説明

無線通信装置の制御システム

【課題】電池駆動にて無線通信を行う複数の無線端末装置子機において、子機の送信電力を切換えることで電池の長寿命化を行うこと。
【解決手段】無線通信装置の親機6と、親機6に対して距離の異なる位置に配置された複数の無線通信装置の子機7…と、親機6に接続され無線通信の制御を行う制御装置2と、を備え、複数の子機7…は、それぞれ、電池1で駆動されて親機6との送受信を行うとともに送信する無線出力レベルを可変制御できるものであり、制御装置2は、各子機7…から送信された初期設定時の受信電波を受け取り、受信電波の強度と所定の閾値とを比較する受信電波強度比較部31と、この比較部31の比較結果に応じて子機7…の無線出力レベルを切り換えるように指示する出力レベル切換部33と、を有し、出力レベル切換部33は、有効最小な受信強度範囲内の強度で親機6が受信できるように子機毎に無線出力レベルを切り換えるように指示すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、省電力の無線通信装置(無線端末装置)を管理する制御システムに係わり、特に、電池駆動する無線通信装置子機の電池消耗を低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化対策や低炭素社会実現の潮流を受けて、様々な省エネルギー化(以下、省エネ化と称する)の取組みが進められている。国内の一般家庭向けの省エネ化としては、太陽光パネルを始めとする光エネルギーを活用することや、低価格な深夜電力を利用した給湯のシステムをオール電化住宅の主力設備として導入すること等が挙げられる。
【0003】
また一方では、現在の使用エネルギーを読み取る手段を設けることによって消費の「見える化」の実現が始まっており、電気メータ、ガスメータ、水道メータ等の使用量を読み取り、現在までの累積消費量を提示して使用状況を明らかにする、つまりエネルギー消費の「見える化」を行うことで、省エネ化に対する使用者側への改善案などを提供している。
【0004】
さらには、使用者側のエネルギー効率を上げるために、太陽光発電や燃料電池等の蓄電エネルギーなどの手段に切り換えることで、より省エネ化が行える制御方法などが最近では実績を上げてきている。この制御方法の一つとして、有線による電話回線制御や無線による通信システム等を使って、使用者に液晶モニタや中央制御装置などを使い容易に消費量を通知して「見える化」を可能とし、かつ太陽光発電の系統動作の選択を任意に実施できることなどが提供されている。
【0005】
家庭内のエネルギーの消費を検出する一つの方法としては、例えば消費メータ類のデータ値をネットワークに取り込む方法等が挙げられるが、消費メータ類で読み込む積算消費量の算出については、各消費状態を検出するセンサからのデータ値を読み込むシステムで実施される。このシステムは、より設置費用が安価で、消費電力が少ない、例えば照明の明るさの制御や部屋の温度制御や水道の使用状況などを電池駆動による無線通信などを使って制御を行うシステムで、ワイヤレスセンサネットワークシステムとして上市し、注目を集めている。
【0006】
このワイヤレスセンサネットワークシステムでは、電気、水道、ガス等のメータによって得られた使用値を、各メータ毎に読み取れる機能を有し、この読み取りデータを無線通信ユニットにて中央制御装置にデータ通信し、それぞれの消費量をTVモニタ画面に表示させて確認を行うものであり、使用者に対し、各エネルギーの使用量の「見える化」を行うことが可能になっている。
【0007】
当該システムの具体的な一例としては、家庭内に設置した中央制御装置から、種々センサを持つ無線通信端末装置に対して、各種センサのデータ信号の送出を要求し、無線通信端末装置のセンサから出力されたデータ信号あるいは情報を元に、中央制御装置ではデータを集約し整理して情報表示を行い、必要に応じあるいは予め決められた設定値になる様に、各無線通信端末装置で吸い上げたエネルギーの使用量を把握しながら、無線通信端末装置へ返信制御を行うシステムである(例えば、特許文献1)。そして、特許文献1に示すような無線通信端末装置の動作電源は、一般の汎用乾電池を採用しているものが多くあり、センサ読込みの動作を指定時間で読むタイマ動作や間欠的動作を行うことが可能であり、電池の消耗を極力低減して長時間に亘り動作を行わせ、目的の値を取得し、中央制御装置に返信をすることが行われている。
【0008】
また、無線通信端末装置の送信電力の過多による無駄な電力を削減するの従来技術として、例えば、特許文献2には、微弱無線制御の無線LAN、あるいは省電力無線通信制御のZigBee(家電向けの短距離無線通信規格の一つ)等に切り替えて、送信電力の無駄な消費をなくすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−194022号公報
【特許文献2】特開2009−77103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の特許文献1や特許文献2を含めた従来技術では、電池駆動された無線装置の低消費電力化を図ってはいるが、センサからのデータ信号の授受を行う通信制御では、電池を効率よく長時間で使うためには、系統の単純な順次切換えだけで電池の長寿命化の実現は難しく、通信電波状況に応じた積極的な低電力化などが求められている。
【0011】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電池駆動にて無線通信を行う複数の無線端末装置において電池長寿命化を行うため、各無線端末装置の送信電力を、通信可能な下限の設定値あるいは任意値に設定することで、電池で駆動する無線端末装置の無駄な電力を無くすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、本発明は主として次のような構成を採用する。
無線通信装置の親機と、前記親機に対して無線通信を行う距離の異なる位置に配置された複数の無線通信装置の子機と、前記親機に接続されて前記無線通信の制御を行う制御装置と、を備えた無線通信装置の制御システムであって、前記複数の子機は、それぞれ、電池で駆動されて前記親機との送受信を行うとともに送信する無線出力レベルを可変制御できるものであり、前記制御装置は、前記親機を通して、各子機から送信された初期設定時の受信電波を受け取り、前記受信電波の強度と所定の閾値とを比較する受信電波強度比較部と、前記受信電波強度比較部の比較結果に応じて前記子機の前記無線出力レベルを切り換えるように指示する出力レベル切換部と、を有し、前記出力レベル切換部は、有効最小な受信強度範囲内の強度で親機が受信できるように子機毎に前記無線出力レベルを切り換えるように指示する構成とする。
【0013】
また、前記無線通信装置の制御システムにおいて、前記制御装置は、前記親機を通して、各子機から送信された前記電池の残量値を受け取り、前記電池の残量値と所定の閾値とを比較する電池残量比較部と、前記電池残量比較部の比較結果を記憶し監視するとともに前記閾値以下であれば警告報知する構成とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電池駆動する無線通信を行う複数の無線端末装置子機において、異なる位置に配置された子機毎にその無線出力レベルを可変制御して、親機で有効最小の受信電波強度が得られるようにすることで、各子機の電池の消費を少なくし、電池長寿命化を引き出すことができる
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る無線端末装置の制御システムの基本的構成を示す全体の概要図である。
【図2】本実施形態に係る無線端末装置の制御システムにおける親機と複数子機の通信距離を表す図である。
【図3】本実施形態に係る無線端末装置の制御システムにおける初期設定時の制御フローを示す説明図である。
【図4】本実施形態に関する無線端末装置親機に接続されたPC制御装置の内部構成を示す図である。
【図5】本実施形態に関する無線端末装置子機の内部構成を示す図である。
【図6】本実施形態に係る無線端末装置における無線通信での通信振幅対電池消費率を示した図である。
【図7】本実施形態に関する無線端末装置親機における無線出力レベルを決定する制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に係る無線端末装置(無線通信装置)の制御システムについて、図面を参照しながら以下詳細に説明する。なお、本発明の実施形態に係る無線端末装置の制御システムを図示する図面において、同一符号は、同一の構成と機能を表すものである。
【0017】
本発明の実施形態に係る無線端末装置の制御システムの基本的構成について、図1〜図5を用いて説明する。図面において、1は電池、2はPC制御装置、3はコマンド制御部、4は入出力制御部、5はシリアル通信網、6は無線端末装置親機、7は無線端末装置子機a、8は無線端末装置子機b、9は無線端末装置子機n、10は温度センサ、11は照度センサ、12aはLEDa、12bはLEDb、12cはLEDc、13はリセットスイッチ、14は人感センサ、15は制御デバイス、16は電源/GND端子、18はRFアンプ、19は無線アンテナ、20は出力アンプ、21は切換スイッチ、22は入力アンプ、23は出力振幅制御切換え、24はCPUはand I/O、25はメモリ、26はADC、27は出力アンプ、31はRSSI閾値比較部、32は電池電圧閾値比較部、33は出力レベル切換部、34は切換コマンド制御部、41はデータACK処理部、42は入出力インターフェース部、43は記憶テーブル、をそれぞれ表す。
【0018】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る無線端末装置の制御システムの基本的構成は、無線端末装置親機6(以下、親機と称する)と、無線端末装置子機(以下、子機と称する)7,8,9と、PC制御装置2と、から構成されている。ここで、無線端末装置は装置同士で無線通信を行うものを意図しているので無線通信装置とも称する。
【0019】
子機aから子機nは符号7,8,9で示し、子機7,8,9には無線信号の授受を行なうための無線アンテナ19がそれぞれ接続されており、さらに、子機7,8,9内には、無線アンテナ19の授受感度を決める出力アンプ27を保有している。また、出力アンプ27の出力は、親機6からの通信制御によって出力振幅を段階的にあるいは任意に選択が可能な機能を持っている(後述する図5の出力アンプ20への出力振幅制御切換え23を参照)。子機7,8,9には無線動作のために必要な乾電池1あるいは充電電池をそれぞれ備えている。
【0020】
PC制御装置2は、無線端末装置親機6とシリアル通信網5で接続されており、図示しないCPU、ROM、RAMなどを内蔵し、さらに、コマンド制御部3と入出力制御部4を保有している。PC制御装置2は、親機6の受信電波強度値(以下、RSSI値と称する:Received Signal Strength Indicator)を計測する通信を行い、また、子機7,8,9における電池1の電圧の現在量や消耗量などの読み込む通信を行う(親機6を通して)。
【0021】
コマンド制御部3は、読み込みしたRSSI値に対して受信電波強度閾値との比較を行う。詳細は後述するがRSSI値を受信電波強度閾値と比較し、同時に子機7,8,9における電池1の電圧を電池電圧閾値と比較する機能を備えている。また、入出力制御部4は、親機6の受信した電波の強度に応じて子機の出力設定を切換えるように、親機6へ送信を行い、子機からの出力振幅を段階的にあるいは任意の値になるように通信制御設定を行う機能を備えている。
【0022】
図2には、配置された親機6と子機7,8,9の通信距離の差異を表している。親機6から子機7,8,9間の距離はそれぞれa(m)、b(m)、c(m)と離れた設置が構築された例を示す。子機7,8,9はそれぞれ使用条件によって配置される距離が設定されており、親機と各子機との間で違う距離の配置であることに伴って、授受する通信信号レベルが変わることを示している。無線端末装置の各子機で通信信号レベルが異なり、親機との通信において、近場の子機は遠方の子機に対して小さい出力値に調整することで、省電力とすることができる。
【0023】
図3は本実施形態に係る無線端末装置の制御システムにおける初期設定時の制御フローを示す説明図である。図示する動作手順は、親機6と子機7の間で無線動作を行なった場合を示す。親機6が電波強度測定モード(b1)にて電波強度確認コマンド(c1)を発行し、無線アンテナ19から子機7へ送信する。ここでは、親機6および子機7の初期の送受信レベルは、何れもZigBeeデフォルト設定つまりは、0dBmでの送受信を行う設定とし動作開始とする。
【0024】
子機7は、受信した電波強度測定モード(b1)に応じて現状設定していた電波強度を以て親機6に電波強度データの読込み完了の電波強度データACK(c2)として、親機6からの通信読み取りレベルのRSSI値を返信する。すなわち、親機6では子機7から送信されたデータの読込み完了の電波強度データACKとRSSI値とを同時に得る(c2)。
【0025】
次に、親機6は、電池残量測定モード(b2)により、電池残量確認コマンド(c3)を送信する。子機7は電池残量測定モード(b2)により、計測した電池残量のデータと共にACK(c4)を親機6に送信する。次に、親機6からは無線出力レベル切換えモード(b3)により、無線制御部切換コマンド(c5)を送信する。子機7は無線出力レベル切換えモード(b3)に基づき、切換え完了のACKを親機6に送信し(後述するが、親機6からのコマンドにより、子機7は図5に示す出力アンプ20からの出力振幅を制御する切換を行う)、親機6は電波通信設定初期化を完了させる(c6)。
【0026】
図4には、本実施形態に関する無線端末装置親機に接続されたPC制御装置の内部構成を示し、親機と子機間の電波強度や子機の電池残量等を読み取ることを例示している。親機6とシリアル通信網5を介して接続されたPC制御装置2は、入出力制御部4とコマンド制御部3から構成され、入出力制御部4は入出力インターフェース部42、データACK処理部41、記憶テーブル43を有しており、コマンド制御部3はRSSI閾値比較部31、電池電圧閾値比較部32、出力レベル切換部33、切換コマンド制御部34を有していて、図示するように接続されている。
【0027】
図4に示すPC制御装置2が奏する機能と作用の概要について以下説明する。図3に示した電波強度測定モード(b1)により、子機7の現状の読み取り状態について子機7からのRSSI値を入手し、RSSI閾値比較部31においてRSSI閾値との比較で電波強度を読み取り、出力レベル切換部32に送出する。また、電池残量測定モード(b2)においては、電池残量を判断するために、電池電圧閾値比較部32において電池電圧閾値との比較を行い、その比較結果を記憶テーブル43に格納し、電池残量を監視し得るようにする。電池残量が所定の閾値以下になれば警告報知するようにしてもよい。
【0028】
切換コマンド制御部34により新たに設定した制御値(例えば、図5に示す子機7における出力アンプ20からの出力振幅の制御値)を記憶テーブル43に記憶させ、入出力インターフェース部42を介して、無線端末装置親機6にシリアル通信網5を介して送出する流れである。
【0029】
次に、親機6、子機7並びにPC制御装置2の詳細動作について、図3に示すコマンド順にしたがって説明する。親機6は、図3で示した電波強度確認コマンド(c1)を送信すると、子機7からコマンドの受け取りの返信を待つ。子機7では(c1)コマンドを受信すると、受信における電波強度測定モードにて内部レジスタ等の初期設定を行い、また、親機が要求した子機7の初期通信状態のデータを読み取って、電波強度データACK(c2)として親機6に送信を行う。電波強度データのACK(c2)は、子機7で使用する回路デバイスの初期化と同時に通信規格に準拠した通信プロトコルが設定される。親機6に対しては通信自局のアドレス等をも同時に返信することで、親機6と子機7が無線ネットワークの構築を開始できる手順を行うことを実現できる。換言すると、親機6と子機7,8,9との間の無線ネットワークを最初に構築する上で必須の電波やりとりを利用して、子機毎の無線出力レベルを適切に設定することが本発明の特徴の一つである。
【0030】
電波強度データACKは、親機6からシリアル通信網5を介して、PC制御装置2へも転送されて入出力制御部4に入力される。入出力制御部4は、入出力インターフェース部42を経て、データACK処理部41にて子機7,8,9の認識を行なった後、次のコマンド制御部3にも同時に入力信号を送る。
【0031】
コマンド制御部3は、読み出したRSSI値に対してその閾値との比較を行うRSSI閾値比較部31と、読み取った電池電圧に対してその閾値との比較を行なう電池電圧閾値比較部32と、RSSI閾値比較部31による比較結果を基に子機の出力レベルを切り換えるように判断する出力レベル切換部33と、出力レベル切換部33で判断された出力レベルのコマンドを形成する切換コマンド制御部34と、を有している。繰り返すと、受信したRSSI値が通信対象の子機7,8,9のそれぞれにおいて現状でいかなる数値であるかの判断を出力レベル切換部33にて行い、RSSI値が閾値(又は基準値)に対して大きいと判断された場合には、子機の出力レベルを変更する制御を切換コマンド制御部34より出力して、記憶テーブル43に設定値を記録した後、入出力インターフェース部42を介し、親機6にシリアル通信網5にて伝達する。
【0032】
親機6が受信する電波強度などに応じて、例えばRSSI値が大きいとき子機の出力レベルを下げる設定を行い、小さいとき子機の出力レベルを上げる設定を行う。また、子機の電池電圧を確認し、電池残量を記憶テーブル43に記録し監視することの外に、電池残量が閾値(又は基準値)以下となれば、別途の制御部を用いて電池交換を促す表示、報知を行うようにコマンドを設定するようにしてもよい。
【0033】
PC制御装置2は、受け取ったRSSI値とコマンド制御部3に記憶されている閾値とを比較して、その結果に応じて出力レベル切換部33で、どの出力値に切換えるか否かを決定するとともに、切換える場合は、切換え後の切換コマンド制御部34から切換を示す情報を入出力制御部4の記憶テーブル43に書き込み、その情報を切換えコマンドとともに、入出力インターフェース部42を介して親機6へ送信を行なう。親機6は、切換コマンド制御部34からの切換を示す情報と切換えコマンドをシリアル通信網5を介して受信して、使用中のいずれかの子機7,8,9へ送出する。なお、以上の説明では、PC制御装置2にてRSSI閾値比較や電池電圧閾値比較を行なう構成としたが、これに限らず、親機6において同様にRSSI値と電池電圧を閾値と比較する構成としてもよい。
【0034】
親機6が受信したRSSI値が閾値以上であった場合は、無線出力レベルを設定した候補値又はそれ以下の最低値(親機と子機との通信を行う最低限の値)に切換え設定を行うようにする。そして、無線出力レベル切換のコマンドを生成し、子機7に送信を行い(c5)、子機7において出力切換え後、設定候補値又はそれ以下の最低値に切換えを行ったことを親機6に返信することで電波強度切換えが完了したことになる(c6)。
【0035】
子機7においては、無線出力レベル切換えのコマンドを認識して(c5)、切換え後の無線制御を使用者が設定した候補値又はそれ以下の最低値に切換え設定であったことを受信し、設定された無線出力レベルで実施されていることを記憶テーブル50(図4を参照)に書き込む動作を行う。親機6においては、切換え完了レスポンスを認識すると(c6)、記憶テーブル43に書き込む。以後においては、親機6と子機7間の通信は、通信制御に設定された出力レベルに固定された通信が継続される。
【0036】
このように、本実施形態に係る無線端末装置の制御システムによれば、電波法で規定した送信電力の規定値である1mWの送信で閾値以上の受信電波強が得られた場合は、送信電力の規定値が1mW以下の無線制御に切換え、段階的に通信出力を下げるので、つまり送信電力を通信状況に応じて低く切換えられることで、通信環境をあらかじめ確保した上で、使用する電池の消費量を小さく押さえることができ、無線通信における省エネルギー化した通信制御網を確立することができる。なお、本実施形態は、ZigBee装置に限らず、その他の無線通信制御形態にも適用できるものである。
【0037】
図5は、本発明の実施形態に関する無線端末装置子機の内部構成を示す図である。無線端末装置子機7の構成は、無線アンテナ19と、無線用デバイス15と、内部マイコン機能のリセットを行うリセットスイッチ13と、動作状態を示すLED12a〜12cと、温度センサ10と、照度センサ11と、人感センサ14と、電源端子16に接続された電池1と、から構成されている。
【0038】
無線用デバイス15は、入力時に使用する入力アンプ22と出力時に使用するアンプ20を備え、出力アンプ20は出力振幅制御バス23にてアンプ出力の振幅を変更することができる。PC制御装置2及び親機6からの無線出力切換コマンドを基にCPU&I/O24を通して出力アンプ20の出力振幅を容易に変更することができ、指定された値により、無線端末装置子機7のデータ通信出力振幅を任意に設定することが可能である。
【0039】
図5に示した、温度センサ10、照度センサ11、人感センサ14は、温度センサ10による温度データや照度センサ11による照度データや人感セ14ンサによる人の検知データなど、あるいは文字情報などの送受信等も、これらのセンサを用いることで同様に情報を入手して親機6に通信実行できる例として記載したものである。
【0040】
図6は、本発明の実施形態に係る無線端末装置における無線通信での通信振幅対電池消費率を示した図である。図6では電池消費率が変化する点を示しており、一例として−60dBm近傍では電池消費が低いことが分かる。
【0041】
図7は、本発明の実施形態に関する無線端末装置親機における無線出力レベルを決定する制御手順を示すフローチャートである。無線端末装置親機6(以下、親機6と称する)と無線端末装置子機n(以下、子機nと称する)の間で通信を開始したものとする。T1では、親機6が子機nから電波を受信する電波受信開始により、親機6と子機nのネットワークが構築される。
【0042】
T2では、受信処理の開始とし、通信における内部処理の初期化を行い、RSSI値を含んだデータ受信、すなわち図3に示す電波強度測定モードと電池残量測定モードを実施する。T3では、子機nからのデータ信号の中でRSSI値データを親機6内の強度テーブルに書き込む。T4では、子機nの電池残量を続いて書き込む。この測定過程と書き込み過程は通信回数として複数回実施する。
【0043】
T5では、指定された通信回数が読み込めたか否かを調べる。指定された回数は任意とする。指定された通信回数分であれば次のステップT7に進み、そうでなければ、通信回数が得られなかったとし、T11で故障&アラームを通知してLED(赤)を点滅させ、この状態では通信動作は行わない。
【0044】
T7では、親機6で受信した電波強度aが設定値A(−60dBm)以下か否かを判断し、−60dBm以下であればT8へ進み、さらに、電波強度aが設定値B(−70dBm)以上か否かを判断する。翻って、T7の判断で−60dBmを超えれば、T6によって電波強度を一段階落とす設定をして子機nに伝え、子機nの出力レベル制御によって−60dBm以下になるように繰り返し処理を行う。
【0045】
受信した電波強度aが−60dBm以下で−70dBm以上であれば、T12にてLED(緑)を点灯させて完了する。すなわち、子機nの親機6からの距離や通信環境に関わらず、親機6が受信する子機nからの電波強度aが−60dBmと−70dBmの範囲内になるように制御する手順である。
【0046】
一方、T8にて受信した電波強度が−70dBm未満であって、T9にて−80dBm以上であれば、T10にて電池交換か設置場所を変えるよう通知を行い、T13にてLED(橙)を点滅させる。また、T9にて電波強度が−80dBm未満であれば、故障&アラームを通知し(T11)、LED(赤)を点滅させ(T14)、この状態では通信動作は行わない。このようにして、子機nに関する処理を終えたら、次に他の無線端末装置子機に関する処理を順次行う。
【0047】
このように、親機から距離の異なる位置に配置され電池で駆動する複数の子機がそれぞれ親機と通信する際に、各子機からの送信電波を受信する親機の電波強度が、最低限の強度で受信可能な所定の受信強度範囲内に納まるように子機毎に無線出力レベルを制御することが、本実施形態の特徴の一つである。これによって、各子機を駆動する電池の消耗を少なくすることができ、省エネ化を図ることができる。
【0048】
上述したような子機毎の無線出力レベルの制御に代わる簡便な手法として、複数子機の配置が親機からの離隔距離をそれほど異にしない場合であって、且つ電波環境が複数子機で略一致している場合には、一番遠い位置に存在する子機で設定した無線出力レベルを他の子機に一律に適用しても良い。
【0049】
次に、本発明の実施形態に係る無線端末装置の一の構成例について説明する。図1において子機7,8,9は乾電池を利用する機器として説明したが、この電池は、乾電池に限らず、太陽電池等を使用しても同様の効果を得られる。不図示ではあるが、電池1として、太陽電池を併用した構成にすると、昼間は太陽電池で、夜間は昼間に充電した電池を使用すれば省エネ化して無線通信が可能となる。
【0050】
さらに、本実施形態に係る無線端末装置の制御システムの他の構成例を説明する。無線端末装置の子機について、昼間は太陽光発電等で蓄積しながら動作させ、夜間はその蓄電によって動作させる状態において、夜間は無線端末装置の周辺における無線通信環境が、昼間の無線通信環境に比べて妨害が少なく良好であるため、親機が受信する受信電波強度を昼間に比べて低めに設定することが可能である。
【0051】
この環境条件で無線端末装置を動作させる場合に、PC制御装置2にタイマ機能を持たせ、プログラムによる時間予約によって、当該予約した時間の電波環境を勘案した無線出力レベルの設定をプルグラムでメニュー選択させるようにしても良い。具体的には、電波妨害の少ない深夜時間帯にプログラムによるタイマコントロールで子機を動作させ、その際に子機から送信する送信電力を低めにするように無線出力レベルの設定をプログラムによってコマンド指示するようにする。電池として太陽光発電を利用するものであれば、一層省エネ効果が図れる。
【0052】
さらに、本実施形態に係る無線端末装置の制御システムの別の構成例を説明する。以上の説明では距離を隔てた親機と子機との間の無線通信の省エネ化を述べたが、親機と子機に限らず、TVセット内の基板間の制御信号伝送に適用し、セット内部の基板間を本実施形態に関する無線通信で転送して省エネ化を図るとともに、基板間の制御線関連の配線材を少なくすることもできる。
【0053】
このように、本実施形態では親機と子機という通信機器として独立した設置を背景としているが、TVなどを含めたセット内部にて、本実施形態と同様に、セット内部のシリアル制御線を無線で行うことで、単純なシリアル配線のチェーン接続線を削除でき、機器内部を電源線以外は簡単に構成でき、特に大きな画面サイズにとっては配線材などのコスト低減が可能である。また、電力を落とした通信を行なうことで、省電力にもつながるなどの使い方も可能である。
【0054】
以上のように、本実施形態に係る無線端末装置の制御システムによれば、無線端末装置間のネットワーク構築に用いる無線通信の電波を利用して、子機からの電波強度を測定し、その測定値を用いて、無線出力レベルを段階的に切換え制御を開始するので、通信開始時から無駄のない電力で、電池消耗を減らして送信することができる。また、各無線端末装置子機の電池消費状況を最初の通信読込みで実施することで、予め各装置の電池消費予測を考慮し今後の電池交換などの計画を立てることができる。
【符号の説明】
【0055】
1 電池
2 PC制御装置
3 コマンド制御部
4 入出力制御部
5 シリアル通信網
6 無線端末装置親機
7 無線端末装置子機a
8 無線端末装置子機b
9 無線端末装置子機n
10 温度センサ
11 照度センサ
12a LEDa
12b LEDb
12c LEDc
13 リセットスイッチ
14 人感センサ
15 制御デバイス
16 電源/GND端子
18 RFアンプ
19 無線アンテナ
20 出力アンプ
21 切換SW
22 入力アンプ
23 出力振幅制御バス
24 CPU&I/O
25 メモリ
26 ADC
27 出力アンプ
31 RSSI閾値比較部
32 電池電圧閾値比較部
33 出力レベル切換部
34 切換コマンド制御部
41 データACK処理部
42 入出力インターフェース部
43 記憶テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信装置の親機と、前記親機に対して無線通信を行う距離の異なる位置に配置された複数の無線通信装置の子機と、前記親機に接続されて前記無線通信の制御を行う制御装置と、を備えた無線通信装置の制御システムであって、
前記複数の子機は、それぞれ、電池で駆動されて前記親機との送受信を行うとともに送信する無線出力レベルを可変制御できるものであり、
前記制御装置は、前記親機を通して、各子機から送信された初期設定時の受信電波を受け取り、前記受信電波の強度と所定の閾値とを比較する受信電波強度比較部と、前記受信電波強度比較部の比較結果に応じて前記子機の前記無線出力レベルを切り換えるように指示する出力レベル切換部と、を有し、
前記出力レベル切換部は、有効最小な受信強度範囲内の強度で親機が受信できるように子機毎に前記無線出力レベルを切り換えるように指示する
ことを特徴とする無線通信装置の制御システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記制御装置は、前記親機を通して、各子機から送信された前記電池の残量値を受け取り、前記電池の残量値と所定の閾値とを比較する電池残量比較部と、前記電池残量比較部の比較結果を記憶し監視するとともに前記閾値以下であれば警告報知する
ことを特徴とする無線通信装置の制御システム。
【請求項3】
請求項1または2において、
複数の子機同士の無線通信環境条件が略一致し、且つ複数の子機同士の前記親機に対する距離が略一致して配置されている場合に、複数の子機毎に前記無線出力レベルを切り換えるように指示することに代えて、最も遠い位置に配置された子機の無線出力レベルを他の子機に対しても一律に切り換えるように指示する
ことを特徴とする無線通信装置の制御システム。
【請求項4】
請求項1、2または3において、
前記親機と前記制御装置を別体とする構造に代えて、前記親機に前記制御装置を内蔵させる一体構造とすることを特徴とする無線通信装置の制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−256982(P2012−256982A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127536(P2011−127536)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
【出願人】(509189444)日立コンシューマエレクトロニクス株式会社 (998)
【Fターム(参考)】