部107、参照信号生成部108、拡散部109、参照信号パタン選択部111、制御情報信号生成部112を有している。スケジューラ部101は、移動端末装置UEからフィードバックされるユーザ毎のチャネル品質情報信号に基づき、ユーザをスケジューリングする。無線リンク制御部102は、上位装置等から転送されたユーザ毎のデータ信号を、スケジューラ部101から通知されたスケジューラ情報に基づき物理層に割り当てる最適なデータ量を設定する。
【0019】
MAC多重部103は、スケジューラ部101から通知されたMAC情報に基づき、ユーザ別の無線リンク制御部102からのデータ信号をMAC多重する。符号化部104は、スケジューラ部101から通知された符号化情報に基づき、MAC多重されたデータ信号を符号化する。変調部105は、スケジューラ部101から通知された変調情報に基づき、符号化後のデータ信号を変調する。
【0020】
参照信号生成部108は、チャネル推定用の参照信号系列を生成する。拡散部109は、参照信号をCDM(Code Division Multiplexing)方式で多重する場合に、参照信号系列をコード拡散して多重する。参照信号パタン選択部111は、参照信号構成を選択し、スケジューラ部101及びリソースマッピング部106に通知する。この場合、参照信号パタン選択部111は、隣接する他の無線基地局装置eNBとの間の優先度情報を保持し、優先度情報に基づいて参照信号構成を選択する。
【0021】
優先度情報は、隣接する他の無線基地局装置eNBとの間で周期的に変化されるように構成されている。すなわち、3つの無線基地局装置eNB間で時間の経過と共に、無線基地局装置eNBの優先順位が入れ替えられる。また、参照信号パタン選択部111が選択する参照信号構成は、1リソースブロックにおける無線基地局装置eNBの参照信号数及び割当パタンを示している。スケジューラ部101に通知された参照信号構成は、データ信号の割当無線リソースを示すリソース割当情報の生成に用いられる。
【0022】
なお、上記構成においては、隣接する無線基地局装置eNB間で優先順位が周期的に入れ替わる構成としたが、この構成に限定されるものではない。トラヒック種別又はトラヒック量に応じて隣接する無線基地局装置eNB間で優先順位が入れ替わる構成としてもよい。この場合、参照信号パタン選択部111は、スケジューラ部101を介して他の無線基地局装置eNBから無線基地局情報を取得し、無線基地局情報から隣接する他の無線基地局装置eNBのトラヒック種別又はトラヒック量を取得する。また、参照信号パタン選択部111は、スケジューラ部101からスケジューラ情報を取得し、自装置のトラヒック種別又はトラヒック量を取得する。トラヒック種別は、高品質な通信が求められる順に優先度が高く設定され、トラヒック量は、量が多い順に優先度が高く設定される。
【0023】
また、MIMO処理(プリコーディング処理)の種別に応じて隣接する無線基地局装置eNB間で優先順位が入れ替わる構成としてもよい。この場合、参照信号パタン選択部111は、スケジューラ部101を介して他の無線基地局装置eNBから無線基地局情報を取得し、無線基地局情報から他の無線基地局装置eNBのMIMO情報を取得する。また、参照信号パタン選択部111は、スケジューラ部101から自装置のMIMO情報を取得する。MIMO情報は、MIMO処理の種別を示し、例えば、Intra−cell CoMP、MU−MIMO、Closed−Loop SU−MIMO、Open−Loop SU−MIMOの順に優先度が高く設定される。
【0024】
制御情報信号生成部112は、制御情報信号を生成すると共に、参照信号パタン選択部111で選択された参照信号構成を制御情報信号に追加する。なお、制御情報信号は、DCIフォーマットに対応しており、移動端末装置UEに送信されて下りリンクの制御に用いられる。
【0025】
リソースマッピング部106は、スケジューラ部101から通知されたリソース割当情報に基づき、変調後のデータ信号をMIMO空間多重数(レイヤ数)に応じて各レイヤにマッピングし,プリコーディング処理を施した後,無線リソースのリソースエレメントにマッピングする。また、リソースマッピング部106は、参照信号パタン選択部111から通知された参照信号構成に基づき、参照信号を無線リソースのリソースエレメントにマッピングする。さらに、リソースマッピング部106は、制御チャネル用の所定のリソースエレメントに参照信号構成を含む制御情報信号をマッピングする。OFDM送信部107は、マッピング後の送信データに対してOFDM送信処理を行う。
【0026】
次に、図3を参照して移動端末装置の機能構成について説明する。図3は、本発明の実施の形態に係る移動端末装置の機能ブロック図である。
【0027】
図3に示すように、移動端末装置UEは、上位層として無線リンク制御部202、MAC逆多重部203を有し、物理層としてチャネル推定部201、符号化部204、復調部205、デリソースマッピング部206、OFDM受信部207、参照信号予測部208、逆拡散部209、参照信号パタン選択部211、制御情報信号復調部212を有している。OFDM受信部207は、無線基地局装置eNBから送信された送信データに対してOFDM受信処理を行う。
【0028】
デリソースマッピング部206は、制御チャネル用の所定のリソースエレメントから参照信号構成を含む制御情報信号をデマッピングし、制御情報信号復調部212に通知する。また、デリソースマッピング部206は、参照信号パタン選択部111を介して通知された参照信号構成に基づき、参照信号をデマッピングし、逆拡散部209に通知する。さらに、デリソースマッピング部206は、制御情報信号復調部212を介して通知されたリソース割当情報に基づき、受信データ信号をデマッピングし、復調部205に通知する。
【0029】
制御情報信号復調部212は、デリソースマッピング部206から通知された制御情報信号を復調し、受信データ信号のリソース割当情報、復調情報、符号化情報、参照信号構成を取り出す。参照信号パタン選択部211は、制御情報信号復調部212を介して通知された参照信号構成に基づき、参照信号構成をデリソースマッピング部206に通知する。デリソースマッピング部206では、参照信号構成に基づいて参照信号がデマッピングされる。
【0030】
逆拡散部209は、参照信号がCDM方式で多重されている場合に、参照信号系列を逆拡散する。参照信号予測部208は、過去の参照信号を含むサブキャリアを利用して時間軸方向に参照信号を予測する。なお、参照信号予測部208の詳細については後述する。チャネル推定部201は、参照信号に基づき、チャネル推定してチャネル品質情報を算出する。チャネル推定部201は、算出したチャネル品質情報を上りリンクで無線基地局装置eNBにフィードバックする。
【0031】
復調部205は、制御情報信号復調部212から通知された復調情報に基づき、データ信号を復調する。符号化部204は、制御情報信号復調部212から通知された符号化情報に基づき、復調後のデータ信号を符号化する。MAC逆多重部203は、符号化後のデータ信号をMAC逆多重する。無線リンク制御部202は、MAC逆多重後のデータ信号を連接する。
【0032】
なお、上記構成した無線基地局装置及び移動端末装置は、後述する各実施態様において、全ての機能ブロック及び機能ブロックの一部の機能を備える必要はない。各実施態様において、適宜使用されればよい。
【0033】
図4を参照して、第一の実施態様について説明する。図4は、第一の実施態様の説明図である。なお、第一の実施態様においては、CDM方式で多重されないため、無線基地局装置の拡散部、移動端末装置の逆拡散部は不要である。また、第一の実施態様においては、周期的に無線基地局装置間の優先順位を設定するため、参照信号パタン選択部は、スケジューラ部を介して隣接する無線基地局装置からトラヒック種別、トラヒック量、MIMO情報等を取得する必要がない。
【0034】
図4(a)に1リソースブロックあたりの参照信号構成(参照信号パタン)を示す。同図には、周波数領域が12サブキャリアで構成され、1サブフレームが14シンボルで構成された1リソースブロックが図示されている。この1リソースブロックに、送信データ、既存(REL9−LTEまでの端末が使用する)のパイロット信号、制御情報信号、参照信号が時間領域及び周波数領域に重ならないように多重されている。参照信号は、送信アンテナ毎に用意されている。
【0035】
第一の実施態様は、3つの無線基地局装置eNB#1−#3が4送信アンテナで、参照信号をFDM(Frequency Division Multiplexing)で多重している。この第一の実施態様では、優先度の高い無線基地局装置eNBは1送信アンテナあたりの参照信号数が2つ、他の無線基地局装置eNBは1送信あたりの参照信号数が1つに設定され、優先度に応じて参照信号数に偏りをもたせてある。すなわち、優先度の高い無線基地局装置eNBの参照信号数が8、他の無線基地局装置eNBの参照信号数がそれぞれ4となり、計16の参照信号が16リソースエレメントに多重される。
【0036】
例えば、図4(a)においては、無線基地局装置eNB#1の送信アンテナ#1−#4の参照信号は、10、11シンボル目のそれぞれ4リソースエレメントに配置される。また、無線基地局装置eNB#2の送信アンテナ#1−#4の参照信号は、11シンボル目の4リソースエレメントに配置され、無線基地局装置eNB#3の送信アンテナ#1−#4の参照信号は、10シンボル目の4リソースエレメントに配置される。
【0037】
このように、第一の実施態様においては、隣接する無線基地局装置eNB間で優先度を設定して参照信号の割当数に偏りをもたせて、隣接する無線基地局装置eNBの全ての送信アンテナの参照信号を異なるリソースエレメントに配置している。したがって、隣接する無線基地局装置eNB間で参照信号が直交化され、各無線基地局装置eNBにおいて各送信アンテナ間で参照信号が直交化される。この構成により、隣接する無線基地局装置eNB間で干渉することがなく、所定の推定精度を保ちつつ同時チャネル推定を可能とする。また、参照信号割当用のリソースエレメント数を増加させることなく、同時チャネル推定可能な無線基地局装置eNB数を増やすことが可能となる。
【0038】
また、図4(b)に示すように、第一の実施態様においては、周期的に無線基地局装置eNB間の優先順位が切り替えられている。例えば、時刻T1においては無線基地局装置eNB#1の優先度が一番高く、1リソースブロックに対し、無線基地局装置eNB#1の参照信号割当数が8つ、無線基地局装置eNB#2、#3の参照信号割当数が4つに設定される。時刻T1からa[msec](例えば、10[msec])後の時刻T2においては、無線基地局装置eNB#2の優先度が一番高く、1リソースブロックに対し、無線基地局装置eNB#2の参照信号割当数が8つ、無線基地局装置eNB#1、#3の参照信号割当数が4つに設定される。時刻T2からa[msec]後の時刻T3においては、無線基地局装置eNB#3の優先度が一番高く、1リソースブロックに対し、無線基地局装置eNB#3の参照信号割当数が8つ、無線基地局装置eNB#1、#2の参照信号割当数が4つに設定される。
【0039】
このように、無線基地局装置eNB間の優先順位が周期的に切り替えられることで、移動端末装置UEで受信する各無線基地局装置eNBからの参照信号の品質を一定に保つことが可能となる。また、他の無線基地局装置eNBからトラヒック種別、トラヒック量、MIMO情報等を取得する必要がなく、参照信号パタン選択部111における参照信号構成の選択処理が容易となる。
【0040】
図5を参照して、第二の実施態様について説明する。図5は、第二の実施態様の説明図である。なお、第二の実施態様は、第一の実施態様と比較してFDM多重に加えてCDM多重する点において相違している。したがって、特に相違点についてのみ説明する。
【0041】
図5(a)に示すように、第二の実施態様は、3つの無線基地局装置eNB#1−#3が4送信アンテナで、参照信号をFDM及びCDMで多重している。この第二の実施態様では、優先度の高い無線基地局装置eNBは1送信アンテナあたりの参照信号数が4つ、他の無線基地局装置eNBは1送信あたりの参照信号数が2つに設定され、優先度に応じて参照信号数に偏りをもたせている。すなわち、優先度の高い無線基地局装置eNBの参照信号数が16、他の無線基地局装置eNBの参照信号数がそれぞれ8となり、計32の参照信号が16リソースエレメントに多重される。この場合、1リソースエレメントに対し2つの参照信号がCDM多重される。
【0042】
例えば、図5(a)においては、無線基地局装置eNB#1の送信アンテナ#1−#4の参照信号は、10、11シンボル目のそれぞれ8リソースエレメントに配置される。無線基地局装置eNB#2の送信アンテナ#1−#4の参照信号は、無線基地局装置eNB#1の参照信号が配置された10、11シンボル目のそれぞれ4リソースエレメントにCDM多重される。無線基地局装置eNB#3の送信アンテナ#1−#4の参照信号は、無線基地局装置eNB#1の参照信号が配置された10、11シンボル目において、それぞれ無線基地局装置eNB#2の参照信号が多重されていない残りの4リソースエレメントにCDM多重される。
【0043】
このように、第二の実施態様においては、無線基地局装置eNB間で優先度を設定して参照信号の割当数に偏りをもたせると共に、CDM多重によって隣接する無線基地局装置eNBの全ての送信アンテナの参照信号が直交化される。この構成により、隣接する無線基地局装置eNB間で干渉することがなく、所定の推定精度を保ちつつ同時チャネル推定を可能とする。また、参照信号割当用のリソースエレメント数を増加させることなく、同時チャネル推定可能な無線基地局装置eNB数を増やすことが可能となる。さらに、1送信アンテナあたりの参照信号数を多くすることでチャネル推定精度を高めることが可能となる。また、図5(b)に示すように、第二の実施態様においても、第一の実施態様と同様に、無線基地局装置eNB間の優先順位が周期的に切り替えられている。
【0044】
図6を参照して、第三の実施態様について説明する。図6は、第三の実施態様の説明図である。なお、第三の実施態様は、第一の実施態様と比較して各無線基地局装置の参照信号構成が8送信アンテナに対応する点において相違している。したがって、特に相違点についてのみ説明する。
【0045】
第三の実施態様は、3つの無線基地局装置eNB#1−#3が8送信アンテナで、参照信号をFDMで多重している。この第三の実施態様では、優先度の高い無線基地局装置eNBは1送信アンテナあたりの参照信号数が2つ、他の無線基地局装置eNBは1送信あたりの参照信号数が1つに設定され、優先度に応じて参照信号数に偏りをもたせている。すなわち、優先度の高い無線基地局装置eNBの参照信号数が16、他の無線基地局装置eNBの参照信号数がそれぞれ8となり、計32の参照信号が32リソースエレメントに多重される。
【0046】
例えば、図6(a)においては、無線基地局装置eNB#1の送信アンテナ#1−#4の参照信号は、10、11シンボル目のそれぞれ4リソースエレメントに配置される。無線基地局装置eNB#1の送信アンテナ#5、#6の参照信号は、6、7シンボル目のそれぞれ2リソースエレメントに配置され、送信アンテナ#7、#8の参照信号は、13、14シンボル目のそれぞれ2リソースエレメントに配置される。
【0047】
無線基地局装置eNB#2の送信アンテナ#1−#4の参照信号は、11シンボル目の4リソースエレメントに配置される。無線基地局装置eNB#2の送信アンテナ#5、#6の参照信号は、7シンボル目の2リソースエレメントに配置され、送信アンテナ#7、#8の参照信号は、14シンボル目の2リソースエレメントに配置される。無線基地局装置eNB#3の送信アンテナ#1−#4の参照信号は、10シンボル目の4リソースエレメントに配置される。無線基地局装置eNB#3の送信アンテナ#5、#6の参照信号は、6シンボル目の2リソースエレメントに配置され、送信アンテナ#7、#8の参照信号は、13シンボル目の2リソースエレメントに配置される。
【0048】
このように、第三の実施態様においては、無線基地局装置eNB間で優先度を設定して参照信号の割当数に偏りをもたせると共に、参照信号用のリソースエレメントを新たに設けて隣接する無線基地局装置eNBの全ての送信アンテナの参照信号が直交化される。この構成により、各無線基地局装置eNBが8送信アンテナであっても、隣接する無線基地局装置eNB間で干渉することがなく、所定の推定精度を保ちつつ同時チャネル推定を可能とする。また、図6(b)に示すように、第三の実施態様においても、第一の実施態様と同様に、無線基地局装置eNB間の優先順位が周期的に切り替えられている。
【0049】
図7を参照して、第四の実施態様について説明する。図7は、第四の実施態様の説明図である。なお、第四の実施態様は、第三の実施態様と比較してFDM多重に加えてCDM多重する点において相違している。したがって、特に相違点についてのみ説明する。
【0050】
図7(a)に示すように、第四の実施態様は、3つの無線基地局装置eNB#1−#3が8送信アンテナで、参照信号をFDM及びCDMで多重している。この第四の実施態様では、優先度の高い無線基地局装置eNBは1送信アンテナあたりの参照信号数が4つ、他の無線基地局装置eNBは1送信あたりの参照信号数が2つに設定され、優先度に応じて参照信号数に偏りをもたせている。すなわち、優先度の高い無線基地局装置eNBの参照信号数が32、他の無線基地局装置eNBの参照信号数がそれぞれ16となり、計64の参照信号が32リソースエレメントに多重される。この場合、1リソースエレメントに対し2つの参照信号がCDM多重される。
【0051】
例えば、図7(a)においては、無線基地局装置eNB#1の送信アンテナ#1−#4の参照信号は、10、11シンボル目のそれぞれ8リソースエレメントに配置される。無線基地局装置eNB#1の送信アンテナ#5、#6の参照信号は、6、7シンボル目のそれぞれ4リソースエレメントに配置され、送信アンテナ#7、#8の参照信号は、13、14シンボル目のそれぞれ4リソースエレメントに配置される。
【0052】
無線基地局装置eNB#2の送信アンテナ#1−#4の参照信号は、無線基地局装置eNB#1の参照信号が配置された10、11シンボル目のそれぞれ4リソースエレメントにCDM多重される。無線基地局装置eNB#2の送信アンテナ#5、#6の参照信号は、無線基地局装置eNB#1の参照信号が配置された6、7シンボル目のそれぞれ2リソースエレメントにCDM多重され、送信アンテナ#7、#8の参照信号は、無線基地局装置eNB#1の参照信号が配置された13、14シンボル目のそれぞれ2リソースエレメントにCDM多重される。
【0053】
無線基地局装置eNB#3の送信アンテナ#1−#4の参照信号は、無線基地局装置eNB#1の参照信号が配置された10、11シンボル目において、それぞれ無線基地局装置eNB#2の参照信号が多重されていない残りの4リソースエレメントにCDM多重される。無線基地局装置eNB#2の送信アンテナ#5、#6の参照信号は、無線基地局装置eNB#1の参照信号が配置された6、7シンボル目において、それぞれ無線基地局装置eNB#2の参照信号が多重されていない残りの2リソースエレメントにCDM多重される。送信アンテナ#7、#8の参照信号は、無線基地局装置eNB#1の参照信号が配置された13、14シンボル目において、それぞれ無線基地局装置eNB#2の参照信号が多重されていない残りの2リソースエレメントにCDM多重される。
【0054】
このように、第四の実施態様においては、無線基地局装置eNB間で優先度を設定して参照信号の割当数に偏りをもたせると共に、CDM多重によって隣接する無線基地局装置eNBの全ての送信アンテナの参照信号が直交化される。この構成により、各無線基地局装置eNBが8送信アンテナであっても、隣接する無線基地局装置eNB間で干渉することがなく、所定の推定精度を保ちつつ同時チャネル推定を可能とする。また、1送信アンテナあたりの参照信号数を多くすることでチャネル推定精度を高めることが可能となる。また、図7(b)に示すように、第四の実施態様においても、第一の実施態様と同様に、周期的に無線基地局装置eNB間の優先順位が切り替えられている。
【0055】
図8を参照して、第五の実施態様について説明する。図8は、第五の実施態様の説明図である。なお、第五の実施態様は、第一から第四の実施態様と比較して、隣接する無線基地局装置間でトラヒック種別により優先順位を設定する点において相違している。したがって、特に相違点についてのみ説明する。また、第五の実施態様においては、トラヒック種別により優先順位を設定するため、参照パタン選択部は、スケジューラ部を介して隣接する無線基地局装置からMIMO情報等を取得する必要がない。また、図8においては、各無線基地局装置が4送信アンテナの場合について説明するが、4送信アンテナ以上であってもよい。
【0056】
図8(a)に示すように、無線基地局装置eNB#1ではストリーミングビデオの配信処理、無線基地局装置eNB#2では音声通話処理、無線基地局装置eNB#3では大容量メールの送信処理が行われている。無線基地局装置eNB#1は、ストリーミングビデオの配信処理に高品質な通信路が求められることから一番高い優先度に設定される。無線基地局装置eNB#2は、音声通話処理の通信容量が少ないことから一番低い優先度に設定される。無線基地局装置eNB#3は、大容量メールの送信処理に常に高品質な通信路が不要なことから二番目に高い優先度に設定される。
【0057】
具体的には、無線基地局装置eNBの参照信号パタン選択部111が、スケジューラ部101から通知されるスケジューラ情報に含まれる自装置のトラヒック種別を取得する。また、参照信号パタン選択部111が、スケジューラ部101を介して取得された他の無線基地局装置eNBの無線基地局情報に含まれた他の無線基地局装置eNBのトラヒック種別を取得する。そして、参照信号パタン選択部111が、自装置及び隣接する他の無線基地局装置eNBのトラヒック種別に基づいて優先度を設定する。
【0058】
また、図8(b)に示すように、優先度の高い無線基地局装置eNBに1リソースブロックあたりの8つの参照信号が配置され、残りの無線基地局装置eNBに1リソースブロックあたりの4つの参照信号が配置される。例えば、時刻T1、時刻T2においては無線基地局装置eNB#1の優先度が一番高く、1リソースブロックに対し無線基地局装置eNB#1の参照信号割当数が8つ、無線基地局装置eNB#2、#3の参照信号割当数が4つに設定される。時刻T2からa[msec]後の時刻T3においては、メール容量が瞬間的に増加して、無線基地局装置eNB#3の優先度が一番高くなる。よって、時刻T3では、1リソースブロックに対し無線基地局装置eNB#3の参照信号割当数が8つ、無線基地局装置eNB#1、#2の参照信号割当数が4つに設定される。このように、大容量メールの送信処理等のように、一部のトラヒック種別が特定条件を満たすことで優先度を高くする設定としてもよい。
【0059】
このように、トラヒック種別に応じて無線基地局装置eNB間の優先順位が切り替えられることで、移動端末装置UEで受信する各無線基地局装置eNBからの参照信号の品質を一定に保つことが可能となる。また、無線基地局装置eNB間の優先順位が周期的に切り替えられる構成と比較して、高品質な通信路が求められるトラヒックに対するチャネル推定精度を高めることが可能となる。
【0060】
また、トラヒック種別ではなく、トラヒック量に応じて隣接する無線基地局装置eNB間で優先順位を切り替える構成としてもよい。例えば、無線基地局装置eNBのカバーするセルC内において移動端末装置UEが増加した場合に、その無線基地局装置eNBの優先順位を高めるようにする。さらに、トラヒック種別及びトラヒック量に応じて隣接する無線基地局装置eNB間で優先順位を切り替える構成とすることも可能である。
【0061】
また、第五の実施態様においては、トラヒック種別としてストリーミングビデオ、大容量メール、音声信号を例示して説明したが、この構成に限定されるものではない。例えば、ストリーミングビデオの種類等に応じて優先度を設定する構成としてもよい。
【0062】
図9を参照して、第六の実施態様について説明する。図9は、第六の実施態様の説明図である。なお、第六の実施態様は、第一から第四の実施態様と比較して、隣接する無線基地局装置間でMIMO処理により優先順位を設定する点において相違している。したがって、特に相違点についてのみ説明する。また、第六の実施態様においては、MIMO情報により優先順位を設定するため、参照パタン選択部は、スケジューラ部を介して隣接する無線基地局装置からトラヒック種別及びトラヒック量を取得する必要がない。また、図9においては、各無線基地局装置が4送信アンテナの場合について説明するが、4送信アンテナ以上であってもよい。
【0063】
図9(a)に示すように、無線基地局装置eNB#1ではMU−MIMO処理、無線基地局装置eNB#2ではOpen−Loop SU−MIMO処理、無線基地局装置eNB#3ではClosed−Loop SU−MIMO処理が行われている。この場合、MU−MIMO処理、Closed−Loop SU−MIMO処理、Open−Loop SU−MIMO処理の順に、高精度なチャネル推定が求められる。よって、無線基地局装置eNB#1に一番高い優先度が設定され、無線基地局装置eNB#3に二番目に高い優先度が設定され、無線基地局装置eNB#2に一番低い優先度が設定される。
【0064】
具体的には、無線基地局装置eNBの参照信号パタン選択部111が、スケジューラ部101から通知されるスケジューラ情報に含まれた自装置のMIMO情報を取得する。また、参照信号パタン選択部111が、スケジューラ部101を介して取得された他の無線基地局装置eNBの無線基地局情報に含まれる他の無線基地局装置eNBのMIMO情報を取得する。そして、参照信号パタン選択部111は、自装置及び隣接する他の無線基地局装置eNBのMIMO情報に基づいて優先度を設定する。
【0065】
また、図9(b)に示すように、優先度の高い無線基地局装置eNBに1リソースブロックあたりの8つの参照信号が配置され、残りの無線基地局装置eNBに1リソースブロックあたりの4つの参照信号が配置される。例えば、時刻T1、時刻T2においては無線基地局装置eNB#1の優先度が一番高く、1リソースブロックに対し、無線基地局装置eNB#1の参照信号割当数が8つ、無線基地局装置eNB#2、#3の参照信号割当数が4つに設定される。時刻T2からa[msec]後の時刻T3においては、無線基地局装置eNB#3のMIMO処理が無線基地局装置#1のMIMO処理よりも複雑な処理に切り替わって、無線基地局装置eNB#3の優先度が一番高くなる。よって、時刻T3では、1リソースブロックに対し、無線基地局装置eNB#3の参照信号割当数が8つ、無線基地局装置eNB#1、#2の参照信号割当数が4つに設定される。
【0066】
このように、MIMO処理に応じて無線基地局装置eNB間の優先順位が切り替えられることで、移動端末装置UEで受信する各無線基地局装置eNBからの参照信号の品質を一定に保つことが可能となる。また、周期的に無線基地局装置eNB間の優先順位が切り替えられる構成と比較して、複雑なMIMO処理を行う無線基地局装置eNBに対するチャネル推定精度を高めることが可能となる。
【0067】
また、MIMO処理は、上記したように、Intra−cell CoMP、MU−MIMO、Closed−Loop SU−MIMO、Open−Loop SU−MIMOの順に優先度が高く設定される。また、MIMO処理は、これらの処理に限定されるものではなく、複数のアンテナで信号を送受信するものであれば、どのような処理でもよい。
【0068】
次に、図10を参照して、移動端末装置による参照信号予測処理について説明する。図10は、移動端末装置による参照信号予測処理の説明図である。なお、参照信号予測処理を行わない場合、移動端末装置に参照信号予測部は不要である。また、図10においては、各無線基地局装置が4送信アンテナの場合について説明するが、4送信アンテナ以上であってもよい。
【0069】
図10(a)、(b)に示すように、優先度の高い無線基地局装置eNBに1リソースブロックあたりの8つの参照信号が配置され、残りの無線基地局装置eNBに1リソースブロックあたりの4つの参照信号が配置される。例えば、時刻T1においては無線基地局装置eNB#1の優先度が一番高く、時刻T2においては無線基地局装置eNB#2の優先度が一番高く、時刻T3においては無線基地局装置eNB#3の優先度が一番高く設定されている。すなわち、移動端末装置UEは、時刻T1に無線基地局装置eNB#1の1つの送信アンテナからの2つの参照信号を受信し、時刻T2、時刻T3に無線基地局装置eNB#1の1つの送信アンテナからの1つの参照信号を受信している。
【0070】
この場合、参照信号予測部208は、時刻T2、時刻T3におけるチャネル推定精度を高めるため、過去に受信した参照信号から時刻T2、時刻T3において不足する参照信号を予測する。ここで、送信アンテナ#1からの時刻Tnにおける1つ目の参照信号を#n1、2つ目の参照信号を#n2とする。参照信号予測部208は、時刻T2では、過去の参照信号RS#02、#12を含むサブキャリアの大きさから参照信号RS#22を線形予測する。また、参照信号予測部208は、時刻T3では、過去の参照信号RS#11、#21を含むサブキャリアの大きさから参照信号RS#31を線形予測する。このように、参照信号予測部208による参照信号の線形予測により、優先度の低い無線基地局装置eNBに対するチャネル推定精度が向上される。
【0071】
次に、図11を参照して、無線基地局装置による参照信号構成の通知処理について説明する。図11は、無線基地局装置による参照信号構成の通知処理の説明図である。なお、参照信号構成の通知処理を行わない場合、無線基地局装置の制御情報信号生成部は、参照信号構成を制御情報信号に追加する必要がない。
【0072】
図11に示すように、隣接する無線基地局装置eNB#1−#3は、同期しており、参照信号構成を共有している。そして、各無線基地局装置eNB#1−#3は、参照信号構成として、自装置の参照信号数及び割当パタンを移動端末装置UEにシグナリングにより通知する。この構成によって、移動端末装置UEに、参照信号の送信元の無線基地局装置eNB及び送信アンテナを認識させている。なお、参照信号構成は、PDCCH(Physical Downlink Control Chanel)や、PBCH(Physical Broadcast Channel)等の制御チャネルを用いて通知されてもよい。また、参照信号構成は、DCIフォーマットに埋め込まれて通知される構成としてもよい。
【0073】
次に、図12を参照して、無線通信システムにおける通信処理の流れについて説明する。図12は、無線通信システムにおける通信処理のシーケンス図である。なお、図12においては、説明の便宜上、無線基地局装置から移動端末装置に参照信号構成が通知されるものとする。
【0074】
図12に示すように、各無線基地局装置eNB#1−#3の参照信号パタン選択部111において、優先度に応じて参照信号構成が選択される(ステップS01)。このとき、各無線基地局装置eNB#1−#3は同期しており、各無線基地局装置eNB#1−#3間で参照信号構成が共有されている。次に、各無線基地局装置eNB#1−#3から移動端末装置UEにシグナリングにより参照信号構成、リソース割当情報等を含む制御情報信号が通知される(ステップS02)。
【0075】
次に、移動端末装置UEの制御情報信号復調部212において、制御情報信号から参照信号構成、リソース割当情報等が取り出される(ステップS03)。次に、各無線基地局装置eNB#1−#3から移動端末装置UEに参照信号及びデータ信号を含むOFDM信号が送信される(ステップS04)。次に、移動端末装置UEのデリソースマッピング部206において、制御情報信号復調部212から通知された参照信号構成及びリソース割当情報に基づき、OFDM信号から参照信号及びデータ信号がデマッピングされる(ステップS05)。データ信号は、復調部205、符号化部104、MAC多重部103を介して無線リンク制御部102に送られ、無線リンク制御部102において連接される。
【0076】
次に、移動端末装置UEのチャネル推定部201において、デリソースマッピング部206から通知された参照信号に基づいて、チャネル推定してチャネル品質情報を算出する(ステップS06)。次に、移動端末装置UEは、チャネル推定部201で算出したチャネル品質情報を上りリンクで無線基地局装置eNB#1−#3にフィードバックする(ステップS07)。
【0077】
以上のように、本実施の形態に係る無線通信システム1によれば、隣接する無線基地局装置eNB間で優先度が設定され、この無線基地局装置eNB間で共通に使用される参照信号用の無線リソースが優先度に応じて各無線基地局装置eNBに配分される。このため、隣接する無線基地局装置eNB間における、参照信号の割当数の合計を、無線基地局装置eNB間で共通に使用される無線リソースの制限内に収めて、隣接する無線基地局装置eNB間の直交化を図ることが可能となる。したがって、移動端末装置UEにおいて、干渉を抑えつつ、隣接する無線基地局装置eNB間で同時チャネル推定することができる。また、隣接する無線基地局装置eNB間で共通に使用される無線リソースの制限内で割当数に偏りをもたせることで、割当数の増加を抑えつつ、同時チャネル推定可能な無線基地局装置eNB数を増加させることが可能となる。
【0078】
なお、上記した実施の形態においては、隣接する無線基地局装置として、カバーエリアが接する複数の無線基地局装置を説明したが、この構成に限定されるものではない。隣接する無線基地局装置は、移動端末装置によるチャネル推定可能な範囲内の複数の無線基地局装置であればよい。
【0079】
また、上記した実施の形態においては、各無線基地局装置のそれぞれから移動端末装置に自装置の参照信号構成を通知する構成について説明したが、この構成に限定されるものではない。複数の無線基地局装置のいずれか一つから自装置及び他の無線基地局装置の参照信号構成を移動端末装置に通知する構成としてもよい。
【0080】
また、上記した実施の形態においては、参照信号予測部が過去に受信した2つの参照信号から、不足する参照信号を線形予測する構成としたが、この構成に限定されるものではない。参照信号予測部は、過去の複数の参照信号から、不足する参照信号を予測すればよく、例えば、3つ以上の参照信号を用いて予測してもよい。また、参照信号予測部は、線形予測により不足する参照信号を予測する構成としたが、不足する参照信号を予測可能であればどのように予測してもよく、例えば、統計的に予測してもよい。
【0081】
また、上記した実施の形態においては、無線基地局装置において、参照信号パタン選択部が、優先度の設定及び参照信号の割当数を決定(参照信号構成の選択)する構成としたが、この構成に限定されるものではない。無線基地局装置において、スケジューラ部が、優先度の設定及び参照信号の割当数を決定する構成としてもよい。
【0082】
また、上記した実施の形態においては、優先度が2番目、3番目の無線基地局装置の参照信号の割当数が同数の構成としたが、この構成に限定されるものではない。2番目、3番目の優先度の無線基地局装置の参照信号の割当数が異なる構成としてもよいし、優先度が1番高い無線基地局装置と2番目に高い無線基地局装置とで参照信号の割当数が同数であってもよい。
【0083】
また、上記した実施の形態においては、3つの無線基地局装置が相互に隣接する構成としたが、この構成に限定されるものではない。無線通信システムにおいて、複数の無線基地局装置が相互に隣接する構成であればよい。
【0084】
また、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であってこの実施の形態に制限されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施の形態のみの説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0085】
以上説明したように、本発明は、所定の推定精度を保ちつつ同時チャネル推定を可能とすると共に、参照信号用の割当無線リソース数の増加を抑えつつ、同時チャネル推定可能な無線基地局装置数を増加させることができるという効果を有し、特にチャネル推定用の参照信号を送信する無線通信システム、無線基地局装置および通信制御方法に有用である。
【符号の説明】
【0086】
1 無線通信システム
101 スケジューラ部
102 無線リンク制御部
103 MAC多重部
104 符号化部
105 変調部
106 リソースマッピング部(割当部)
107 OFDM送信部
108 参照信号生成部
109 拡散部
111 参照信号パタン選択部(優先度設定部、割当数決定部)
112 制御情報信号生成部
201 チャネル推定部
202 無線リンク制御部
203 MAC逆多重部
204 符号化部
205 復調部
206 デリソースマッピング部
207 OFDM受信部
208 参照信号予測部
209 逆拡散部
211 参照信号パタン選択部
212 制御情報信号復調部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の送信アンテナを有し、前記複数の送信アンテナ間で直交する参照信号を送信する複数の無線基地局装置と、前記複数の無線基地局装置から送信された前記参照信号に基づいてチャネル推定する移動端末装置とを備え、
前記複数の無線基地局装置は、
前記参照信号を生成する参照信号生成部と、
隣接する他の無線基地局装置との間の優先度を設定する優先度設定部と、
前記他の無線基地局装置との間で共通に使用される無線リソースから、前記優先度に応じて割り当てられる前記参照信号の割当無線リソース数を決定する割当数決定部と、
前記割当無線リソース数の前記参照信号を、前記他の無線基地局装置と直交するように割り当てる割当部とを有することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記優先度設定部は、周期的に前記複数の無線基地局装置間で前記優先度を変更して設定することを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記優先度設定部は、トラヒック種別又はトラヒック量に応じて前記複数の無線基地局装置間の前記優先度を設定することを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記複数の無線基地局装置は、前記複数の送信アンテナを用いてプリコーディング処理を行うプリコーディング部を有し、
前記優先度設定部は、前記プリコーディング処理の種類に応じて前記複数の無線基地局装置間の前記優先度を設定することを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記移動端末装置は、過去の参照信号を用いて参照信号を予測する参照信号予測部を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記複数の無線基地局装置は、前記割当数決定部で決定された前記参照信号の割当無線リソース数を含む参照信号構成を前記移動端末装置に送信することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項7】
前記割当部は、前記参照信号を異なる割当無線リソースに割り当てることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項8】
前記割当部は、拡散コードを用いて同一の割当無線リソースに複数の参照信号を割り当て可能なことを特徴とする請求項7に記載の無線通信システム。
【請求項9】
複数の送信アンテナと、
前記複数の送信アンテナ間で直交する参照信号を生成する参照信号生成部と、
隣接する他の無線基地局装置との間の優先度を設定する優先度設定部と、
前記他の無線基地局装置との間で共通に使用される無線リソースから、前記優先度に応じて割り当てられる前記参照信号の割当無線リソース数を決定する割当数決定部と、
前記割当無線リソース数の前記参照信号を、前記他の無線基地局装置と直交するように割り当てる割当部と、
前記複数の送信アンテナを用いて前記参照信号を前記移動端末装置に送信する送信部とを有し、
前記移動端末装置に前記参照信号に基づいてチャネル推定させることを特徴とする無線基地局装置。
【請求項10】
複数の送信アンテナを有し、前記複数の送信アンテナ間で直交する参照信号を送信する複数の無線基地局装置と、前記複数の無線基地局装置から送信された前記参照信号に基づいてチャネル推定する移動端末装置とを備えた無線通信システムの通信制御方法であって、
前記複数の無線基地局装置が、
前記参照信号を生成するステップと、
隣接する他の無線基地局装置との間の優先度を設定するステップと、
前記他の無線基地局装置との間で共通に使用される無線リソースから、前記優先度に応じて割り当てられる前記参照信号の割当無線リソース数を決定するステップと、
前記割当無線リソース数の前記参照信号を、前記他の無線基地局装置と直交するように割り当てるステップとを有することを特徴とする通信制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−166204(P2011−166204A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23094(P2010−23094)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】