説明

無線通信システム

【課題】同期信号に対する同期外れを防ぎつつ電池寿命の延長を図る。
【解決手段】従来では発振器6に使用される発振子(音叉型水晶振動子)のスペックに基づいて同期信号の周期を一律に8時間に設定していたため、必要以上に短い周期で同期信号が送信されることで親器TR1及び子器TRiの電池寿命が短出されてしまっていた。これに対して本実施形態では、発振器6に使用される発振子の実際の周波数偏差の値に基づいて、親器TR1の制御部1が同期信号の周期を調整しているので、同期信号に対する同期外れを防ぎつつ、同期信号の送信と時間ずれΔTの検出に伴う電力消費を抑えて電池寿命の延長を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の無線局からなる無線通信システムに関し、特に各無線局が電池を電源として動作する無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
我が国で使用する無線局については、占有周波数帯幅や隣接チャンネル漏洩電力などの使用電波の特性(RF特性)が電波法の規定を満たしていなくてはならない。また、電波法では使用目的ごとに異なる規格(通信規格)が規定されている。例えば、電波法第4条ただし書きにおいて免許を要しない無線局の一つとして規定される「小電力無線局」には、「コードレス電話の無線局」、「特定小電力無線局」、「小電力セキュリティシステム」、「小電力データ通信システムの無線局」などがあり、それぞれの無線局の無線設備について同法施行規則の設備規則によって規格が規定されている。
【0003】
従来、電池を電源として動作する複数の無線局からなる無線通信システムとして特許文献1に記載されているものがある。特許文献1に記載されている従来システムでは、各無線局が間欠的に受信回路を起動して所望の電波(他の無線局が送信した無線信号)を受信できるか否かをチェックし、当該電波が捉えられなければ直ちに受信回路を停止して待機状態に移行することで平均消費電力を大幅に低減している。
【0004】
しかしながら、上述のように間欠受信動作を行うと、本来受信しなければならない無線信号を受信するタイミングが受信回路の間欠受信間隔の分だけ遅延することになる。したがって、消費電力の低減を目的として単純に間欠受信間隔を伸ばすことはできない。
【0005】
そこで本出願人は、数時間乃至数十時間の周期で送信される同期信号を受信した各無線局が当該同期信号に同期して間欠受信間隔をカウントすることにより、何れかの無線局が送信した無線信号を他の無線局が受信できるまでの遅延時間を短くするようにした無線通信システムを既に提案している。
【0006】
ところで、従来システムにおける間欠受信間隔のカウントは、無線局が具備するマイクロコントローラが、当該マイクロコントローラに外付けされた発振器から入力するクロック信号をカウントすることによって行っている。かかる発振器には、通常、周波数偏差が数十ppm程度の音叉型水晶振動子(周波数は約32キロヘルツ)が用いられている。したがって、このように精度の低いクロック信号によって間欠受信間隔をカウントしていると、各無線局が長期間に亘って間欠受信間隔の同期を維持することが難しくなる。
【0007】
これに対して本出願人は、同期信号の受信タイミングとタイマがカウントする間欠受信間隔との時間ずれを検出するとともに検出した時間ずれを補正する処理を各無線局で実行することにより、発振回路の周波数偏差による時間ずれに起因した同期外れを防ぐようにした無線通信システムを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−176515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、同期信号を送信する間隔(周期)は、発振器に用いられる発振子(音叉型水晶振動子)の周波数偏差に基づいて決定される。例えば、周波数偏差の最大値がおよそ±50ppmであり、同期信号の信号幅が2.8秒であるとすれば、約7.8時間で同期外れが生じてしまう虞がある。したがって、発振子の個体差を考慮すれば、周波数偏差が最大値となる場合を想定して同期信号の周期を設定する必要がある。例えば、上記例であれば、同期信号の周期を約7.8時間よりも短い時間に設定しなければならない。
【0010】
しかしながら、実際に周波数偏差が最大値となる発振子の割合は非常に低いと考えられるため、通常は必要以上に高い頻度で同期信号が送信されているために無駄な電力消費が増えて電池の寿命が短くなってしまうという問題があった。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、その目的は、同期信号に対する同期外れを防ぎつつ電池寿命の延長を図ることができる無線通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために第1の発明は、複数の無線局からなり、これら複数の無線局間で電波を媒体とする無線信号を送受信する無線通信システムであって、前記各無線局は、無線信号を送受信する送受信手段と、一定の間欠受信間隔を繰り返しカウントするタイマ手段と、所定のイベントが発生したときに前記送受信手段を起動し、所定の送信期間に前記イベントに対応したメッセージを含む無線信号を送信させるとともに所定の休止期間に無線信号の送信を休止させる動作を交互に繰り返し且つ前記イベントが発生していないときには前記送受信手段を停止させ、さらに、前記タイマ手段による前記間欠受信間隔のカウント中は前記送受信手段を停止させ、前記タイマ手段による前記間欠受信間隔のカウントが完了する度に前記送受信手段を起動する送受信制御手段と、電池を電源として前記各手段の動作電源を供給する給電手段とを備え、前記タイマ手段は、発振器が発振する一定周期のクロック信号をカウントすることで前記間欠受信間隔をカウントしてなり、前記送受信制御手段は、前記送受信手段で同期信号を受信した場合に前記タイマ手段による前記間欠受信間隔のカウントを中止させるとともに、当該同期信号の終了時点から一定の待機時間が経過した時点で前記タイマ手段による前記間欠受信間隔のカウントを再開させ、さらに、前記イベントが発生した場合、前記タイマ手段による前記間欠受信間隔のカウントが完了する時点と重なる前記送信期間に前記送受信手段から無線信号を送信させ、前記送受信手段で前記同期信号を受信したときに当該同期信号の受信タイミングと前記タイマ手段がカウントする前記間欠受信間隔との時間ずれを検出する時間ずれ検出手段と、当該時間ずれ検出手段で検出される時間ずれを縮小するように前記タイマ手段のカウント動作を補正する補正手段とを前記各無線局に備え、前記複数の無線局のうちの特定の無線局の前記送受信制御手段は、前記間欠受信間隔よりも十分に長い周期で定期的に前記送受信手段から同期信号を送信させ、前記特定の無線局を除く他の無線局の前記送受信制御手段は、前記タイマ手段による前記間欠受信間隔の時間ずれに関する情報を含む無線信号を前記送受信手段より前記特定の無線局へ送信させ、前記特定の無線局の前記送受信制御手段は、前記他の無線局から送信される前記無線信号に含まれた前記時間ずれに関する情報に基づいて前記同期信号の周期を調整することを特徴とする。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、前記他の無線局の前記送受信制御手段は、前記時間ずれ検出手段の検出結果を前記時間ずれに関する情報とすることを特徴とする。
【0014】
第3の発明は、第2の発明において、前記時間ずれ検出手段は前記時間ずれの大きさをランク付けし、前記他の無線局の前記送受信制御手段は、前記ランクを前記時間ずれに関する情報とすることを特徴とする。
【0015】
第4の発明は、第1の発明において、前記他の無線局は、前記発振器が発振するクロック信号の周波数偏差の情報を記憶する記憶手段を備え、当該他の無線局の前記送受信制御手段は、前記記憶手段に記憶された前記周波数偏差の情報を前記時間ずれに関する情報とすることを特徴とする。
【0016】
第5の発明は、第4の発明において、前記記憶手段は、前記周波数偏差の大きさに応じた周波数偏差ランクを前記周波数偏差の情報として記憶することを特徴とする。
【0017】
第6の発明は、第4又は第5の発明において、前記他の無線局の前記送受信制御手段は、システムの運用開始前に前記時間ずれに関する情報を含む無線信号を前記送受信手段から前記特定の無線局へ送信させることを特徴とする。
【0018】
第7の発明は、第6の発明において、前記特定の無線局は、前記発振器が発振するクロック信号の周波数偏差の大きさに応じた周波数偏差ランクを記憶する記憶手段を備え、前記特定の無線局の前記送受信制御手段は、周波数偏差ランクが前記記憶手段に記憶されている自己の周波数偏差ランクと同じである無線局のみを前記他の無線局として無線信号を送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、同期信号に対する同期外れを防ぎつつ電池寿命の延長を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態1における火災警報器(親器及び子器)のブロック図である。
【図2】同上における無線信号のフレームフォーマットである。
【図3】同上の待機状態から火災連動状態へ遷移する動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】同上の連動鳴動状態から連動停止状態へ遷移する動作を説明するためのタイムチャートである。
【図5】同上の連動鳴動状態から連動停止状態へ遷移する動作を説明するためのタイムチャートである。
【図6】同上の火災連動状態から待機状態へ遷移する動作を説明するためのタイムチャートである。
【図7】同上の火災連動状態における動作を説明するためのタイムチャートである。
【図8】同上における時間ずれ検出手段の動作説明図である。
【図9】同上における時間ずれ検出手段の動作説明図である。
【図10】同上における時間ずれ検出手段の動作説明図である。
【図11】本発明の実施形態2における登録作業時の動作を説明するためのシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、火災を感知して警報音を鳴動するとともに電波を媒体とし且つ火災感知メッセージを含む無線信号を送信する火災警報器を無線局とした無線通信システム(火災警報システム)に本発明の技術思想を適用した実施形態について説明する。
【0022】
(実施形態1)
図1は本実施形態のシステム構成図であり、複数台(図示は2台のみ)の火災警報器TRで火災警報システムが構成されている。なお、以下の説明では、火災警報器TRを個別に示す場合は火災警報器TR1,TR2,…,TRnと表記し、総括して示す場合は火災警報器TRと表記する。
【0023】
火災警報器TRは、送受信制御手段である制御部1、送受信手段である無線送受信部2及びアンテナ3、一定周期のクロック信号を発振する発振器6、給電手段である電池電源部8、火災感知部4、警報部5、操作入力受付部7などを備えている。
【0024】
無線送受信部2は、電波法施行規則第6条第4項第3号に規定される「小電力セキュリティシステムの無線局」に準拠して電波を媒体とする無線信号を送受信するものであって、例えば、市販の小電力無線通信用LSIなどで構成される。
【0025】
火災感知部4は、例えば、火災に伴って発生する煙や熱、炎などを検出することで火災を感知するものである。ただし、このような火災感知部4の詳細な構成については、従来周知であるから詳細な説明は省略する。
【0026】
警報部5は、音(ブザー音や音声メッセージなど)による火災警報(以下、「警報音」と呼ぶ。)を報知(スピーカから鳴動)するものである。操作入力受付部7は1乃至複数のスイッチ(例えば、押釦スイッチ)を有し、スイッチが操作されることで各スイッチに対応した操作入力(操作信号)を制御部1に出力する。電池電源部7は乾電池等の電池を電源として各部に動作電源を供給する。
【0027】
制御部1はマイクロコントローラ(以下、マイコンと略す。)や書換可能な不揮発性の半導体メモリなどからなるメモリ部1aを主構成要素とする。制御部1では、火災感知部4で火災を感知したときに警報部5に警報音を鳴動させるとともに他の火災警報器TRに対して火災警報を報知させるための火災警報メッセージを含む無線信号を無線送受信部2より送信させる。また、制御部1は他の火災警報器TRから送信された無線信号を無線送受信部2で受信することにより火災警報メッセージを受け取ったときも警報部5を制御して警報音を鳴動させる。なお、各火災警報器TR1,TR2,…には固有の識別符号が割り当てられてメモリ部1aに格納されており、当該識別符号によって無線信号の宛先並びに送信元の火災警報器TR1,TR2,…が特定できる。
【0028】
発振器6は、音叉型水晶振動子を用いて制御部1を構成するマイコンの動作用クロック(クロック信号)を発振するものである。ただし、このような発振器6の回路構成は従来周知であるから詳細な説明は省略する。
【0029】
ここで、電波法施行規則の無線設備規則第49条の17「小電力セキュリティシステムの無線局の無線設備」では、無線信号を連続して送信してもよい期間(送信期間)が3秒以下、送信期間と送信期間の間に設けられた、無線信号を送信してはいけない期間(休止期間)が2秒以上とすることが規定されている(同条第5号参照)。このために本実施形態における制御部1では、上記無線設備規則に適合する送信期間に無線信号を送信させるとともに休止期間に送信を停止し且つ受信可能な状態としている。
【0030】
また制御部1は、電池電源部7の電池寿命をできるだけ長くするために従来技術で説明した間欠受信を行っている。つまり、制御部1はタイマ(タイマ手段)で所定の間欠受信間隔を繰り返しカウントするとともに間欠受信間隔のカウントが完了する毎に無線送受信部2を起動して所望の電波(他の火災警報器TRが送信した無線信号)が受信できるか否かをチェックする。そして、当該電波が捉えられなければ、制御部1は直ちに無線送受信部2を停止して待機状態に移行させることで平均消費電力を大幅に低減している。なお、電波の受信チェックは、無線送受信部2から出力される、受信信号強度の大小に比例した直流電圧信号である受信信号強度表示信号(RSSI信号)に基づいて制御部1が行っている。
【0031】
さらに特定の火災警報器TR1(以下、親器と呼ぶ。)の制御部1は、定期的(例えば、24時間毎)に無線送受信部2を起動し、他の火災警報器TR2,TR3,…(以下、子器と呼ぶ。)に対して定期監視メッセージ(応答要求メッセージ)を含む無線信号を送信させる。子器TRi(i=2,3,…)においては、制御部1が火災感知部4の故障の有無及び電池電源部7の電池切れの有無を一定周期で(例えば、1時間毎に)監視するとともに、その監視結果(故障の有無及び電池切れの有無)をメモリ部1aに記憶している。そして、親器TR1から定期監視メッセージを受け取ったときに、メモリ部1aに記憶している監視結果を通知するための通知メッセージ(応答メッセージ)を含む無線信号を親器TR1に返信する。親器TR1の制御部1は、通知メッセージを含む無線信号を送信した後、無線送受信部2を受信状態に切り換えて各子器TRiから送信される無線信号を受信する。そして親器TR1の制御部1は、定期監視メッセージの送信から所定時間内に通知メッセージを送信してこない子器TRiがある場合、あるいは通知メッセージの監視結果が故障有り又は電池切れである場合に警報部5が備えるブザーを駆動して報知音を鳴動させる。これにより、何れかの子器TRiに異常(通信不可や故障有り、電池切れなど)が発生したことを使用者に知らせることができる。なお、親器TR1及び子器TRiの制御部1は、故障若しくは電池切れが生じていると判断した場合、直ちに警報部5から異常発生を知らせるための警告音(ブザー音や音声メッセージなど)を鳴動させる。
【0032】
また親器TR1の制御部1は警報部5から警報音を鳴動させるとともに各子器TRiに火災警報メッセージを送信した後、若しくは何れかの子器TRiから火災警報メッセージを受信した後においては、無線送信部2に一定周期で同期ビーコンを送信させる。この同期ビーコンは、複数の火災警報器TR同士でTDMA(時分割多元接続)方式の無線通信(以下、「同期通信」と呼ぶ。)を行うために必要なタイムスロットを規定する信号である。つまり、同期ビーコンの1周期(サイクル)が複数のタイムスロットに分割され、全ての子器TRiにそれぞれ互いに異なるタイムスロットが1つずつ割り当てられる。そして、親器TR1から子器TRiへのメッセージは同期ビーコンに含めて送信され、子器TRiから親器TR1へのメッセージは、各子器TRiに割り当てられているタイムスロットに格納されて送信される。故に、複数台の火災警報器TR(親器TR1並びに子器TRi)から送信される無線信号の衝突を確実に回避することができる。なお、各火災警報器TRに対するタイムスロットの割当は固定であってもよいが、親器TR1から送信する同期ビーコンによってタイムスロットの割当情報を各子器TRiに通知しても構わない。
【0033】
図2は火災警報器TRが送受信する無線信号のフレームフォーマットを示しており、同期ビット(プリアンブル:PA)、フレーム同期パターン(ユニークワード:UW)、宛先アドレスDA、送信元アドレスSA、メッセージM、CRC符号で1フレームが構成されている。ここで、宛先アドレスDAとして各火災警報器TRの識別符号を設定すれば当該識別符号の火災警報器TRのみが無線信号を受信してメッセージを取得することになる。一方、宛先アドレスDAとして何れの火災警報器TRにも割り当てられていない特殊なビット列(例えば、すべてのビットを1としたビット列)を設定すれば、無線信号を同報(マルチキャスト)して全ての火災警報器TRにメッセージを取得させることができる。例えば、火災警報メッセージを含む無線信号が親器TR1から全ての子器TRiに同報される。
【0034】
次に、図3のタイムチャートを参照して、火災感知の前後における本実施形態の送受信動作を説明する。
【0035】
ここで、各火災警報器TRが動作を開始する(タイマが間欠受信間隔のカウントを開始する)タイミングは通常一致しないので、制御部1が無線送受信部2を起動して電波を受信するタイミング(図3における下向きの矢印参照)も不揃いとなる。これに対して本実施形態では、各火災警報器TRの無線送受信部2で同期信号が受信されると、制御部1がタイマによる間欠受信間隔Txのカウントを中止させるとともに同期信号の終了時点(t=t0)から一定の待機時間Twが経過した時点でタイマによる間欠受信間隔Txのカウントを再開させる。したがって、同期信号を受信した後は、各火災警報器TRにおいてタイマが間欠受信間隔Txのカウントを完了するタイミングが揃うことになる。なお、同期信号は、後述するように特定の火災警報器である親器TR1から送信する。
【0036】
例えば、子器TR2において火災感知部4が火災を感知すると、子器TR2の制御部1は警報部5より警報音を鳴動させるとともにタイマによる間欠受信間隔Txのカウント完了前に無線送受信部2を起動する。そして、子器TR2の制御部1は当該カウント完了時点を含む送信期間内に火災警報メッセージを含む無線信号を他の全ての火災警報器TR(親器TR1及び他の子器TR3,…)に宛てて送信する。この際、送信元の子器TR2の制御部1は、送信期間内で送信可能なフレーム数だけ無線信号を連続して送信し、送信期間後の休止期間(受信期間)には無線送受信部2を受信状態に切り換える。なお、各火災警報器TRにおいて間欠受信間隔Txのカウントが完了するタイミングが揃っているので、1回の送信期間で火災警報メッセージを含む無線信号を受信することができる。
【0037】
ここで、小電力無線を利用すれば、無線通信距離としては通常の住宅ひとつのエリア内であれば十分カバーできるので、火災元の子器TR2が、他の火災警報器TR(親器TR1及び他の子器TR3,…)に対しメッセージを送信することは通常は十分可能である。また、上述したように親器TR1は各子器TR2〜TR4に対して定期監視を行っており、親器TR1と各子器TR2〜TR4との間では通信パスの正常性が確認されている。しかしながら、子器TR2〜TR4間の通信パスは確認されていないため、例えば障害物などの影響によって、ある子器にはメッセージが届いていない可能性もある。
【0038】
そこで、火災警報メッセージを受信した親器TR1の制御部1は、送信元の子器TR2を除く他の子器TR3,TR4に対して火災警報メッセージを含む無線信号を、タイマによる間欠受信間隔Txのカウント完了時点を含む送信期間に送信する。他の子器TR3,TR4の制御部1では、子器TR2又は親器TR1から送信された火災警報メッセージを受け取ると直ちに警報部5より警報音を鳴動させるとともに無線送受信部2より火災警報メッセージの受信を確認する応答メッセージ(ACK)を無線信号によって返信する。なお、このように少なくとも1台の火災警報器TRで火災が感知されることで全ての火災警報器TRが火災警報を報知(警報音を鳴動)することを、以下では「火災連動」と呼ぶ。
【0039】
親器TR1の制御部1は、他の全ての子器TR3,TR4からACKを受け取れば、タイムスロットを規定するための同期ビーコンを一定の周期で無線送受信部2から送信させる。なお、本実施形態では先頭のタイムスロットTS1を子器TR2に、2番目のタイムスロットTS2を子器TR3に、3番目のタイムスロットTS3を子器TR4にそれぞれ割り当てている。
【0040】
ここで、親器TR1は各子器TR2〜TR4に対して定期監視を行っており、親器TR1と各子器TR2〜TR4との間では通信パスの正常性が確認されているが、子器TR2〜TR4間の通信パスは確認されていない。子器TRiが多数配置された場合、子器TRi間の通信パスの数は非常に多くなる為、子器TRi間の通信パスの正常性の確認を行うと電池消耗が激しくなる。したがって、上述のように特定の火災警報器TR1を親器とし、その他の火災警報器TRiを子器として親器TR1から各子器TRiに火災警報メッセージやその他のメッセージ(後述する)を通知することで相互に通信パスが確立できない子器が存在する場合でも確実に火災連動させることができる。
【0041】
また、全ての火災警報器TRが警報音を鳴動することにより連動が開始されると、上述のように親器TR1から一定周期で同期ビーコンが送信されてTDMA方式の同期通信に移行する。同期通信において、親器TR1の制御部1は同期ビーコンに含めることで火災警報メッセージを一定周期で全ての子器TRiに繰り返し送信している。そして、各子器TRiの制御部1では、親器TR1から送信される火災警報メッセージを受け取る度に警報部5の状態を確認し、仮に警報部5が停止していたとしたら警報部5に再度警報音を鳴動させる。したがって、全ての火災警報器TRで火災警報が報知され始めてからは特定の火災警報器(親器)TR1が送信する同期ビーコンによって規定される複数のタイムスロットに他の全ての火災警報器(子器)TRiを割り当てて時分割多元接続(TDMA)による無線通信を行うことで衝突を回避することができる。さらに、特定の火災警報器(親器)TR1から他の全ての火災警報器(子器)TRiに対して火災警報メッセージを同期ビーコンに含めて周期的に送信することで確実に火災警報を報知することができる。その結果、無線信号の衝突を回避しつつ複数の火災警報器TRを効果的に連動させることができる。
【0042】
上述のように本実施形態によれば、火災発生時には全ての火災警報器TRで火災警報が報知されるので、利用者が火災警報を知覚する(警報音を聞く)機会が増えるために安全性を向上することができる。
【0043】
ところで、本実施形態の火災警報システムは、待機状態、連動鳴動状態、連動停止状態の3つの動作状態を遷移する。待機状態とは、何れの火災警報器TRにおいても火災が検出されていない状態である。また連動鳴動状態とは、全ての火災警報器TRが警報音を鳴動している状態である。さらに連動停止状態とは、後述するように火災を検出している(火元の)火災警報器TRのみが警報音を鳴動し、火元以外の火災警報器TRが警報音を停止している状態である。すなわち、待機状態において少なくとも何れか1台の火災警報器TR(例えば、子器TR2)で火災が検出されると、上述したように火元の子器TR2並びに親器TR1から他の全ての子器TR3,…に火災警報メッセージが送信されることで親器TR1と子器TR2,…を含む全ての火災警報器TRで警報音が鳴動されて連動鳴動状態に遷移する。
【0044】
そして、連動鳴動状態において何れかの火災警報器TRの操作入力受付部7で警報音の鳴動を停止するための操作入力が受け付けられた場合、当該火災警報器TRが親器TR1であれば親器TR1から全ての子器TRiに対して警報音の停止を要求するメッセージ(警報停止メッセージ)を送信する。あるいは、当該火災警報器TRが子器TRiであれば当該子器TRiから警報停止メッセージを受け取った親器TR1が他の子器TRiに対して警報停止メッセージを送信する。そして、火元以外の火災警報器TRで警報停止メッセージを受け取ると警報部5の警報音を停止して連動停止状態に遷移する。ただし、火元の火災警報器TRの操作入力受付部7で警報音停止の操作入力が受け付けられた場合、当該火元の火災警報器TRにおいても警報音を停止する。ここで、親器TR1の制御部1はメモリ部1aに親器TR1並びに各子器TRi毎の火災検出状況を随時更新しながら保持しており、後述するように全ての火災警報器TRで火災が検出されなくなったときに火災連動状態から待機状態に遷移する。
【0045】
また、連動鳴動状態から連動停止状態に遷移した場合、親器TR1の制御部1では所定の警報音停止時間(例えば、5分間)の限時を開始する。そして、警報音停止時間が経過したのち、親器TR1の制御部1はメモリ部1aに保持している火災検出状況を参照し、全ての火災警報器TRで火災を検出していなければ、同期ビーコンによって復旧通知のメッセージを送信することで火災連動状態から待機状態に遷移する。一方、仮に少なくとも1台の火災警報器TRで火災を検出していれば、同期ビーコンによって火災警報メッセージを送信することで連動停止状態から連動鳴動状態へ遷移させる。なお、連動停止状態において何れかの火災警報器TRが新たに火災を検出した場合にも親器TR1の制御部1が同期ビーコンによって火災警報メッセージを送信することで連動停止状態から連動鳴動状態へ遷移させる。
【0046】
例えば、図4のタイムチャートに示すように、親器TR1を火元とする火災連動状態(連動鳴動状態)において、火元でない子器TR4の操作入力受付部7で警報音停止の操作入力が受け付けられることで当該子器TR4から警報停止メッセージが送信されると、警報停止メッセージを受け取った親器TR1の制御部1は同期ビーコンによって警報停止メッセージM2を送信しつつ警報音停止時間の限時を行う。ただし、火元である親器TR1では警報部5による警報音の鳴動は継続される。警報音停止時間が経過したのち、親器TR1の制御部1は自らの火災感知部4による火災検出状況並びに子器TRiにおける火災検出状況を確認する。そして、少なくとも何れか1台の火災警報器TRが火災を検出しているとき、親器TR1の制御部1は再度火災警報メッセージを同期ビーコンにより各子器TRiに送信することで連動停止状態から連動鳴動状態へ遷移させる。
【0047】
一方、図5のタイムチャートに示すように、警報音停止時間内に火災が鎮火して火災感知部4が火災を検出しなくなっていれば、親器TR1の制御部1は警報音停止時間が経過したのちに同期ビーコンによって各子器TRiに復旧通知メッセージを送信する。そして、全ての子器TRiから返信されるACKを受け取った時点で、親器TR1の制御部1は連動停止状態から待機状態に遷移し、同期ビーコンの送信を停止することでTDMA方式による無線通信から間欠送信・間欠受信による無線通信に戻る。
【0048】
また、図6のタイムチャートに示すように、子器TR4を火元とする連動鳴動状態において、火元の火災が鎮火して子器TR4の火災感知部4が火災を検出しなくなれば、子器TR4から親器TR1に宛てて復旧通知メッセージが送信される。当該復旧通知メッセージを受け取った親器TR1の制御部1はメモリ部1aに保持している火災検出状況を参照し、全ての火災警報器TRで火災を検出していなければ同期ビーコンによって復旧通知メッセージM3を各子器TRiに送信する。そして、全ての子器TRiから返信されるACKを親器TR1の制御部1が受け取れば、連動停止状態から待機状態に遷移し、同期ビーコンの送信を停止することでTDMA方式による無線通信から間欠送信・間欠受信による無線通信に戻る。
【0049】
一方、図7のタイムチャートに示すように、新たに別の火災警報器(例えば、子器TR3)で火災が検出された場合、初めの火元である子器TR4から復旧通知メッセージを受け取った親器TR1の制御部1は、メモリ部1aに保持している火災検出状況を参照する。このとき、親器TR1の制御部1は、子器TR3が火災検出中であることから復旧通知メッセージを送信せず、引き続き火災警報メッセージを送信することで火災連動状態を維持する。
【0050】
ここで、本実施形態では同期信号を受信することによって各火災警報器TRの制御部1が無線送受信部2を起動するタイミングが揃っている。しかも、火災を感知した火災警報器TRの制御部1が前記起動タイミングに合わせて無線信号を送信するので、一の火災警報器TRから送信される無線信号を他の全ての火災警報器TRがほぼ同時に受信することができる。その結果、間欠受信を行うことで消費電力を低減して電池の寿命を延ばしつつ何れかの火災警報器TRが送信した無線信号を他の火災警報器TRが受信できるまでの遅延時間を短くすることができる。
【0051】
また、複数の無線局(火災警報器TR)のうちの特定の無線局(親器TR1)の送受信制御手段(制御部1)が、タイマ手段による間欠受信間隔のカウントが一定回数完了する毎に送受信手段(無線送受信部2)から同期信号を送信すれば、同期信号を送信するための専用の送信機(送信局)などが不要でシステム構成が簡略化できるという利点がある。
【0052】
なお、本実施形態では特定の無線局(親器TR1)が他の無線局(子器TRi)に対して定期監視メッセージを含む無線信号を一定周期で送信しているので、定期監視メッセージを含む無線信号を同期信号に兼用しても構わない。
【0053】
ところで間欠受信間隔の計時は、制御部1を構成するマイコンが動作用クロック(発振器6が発振するクロック信号。以下同じ。)をカウントすることで行われている。この発振器6に用いられている音叉型水晶振動子の振動周波数(=発振器6の発振周波数)は、一般に32.768kHzであるから、例えば、間欠受信間隔が10秒の場合、制御部1では動作用クロックを327680(=32.768kHz×10s)カウントする毎に間欠受信を行う。しかしながら、音叉型水晶振動子の周波数安定度(周波数偏差)はおよそ数十ppmであり、しかも、個体差がある。故に、周波数偏差の大きい音叉型水晶振動子が発振器6に用いられている場合、長期間の使用によって間欠受信間隔の時間ずれが徐々に増加し、親器TR1と子器TRiとの間で同期信号による間欠受信間隔の同期が取れなくなる(同期外れが生じる)虞がある。
【0054】
そこで本実施形態では、無線送受信部2で同期信号を受信したときに当該同期信号の受信タイミングとタイマでカウントする間欠受信間隔との時間ずれを検出する時間ずれ検出手段と、時間ずれ検出手段で検出される時間ずれを縮小するようにタイマのカウント動作を補正する補正手段とを子器TRiに備えている。但し、時間ずれ検出手段及び補正手段は何れも制御部1のマイコンに専用のプログラムを実行させることで実現される。
【0055】
図8に示すように、同期信号がプリアンブルとユニークワード(UW)からなるフレーム構成である場合、時間ずれ検出手段たる制御部1では、同期信号のプリアンブルを受信した時点t0からユニークワードの受信完了時点t1までの時間(検出時間)を計測する。例えば、同期信号の時間幅をT(秒)とし、同期信号の中間値(=T/2)を時間ずれ検出の基準点とすれば、時間ずれΔTはΔT=検出時間−T/2として計算することができる(図8参照)。
【0056】
あるいは、同期信号のフレーム構成が、図9に示すようにビット同期用のプリアンブル並びにフレーム同期用のユニークワードからなるヘッダHDと、先頭から順に番号(連送番号)が割り当てられたデータフィールドとの対からなる複数の同期フレームが連送されるフレーム構成とした場合、時間ずれ検出手段たる制御部1では、間欠受信において最初に受信したデータフィールドの連送番号i(i=1,2,…,n)に基づいて時間ずれを検出する。例えば、データフィールドに割り当てられた連送番号iがn/2の同期フレームを基準としたとき、最初に受信した同期フレームの連送番号iがi=2であったとすると、時間ずれΔTはΔT=T×(n/2−2)として計算することができる。
【0057】
あるいは、上述した連送番号iの代わりに、図10に示すように同期信号の中間値を基準点とする時間ずれの値(0ppm,±1ppm,…,±10ppm)をデータフィールドに格納すれば、時間ずれ検出手段たる制御部1では、間欠受信において最初に受信したデータフィールドのデータ(0ppm,±1ppm,…,±10ppm)から時間ずれΔTを検出することができる。
【0058】
次に、補正手段たる制御部1の補正処理について説明する。制御部1は、上述した方法等で検出した時間ずれΔTを、ΔTの大きさに応じてタイマのカウント動作を微調整することで補正する。すなわち、間欠受信間隔Txをカウントするタイマのカウント値を正規の値よりも増減させることで、間欠受信間隔Txを変化させることができるので、制御部1がタイマのカウント値を増減させることにより時間ずれΔTを補正することができる。ここで、上述したように音叉型水晶発振子は通常、32.768kHzで発振しており、例えば、間欠受信間隔Txが5秒の場合、163840(=32.768kHz×5)のカウント毎に間欠受信を行うため、1カウント分だけ増減させたときの変化量はおよそ±6ppm(≒1÷163840)相当になり、これが補正可能な最小単位となる。したがって、検出された時間ずれΔTが前記最小値よりも小さい値であると補正ができないので、この場合、制御部1では、例えば、10分に1回の割合でカウント値の増減を実行することで時間ずれΔTを補正する。なお、同期信号の受信が可能な時間(同期信号の時間幅Tの半分よりも僅かに小さい値)を上限値として、累積された時間ずれが前記上限値を超える直前にカウント値の増減を行うようにしても構わない。
【0059】
さらに本実施形態では、各子器TRiから親器TR1に対して間欠受信間隔の時間ずれに関する情報(制御部1で検出した時間ずれΔT)を含む無線信号が送信され、当該無線信号を受信した親器TR1の制御部1が時間ずれΔTの値に基づいて同期信号の周期を調整している。具体的には、下記表1のように時間ずれΔTの大きさ(値)を5段階にランク付けし、時間ずれΔTの値が大きいランク(数字の大きいランク)ほど同期信号の周期を短く設定している。なお、下記表1の対応関係はデータテーブルとして親器TR1のメモリ部1aに記憶されている。
【0060】
【表1】

【0061】
親器TR1の制御部1では同期信号の送信後に無線送受信部2を受信状態として各子器TRiから返信される時間ずれΔTの情報を取得し、それぞれの子器TRiから取得した時間ずれΔTのうちで最も値が大きいランクに対応した周期を次回の同期信号の周期に設定する。例えば、何れかの子器TRiの時間ずれΔTが600msecでその他の子器TRiの時間ずれΔTが400msec未満であった場合、親器TR1の制御部1は、時間ずれΔT=600msecのランク2に対応する20時間を同期信号の周期に設定する。
【0062】
而して、従来では発振器6に使用される発振子(音叉型水晶振動子)のスペックに基づいて同期信号の周期を一律に8時間に設定していたため、必要以上に短い周期で同期信号が送信されることで親器TR1及び子器TRiの電池寿命が短出されてしまっていた。これに対して本実施形態では、発振器6に使用される発振子の実際の周波数偏差の値に基づいて、親器TR1の制御部1が同期信号の周期を調整しているので、同期信号に対する同期外れを防ぎつつ、同期信号の送信と時間ずれΔTの検出に伴う電力消費を抑えて電池寿命の延長を図ることができる。なお、子器TRiから親器TR1に対して時間ずれΔTの値を送信する代わりに、上記表1におけるランク(1〜5の数字)を送信しても構わない。ただし、その場合には各子器TRiのメモリ部1aに上記表1におけるランクと同期信号の周期との対応関係を記憶しておく必要がある。
【0063】
(実施形態2)
本実施形態のシステム構成並びに無線局たる火災警報器TRの構成は実施形態1と共通であるから、共通の構成要素には同一の符号を付して図示並びに説明を省略する。
【0064】
本実施形態は、火災警報器TRの製造者がその検査工程において各火災警報器TRの発振器6の周波数偏差を測定し、その測定値を時間ずれに関する情報としてメモリ部1aに記憶させている。なお、検査工程においては、周波数偏差が数ppm以下というような高精度の水晶振動子(例えば、ATカット水晶振動子)を用いた測定器によって発振器6の周波数偏差を測定することができる。
【0065】
そして、システムの運用開始前に親器TR1と子器TRiとが互いの識別符号を登録する作業(登録作業)において、各子器TRiから親器TR1へ時間ずれの情報(周波数偏差の測定値)を通知し、各子器TRiから無線信号で取得する前記測定値に基づいて、親器TR1の制御部1が同期信号の周期を調整する。
【0066】
前記登録作業は、親器TR1と子器TRiのそれぞれで登録作業の操作入力が操作入力受付部7で受け付けられることによって開始される。以下、図11のシーケンス図を参照しながら登録作業について説明する。
【0067】
子器TRiの制御部1は、登録作業の操作入力が操作入力受付部7で受け付けられると、登録モードに移行して登録要求メッセージとメモリ部1aに記憶している時間ずれに関する情報(後述する周波数偏差ランク)を含む無線信号を無線送受信部2から送信(マルチキャスト)させる。親器TR1の制御部1は、登録作業の操作入力が操作入力受付部7で受け付けられると無線送受信部2を受信状態とする。そして、親器TR1の制御部1は、子器TRiから送信された無線信号を無線送受信部2で受信すると、当該無線信号の送信元アドレス(子器TRiの識別符号)と無線信号に含まれていた時間ずれに関する情報を相互に関連付けてメモリ部1aに記憶するとともに、登録命令を含む無線信号を無線送受信部2から当該子器TRi宛てに送信させる。
【0068】
子器TRiの制御部1は、親器TR1から送信された無線信号を無線送受信部2で受信すると、登録命令メッセージを含む無線信号の送信元アドレス(親器TR1の識別符号)をメモリ部1aに記憶し、ACKを含む無線信号を無線送受信部2から親器TR1宛てに返信させた後に登録モードを終了する。親器TR1の制御部1は、子器TRiから送信されたACKを含む無線信号を無線送受信部2で受信すれば登録モードを終了する。
【0069】
ここで、親器TR1のメモリ部1aには、5段階にランク付けされた周波数偏差の測定値と、各ランク(周波数偏差ランク)に応じた同期信号の周期との対応関係を示すデータテーブル(下記表2参照)が記憶されている。
【0070】
【表2】

【0071】
親器TR1の制御部1は、メモリ部1aに記憶されているデータテーブルを参照し、それぞれの子器TRiから取得した周波数偏差の測定値のうちで最も値が大きいランクに対応した周期を次回の同期信号の周期に設定する。例えば、何れかの子器TRiの周波数偏差の測定値が13ppmでその他の子器TRiの周波数偏差の測定値が5ppm未満であった場合、親器TR1の制御部1は、周波数偏差が±10ppm〜15ppmの周波数偏差ランク3に対応する16時間を同期信号の周期に設定する。
【0072】
而して、本実施形態においても発振器6に使用される発振子の実際の周波数偏差の値に基づいて、親器TR1の制御部1が同期信号の周期を調整しているので、同期信号に対する同期外れを防ぎつつ、同期信号の送信と時間ずれΔTの検出に伴う電力消費を抑えて電池寿命の延長を図ることができる。なお、子器TRiから親器TR1に対して周波数偏差の測定値を送信する代わりに、上記表2における周波数偏差ランク(1〜5の数字)を送信しても構わない。ただし、その場合には各子器TRiのメモリ部1aに上記表2における周波数偏差ランクと同期信号の周期との対応関係を記憶しておく必要がある。
【0073】
ここで、親器TR1の周波数偏差と子器TRiの周波数偏差とが大きく異なっている場合、例えば、それぞれの周波数偏差ランクが一致しない場合においては、同期信号の周期が必要以上に短く設定されてしまう虞があるので、これらの親器TR1と子器TRiとでシステムを構成することは好ましくない。
【0074】
そこで、親器TR1の制御部1において、登録作業の際に子器TRiから取得する周波数偏差ランクがメモリ部1aに記憶している自己のランクと一致する場合に当該子器TRiに対して登録命令のメッセージを含む無線信号を送信し、一致しない場合には登録不可のメッセージを含む無線信号を送信して当該子器TRiの登録を拒否する。これにより、周波数偏差ランクが一致しない親器TR1と子器TRiが同一のシステム内に混在することがなくなり、システム全体で電力消費を抑えて電池寿命の延長を図ることができる。
【符号の説明】
【0075】
TR1 火災警報器(親器)
TR2 火災警報器(子器)
1 制御部(送受信制御手段,タイマ手段,時間ずれ検出手段,補正手段)
2 無線送受信部(送受信手段)
6 発振器
7 電池電源部(給電手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線局からなり、これら複数の無線局間で電波を媒体とする無線信号を送受信する無線通信システムであって、
前記各無線局は、無線信号を送受信する送受信手段と、一定の間欠受信間隔を繰り返しカウントするタイマ手段と、所定のイベントが発生したときに前記送受信手段を起動し、所定の送信期間に前記イベントに対応したメッセージを含む無線信号を送信させるとともに所定の休止期間に無線信号の送信を休止させる動作を交互に繰り返し且つ前記イベントが発生していないときには前記送受信手段を停止させ、さらに、前記タイマ手段による前記間欠受信間隔のカウント中は前記送受信手段を停止させ、前記タイマ手段による前記間欠受信間隔のカウントが完了する度に前記送受信手段を起動する送受信制御手段と、電池を電源として前記各手段の動作電源を供給する給電手段とを備え、
前記タイマ手段は、発振器が発振する一定周期のクロック信号をカウントすることで前記間欠受信間隔をカウントしてなり、
前記送受信制御手段は、前記送受信手段で同期信号を受信した場合に前記タイマ手段による前記間欠受信間隔のカウントを中止させるとともに、当該同期信号の終了時点から一定の待機時間が経過した時点で前記タイマ手段による前記間欠受信間隔のカウントを再開させ、さらに、前記イベントが発生した場合、前記タイマ手段による前記間欠受信間隔のカウントが完了する時点と重なる前記送信期間に前記送受信手段から無線信号を送信させ、
前記送受信手段で前記同期信号を受信したときに当該同期信号の受信タイミングと前記タイマ手段がカウントする前記間欠受信間隔との時間ずれを検出する時間ずれ検出手段と、当該時間ずれ検出手段で検出される時間ずれを縮小するように前記タイマ手段のカウント動作を補正する補正手段とを前記各無線局に備え、
前記複数の無線局のうちの特定の無線局の前記送受信制御手段は、前記間欠受信間隔よりも十分に長い周期で定期的に前記送受信手段から同期信号を送信させ、
前記特定の無線局を除く他の無線局の前記送受信制御手段は、前記タイマ手段による前記間欠受信間隔の時間ずれに関する情報を含む無線信号を前記送受信手段より前記特定の無線局へ送信させ、
前記特定の無線局の前記送受信制御手段は、前記他の無線局から送信される前記無線信号に含まれた前記時間ずれに関する情報に基づいて前記同期信号の周期を調整することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記他の無線局の前記送受信制御手段は、前記時間ずれ検出手段の検出結果を前記時間ずれに関する情報とすることを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記時間ずれ検出手段は前記時間ずれの大きさをランク付けし、前記他の無線局の前記送受信制御手段は、前記ランクを前記時間ずれに関する情報とすることを特徴とする請求項2記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記他の無線局は、前記発振器が発振するクロック信号の周波数偏差の情報を記憶する記憶手段を備え、当該他の無線局の前記送受信制御手段は、前記記憶手段に記憶された前記周波数偏差の情報を前記時間ずれに関する情報とすることを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記記憶手段は、前記周波数偏差の大きさに応じた周波数偏差ランクを前記周波数偏差の情報として記憶することを特徴とする請求項4記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記他の無線局の前記送受信制御手段は、システムの運用開始前に前記時間ずれに関する情報を含む無線信号を前記送受信手段から前記特定の無線局へ送信させることを特徴とする請求項4又は5記載の無線通信システム。
【請求項7】
前記特定の無線局は、前記発振器が発振するクロック信号の周波数偏差の大きさに応じた周波数偏差ランクを記憶する記憶手段を備え、
前記特定の無線局の前記送受信制御手段は、周波数偏差ランクが前記記憶手段に記憶されている自己の周波数偏差ランクと同じである無線局のみを前記他の無線局として無線信号を送信することを特徴とする請求項6記載の無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−205591(P2011−205591A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73565(P2010−73565)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】