説明

無電解メッキ用基板、無電解メッキされたメッキ基板およびその製造方法

【課題】
有機物で修飾された基板の表面を高度に平滑とし、メッキ核の吸着サイトを均一に分散し、さらにメッキ浴に対する化学的安定性を高めることによって、ナノレベルで均一な金属皮膜を有する無電解メッキ用基板、無電解メッキされたメッキ基板の提供。
【解決手段】
疎水性の繰り返し単位1と金属ナノ粒子が吸着する機能を有する機能団を含む繰り返し単位2を含有するランダム共重合体の単分子膜が1層以上被覆され、金属ナノ粒子が吸着する機能を有する機能団に吸着した金属ナノ粒子をメッキ核として無電解メッキされたメッキ基板およびその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無電解メッキ用基板、無電解メッキされたメッキ基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に微細配線を作成するようなプリント配線板の場合には、プリント配線板の両面を導通させるビアホールの形成が不可欠である。そのため、その様なプリント配線板は通常、レーザーによるビアホール形成工程、デスミヤ工程、触媒付与工程、無電解銅メッキを施す工程等を経て回路形成が行われる。さらに、回路形成はエッチングによるサブトラクティブ法により行われる場合や、セミアディティブ法、アディティブ法により行われる場合もある。したがって、上記の様な微細配線を形成したプリント配線板において、配線回路と高分子フィルムとの間の接着性はこれらのプロセスに耐える必要がある。
【0003】
スパッタリングや蒸着などの乾式法により形成した金属薄膜とポリイミド樹脂との接着力の向上の試みとしてはいくつかの方法が検討されている[たとえば、特開2002−113812号公報(特許文献1)]。一方、金属箔とポリイミド樹脂との強固な接着を実現する方法として、銅金属箔の表面をあらかじめ表面処理しておく方法が報告されている[たとえば、特開2002−208768号公報(特許文献2)]。非特許文献1には、例えば、銅箔表面をポリベンツイミダゾール溶液及び4−アミノフェニルジスルフィド溶液で順次処理した後、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミック酸の皮膜を形成し、これを加熱してポリイミド樹脂とする事により銅箔とポリイミド樹脂の間に強固な接着が実現できる事が開示されている。
【0004】
これに対して、プリント配線板に用いられるウエットプロセス、すなわち無電解メッキ膜を樹脂材料に直接形成する方法として、エポキシ系樹脂表面の粗化表面に無電解メッキを形成させる方法が開示されている[たとえば、特開2000−198907号公報(特許文献3)]。また、ポリイミド樹脂に無電解メッキ膜を形成する方法として、苛性アルカリを含む溶液に1級アミノ基を有する有機ジスルフィド化合物、および/または1級アミノ基を有する有機チオール化合物を含む溶液で処理する方法が開示されている。
【0005】
多数の薄膜を集積して形成させて得られる超LSIなどに代表される電子デバイス分野において、集積回路デバイスの微細化に伴って、構成している薄膜の厚みが極めて小さくなってきている。無電解メッキ法を利用した微細配線技術分野においても、ナノレベルの超薄膜からなる微小回路を形成させることの重要性が高まってきている。しかしながら基板表面に無電解メッキ膜を形成させる場合、粗化処理層(スクラッチ層)の影響が無視できるレベルの膜厚が必要となる。スクラッチ層は、メッキ膜と基材との界面における密着性を向上させるために重要な層であるが、ナノレベルの金属薄膜を形成させた場合、数ミクロンオーダーであるスクラッチ層の山と谷が金属ナノ薄膜の導通の妨げとなるなどの問題点を有する。したがって、スクラッチ層としての機能を持たせつつも、ナノレベルの膜厚を有し、且つ均質な金属薄膜を各種基板表面に形成させるためには、スクラッチ層表面の高平坦化処理が重要である。
しかしながら、従来の方法では、ナノレベルでの高平坦化処理に対する適当な方法が無いので、ナノレベルで均質な金属皮膜を得ることは困難であった。
【0006】
他方、ガラス基板上に活性水素を有する基を含む有機高分子の単分子膜を形成させた液晶配向膜が知られていた[たとえば、特開2004−101782号公報(特許文献4)]。しかし、このような構成を有するガラス基板に金属をメッキすることは全く知られていなかった。
【特許文献1】特開2002−113812号公報
【特許文献2】特開2002−208768号公報
【特許文献3】特開2000−198907号公報
【特許文献4】特開2004−101782号公報
【非特許文献1】K. Arisumi, F. Feng, T. Miyashita, and H. Ninomiya, Langmuir, 14, 5555(1998)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、例えば、各種基板上の高平坦化処理として、膜厚がナノレベルで制御された金属ナノ粒子を吸着させることが可能な機能団を含む有機薄膜を形成させた後、メッキ核となる金属ナノ粒子を吸着、さらにこれを核とした無電解メッキを実施することによって、各種基板上へ高度に平滑化された金属薄膜を得ることを目的とする。
また、本発明は、例えば、各種基板上にナノオーダーの金属薄膜を形成させること、さらに当該薄膜の膜厚を任意に制御することを目的とする。
さらに、本発明は、例えば、メッキ核の吸着サイトを有機薄膜上に均一に分散させることによって、ナノレベルで均一な金属皮膜を有する無電解メッキ用基板、無電解メッキされたメッキ基板などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、所定の機能団を有する単分子膜が被覆された無電解メッキ用の基板、および無電解メッキされた基板等に関する本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の第1の態様は、金属ナノ粒子が吸着する機能を有する機能団を含む共重合体の単分子膜が1層以上被覆された無電解メッキ用の基板である。この単分子膜は、下記一般式(1)
【化26】


(式中、Rは互いに同一または異なってもよく水素原子もしくはメチル基を表し、Zは互いに同一または異なってもよく−NH−、−O−もしくは−S−であり、nは2〜20の整数である。)で表される繰り返し単位1と、金属ナノ粒子が吸着する機能を有する機能団を含む下記一般式(2)
【化27】


(式中、Wは活性水素を有する基であり、Rは互いに同一または異なってもよく水素原子もしくはメチル基を表し、Zは同一または異なってもよく−NH−、−O−もしくは−S−であり、mは1〜5の整数である。)で表される繰り返し単位2を含有するランダム共重合体Aの単分子膜、および、
下記一般式(3)
【化28】


(式中、Rは互いに同一または異なってもよく水素原子もしくはメチル基を表し、Zは互いに同一または異なってもよく−NH−、−O−もしくは−S−であり、rは2〜20の整数である。)で表される繰り返し単位3と、金属ナノ粒子が吸着する機能を有する機能団を含む下記一般式(4)
【化29】


(式中、Vは活性水素を有する基であり、Rは互いに同一または異なってもよく水素原子もしくはメチル基を表し、Zは同一または異なってもよく−NH−、−O−もしくは−S−であり、pは1〜5の整数である。)で表される繰り返し単位4と、光もしくは熱によって3次元架橋構造体を形成する機能を有する機能団を含む下記一般式(5)
【化30】

(式中、Xは−NH−、−O−もしくは−S−であり、Rは互いに同一または異なってもよく水素原子もしくはメチル基を表し、Rは水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基もしくは炭素数2〜20のアルキニル基であり、Z5は互いに同一または異なってもよく−NH−、−O−もしくは−S−であり、qは1〜5の整数である。)で表される繰り返し単位5とを含有するランダム共重合体Bの単分子膜からなる群から選択される1種以上の単分子膜であることができる。
上記一般式、(1)〜(5)において、R1、R2、R3、RおよびRは、水素原子を表し、R6は互いに同一または異なってもよくメチル基または水素原子であり、Z1、Z2、Z3、Z4およびZ5が共に−NH−であり、Wがアミノ基であり、mおよびqが2であり、nおよびrが8〜14であることが好ましい。
【0010】
また、光もしくは熱によって3次元架橋構造体を形成する機能を有する機能団を含むランダム共重合体Bの単分子膜が紫外線照射された膜であることが好ましい。単分子膜がラングミュア・ブロジェット膜であることが好ましい。また、単分子膜が被覆される基板の表面がガラス、シリコンウェーハまたはプラスチックである、ことが好ましい。
【0011】
ランダム共重合体Aの重量平均分子量は8000〜50000であることが好ましく、またランダム共重合体Bの重量平均分子量は8000〜50000であることが好ましい。また、無電解メッキ用基板の製造方法において、単分子膜が1層または2層以上被覆されていることが好ましい。また、単分子膜がラングミュア・ブロジェット法によって作成されることが好ましい。単分子膜が被覆される基板の表面がガラス、シリコンウェーハまたはプラスチックであることが好ましい。また、光もしくは熱によって3次元架橋構造体を形成する機能を有する機能団を含むランダム共重合体Bの単分子膜に紫外線を照射する工程を含むことができる。
【0012】
本発明の第2の態様は、金属ナノ粒子が吸着する機能を有する機能団に吸着した金属ナノ粒子をメッキ核として、第1の態様の無電解メッキ用基板を無電解メッキしたメッキ基板である。
このメッキ基板において、メッキ核が金ナノ粒子であり、銅がメッキされたことが好ましい。
【0013】
本発明の第3の態様は、 金属ナノ粒子が吸着する機能を有する機能団を含む共重合体の単分子膜を被覆する工程を含む、無電解メッキ用基板の製造方法である。この単分子膜は、下記一般式(1)
【化31】


(式中、Rは互いに同一または異なってもよく水素原子もしくはメチル基を表し、Zは互いに同一または異なってもよく−NH−、−O−もしくは−S−であり、nは2〜20の整数である。)で表される繰り返し単位1と、金属ナノ粒子が吸着する機能を有する機能団を含む下記一般式(2)
【化32】


(式中、Wは活性水素を有する基であり、Rは互いに同一または異なってもよく水素原子もしくはメチル基を表し、Zは同一または異なってもよく−NH−、−O−もしくは−S−であり、mは1〜5の整数である。)で表される繰り返し単位2を含有するランダム共重合体Aの単分子膜、および、
下記一般式(3)
【化33】


(式中、Rは互いに同一または異なってもよく水素原子もしくはメチル基を表し、Zは互いに同一または異なってもよく−NH−、−O−もしくは−S−であり、rは2〜20の整数である。)で表される繰り返し単位3と、金属ナノ粒子が吸着する機能を有する機能団を含む下記一般式(4)
【化34】


(式中、Vは活性水素を有する基であり、Rは互いに同一または異なってもよく水素原子もしくはメチル基を表し、Zは同一または異なってもよく−NH−、−O−もしくは−S−であり、pは1〜5の整数である。)で表される繰り返し単位4と、光もしくは熱によって3次元架橋構造体を形成する機能を有する機能団を含む下記一般式(5)
【化35】

(式中、Xは−NH−、−O−もしくは−S−であり、Rは互いに同一または異なってもよく水素原子もしくはメチル基を表し、Rは水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基もしくは炭素数2〜20のアルキニル基であり、Z5は互いに同一または異なってもよく−NH−、−O−もしくは−S−であり、qは1〜5の整数である。)で表される繰り返し単位5とを含有するランダム共重合体Bの単分子膜からなる群から選択される1種以上の単分子膜であることができる。
上記一般式、(1)〜(5)において、R1、R2、R3、RおよびRは、水素原子を表し、R6は互いに同一または異なってもよくメチル基または水素原子であり、Z1、Z2、Z3、Z4およびZ5が共に−NH−であり、Wがアミノ基であり、mおよびqが2であり、nおよびrが8〜14であることが好ましい。
また、光もしくは熱によって3次元架橋構造体を形成する機能を有する機能団を含むランダム共重合体Bの単分子膜に紫外線を照射する工程を含むことが好ましい。単分子膜を2層以上被覆することが好ましい。単分子膜がラングミュア・ブロジェット法によって作成されることが好ましい。単分子膜が被覆される基板の表面がガラス、シリコンウェーハまたはプラスチックであることが好ましい。
【0014】
ランダム共重合体Aの重量平均分子量は8000〜20000であることが好ましく、またランダム共重合体Bの重量平均分子量は8000〜50000であることが好ましい。また、無電解メッキ用基板の製造方法において、単分子膜が1層または2層以上被覆されていることが好ましい。また、単分子膜がラングミュア・ブロジェット法によって作成されることが好ましい。単分子膜が被覆される基板の表面がシリコンウェーハまたはプラスチックであることが好ましい。また、光もしくは熱によって3次元架橋構造体を形成する機能を有する機能団を含むランダム共重合体Bの単分子膜に紫外線を照射する工程を含むことができる。
【0015】
本発明の第4の態様は、第3の態様で製造されたメッキ用基板に、金属ナノ粒子を機能団に吸着させる工程と、金属を無電解メッキする工程を含むメッキ基板の製造方法である。
また、金属を無電解メッキする工程が、金属ナノ粒子が吸着する機能を有する機能団に吸着した金ナノ粒子をメッキ核として無電解銅メッキによって行われることが好ましい。
また、本発明の第4の態様は、ランダム共重合体Bの単分子膜を複数被覆し、当該単分子膜に紫外線を照射した後に、ランダム共重合体Aの単分子膜を被覆する工程、金ナノ粒子を機能団に吸着させる工程、および金ナノ粒子をメッキ核として無電解銅メッキによって銅をメッキする工程を含むメッキ基板の製造方法である。
【0016】
本明細書において、「活性水素を有する基」は、たとえば、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、ヒドロキシ基、ヒドロキシフェニル基、アミド基、ヒドラジノ基、ヒドラジノカルボニル基、メルカプト基が挙げられる。
【0017】
本明細書において、「C〜C20アルキル基」は、直鎖または分岐鎖のアルキル基である。「C〜C20アルキル基」はC〜C10アルキル基であることが好ましく、C〜Cアルキル基であることが更に好ましい。アルキル基の例としては、制限するわけではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ドデカニル等を挙げることができ、メチルが最も好ましい。
本明細書において、「C〜C20アルケニル基」は、直鎖または分岐鎖のアルケニル基である。「C〜C20アルケニル基」は、C〜C10アルケニル基であることが好ましく、C〜Cアルケニル基であることが更に好ましい。アルケニル基の例としては、制限するわけではないが、ビニル、アリル、プロペニル、イソプロペニル、2−メチル−1−プロペニル、2−メチルアリル、2−ブテニル等を挙げることができる。
本明細書において、「C2〜C20アルキニル基」は直鎖または分岐鎖のアルケニル基である。「C2〜C20アルキニル基」は、C〜C10アルキニル基であることが好ましく、C〜Cアルキニル基であることが更に好ましい。アルキニル基の例としては、制限するわけではないが、エチニル、プロピニル、ブチニル等を挙げることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の好ましい態様のメッキ用の基板とメッキ基板、およびそれらの製造方法によって、例えば、各種基板上の高平坦化処理として、膜厚がナノレベルで制御された金属ナノ粒子を吸着させることが可能な機能団を含む有機薄膜を形成させた後、メッキ核となる金属ナノ粒子を吸着、さらにこれを核とした無電解メッキを実施することによって、各種基板上へ高度に平滑化された金属薄膜を得ることができる。
本発明の好ましい態様のメッキ用の基板とメッキ基板、およびそれらの製造方法によって、例えば、各種基板上にナノオーダーの金属薄膜を形成させること、さらに当該薄膜の膜厚を任意に制御することができる。
本発明の好ましい態様のメッキ用の基板とメッキ基板、およびそれらの製造方法によって、例えば、メッキ核の吸着サイトを有機薄膜上に均一に分散させることによって、ナノレベルで均一な金属皮膜を有する無電解メッキ用基板、無電解メッキされたメッキ基板などを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
1.金属ナノ粒子が吸着する機能を有する機能団を含むランダム共重合体
本発明の金属ナノ粒子が吸着する機能を有する機能団を含むランダム共重合体は、上記一般式(1)と上記一般式(2)で表される繰り返し単位のランダム共重合体である(以下、「ランダム共重合体A」ともいう)。
【0020】
ランダム共重合体Aは、互いに異なる2つの繰り返し単位を有する共重合体である。一般式(1)で表される繰り返し単位1の側鎖が疎水性を示す構成単位であり、一般式(2)で表される繰り返し単位2の側鎖が親水性を示す構成単位である。したがって、ランダム共重合体Aにおいて、繰り返し単位1の割合が多くなるとランダム共重合体Aの疎水性が強くなり、繰り返し単位2の割合が多くなると親水性が強くなる。
また、ランダム共重合体Aの繰り返し単位2は金属ナノ粒子が吸着する機能を有する機能団を有する。たとえば、繰り返し単位2の末端にアミノ基が設けられている場合に、当該アミノ基は金属ナノ粒子を強固に吸着する。
ランダム共重合体Aにおいて、好ましい両構成単位の割合は、繰り返し単位1のモル数aと繰り返し単位2のモル数bは共に、100b/(a+b)が0.01〜99.99の範囲であり、より好ましくは0.03〜50であり、さらに好ましくは、1〜25である。
【0021】
ランダム共重合体Aの分子量が小さすぎても、大きすぎても、後述するLB膜の成膜が困難になる。したがって、重量平均分子量で表現すると8,000〜20,000の範囲が好ましく、より好ましくは10,000〜100,000である。
【0022】
ランダム共重合体Aは、たとえば、N―ドデシルアクリルアミド(DDA)とN−アクリロキシスクシンイミド(SuOA)を共重合した共重合体pDDA−SuOAに活性水素を有する基を導入して得られる。
具体的には、「K. Arisumi, F. Feng, T. Miyashita, and H. Ninomiya, Langmuir, 14, 5555(1998)」(非特許文献1)等に記載されている公知の方法を用いて、N―ドデシルアクリルアミド(DDA)とN−アクリロキシスクシンイミド(SuOA)を合成し、このように合成されたDDAとSuOAを精製トルエンに溶解し、その溶液中に所定量の重合開始剤を加える。その後、反応系の酸素を除去して重合を行い、共重合体pDDA−SuOAを得る。得られたpDDA−SuOAをクロロホルムに溶解し、所定の濃度の(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)DADOO/クロロホルム溶液中に滴下してランダム共重合体Aを得ることができる。
【0023】
2.光もしくは熱によって3次元架橋構造体を形成する機能を有する機能団を含む共重合体
本発明の光もしくは熱によって3次元架橋構造体を形成する機能を有する機能団を含むランダム共重合体は、上記一般式(3)と上記一般式(4)と上記一般式(5)で表される繰り返し単位のランダム共重合体である(以下、「ランダム共重合体B」ともいう)。
3次元架橋構造体を形成する機能を有する機能団の例として、(メタ)アクリル基、グリシジル基、オキセタニル基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基などが挙げられる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル基」はメタクリル基およびアクリル基の総称として用いる。
【0024】
ランダム共重合体Bは一般式(3)で表される繰り返し単位3と、一般式(5)で表される繰り返し単位5を含み、一般式(4)で表される繰り返し単位4を任意に含む共重合体である。3つの繰り返し単位のうち繰り返し単位3が疎水性を示す構成単位であり、繰り返し単位4が親水性を有し、かつ、金属ナノ粒子が吸着する機能を有する機能団を含む構成単位である。また、繰り返し単位5は、光もしくは熱によって3次元架橋構造体を形成する機能を有する機能団を有する構成単位である。
したがって、ランダム共重合体Bの繰り返し単位3の割合が多くなると共重合体は疎水性の性質が強くなり、繰り返し単位4の割合が多くなると親水性の性質が強く現れる。
ランダム共重合体Bの繰り返し単位4は金属ナノ粒子が吸着する機能を有する機能団を有する。たとえば、繰り返し単位4の末端にアミノ基が設けられている場合に、当該アミノ基は金属ナノ粒子を高度に吸着する。
ランダム共重合体Bの繰り返し単位5は、光もしくは熱によって3次元架橋構造体を形成する機能を有する機能団を有し、具体的には、繰り返し単位5の末端の(メタ)アクリル基は、光もしくは熱によって、ラジカルカップリング反応が生じ、3次元架橋構造体を形成する。
【0025】
ランダム共重合体Bにおいて、好ましい両構成単位の割合は、繰り返し単位3のモル数cと繰り返し単位4のモル数dと繰り返し単位5のモル数eは共に100e/(c+d+e)が0.01〜99.99の範囲となる数値であり、より好ましくは0.03〜50、さらに好ましくは1〜25である。また、ランダム共重合体Bにおいては、繰り返し単位4の有無は任意である。すなわちdは0でも良い。
【0026】
ランダム共重合体Bは、ランダム共重合体Aの繰り返し単位2の一部または全部に(メタ)アクリル基を導入して得られる。
ランダム共重合体Aの繰り返し単位2に比べて、ランダム共重合体Aと反応する(メタ)アクリル基を有する化合物が多ければ、ランダム共重合体Aの繰り返し単位2に高い割合で(メタ)アクリル基が導入される。ランダム共重合体Aと反応する(メタ)アクリル基を有する化合物をランダム共重合体Aの繰り返し単位2に比べて過剰な状態にすれば、ランダム共重合体Aの全ての繰り返し単位2に(メタ)アクリル基が導入される。
他方、前記(メタ)アクリル基を有する化合物が、ランダム共重合体Aの繰り返し単位2に比べて少なければ、ランダム共重合体Aの繰り返し単位2の一部はランダム共重合体Bの繰り返し単位4として残存し、繰り返し単位3と繰り返し単位4と繰り返し単位5の3つの繰り返し単位がランダムに共重合したランダム共重合体Bが得られる。
【0027】
3−1 LB法を用いたLB膜の被覆
本発明において、ランダム共重合体A、ランダム共重合体Bまたはその両者の単分子膜を累積する基板は、たとえばシリコンウェーハ、ガリウムヒ素板、石英板、ガラス板、セラミック板、フッ化カルシウム板のような無機基板、および、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエステル、ポリカーボネート、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、アセタール樹脂、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキシド等の有機基板等が挙げられる。メッキ用の基板は、これらの基板に、ランダム共重合体A、ランダム共重合体Bまたは両者を1層以上被覆して作製される。
【0028】
基板はそのままでも単分子膜を被覆して使用できるが、必要に応じて単分子膜の被覆前に基板表面を前処理することができる。たとえば、基板にシリコンウェーハを用いる場合には、当該シリコン基板の表面をジメチルジクロロシラン、ヘキサメチルシシラザン、オクチルトリクロロシラン等のシランカップリング剤で前処理されてから用いることが好ましい。シラン処理は疎水処理と反応性官能基処理に分けられるが、基板の材質やその後に被覆される単分子膜の材質等によって、適宜選択することができる。また、基板にプラスチックを用いる場合には、クロロホルム等の有機溶媒で洗浄する前処理がなされることが好ましい。この洗浄は超音波洗浄が好ましい。
【0029】
前処理がなされた基板上に、ランダム共重合体A、ランダム共重合体Bまたは両者の単分子膜を1層以上被覆して、メッキ用基板が作製される。単分子膜は、ラングミュア・ブロジェット法(LB法)を用いて次のように被覆される。なお、本明細書では、LB法を用いて形成された単分子膜を、「ラングミュア・ブロジェット膜(LB膜)」ともいう。
【0030】
ランダム共重合体Aまたはランダム共重合体Bを有機溶媒に溶解し、この溶液を水面上に必要量滴下して水面上に単分子膜を形成する。
ランダム共重合体Aまたはランダム共重合体Bを溶解する有機溶媒は、該ポリマーを溶解し、かつ水面上に膜を形成した後に完全に蒸発し、膜表面に残らないものがよい。好ましい有機溶媒の例は、ハロゲン化炭化水素、芳香族化合物、脂肪族炭化水素、エステル類等である。ハロゲン化炭化水素の具体例として、クロロホルム等が挙げられる。芳香族化合物の具体例として、トルエン等が挙げられる。脂肪族炭化水素の具体例として、ヘキサン等が挙げられる。エステル類の具体例として酢酸エチル等が挙げられる。また、単分子膜作成時の溶媒蒸発速度の観点からハロゲン化炭化水素が好ましく、具体的にはクロロホルムが好適である。
【0031】
有機溶媒を完全に蒸発させた後、この単分子膜を、フッ素樹脂加工処理されたンバーを用いて一定速度で圧縮することにより、水面上に高分子鎖が密に充填した単分子膜を得る。ランダム共重合体Aまたはランダム共重合体Bを水面に展開すると、ランダム共重合体の主鎖は水面に配置され、側鎖は基板に垂直な方向に配置される傾向がある。たとえば、図1に示すように、ランダム共重合体Aにおいては、ランダム共重合体の主鎖は水面上に配置され、疎水性を示す一般式(1)で表される繰り返し単位1の側鎖は空気中を向き、親水性を示す一般式(2)で表される繰り返し単位2の側鎖は水中を向く。
【0032】
水面上に展開したランダム共重合体の表面圧を所定の値に保ちながら、単分子膜が基板に付着するように、前処理した基板を空気中から水中に所定の速度で降下させ、水中から空気中に所定の速度で上昇させる。これを繰り返して単分子膜を一層ずつ基板上に累積することによりLB膜を得る。この際、基板を上昇させたときのみ付着するLB膜を累積しても、基板を下降したときのみ付着するLB膜を累積してもよい。
【0033】
LB膜が形成されているか否かは、膜面積より算出される一分子あたりの占有面積と表面圧を測定することにより判断できる。被覆するときの膜の表面圧は、表面厚(π)−面積(A)曲線において、その膜が固体凝縮膜を形成している範囲の表面圧であればよい。ただし、その圧が高すぎると膜構成分子が重なり合い、一方圧が低すぎると安定に累積できない。良好な被覆を複数回行って多層累積した累積膜を形成するためには表面圧が10〜40mN/m、好ましくは25〜30mN/mを用いるのが好ましい。
【0034】
上記溶媒に溶解するポリマーの濃度は0.0001〜0.005mol/Lが好ましく、さらに0.01〜0.02mol/Lが好ましい。特に、ポリマーの濃度が0.005mol/L以下であれば、高分子凝集体を形成することなく、良好な単分子膜が得られるので好ましい。他方、ポリマーの濃度が0.0001mol/L以上であれば、水槽の汚染を防止できる。
【0035】
単分子膜を累積して被覆させる際、基板を上下させることにより基板の両側にLB膜を累積する。この操作を繰り返すことにより、累積膜を所望の厚さにすることができる。その厚さは1〜1000層であり、好ましくは2〜200層、さらに好ましくは、50〜100層である。また、異なる組成の単分子膜を累積して被覆しても良い。
【0036】
3−2 LB膜の基板への固定
基板上に、LB法を用いてLB膜を累積して被覆する際、基板に被覆されるLB膜が基板に強固に固定されることが好ましい。
【0037】
そこで、たとえば基板がガラスの場合には、シランカップリング剤で前処理し、ガラス表面上にエポキシ基を固定し、開環させたエポキシ基と、LB膜を構成するランダム共重合体Aの繰り返し単位2またはランダム共重合体Bの繰り返し単位4の活性水素を有する基とを結合させることによって、LB膜とガラス基板とを固定することができる。このような、ガラス基板にランダム共重合体AのLB膜が固定される状態を図2に示す。この活性水素を有する基は金属ナノ粒子を吸着する機能を有する機能団でもある
【0038】
また、基板がポリイミドの場合には、クロロホルムを用いて超音波洗浄されたポリイミド基板表面を、ランダム共重合体Bで被覆して紫外線等の光を照射する、またはホットプレートなどを用いてポリイミド基板表面を70〜90℃に加熱することにより、ランダム共重合体Bの繰り返し単位5が3次元架橋構造体を形成し、ランダム共重合体BのLB膜をポリイミド基板に強固に固定することができる。
【0039】
4.無電解金属メッキ
LB膜が被覆された基板上に無電解金属メッキ膜を形成する無電解金属膜形成工程が行われる。無電解メッキ膜としては、無電解銅メッキ膜、無電解ニッケルメッキ膜、無電解金メッキ膜が好ましく使用され、無電解銅メッキ膜が最も好ましく使用できる。無電解金属として例えば無電解銅を用いた場合には、(1)基板の前処理、(2)触媒の担持(3)水洗、(4)還元、(5)水洗、(6)無電解銅メッキ、(7)水洗の各工程をこの順に行うことによって無電解銅メッキ膜を形成することができる。
【0040】
基板にLB膜が1層以上被覆された本発明の無電解メッキ用基板の表面には、ランダム共重合体Aまたはランダム共重合体Bの単分子膜が存在し、これらの単分子膜を構成するランダム共重合体Aの繰り返し単位2、および、ランダム共重合体Bの繰り返し単位4の末端には活性水素を有する基がある。この活性水素を有する基は金属ナノ粒子を吸着する機能を有する機能団でもある。当該機能団としては、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、ヒドロキシ基、ヒドロキシフェニル基、アミド基、ヒドラジノ基、ヒドラジノカルボニル基、メルカプト基が挙げられ、特にアミノ基が好ましい。
このような構成を有する無電解メッキ用基板を金属ナノ粒子溶液に浸漬し、前記機能団に金属ナノ粒子(メッキ核)を吸着させる。金属ナノ粒子の中でも、金や銅のナノ粒子を用いることが好ましい。そして、これらのナノ粒子はクエン酸で覆われていることが好ましい。
【0041】
金属ナノ粒子(メッキ核)が表面上に分散した基板をメッキ浴に浸漬することによって、基板全体に分散した金属ナノ粒子をメッキ核として、メッキ浴中に溶解した金属が基板全体にメッキされる。金属ナノ粒子を吸着する機能を有する機能団に吸着した金属ナノ粒子は、基板全体に分散しているから、当該金属ナノ粒子をメッキ核とするメッキは、基板全体に均一に行われる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0043】
[合成例1]pDDA−DADOOの合成
ランダム共重合体AであるpDDA−DADOOの合成を説明する。
【0044】
<モノマー及びポリマーの合成>
N−ドデシルアクリルアミド(DDA)モノマーはクロロホルムを溶媒とし、N−ドデシルアミンとアクリル酸クロリドをトリエチルアミン存在下で、室温で8時間反応させることにより合成した(スキーム1−1)。
【化36】

【0045】
また、N−アクリロイルオキシスクシンイミド(SuOA)モノマーも同様に、N−ヒドロキシスクシンイミドとアクリル酸クロリドをクロロホルム溶媒、トリエチルアミン存在下で、室温で8時間反応させることにより合成した(スキーム1−2)。
【化37】

【0046】
次に、所定量のDDAモノマーとSuOAモノマーを重合管中で精製トルエンに溶解し、濃度0.2M/Lの溶液に調製した。その溶液中に開始剤である2,2′−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)をモノマーに対して0.01当量加え、溶解した。次に反応系内の酸素を除去するため、凍結脱気を数回繰り返した後、60℃の水浴中で12時間重合を行った。室温で、反応物を濃縮し、約20倍量のアセトニトリル中へ反応物を滴下し、共重合体pDDA−SuOAを沈殿析出させた(スキーム1−3)。pDDA−SuOAにおいて、各モノマーから誘導された2つの繰り返し単位はランダムに共重合している。すなわち合成されたpDDA−SuOAはランダム共重合体である。
【化38】

【0047】
<高分子反応>
側鎖末端にアミノ基を有する共重合体pDDA−DADOOは、共重合体pDDA−SuOAと2,2’−(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)(DADOO)を、室温で48時間、高分子反応を行うことにより得た(スキーム1−4)。生成する共重合体のゲル化を防ぐため、DADOOの濃厚溶液に、共重合体pDDA−SuOAの希薄クロロホルム溶液をゆっくり滴下した。また、DADOOはスクシニル基に対して約20当量加え、室温で2日間反応させた。なお、溶媒はクロロホルムを用いた。反応後の共重合体pDDA−DADOOはアセトニトリルで数回再沈殿し、過剰のDADOOを除去した。pDDA−DADOOを構成する2つの繰り返し単位はランダムに共重合したランダム共重合体である。
【化39】

【0048】
得られた共重合体pDDA−DADOOの組成比をNMRで求めたところ、DADOOの含有率が12%であった。また、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による分子量測定から、数平均分子量30,000、分子量分布(Mw/Mn)は約1.5であった。
【0049】
[合成例2]pDDA−DADOO−Mの合成
ランダム共重合体BであるpDDA−DADOO−Mの合成を説明する。
【0050】
合成例1で合成されたpDDA−DADOOをCHClに溶解し、0.1MのpDDA−DADOO溶液を調整した。この0.1MのpDDA−DADOO溶液を5Mの2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI,約アミノ基の20倍等量)のCHCl溶液に滴下し、室温で一晩撹拌した。その後、室温で、当該溶液を減圧除去し、アセトニトリルで再沈殿を2回行い、pDDA−DADOO−Mを回収した(スキーム2)。得られた共重合体pDDA−DADOO−MをNMRで調べたところ、全てのDADOOが反応していた。したがって、pDDA−DADOOに含まれるアミノ基を有する繰り返し単位のすべてにメタクリル基が導入された。
【化40】

【0051】
[実施例1]ガラス基板を用いた銅メッキ基板
トルエンに溶解したシランカップリング剤であるエポキシシラン(GTS)溶液(80℃)をガラス基板7に塗布して前処理をして、基板の表面にエポキシ基を設けた。次に、ガラス基板7に、LB法を用いて、合成例1で合成したpDDA−DADOO(疎水性の繰り返し単位のモル数と、アミノ基を有する親水性の繰り返し単位のモル数との比は、8:2)の単分子膜の多層累積5(1層)を設け、メッキ用基板を作成した。
【0052】
このメッキ用基板に、クエン酸で覆われた金ナノ粒子(直径が約30nm)3をpDDA−DADOOのアミノ基に静電吸着させた。その後、この基板を、以下の組成のメッキ浴(70℃)に40秒浸漬して無電解銅メッキを行い、金ナノ粒子をメッキ核とする銅メッキ4を施し、ガラス基板7を用いた銅メッキ基板70を作製した(図3)
(メッキ浴の組成)
CuSO; 6g/L(0.038M)
(CHO)n: 3g/L(0.10M)
KOH: 27g/L(0.48M)
EDTA: 15g/L(0.051M)
【0053】
得られた銅メッキ基板のメッキ厚は約120nmであった。また、基板上の銅メッキ被膜の体積抵抗率は約、2.87(μΩ・cm)であった。
【0054】
[実施例2〜5]ポリイミド基板を用いた銅メッキ基板
ポリイミド基板8の表面をクロロホルム中で超音波洗浄を行い、前処理をした。次に、ポリイミド基板8に、LB法を用いて、合成例2で合成したpDDA−DADOO−M(疎水性の繰り返し単位のモル数と、メタクリル基を有する繰り返し単位のモル数との比は、78:22)の単分子膜の多層累積5[24層(実施例2),50層(実施例3),74層(実施例4),100層(実施例5)]を設け、メッキ用基板を作製した。
【0055】
続いて、この基板にdeepUV(70mW/cm,20分)を照射し、合成例1で合成したpDDA−DADOOの2層累積5を設けた。その後、金をクエン酸で覆う構成を有する金ナノ粒子3(直径が約30nm)を静電吸着させた。その後、この基板を、以下の組成のメッキ浴(70℃)に30秒浸漬して無電解銅メッキを行い、金ナノ粒子をメッキ核とする銅メッキ4を施し、ポリイミド基板8を用いた銅メッキ基板80を作製した(図4)。
【0056】
メッキ層が剥離しにくいという観点から、実施例3〜5の銅メッキ基板(50層,74層,100層)が好ましかった。すなわち、pDDA−DADOO−Mを50〜100層多層累積した場合に、メッキ層が最も剥離しにくかった。
【0057】
[実施例6]ポリイミド基板を用いた銅メッキ基板
メッキ浴への浸漬時間を10分にしたこと以外は、実施例5と同様の手順でポリイミド基板を用いた銅メッキ基板を作製した(実施例6)。この銅メッキ基板を触針段差計によってメッキ厚を測定したところ、平均メッキ厚は1.9μmであった。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の活用法として、例えば、高度に微細な配線が求められる高集積回路を挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】ランダム共重合体Aが水面に展開する際にとりうる状態を示す模式図である。
【図2】ガラス基板にランダム共重合体AのLB膜が固定される状態を示す模式図である。
【図3】ガラス基板を用いた銅メッキ基板
【図4】ポリイミド基板を用いた銅メッキ基板
【符号の説明】
【0060】
1 繰り返し単位1の側鎖
2 繰り返し単位2の側鎖
3 金ナノ粒子
4 銅メッキ
5 pDDA−DADOOの単分子膜の多層累積
6 pDDA−DADOO−Mの単分子膜の多層累積
7 ガラス基板
70 ガラス基板を用いた銅メッキ基板
8 ポリイミド基板
80 ポリイミド基板を用いた銅メッキ基板



【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ナノ粒子が吸着する機能を有する機能団を含む共重合体の単分子膜が1層以上被覆された無電解メッキ用の基板。
【請求項2】
基板に、下記一般式(1)
【化1】

(式中、Rは互いに同一または異なってもよく水素原子もしくはメチル基を表し、Zは互いに同一または異なってもよく−NH−、−O−もしくは−S−であり、nは2〜20の整数である。)で表される繰り返し単位1と、金属ナノ粒子が吸着する機能を有する機能団を含む下記一般式(2)
【化2】

(式中、Wは活性水素を有する基であり、Rは互いに同一または異なってもよく水素原子もしくはメチル基を表し、Zは同一または異なってもよく−NH−、−O−もしくは−S−であり、mは1〜5の整数である。)で表される繰り返し単位2を含有するランダム共重合体Aの単分子膜、および、
下記一般式(3)
【化3】

(式中、Rは互いに同一または異なってもよく水素原子もしくはメチル基を表し、Zは互いに同一または異なってもよく−NH−、−O−もしくは−S−であり、rは2〜20の整数である。)で表される繰り返し単位3と、金属ナノ粒子が吸着する機能を有する機能団を含む下記一般式(4)
【化4】

(式中、Vは活性水素を有する基であり、Rは互いに同一または異なってもよく水素原子もしくはメチル基を表し、Zは同一または異なってもよく−NH−、−O−もしくは−S−であり、pは1〜5の整数である。)で表される繰り返し単位4と、光もしくは熱によって3次元架橋構造体を形成する機能を有する機能団を含む下記一般式(5)
【化5】

(式中、Xは−NH−、−O−もしくは−S−であり、Rは互いに同一または異なってもよく水素原子もしくはメチル基を表し、Rは水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基もしくは炭素数2〜20のアルキニル基であり、Z5は互いに同一または異なってもよく−NH−、−O−もしくは−S−であり、qは1〜5の整数である。)で表される繰り返し単位5とを含有するランダム共重合体Bの単分子膜からなる群から選択される1種以上の単分子膜が1層または2層以上被覆された無電解メッキ用の基板。
【請求項3】
基板に、下記一般式(1)
【化6】

(式中、Rは水素原子を表し、Zは−NH−であり、nは8〜14の整数である。)で表される繰り返し単位1と、金属ナノ粒子が吸着する機能を有する機能団を含む下記一般式(2)
【化7】

(式中、Wはアミノ基であり、Rは水素原子を表し、Zは−NH−であり、mは2である。)で表される繰り返し単位2を含有するランダム共重合体Aの単分子膜、および、
下記一般式(3)
【化8】

(式中、Rは水素原子を表し、Zは−NH−であり、rは8〜14の整数である。)で表される繰り返し単位3と、金属ナノ粒子が吸着する機能を有する機能団を含む下記一般式(4)
【化9】

(式中、Vはアミノ基であり、Rは水素原子を表し、Zは−NH−であり、pは1〜5の整数である。)で表される繰り返し単位4と、光もしくは熱によって3次元架橋構造体を形成する機能を有する機能団を含む下記一般式(5)
【化10】

(式中、Xは−NH−、−O−もしくは−S−であり、Rは水素原子を表し、Rは互いに同一または異なってもよく水素原子もしくはメチル基を表し、Z5は−NH−であり、qは2である。)で表される繰り返し単位5とを含有するランダム共重合体Bの単分子膜からなる群から選択される1種以上の単分子膜が1層または2層以上被覆された無電解メッキ用の基板。
【請求項4】
光もしくは熱によって3次元架橋構造体を形成する機能を有する機能団を含むランダム共重合体Bの単分子膜が紫外線照射された膜である請求項2または3に記載の無電解メッキ用の基板。
【請求項5】
単分子膜がラングミュア・ブロジェット膜である請求項1〜4のいずれかに記載の無電解メッキ用の基板。
【請求項6】
単分子膜が被覆される基板の表面がガラス、シリコンウェーハまたはプラスチックである、請求項1〜5のいずれかに記載の無電解メッキ用の基板。
【請求項7】
金属ナノ粒子が吸着する機能を有する機能団に吸着した金属ナノ粒子をメッキ核として、請求項1〜6に記載の無電解メッキ用基板を無電解メッキしたメッキ基板。
【請求項8】
メッキ核が金ナノ粒子であり、銅がメッキされた、請求項7に記載のメッキ基板。
【請求項9】
金属ナノ粒子が吸着する機能を有する機能団を含む共重合体の単分子膜を被覆する工程を含む、無電解メッキ用基板の製造方法。
【請求項10】
基板に、下記一般式(1)
【化11】

(式中、Rは互いに同一または異なってもよく水素原子もしくはメチル基を表し、Zは互いに同一または異なってもよく−NH−、−O−もしくは−S−であり、nは2〜20の整数である。)で表される繰り返し単位1と、金属ナノ粒子が吸着する機能を有する機能団を含む下記一般式(2)
【化12】

(式中、Wは活性水素を有する基であり、Rは互いに同一または異なってもよく水素原子もしくはメチル基を表し、Zは同一または異なってもよく−NH−、−O−もしくは−S−であり、mは1〜5の整数である。)で表される繰り返し単位2を含有するランダム共重合体Aの単分子膜、および、
下記一般式(3)
【化13】

(式中、Rは互いに同一または異なってもよく水素原子もしくはメチル基を表し、Zは互いに同一または異なってもよく−NH−、−O−もしくは−S−であり、rは2〜20の整数である。)で表される繰り返し単位3と、金属ナノ粒子が吸着する機能を有する機能団を含む下記一般式(4)
【化14】

(式中、Vは活性水素を有する基であり、Rは互いに同一または異なってもよく水素原子もしくはメチル基を表し、Zは同一または異なってもよく−NH−、−O−もしくは−S−であり、pは1〜5の整数である。)で表される繰り返し単位4と、光もしくは熱によって3次元架橋構造体を形成する機能を有する機能団を含む下記一般式(5)
【化15】

(式中、Xは−NH−、−O−もしくは−S−であり、Rは互いに同一または異なってもよく水素原子もしくはメチル基を表し、Rは水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基もしくは炭素数2〜20のアルキニル基であり、Z5は互いに同一または異なってもよく−NH−、−O−もしくは−S−であり、qは1〜5の整数である。)で表される繰り返し単位5とを含有するランダム共重合体Bの単分子膜からなる群から選択される1種以上の単分子膜を被覆する工程を含む、無電解メッキ用基板の製造方法。
【請求項11】
基板に、下記一般式(1)
【化16】

(式中、Rは水素原子を表し、Zは−NH−であり、nは8〜14の整数である。)で表される繰り返し単位1と、金属ナノ粒子が吸着する機能を有する機能団を含む下記一般式(2)
【化17】

(式中、Wはアミノ基であり、Rは水素原子を表し、Zは−NH−であり、mは2である。)で表される繰り返し単位2を含有するランダム共重合体Aの単分子膜、および、
下記一般式(3)
【化18】

(式中、Rは水素原子を表し、Zは−NH−であり、rは8〜14の整数である。)で表される繰り返し単位3と、金属ナノ粒子が吸着する機能を有する機能団を含む下記一般式(4)
【化19】

(式中、Vはアミノ基であり、Rは水素原子を表し、Zは−NH−であり、pは1〜5の整数である。)で表される繰り返し単位4と、光もしくは熱によって3次元架橋構造体を形成する機能を有する機能団を含む下記一般式(5)
【化20】

(式中、Xは−NH−、−O−もしくは−S−であり、Rは水素原子を表し、Rは互いに同一または異なってもよく水素原子もしくはメチル基を表し、Z5は−NH−であり、qは2である。)で表される繰り返し単位5とを含有するランダム共重合体Bの単分子膜からなる群から選択される1種以上の単分子膜を被覆する工程を含む、無電解メッキ用基板の製造方法。
【請求項12】
光もしくは熱によって3次元架橋構造体を形成する機能を有する機能団を含むランダム共重合体Bの単分子膜に紫外線を照射する工程を含む、請求項10または11に記載のメッキ用基板の製造方法。
【請求項13】
単分子膜を2層以上被覆する、請求項9〜12のいずれかに記載の無電解メッキ用基板の製造方法。
【請求項14】
単分子膜がラングミュア・ブロジェット法によって作成される、請求項9〜13のいずれかに記載の無電解メッキ用基板の製造方法。
【請求項15】
単分子膜が被覆される基板の表面がガラス、シリコンウェーハまたはプラスチックである、請求項9〜14のいずれかに記載の無電解メッキ用基板の製造方法。
【請求項16】
請求項9〜15の方法で製造されたメッキ用基板に、金属ナノ粒子を機能団に吸着させる工程と、金属を無電解メッキする工程を含むメッキ基板の製造方法。
【請求項17】
金属を無電解メッキする工程が、金属ナノ粒子が吸着する機能を有する機能団に吸着した金ナノ粒子をメッキ核として無電解銅メッキによって行われる、請求項16に記載のメッキ基板の製造方法。
【請求項18】
表面がポリイミドである基板に、
下記一般式(3)
【化21】

(式中、Rは互いに同一または異なってもよく水素原子もしくはメチル基を表し、Zは互いに同一または異なってもよく−NH−、−O−もしくは−S−であり、rは2〜20の整数である。)で表される繰り返し単位3と、金属ナノ粒子が吸着する機能を有する機能団を含む下記一般式(4)
【化22】

(式中、Vは活性水素を有する基であり、Rは互いに同一または異なってもよく水素原子もしくはメチル基を表し、Zは同一または異なってもよく−NH−、−O−もしくは−S−であり、pは1〜5の整数である。)で表される繰り返し単位4と、光もしくは熱によって3次元架橋構造体を形成する機能を有する機能団を含む下記一般式(5)
【化23】

(式中、Xは−NH−、−O−もしくは−S−であり、Rは互いに同一または異なってもよく水素原子もしくはメチル基を表し、Rは水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基もしくは炭素数2〜20のアルキニル基であり、Z5は互いに同一または異なってもよく−NH−、−O−もしくは−S−であり、qは1〜5の整数である。)で表される繰り返し単位5とを含有するランダム共重合体Bの単分子膜を複数被覆し、当該単分子膜に紫外線を照射した後に、下記一般式(1)
【化24】

(式中、Rは互いに同一または異なってもよく水素原子もしくはメチル基を表し、Zは互いに同一または異なってもよく−NH−、−O−もしくは−S−であり、nは2〜20の整数である。)で表される繰り返し単位1と、金属ナノ粒子が吸着する機能を有する機能団を含む下記一般式(2)
【化25】

(式中、Wは活性水素を有する基であり、Rは互いに同一または異なってもよく水素原子もしくはメチル基を表し、Zは同一または異なってもよく−NH−、−O−もしくは−S−であり、mは1〜5の整数である。)で表される繰り返し単位2を含有するランダム共重合体Aの単分子膜を被覆する工程、
金ナノ粒子を機能団に吸着させる工程、および
金ナノ粒子をメッキ核として無電解銅メッキによって銅をメッキする工程
を含むメッキ基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−256031(P2006−256031A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−75158(P2005−75158)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年9月17日 日本化学会東北支部発行の「平成16年度 化学系学協会東北大会 プログラムおよび講演予稿集」に発表
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【Fターム(参考)】