説明

無線通信装置および送信電力制御方法

【課題】通信環境の良否に応じた送信電力制御により与干渉を低減し、消費電力の低減と通信品質の向上を両立させることができる無線通信装置および送信電力制御方法を提供する。
【解決手段】アンテナから送信する送信信号を出力する変調手段と、アンテナに受信した受信信号を復調する復調手段と、復調手段の復調信号に応じて送信信号の受信側との間の通信環境の良否を判定する通信環境判定手段とを備えた無線通信装置において、通信環境判定手段から通信環境の良否情報を入力し、通信環境が良好である場合に送信信号の送信電力を低減し、通信環境が不良である場合に送信信号の送信電力を増加する送信電力制御手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信の成否、通信環境の良否に応じて送信電力制御を行う無線通信装置および送信電力制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムでは、送信器が送信したパケット信号を受信器が正常に受信したときにACK(Acknowledgement) 信号を返信し、送信器がこのACK信号を受信することで、前回の送信が成功したものと判断して次のパケット信号を送信する制御方法がある。
【0003】
ここで、通信環境が良好なときには、送信器が送信したパケット信号が受信器に正常に受信され、送信器にACK信号が届くが、通信環境が悪い場合にはACK信号が届かず再送処理などが行われる。従来技術では、このような通信環境を反映したACK信号の受信の有無に応じて、送信器が伝送速度の増加または減少によりスループットの改善を実現している(非特許文献1)。
【0004】
図10は、従来の無線通信システムの一例を示す。
図10において、AP(アクセスポイント:無線基地局)の送信電力に応じて形成されるセル内に、当該APと通信を行うSTA(ステーション:無線端末)が配置される。APは、STAからのACK信号の受信により、通信環境が良好と判断して伝送速度を増加させる。また、APにACK信号が届かない場合には、通信環境が不良と判断して伝送速度を減少させる。例えば、非特許文献1では、複数回連続してACK信号を受信したときに伝送速度を1段階アップし、その後にACK信号を受信しなければ直ちに元の伝送速度に戻すような制御が提案されている。なお、このときのAPの送信電力は一定であるため、伝送速度の変更に関わらず、セル半径は変化しない。
【0005】
図11は、従来の無線通信装置の構成例を示す。
図11において、無線通信装置は、アンテナ91、復調回路92、ACK測定回路93、伝送速度設定回路94、変調回路95により構成される。ここでは、無線通信装置の主要部のみを示し、増幅回路や周波数変換回路などは省略している。
【0006】
アンテナ91に受信した受信信号は復調回路92で復調される。ここでは、送信信号に対するACK信号を想定しているため、受信信号から抽出されたACK信号をACK測定回路93に出力する。ACK測定回路93は送信信号に対するACK信号をカウントし、伝送速度設定回路94に通知する。伝送速度設定回路94は、ACK信号の受信数が規定数を超えた場合に、伝送速度を増加させる制御信号を変調回路95に出力する。一方、ACK信号の受信がない場合、あるいはACK信号の非受信数が規定数を超えた場合には、伝送速度を低下させる制御信号を出力する。変調回路95は、伝送速度設定回路94から入力する制御信号に応じた伝送速度を設定し、例えば伝送速度に応じたQPSKやQAM等の1シンボルあたりのビット数が異なる変調方式で送信データを変調し、アンテナ91から送信する。
【0007】
このように、従来の無線通信装置では、送信信号に対するACK信号の受信/非受信に応じて伝送速度の制御が行われる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】井上他、“IEEE802.11におけるレートアダプテーション機能の検討、“通信学会2002ソサイエティ大会、B-5-192 、2002年9月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、図10に示す従来の無線通信システムのように、複数のAPが形成するセルが隣接する環境では、互いに干渉が発生して通信品質が劣化する。特に、大出力で送信するAPがあると、当該APが他のAPやSTAへ与える干渉が大きくなる。
【0010】
従来技術では、通信環境を反映するACK信号の受信/非受信に応じて伝送速度を可変にするが、送信電力は一定である。そのため、通信セルの大きさも一定で、干渉による通信品質劣化の状況は変わらず、伝送速度の低下によってスループットも低下することになる。また、周波数リソースに関して適切な棲み分けができていない場合に、衝突が生じることにより再送が多く発生し、多くの電力が消費される課題がある。
【0011】
また、APの送信電力が一定で、通信セルの大きさも一定であるため、多くのAPを配置することが困難であり、STAの収容数にも限界があった。
【0012】
本発明は、通信環境の良否に応じた送信電力制御により与干渉を低減し、消費電力の低減と通信品質の向上を両立させることができる無線通信装置および送信電力制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の発明は、アンテナから送信する送信信号を出力する変調手段と、アンテナに受信した受信信号を復調する復調手段と、復調手段の復調信号に応じて送信信号の受信側との間の通信環境の良否を判定する通信環境判定手段とを備えた無線通信装置において、通信環境判定手段から通信環境の良否情報を入力し、通信環境が良好である場合に送信信号の送信電力を低減し、通信環境が不良である場合に送信信号の送信電力を増加する送信電力制御手段を備える。
【0014】
第1の発明の無線通信装置において、受信信号の受信レベルを検出して送信電力制御手段に出力する受信レベル検出手段を備え、送信電力制御手段は、受信レベルが閾値を超えるときに通信環境が良好とし、受信レベルが閾値以下のときに通信環境が不良として送信信号の送信電力を制御する構成である。
【0015】
第1の発明の無線通信装置において、受信信号が他システムからの信号であることを識別し、他システムからの干渉レベルを検出して送信電力制御手段に出力する干渉レベル検出手段を備え、送信電力制御手段は、干渉レベルが閾値以下のときに通信環境が良好とし、干渉レベルが閾値を超えるときに通信環境が不良として送信信号の送信電力を制御する構成である。
【0016】
第1の発明の無線通信装置において、受信信号が他システムからの信号であることを識別し、他システムからの干渉レベルを検出する干渉レベル検出手段と、干渉レベルが閾値を超えるときに、他システムと自システムの送信タイミングを調整して棲み分けを行う送信制御手段とを備える。
【0017】
第1の発明の無線通信装置において、受信信号が他システムからの信号であることを識別し、他システムからの干渉レベルを検出する干渉レベル検出手段と、干渉レベルが閾値を超えるときに、送信信号のキャリア周波数または受信信号のキャリア周波数の少なくとも一方を変換し、他システムと自システムのキャリア周波数が異なるように設定する周波数変換手段とを備える。
【0018】
第1の発明の無線通信装置において、通信環境判定手段から通信環境の良否情報を入力し、送信電力制御手段で送信電力を増加しても通信環境が不良である場合に、他システムと自システムの送信タイミングを調整して棲み分けを行う送信制御手段を備える。
【0019】
第1の発明の無線通信装置において、通信環境判定手段から通信環境の良否情報を入力し、送信電力制御手段で送信電力を増加しても通信環境が不良である場合に、送信信号のキャリア周波数または受信信号のキャリア周波数の少なくとも一方を変換し、他システムと自システムのキャリア周波数が異なるように設定する周波数変換手段を備える。
【0020】
第1の発明の無線通信装置において、送信電力制御手段は、送信信号の伝送速度が前回の送信信号の伝送速度と同一であるときに通信環境の良否情報に応じた送信電力制御を行い、送信信号の伝送速度が前回の送信信号の伝送速度と同一でないときに通信環境の良否情報に応じた送信電力制御を行わない構成である。
【0021】
第2の発明は、アンテナから送信する送信信号を出力する変調手段と、アンテナに受信した受信信号を復調する復調手段と、復調手段の復調信号に応じて送信信号の受信側との間の通信環境の良否を判定する通信環境判定手段とを備えた無線通信装置の送信電力制御方法において、通信環境判定手段から通信環境の良否情報を入力し、通信環境が良好である場合に送信信号の送信電力を低減し、通信環境が不良である場合に送信信号の送信電力を増加する送信電力制御を行う。
【0022】
また、送信電力制御手段は、送信信号の伝送速度が前回の送信信号の伝送速度と同一であるときに通信環境の良否情報に応じた送信電力制御を行い、送信信号の伝送速度が前回の送信信号の伝送速度と同一でないときに通信環境の良否情報に応じた送信電力制御を行わないようにしてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の無線通信装置は、通信環境の良否に応じた送信電力制御を自律的に行うことにより、周辺の無線通信装置に対する干渉を低減することができる。特に、通信環境が良好と判断されるときに送信電力を低減することにより、消費電力の低減と通信品質の向上を両立させることができる。さらに、通信品質が向上して送信成功となる確率がさらに高くなり、周波数リソースの有効利用ができる。
【0024】
また、多くのAPとSTAで構成される無線通信システムに適用することにより、APの送信電力低減によりセル半径が小さくなるので、多くのAPの設置が可能となり、STA(ユーザ)の収容数を向上させることができる。さらに、多数のAPあるいは新規のAPとの棲み分けが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による送信電力制御原理を説明する図である。
【図2】本発明の実施例1の無線通信装置の構成例を示す図である。
【図3】伝送速度制御と送信電力制御を組み合わせた無線通信装置の構成例を示す図である。
【図4】伝送速度制御と組み合わせた送信電力制御手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施例2の無線通信装置の構成例を示す図である。
【図6】本発明の実施例3の無線通信装置の構成例を示す図である。
【図7】本発明の実施例4の無線通信装置の構成例を示す図である。
【図8】本発明の実施例5の無線通信装置の構成例を示す図である。
【図9】本発明の実施例6の無線通信装置の構成例を示す図である。
【図10】従来の無線通信システムの一例を示す図である。
【図11】従来の無線通信装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、本発明による送信電力制御原理を示す。ここでは、複数のAPが形成するセルが隣接し、各セル内にそれぞれSTAが存在する図10の従来の無線通信システム(例えば無線LAN)において、APの送信電力制御を例に説明するが、STAの送信電力制御、あるいはAPとSTAの双方の送信電力制御にも適用可能である。さらに、一般的な無線通信システム、例えばHSPA(High speed packet access) やLTE(Long Term Evolution )等の規格の携帯電話システム、IEEE802.16規格群で規定されるWiMAX(Worldwide interoperability for microwave access)システム、Bluetooth 等の近距離無線システムにおける無線通信装置の送信電力制御にも適用可能である。
【0027】
図1において、APの送信電力に応じた半径のセル内に、当該APと通信を行うSTAが配置される。STAは、APの送信信号を正常に受信できたときにACK信号を送信する。APは、送信信号に対するACK信号を受信し(送信成功)、送信電力を低減する条件(例えば複数回連続してACK信号を受信)を満たすときに、通信環境が良好と判断して送信電力を低減する。これにより、セル半径が小さくなる。また、APは、送信信号に対するACK信号を受信せず(送信失敗)、送信電力を増加する条件(例えば複数回連続してACK信号を受信せず)を満たすときに、通信環境が不良と判断して送信電力を増加させる。これにより、セル半径が大きくなる。
【0028】
例えば、APからセル端にあるSTAに対する送信が成功し、通信環境が良好と判断して送信電力を低減するが、セル半径縮小により当該STAがセル外となって送信が失敗した場合には、送信電力を増加することにより通信を再開するような状況が考えられる。
【0029】
このように本発明の無線通信装置および送信電力制御方法では、ACK信号の受信(送信成功)によりAPの送信電力を低減させ、セル半径を小さくすることにより隣接するセルに対する干渉を低減することができる。一方、隣接セルのAPも同様の送信電力制御を行うことにより、隣接セルからの干渉が低減する。この結果、それぞれのセルにおいて送信電力を低減したにもかかわらず互いに干渉が低減することにより、通信品質が向上して送信成功となる確率がさらに高くなり、周波数リソースの有効利用ができる。さらに、送信成功時のAPの送信電力低減により、APの無駄な電力を削減し、省電力化が可能になる。
【0030】
また、APの送信電力低減によりセル半径が小さくなるので、多くのAPの設置が可能となり、STA(ユーザ)の収容数を向上させることができる。さらに、多数のAPあるいは新規のAPとの棲み分けが可能となる。
【0031】
また、本発明における送信電力制御は、例えばAP間での情報をやりとりするAP間協調は不要であり、完全にAP単位で独立した自律分散制御で対応可能である。これにより、AP間での情報交換に伴う信号伝送を控えることから干渉発生要因が減り、周波数リソースの改善を図ることができる。
【0032】
また、本発明ではACK信号の受信状況から通信環境の良否を判断し、送信電力の低減または増加を制御するが、通信環境の良否はACK信号に限らず、NACK信号を用いてもよい。また、受信信号の誤り率や受信レベル(例えば無線LANにおけるRSSI)に応じて通信環境の良否を判断し、送信電力制御を行ってもよい。例えば、受信信号の誤り率が閾値以下や、受信レベルが伝送速度(変調方式)で決まる閾値以上であれば通信環境が良好と判断できる。また、これらの組み合わせにより通信環境の良否を判断してもよい。また、制御チャネルで定義された情報要素以外を活用して、従来のデータ部のフィールドに新たに受信パケット情報を規定し、受信パケット情報を測定、受信することにより通信環境の良否を判断することも可能である。
【実施例1】
【0033】
図2は、本発明の実施例1の無線通信装置の構成例を示す。実施例1では、上記のACK信号、NACK信号、受信信号の誤り率等から通信環境の良否を判定し、通信環境の良否に応じて送信電力制御を行う構成例を示す。
【0034】
図2において、無線通信装置は、アンテナ11、復調回路12、通信環境判定回路13、変調回路14、送信電力制御回路15により構成される。ここでは、無線通信装置の主要部のみを示し、増幅回路や周波数変換回路などは省略している。
【0035】
アンテナ11に受信した受信信号は復調回路12で復調される。通信環境判定回路13は、復調回路12の復調信号に応じて送信信号の受信側との間の通信環境の良否を判定して送信電力制御回路15に通知する。変調回路14は、所定の伝送速度が設定され、例えば伝送速度に応じたQPSKやQAM等の1シンボルあたりのビット数が異なる変調方式で送信データを変調し、送信電力制御回路15に出力する。送信電力制御回路15は、通信環境判定回路13から通信環境の良否情報を入力し、通信環境が良好な場合(ACKを受信した場合等)には送信電力を低減し、通信環境が不良な場合(ACKを受信しない場合等)には送信電力を増加し、アンテナ11から送信する。
【0036】
ここで、送信電力を低減したにも関わらずACK信号を受信(送信成功)したことは、近隣のセルに対する干渉を抑えつつ、通信を継続することができることを示している。また、近隣のセルを構成するAPが同様の制御により送信電力を低減した場合には、当該セルからの干渉波が低減することになる。この結果、それぞれのセルにおいて送信電力が低減したにも関わらず、互いに干渉が低減することにより、送信が成功する確率が高くなり、周波数リソースの有効利用が可能になる。
【0037】
さらに、本発明の通信環境の良否に応じた送信電力制御は、通信環境の良否に応じた伝送速度制御によりスループット向上を実現する従来技術と組み合わせて、高精度なセル設計と干渉を抑えた棲み分けを実現し、併せて高スループットを提供するシステムの実現が可能である。ただし、伝送速度の変更と送信電力の変更が同時になされた場合、例えば通信環境が不良により伝送速度を低くし、かつ送信電力を増加する場合には、当該送信において送信が成功しても、伝送速度の変更によるものか、送信電力の変更によるものかがわからないため、そのまま適用しても精度よく送信電力制御、すなわち干渉量の制御を行うことができない。また、通信環境が良好により伝送速度を高くし、かつ送信電力を低減する場合には、信号の要求品質に対して相反する操作をすることになる。
【0038】
そのため、送信電力制御回路15は、変調回路14に設定された前回の伝送速度(変調方式)が今回の送信においても使用されている場合に限り、送信電力の変更を行う。すなわち、伝送速度が前回と同一である場合に、通信環境判定回路13で判定される通信環境の良否に応じた送信電力制御を行う。このような手順により、ある伝送速度(変調方式)で送信成功することを確認した上で送信電力の低減により干渉量を低減でき、かつその後の送信が失敗したときに送信電力を戻して通信品質を改善することができるため、伝送速度と送信電力の双方を精度よく制御することができる。以下、具体的な装置構成および処理手順について説明する。
【0039】
図3は、伝送速度制御と送信電力制御を組み合わせた無線通信装置の構成例を示す。ここでは、図2に示す実施例1の無線通信装置に適用した例を示すが、以下に示す各実施例においても伝送速度制御と送信電力制御の組み合わせが可能である。
【0040】
図3において、伝送速度設定回路10は、通信環境判定回路13から通信環境の良否情報を入力し、通信環境が良好な場合には伝送速度を増加し、通信環境が不良な場合には伝送速度を低減する制御を行う。また、送信電力制御回路15は、通信環境判定回路13から通信環境の良否情報を入力し、通信環境が良好な場合には送信電力を低減し、通信環境が不良な場合には送信電力を増加する制御を行う。さらに、伝送速度制御と送信電力制御が競合しないように、例えば伝送速度設定回路10が伝送速度を変更したときに送信電力制御回路15に送信電力制御を行わないように通知する。
【0041】
図4は、伝送速度制御と組み合わせた送信電力制御手順を示す。
図4において、伝送速度設定回路10は、通信環境判定回路13が出力する通信環境の良否情報に応じて、伝送速度増加の条件を満たすか否かを判定する(S11)。ここで、伝送速度増加の条件とは、ACK信号の受信回数が閾値を超える、一定期間における受信信号の誤り率が閾値を下回る、RSSIが伝送速度ごとに定めた閾値を超える等がある。伝送速度増加の条件を満たした場合には(S11:Yes )、伝送速度を1段階または通信環境によっては複数段増加する(S12)。また、伝送速度増加の条件を満たさない場合には(S11:No)、伝送速度低減の条件を満たすかを判定する(S13)。伝送速度低減の条件とは、ACK信号の未受信回数が閾値を超える、一定期間における誤り率が閾値を上回る、RSSIが伝送速度ごとに定めた閾値を下回る等がある。伝送速度低減の条件を満たす場合には(S13:Yes )、伝送速度を1段階または通信環境によっては複数段低減する(S14)。また、伝送速度増加の条件を満たさず(S11:No)、さらに伝送速度低減の条件を満たさない場合には(S13、No)、現在の伝送速度を維持する。例えば、ACK信号の受信回数が閾値を超えるまで、あるいはACK信号の非受信回数が閾値を超えるまでは、現在の伝送速度を維持することになる。
【0042】
次に、上記の処理により、伝送速度を増加または低減させる制御を行った場合には、送信電力制御を行わずに処理を終了する。このとき、送信電力を変更するための条件、例えば送信電力を低減させるACK信号の受信回数の閾値等の条件(パラメータ)をリセットしてもよい(S19)。この場合には、条件をリセットすることにより、伝送速度の変更をトリガとして送信電力の変更判定をリスタートすることができる。また、併せて送信電力を初期値に戻してもよい。
【0043】
一方、伝送速度増加の条件を満たさず(S11:No)、さらに伝送速度低減の条件を満たさず(S13、No)、現在の伝送速度が維持された場合には、通信環境判定回路13が出力する通信環境の良否情報に応じて、送信電力低減の条件を満たすか否かを判定する(S15)。ここで、送信電力低減の条件とは、ACK信号の受信回数が閾値を超える、一定期間における受信信号の誤り率が閾値を下回る、RSSIが伝送速度ごとに定めた閾値を超える等がある。送信電力低減の条件を満たした場合には(S15:Yes )、送信電力を1段階または通信環境によっては複数段低減して(S16)、処理を終了する。また、送信電力低減の条件を満たさない場合には(S15:No)、送信電力増加の条件を満たすかを判定する(S17)。送信電力増加の条件とは、ACK信号の未受信回数が閾値を超える、一定期間における誤り率が閾値を上回る、RSSIが伝送速度ごとに定めた閾値を下回る等がある。送信電力増加の条件を満たす場合には(S17:Yes )、送信電力を1段階または通信環境によっては複数段増加して(S18)、処理を終了する。また、送信電力低減の条件を満たさず(S15:No)、さらに送信電力増加の条件を満たさない場合には(S17:No)、現在の送信電力を維持して処理を終了する。
【0044】
このように、通信環境判定回路13が出力する通信環境の良否情報に応じて、伝送速度制御と送信電力制御が競合しないように制御される。また、伝送速度と送信電力のそれぞれの増減の閾値が異なるように設定することにより、例えば送信成功/失敗に対して逐次送信電力を調整しながら、送信成功/失敗が所定回数継続した場合には伝送速度を増加/低減するなどの制御が可能になる。すなわち、送信成功が所定回数継続して伝送速度を増加した次の送信が失敗した場合には、送信電力を増加するような制御を行う。また、送信電力の低減により送信が失敗した場合には、別途規定された低い伝送速度に切り替える制御を行う。
【0045】
なお、本発明で適用される変調方式は、QPSKや16QAM、64QAM等のシングルキャリア変調方式は当然に適用が可能であるが、その後の2次変調にIFFTを用いたOFDM変調や、拡散符号を適用するSpread Spectrum 変調の適用も可能である。さらに、DFE−SpreadOFDMやシングルキャリア変調−周波数領域等化を前提とする方式のように、シングルキャリア変調後に信号処理を行い、GIあるいはCPを付加して送信を行い、受信側で周波数等化処理を行う送信方法に関しても、本発明の適用が可能である。
【0046】
ここで、伝送速度制御と送信電力制御を組み合わせた無線通信装置における送信電力制御の応用例を示す。
【0047】
複数のSTAが帰属する場合に、例えばビーコンパケットから得られる複数のSTAのbasic-rate-set(利用可能な伝送速度の組み合わせ)の中の下限または上限の伝送速度が選択されているときは、通信環境の良否に応じて送信電力制御を行い、その中間の伝送速度が選択されているときは、通信環境の良否に応じて伝送速度制御を優先する制御を行うようにしもよい。
【0048】
また、下限の伝送速度で送信失敗(ACK受信せず)により通信環境が不良と判断される場合に、伝送速度はさらに下げられないので送信電力を増加して通信品質を改善する。一方、下限の伝送速度で送信成功(ACK受信)により通信環境が良好と判断される場合は、送信電力を低減する制御と伝送速度を増加する制御の選択が可能であるが、例えば伝送速度を増加せずに送信電力を低減することにより、他の無線システムへの干渉低減を優先することができる。あるいは、送信電力を低減せずに伝送速度を増加することにより、スループットを改善することができる。
【0049】
また、上限の伝送速度で送信成功(ACK受信)により通信環境が良好と判断される場合に、伝送速度はさらに上げられないので送信電力を低減する制御を行う。一方、上限の伝送速度で送信失敗(ACK受信せず)により通信環境が不良と判断される場合は、送信電力を増加する制御と伝送速度を低減する制御の選択が可能であるが、例えば送信電力を増加せずに伝送速度を低減することにより、必要以上に大きな送信電力を避けて他の通信システムへの干渉を低減することができる。
【0050】
また、複数のSTAが帰属する場合に、すべてのSTAに対して一律に送信電力制御を行ってもよく、各STAに対して個別に送信電力制御を行ってもよい。すべてのSTAに対して一律に送信電力制御を行う場合には、STAとの送信頻度(送信パケット数)に基づいて基準とするSTAを定め、当該基準STAとの送信電力制御を他のSTAとの通信にも適用する。この場合にはSTAごとの制御を行う必要がなくなるため、制御を簡易化することが可能となる。ただし、基準STAとの通信環境が良好で送信電力を低減したために、一部のSTAとの通信環境が劣化することも想定されるが、そのSTAからACK信号等を受信しない場合に、これをトリガに送信電力を増加させてもよい。すなわち、基準STAとの通信環境が良好な場合に送信電力を低減し、各STAのいずれかで通信環境が不良になった場合に送信電力を増加するようにしてもよい。
【0051】
また、本発明は、通信環境の良否の判定をレイヤ2の情報に基づくだけではなく、レイヤ1(IEEE802.11無線LANのPLCPヘッダに記載された情報、RSSI、物理層での制御情報の交換等)等、その他のレイヤの情報に基づいて行ってもよい。
【0052】
また、本発明の送信電力制御を適用する無線通信システムと他の無線通信システムが同一周波数で混在する場合、他の無線通信システムからの受信電力が大きいことを検出したことにより、本発明を適用する無線通信システムの送信電力を増加させる制御を行うことも可能である。具体的には実施例3として説明する。この構成によると、セル半径面からセル間の公平性を担保することが可能である。
【実施例2】
【0053】
図5は、本発明の実施例2の無線通信装置の構成例を示す。
実施例2では、実施例1のACK信号の受信の有無や受信信号の誤り率から得られる通信環境の良否に応じた送信電力制御に加えて、受信レベル(例えば無線LANにおけるRSSI)に応じた送信電力制御を行う構成例を示す。なお、受信レベルのみに応じた送信電力制御を行う構成であってもよい。
【0054】
図5において、無線通信装置は、アンテナ11、復調回路12、通信環境判定回路13、変調回路14、送信電力制御回路15、受信レベル検出回路16により構成される。ここでは、無線通信装置の主要部のみを示し、増幅回路や周波数変換回路などは省略している。
【0055】
アンテナ11に受信した受信信号は復調回路12で復調される。通信環境判定回路13は、復調回路12の復調信号に応じて送信信号の受信側との間の通信環境の良否を判定して送信電力制御回路15に通知する。受信レベル検出回路16は、受信レベルを検出して送信電力制御回路15に通知する。変調回路14は、所定の伝送速度が設定され、例えば伝送速度に応じたQPSKやQAM等の1シンボルあたりのビット数が異なる変調方式で送信データを変調し、送信電力制御回路15に出力する。
【0056】
送信電力制御回路15は、通信環境判定回路13から通信環境の良否情報を入力し、受信レベル検出回路16で検出される受信レベルを入力し、通信環境が良好な場合(ACKを受信し、かつ受信レベルが伝送速度(変調方式)で規定される閾値を超える場合等)には送信電力を低減し、通信環境が不良な場合(ACKを受信しない、または受信レベルが伝送速度(変調方式)で規定される閾値を下回る場合等)には送信電力を増加し、アンテナ11から送信する。
【0057】
なお、通信環境の良否を決める条件は、ACK信号の受信の有無、受信信号の誤り率と閾値との比較結果、受信レベルと閾値との比較結果のいずれか1つでもよいし、2以上の判断基準の組み合わせでもよい。また、2以上の判断基準の組み合わせ手段は、各判断基準のAND、OR等により実現することができる。
【実施例3】
【0058】
図6は、本発明の実施例3の無線通信装置の構成例を示す。
実施例2は、自システムにおける受信レベルを検出し、伝送速度(変調方式)で規定される閾値との比較により通信環境の良否の判断に用いている。実施例3は、他システムからの干渉レベルを検出し、干渉レベルに応じた送信電力制御を行う構成例を示す。
【0059】
図6において、無線通信装置は、アンテナ11、復調回路12、通信環境判定回路13、変調回路14、送信電力制御回路15、干渉レベル検出回路17により構成される。ここでは、無線通信装置の主要部のみを示し、増幅回路や周波数変換回路などは省略している。
【0060】
アンテナ11に受信した受信信号は復調回路12で復調される。通信環境判定回路13は、復調回路12の復調信号に応じて送信信号の受信側との間の通信環境の良否を判定して送信電力制御回路15に通知する。干渉レベル検出回路17は、干渉信号が事前に分かっている場合には干渉信号の受信信号レベルやRSSI値の適用が可能であり、さらに干渉信号と希望信号の区別ができない場合には、受信信号に含まれるSSID(ネットワーク識別子)や他送信局を示す識別子で識別される他システムからの干渉レベルを検出して送信電力制御回路15に通知する。変調回路14は、所定の伝送速度が設定され、例えば伝送速度に応じたQPSKやQAM等の1シンボルあたりのビット数が異なる変調方式で送信データを変調し、送信電力制御回路15に出力する。
【0061】
送信電力制御回路15は、通信環境判定回路13で判定される通信環境の良否および干渉レベル検出回路17で検出される干渉レベルに応じて、通信環境が良好な場合(ACKを受信し、かつ干渉レベルが閾値を下回る場合等)には送信電力を低減し、通信環境が不良な場合(ACKを受信しない、または干渉レベルが閾値を超える場合等)には送信電力を増加し、アンテナ11から送信する。なお、干渉レベル検出回路17から出力される干渉レベルと、通信環境判定回路13から出力される通信環境情報の組み合わせに基づく送信電力制御は、それらの判断基準のANDやOR等を適宜組み合わせて実現することができる。
【0062】
なお、他システムの受信信号であるか否かの識別は、例えば、IEEE802.11e 規格以降で定義された各端末を識別する Authentication ID(AID)や、IEEE802.11 TGac で議論が進んでいる端末間をグループ化する識別子のGroup IDのような手法を用いて行うことができる。
【0063】
また、干渉レベル検出回路17は、AIDやGroup IDを物理層信号のプリアンブル信号部分や物理層信号のヘッダ部分に記載して識別に活用することで、低消費電力化を実現することも可能である。また、干渉レベル検出回路17は、他システム/自システムの基地局に関連する情報や、他システム/自システムのプリアンブル信号の物理レイヤ信号、あるいは、MACレイヤまで復調を行った信号から識別する構成でもよい。
【0064】
また、送信電力制御回路15は、他システムの干渉が検出されているときに、送信失敗により送信電力を増加させ、次の送信が成功した場合には、そのとき検出される他システムの干渉レベルに対する送信電力の下限値として設定する。その後、当該干渉レベルが検出されるときは、送信成功に応じて送信電力を低減する制御を行う場合でも、当該下限値を下回らないようにする。すなわち、送信電力の低減により、他システムにおいてキャリアセンスで検出されずに他システムからの干渉波が生じる場合に、送信電力の下限値を設定することにより、他システムがキャリアセンスで検出できる程度の送信電力を確保できるため、通信品質を確保することができる。
【0065】
本実施例では、他システムを判定する識別子、例えばSSIDや基地局ID、基地局の位置情報等を活用することで、干渉源の属性や設置位置等に応じた送信電力制御が実現可能である。また、隣接する各システムが自律的に動作して送信電力を低減することにより、自システムの送信電力を可能な限り小さくすることができる。これにより、低消費電力化を図りながら棲み分けが可能となり、各システムにおける周波数リソースの有効利用およびユーザの収容数を改善することができる。
【実施例4】
【0066】
図7は、本発明の実施例4の無線通信装置の構成例を示す。
実施例1〜3は、例えば図1に示す無線通信システムにおいて、送信電力制御によりセル半径を増減し、複数のセルの棲み分けを可能にしている。実施例4は、各セルが同一周波数で運用される無線通信システムにおいて、送信電力制御だけでは空間的な棲み分けが困難なほど近接したセルがある場合に適用される。すなわち、本実施例は、送信電力制御によるセル棲み分けが困難な場合でも、必要最小限の送信電力に制御することにより省電力化を図るものである。
【0067】
図7において、無線通信装置は、アンテナ11、復調回路12、通信環境判定回路13、変調回路14、送信電力制御回路15、干渉レベル検出回路17、送信制御回路18により構成される。ここでは、無線通信装置の主要部のみを示し、増幅回路や周波数変換回路などは省略している。
【0068】
アンテナ11に受信した受信信号は復調回路12で復調される。通信環境判定回路13は、復調回路12の復調信号に応じて送信信号の受信側との間の通信環境の良否を判定して送信電力制御回路15に通知する。干渉レベル検出回路17は、干渉信号が事前に分かっている場合には干渉信号の受信信号レベルやRSSI値の適用が可能であり、さらに干渉信号と希望信号の区別ができない場合には、受信信号に含まれるSSID(ネットワーク識別子)や他送信局を示す識別子で識別される他システムからの干渉レベルを検出して送信電力制御回路15および送信制御回路18に通知する。変調回路14は、所定の伝送速度が設定され、例えば伝送速度に応じたQPSKやQAM等の1シンボルあたりのビット数が異なる変調方式で送信データを変調し、送信電力制御回路15に出力する。
【0069】
送信電力制御回路15は、通信環境判定回路13で判定される通信環境の良否および干渉レベル検出回路17で検出される干渉レベルに応じて、通信環境が良好な場合(ACKを受信し、かつ干渉レベルが閾値を下回る場合等)には送信電力を低減し、通信環境が不良な場合(ACKを受信しない、または干渉レベルが閾値を超える場合等)には送信電力を増加し、アンテナ11から送信する。
【0070】
ここで、他システムからの干渉レベルが閾値を超えている場合で、かつ送信電力を増加させたにもかかわらず送信成功にならない場合には、送信電力制御によるセル棲み分けが困難な場合と判断して送信制御回路18を動作させる。送信制御回路18は、他システムからの干渉レベルが閾値を超える場合に、他システムと時間的な棲み分けを図るための処理を行う。例えば、NAV(Network Allocation vector)信号を活用して無線チャネルを仮想的に予約し、あるいはRTS(Request to Send)/CTS(Clear to Send )信号により空きチャネルを確保し、それぞれ確保した送信タイミングを変調回路14に通知する。変調回路14は、送信制御回路18から通知される送信タイミングで送信信号を送信電力制御回路15に出力する。送信電力制御回路15は、通信環境判定回路13で判定される通信環境の良否に応じて送信電力制御を行う。
【実施例5】
【0071】
図8は、本発明の実施例5の無線通信装置の構成例を示す。
実施例4は、各セルが同一周波数で運用される無線通信システムにおいて、送信電力制御だけでは空間的な棲み分けが困難なほど近接したセルがある場合に、NAV等により確保した送信タイミングで送信電力制御を行う構成であった。実施例5は、各セルが異なる周波数で運用可能な無線通信システムにおいて、同一周波数で送信電力制御だけでは空間的な棲み分けが困難なほど近接したセルがある場合に適用される。
【0072】
図8において、無線通信装置は、アンテナ11、復調回路12、通信環境判定回路13、変調回路14、送信電力制御回路15、干渉レベル検出回路17、周波数変換回路19−1,19−2により構成される。
【0073】
アンテナ11に受信した受信信号は、周波数変換回路19−1を介して復調回路12に入力し、復調される。通信環境判定回路13は、復調回路12の復調信号に応じて送信信号の受信側との間の通信環境の良否を判定して送信電力制御回路15に通知する。干渉レベル検出回路17は、干渉信号が事前に分かっている場合には干渉信号の受信信号レベルやRSSI値の適用が可能であり、さらに干渉信号と希望信号の区別ができない場合には、受信信号に含まれるSSID(ネットワーク識別子)や他送信局を示す識別子で識別される他システムからの干渉レベルを検出して送信電力制御回路15および周波数変換回路19−1,19−2に通知する。変調回路14は、所定の伝送速度が設定され、例えば伝送速度に応じたQPSKやQAM等の1シンボルあたりのビット数が異なる変調方式で送信データを変調し、周波数変換回路19−2を介して送信電力制御回路15に出力する。ここでは、周波数変換回路19−2は動作しない。
【0074】
送信電力制御回路15は、通信環境判定回路13で判定される通信環境の良否および干渉レベル検出回路17で検出される干渉レベルに応じて、通信環境が良好な場合(ACKを受信し、かつ干渉レベルが閾値を下回る場合等)には送信電力を低減し、通信環境が不良な場合(ACKを受信しない、または干渉レベルが閾値を超える場合等)には送信電力を増加し、アンテナ11から送信する。
【0075】
ここで、他システムからの干渉レベルが閾値を超えている場合で、かつ送信電力を増加させたにもかかわらず送信成功にならない場合には、送信電力制御による同一周波数でのセル棲み分けが困難な場合と判断して周波数変換回路19−1,19−2を動作させる。周波数変換回路19−1,19−2は、他システムからの干渉レベルが閾値を超える場合に、送信側および受信側の双方、または一方でキャリア周波数を変更する処理を行う。送信電力制御回路15は、通信環境判定回路13で判定される通信環境の良否に応じて送信電力制御を行う。
【0076】
なお、周波数変換回路19−1,19−2における周波数変換は、別の周波数に本システムで一意に変更することも可能であるが、一意に変更するのではなく、特定の局ごと、パケットごと、あるいは空き周波数に応じて、適応的にあるいは周期的に変更するようにしてもよい。
【0077】
また、OFDMやDFE−SpreadOFDMのようなIFFTを用いて送信を行う変調方式の場合には、各サブキャリアで、空き帯域に周波数変更する柔軟な運用も当然可能であり、より柔軟に干渉を低減した多ユーザ収容のシステムが構築可能である。
【0078】
また、周波数変更をする場合には、通信相手に対してのみ周波数変更を指示してもよいし(受信側の周波数変換回路19−1のみで対応)、送信側および受信側で個別に周波数変更をしてもよい。
【0079】
また、無線LAN規格のIEEE802.11h で規定されたDFS機能と組み合わせて実装することも可能であり、干渉源があった場合には、それを回避するように通信相手と共に周波数変換を行うことが可能である。
【実施例6】
【0080】
図9は、本発明の実施例6の無線通信装置の構成例を示す。
実施例4,5は、送信電力制御だけでは空間的な棲み分けが困難なほどセルが近接している無線通信システムにおいて、干渉レベル検出回路17で検出される他システムからの干渉レベルに応じて、送信タイミング制御または周波数変換により各セルの棲み分けを図りなから送信電力制御を行う構成であった。実施例6は、干渉レベル検出回路17を用いず、通信環境判定回路13で判定される通信環境の良否情報に基づいて他システムの存在または干渉レベルを推定し、送信タイミング制御または周波数変換により各セルの棲み分けを図りなから送信電力制御を行うことを特徴とする。
【0081】
図9(1) の無線通信装置は、図7の実施例4に対応するもので、アンテナ11、復調回路12、通信環境判定回路13、変調回路14、送信電力制御回路15、送信制御回路18により構成される。通信環境判定回路13で判定される通信環境の良否情報に基づいて他システムの存在または干渉レベルを推定し、送信制御回路18に通知する。送信制御回路18の機能は実施例4で説明した通りである。
【0082】
図9(2) の無線通信装置は、図8の実施例5に対応するもので、アンテナ11、復調回路12、通信環境判定回路13、変調回路14、送信電力制御回路15、周波数変換回路19−1,19−2により構成される。通信環境判定回路13で判定される通信環境の良否情報に基づいて他システムの存在または干渉レベルを推定し、周波数変換回路19−1,19−2に通知する。周波数変換回路19−1,19−2の機能は実施例5で説明した通りである。
【符号の説明】
【0083】
10 伝送速度設定回路
11 アンテナ
12 復調回路
13 通信環境判定回路
14 変調回路
15 送信電力制御回路
16 受信レベル検出回路
17 干渉レベル検出回路
18 送信制御回路
19 周波数変換回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナから送信する送信信号を出力する変調手段と、
前記アンテナに受信した受信信号を復調する復調手段と、
前記復調手段の復調信号に応じて前記送信信号の受信側との間の通信環境の良否を判定する通信環境判定手段と
を備えた無線通信装置において、
前記通信環境判定手段から前記通信環境の良否情報を入力し、前記通信環境が良好である場合に前記送信信号の送信電力を低減し、前記通信環境が不良である場合に前記送信信号の送信電力を増加する送信電力制御手段を備えた
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信装置において、
前記受信信号の受信レベルを検出して前記送信電力制御手段に出力する受信レベル検出手段を備え、
前記送信電力制御手段は、前記受信レベルが閾値を超えるときに前記通信環境が良好とし、前記受信レベルが閾値以下のときに前記通信環境が不良として前記送信信号の送信電力を制御する構成である
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項3】
請求項1に記載の無線通信装置において、
前記受信信号が他システムからの信号であることを識別し、他システムからの干渉レベルを検出して前記送信電力制御手段に出力する干渉レベル検出手段を備え、
前記送信電力制御手段は、前記干渉レベルが閾値以下のときに前記通信環境が良好とし、前記干渉レベルが閾値を超えるときに前記通信環境が不良として前記送信信号の送信電力を制御する構成である
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項4】
請求項1に記載の無線通信装置において、
前記受信信号が他システムからの信号であることを識別し、他システムからの干渉レベルを検出する干渉レベル検出手段と、
前記干渉レベルが閾値を超えるときに、前記他システムと自システムの送信タイミングを調整して棲み分けを行う送信制御手段と
を備えたことを特徴とする無線通信装置。
【請求項5】
請求項1に記載の無線通信装置において、
前記受信信号が他システムからの信号であることを識別し、他システムからの干渉レベルを検出する干渉レベル検出手段と、
前記干渉レベルが閾値を超えるときに、前記送信信号のキャリア周波数または前記受信信号のキャリア周波数の少なくとも一方を変換し、前記他システムと自システムのキャリア周波数が異なるように設定する周波数変換手段と
を備えたことを特徴とする無線通信装置。
【請求項6】
請求項1に記載の無線通信装置において、
前記通信環境判定手段から前記通信環境の良否情報を入力し、前記送信電力制御手段で送信電力を増加しても前記通信環境が不良である場合に、前記他システムと自システムの送信タイミングを調整して棲み分けを行う送信制御手段を備えた
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項7】
請求項1に記載の無線通信装置において、
前記通信環境判定手段から前記通信環境の良否情報を入力し、前記送信電力制御手段で送信電力を増加しても前記通信環境が不良である場合に、前記送信信号のキャリア周波数または前記受信信号のキャリア周波数の少なくとも一方を変換し、前記他システムと自システムのキャリア周波数が異なるように設定する周波数変換手段を備えた
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項8】
請求項1に記載の無線通信装置において、
前記送信電力制御手段は、前記送信信号の伝送速度が前回の送信信号の伝送速度と同一であるときに前記通信環境の良否情報に応じた送信電力制御を行い、前記送信信号の伝送速度が前回の送信信号の伝送速度と同一でないときに前記通信環境の良否情報に応じた送信電力制御を行わない構成である
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項9】
アンテナから送信する送信信号を出力する変調手段と、
前記アンテナに受信した受信信号を復調する復調手段と、
前記復調手段の復調信号に応じて前記送信信号の受信側との間の通信環境の良否を判定する通信環境判定手段と
を備えた無線通信装置の送信電力制御方法において、
前記通信環境判定手段から前記通信環境の良否情報を入力し、前記通信環境が良好である場合に前記送信信号の送信電力を低減し、前記通信環境が不良である場合に前記送信信号の送信電力を増加する送信電力制御を行う
ことを特徴とする無線通信装置の送信電力制御方法。
【請求項10】
請求項9に記載の無線通信装置の送信電力制御方法において、
前記送信電力制御手段は、前記送信信号の伝送速度が前回の送信信号の伝送速度と同一であるときに前記通信環境の良否情報に応じた送信電力制御を行い、前記送信信号の伝送速度が前回の送信信号の伝送速度と同一でないときに前記通信環境の良否情報に応じた送信電力制御を行わない
ことを特徴とする無線通信装置の送信電力制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−244317(P2012−244317A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110996(P2011−110996)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】