説明

無線IP電話機及び無線IP電話機システム

【課題】 電波強度不足の無線IP電話が存在するIP電話システムにおいて正常な着信処理及び通話処理を可能とした無線IP電話機及び無線IP電話機システムを提供する。
【解決手段】本発明の無線IP電話機は電波強度を確認し、電波強度が所定値を下回るかどうかを判定する判定部を備えている。そして呼制御サーバより着信検知通知を与えられた際に電話番号判定部により、着信検知通知に含まれる着信先電話番号がグループ電話番号であるかを判定する。グループ電話番号であると判定された場合、着信可否決定部は判定部を用いて、電波強度の確認を行う。電波強度が所定値を下回っている場合、着信可否決定部は呼制御サーバに対して着信拒否を示す信号、例えば話中信号等を返信する。これにより、電波強度が低い状態の無線IP電話機においては着信検知後の処理、例えば着信音の鳴動等が行われることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NTT等の通信業者が提供する電話回線に接続される無線IP(Internet Protocol)電話機に関するものであり、特に一または複数の電話番号を複数の無線IP電話機で共用するグループ電話機能を備えた無線IP電話機及び無線IP電話機システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信インフラの発達により、通信に関する様々な付加サービスが普及するようになってきた。特に電話機においては、IP電話網やLAN(Local Area Network)において呼制御サーバが複数のIP電話機の通信制御を行うことにより様々なサービスを提供するIP電話システムが広く普及している。
【0003】
IP電話システムに含まれるシステムの一つとして、グループ電話システムが存在する。グループ電話システムとは、複数のIP電話機を一または複数のグループにまとめて管理し、グループ単位で呼制御を行うシステムである。これにより例えば、一つの電話番号を同一グループに含まれる複数のIP電話機で共用することが可能である。なお以下では、グループ電話システムにおいて一グループに対して割り当てられた電話番号を「グループ電話番号」と言う。
【0004】
次に、グループ電話番号の着信方式について説明する。グループ電話番号の着信方式には、一斉着信方式、順次サーチ方式、及びラウンドロビン方式がある。一斉着信方式は、同一グループに属する全てのIP電話機が一斉に着信する方式である。この方式によると、グループ電話番号への着信時に、同一グループに属する全てのIP電話機が一斉に着信し、最初に応答した何れか一台のIP電話機で通話を行う。
【0005】
これに対して、順次サーチ方式とラウンドロビン方式は、所定の選択順位に従って呼制御サーバが選択した何れか一台のIP電話機により、着信する方式である。順次サーチ方式はグループに属する各IP電話機に予め選択順位を付与しておく。そしてグループ電話番号への着信が発生した際に、選択順位に従って呼制御サーバが選択した何れか一台の電話機に着信させる。この方式では、選択順位が高い電話機が最優先で着信することになり、その着信回数も最も多くなる。
【0006】
ラウンドロビン方式は、グループに属する電話機に選択順位を持たせない方式である。グループ電話番号に対する着信が発生した際に、呼制御サーバが配下のIP電話機の選択順位を着信毎にシフトさせる。これにより、呼制御サーバが管理する全てのIP電話機に対して、着信を均一に割り振ることが可能である。
【0007】
順次サーチ方式とラウンドロビン方式においては、呼制御サーバが選択したIP電話機から話中信号が返却された場合、呼制御サーバは次の選択順位のIP電話機に着信をシフトさせる。なお、上記の着信方式の呼称や動作は、サービスを提供する通信事業者によってその一部が異なる場合がある。
【0008】
上記のようなグループ電話番号を用いた着信制御方式においては、着信発生時にグループ内に存在する複数の無線IP電話機が全て同じ状態にあるとは限らない。具体的には、特定の無線IP電話機がバッテリ不足状態、或いは電波強度不足状態などにより、着信不能である場合がある。或いは着信は可能であっても、通話開始後に上記要因より通信機能不全に陥る可能性もある。しかしながら呼制御サーバは、グループ電話番号に対する着信時に、各無線IP電話機の状態を意識することなく着信制御を行う。
【0009】
このため例えば、ユーザがバッテリ不足、或いは電波強度不足の無線IP電話機をそれとは知らずに応答に使用し、結果として通話開始後に動作異常や通信機能不全、例えば通話音声の一部が聞き取れない等を引き起こす可能性があった。
【0010】
上記に関連して特許文献1には、蓄電池(=バッテリ)の電力残量が低下した場合において、重要な発呼元からの通話をできるだけ多く受信できる携帯電話機が開示されている。特許文献1の携帯電話機は、重要な発呼元電話番号をユーザに入力させるための入力手段を備えている。入力された重要発呼元の電話番号はメモリに記憶される。そして蓄電池の電力残量が所定レベル以下になったことを検出し、かつ外部から自局に対する発呼があったときに、発呼元の電話番号がメモリに登録されているか否かを判定する。
【0011】
判定の結果、発呼元の電話番号がメモリに登録されているときのみ着信処理を行い、登録されていないときには着信処理を行わないようにする。以上のような特許文献1の携帯電話機によれば、蓄電池の電力残量が低下した場合において、重要な発呼元からの通話をできるだけ多く受信できるという効果が得られる。
【特許文献1】特開2000−278754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら特許文献1に開示されている携帯電話機は、バッテリ残量が少ない際に発呼元の電話番号により着信制限を行うため、ユーザが行う通話に制限がかかってしまうといった問題があった。また、制限により通話ができなかった着信について、他の代替機等を用いて通話を行う等の対応策についても開示されていない。また、電波強度の不足による通信障害が発生した場合の対応策についても開示されていない。
【0013】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであって、その目的は、呼制御サーバを用いたIP電話システムにおいて用いられる無線IP電話機において、特定の無線IP電話機が電波強度不足により十分な通信機能を維持できない状態にある場合であっても、正常な着信処理及び通話処理を可能とした無線IP電話機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
また上記目的を達成するために本発明の無線IP電話機は、無線通信網に接続可能な無線通信手段と、複数のIP電話機で共用可能な電話番号であるグループ電話番号とIP電話機とを対応付けたグループ管理情報を記録するサーバであり、前記グループ電話番号への着信を受け付け、前記グループ電話番号に対応づけられたIP電話機を前記グループ管理情報を用いて割り出して着信検知通知を与える呼制御サーバ、との間で前記無線通信手段を用いて通信を行う通信制御手段と、前記無線通信手段が前記無線通信網より受信している電波の電波強度を測定し、前記電波強度が所定値を下回るかどうかを判定する電波強度判定手段とを備えた無線IP電話機であって、前記通信制御手段が前記呼制御サーバより前記着信検知通知を受信した場合に、着信先の電話番号が前記グループ電話番号であるかどうかを判定する電話番号判定手段と、前記電話番号判定手段により着信先の電話番号が前記グループ電話番号であると判定された場合において、前記電波強度判定手段を用いて前記電波強度の判定を行う着信可否決定手段とを備え、前記着信可否決定手段が、前記電波強度の判定の結果、前記電波強度が所定値を下回ると判定された場合において、前記呼制御サーバに対して着信拒否を示す信号を前記通信制御手段を用いて送信することを特徴としている。
【0015】
この構成によると、本発明の無線IP電話機は、無線LANに接続可能なアンテナ装置を備えている。そしてアンテナ装置を用いて呼制御サーバと通信を行う通信制御部を備えている。また、アンテナ装置が受信している電波の電波強度を測定し、電波強度が所定値を下回るかどうかを判定する電波強度判定部(=電波強度判定手段)を備えている。
【0016】
呼制御サーバより着信検知通知を与えられた無線IP電話機は電話番号判定部により、着信先の電話番号がグループ電話番号であるかどうかを判定する。グループ電話番号であると判定された場合、着信可否決定部(=着信可否決定手段)は電波強度判定部を用いて電波強度の確認を行う。そして電波強度が所定値を下回っている場合、着信可否決定部は制御サーバに対して着信拒否を示す信号、例えば話中信号等を返信する。これにより、アンテナ装置が電波強度不足状態の無線IP電話機においては着信検知後の処理、例えば着信音の鳴動等が行われることがない。
【0017】
また上記目的を達成するために本発明の無線IP電話機は、前記電波強度判定手段により前記電波強度が所定値を下回ると判定された場合において、前記呼制御サーバに対して、前記グループ管理情報から該無線IP電話機に関する情報を削除するように指示する削除指示手段と、前記電波強度判定手段により前記電波強度が所定値を上回ると判定された場合において、前記呼制御サーバに対して、前記グループ管理情報に該無線IP電話機に関する情報を登録するように指示する登録指示手段とを備えたことを特徴としている。
【0018】
この構成によると、電波強度判定部が定期的にアンテナ装置に電波強度の確認を行う。そして電波強度が所定値を下回ることが検知された場合に、削除指示部が呼制御サーバに対して、ユーザ情報データベースに記録されているグループ管理情報より、当該無線IP電話機に関する情報を削除するように指示する。これを受けた呼制御サーバはユーザ情報データベースより該当情報を削除する。このため、グループ電話番号宛の着信が検知された場合に、当該無線IP電話機に対しては着信検知通知が送信されない。従って当該無線IP電話機において着信処理が行われることもない。
【0019】
逆に、電波強度が所定値を上回ることが検知された場合、登録指示部が呼制御サーバに対して、ユーザ情報データベースに記録されているグループ管理情報に、当該無線IP電話機に関する情報を登録するように指示する。これを受けた呼制御サーバはユーザ情報データベースに該当情報を登録する。このため、当該無線IP電話が所属するグループのグループ電話番号宛の着信が検知された場合に、通常通り当該無線IP電話機に対して着信検知通知が送信され、着信処理が行われる。
請求項3に記載の無線IP電話機は、電波強度が所定値を下回っていると判定すると、呼制御サーバからの着信を拒否することを特徴とする。
請求項4に記載の無線IP電話機は、電波強度が所定値を下回っていると判定すると、呼制御サーバに対して話中信号を送信することを特徴とする。
【0020】
請求項5に記載の無線IP電話機システムは、少なくとも第1と第2の無線IP電話機と呼制御サーバとからなるシステムであり、外線からの着信がある際に、前記第1のIP電話機が受信する電波の電波強度が所定値を下回ると、前記呼制御サーバから前記第1の無線IP電話機に呼出信号を送信せず、前記第2の無線IP電話機に呼出信号を送信することを特徴とする。
【0021】
請求項6に記載の無線IP電話機システムは、少なくとも第1と第2の無線IP電話機と呼制御サーバとからなるシステムであり、外線からの着信がある際に、前記第1のIP電話機が受信する電波の電波強度が所定値を下回ると、前記第1のIP電話機は前記呼制御サーバに前記第1のIP電話機が受信する電波の電波強度が所定値を下回っていることを示す信号を送信し、呼制御サーバは前記信号を受信すると、前記第1のIP電話機には呼出信号を送信せず、前記第2のIP電話機に呼出信号を送信することを特徴とする。
【0022】
請求項7に記載の無線IP電話機システムは、少なくとも第1と第2の無線IP電話機と呼制御サーバとからなるシステムであり、外線からの着信がある際に、前記第1のIP電話機が受信する電波の電波強度が所定値を下回ると、前記第1のIP電話機は前記呼制御サーバに話中信号を送信し、呼制御サーバは前記信号を受信すると、前記第1のIP電話機には呼出信号を送信せず、前記第2のIP電話機に呼出信号を送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の構成によれば、無線IP電話機が呼制御サーバより着信検知通知を受けた際に、着信電話番号がグループ電話番号であるかどうかを判定する。そしてグループ電話番号である場合に、電波強度判定部による電波強度の確認を行う。電波強度が所定値を下回っている場合、着信可否決定部が呼制御サーバに対して着信拒否を示す信号を返信する。これにより、電波強度不足状態の無線IP電話機においては着信検知後の処理、例えば着信音の鳴動等が行われない。
【0024】
このため、電波強度不足により通信状態が不安定である無線IP電話機による着信応答を禁止することができる。この結果例えば、ユーザが電波強度不足状態の無線IP電話機で応答してしまった場合に発生し得る問題、例えば電波強度不足に起因する音声品質劣化や予期せぬ異常動作などの不具合を未然に回避することが可能である。
【0025】
また本発明の構成によれば、アンテナ装置の電波強度の確認を行い、電波強度が所定値を下回ることが検知された場合に、呼制御サーバに対して当該無線IP電話機に関する情報をグループ管理情報から削除するように指示する。このため、呼制御サーバにおいて当該無線IP電話機が所属するグループのグループ電話番号宛の着信が検知された場合であっても、当該無線IP電話機に対しては着信検知通知が送信されず、着信検知後の処理が行われることもない。
【0026】
このため、電波強度不足により通信状態が不安定である無線IP電話機による着信応答を禁止することができる。この結果例えば、ユーザが電波強度不足状態の無線IP電話機で応答してしまった場合に発生し得る問題、例えば電波強度不足に起因する音声品質劣化や予期せぬ異常動作などの不具合を未然に回避することが可能である。また、電波強度不足のため通信リクエストが到達しない無線IP電話機に対して呼制御サーバが通信リクエストを繰り返し発行することを防ぐことができる。このため、無駄な通信処理が発生することもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、ここで示す実施形態は一例であり、本発明はここに示す実施形態に限定されるものではない。
【0028】
[実施の形態1]
〈1−1.IP電話システムの構成について〉
図1は、本発明に係る無線IP電話機10(=図中の無線IP電話機10a〜無線IP電話機10c)を含むIP電話システムの構成を示すブロック図である。IP電話システムは少なくとも、無線IP電話機10、呼制御サーバ30、有線LAN41、無線LAN42(=無線通信網)、ルータ51、無線LANアクセスポイント52、ゲートウェイ53、IP電話網61、PSTN網62(=Public Switched Telephone Network:公衆電話交換網)、加入者電話機71、及び固定IP電話機80(=図中の固定IP電話機80a〜固定IP電話機80c)を含むように構成されている。
【0029】
無線IP電話機10は、後述する無線LAN42に接続されて無線LANアクセスポイント52と通信を行なうことにより、IP電話網61やPSTN網62を介して他の電話機と音声通信を行うための無線電話機である。なお、無線IP電話機10の詳細については後述する。
【0030】
呼制御サーバ30は、例えばSIP(Session Initiation Protocol)を用いてクライアント(例えば無線IP電話機10)の通信制御を行う通信制御装置である。なおSIPとは、転送機能や発信者番号通知機能などを備えた通話制御プロトコルの一種であり、同系統のプロトコルと比較して接続にかかる時間が短いという特徴を持つ。呼制御サーバ30は、クライアントがアドレスを登録するレジスタサーバ、クライアントに代わってアドレスを検索するプロキシサーバ、クライアントから受け取った接続要求を別のアドレスに転送するリダイレクトサーバなどの機能を備えている。
【0031】
上記の機能により呼制御サーバ30は、クライアント間における発信処理、着信処理、及び通話処理等を実施可能とする。またクライアントと外部電話機(例えば加入者電話機71)との間での通信も実施可能とする。呼制御サーバにはユーザ情報データベース31(=グループ管理情報)が備えられている。ユーザ情報データベース31には、呼制御サーバ30が管理するクライアントの情報、例えばクライアントのMACアドレスや、クライアント毎に割り当てられた個人電話番号の有無等を示す情報が記録されている。
【0032】
有線LAN41は、呼制御サーバ30、ルータ51、及び固定IP電話機80等が有線接続されたローカルのネットワークである。前記の各装置は有線LAN41に接続されることにより、相互に通信が可能となっている。なお、有線LAN41を構成する装置間を接続する物理的な手段としては、例えばツイストペアケーブルを用いた10BASE−T(IEEE802.3iとして標準化)や100BASE−TX(IEEE802.3uとして標準化)などがあげられる。
【0033】
無線LAN42は、無線IP電話機10及び無線LANアクセスポイント等が無線接続されたローカルのネットワークである。前記の各装置は無線LAN42に接続されることにより、相互に通信が可能となっている。なお、無線LAN42を構成する装置間を接続する物理的な手段としては、例えば周波数2.4GHzの電波を用いるIEEE 802.11b規格やIEEE 802.11g規格等の無線通信方式を用いることが可能である。
【0034】
ルータ51は、複数のIPネットワークを相互接続するためのネットワーク中継装置である。具体的には、OSI(Open Systems Interconnection)参照モデルでいうネットワーク層(第3層)やトランスポート層(第4層)の一部のプロトコルを解析して転送を行なう。本実施の形態においては、有線LAN41とIP電話網61との二つのIPネットワークを相互接続する役割を持つ。
【0035】
無線LANアクセスポイント52は、無線LAN42において端末(例えば無線IP電話機10)間を接続する電波中継機である。また無線LANアクセスポイント52は、有線LAN41と無線LAN42を接続する機能も持っている。無線LANアクセスポイント52は大きく分けてブリッジタイプとルータタイプの2種類がある。前者は単純にデータ転送の中継を行なう機器である。後者はルーティング機能やNAT機能などを持った機器で、複数の異なるIPネットワークを接続する機能を備えている。
【0036】
ゲートウェイ53は、プロトコル体系が異なるネットワーク間を相互接続するためのプロトコル変換器である。ゲートウェイ53は例えば、IPネットワーク(例えば有線LAN41)とPSTN網62とを接続し、SIP等のシグナリングプロトコルを用いてシグナル変換を行うことにより、両ネットワーク間での通信を可能とする。
【0037】
IP電話網61は、電話網の一部もしくは全てにVoIP(Voice over Internet Protocol)技術を利用した通信網であり、用いる通信回線としてはFTTH(Fiber To The Home)やADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)などの、いわゆるブロードバンド回線が利用される。なおVoIPとは、音声を各種符号化方式で圧縮してパケットに変換し、IPネットワークでリアルタイム伝送する技術である。これによりIP電話網61は音声通話サービスの他、画像の送受信を行うテレビ電話サービス等も提供可能である。
【0038】
PSTN網62は、一般の加入者電話回線ネットワークである。末端に電話装置を接続し、回線交換方式で通信相手に接続して音声通話を行うのに用いられる。加入者電話機71は、電話加入者がPSTN網62を用いて他の加入者電話機やIP電話機と音声通話を行うための電話装置である。
【0039】
固定IP電話機80は、10BASE−T等により有線LAN41に有線接続されるIP電話機である。なお、固定IP電話機80は、ネットワークに接続されるインタフェースが有線であることを除けば無線IP電話機10とほぼ同一の構成をしており、またその詳細は従来と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0040】
〈1−2.無線IP電話機の内部構成について〉
図2は、本発明の第一の実施形態に係る無線IP電話機10の内部を示すブロック図である。無線IP電話機10は少なくとも、制御部11、メモリ12、表示部13、入力部14、通信制御部15(=通信制御手段)、バッテリ16、残容量判定部17(=残容量判定手段)、アンテナ装置18(=無線通信手段)、音声信号処理部19、スピーカ20、及びマイク21を含むように構成されている。
【0041】
制御部11は、無線IP電話機10の各部を制御することにより通信制御処理(音声データの送受信、発呼の実施、或いは着呼の検知等)を統括制御するための中央処理装置である。また制御部11は、制御部11が備える演算処理装置上でプログラムを実行することにより実現される機能部として、電話番号判定部11a(=電話番号判定手段)、及び着信可否決定部11b(=着信可否決定手段)を備えている。
【0042】
電話番号判定部11aは、呼制御サーバ30から着信検知通知を受信し、着信検知通知の中に含まれる着信番号の解析を行う。そして着信番号が、グループ電話番号であるか、或いは電話番号とIP電話機とが一対一に対応付けられた個人電話番号であるかの判定を行う。判定結果は、着信可否決定部11bに与えられる。
【0043】
なお、着信番号がグループ電話番号であるかどうかの判定は、例えばメモリ12に予め記録されている電話番号情報の参照を行うこと等により行う。或いは、着信検知通知にグループ電話番号宛の着信であるかどうかを示すフラグ情報が含まれており、そのフラグ情報を参照することによって判定する形態でもよい。
【0044】
着信可否決定部11bは、呼制御サーバ30から着信検知通知を受信し、かつ電話番号判定部11aにより着信番号がグループ電話番号であると判定された場合に、後述する残容量判定部17にバッテリ16の容量判定処理の実施を指示する。そして容量判定処理の結果、バッテリ16の残容量が予め定められた所定値を下回っている場合に、呼制御サーバに対して着信拒否を示す信号を通信制御部15を用いて送信する。着信拒否に用いる信号としては、例えば無線IP電話機10が話中状態であることを示す話中通知信号等を用いる。
【0045】
メモリ12は、無線IP電話機10が保持する各種データを一時的に記憶する媒体であり、例えば書込可能なRAM(Random Access Memory)等により構成されている。メモリ12は制御部11によって各種通信制御処理が行われる際の処理データや、ユーザから受けた指示命令等を一時的に記憶しておくためのバッファメモリとしての役割を持つ。
【0046】
メモリ12には例えば、後述するバッテリ16のバッテリ残容量を示すバッテリ容量情報や、バッテリ残容量が予め定められた所定値を下回る状態である(=残容量不足状態である)ことを示すための残容量不足フラグ等が記録されている。なお残容量不足フラグは、後述する残容量確認部17がバッテリ16の残容量不足を検知した際に有効に設定される。またバッテリ16の充電等により残容量不足が解消されたことを残容量確認部17が検知した際に、無効に設定される。
【0047】
表示部13は、無線IP電話機10が保持する各種情報(例えば着信時における発信側電話番号等)をユーザに対して表示する。表示部13は例えば、液晶パネル等の小型で消費電力の少ない表示装置を用いる。
【0048】
入力部14は、ユーザが無線IP電話機10を用いて通信を行うための各種操作(例えば通話を行う相手の電話番号の入力等)を行なうためのものである。入力部14は通常、数字キーやリダイヤルキー等の複数のキーから構成されている。
【0049】
通信制御部15は、アンテナ装置18により接続された無線LAN42を利用して、通信規格(例えばIEEE 802.11b)にのっとって無線通信を行う。これにより無線IP電話機10は、無線LAN42に接続された無線LANアクセスポイント52と通信を行うことが可能となる。さらには無線LANアクセスポイント52を介して呼制御サーバ30と通信を行うことにより、IP電話システムにおける着信処理や発信処理等を実施することが可能である。
【0050】
バッテリ16は、外部電源(不図示)より電力の供給を受け、電力を一時的に備蓄しておく。例えば充電式アルカリ電池やリチウムイオンバッテリ等が用いられる。残容量判定部17は、バッテリ16が蓄えている電力の残容量を定期的に確認する。そして残容量があらかじめ定められた所定値よりも下回るかどうかの判定を行う。なお、所定値を定める基準としては、無線IP電話機10が無線LAN42を介する通話機能や通信リクエスト送受信機能等を支障なく実施可能である容量とすることが望ましい。
【0051】
アンテナ装置18は、無線LANアクセスポイント52との間で無線通信電波の送受信を行う。これにより無線通信部16、ひいては無線IP電話機10が無線LAN42に接続される。
【0052】
音声信号処理部19は、通信制御部15により入力された音声データの復号処理を行い、音声信号としてスピーカ20に供給する。また音声信号処理部19は、マイク21より入力された音声信号に所定の符号化処理を施して音声データを作成し、通信制御部15に供給する。これにより音声データは有線LAN41、無線LAN42、或いはIP電話網61等を通じて接続される他の電話機へ送信される。
【0053】
スピーカ20は、音声信号を音声に変換して出力する。例えば固定IP電話機80から受信した通話音声を含む音声信号を音声に変換して出力する。スピーカ20が音声を出力する際に、パワーアンプ(不図示)を用いて音量の調節を行うことが可能である。マイク21は、音声を入力して音声信号に変換して音声信号処理部19へ与える。音声信号処理部19に与えられた音声信号は、通信制御部15及びアンテナ装置18を介してその他の電話機に送信される。
【0054】
〈1−3.着信制御処理について〉
ここで、本発明の第一の実施形態における無線IP電話機10の着信制御処理を、図1〜図2のブロック図と、図3のフロー図とを用いながら説明する。
【0055】
図3に示す処理フローは、無線IP電話機10の電源が起動し、呼制御サーバ30との通信が可能な状態において任意のタイミングで開始可能である。本処理の開始後、制御部11はステップS110において、通信制御部15が無線LAN42を介して、呼制御サーバ30より着信検知通知を受信したかどうかの判定を行う。
【0056】
着信検知通知を受信していないと判定された場合、再びステップS110に移行し、着信検知通知が検知されるまで繰り返し検知処理を行う。逆に着信検知通知を受信したと判定された場合、電話番号判定部11aがステップS120において、着信検知通知に含まれる着信番号の解析を行う。なお解析の際には、メモリ12より読み出した電話番号情報を参照する。
【0057】
ステップS120における解析の結果に基づき、電話番号判定部11aはステップS130において、着信番号がグループ電話番号であるかどうかの判定を行う。グループ電話番号ではないと判定された場合、例えば個人電話番号であると判定された場合、制御部11はステップS151において通常の着信処理を行う。具体的には例えば、スピーカ20による着信音の鳴動や、表示部13による着信通知の表示等を行う。その後ステップS110に移行し、再び着信検知処理を行う状態となり、本処理を継続する。
【0058】
逆にステップS130において着信番号がグループ電話番号であると判定された場合、電話番号判定部11aはその通知を着信可否判定部11bに与える。通知を受けた着信可否判定部11bは、残容量判定部17に対してバッテリ16の残容量判定処理を指示する。指示を受けた残容量判定部17はステップS140において、バッテリ16の残容量を確認する。そして確認により得られた残容量が予め定められた所定値を越えるかどうかの判定を行い、その判定結果を着信可否判定部11bに与える。
【0059】
判定結果を与えられた着信可否判定部11bはステップS150において、残容量の判定結果の確認を行う。確認の結果、残容量が所定値を下回っていない状態である場合、着信可否判定部11bは先述のステップS151に移行する。
【0060】
逆にステップS150において、残容量が所定値を下回っている状態である場合、着信可否決定部11bはステップS160において、通信制御部15を用いて呼制御サーバ30に着信を拒否するための信号、例えば話中信号等を送信する。その後ステップS110に移行し、再び着信検知処理を行う状態となることにより本処理を継続して行う。
【0061】
以上に示した本処理は通常、無線IP電話機10の電源停止時やバッテリ切れの発生時等に終了される。ただし、処理中断指示を受け付ける指示受付部を設けることにより、任意のタイミングで本処理を中断可能とする形態であってもよい。
【0062】
次に、本発明の第二の実施形態ついて、図面を参照しつつ説明する。
[実施の形態2]
〈2−1.IP電話システムの構成について〉
実施の形態1と同内容であるため、ここでは説明を省略する。
【0063】
〈2−2.無線IP電話機の内部構成について〉
図4は、本発明の第二の実施形態に係る無線IP電話機10の内部を示すブロック図である。なお、実施の形態1と同内容の装置部については、同一の符号を付加することにより説明を省略するものとする。実施の形態1と異なる構成として、制御部11が削除指示部11c(=削除指示手段)及び登録指示部11d(=登録指示手段)を備えている。
【0064】
削除指示部11cは、残容量判定部17がバッテリ16の容量判定処理を行った結果、バッテリ16の残容量が予め定められた所定値を下回っている場合に、呼制御サーバ30に対してユーザ登録削除信号を送信する。具体的には例えば、Expiresヘッダで0を指定したREGISTER信号を通信制御部15を用いて送信する。これにより、当該無線IP電話機10のユーザ登録削除を行う。この処理によって、当該無線IP電話機10の登録情報は無効化され、それ以降は当該無線IP電話機10がIP電話システム上で使用不可となる。なお、この状態で、該当無線IP電話機10宛に着信があった場合には、呼制御サーバ側で他のIP電話機への着信先の移行処理等を行う。このため、該当IP電話機に対して着信通知信号は送信されない。
【0065】
登録指示部11dは、残容量判定部17がバッテリ16の容量判定処理を行った結果、バッテリ16の残容量が予め定められた所定値を上回っている場合に、呼制御サーバ30に対してユーザ登録信号を送信する。具体的には例えば、Expiresヘッダで登録有効時間を指定したREGISTER信号を通信制御部15を用いて送信する。これにより、当該無線IP電話機10のユーザ登録が行われる。この処理によって、呼制御サーバ30が備えるユーザ情報データベース31において、当該無線IP電話機10の登録情報が有効化される。そして指定された登録有効時間の間だけ、当該無線IP電話機10がIP電話システム上で使用可能となる。
【0066】
〈2−3.着信制御処理について〉
ここで、本発明の第二の実施形態における無線IP電話機10の着信制御処理を、図1及び図4のブロック図と、図5のフロー図とを用いながら説明する。
【0067】
図5に示す処理フローは、無線IP電話機10の電源が起動し、呼制御サーバ30との通信が可能な状態において任意のタイミングで開始可能である。本処理の開始後、残容量判定部17はステップS210において、バッテリ16の残容量を確認する。そしてステップS220において、確認により得られた残容量が予め定められた所定値を越えるかどうかの判定を行う。
【0068】
ステップS220において残容量が予め定められた所定値を下回ると判定された場合、残容量判定部17はステップS230において、メモリ22に記録されている残容量不足フラグの状態を確認する。そして残容量不足フラグが有効状態に設定されていることが確認された場合、ステップS210に移行し、再びバッテリ残容量を確認する。これにより本処理を継続して行う。
【0069】
逆にステップS230において残容量不足フラグが無効状態に設定されていることが確認された場合、残容量判定部17はステップS240において、メモリ22に記録されている残容量不足フラグを有効に設定する。そして削除指示部11cに対して、残容量が不足状態に変化したことを通知する。
【0070】
上記通知を受けた削除指示部11cはステップS250において、呼制御サーバ30に対してユーザ登録削除信号を通信制御部15を用いて送信する。これにより呼制御サーバ30において、当該無線IP電話機10のユーザ登録削除が行われる。そしてステップS210に移行し、再び残容量判定部17によるバッテリ残容量の確認を行う。これにより本処理を継続して行う。
【0071】
再びステップS220に説明を戻す。ステップS220において残容量が予め定められた所定値を上回ると判定された場合、残容量判定部17はステップS221において、メモリ22に記録されている残容量不足フラグの状態を確認する。そして残容量不足フラグが無効状態に設定されていることが確認された場合、ステップS210に移行し、再びバッテリ残容量を確認する。これにより本処理を継続して行う。
【0072】
逆にステップS221において残容量不足フラグが有効状態に設定されていることが確認された場合、残容量判定部17はステップS222において、メモリ22に記録されている残容量不足フラグを無効に設定する。そして登録指示部11dに対して、残容量が不足状態から通常状態に変化したことを通知する。
【0073】
上記通知を受けた登録指示部11dはステップS223において、呼制御サーバ30に対してユーザ登録信号を通信制御部15を用いて送信する。これにより無線IP電話機10のユーザ登録が行われ、無線IP電話機10がIP電話システムにおいて利用可能となる。そしてステップS210に移行し、再び残容量判定部17によるバッテリ残容量の確認を行う。これにより本処理を継続して行う。
【0074】
以上に示した本処理は通常、無線IP電話機10の電源停止時やバッテリ切れの発生時等に終了される。ただし、処理中断指示を受け付ける指示受付部を設けることにより、任意のタイミングで本処理を中断可能とする形態であってもよい。
【0075】
次に、本発明の第三の実施形態ついて、図面を参照しつつ説明する。
[実施の形態3]
〈3−1.IP電話システムの構成について〉
図6は、本発明の第三の実施形態に係る無線IP電話機10を含むIP電話システムの構成を示すブロック図である。なお、実施の形態1と同内容の装置部については、同一の符号を付加することにより説明を省略するものとする。実施の形態1と異なる構成として、無線電話IP電話機10が電波強度判定部22(=電波強度判定手段)を備えている。なお、電波強度判定部22の詳細については後述する。
【0076】
〈3−2.無線IP電話機の内部構成について〉
図7は、本発明の第三の実施形態に係る無線IP電話機10の内部を示すブロック図である。なお、実施の形態1と同内容の装置部については、同一の符号を付加することにより説明を省略するものとする。実施の形態1と異なる構成として、電波強度判定部22を備えている。また、残容量判定部17を備えていない。このため、着信可否決定部11bの機能が一部異なるものとなっている。
【0077】
電波強度判定部22は、アンテナ装置18が無線LAN42において受信する無線通信電波の電波強度を定期的に確認する。そして電波強度があらかじめ定められた所定値よりも下回るかどうかの判定を行う。なお、所定値を定める基準としては、無線IP電話機10が無線LAN42を介する通話機能や通信リクエスト送受信機能等を支障なく実施可能である強度とすることが望ましい。
【0078】
上記に関連して本実施形態の着信可否決定部11bは、呼制御サーバ30から着信検知通知を受信し、かつ電話番号判定部11aにより着信番号がグループ電話番号であると判定された場合に、電波強度判定部22に電波強度判定処理の実施を指示する。そして電波強度判定処理の結果、電波強度が予め定められた所定値を下回っている場合に、呼制御サーバに対して着信拒否を示す信号を通信制御部15を用いて送信する。着信拒否に用いる信号としては、例えば無線IP電話機10が話中状態であることを示す話中通知信号等を用いる。
【0079】
また本実施形態においては、メモリ12に、アンテナ装置18が受信する電波の電波強度が予め定められた所定値を下回る状態である(=電波強度不足状態である)ことを示すための電波強度不足フラグが記録されている。なお電波強度不足フラグは、電波強度判定部22が電波強度不足を検知した際に有効に設定される。また電波強度不足フラグは、アンテナ装置18の移動或いは方向の変化等により電波強度不足が解消されたことを電波強度判定部22検知した際に、無効に設定される。
【0080】
〈3−3.着信制御処理について〉
ここで、本発明の第三の実施形態における無線IP電話機10の着信制御処理を、図6〜図7のブロック図と、図8のフロー図とを用いながら説明する。なお、実施の形態1と同内容の処理については、同一の処理番号を付加することにより説明を省略するものとする。
【0081】
図8に示す処理フローは、無線IP電話機10の電源が起動し、呼制御サーバ30との通信が可能な状態において任意のタイミングで開始可能である。なおステップS110〜ステップS130、及びステップS151については実施の形態1と同内容であるため説明を省略する。
【0082】
ステップS130において着信番号がグループ電話番号であると判定された場合、電話番号判定部11aは電波強度判定部17に対して電波強度判定処理を指示する。指示を受けた電波強度判定部22はステップS310において、アンテナ装置18が無線LAN42において受信している通信電波の電波強度の測定を行う。そして測定により得られた電波強度が予め定められた所定値を越えるかどうかの判定を行い、その判定結果を着信可否判定部11bに与える。
【0083】
判定結果を与えられた着信可否判定部11bはステップS320において、電波強度の判定結果の確認を行う。確認の結果、電波強度が所定値を下回っていない状態であると確認された場合、着信可否判定部11bは先述のステップS151に移行する。逆にステップS320において、電波強度が所定値を下回っていると確認された場合、着信可否決定部11bはステップS330において、通信制御部15を用いて呼制御サーバ30に着信を拒否するための信号、例えば話中信号等を送信する。その後ステップS110に移行し、再び着信検知処理を行う状態となることにより本処理を継続して行う。
【0084】
以上に示した本処理は通常、無線IP電話機10の電源停止時やバッテリ切れの発生時等に終了される。ただし、処理中断指示を受け付ける指示受付部を設けることにより、任意のタイミングで本処理を中断可能とする形態であってもよい。
【0085】
次に、本発明の第四の実施形態ついて、図面を参照しつつ説明する。
[実施の形態4]
〈4−1.IP電話システムの構成について〉
実施の形態3と同内容であるため、ここでは説明を省略する
〈4−2.無線IP電話機の内部構成について〉
図9は、本発明の第四の実施形態に係る無線IP電話機10の内部を示すブロック図である。なお、実施の形態1〜実施の形態3と同内容の装置部については、同一の符号を付加することにより説明を省略するものとする。
【0086】
実施の形態1〜実施の形態3とことなる構成として、電波強度判定部22による電波強度判定処理を行った結果、電波強度が予め定められた所定値を下回っている場合に、削除指示部11cに対して電波強度不足の通知を行う。通知を受けた削除指示部11cは、呼制御サーバ30に対してユーザ登録削除信号を通信制御部15を用いて送信する。また電波強度が予め定められた所定値を上回った場合に、電波強度判定部22は登録指示部11dに対して電波強度不足解消の通知を行う。通知を受けた登録指示部11dは、呼制御サーバ30に対してユーザ登録信号を通信制御部15を用いて送信する。
【0087】
〈4−3.着信制御処理について〉
ここで、本発明の第4の実施形態における無線IP電話機10の着信制御処理を、図6及び図9のブロック図と、図10のフロー図とを用いながら説明する。
【0088】
図10に示す処理フローは、無線IP電話機10の電源が起動し、呼制御サーバ30との通信が可能な状態において任意のタイミングで開始可能である。本処理の開始後、電波強度確認部22はステップS410において、アンテナ装置18が無線LAN42より受信している電波の電波強度の大きさを確認する。そしてステップS420において、確認により得られた電波強度が予め定められた所定値を越えるかどうかの判定を行う。
【0089】
ステップS420において電波強度が予め定められた所定値を下回ると判定された場合、電波強度確認部22はステップS430において、メモリ22に記録されている電波強度不足フラグの状態を確認する。そして電波強度不足フラグが有効状態に設定されていることが確認された場合、ステップS410に移行し、再びバッテリ電波強度を確認する。これにより本処理を継続して行う。
【0090】
逆にステップS430において電波強度不足フラグが無効状態に設定されていることが確認された場合、電波強度確認部22はステップS440において、メモリ22に記録されている電波強度不足フラグを有効に設定する。そして削除指示部11cに対して、電波強度が不足状態に変化したことを通知する。
【0091】
上記通知を受けた削除指示部11cはステップS450において、呼制御サーバ30に対してユーザ登録削除信号を通信制御部15を用いて送信する。そしてステップS410に移行し、再び電波強度確認部22によるバッテリ電波強度の確認を行う。これにより本処理を継続して行う。
【0092】
再びステップS420に説明を戻すと、ステップS420において電波強度が予め定められた所定値を上回ると判定された場合、電波強度確認部22はステップS421において、メモリ22に記録されている電波強度不足フラグの状態を確認する。そして電波強度不足フラグが無効状態に設定されていることが確認された場合、ステップS410に移行し、再びバッテリ電波強度を確認する。これにより本処理を継続して行う。
【0093】
逆にステップS421において電波強度不足フラグが有効状態に設定されていることが確認された場合、電波強度確認部22はステップS422において、メモリ22に記録されている電波強度不足フラグを無効に設定する。そして登録指示部11dに対して、電波強度が不足状態から通常状態に変化したことを通知する。
【0094】
上記通知を受けた登録指示部11dはステップS423において、呼制御サーバ30に対してユーザ登録信号を通信制御部15を用いて送信する。そしてステップS410に移行し、再び電波強度確認部22によるバッテリ電波強度の確認を行う。これにより本処理を継続して行う。
【0095】
以上に示した本処理は通常、無線IP電話機10の電源停止時やバッテリ切れの発生時等に終了される。ただし、処理中断指示を受け付ける指示受付部を設けることにより、任意のタイミングで本処理を中断可能とする形態であってもよい。
【0096】
[着信制御シーケンスについて]
ここで、従来、及び本発明の実施の形態1〜4に係る無線IP電話機10及び呼制御サーバ30により実施される着信制御シーケンスを、図11〜図15のシーケンス図を用いて説明する。図11〜図15に示すシーケンス図は、IP電話システムの代表的な呼制御プロトコルであるSIP(Session Initiation Protocol)を用いた場合の通信シーケンスを示している。なお、各シーケンスにおいて実際には必要となるユーザ認証の部分は、省略して記述している。
【0097】
図14は、従来の正常通信時の着信制御シーケンスを示している。図14は、順次サーチ方式でグループ電話番号に着信した呼に対して、呼制御サーバ30から最初に選択された無線IP電話機10aが着信検知信号(信号No.3:INVITE)を受け付けて応答する場合の通信シーケンスである。このとき、無線IP電話機10aよりも下位の選択順位に位置する無線IP電話機10bについては、着信検知信号の送信は発生しない。
【0098】
これに対し図11は、本発明の実施の形態1及び実施の形態3における着信制御シーケンスを示している。図11は、順次サーチ方式でグループ電話番号に着信した呼に対して、呼制御サーバ30から最初に選択された無線IP電話機10a(実施の形態1及び実施の形態3に係る無線IP電話機10a)が着信を受け付けて応答する場合の通信シーケンスである。なお、この無線IP電話機10aはバッテリ残容量不足、或いは電波強度不足の状態にあるものとする。
【0099】
この状態において着信側の無線IP電話機10aが呼制御サーバ30からの着信通知信号を受信した場合、呼制御サーバ30に話中信号(信号No.5:486 Busy Here)を返却して、グループ内の他IP電話機に応答処理を委ねる。この結果、呼制御サーバ30が次に選択した無線IP電話機10bに着信通知信号(信号No.7:INVITE)が送られる。即ち、バッテリの残量部族や電波強度不足に陥った端末以外の端末に、着信信号が送られる為、着信に対して確実に応答できることができ、仮に無線IP電話機10aで応答してしまった場合に発生し得る、バッテリ残量不足や電波強度不足に起因する問題、例えば音声品質劣化や予期せぬ異常動作などの不具合を未然に回避することが可能となる。
【0100】
また図15は、従来の通信異常発生時の着信制御シーケンスを示している。図15は、順次サーチ方式でグループ電話番号に着信した呼に対して、呼制御サーバ30から最初に選択された従来の無線IP電話機10aが、極度な電波強度不足、あるいはバッテリ残容量不足のために通信不能な状態に陥った場合の通信シーケンスである。
【0101】
呼制御サーバ30は、無線IP電話機10aからの応答が得られないために、一定時間(この長さは呼制御サーバ30によって異なる)、着信通知信号の再送を行う(信号No.3〜No.8)。その後、再送タイムアウトにより、呼制御サーバ30は2番目に選択した無線IP電話機10bに着信先を移行し、着信通知信号を送信する。この従来の方式では、無線IP電話機10aへの着信通知信号再送を繰り返し行うため、通信に大きな遅延が発生してしまうという問題があった。
【0102】
これに対し図12及び図13は、本発明の実施の形態2及び実施の形態4における着信制御シーケンスを示している。図12は、ユーザ登録、及びユーザ登録削除の通信シーケンスである。呼制御サーバ30は、ユーザ情報(=各IP電話機に関する情報)が格納されたデータベース(=ユーザ情報データベース)を有しており、IP電話機10aは、Expiresヘッダで登録の有効時間を指定したREGISTER信号を呼制御サーバに送信することによってユーザ登録を行う。
【0103】
この処理によって、呼制御サーバ30側の登録情報が有効化され、IP電話機10aがIP電話システム上で利用可能となる。なお、ユーザ登録後、Expiresヘッダで指定した時間を経過すると、呼制御サーバ側30の登録情報が自動的に無効化されてIP電話機10aが使用不可となるため、有効時間内に再度ユーザ登録処理を行い、ユーザ情報を再登録する必要がある。また、Expiresヘッダで0を指定したREGISTER信号を送信することにより、IP電話機10a側からユーザ登録削除を行うことが可能である。
【0104】
これにより、呼制御サーバ側の登録情報は無効化され、それ以降、IP電話機10aはIP電話システム上で使用不可となる(ただしIP電話機10aが複数のグループに登録されている場合はこの限りではない)。なお、この状態で、当該IP電話機10a宛に着信があった場合には、呼制御サーバ側で適切な処理、例えば他のIP電話機への着信先の移行処理等を行い、当該IP電話機10aに対して着信検知信号は送信されない。
【0105】
実施の形態2においてはローバッテリー状態、実施の形態4では電波強度不足状態に陥った時点で、図12のシーケンスを用いて一時的にIP電話機10aのユーザ登録削除を行う。逆に状態が復旧した時点で、図12のシーケンスを用いて再びユーザ登録を行う。なお、複数のグループ電話番号を有するIP電話機では、上述した処理をグループ電話番号ごとに独立して実行する。
【0106】
図13は、順次サーチ方式でグループ電話番号に着信したとき、呼制御サーバから最初に選択された無線IP電話機10aが、上記図12のユーザ登録削除の通信シーケンスによりユーザ登録削除されたIP電話機である場合の通信シーケンスである。無線IP電話機10aはバッテリ残容量不足、或いは電波強度不足を検出した時点で、図12のシーケンスによりユーザ登録削除を行っている。従って、グループ電話番号着信時に、呼制御サーバから無線IP電話機10aに対して着信通知信号が送信されることなく、次の候補である無線IP電話機10bに対して着信通知信号が送信される。
【0107】
このため、本発明では図15に示すような遅延の発生を未然に回避することが可能となる。また、余分な遅延によりネットワーク負荷が発生することがなくなり、グループ電話番号、或いはIP電話システム全体の接続品質や信頼性を向上させることが可能となる。
【0108】
[その他の実施の形態]
以上、好ましい実施の形態及び実施例をあげて本発明を説明したが、本発明は必ずしも上記実施の形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内において様々に変形して実施することができる。
【0109】
従って本発明は、以下の形態にも適用可能である。
(A)本実施形態では、無線IP電話機10と呼制御サーバ30が通信を行うシグナリングプロトコルとしてSIPを用いているが、これ以外のシグナリングプロトコルを用いたIP電話システムにおいても本発明を実施する形態であってもよい。
【0110】
(B)本実施形態では、着信制御処理に関わる各機能部が無線IP電話機10内部に備わっている構成を例として説明したが、これらの機能部の一部が電話網やLAN等のネットワークを介して接続された外部装置により実現される形態であってもよい。例えば、電話番号判定部11aがネットワーク上に存在する情報処理装置(ネットワークサーバ等)に実装されている形態であってもよい。これにより例えば、グループ電話番号であるかどうかを判定するための電話番号情報の変更を一括して行うこと等が可能である。
【0111】
(C)本実施形態では、本発明の着信制御方式を備えた通信装置として無線IP電話機10を例にあげているが、無線IP電話システムに接続可能な通信装置であれば、これ以外の装置において本発明を実施する形態でもよい。例えば、無線ファクシミリ装置、無線LAN接続機能付き携帯電話、インターネット電話、無線通信機能を備えたPDAやノートパソコン等の情報処理装置において実施する形態であってもよい。
【0112】
(D)本実施形態では、本発明の着信制御方式に関わる無線IP電話機10の各種機能部が、マイクロプロセッサ等の演算処理装置上でプログラムを実行することにより実現されているが、各種機能部が複数の回路により実現される形態でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】は、本発明の第一及び第二の実施形態に係る無線IP電話システムの構成を示すブロック図である。
【図2】は、本発明の第一の実施形態に係る無線IP電話機の構成を示すブロック図である。
【図3】は、本発明の第一の実施形態に係る着信制御処理の処理フローを示すフロー図である。
【図4】は、本発明の第二の実施形態に係る無線IP電話機の構成を示すブロック図である。
【図5】は、本発明の第二の実施形態に係る着信制御処理の処理フローを示すフロー図である。
【図6】は、本発明の第三及び第四の実施形態に係る無線IP電話システムの構成を示すブロック図である。
【図7】は、本発明の第三の実施形態に係る無線IP電話機の構成を示すブロック図である。
【図8】は、本発明の第三の実施形態に係る着信制御処理の処理フローを示すフロー図である。
【図9】は、本発明の第四の実施形態に係る無線IP電話機の構成を示すブロック図である。
【図10】は、本発明の第四の実施形態に係る着信制御処理の処理フローを示すフロー図である。
【図11】は、本発明の第一及び第三の実施形態に係る着信制御シーケンスを示すシーケンス図である。
【図12】は、本発明の第二及び第四の実施形態に係るユーザ登録、及びユーザ登録削除の通信シーケンスを示すシーケンス図である。
【図13】は、本発明の第二及び第四の実施形態に係る着信制御シーケンスを示すシーケンス図である。
【図14】は、従来の正常通信時の着信制御シーケンスを示すシーケンス図である。
【図15】は、従来の通信異常発生時の着信制御シーケンスを示すシーケンス図である。
【符号の説明】
【0114】
10 無線IP電話機
11a 電話番号判定部(電話番号判定手段)
11b 着信可否決定部(着信可否決定手段)
11c 削除指示部(削除指示手段)
11d 登録指示部(登録指示手段)
15 通信制御部(通信制御手段)
17 残容量判定部(残容量判定手段)
18 アンテナ装置(無線通信手段)
22 電波強度判定部(電波強度判定手段)
30 呼制御サーバ
31 ユーザ情報データベース(グループ管理情報)
42 無線通信網(無線LAN)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信網に接続可能な無線通信手段と、
複数のIP電話機で共用可能な電話番号であるグループ電話番号とIP電話機とを対応付けたグループ管理情報を記録するサーバであり、前記グループ電話番号への着信を受け付け、前記グループ電話番号に対応づけられたIP電話機を前記グループ管理情報を用いて割り出して着信検知通知を与える呼制御サーバ、との間で前記無線通信手段を用いて通信を行う通信制御手段と、
前記無線通信手段が前記無線通信網より受信している電波の電波強度を測定し、前記電波強度が所定値を下回るかどうかを判定する電波強度判定手段と、を備えた無線IP電話機であって、
前記通信制御手段が前記呼制御サーバより前記着信検知通知を受信した場合に、着信先の電話番号が前記グループ電話番号であるかどうかを判定する電話番号判定手段と、
前記電話番号判定手段により着信先の電話番号が前記グループ電話番号であると判定された場合において、前記電波強度判定手段を用いて前記電波強度の判定を行う着信可否決定手段と、を備え、
前記着信可否決定手段が、前記電波強度の判定の結果、前記電波強度が所定値を下回ると判定された場合において、前記呼制御サーバに対して着信拒否を示す信号を前記通信制御手段を用いて送信することを特徴とする無線IP電話機。
【請求項2】
前記電波強度判定手段により前記電波強度が所定値を下回ると判定された場合において、前記呼制御サーバに対して、前記グループ管理情報から該無線IP電話機に関する情報を削除するように指示する削除指示手段と、
前記電波強度判定手段により前記電波強度が所定値を上回ると判定された場合において、前記呼制御サーバに対して、前記グループ管理情報に該無線IP電話機に関する情報を登録するように指示する登録指示手段と、を備えたことを特徴とする請求項3に記載の無線IP電話機。
【請求項3】
電波強度が所定値を下回っていると判定すると、呼制御サーバからの着信を拒否することを特徴とする無線IP電話機。
【請求項4】
電波強度が所定値を下回っていると判定すると、呼制御サーバに対して話中信号を送信することを特徴とする無線IP電話機。
【請求項5】
少なくとも第1と第2の無線IP電話機と呼制御サーバとからなるシステムであり、
外線からの着信がある際に、前記第1のIP電話機が受信する電波の電波強度が所定値を下回ると、前記呼制御サーバから前記第1の無線IP電話機に呼出信号を送信せず、前記第2の無線IP電話機に呼出信号を送信することを特徴とする無線IP電話機システム。
【請求項6】
少なくとも第1と第2の無線IP電話機と呼制御サーバとからなるシステムであり、
外線からの着信がある際に、前記第1のIP電話機が受信する電波の電波強度が所定値を下回ると、前記第1のIP電話機は前記呼制御サーバに前記第1のIP電話機が受信する電波の電波強度が所定値を下回っていることを示す信号を送信し、呼制御サーバは前記信号を受信すると、前記第1のIP電話機には呼出信号を送信せず、前記第2のIP電話機に呼出信号を送信することを特徴とする無線IP電話機システム。
【請求項7】
少なくとも第1と第2の無線IP電話機と呼制御サーバとからなるシステムであり、
外線からの着信がある際に、前記第1のIP電話機が受信する電波の電波強度が所定値を下回ると、前記第1のIP電話機は前記呼制御サーバに話中信号を送信し、呼制御サーバは前記信号を受信すると、前記第1のIP電話機には呼出信号を送信せず、前記第2のIP電話機に呼出信号を送信することを特徴とする無線IP電話機システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−219440(P2008−219440A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−53584(P2007−53584)
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】