無線通信装置、受信装置、送信装置および通信制御プログラム
【課題】 無線ネットワークを利用してコンテンツを転送する場合にコンテンツの転送範囲を確実に制限してコンテンツの著作権保護を図る。
【解決手段】 無線ネットワーク3を介して近距離無線通信を行う送信装置1と受信装置2が設けられる。著作権保護が必要なコンテンツをBluetoothの無線ネットワーク3を介して送受する場合に、コンテンツの転送範囲を制限する目的でRTT計測を開始する前に、Bluetoothのパラメータを変更してRTT計測が正しく行えるようにするため、物理的に制限された範囲内(例えば宅内)のみに制限してコンテンツの転送を行うことができる。したがって、Bluetoothの無線ネットワーク3を利用する場合であっても、コンテンツの著作権保護を図ることができる。
【解決手段】 無線ネットワーク3を介して近距離無線通信を行う送信装置1と受信装置2が設けられる。著作権保護が必要なコンテンツをBluetoothの無線ネットワーク3を介して送受する場合に、コンテンツの転送範囲を制限する目的でRTT計測を開始する前に、Bluetoothのパラメータを変更してRTT計測が正しく行えるようにするため、物理的に制限された範囲内(例えば宅内)のみに制限してコンテンツの転送を行うことができる。したがって、Bluetoothの無線ネットワーク3を利用する場合であっても、コンテンツの著作権保護を図ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、著作権保護が必要なコンテンツを無線ネットワークを介して通信する無線通信装置、受信装置、送信装置および通信制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル情報家電と呼ばれる商品が増えつつある。これら商品は、インターネットコンテンツ配信の開始などに伴ってよりいっそうの普及が見込まれている。デジタル情報家電の範疇には、モバイルオーディオプレーヤやデジタル放送対応テレビ、セットトップボックス、ハードディスクレコーダなどのデジタルデータやデジタルコンテンツを扱う種々の商品が含まれる。
【0003】
これら商品の普及に伴って考慮すべき問題の一つはコンテンツの著作権保護である。デジタルデータは、複製時に品質劣化が起きないなどの利点がある一方で、不正コピーが容易で著作権の保護が不十分になるなどの欠点がある。
【0004】
このため、例えば、デジタルAV機器同士をつなぐデジタルネットワークであるIEEE1394には、認証・鍵交換機能やデータの暗号化の機能が設けられている。
【0005】
ここで、ある送信装置から著作権保護が必要なAVデータを受信装置に伝送する場合を想定する。この場合、注意すべきことは、個人(あるいは、拡大解釈して家族)の楽しむ範囲内でAVデータをやり取りするのが著作権保護の前提であり、他人間間でのAVデータの送受信は、コンテンツプロバイダの許諾等が伴わない限り、行うべきではないという点である。
【0006】
ネットワーク上で著作権保護を図る仕組みとして、DTCP(Digital Transmission Content Protection)が知られている。DTCPは、IEEE1394やUSB、IPなどでデファクトスタンダードになっている著作権保護方式である。DTCPでは、著作権保護が必要なAVデータなどのコンテンツに対して、送信装置と受信装置との間で認証・鍵交換処理を行い、AVデータを暗号化して伝送する(非特許文献1参照)。
【0007】
一般に、伝送系で著作権保護を図るには、以下の処理手順でAVデータを伝送する。まず、送信装置と受信装置との間で、AVデータを送受信するためのコマンドを発行する。例えば、AV制御コマンドの一つである再生コマンドを、受信装置が送信装置に対して発行する。
【0008】
次に、AVデータに対して著作権保護のための暗号化を施した上で、送信装置から受信装置に対してAVデータの転送を始める。これに前後して、送信装置と受信装置との間で、著作権保護のための認証・鍵交換処理を行う。
【0009】
認証・鍵交換処理に成功すると、送信装置と受信装置との間でAVデータの暗号鍵を共有できるようになるか、あるいは送信装置と受信装置が暗号鍵を計算できるようになる。受信装置は受信した暗号化AVデータの復号及び再生を行う。
【0010】
このDTCPの仕組みは、近距離無線規格であるBluetoothでも「DTCP over Bluetooth」として規格化されており、Bluetooth上で著作権保護が必要なAVデータを転送しなければならない場合等に適用することが可能である。
【非特許文献1】http://www.dtla.com
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、最近のインターネットの発展は、新たな問題を生じさせている。即ち、インターネットでは、任意のデータを任意の距離が離れたユーザ間で自由に送受することができる。これにより、例えば、日本と米国間のデータ転送も極めて低コストにかつ容易に実現することができる。
【0012】
著作権保護が必要なAVデータについては、パケットごとに暗号化することが可能であるが、その暗号化されたパケットをインターネットパケットにカプセル化してインターネット上に送信することも技術的には可能である。したがって、例えば、近距離しか通信できないBluetooth機器で送信したAVデータのパケットをインターネットパケットにカプセル化して遠方まで送信してしまうおそれがある。この場合、インターネットパケットを受信した受信装置と送信側のBluetooth機器がともにDTCP機能をサポートしていれば、両者間で認証・鍵交換処理が成立してAVデータを記録・再生できてしまう。
【0013】
インターネットプロトコル(IP)を利用した著作権保護の仕組みであるDTCP over IPでは、宅内制限を達成するための技術としてRTT(Round Trip Time、ラウンドトリップ時間)を導入している。即ち、著作権保護のための認証・鍵交換処理の前後、あるいは認証・鍵交換処理の途中で特定パケットを送信端末から受信端末に送信し、その特定パケットを受信端末から送信端末に転送し直して送信端末で受信されるまでの時間(RTT)を計測する。このとき、特定パケットを受信した受信端末は、その特定パケットをそのまま転送してもよいし、何らかの新たなデータを埋め込んでもよい。すなわち、送信端末が、自分が送信したパケットと受信するパケットの関係を認識できれば、形式は何でも良い。送信端末はRTTを実測し、この値が一定の値以下であれば、受信端末は近接に位置する(宅内に位置する)とみなすことができ、上述した遠距離間でのAVデータの伝送を未然に防止することができる。
【0014】
このような著作権保護の仕組みは、Bluetooth上でコンテンツを転送する場合にも必須であるが、本来的にBluetoothは近距離での通信しか想定していないこともあり、遠距離間での通信を防止する有効な仕組みは確立されていない。
【0015】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、その目的は、無線ネットワークを利用してコンテンツを転送する場合にコンテンツの転送範囲を確実に制限してコンテンツの著作権保護を図ることができる無線通信装置、受信装置、送信装置および通信制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一態様によれば、著作権保護が必要なコンテンツを通信可能な無線ネットワークに接続されるネットワークインタフェース手段と、著作権保護が必要なコンテンツを暗号化または復号化する暗号処理手段と、他の通信装置に対して所定のパケットを送信した後、該パケットが前記他の通信装置から送り返されて受信されるまでのラウンドトリップ時間を計測するRTT計測手段と、前記RTT計測手段にて計測されたラウンドトリップ時間が所定時間以内の場合に、著作権保護が必要なコンテンツの送信または受信を許可する通信許可判断手段と、前記RTT計測手段による計測を行う前後で、前記無線ネットワークのパラメータを変更するパラメータ変更手段と、を備えることを特徴とする無線通信装置が提供される。
【0017】
また、本発明の一態様によれば、著作権保護が必要なコンテンツを送信可能な無線ネットワークに接続されるネットワークインタフェース手段と、著作権保護が必要なコンテンツを暗号化する暗号処理手段と、受信装置に対して所定のパケットを送信した後、該パケットが前記受信装置から送り返されて受信されるまでのラウンドトリップ時間を計測するRTT計測手段と、前記RTT計測手段にて計測されたラウンドトリップ時間が所定時間以内の場合に、著作権保護が必要なコンテンツの送信を許可する通信許可判断手段と、前記RTT計測手段による計測を行う前後で、前記無線ネットワークのパラメータを変更するパラメータ変更手段と、を備えることを特徴とする送信装置が提供される。
【0018】
また、本発明の一態様によれば、著作権保護が必要なコンテンツを受信可能な無線ネットワークに接続されるネットワークインタフェース手段と、著作権保護が必要なコンテンツを復号化する暗号処理手段と、送信装置に対して所定のパケットを送信した後、該パケットが前記送信装置から送り返されて受信されるまでのラウンドトリップ時間を計測するRTT計測手段と、前記RTT計測手段にて計測されたラウンドトリップ時間が所定時間以内の場合に、著作権保護が必要なコンテンツの受信を許可する通信許可判断手段と、前記RTT計測手段による計測を行う前後で、前記無線ネットワークのパラメータを変更するパラメータ変更手段と、を備えることを特徴とする受信装置が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、無線ネットワークを利用してコンテンツを転送する場合にコンテンツの転送範囲を確実に制限でき、コンテンツの著作権保護を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
【0021】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係る送信装置と受信装置との接続関係を示す図である。図示のように、送信装置1と受信装置2はBluetoothの規格に従って無線ネットワーク3を介して近距離無線通信を行う。
【0022】
送信装置1と受信装置2には、Bluetooth AVプロファイルと著作権保護の仕組みであるDTCP over Bluetoothとが実装されている。ここで、Bluetooth AVプロファイルとは、Bluetooth上で音声や映像を転送したり、あるいはコマンド制御を行うための規約である。DTCP over Bluetoothには、宅内制限を実現するためのRTT計測の仕組みが予め実装されている。
【0023】
図2は図1の送信装置1の内部構成の一例を示すブロック図であり、図3は図1の受信装置2の内部構成の一例を示すブロック図である。図2の送信装置1は、DTCPデバイスID登録部10と、DTCP認証・鍵交換処理部11と、コンテンツ処理部12と、暗号処理部13と、パケット処理部14と、通信処理部15と、Bluetoothインターフェース部16とを備えている。図3の受信装置2は、DTCPデバイスID登録部20と、DTCP認証・鍵交換処理部21と、コンテンツ供給部22と、暗号処理部23と、パケット処理部24と、通信処理部25と、Bluetoothインターフェース部26とを備えている。
【0024】
DTCPデバイスID登録部10,20は、自己の機器証明書(Certificate)に含まれるDTCP認証機関が提供する独自のIDであるDTCPデバイスID、あるいはBluetoothアドレスや通信相手のBluetoothアドレスなどの相手装置を表すIDを記録する。DTCP認証・鍵交換処理部11,21は、通信相手先の通信装置(以下、通信相手装置)との間で認証・鍵交換処理を行う。DTCP認証・鍵交換処理部11,21にはそれぞれ、ラウンドトリップ時間(RTT)の測定を行うRTT計測部17,27が設けられている。
【0025】
コンテンツ処理部12は、受信データからコンテンツを抽出する処理を行う。コンテンツ供給部22は、送信すべきコンテンツを取得して暗号処理部13に供給する処理を行う。暗号処理部13,23は、パケットの暗号化または復号化処理を行う。パケット処理部14,24は、パケットの生成または分解処理などを行う。通信処理部15,25は、送受信されるパケットの変復調処理、エラー訂正処理およびベースバンド処理などを行う。Bluetoothインターフェース部16,26は、Bluetoothの各種パラメータを設定して、通信データを無線ネットワーク3に送り出したり、その逆に無線ネットワーク3からパケットを受信する。
【0026】
図4はRTT計測部17,27が行うRTT計測処理の詳細手順の概略を示すシーケンス図である。以下では、送信装置1が受信装置2のRTT計測処理を実施する例について説明するが、その逆に、受信装置2が送信装置1のRTT計測処理を実施してもよい。その場合は、RTT計測が成功した場合に、受信装置2が送信装置1に対して計測成功を通知する。
【0027】
まず、受信装置2との間で認証・鍵交換処理のためのコマンドを互いに送受する(ステップS1)。次に、認証・鍵交換処理の前準備を行う(ステップS2)。ここでは、機器証明書と乱数を互いに送受し、互いの機器証明書を検証する。この機器証明書には、その機器がRTT計測機能を持っているかどうかの記述がなされている。したがって、受信装置2から送られた機器証明書を参照することで、その受信装置2がRTT計測機能を持っているか否かを把握することができる。
【0028】
受信装置2がRTT計測機能を持っている場合には、RTT計測を行うことになるが、すでに受信装置2が送信装置1内のDTCPデバイスID登録部10に登録されている場合には、RTTは既に計測済みであると判断してRTT計測を省略する。
【0029】
ステップS2の処理が終了すると、次に認証・鍵交換処理で鍵を生成するために用いるパラメータ(DTCPでは、楕円曲線を用いたDiffie-Hellman第1 phaseの値)の交換を行う(ステップS3)。次に、RTT計測の前準備処理を行う(ステップS4)。ここでは、RTT計測の準備が整ったことを示すRTT_READYコマンドを互いに交換する。
【0030】
次に、送信装置1はRTT計測を開始することを知らせるRTT_SETUPコマンドを受信装置2に送信し、受信装置2はそれに対する応答を送信装置1に返す(ステップS5)。
【0031】
その後、RTT計測が開始され、送信装置1は受信装置2にRTT_TESTコマンドを送信し、このコマンドを受信した受信装置2は即座に応答する(ステップS6)。送信装置1は、同コマンドを送信してからその応答を受信するまでの時間を計測する。次に、送信装置1は同一の受信装置2に対してRTT計測を行ったことを検証するためにRTT_VERIFYコマンドを受信装置2に送信し、受信装置2はその応答を返す(ステップS7)。
【0032】
その後、送信装置1と受信装置2は、途中で中断した認証・鍵交換処理の残りの処理を行う(ステップS8)。
【0033】
上述したステップS6のRTT計測を行った結果、RTTが予め定めた値以下であれば、受信装置2が宅内、すなわち送信装置1の近傍に存在するものと判断し、送信装置1は受信装置2のデバイスIDをDTCPデバイスID登録部20に登録する。ここで登録されたデバイスIDは、M時間経過したら無効となるようにしてもよい。これにより、登録されたデバイスIDを何らかの手段で不正に取得して悪用されるおそれがなくなる。また、電波状態や受信装置2の不具合等により、一時的にRTT計測が正常に行えないこともありうるため、複数回(N回)繰り返し実行してもよい。
【0034】
図5は送信装置1内のRTT計測部17が行うRTT計測処理の一例を示すフローチャートである。まず、認証・鍵交換処理を開始する(ステップS11)。次に、受信装置2がRTTの計測機能を持っているか否かを判定する(ステップS12)。同機能を持っている場合には同通信装置のデバイスIDがDTCPデバイスID登録部10に登録されているか否かを判定する(ステップS13)。
【0035】
ステップS13で登録済みでないと判定されると、RTT計測を行う(ステップS14)。RTT計測の詳細手順については後述する。
【0036】
RTT計測を行った後に、RTTが所定値以下か否かを判定する(ステップS15)。RTTが所定値よりも大きければ計測回数がN回以下か否かを判定する(ステップS16)。N回以下であればステップS14に戻ってRTTの計測を再度行う。N回計測してもRTTが所定値以下にならなければ、RTTの計測中止処理を行う(ステップS17)。
【0037】
ステップS15でRTTが所定値以下と判定されると、受信装置2のデバイスIDをDTCPデバイスID登録部10に登録する。また、このデバイスIDをDTCPデバイスID登録部10から削除するためのタイマ計測を開始する(ステップS18)。このタイマ計測による計測時間が所定時間に達すると、登録したデバイスIDがDTCPデバイスID登録部20から自動的に削除される。
【0038】
ステップS12で受信装置2がRTT計測機能を持っていないと判定された場合と、ステップS13で同通信装置がすでにDTCPデバイスID登録部10に登録されていると判定された場合と、ステップS18で同通信装置のデバイスIDの登録が終了した場合は、同通信装置との間で、認証・鍵交換処理の続きを行って、鍵の交換を行う(ステップS19)。
【0039】
本実施形態は、Bluetoothの規格に従って無線通信を行う場合に、RTT計測を行ってコンテンツの著作権保護を図っている。この場合、Bluetooth特有の考慮すべき事項がある。
【0040】
(1)スニフモード
Bluetoothは、携帯電話やその他のモバイル機器などの低消費電力が要求される機器に実装されることが多い。このため、Bluetoothの規格には、低消費電力を実現するための仕組みが種々実装されている。その仕組みの一つがスニフモードである。Bluetoothは、1対多の通信が可能なネットワーク技術であり、その根元となるノードはマスター、それぞれの枝のノードをスレーブと呼ばれる。
【0041】
図6はマスター30とスレーブ31の接続関係を示す図、図7はスニフモードを説明する図である。各スレーブ31はマスター30との間で無線通信を行う。上述したスニフモードは、スレーブ31特有の低消費電力モードであり、一定間隔ごとに設けられるスニフインターバル(スニフ周期)内に時間スロット(スニフスロットとも呼ばれる)を設け、各パケットの送受信をこのスロットのみに限定する。
【0042】
図7に示す目盛りの各間隔はマスター30またはスレーブ31のパケット伝送周期を示している。「M」はマスター30に割り当てられる伝送周期、「S」はスレーブに割り当てられる伝送周期を示している。マスター30とスレーブ31のそれぞれは、予め決められたスニフ周期T1内でのみパケット伝送が許される。図7は、あるスレーブ31のスニフ周期T1を示している。図7の矢印がスレーブ31の送信タイミングとなる。
【0043】
スニフモードで動作するスレーブ31は、スニフ周期T1内にパケットを受信し、そのパケットヘッダに設定されたアドレスが自分宛でない場合には、そのパケットの受信を途中で停止して、次のスニフ周期T1まで待機する。
【0044】
一方、受信パケットが自分宛の場合には、マスター30からの送信パケットが存在する限り、継続してパケットを受信する。このとき、パケットを受信したスニフ周期T1内の時間スロットの直後の時間スロットでは、マスター30にパケットを送信することができる。スニフ周期T1内でない場合には、原則としてパケットの送受信が停止され、これにより低消費電力を実現できる。
【0045】
このように、スニフモードで動作するスレーブ31はスニフ周期T1内でのみマスター30と通信を行えるため、スレーブ31がマスター30からのRTT計測用のパケットを受信したとしても、スニフ周期T1が来るまではマスター30に対して応答できない。このため、RTTの値が非常に大きくなるおそれがある。
【0046】
そこで、本実施形態では、RTT計測を行う場合には、スニフ周期T1を短くして、RTT計測用のパケットに対する応答を迅速に返せるようにする。
【0047】
スニフ周期T1の設定は、図2および図3のBluetoothインターフェース部16,26で行う。より具体的には、Bluetooth機器のハードウェアの設定を行うAPIであるHCI(ホストコントローラインタフェース)コマンド、あるいはLMP(リンクレイヤ管理プロトコル)でのコマンドを使用してスニフ周期の変更を行うことができる。例えば、Bluetoothインターフェース部16でLMPコマンド(LMP_sniff_req)を発行することにより、スニフ周期T1の値を変更することができる。したがって、Bluetoothインターフェース部16,26は、RTT計測を行う場合には、上述したコマンドを発行してスニフ周期T1を一時的に短くして、RTT計測を正しく行えるようにする。
【0048】
(2)ポーリングインターバル
一方、Bluetoothが搭載される最もポピュラーな機器である携帯電話は、音声通話が必須であり、ネットワークの品質(QoS)を維持する必要がある。このため、Bluetoothの規格には、QoSを実現するための種々の仕組みが実装されている。その仕組みの一つがポーリングである。ポーリングは、一定時間に少なくとも1回はパケット送信の機会をスレーブ31側に与えて、一定以上のQoSを実現するものである。ポーリングの周期はポーリングインターバルと呼ばれる。
【0049】
図8はポーリングインターバルを説明する図である。図示のように、マスター30と各スレーブ31にはタイムスロットが割り当てられるが、各スレーブ31はポーリング周期内でしかマスター30と無線通信を行えない。ポーリングインターバルT2が長い場合には、あるスレーブ31がRTT計測用のパケットを受信したときに、それに対する応答を次のポーリングまで待たなければならないことから、その待ち時間が長くなり、結果としてRTT計測値が大きくなってしまう。
【0050】
そこで、本実施形態では、RTT計測値を小さくするために、RTT計測時にはポーリングインターバルT2を短くする。ポーリングインターバルT2の変更は図2および図3のBluetoothインターフェース部16が行う。より具体的には、Bluetooth機器のハードウェアの設定を行うAPIであるHCIコマンドや、LMPでのコマンドを使用して行うことができる。例えば、Bluetoothインターフェース部16でLMPコマンド(LMP_quality_of_service)を発行してポーリングの周期を変更することができる。
【0051】
(3)無線送信電力
Bluetoothの規格では、無線送信電力強度に関するモードがいくつか存在する。すなわち、クラスと呼ばれるモードがいくつか存在しており、クラス1では無線電波強度が強く(100mの距離でも送信装置1と受信装置2間で通信できる)、クラス2では無線電波強度が弱い(5〜10mの距離でしか送信装置1と受信装置2間で通信できない)。送信装置1と受信装置2が互いに近接して位置することを保証する仕組みとしては、クラス1よりもクラス2の電波強度を利用することが望ましい。
【0052】
したがって、著作権保護が必要なコンテンツの転送を行う場合には、送信装置1と受信装置2との間でクラス2の電波強度を利用して無線送信電力強度を弱くするのが望ましい。
【0053】
(4)マスター・スレーブ交換
図6に示したように、Bluetoothによる無線通信を行う各機器には、マスター30とスレーブ31という役割分担が存在する。マスター30はBluetoothネットワーク(Bluetoothピコネットとも呼ぶ)の制御機能を有する。Bluetoothネットワークに接続された他の機器はすべてスレーブ31であり、最大7台までのスレーブ31が1台のマスタ30と通信可能である。
【0054】
マスター30が行う制御機能は、例えば各スレーブ31に対するタイムスロットの割当である。Bluetoothでは、マスター30がタイムスロットの割当を行うため、RTTの応答を即座に行ってRTT計測値をできるだけ小さくしたいという要求を満たすためには、RTTの応答を送信する受信装置2がマスター30となるような構成が望ましい。受信装置2がマスター30であれば、送信装置1からのRTTコマンドを受信した時点でタイムスロットを制御して、即座にその応答を送信装置1に返せるためである。
【0055】
ところが、一般には、送信装置1と受信装置2のいずれがマスター30となるかは予め予測できない。このため、Bluetoothの規格では、マスター30とスレーブ31の役割を入れ替えるマスター・スレーブ交換という仕組みが用意されている。この仕組みを利用して、送信装置1をスレーブ31、受信装置2をマスター30にしたり、その逆に送信装置1をマスター30、受信装置2をスレーブ31に設定することも可能である。
【0056】
この仕組みを利用して、RTT計測時には、RTTコマンドを受信して応答する側(例えば受信装置2)をマスター30に設定してもよい。これにより、受信装置2は、RTTコマンドを受信した時点で、自装置にタイムスロットを割り当てて、即座にその応答を送信装置1に返せるようになる。その結果、RTTの値が小さくなる。
【0057】
上述したように、RTT計測を行う場合には、(1)スニフモード、(2)ポーリングインターバルT2、(3)無線送信電力および(4)マスター・スレーブ交換などのBluetoothパラメータを事前に変更するのが望ましい。ただし、(1)〜(4)のすべてのパラメータを変更する必要はなく、そのうちの一部のパラメータだけを変更しても、RTTを比較的精度よく計測できる。以下、これらパラメータを変更するタイミングについて詳述する。
【0058】
図9はBluetoothパラメータを変更するタイミングの第1例を示すシーケンス図である。
【0059】
図9では、認証・鍵交換処理を開始した後(ステップS21)、RTT計測用にBluetoothパラメータを変更する(ステップS22)。ここで、Bluetoothパラメータとは、上述した(1)〜(4)のうちの少なくとも一つである。より具体的には、スニフ周期T1を変更する場合にはスニフ周期T1を小さくして、迅速に送信装置1に応答できるようにする。ポーリングインターバルT2を変更する場合も同様に、ポーリングインターバルT2を小さくする。無線送信電力を変更する場合には、電波強度を弱くして、近距離しかパケットを伝送できないようにする。マスター・スレーブ交換を行う場合には、RTTパケットを受信する受信装置2をマスター30にして受信装置2にタイミングスロットの制御権を与える。
【0060】
その後、RTT計測を開始し(ステップS23)、RTT計測が終了すると、Bluetoothパラメータを元に戻す(ステップS24)。その後、認証・鍵交換処理の残りの処理を実行する(ステップS25)。認証・鍵交換処理が成功すると、AVアプリケーションを起動して、そのAVアプリケーションの処理の中で著作権保護が必要なAVコンテンツの送受を行う(ステップS26)。
【0061】
図10はBluetoothパラメータを変更するタイミングの第2例を示すシーケンス図である。認証・鍵交換処理を開始する前に、RTT計測用にBluetoothパラメータを変更する(ステップS31)。次に、認証・鍵交換処理を行う(ステップS32)。そして、その処理の途中でRTT計測を行い(ステップS33)、その後に認証・鍵交換処理の残りの処理を行う(ステップS34)。これらステップS32〜S34は、より詳しくは図4および図5と同様の手順で行われる。
【0062】
認証・鍵交換処理に成功すると、ステップS31で変更したBluetoothパラメータを元に戻す(ステップS35)。その後に、AVアプリケーションを起動して、AVコンテンツの転送を行う(ステップS36)。
【0063】
図11はBluetoothパラメータを変更するタイミングの第3例を示すシーケンス図である。まずAVアプリケーションを起動する(ステップS41)。次に、ステップS22と同様にRTT計測用にBluetoothパラメータを変更する(ステップS42)。次に、送信装置1と受信装置2の間でAVアプリケーションのコマンドを送受する(ステップS43)。
【0064】
次に、認証・鍵交換処理を行い、その処理の中でRTT計測を行う(ステップS44)。このステップS44は、より詳しくは図4および図5と同様の手順で行われる。認証・鍵交換処理が正常に終了した場合には、AVアプリケーションの処理を行い、その中でAVコンテンツの転送も行う(ステップS45)。
【0065】
次に、AVアプリケーションを終了させ(ステップS46)、その後にBluetoothパラメータを元に戻す(ステップS47)。
【0066】
上述した図9〜図11では、図4および図5の処理手順に従って、認証・鍵交換処理の途中でRTTの計測を行っているが、RTTの計測を認証・鍵交換処理の前あるいは後に行ってもよい。例えば、RTTの計測を行った後に認証・鍵交換処理を行うようにすれば、RTT計測に成功した場合のみ認証・鍵交換処理の開始を許可でき、認証・鍵交換処理を無駄に実行する必要がなくなる。また、認証・鍵交換処理を行った後にRTTの計測を行うようにすれば、認証・鍵交換処理に成功しなかった場合にはRTT計測を省略することができ、RTT計測を無駄に実行しなくて済む。この場合、例えば、認証・鍵交換処理に成功したがRTT計測に失敗した際には、認証・鍵交換処理により得られた暗号鍵を使わせない処理を行うことになる。
【0067】
また、図9〜図11では、無線パラメータの変更処理をまとめて行う例を説明したが、無線パラメータの種類によって変更を行うタイミングを変えてもよい。すなわち、一部のパラメータの変更は図9のタイミングで行い、他の一部のパラメータの変更は図10のタイミングで行い、さらに他の一部のパラメータの変更は図11のタイミングで行ってもよい。
【0068】
このように、本実施形態では、著作権保護が必要なコンテンツをBluetoothの無線ネットワーク3を介して送受する場合に、コンテンツの転送範囲を制限する目的でRTT計測を開始する前に、Bluetoothのパラメータを変更してRTT計測が正しく行えるようにするため、物理的に制限された範囲内(例えば宅内)のみに制限してコンテンツの転送を行うことができる。したがって、Bluetoothの無線ネットワーク3を利用する場合であっても、コンテンツの著作権保護を図ることができる。特に、本実施形態では、送信装置1と受信装置2がBluetooth特有のスニフモードやポーリングインターバルで間歇的にしか通信を行っていない場合でも、RTTを正しく計測でき、コンテンツの伝送を許可すべきか否かを正確かつ簡易に判断できる。
【0069】
上述した実施形態で説明した送信装置1および受信装置2の機能の少なくとも一部は、ハードウェアで構成してもよいし、ソフトウェアで構成してもよい。ソフトウェアで構成する場合には、送信装置1および受信装置2の少なくとも一部の機能を実現するプログラムをフロッピーディスクやCD−ROM等の記録媒体に収納し、コンピュータに読み込ませて実行させてもよい。記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の携帯可能なものに限定されず、ハードディスク装置やメモリなどの固定型の記録媒体でもよい。
【0070】
また、送信装置1および受信装置2の少なくとも一部の機能を実現するプログラムを、インターネット等の通信回線(無線通信も含む)を介して頒布してもよい。さらに、同プログラムを暗号化したり、変調をかけたり、圧縮した状態で、インターネット等の有線回線や無線回線を介して、あるいは記録媒体に収納して頒布してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る送信装置と受信装置との接続関係を示す図。
【図2】図1の送信装置1の内部構成の一例を示すブロック図。
【図3】図1の受信装置2の内部構成の一例を示すブロック図。
【図4】RTT計測部17,27が行うRTT計測処理の詳細手順の概略を示すシーケンス図。
【図5】送信装置1内のRTT計測部17が行うRTT計測処理の一例を示すフローチャート。
【図6】マスター30とスレーブ31の接続関係を示す図。
【図7】スニフモードを説明する図。
【図8】ポーリングインターバルを説明する図。
【図9】Bluetoothパラメータを変更するタイミングの第1例を示すシーケンス図。
【図10】Bluetoothパラメータを変更するタイミングの第2例を示すシーケンス図。
【図11】Bluetoothパラメータを変更するタイミングの第3例を示すシーケンス図。
【符号の説明】
【0072】
1 送信装置
2 受信装置
3 無線ネットワーク
11,21 DTCP認証・鍵交換処理部
12 コンテンツ供給部
13,23 暗号処理部
14,24 パケット処理部
15,25 通信処理部
16,26 Bluetoothインターフェース部
17,27 RTT計測部
22 コンテンツ処理部
【技術分野】
【0001】
本発明は、著作権保護が必要なコンテンツを無線ネットワークを介して通信する無線通信装置、受信装置、送信装置および通信制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル情報家電と呼ばれる商品が増えつつある。これら商品は、インターネットコンテンツ配信の開始などに伴ってよりいっそうの普及が見込まれている。デジタル情報家電の範疇には、モバイルオーディオプレーヤやデジタル放送対応テレビ、セットトップボックス、ハードディスクレコーダなどのデジタルデータやデジタルコンテンツを扱う種々の商品が含まれる。
【0003】
これら商品の普及に伴って考慮すべき問題の一つはコンテンツの著作権保護である。デジタルデータは、複製時に品質劣化が起きないなどの利点がある一方で、不正コピーが容易で著作権の保護が不十分になるなどの欠点がある。
【0004】
このため、例えば、デジタルAV機器同士をつなぐデジタルネットワークであるIEEE1394には、認証・鍵交換機能やデータの暗号化の機能が設けられている。
【0005】
ここで、ある送信装置から著作権保護が必要なAVデータを受信装置に伝送する場合を想定する。この場合、注意すべきことは、個人(あるいは、拡大解釈して家族)の楽しむ範囲内でAVデータをやり取りするのが著作権保護の前提であり、他人間間でのAVデータの送受信は、コンテンツプロバイダの許諾等が伴わない限り、行うべきではないという点である。
【0006】
ネットワーク上で著作権保護を図る仕組みとして、DTCP(Digital Transmission Content Protection)が知られている。DTCPは、IEEE1394やUSB、IPなどでデファクトスタンダードになっている著作権保護方式である。DTCPでは、著作権保護が必要なAVデータなどのコンテンツに対して、送信装置と受信装置との間で認証・鍵交換処理を行い、AVデータを暗号化して伝送する(非特許文献1参照)。
【0007】
一般に、伝送系で著作権保護を図るには、以下の処理手順でAVデータを伝送する。まず、送信装置と受信装置との間で、AVデータを送受信するためのコマンドを発行する。例えば、AV制御コマンドの一つである再生コマンドを、受信装置が送信装置に対して発行する。
【0008】
次に、AVデータに対して著作権保護のための暗号化を施した上で、送信装置から受信装置に対してAVデータの転送を始める。これに前後して、送信装置と受信装置との間で、著作権保護のための認証・鍵交換処理を行う。
【0009】
認証・鍵交換処理に成功すると、送信装置と受信装置との間でAVデータの暗号鍵を共有できるようになるか、あるいは送信装置と受信装置が暗号鍵を計算できるようになる。受信装置は受信した暗号化AVデータの復号及び再生を行う。
【0010】
このDTCPの仕組みは、近距離無線規格であるBluetoothでも「DTCP over Bluetooth」として規格化されており、Bluetooth上で著作権保護が必要なAVデータを転送しなければならない場合等に適用することが可能である。
【非特許文献1】http://www.dtla.com
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、最近のインターネットの発展は、新たな問題を生じさせている。即ち、インターネットでは、任意のデータを任意の距離が離れたユーザ間で自由に送受することができる。これにより、例えば、日本と米国間のデータ転送も極めて低コストにかつ容易に実現することができる。
【0012】
著作権保護が必要なAVデータについては、パケットごとに暗号化することが可能であるが、その暗号化されたパケットをインターネットパケットにカプセル化してインターネット上に送信することも技術的には可能である。したがって、例えば、近距離しか通信できないBluetooth機器で送信したAVデータのパケットをインターネットパケットにカプセル化して遠方まで送信してしまうおそれがある。この場合、インターネットパケットを受信した受信装置と送信側のBluetooth機器がともにDTCP機能をサポートしていれば、両者間で認証・鍵交換処理が成立してAVデータを記録・再生できてしまう。
【0013】
インターネットプロトコル(IP)を利用した著作権保護の仕組みであるDTCP over IPでは、宅内制限を達成するための技術としてRTT(Round Trip Time、ラウンドトリップ時間)を導入している。即ち、著作権保護のための認証・鍵交換処理の前後、あるいは認証・鍵交換処理の途中で特定パケットを送信端末から受信端末に送信し、その特定パケットを受信端末から送信端末に転送し直して送信端末で受信されるまでの時間(RTT)を計測する。このとき、特定パケットを受信した受信端末は、その特定パケットをそのまま転送してもよいし、何らかの新たなデータを埋め込んでもよい。すなわち、送信端末が、自分が送信したパケットと受信するパケットの関係を認識できれば、形式は何でも良い。送信端末はRTTを実測し、この値が一定の値以下であれば、受信端末は近接に位置する(宅内に位置する)とみなすことができ、上述した遠距離間でのAVデータの伝送を未然に防止することができる。
【0014】
このような著作権保護の仕組みは、Bluetooth上でコンテンツを転送する場合にも必須であるが、本来的にBluetoothは近距離での通信しか想定していないこともあり、遠距離間での通信を防止する有効な仕組みは確立されていない。
【0015】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、その目的は、無線ネットワークを利用してコンテンツを転送する場合にコンテンツの転送範囲を確実に制限してコンテンツの著作権保護を図ることができる無線通信装置、受信装置、送信装置および通信制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一態様によれば、著作権保護が必要なコンテンツを通信可能な無線ネットワークに接続されるネットワークインタフェース手段と、著作権保護が必要なコンテンツを暗号化または復号化する暗号処理手段と、他の通信装置に対して所定のパケットを送信した後、該パケットが前記他の通信装置から送り返されて受信されるまでのラウンドトリップ時間を計測するRTT計測手段と、前記RTT計測手段にて計測されたラウンドトリップ時間が所定時間以内の場合に、著作権保護が必要なコンテンツの送信または受信を許可する通信許可判断手段と、前記RTT計測手段による計測を行う前後で、前記無線ネットワークのパラメータを変更するパラメータ変更手段と、を備えることを特徴とする無線通信装置が提供される。
【0017】
また、本発明の一態様によれば、著作権保護が必要なコンテンツを送信可能な無線ネットワークに接続されるネットワークインタフェース手段と、著作権保護が必要なコンテンツを暗号化する暗号処理手段と、受信装置に対して所定のパケットを送信した後、該パケットが前記受信装置から送り返されて受信されるまでのラウンドトリップ時間を計測するRTT計測手段と、前記RTT計測手段にて計測されたラウンドトリップ時間が所定時間以内の場合に、著作権保護が必要なコンテンツの送信を許可する通信許可判断手段と、前記RTT計測手段による計測を行う前後で、前記無線ネットワークのパラメータを変更するパラメータ変更手段と、を備えることを特徴とする送信装置が提供される。
【0018】
また、本発明の一態様によれば、著作権保護が必要なコンテンツを受信可能な無線ネットワークに接続されるネットワークインタフェース手段と、著作権保護が必要なコンテンツを復号化する暗号処理手段と、送信装置に対して所定のパケットを送信した後、該パケットが前記送信装置から送り返されて受信されるまでのラウンドトリップ時間を計測するRTT計測手段と、前記RTT計測手段にて計測されたラウンドトリップ時間が所定時間以内の場合に、著作権保護が必要なコンテンツの受信を許可する通信許可判断手段と、前記RTT計測手段による計測を行う前後で、前記無線ネットワークのパラメータを変更するパラメータ変更手段と、を備えることを特徴とする受信装置が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、無線ネットワークを利用してコンテンツを転送する場合にコンテンツの転送範囲を確実に制限でき、コンテンツの著作権保護を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
【0021】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係る送信装置と受信装置との接続関係を示す図である。図示のように、送信装置1と受信装置2はBluetoothの規格に従って無線ネットワーク3を介して近距離無線通信を行う。
【0022】
送信装置1と受信装置2には、Bluetooth AVプロファイルと著作権保護の仕組みであるDTCP over Bluetoothとが実装されている。ここで、Bluetooth AVプロファイルとは、Bluetooth上で音声や映像を転送したり、あるいはコマンド制御を行うための規約である。DTCP over Bluetoothには、宅内制限を実現するためのRTT計測の仕組みが予め実装されている。
【0023】
図2は図1の送信装置1の内部構成の一例を示すブロック図であり、図3は図1の受信装置2の内部構成の一例を示すブロック図である。図2の送信装置1は、DTCPデバイスID登録部10と、DTCP認証・鍵交換処理部11と、コンテンツ処理部12と、暗号処理部13と、パケット処理部14と、通信処理部15と、Bluetoothインターフェース部16とを備えている。図3の受信装置2は、DTCPデバイスID登録部20と、DTCP認証・鍵交換処理部21と、コンテンツ供給部22と、暗号処理部23と、パケット処理部24と、通信処理部25と、Bluetoothインターフェース部26とを備えている。
【0024】
DTCPデバイスID登録部10,20は、自己の機器証明書(Certificate)に含まれるDTCP認証機関が提供する独自のIDであるDTCPデバイスID、あるいはBluetoothアドレスや通信相手のBluetoothアドレスなどの相手装置を表すIDを記録する。DTCP認証・鍵交換処理部11,21は、通信相手先の通信装置(以下、通信相手装置)との間で認証・鍵交換処理を行う。DTCP認証・鍵交換処理部11,21にはそれぞれ、ラウンドトリップ時間(RTT)の測定を行うRTT計測部17,27が設けられている。
【0025】
コンテンツ処理部12は、受信データからコンテンツを抽出する処理を行う。コンテンツ供給部22は、送信すべきコンテンツを取得して暗号処理部13に供給する処理を行う。暗号処理部13,23は、パケットの暗号化または復号化処理を行う。パケット処理部14,24は、パケットの生成または分解処理などを行う。通信処理部15,25は、送受信されるパケットの変復調処理、エラー訂正処理およびベースバンド処理などを行う。Bluetoothインターフェース部16,26は、Bluetoothの各種パラメータを設定して、通信データを無線ネットワーク3に送り出したり、その逆に無線ネットワーク3からパケットを受信する。
【0026】
図4はRTT計測部17,27が行うRTT計測処理の詳細手順の概略を示すシーケンス図である。以下では、送信装置1が受信装置2のRTT計測処理を実施する例について説明するが、その逆に、受信装置2が送信装置1のRTT計測処理を実施してもよい。その場合は、RTT計測が成功した場合に、受信装置2が送信装置1に対して計測成功を通知する。
【0027】
まず、受信装置2との間で認証・鍵交換処理のためのコマンドを互いに送受する(ステップS1)。次に、認証・鍵交換処理の前準備を行う(ステップS2)。ここでは、機器証明書と乱数を互いに送受し、互いの機器証明書を検証する。この機器証明書には、その機器がRTT計測機能を持っているかどうかの記述がなされている。したがって、受信装置2から送られた機器証明書を参照することで、その受信装置2がRTT計測機能を持っているか否かを把握することができる。
【0028】
受信装置2がRTT計測機能を持っている場合には、RTT計測を行うことになるが、すでに受信装置2が送信装置1内のDTCPデバイスID登録部10に登録されている場合には、RTTは既に計測済みであると判断してRTT計測を省略する。
【0029】
ステップS2の処理が終了すると、次に認証・鍵交換処理で鍵を生成するために用いるパラメータ(DTCPでは、楕円曲線を用いたDiffie-Hellman第1 phaseの値)の交換を行う(ステップS3)。次に、RTT計測の前準備処理を行う(ステップS4)。ここでは、RTT計測の準備が整ったことを示すRTT_READYコマンドを互いに交換する。
【0030】
次に、送信装置1はRTT計測を開始することを知らせるRTT_SETUPコマンドを受信装置2に送信し、受信装置2はそれに対する応答を送信装置1に返す(ステップS5)。
【0031】
その後、RTT計測が開始され、送信装置1は受信装置2にRTT_TESTコマンドを送信し、このコマンドを受信した受信装置2は即座に応答する(ステップS6)。送信装置1は、同コマンドを送信してからその応答を受信するまでの時間を計測する。次に、送信装置1は同一の受信装置2に対してRTT計測を行ったことを検証するためにRTT_VERIFYコマンドを受信装置2に送信し、受信装置2はその応答を返す(ステップS7)。
【0032】
その後、送信装置1と受信装置2は、途中で中断した認証・鍵交換処理の残りの処理を行う(ステップS8)。
【0033】
上述したステップS6のRTT計測を行った結果、RTTが予め定めた値以下であれば、受信装置2が宅内、すなわち送信装置1の近傍に存在するものと判断し、送信装置1は受信装置2のデバイスIDをDTCPデバイスID登録部20に登録する。ここで登録されたデバイスIDは、M時間経過したら無効となるようにしてもよい。これにより、登録されたデバイスIDを何らかの手段で不正に取得して悪用されるおそれがなくなる。また、電波状態や受信装置2の不具合等により、一時的にRTT計測が正常に行えないこともありうるため、複数回(N回)繰り返し実行してもよい。
【0034】
図5は送信装置1内のRTT計測部17が行うRTT計測処理の一例を示すフローチャートである。まず、認証・鍵交換処理を開始する(ステップS11)。次に、受信装置2がRTTの計測機能を持っているか否かを判定する(ステップS12)。同機能を持っている場合には同通信装置のデバイスIDがDTCPデバイスID登録部10に登録されているか否かを判定する(ステップS13)。
【0035】
ステップS13で登録済みでないと判定されると、RTT計測を行う(ステップS14)。RTT計測の詳細手順については後述する。
【0036】
RTT計測を行った後に、RTTが所定値以下か否かを判定する(ステップS15)。RTTが所定値よりも大きければ計測回数がN回以下か否かを判定する(ステップS16)。N回以下であればステップS14に戻ってRTTの計測を再度行う。N回計測してもRTTが所定値以下にならなければ、RTTの計測中止処理を行う(ステップS17)。
【0037】
ステップS15でRTTが所定値以下と判定されると、受信装置2のデバイスIDをDTCPデバイスID登録部10に登録する。また、このデバイスIDをDTCPデバイスID登録部10から削除するためのタイマ計測を開始する(ステップS18)。このタイマ計測による計測時間が所定時間に達すると、登録したデバイスIDがDTCPデバイスID登録部20から自動的に削除される。
【0038】
ステップS12で受信装置2がRTT計測機能を持っていないと判定された場合と、ステップS13で同通信装置がすでにDTCPデバイスID登録部10に登録されていると判定された場合と、ステップS18で同通信装置のデバイスIDの登録が終了した場合は、同通信装置との間で、認証・鍵交換処理の続きを行って、鍵の交換を行う(ステップS19)。
【0039】
本実施形態は、Bluetoothの規格に従って無線通信を行う場合に、RTT計測を行ってコンテンツの著作権保護を図っている。この場合、Bluetooth特有の考慮すべき事項がある。
【0040】
(1)スニフモード
Bluetoothは、携帯電話やその他のモバイル機器などの低消費電力が要求される機器に実装されることが多い。このため、Bluetoothの規格には、低消費電力を実現するための仕組みが種々実装されている。その仕組みの一つがスニフモードである。Bluetoothは、1対多の通信が可能なネットワーク技術であり、その根元となるノードはマスター、それぞれの枝のノードをスレーブと呼ばれる。
【0041】
図6はマスター30とスレーブ31の接続関係を示す図、図7はスニフモードを説明する図である。各スレーブ31はマスター30との間で無線通信を行う。上述したスニフモードは、スレーブ31特有の低消費電力モードであり、一定間隔ごとに設けられるスニフインターバル(スニフ周期)内に時間スロット(スニフスロットとも呼ばれる)を設け、各パケットの送受信をこのスロットのみに限定する。
【0042】
図7に示す目盛りの各間隔はマスター30またはスレーブ31のパケット伝送周期を示している。「M」はマスター30に割り当てられる伝送周期、「S」はスレーブに割り当てられる伝送周期を示している。マスター30とスレーブ31のそれぞれは、予め決められたスニフ周期T1内でのみパケット伝送が許される。図7は、あるスレーブ31のスニフ周期T1を示している。図7の矢印がスレーブ31の送信タイミングとなる。
【0043】
スニフモードで動作するスレーブ31は、スニフ周期T1内にパケットを受信し、そのパケットヘッダに設定されたアドレスが自分宛でない場合には、そのパケットの受信を途中で停止して、次のスニフ周期T1まで待機する。
【0044】
一方、受信パケットが自分宛の場合には、マスター30からの送信パケットが存在する限り、継続してパケットを受信する。このとき、パケットを受信したスニフ周期T1内の時間スロットの直後の時間スロットでは、マスター30にパケットを送信することができる。スニフ周期T1内でない場合には、原則としてパケットの送受信が停止され、これにより低消費電力を実現できる。
【0045】
このように、スニフモードで動作するスレーブ31はスニフ周期T1内でのみマスター30と通信を行えるため、スレーブ31がマスター30からのRTT計測用のパケットを受信したとしても、スニフ周期T1が来るまではマスター30に対して応答できない。このため、RTTの値が非常に大きくなるおそれがある。
【0046】
そこで、本実施形態では、RTT計測を行う場合には、スニフ周期T1を短くして、RTT計測用のパケットに対する応答を迅速に返せるようにする。
【0047】
スニフ周期T1の設定は、図2および図3のBluetoothインターフェース部16,26で行う。より具体的には、Bluetooth機器のハードウェアの設定を行うAPIであるHCI(ホストコントローラインタフェース)コマンド、あるいはLMP(リンクレイヤ管理プロトコル)でのコマンドを使用してスニフ周期の変更を行うことができる。例えば、Bluetoothインターフェース部16でLMPコマンド(LMP_sniff_req)を発行することにより、スニフ周期T1の値を変更することができる。したがって、Bluetoothインターフェース部16,26は、RTT計測を行う場合には、上述したコマンドを発行してスニフ周期T1を一時的に短くして、RTT計測を正しく行えるようにする。
【0048】
(2)ポーリングインターバル
一方、Bluetoothが搭載される最もポピュラーな機器である携帯電話は、音声通話が必須であり、ネットワークの品質(QoS)を維持する必要がある。このため、Bluetoothの規格には、QoSを実現するための種々の仕組みが実装されている。その仕組みの一つがポーリングである。ポーリングは、一定時間に少なくとも1回はパケット送信の機会をスレーブ31側に与えて、一定以上のQoSを実現するものである。ポーリングの周期はポーリングインターバルと呼ばれる。
【0049】
図8はポーリングインターバルを説明する図である。図示のように、マスター30と各スレーブ31にはタイムスロットが割り当てられるが、各スレーブ31はポーリング周期内でしかマスター30と無線通信を行えない。ポーリングインターバルT2が長い場合には、あるスレーブ31がRTT計測用のパケットを受信したときに、それに対する応答を次のポーリングまで待たなければならないことから、その待ち時間が長くなり、結果としてRTT計測値が大きくなってしまう。
【0050】
そこで、本実施形態では、RTT計測値を小さくするために、RTT計測時にはポーリングインターバルT2を短くする。ポーリングインターバルT2の変更は図2および図3のBluetoothインターフェース部16が行う。より具体的には、Bluetooth機器のハードウェアの設定を行うAPIであるHCIコマンドや、LMPでのコマンドを使用して行うことができる。例えば、Bluetoothインターフェース部16でLMPコマンド(LMP_quality_of_service)を発行してポーリングの周期を変更することができる。
【0051】
(3)無線送信電力
Bluetoothの規格では、無線送信電力強度に関するモードがいくつか存在する。すなわち、クラスと呼ばれるモードがいくつか存在しており、クラス1では無線電波強度が強く(100mの距離でも送信装置1と受信装置2間で通信できる)、クラス2では無線電波強度が弱い(5〜10mの距離でしか送信装置1と受信装置2間で通信できない)。送信装置1と受信装置2が互いに近接して位置することを保証する仕組みとしては、クラス1よりもクラス2の電波強度を利用することが望ましい。
【0052】
したがって、著作権保護が必要なコンテンツの転送を行う場合には、送信装置1と受信装置2との間でクラス2の電波強度を利用して無線送信電力強度を弱くするのが望ましい。
【0053】
(4)マスター・スレーブ交換
図6に示したように、Bluetoothによる無線通信を行う各機器には、マスター30とスレーブ31という役割分担が存在する。マスター30はBluetoothネットワーク(Bluetoothピコネットとも呼ぶ)の制御機能を有する。Bluetoothネットワークに接続された他の機器はすべてスレーブ31であり、最大7台までのスレーブ31が1台のマスタ30と通信可能である。
【0054】
マスター30が行う制御機能は、例えば各スレーブ31に対するタイムスロットの割当である。Bluetoothでは、マスター30がタイムスロットの割当を行うため、RTTの応答を即座に行ってRTT計測値をできるだけ小さくしたいという要求を満たすためには、RTTの応答を送信する受信装置2がマスター30となるような構成が望ましい。受信装置2がマスター30であれば、送信装置1からのRTTコマンドを受信した時点でタイムスロットを制御して、即座にその応答を送信装置1に返せるためである。
【0055】
ところが、一般には、送信装置1と受信装置2のいずれがマスター30となるかは予め予測できない。このため、Bluetoothの規格では、マスター30とスレーブ31の役割を入れ替えるマスター・スレーブ交換という仕組みが用意されている。この仕組みを利用して、送信装置1をスレーブ31、受信装置2をマスター30にしたり、その逆に送信装置1をマスター30、受信装置2をスレーブ31に設定することも可能である。
【0056】
この仕組みを利用して、RTT計測時には、RTTコマンドを受信して応答する側(例えば受信装置2)をマスター30に設定してもよい。これにより、受信装置2は、RTTコマンドを受信した時点で、自装置にタイムスロットを割り当てて、即座にその応答を送信装置1に返せるようになる。その結果、RTTの値が小さくなる。
【0057】
上述したように、RTT計測を行う場合には、(1)スニフモード、(2)ポーリングインターバルT2、(3)無線送信電力および(4)マスター・スレーブ交換などのBluetoothパラメータを事前に変更するのが望ましい。ただし、(1)〜(4)のすべてのパラメータを変更する必要はなく、そのうちの一部のパラメータだけを変更しても、RTTを比較的精度よく計測できる。以下、これらパラメータを変更するタイミングについて詳述する。
【0058】
図9はBluetoothパラメータを変更するタイミングの第1例を示すシーケンス図である。
【0059】
図9では、認証・鍵交換処理を開始した後(ステップS21)、RTT計測用にBluetoothパラメータを変更する(ステップS22)。ここで、Bluetoothパラメータとは、上述した(1)〜(4)のうちの少なくとも一つである。より具体的には、スニフ周期T1を変更する場合にはスニフ周期T1を小さくして、迅速に送信装置1に応答できるようにする。ポーリングインターバルT2を変更する場合も同様に、ポーリングインターバルT2を小さくする。無線送信電力を変更する場合には、電波強度を弱くして、近距離しかパケットを伝送できないようにする。マスター・スレーブ交換を行う場合には、RTTパケットを受信する受信装置2をマスター30にして受信装置2にタイミングスロットの制御権を与える。
【0060】
その後、RTT計測を開始し(ステップS23)、RTT計測が終了すると、Bluetoothパラメータを元に戻す(ステップS24)。その後、認証・鍵交換処理の残りの処理を実行する(ステップS25)。認証・鍵交換処理が成功すると、AVアプリケーションを起動して、そのAVアプリケーションの処理の中で著作権保護が必要なAVコンテンツの送受を行う(ステップS26)。
【0061】
図10はBluetoothパラメータを変更するタイミングの第2例を示すシーケンス図である。認証・鍵交換処理を開始する前に、RTT計測用にBluetoothパラメータを変更する(ステップS31)。次に、認証・鍵交換処理を行う(ステップS32)。そして、その処理の途中でRTT計測を行い(ステップS33)、その後に認証・鍵交換処理の残りの処理を行う(ステップS34)。これらステップS32〜S34は、より詳しくは図4および図5と同様の手順で行われる。
【0062】
認証・鍵交換処理に成功すると、ステップS31で変更したBluetoothパラメータを元に戻す(ステップS35)。その後に、AVアプリケーションを起動して、AVコンテンツの転送を行う(ステップS36)。
【0063】
図11はBluetoothパラメータを変更するタイミングの第3例を示すシーケンス図である。まずAVアプリケーションを起動する(ステップS41)。次に、ステップS22と同様にRTT計測用にBluetoothパラメータを変更する(ステップS42)。次に、送信装置1と受信装置2の間でAVアプリケーションのコマンドを送受する(ステップS43)。
【0064】
次に、認証・鍵交換処理を行い、その処理の中でRTT計測を行う(ステップS44)。このステップS44は、より詳しくは図4および図5と同様の手順で行われる。認証・鍵交換処理が正常に終了した場合には、AVアプリケーションの処理を行い、その中でAVコンテンツの転送も行う(ステップS45)。
【0065】
次に、AVアプリケーションを終了させ(ステップS46)、その後にBluetoothパラメータを元に戻す(ステップS47)。
【0066】
上述した図9〜図11では、図4および図5の処理手順に従って、認証・鍵交換処理の途中でRTTの計測を行っているが、RTTの計測を認証・鍵交換処理の前あるいは後に行ってもよい。例えば、RTTの計測を行った後に認証・鍵交換処理を行うようにすれば、RTT計測に成功した場合のみ認証・鍵交換処理の開始を許可でき、認証・鍵交換処理を無駄に実行する必要がなくなる。また、認証・鍵交換処理を行った後にRTTの計測を行うようにすれば、認証・鍵交換処理に成功しなかった場合にはRTT計測を省略することができ、RTT計測を無駄に実行しなくて済む。この場合、例えば、認証・鍵交換処理に成功したがRTT計測に失敗した際には、認証・鍵交換処理により得られた暗号鍵を使わせない処理を行うことになる。
【0067】
また、図9〜図11では、無線パラメータの変更処理をまとめて行う例を説明したが、無線パラメータの種類によって変更を行うタイミングを変えてもよい。すなわち、一部のパラメータの変更は図9のタイミングで行い、他の一部のパラメータの変更は図10のタイミングで行い、さらに他の一部のパラメータの変更は図11のタイミングで行ってもよい。
【0068】
このように、本実施形態では、著作権保護が必要なコンテンツをBluetoothの無線ネットワーク3を介して送受する場合に、コンテンツの転送範囲を制限する目的でRTT計測を開始する前に、Bluetoothのパラメータを変更してRTT計測が正しく行えるようにするため、物理的に制限された範囲内(例えば宅内)のみに制限してコンテンツの転送を行うことができる。したがって、Bluetoothの無線ネットワーク3を利用する場合であっても、コンテンツの著作権保護を図ることができる。特に、本実施形態では、送信装置1と受信装置2がBluetooth特有のスニフモードやポーリングインターバルで間歇的にしか通信を行っていない場合でも、RTTを正しく計測でき、コンテンツの伝送を許可すべきか否かを正確かつ簡易に判断できる。
【0069】
上述した実施形態で説明した送信装置1および受信装置2の機能の少なくとも一部は、ハードウェアで構成してもよいし、ソフトウェアで構成してもよい。ソフトウェアで構成する場合には、送信装置1および受信装置2の少なくとも一部の機能を実現するプログラムをフロッピーディスクやCD−ROM等の記録媒体に収納し、コンピュータに読み込ませて実行させてもよい。記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の携帯可能なものに限定されず、ハードディスク装置やメモリなどの固定型の記録媒体でもよい。
【0070】
また、送信装置1および受信装置2の少なくとも一部の機能を実現するプログラムを、インターネット等の通信回線(無線通信も含む)を介して頒布してもよい。さらに、同プログラムを暗号化したり、変調をかけたり、圧縮した状態で、インターネット等の有線回線や無線回線を介して、あるいは記録媒体に収納して頒布してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る送信装置と受信装置との接続関係を示す図。
【図2】図1の送信装置1の内部構成の一例を示すブロック図。
【図3】図1の受信装置2の内部構成の一例を示すブロック図。
【図4】RTT計測部17,27が行うRTT計測処理の詳細手順の概略を示すシーケンス図。
【図5】送信装置1内のRTT計測部17が行うRTT計測処理の一例を示すフローチャート。
【図6】マスター30とスレーブ31の接続関係を示す図。
【図7】スニフモードを説明する図。
【図8】ポーリングインターバルを説明する図。
【図9】Bluetoothパラメータを変更するタイミングの第1例を示すシーケンス図。
【図10】Bluetoothパラメータを変更するタイミングの第2例を示すシーケンス図。
【図11】Bluetoothパラメータを変更するタイミングの第3例を示すシーケンス図。
【符号の説明】
【0072】
1 送信装置
2 受信装置
3 無線ネットワーク
11,21 DTCP認証・鍵交換処理部
12 コンテンツ供給部
13,23 暗号処理部
14,24 パケット処理部
15,25 通信処理部
16,26 Bluetoothインターフェース部
17,27 RTT計測部
22 コンテンツ処理部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
著作権保護が必要なコンテンツを通信可能な無線ネットワークに接続されるネットワークインタフェース手段と、
著作権保護が必要なコンテンツを暗号化または復号化する暗号処理手段と、
他の通信装置に対して所定のパケットを送信した後、該パケットが前記他の通信装置から送り返されて受信されるまでのラウンドトリップ時間を計測するRTT計測手段と、
前記RTT計測手段にて計測されたラウンドトリップ時間が所定時間以内の場合に、著作権保護が必要なコンテンツの送信または受信を許可する通信許可判断手段と、
前記RTT計測手段による計測を行う前後で、前記無線ネットワークのパラメータを変更するパラメータ変更手段と、を備えることを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記他の通信装置との間で認証・鍵交換処理を行う認証・鍵交換手段を備え、
前記パラメータ変更手段は、前記認証・鍵交換手段が認証・鍵交換処理を行っている最中に前記ラウンドトリップ時間の計測のためにパラメータを変更し、前記ラウンドトリップ時間の計測が終了した後、前記認証・鍵交換手段が前記認証・鍵交換処理を終える前にパラメータを元に戻すことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記他の通信装置との間で認証・鍵交換処理を行う認証・鍵交換手段を備え、
前記パラメータ変更手段は、前記認証・鍵交換手段が認証・鍵交換処理を開始する前に前記ラウンドトリップ時間の計測のためにパラメータを変更し、前記認証・鍵交換手段が前記認証・鍵交換処理を終えた後にパラメータを元に戻すことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記他の通信装置との間で認証・鍵交換処理を行う認証・鍵交換手段を備え、
前記パラメータ変更手段は、著作権保護が必要なコンテンツの伝送に関するコマンドの送信を開始する前に前記ラウンドトリップ時間の計測のためにパラメータを変更し、著作権保護が必要なコンテンツの伝送処理が終了した後にパラメータを元に戻すことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記無線ネットワークはBluetoothであり、
前記パラメータ変更手段は、Bluetoothの規格で定める送受信間隔であるスニフインターバル、ポーリングインターバル、送信電力およびマスター・スレーブ交換の少なくとも一つをパラメータとして変更することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記パラメータ変更手段は、前記RTT計測手段による計測を行う際には、前記スニフインターバルを通常よりも短くすることを特徴とする請求項5に記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記パラメータ変更手段は、前記RTT計測手段による計測を行う際には、前記ポーリングインターバルを通常よりも短くすることを特徴とする請求項5に記載の無線通信装置。
【請求項8】
前記パラメータ変更手段は、前記RTT計測手段による計測を行う際には、送信電力を通常よりも弱くすることを特徴とする請求項5に記載の無線通信装置。
【請求項9】
前記パラメータ変更手段は、前記RTT計測手段による計測を行う際には、マスター装置とスレーブ装置との役割を逆にすることを特徴とする請求項5に記載の無線通信装置。
【請求項10】
著作権保護が必要なコンテンツを送信可能な無線ネットワークに接続されるネットワークインタフェース手段と、
著作権保護が必要なコンテンツを暗号化する暗号処理手段と、
受信装置に対して所定のパケットを送信した後、該パケットが前記受信装置から送り返されて受信されるまでのラウンドトリップ時間を計測するRTT計測手段と、
前記RTT計測手段にて計測されたラウンドトリップ時間が所定時間以内の場合に、著作権保護が必要なコンテンツの送信を許可する通信許可判断手段と、
前記RTT計測手段による計測を行う前後で、前記無線ネットワークのパラメータを変更するパラメータ変更手段と、を備えることを特徴とする送信装置。
【請求項11】
著作権保護が必要なコンテンツを受信可能な無線ネットワークに接続されるネットワークインタフェース手段と、
著作権保護が必要なコンテンツを復号化する暗号処理手段と、
送信装置に対して所定のパケットを送信した後、該パケットが前記送信装置から送り返されて受信されるまでのラウンドトリップ時間を計測するRTT計測手段と、
前記RTT計測手段にて計測されたラウンドトリップ時間が所定時間以内の場合に、著作権保護が必要なコンテンツの受信を許可する通信許可判断手段と、
前記RTT計測手段による計測を行う前後で、前記無線ネットワークのパラメータを変更するパラメータ変更手段と、を備えることを特徴とする受信装置。
【請求項12】
他の通信装置に対して所定のパケットを送信した後、該パケットが前記他の通信装置から送り返されて受信されるまでのラウンドトリップ時間を計測するステップと、
前記計測されたラウンドトリップ時間が所定時間以内の場合に、著作権保護が必要なコンテンツの送信または受信を許可するステップと、
前記コンテンツの送信または受信が許可された場合に、暗号化された前記コンテンツを無線ネットワークを介して送信または受信するステップと、
前記ラウンドトリップ時間の計測を行う前後で、前記無線ネットワークのパラメータを変更するステップと、を実行可能なコンピュータ読み取り可能な通信制御プログラム。
【請求項1】
著作権保護が必要なコンテンツを通信可能な無線ネットワークに接続されるネットワークインタフェース手段と、
著作権保護が必要なコンテンツを暗号化または復号化する暗号処理手段と、
他の通信装置に対して所定のパケットを送信した後、該パケットが前記他の通信装置から送り返されて受信されるまでのラウンドトリップ時間を計測するRTT計測手段と、
前記RTT計測手段にて計測されたラウンドトリップ時間が所定時間以内の場合に、著作権保護が必要なコンテンツの送信または受信を許可する通信許可判断手段と、
前記RTT計測手段による計測を行う前後で、前記無線ネットワークのパラメータを変更するパラメータ変更手段と、を備えることを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記他の通信装置との間で認証・鍵交換処理を行う認証・鍵交換手段を備え、
前記パラメータ変更手段は、前記認証・鍵交換手段が認証・鍵交換処理を行っている最中に前記ラウンドトリップ時間の計測のためにパラメータを変更し、前記ラウンドトリップ時間の計測が終了した後、前記認証・鍵交換手段が前記認証・鍵交換処理を終える前にパラメータを元に戻すことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記他の通信装置との間で認証・鍵交換処理を行う認証・鍵交換手段を備え、
前記パラメータ変更手段は、前記認証・鍵交換手段が認証・鍵交換処理を開始する前に前記ラウンドトリップ時間の計測のためにパラメータを変更し、前記認証・鍵交換手段が前記認証・鍵交換処理を終えた後にパラメータを元に戻すことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記他の通信装置との間で認証・鍵交換処理を行う認証・鍵交換手段を備え、
前記パラメータ変更手段は、著作権保護が必要なコンテンツの伝送に関するコマンドの送信を開始する前に前記ラウンドトリップ時間の計測のためにパラメータを変更し、著作権保護が必要なコンテンツの伝送処理が終了した後にパラメータを元に戻すことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記無線ネットワークはBluetoothであり、
前記パラメータ変更手段は、Bluetoothの規格で定める送受信間隔であるスニフインターバル、ポーリングインターバル、送信電力およびマスター・スレーブ交換の少なくとも一つをパラメータとして変更することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記パラメータ変更手段は、前記RTT計測手段による計測を行う際には、前記スニフインターバルを通常よりも短くすることを特徴とする請求項5に記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記パラメータ変更手段は、前記RTT計測手段による計測を行う際には、前記ポーリングインターバルを通常よりも短くすることを特徴とする請求項5に記載の無線通信装置。
【請求項8】
前記パラメータ変更手段は、前記RTT計測手段による計測を行う際には、送信電力を通常よりも弱くすることを特徴とする請求項5に記載の無線通信装置。
【請求項9】
前記パラメータ変更手段は、前記RTT計測手段による計測を行う際には、マスター装置とスレーブ装置との役割を逆にすることを特徴とする請求項5に記載の無線通信装置。
【請求項10】
著作権保護が必要なコンテンツを送信可能な無線ネットワークに接続されるネットワークインタフェース手段と、
著作権保護が必要なコンテンツを暗号化する暗号処理手段と、
受信装置に対して所定のパケットを送信した後、該パケットが前記受信装置から送り返されて受信されるまでのラウンドトリップ時間を計測するRTT計測手段と、
前記RTT計測手段にて計測されたラウンドトリップ時間が所定時間以内の場合に、著作権保護が必要なコンテンツの送信を許可する通信許可判断手段と、
前記RTT計測手段による計測を行う前後で、前記無線ネットワークのパラメータを変更するパラメータ変更手段と、を備えることを特徴とする送信装置。
【請求項11】
著作権保護が必要なコンテンツを受信可能な無線ネットワークに接続されるネットワークインタフェース手段と、
著作権保護が必要なコンテンツを復号化する暗号処理手段と、
送信装置に対して所定のパケットを送信した後、該パケットが前記送信装置から送り返されて受信されるまでのラウンドトリップ時間を計測するRTT計測手段と、
前記RTT計測手段にて計測されたラウンドトリップ時間が所定時間以内の場合に、著作権保護が必要なコンテンツの受信を許可する通信許可判断手段と、
前記RTT計測手段による計測を行う前後で、前記無線ネットワークのパラメータを変更するパラメータ変更手段と、を備えることを特徴とする受信装置。
【請求項12】
他の通信装置に対して所定のパケットを送信した後、該パケットが前記他の通信装置から送り返されて受信されるまでのラウンドトリップ時間を計測するステップと、
前記計測されたラウンドトリップ時間が所定時間以内の場合に、著作権保護が必要なコンテンツの送信または受信を許可するステップと、
前記コンテンツの送信または受信が許可された場合に、暗号化された前記コンテンツを無線ネットワークを介して送信または受信するステップと、
前記ラウンドトリップ時間の計測を行う前後で、前記無線ネットワークのパラメータを変更するステップと、を実行可能なコンピュータ読み取り可能な通信制御プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−74285(P2007−74285A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−258261(P2005−258261)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
2.フロッピー
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
2.フロッピー
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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